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吉村昭  「桜田門外ノ変」(新潮文庫)

吉村昭  「桜田門外ノ変」(上)(新潮文庫)
吉村昭  「桜田門外ノ変」(下)(新潮文庫)
吉村でなければ書くことができない作品である。
井伊直弼を殺害するために水戸藩を脱藩して決起した18人の武士。桜田門外でその計画は行われ成功。しかし、その場の殺された者、その後捕獲されころされた者殆どすべて、たった一人殺害指揮者だった関鉄之介だけが生き残った。関は直弼殺害後、決起することを確約してくれていた薩摩藩に頼るため、江戸から薩摩の手前まで逃亡する。しかし薩摩藩は決起するどころか、鉄之介の薩摩領内へ入ることを拒否する。
 いろいろあったが、とにかく維新後鉄之介は、警察官僚として生き、明治36年76歳で亡くなる。この作品執筆中、すでに健在ではなかったが、鉄之介の孫の関勇の妻がまだ健在だった。妻は勇氏から祖父や父のことをたくさん聞いていたし、資料も提供してくれた。吉村の凄いところは、江戸末期に起こったことについて、その時代を生き抜いてきた人の生の話を聞いて育ってきた人を探しだし、物語をつくることである。吉村にとって江戸はそれほど遠い時代ではないのである。
 さらに桜田門外ノ変後、鉄乃介が薩摩まで彷徨った町々を、痕跡があることを信じて自ら訪ねていることである。この粘り強さと誠実な姿勢が傑作を生む。


by はなゆめ爺や

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