アンソロジー 「Jミステリー2023」(光文社文庫)
そこで何冊か東野作品を購入してみた。
紹介のアンソロジーでは、東野作品「相続人を宿す女」が巻頭を飾っている。この作品中編なのだが、長編にしてもいいくらいの内容。そして私にとっては東野のイメージを覆す、素晴らしい作品だった。
作品は2つのテーマが提示される。
息子が交通事故死する。息子は妻との関係がうまくいってなくて、事故死直前に離婚をしている。息子夫婦が住んでいたマンションを息子の両親が相続しようとして、夫婦2人の暮らしに合うよう、リフォームを計画する。
ところが、突然、離婚した息子の妻が、実は妊娠して現在8か月。お腹の子は、息子の子かもしれない。だから、マンションはお腹の子が相続する権利があると主張しだす。
確かに8か月前はまだ離婚は成立していなかったが、その時恋人とつきあっていて、その恋人の子の可能性もある。
日本の法律では、離婚後300日以内に生まれた子供は前夫の子となる。
しかし、裁判をしてDNA鑑定をすれば、この規定に縛られることはなくなる。
この問題を物語ではどうクリアーするのかが第一のテーマ
次に、元妻の子は無脳症であることが判明。無脳症は、脳は死んでいるのだが、他の臓器は機能して、この臓器を他人に移植するという場面になる。
ところで、移植臓器は、法律で臓器提供者と臓器移植者はまったく知らない同士でなくてはならないことになっている。しかし、この作品で提供者と受入者は知り合い同士となる。この法律をクリアーして移植は行われるかが第2のテーマ。
この2つのテーマを東野は法律を中心にしっかりと調査して、緻密なわかりやすい文章で見事なミステリーに仕立てあげている。驚いた。こんな作品を描く東野作品は、これから読んでいかねばならないと肝に銘じた。
このミステリー集には、東大卒の作家の2作品が収録されている。この2作品も素晴らしかった。ミステリーと言えば、最近は京大ミステリー研究会出身の作家が大活躍している。
しかしこの2作品を読むと東大卒作家のミステリーも侮れないぞと思った。
その作家は結城真一郎と阿津川辰海である。
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| 古本読書日記 | 06:19 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑