東野圭吾 「虚像の道化師」(文春文庫)
難事件が起きる。そんな時、解決のため草薙刑事が頼るのが、帝都大学物理学科の湯川教授。そして、湯川教授が物理学の知識を活用して事件の真相を解き明かす。
よくある手品、トランプカードを手品師が見えないようにして引き抜く。それを黒い袋にいれて、手品師に渡す。すると手品師が見事に引き抜いたカードをあてる。
この作品集の中「透視す」という作品。銀座のホステスのアイちゃん。初めての客がやってくると、必ず後ろを振り向いて、黒い袋に名刺をいれてもらう。そして、入れ終わると振り向いて袋を手にとる。真っ黒な袋だから名刺は見ることができない。それなのに、すべて名前をあてる。
このカラクリを湯川教授が解明する。
黒い封筒はビニールでできているように見えるが、実は赤外線フィルターでできている。それで、この袋に赤外線をあてると、中味がわかる。ただし、あてただけでは、わからない。赤外線カメラを使い画像をとると、名刺の名前が読めるのである。
幻聴というのがあり、これに悩む人が結構存在する。大概は精神的不調によりおこり、神経科に診てもらい治療をする。
通常、音や声は発した後、空気中で拡散され、集まっていた人には聞こえる。ところがハイパーソニック・サウンド・システムを使うと、発せられた音声は拡散することなく、直進する。
このシステムを使い、心をまどわすようなことを、しつこく、くりかえし対象者だけに言う。受けた人は、まわりは誰もそんな声は聞こえていないから、自分は狂ったのではないかと思い、耳鼻科や神経科を受診するがどこも悪くないと診断されて、完全にノイローゼ状態になる。
現代は、革命的な機材がどんどん開発される。これが使いこなせず、理解できない私のような老人は、まわりの人たちがみんな手品師に見えてしまう。
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| 古本読書日記 | 05:41 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑