FC2ブログ

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

≫ EDIT

吉村昭  「遠い日の戦争」(新潮文庫)

吉村昭  「遠い日の戦争」(新潮文庫)
戦争末期、米軍の日本本土空襲による一般人殺戮はすさまじさを極めていた。その空襲のなかで、米軍機も日本軍に撃墜されパラシュートで降下し、日本の捕虜となる米軍兵士がいた。
 主人公清原琢也は、8月15日の終戦の日、上司の命令で米軍捕虜一人を処刑ということで、軍刀で首をはね、殺した。戦後、戦前の価値観はひっくりかえり、捕虜米人をひっぱたいたというだけで戦争犯罪人にされ、連合軍裁判で絞首刑にされた。
 当然清原も逃亡した。そして姫路のマッチ製造工場の運搬人で採用され、2年間安全に過ごした。故郷への郷愁が強くなり、仮名であるが、自分が元気で暮らしていることを年賀状で故郷に送った。筆跡をみれば仮名でも清原が書いたとわかるだろうと思って。
 それを受け取った父に、MPや警察の厳しい追及がその頃行われていた。そして父は犯罪人幇助の罪で投獄された。父はその屈辱に耐えきれず、警察に清原の年賀状をさしだす。それによって清原の居場所がわかり清原は逮捕される。そして全く理不尽な戦争犯罪裁判を受ける。
 同じテーマ、同じ事件を扱って遠藤周作が「海と毒薬」を書いている。遠藤はキリスト教
に沿って、事件をみつめ、彼の想像を作り上げ、扇情的に物語を創作した。
 吉村はあくまで事実をほりさげ、その枠内で、彼の想像を入れた。ここに吉村の物語への
信頼が生まれる。それでいて、読者の心には深く戦争犯罪裁判のむなしさ、憤りが刻まれる。

by はなゆめ爺や

にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

| 古本読書日記 | 08:30 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

COMMENT














PREV | PAGE-SELECT | NEXT