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アンソロジー   「Jミステリー2023」(光文社文庫)

 大ベストセラー作家東野圭吾。処女作「放課後」から「容疑者Xの献身」までは全作読んでいたが、少し内容が軽めで、あまり読み応えがなく、ずっと敬遠してきた。ところが、最近東野圭吾の出版本の総販売数が1億冊を突破したというニュースに接し、出版界不況の中、東野はとんでもない記録をうちたててしまったのだと唖然、驚愕した。

 そこで何冊か東野作品を購入してみた。

紹介のアンソロジーでは、東野作品「相続人を宿す女」が巻頭を飾っている。この作品中編なのだが、長編にしてもいいくらいの内容。そして私にとっては東野のイメージを覆す、素晴らしい作品だった。

 作品は2つのテーマが提示される。

 息子が交通事故死する。息子は妻との関係がうまくいってなくて、事故死直前に離婚をしている。息子夫婦が住んでいたマンションを息子の両親が相続しようとして、夫婦2人の暮らしに合うよう、リフォームを計画する。

 ところが、突然、離婚した息子の妻が、実は妊娠して現在8か月。お腹の子は、息子の子かもしれない。だから、マンションはお腹の子が相続する権利があると主張しだす。

 確かに8か月前はまだ離婚は成立していなかったが、その時恋人とつきあっていて、その恋人の子の可能性もある。
 日本の法律では、離婚後300日以内に生まれた子供は前夫の子となる。
しかし、裁判をしてDNA鑑定をすれば、この規定に縛られることはなくなる。

 この問題を物語ではどうクリアーするのかが第一のテーマ

次に、元妻の子は無脳症であることが判明。無脳症は、脳は死んでいるのだが、他の臓器は機能して、この臓器を他人に移植するという場面になる。

 ところで、移植臓器は、法律で臓器提供者と臓器移植者はまったく知らない同士でなくてはならないことになっている。しかし、この作品で提供者と受入者は知り合い同士となる。この法律をクリアーして移植は行われるかが第2のテーマ。

 この2つのテーマを東野は法律を中心にしっかりと調査して、緻密なわかりやすい文章で見事なミステリーに仕立てあげている。驚いた。こんな作品を描く東野作品は、これから読んでいかねばならないと肝に銘じた。

 このミステリー集には、東大卒の作家の2作品が収録されている。この2作品も素晴らしかった。ミステリーと言えば、最近は京大ミステリー研究会出身の作家が大活躍している。

 しかしこの2作品を読むと東大卒作家のミステリーも侮れないぞと思った。
 その作家は結城真一郎と阿津川辰海である。

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| 古本読書日記 | 06:19 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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綿矢りさ   「意識のリボン」(集英社文庫)

 短編集。
綿矢さんの作品は読んでいて本当に面白い。発想もユニークで、ユーモア満載。にも拘わらず言葉が豊穣で、文学性の香りも高い。

収録されている「こたつのUFO」が面白い。主人公の女性作家が、こたつにはいって休んでいると、突然宇宙人がやってくる。作家が宇宙人にとっては初めて出会う人間。宇宙人は手帳をだして、一言も聞きもらすまいとして作家の言うことをメモしようとする。宇宙人が聞く。
「人間トハ、ドウイウ生物デスカ。」
「男と女がいます。ちなみに私は女です。」
「オンナトハ、ドウイウイキモノデスカ。」
「女は噂話ばかりします。」
「ウワサバナシトハナンデスカ。」
「ほかの人たちがどんな暮らしをしてるのかすごく気になるので、誰々がああした、こうしたのと情報交換ばかりしています。他人の不幸をこっそり喜び、他人の朗報をこっそり妬む。
不幸も、周りの人達が、みんな不幸だったら、だいたいは受け入れられます。逆に周りがみんな不幸で、自分だけがとびきり幸福だったら、きまりが悪くなって幸福の質を落としてしまうくらい、周りをうかがう性質なのです。女は一生、自分にとって本当の幸福なんかわからずに生きていく生き物です。」

「オトコハドウイウ生キ物デスカ」
作家は自分の胸をさして
「おっぱいが好きな生き物です。太ってでた腹と変わりないのですが、ここに吸い付いたり、
しゃぶったりするのが好きです。」 

 おい、作家さんよとんでもないことを言うね。そんなことを言ったら、宇宙人がしゃぶりにくるよ。大丈夫かい?

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| 古本読書日記 | 06:14 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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成田名璃子    「時かけラジオ」(メディアワークス文庫)

 短編集。

 この短編集の物語の設定が少し変わっている。主人公のトッシーは22歳で、毎夜午後11時からの「ラジオがはねたら」というラジオ番組のDJをしている。それで、不思議な設定のことなのだが、その番組の時代が1985年。そして、ラジオでこの番組が流れているのが2020年。過去と未来が、ラジオ番組によって繋がっているのである。

 どの短編もそれなりに面白いが、自分の身につまされたのが「人生、波あり」。

主人公の男性は、長い間の勤めを明日、定年退職で終わる。その夜、テーブルの上に封筒が置かれており、その封筒から離婚届がはみだしていた。

 男性は衝撃を受ける。そして、その封筒をわからないところに隠す。

確かに仕事一筋」ではあったが、一人娘の育児はできる限り手伝ったし、家事もそれなりにしてきた。夫婦関係は円満と思えたし、定年退職したら、クルーズ船の旅行でもしようと話をして、妻も楽しみにしていたのに。そんなに俺を嫌いだったのか・・・。

 夜11時になると、つけっぱなしだったラジオから元気なDJの声が聞こえる。「今夜のテーマは『尊敬する人』。このテーマで何かある人は、この番組に電話かFAXしてください。」

 これを聞いた主人公は、ためらいがあったが、番組に思い切って電話をする。
のっけから主人公はびっくりする。番組が流れている時代は1985年。聞いている主人公が生きている時代が2020年。

 だから、噛み合わないところがしばしばある。スマホは1985年にはない。意思疎通の機器は固定電話かFAX。メールやSNSなどは全くない。

 「きもい」「うざい」なんて言葉は、DJにはまったくわからない。

男性が、そちらはバブル景気真っ盛りだが、それがはじけてその後30年、日本は経済停滞になるとDJに言うと、何バブル?と聞かれる。バブル景気というのは、景気がはじけた結果できた言葉。だから男性とDJの会話が時々通じなくなる。

 男性はDJに妻に負担をかけないようできる限り家事、育児を手伝ってきたのに、離婚届が用意されていると嘆く。DJは夫婦関係について男性から聞いて、とても妻が離婚を決意しているようには思えない。1985年の時、皆が観ていた映画「男はつらいよ」を観て、思い切って奥さんにプロポーズをもう一回したらとアドバイスをする。

 退職の日、家に帰って、いくつか「男はつらいよ」を観て、明日朝、妻にプロポーズしようと決意する。

 で、朝になると、驚くことに妻がいない。
果たして、妻は家をでてしまったのか。そしてクライマックス。すこし暖かい終わりを迎える。読者は、思わず良かったと胸をなでおろす。

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| 古本読書日記 | 06:05 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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今村夏子  「木になった亜紗」(文春文庫)

 どうも適当な事例が思い浮かばないのだが、空を自由に飛び回るじゅうたんの上に乗った夢を、幼いころよく見た。アフリカ大陸やパリ上空など世界を縦横無尽に飛び回った。時に大きな鷲に追いかけ、ゆらゆら揺れながら逃げ回った。それはファンタジーではなく、どこか現実に繋がっているように思われた。

 この本は、そんな現実をひっくり返した世界が、現実にもあるのではと錯覚させるような3作品を載せた作品集になっている。
 例えば、2作目の「的になった七未」では、何を投げつけられても、どうしても自分には当たらず、それで仲間外れにされ、どうにか適当な的になって、物に当てられたいと願い、当てられるために必死に頑張る女の子を描く。

 表題の「木になった亜沙」は、クッキーやチョコをプレゼントしても、学校で昼食のサラダを盛って提供しても、誰もいらないと言って食べてもらえない主人公亜沙。何しろ、金魚にエサを与えても、金魚は底に沈んだままで、食べてくれない。他の子が同じエサを金魚に与えれば、金魚は争うようにエサに食いついて食べる。

 何とかして、自分のだしたものを食べてほしいと色んなトライをするが、悉くダメ。ノイローゼになり施設に収容される。

 ある日、施設の仲間で、スキー場にスノボをしにでかける。迷って林の中で寝そべっていると、動物がやってきて、木の実をおいしそうに食べる。そうだぶどうやみかんの木になれば、みんなに食べてもらえると、亜沙はそこで木になってしまう。しかし間違って杉の木になる。木の実とは無縁の木。

 そのうち、亜沙は伐採され、細かく刻まれ、割りばしとなってコンビニの弁当の付属品となる。その弁当をある客の若者が買って家に持ち帰る。割りばしになったのは、亜沙の両手だ。

 亜沙は、開けられた、弁当のごはんを思い切り両手で掬って若者の口に持っていく。すると若者が「おいしい」と言って、喜んで食べてくれる。亜沙は初めて自分がサーブした食事を食べてもらえたことに感動する。ごはんばかりではよくないと思いおかずの野菜をつまんで口に持っていってあげる。亜沙のサーブによって、若者は完食した。

 この後、若者に婚約者ができて、若者の部屋の片付けにくる。婚約者が割りばしの亜沙を捨てようとする。懸命に若者は亜沙を捨てることを防ぐ。それが気持ち悪くて婚約者とは別れることになる。

 食べることは生きる基本だ。婚約者より大事だ。この場面には少し感動する。
この物語、最後は少し悲しい結末で終わる。

 面白い。今村さんの小説、その想像力のたくましさに魅了される。

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| 古本読書日記 | 05:54 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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窪美澄   「私は女になりたい」(講談社文庫)

 主人公の赤澤奈美は47歳の美容皮膚科医。カメラマンの夫と息子玲の3人家族だったが、夫との関係が悪化し離婚をして、母の介護と玲を育て、仕事一筋で生きてきた。

 奈美は、開業医なのだが、雇われ医師で、病院のオーナーは佐藤直也というお金持ち。
佐藤直也は、医院が崩れ破滅するのは、医院に悪い評判がたつこと、特に、患者と恋愛することは絶対禁止。そのようなことが発覚した場合は、即解雇と奈美を含めた病院スタッフに言い渡している。

 しかし、ある日街で偶然出会った、元患者の公平と奈美は恋愛関係となる。
奈美は、大学も医学部で、勉強もよくでき、開業医ということで、人生の成功者。相手の公平は33歳、奈美より14歳年下で文房具メーカーの営業マン。結婚を約束した植本夏子がいたのだが、公平が言うには、夏子が結婚を拒否、最近別れたばかりと言う。

 二人は、結婚を約束し、激しい恋愛をする。

ここが、どうしても、私は違和感を感じる。
 頭脳明晰のエリート女医が、格下のそれも14歳も年下の公平に恋をすることが素直に受けいれられない。この場合、普通は遊びの相手として公平と通じ合うが一般的。

 そして、婚約者だったとする夏子が今に暴れるんじゃないかと思いなが読み進むと、案の定、夏子は奈美と公平の接吻やデートの写真をばらまく。ということは、当然病院オーナーの直也にも知られるし、病院スタッフも知ってしまう状態になる。

 追い詰められた奈美は、公平に別れると言う。そして直也に脅されて、抱かれてしまう。
さて、奈美はどうなるか。物語はクライマックスに突き進む。

公平が奈美の玩具であっても、結果は同じなのかもしれないが、でも、どうしても、わだかまりが残ってしまう。

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| 古本読書日記 | 06:42 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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原田ひ香   「まずはこれ食べて」(双葉文庫)

大学を卒業したが、就職活動をしなかった、田中、胡雪、桃田、伊丹、柿枝の5人。マンションの部屋を借りて、医療システムを構築販売する企業を起ち上げる。

 起業というのは、特に大学の延長での起業は、仕事と生活が未分化。趣味の延長だから、会社にあるような労働時間やオフィスの感覚が無い。それで、異常な情熱で仕事がなされる。何日も続く徹夜はいとわない。時間を忘れて仕事に熱中する。仕事場所はマンションだから、好きな時に風呂に入り、寝るためのベッドも持ち込まれている。部屋は、書類や食物屑やプラシティック食器が散らかり放題。

リーダーで社長をしている田中が、さすがにこの状況に耐えられず、家政婦を雇う。やってきたのが筧みのり。徹底的に部屋を整理整頓、掃除と見違えるほど綺麗に片付け、そしてありふれた料理だけど、彼女が創るとびっきり美味しい料理。夜食、朝食、夕食。作り置きも多いが、この料理が読んでいて本当に美味しく感じてくる。

 私は会社を定年退職して、嘱託で起業してあまり時間がたっていない、初々しい会社にアドバイザーで勤めた。とにかく、時間関係なく、皆過労なんてことを越えて働く。社長が最も働き、その迸る情熱が社員に完全に伝染。新興宗教集団の体。

 社長は完全に、従業員を支配下におく。その支配に背く者を嫌う。

 学生たちが始めた会社、経営能力に優れた、田中が社長になったが、この会社を支配しようとしていたのが、営業に力を発揮して、次々受注をとってきた柿枝。支配がゆらぎだすと、柿枝は失踪する。残ったメンバーが動揺する。田中以下、柿枝を懸命に探そうとする。柿枝はメンバーの動揺する様子がわかっていて、自分こそ支配者だと再認識する。

私の勤めていた新興会社も、社長に反抗して、会社を飛び出す幹部が何人もでた。しかししらないうちに、社長に屈服して皆戻ってきた。

 大学卒業後始めた会社トラブルや困難に直面すると、美味しい食事とともに家政婦みのりが登場して、的を得た指摘をして、会社が復活する。この会社の真の支配者はみのりなのかもしれない。

 そうそう、そんなに衝撃にうろたえる前に「まずこれ食べて。」

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伊井直行    「岩崎彌太郎」(講談社現代新書)

日本で初めて会社を創り、三菱グループの始祖で有名な岩崎彌太郎の伝記。
講談社現代新書という学術系の書籍で出版されているから、伊井は作家なのだが、想像を膨らますことなく、事実、史料に忠実に描いたため、物語性が殆どなく、少し読むのが辛かった。

 岩崎彌太郎は司馬遼太郎の「竜馬がゆく」にも登場しているが、龍馬が彌太郎と出会う場面は、司馬の想像力が面目躍如に発揮され、心躍る場面になっている。この作品では、龍馬との遭遇場面はほんの数行。ちょっとずっこけた。

 会社というのは、一人でもいいのだが、複数の人や組織が、資金をだしあい、事業をする法人をいうものだと考えていた。
 しかし、この本をいくら読んでも、岩崎の仕事が株式会社を創造したような場面はなく、少し違和感を持った。

 岩崎は土佐藩の下級武士の家に生まれ、藩が創った開誠館長崎商会の経営者として、長崎に派遣される。そこで、土佐特産の樟脳を販売、そこから儲けたお金や、藩から預かったお金で、武器や蒸気船を欧州の商社から購入する仕事をする。

 明治になり、土佐藩首脳林有造が、私企業である海運業九十九照会を創る。経営トップは海援隊の土居市太郎。彌太郎は事業監査を担当する。そして、藩から3隻の藩船を払い下げてもらい海運事業を開始する。

 九十九商会が最初の企業のように思われるが、彌太郎が創ったものではない。廃藩置県にともない、土居は商会を去り、彌太郎がトップにつく。

 明治や江戸時代、車や列車の無い時代。物資輸送は、船によってなされている。だから、海運業は経済活動を支える基盤となる。

 九十九商会は、明治5年に三川商会と名前を変える。当時、政府が設立し、三井、鴻池などが創った日本国郵便蒸気船会社が三川商会の競争相手として存在していた。

 この時、台湾出兵、その後、西南戦争がおき、政府は大量の兵員、戦争物資輸送をせねばならなくなった。それを日本国郵便蒸気船会社に委託しようとしたが、それを受ければ、国内輸送を三川商会に全部とられると日本国郵便蒸気船会社は恐れ、要請を断る。政府の要請を三川商会は全部受け、莫大な利益を得る。明治6年、三川商会は三菱商会に名称変更。本社も東京に移す。これが三菱財閥の初めての会社となる。

 本を読んでいて、よくわからなかったのが、三菱商会は政府所有の船を大量に払い下げてもらうのだが、その船の購入資金はどこからでたのかということ。

 読んでいて、思ったのだが、明治の初めころまで、お金は藩が藩札を発行して、流通させていた。これを、政府統一通貨発行するため、藩札を政府が買い上げることにする。この情報を小耳にはさんだ、彌太郎は、各藩の藩札を安く買いあさり、それを政府に売って、大金を創り、政府からの払い下げ船を購入したように思えた。

 日本国内輸送は、外国船社、アメリカン・メイル、イギリスの商船会社P&Oも参戦していた。この海外船社と三菱との戦いは、興奮した。

 三菱商会は、現在の日本郵船会社NYKの元祖。そういえば、会社時代NYKと打ち合わせしたとき、NYKの若い社員に名刺の肩書が「書記」という人がいた。
 流石に歴史のある古い会社と感心した。

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| 古本読書日記 | 06:29 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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家田荘子   「愛は変わるの?」(集英社文庫)

 とうとう終わる。家田作品をたくさん買い込んでの最後の一冊。もう一冊を残してやめようと思ったのだが、たとえブックオフで最も安価な古本であっても、ケチな根性がわきでてきて、手にとってみた。 この作品も女性にたいしての愛の処方箋となっている。

「今日も残業。今仕事が一番大事なんだ。だからしばらくは会えない。」「今、勉強が大事で、今がんばらないといけないから会うのはしばらくやめよう。」

 こんなことを言われたら、愛する恋人に優しい心つかいをして、彼を少し放ってみたら。と家田さんは書く。仕事で本当にストレスがたまっているかもしれないから、それを見極めるためにも。

 しかし、強く愛し合っていれば、仕事も勉強にも情熱をかけると同じくらい、逢わずにはいられない気持ちになるもの。2人は、どんな困難があっても、逢うものだと思う。

 男性が、仕事や勉強を言い訳にして会うのをやめようという時には、その男性は別れようと思っていることが殆ど。

 家田さんが、歌手の美川憲一と対談する。美川憲一が浮気をする男性について語る。
「男というものは、子供がそのまま大きくなったような部分があるのよ。弱かったり、ズルかったりするから、追いつめちゃいけない。女性からガーガー言われると、面倒くさくなっちゃって、『こんな女とは別れちゃえ』ってなるから、子供と遊んでいるような広い心で接してあげないとダメよ。」

 女性には元々母性本能がある。そんなことを言えば、今は女性差別になってしまう。美川を信じちゃいけない。

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| 古本読書日記 | 06:22 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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家田荘子  「私がノンフィクションを書く理由」(角川文庫)

 もう飽きた、完全に飽きた家田荘子作品。あと一冊未読作品があるが、内容も想像できるし、読むのをやめようと思っている。

 家田さんの作品は、体当たり取材記が多い。週刊文春や週刊サンケイもあるが東スポも多い。読者層が中間労働者。この層の人達は、香高い文章など期待していなくて、直截的な文章を期待している。

 家田さんは、元々女優を目指していた。あの田中美佐子の出世作となった映画「ダイヤモンドは傷つかない」にも端役として出演している。そこから転じて、フリールポライターになる。作文が得意、多読ということもないので、書く文章がすばらしいというわけはないが、疲れてすさんだ労働者には、直截的な文があっていたように思う。

 この作品は、ルポライターになって、ベストセラーを連発するまでになった家田さんの奮闘の日々が描かれている。

 傑作「極道の妻たち」の妻に取材するまでの、険しい道のりも面白かったが、銀座クラブから温泉芸者など突撃取材記の中の、じゃぱゆきさん取材記が面白かった。

 日本も明治から昭和にかけて田舎は貧しかった。そして多産の家が田舎では多かった。それで、口減らしのため、四国、九州では娘を業者に売り、その娘たちは船の倉庫のようなところに入れられ、売春婦になるために、インドシナの国々に売られていった。中にはアフリカまで流された女性たちもいた。その悲劇を描いた映画「サンダカン八番娼館」は悲しい作品だった覚えがある。

 時代は変わって、日本が戦後驚異的な高度成長を成し遂げ、黄金の国として、今度は周辺国から多くの女性が売春婦として流れ込んできた。彼女たちは「じゃぱゆきさん」と呼ばれた。今は、日本の経済的地位も低くなり、じゃぱゆきさんも少なくなった。

 家田さんが、台湾からのじゃぱゆきさんを取材している。彼女たちは、20人ほどが八畳の2部屋におしこまれて、生活している。

 彼女たちを家田さんから見ると、年もとっているし、容貌もそんなによくなく、これなら日本の若い風俗女性のほうがよほど良いのに、日本の若い女性はひと晩に3-5万円の稼ぎなのに、台湾からのじゃぱゆきさんは皆数十万円の稼ぎがある。不思議だと思う。

 台湾じゃぱゆきさんの仕事場は今はなき、赤プリ、赤坂プリンスホテルロビー。ここにいて、特に外人の宿泊客がホテルに帰ってきた時を狙って、抱き着き部屋まで連れていってもらい、セックスをするのである。

 25分もすると、消えたじゃぱゆきさんがニコニコしながら、エレベーターからでてくる。
「七万円」「五万円くれた」と言いながら。

 家田さんは、彼女彼を取材しようと、エレベーターに一緒に乗る。それでも、部屋まで追いかけるのは無理かと思ってやめる。彼らは21Fで消える。

 ロビーに降りようとすると、アラブ人の男がエレベーターに駆け込んでくる。そして一緒に部屋に行こうとしわくちゃなお金3千円をみせる。

 家田さんは頭にくる。台湾女性は最低でも3万円。それが3千円とは。「NO,NO」と断ると、「そうか3千円では少ないか。」と皺くちゃな千円札をもう一枚つきだす。懸命に拒否をする。

 するとアラブ人は、部屋にこなくてもいいとジッパーをおろして一物をだす。驚いて、次の階のボタンを押して、家田さんはとびだす。アラブ人は一物をしまうのに手間取り、エレベーターからでないうちにドアがしまる。

 家田さん、次のエレベーターでロビーにもどる。
するとロビーにいた台湾女性から
 「あんた、もう仕事を始めたのか?」と声をかけられる。

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家田荘子    「恋愛白書」(講談社文庫)

 「私の肌に群がった女たち」では、アメリカ黒人兵に群がる若い女性たちの実態を家田さんは描いたが、性行為を求めて徘徊する女性たちは、当然黒人ばかりを求めるではなく、若い日本人の男達を求めていることも普通にある。

 この作品は、そんなスクールエイジの高校生から医大生までの男達に群がる女性たちを取材したルポ。

 こういう男達は、中学生から高校低学年にかけ初体験をすませ、そこから2-3年の間に60人程度の女性と性行為をする。普通の同じくらいの男性は、経験が多くても片手で収まるのに。とんでもないことである。

 ディスコ店員柏木君20歳も、20歳になるまで70人以上の女性と性体験をしている。場所はディスコのビルの非常階段やトイレが多い。たまに、乱交パーティーもある。

  女子高校生を、セックスフレンドに持つ。ディスコの給料は16万円と、遊興費にはまったく不足する。遊ぶ金は、すべて女子高生がだしてくれる。

 女子高生は柏木君を繋ぎとくために、ピンサロ、ファッションヘルス、ホステスで働き、愛人バンクで金持ちのパパを持ちながら、ランジェリーパブでも働いている。

 そのお金で1回8万円から10万円で柏木君を買う。

柏木君が着用している、ジャンニ・ヴェルサーチのスーツ100万円も彼女からのプレゼント。
柏木君に貢ぐために、16歳の彼女は売春をする。

 この作品には、BMWやポルシェを女の子からプレゼントしてもらった、大学生も登場する。
読んでいて、頭にきてしまう。完全に狂っている。

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家田荘子   「アブノーマル・ラバーズ」(角川文庫)

SM、女装趣味、フェチやM男など、性倒錯に陥った人達を取材したルポ。驚くことにパリで娼婦のフランス人女性を射殺し、その人肉を食べて、大きな話題になった佐川一政まで取材している。

 家田の作品を読んでみようと思って、たくさんブックオフに注文した。どの作品も眉をひそめる、辟易とした作品で、完全に飽きがきた。後3冊残っている。もうやめようと思うのだけど、もったいないから頑張って読もうとも思う。その後、文学の香り高い作品を読むつもり。早く家田から卒業しよう。いささか疲れた。

 この作品に登場するMで43歳になる神田川。取材を申し込むと、快諾してくれたのだが、取材の前に、全裸の神田川が萎えた一物をさらしながら、緊縛されている写真など、とても正視できない写真を10枚送ってきた。

 そして、手紙の最後に
「先生、私を裸に縛った状態で、インタビューくださっても構いません。もし、ご希望なら、私を叩いてください。」
 と書いている。

取材当日、角川の会議室で編集者2名とともにインタビューをする。その日は、神田川の生い立ちや、M男に至った経緯な度を取材し終了するが、2回目の取材は神田川の希望でホテルのスイートルームで行う。

 部屋で、神田川はバスローブ一枚。そのバスローブをはいで、全裸になり、椅子に座った
まま、たくさんのネクタイをだし、ロープでは難しいから、ネクタイを結び合わせて、自分の手足を縛ってくれと言う。

 神田川の指示により、手足をしばり、口に猿ぐつわをはめ、鞭を持たせられる。
そして家田さんは、ムチで、思いっきり叩けと命令される。神田川は言う。
「恥ずかしさを堪えてやってもらう行為に、幸せを感じるわけです。さあ、実際に叩いてSMを感じ取ってください。」

 家田さんムチで叩こうとするがほんのかするだけ。
神田川に真剣にと言われ、懸命にムチをふるい、神田川にたたきつける。しかし家田さんには嫌悪感ばかりで、快楽など全くおこらない。

 それを見ていた編集者の女性の一人が、渾身の力を込めてムチを振るう。
神田川が快感のため息を発する。編集者もうっとりした顔つきになる。

 果たして、編集者はこの取材のために選ばれた角川のSの女性か、それとも雰囲気にのまれたのか。
 しかし、何とも常軌を逸した取材現場である。

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家田荘子   「俺の肌に群がった女たち」(祥伝社文庫)


 1980年代から90年代にかけては、米軍の黒人に群がる日本の女性たちが、大きな話題となり、マスコミ、テレビのワイドショーや、小説の世界を席巻していた時代だった。今でも、変わらず群がっている女性たちはたくさん存在するだろうが、社会に溶け込んで、殆ど取り上げられることは無くなった。

 この作品は、そんな時代に、黒人兵と日本人の女性たちを取材して、実態に迫ったルポルタージュ。

 フィラデルフィアで生まれた黒人のマービンは24歳。高校を卒業した後、一年間ブラブラして空軍に入隊。22歳の時、日本横須賀への辞令がでて、横須賀基地にやってくる。そして、福生にある独身寮バラックスに入寮する。

 マービンの部屋には、仕切りをはさんで、同じ黒人兵のスティーブがいた。

入寮したその日に、スティーブに誘われ、六本木に行く。六本木のクラブで、2人連れできていた女子大生カナに知り合い、早速、バラックスの部屋に連れ込み、セックスに至る。当然仕切りの向こうのスティーブも拾ってきた女性とことをいたしている。

 それからは、殆ど娘たちは入れ食い状態。マービンは、いたした女性について、バッド、ソウソウ、グッド、ワンダフルと電話番号もいれて、評価リストを作成する。それが、一年間で、数百人にもなり、面倒になり捨ててしまう。

 しかし、多くの日本女性は、相手の黒人と互いに愛し合っていて、相手を恋人と想い、その先の結婚を願望している。
 そんな女性たちは、東京から福生にでてくる。そして、黒人男性と同棲したり、福生で、相手を見つけようとする。
 女性たちは、相手の黒人に対し、洗濯、掃除、そして食事を作り、かいがいしく尽くす。

殆どの女性たちは、学生だったり東京でOLをしている。
 福生から東京までどれだけかかるか知らないが、この作品によると、一時間半と書かれている。
 女性たちは、黒人につくし、愛し合った後、朝一番の電車で、毎日仕事場や大学のある東京に向かう。

 そして、殆どの女性は、黒人たちに捨てられる結果になる。
今でも、変わらない風景が繰り返されている。

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家田荘子    「恋のルール」(光文社文庫)

 充実した恋をするための方法を指南する作品。

愕くことに、素晴らしい恋をするためのルールが54もあるのだ。そんなことを常に想いながら恋をすることなんてありえない。前も書いたと思うが、恋の指南を本から学ぶことは、今や化石。このような本は売れないだろうと読んでいて感じてしまう。

 家田さんは、不倫で苦しんだことがあったようで、不倫は一方的に女性を苦しめるという視点から不倫に対応するルールに多くのページを割く。

 しかし、今や男女格差なしの時代。女性でも専業主婦が減少して、女性も仕事について、結婚しても、子供を持っても、ずっと働き続けられる時代になってきた。

 私のような小さな街でも、時間外で子供を預かる施設が我が家の近くにできた。段々子供の養育は、家庭とともに、社会が担うようにもなってきた。

 不倫は、未婚女性が家庭を持つ男性を恋するものという視点でこの作品は書かれているが、私の長い会社生活の中、男性の妻が、その男性の友達を恋して、友達に走り、男性は離婚を強いられ、友達は結局、男性の妻と結婚したということがあった。また妻が、夫が仕事中に別の男性に恋して、妻に捨てられたかわいそうな男が2人いた。

 結婚していても、男も女も恋をするというのは、ひとつの恋の形としてすでに日常風景になった。

 この本によると、既婚で愛人と別れさせるために、世の中には「別れさせ屋」という商売があるそうだ。

 別れたくないと思っている妻がいる家庭に愛人を装って電話をする。無言電話や「彼が今家をでてそっちに向かったよ。」と電話する。

 それを妻が仕込んでいるにも拘わらず、知らんぷりをして、「こんないやがらせの電話があなたの愛人からしょっちゅうあるよ。」と夫に言う。

 夫は驚いて、愛人に「何でそんな電話をするんだ」と怒る。しかし愛人は「そんなことしてない」と言い返す。

 この電話は、その後も続き、愛人と夫は別れることになる。

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家田荘子   「ラブ・ジャンキー」(集英社文庫)

 タイ バンコクの日本人御用達の歓楽街、パッポン、タニヤを取材して、バンコクの娼婦たちや、快楽にふける日本人たちの実態を明らかにする。

 家田さんは、私より7歳年下の女性で、青春時代を戦後昭和まっさかりの時に過ごしている。4回の結婚を経験。そのうち2人が黒人と、自由奔放な人生を歩んでいるようだが、心根は昭和にすっぽりとハマっている。

 そんなものさしでバンコクの退廃した歓楽街を取材するので、はじけたところがなく、家田さんの破天荒な人生とは、無縁な、真っ当な取材記になっていて、私にはつまらない作品に思えた。

 しかし、最初はびっくりした。何と、売春婦斡旋のタニヤのクラブにホステスとなり潜入取材をしている。何枚かの家田さんのミニスカート姿の写真まで挿入されている。濃い化粧と肌を茶系に塗り、タイ人と見分けがつかないようにして、店にでているのである。

 このまま、日本人客に指名されれば、最後には売春をしなくてはならない。大丈夫なのかと思っていたら、家田さんのこの作品には、カメラマン、編集者が同行していて、さすがに少し酒を飲んだだけで、ホステスはやめている。

 40年ほど前、台湾メーカーに私の会社の製品をOEM生産してもらうため、メーカーに出張し打ち合わせをした。

 当時の台湾は、日本の農協やすけべ爺の買春ツアー真っ盛りの時だった。帰りの飛行機に乗るために飛行場のロビーで待っていると、横に昨晩遊んだ、台湾娼婦たちが、侍って、爺の見送りをしていた。

 私のOEM先の会社の事務員も私を見送ってくれた。この事務員が、普通の衣装で、分厚いレンズのメガネをかけ、見てくれが貧相だった。すると、見送り同伴の爺たちが一斉に私のほうをむいて、「可哀想に」という眼差しを向けたことを思い出した。

 この作品で今は変わったなあと思ったのは、バンコクやバタヤ、プーケット島は日本の女子大生、OLで溢れかえっている。その女性たちはタイの男達とセックスを愉しむためにやってきていること。

 アバンチュールや、欲望の勢いは、今や日本人男性から、女性にうつりつつある。
帰りの飛行場には、日本の女性が、タイ人の見送り男性を連れている風景に変わるかもしれない。

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家田荘子   「信じることからはじまる愛」(集英社文庫)

家田さん、エイズに罹ったカップルを取材し小説にしたり、黒人男性と結婚したりと、自由奔放な恋愛を満喫しているので、さぞ破天荒な恋愛思考の女性かと思っていたが、この作品を読むと、古風伝統的な恋愛思考をなさる女性と思われ、意外な感じがした。

 この作品は、女性の恋愛の目的は、幸せな結婚をし、人生よき伴侶を得て、子供を育て幸せな人生を全うすること、そのための女性に対する恋愛指南書になっている。

 今は、下手をすれば、女性のほうが男性より積極的に恋愛を満喫、自由な行動、活動をしている時代。社会も一体となって女性の地位向上を後押ししている。

 こんな時代の女性が幸せ、快楽を満喫するための指南書としては、世間ズレしていて少し古めかしい。

 例えば、心ときめきながら、付き合っている男性、この先は結婚してもいいとプロポーズを心待ちにしていると、実は彼は既婚で奥さんもいることがわかり、女性は衝撃を受け、奈落の底におちてしまう。

 恋愛に入る前に確認しておかないことがあると家田さんは書く。

 100%信用しないで、裏をとることが大切。「彼女がいないこと」「結婚していないこと。」これらの確認のため相手の言葉の端々に対しチェックを入れること。

 夜、彼に電話をして、その時彼が声を顰めないか、場所を移動しないか確かめる。
あるいは「そのスーツ似合うわね。誰の見立て?」と聞いてみて、彼が言葉を詰まらせないか、彼の勤めている会社に電話して「彼の妻ですが」と言ったとき、電話をとった人が「いつもお世話になります。」と奥さんがいることを前提にした対応をしないか確認する。

 これらのチェックをしてクリアーしたら、本格的恋愛に突入する。

 恋愛は、一目ぼれや、男性の言葉使いや立ち振る舞いを素敵と思い、恋愛にはいる。
こんな過程を経ないと恋愛はできないなんてことは、通常絶対にありえないし、こんな確認をしなければならないのでは、世の中から恋愛は消滅する。

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家田荘子 「シングルズ」(光文社文庫)

 中年にさしかかった未婚女性たちの思いを取材したルポルタージュ。

結婚適齢期を過ぎても、どうして結婚しないのか。どうしても、取材者家田が、女性は結婚して子供を産み育てるのが当たり前という刷り込まれた観念があるから、何かズレがあり、納得感が薄い作品になっている。

 今時、もし男性が未婚女性に対しこんなことを取材したら、完全にセクハラになる。独身のまま人生を送ることは一つの普通の人生選択であり、どうして?なんて聞くようなことではない。

 この取材記の中で、働いて貯めたお金で、マンションを購入した女性が登場する。自分の力で一国一城の主になったのである。家庭や恋より、この城が生きがいで城を愛するという。

 納得感があった。会社時代、私の部下で、4人の女性が離婚をした。

1人仕事ができ、熱心に働く女性だった。チームをまとめあげ成果をあげ、プロジェクトで社長賞までとり、その賞金でクルージング船を借り切り、楽しんだこともあった。

 そしてこの女性、わが社で初めて海外駐在員となり、5年間ドイツ駐在した。もちろん、その後、女性海外駐在員はたくさん排出したが、やはり最初の女性駐在員というのはすごいことだった。

 ドイツから帰国して、会社の中でも、重要な子会社の取締役になった。この時、なれない仕事で苦労があり、朝まで仕事をしても、やりきれず、会社のある街にマンションを購入して厳しい業務にあたった。

 この彼女も結婚をしたときがあったが、理由はしらないがわずか3か月で離婚した。

彼女が数年前、定年退職となった。慰労をかねて、2人で食事した。失礼とは思ったが彼女に聞いた。
 「恋はしたの?」
 「もちろん恋はしたし、今も愛している恋人がいます。」

これを聞いて、私は嬉しくなり、思わず微笑んだ。

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家田荘子   「歌舞伎町 シノギの人々」(宝島SUGOI文庫)

 新宿歌舞伎町で懸命にしのぎ、お金を得、暮らしている人達に対する取材記。
風俗嬢、ヤクザ、ホスト、高利貸し、覚せい剤商売」、キャッチなど生々しく語られる。

 家田のノンフィクション作品はたくさんあるが、その中で映画化もされ大ベストセラーになり「極妻」という言葉まで流行させた「極道の妻たち」が印象に遺る作品である。

 しかし、家田さんは、すごい。この作品のために新宿歌舞伎町の取材をしていた時は、まだ作家駆け出し中。

 当時は日本最大の暴力団神戸山口組が歌舞伎町に乗り込み、歌舞伎町最大暴力団一和会と大抗争の最中。街には至る所で、暴力団集団が武器を持ち、闊歩していた。その集団に、家田さんは取材させてほしいと声をかけまくっていたと、この作品で描いている。

 作品の中で、印象に残っているのが、美人女社長亜希がやっているホテトル商売。

通常、こういう商売に入る女性のスカウトには、専門の男性に依頼して集めるのだが、亜希は自ら渋谷の道玄坂で、歩いている女性に声をかけスカウトを始める。

 道玄坂のホテル街を一人で早足で歩いている女性はたいていがホテトル嬢と睨んで声をかける。当時は、高校生で援助交際をしている娘も多く、一時間半で1万5千円になると言えば、結構金につられてホテトル嬢になる娘がいた。

 この亜希のすごいのは、ホテトル嬢を始めるに際し、必ず、ホテトル嬢とは何かを2枚の紙にして、きちんと説明して娘に納得してもらうこと。
 「仕事とは、
  出張して時間に応じて、女の子自身の体を使って、性行為を提供することによって収入を得る仕事
  何故収入を得られるか
  出張して時間内に支払いに値する満足を提供しているから
  何故お客様は支払うのか
  自宅またはホテルに女性が来て、お客様の欲求を満たす行為を提供してくれるから」

単に売春するために、指定された場所に行くだけと考えるような女性ではいけない。何よりもそれによりお金を稼ぐと思い懸命に頑張る女性でなければならない。

 すごいな、今時の企業では社訓みたいな抽象的なことを唱えることはしても、仕事の意味何のためにその仕事をするのか、意識付けして教え込む企業は少ない。

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| 古本読書日記 | 05:57 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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百田尚樹 有本香  「『日本国紀』の天皇論」(産経セレクト)

 「日本国紀」を書いた、百田、有本が天皇とは何かを語り合った対談集。

聖徳太子が、隋の楊帝に対し手紙を書いたとき

「日出ずる処の天子、書を日没するの天子に致す」と書き送る。巷間いわれているところでは、日没するとは何事だと楊帝が怒り狂ったということになっているが、楊帝はそこに怒ったのではなく、日出ずる処の天子の天子という部分に怒ったのだそうだ。

 天子というのは、世界にただ一人、楊帝しかありえない。属国の国主は王というべき。つまり、天子より王は位が低いのである。日本を支配しているのは王。だから九州志賀島から発見された金印には「漢委奴国王」と刻印されている。

 聖徳太子は、楊帝の怒りに弱るが、隋の属国では無いので「王」は使えない。そこで、日本の支配者のことを天皇と呼ぶことに決める。ここから天皇という呼称が決まる。日本書紀に書かれているそうだ。

 日本の天皇は明治時代から「君臨すれども親裁せず」が原則。親裁というのは、裁可、決定しないということ。

 だから、戦後になるまで、重要な局面では御前会議がしばしば行われたが、その会議では、軍部や閣僚が決めたことを、黙って聞くだけで、自らの意見は言えない。

 1945年8月10日午前0時10分より、ポツダム宣言を受諾するか否かの御前会議が開催された。この時、首相以下政府大臣と、軍部が、受諾と拒否に真二つにわれ、3人対3人となった。午前2時を過ぎても、結論がでず、鈴木首相は困り果て、それまで一言も発しない天皇に対し
 「このままでは決まらないので、天皇の思し召しを賜り、我々の結論としましょう」と提案する。

 天皇は「受諾しましょう。」と言う。

これは大変な決断。それまで日本はポツダム宣言は、戦後も国体護持がなされることを条件に受け入れを決め、戦勝国に伝えていたのだが、戦勝国がこの条件を受け入れない。

 ということは、最も大きな戦争犯罪人にされている天皇は当然死刑。そして、日本は戦勝国に占領される可能性が生ずる。

 天皇は自らが殺されても、国民を護ることを選んだのだ。

天皇は、大戦にも反対だったが、御前会議で大戦参戦の結論が奏上されても、意見を言うことができなかった。

 私は子供の頃、天皇のせいで、大量の日本人が戦死や爆死し、天皇は極悪人と教わった。
しかし、その後、この事実に接し、天皇に対するイメージが一新した。

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家田荘子   「誘惑」(徳間文庫)

 家田さんは、アブノーマルな男女関係、我々からみたら、とんでもない非倫理的な世界に飛び込み、その異常な世界をルポするノンフィクション作家である。

 この作品は、家田さんにはめずらしノンフィクションではなく、小説となっている。
不思議なのは、異常と思われる世界が、家田さんの手にかかると、家田さんの描く世界が正常で、我々が暮らしている世界こそが異常のように思えてくる。

 この作品、高校生売春、援助交際、輪姦、シャブ、愛人関係が当たり前の世界として綴られ、欲望のおもむくままの乱れた関係が当たり前のようにつづられる。そして、ごくまれに、普通の生活が顔をみせる。

銀行の支店長をしている主人公真夏の父親が、部下の男性行員2人を連れて、帰宅する。

 父親が帰宅する時、乗って帰ってきた車が、部下行員石橋が運転するベンツ。

その時、真夏の弟の真が父親に聞く。
 「でも、親父。何で部下が、ベンツに乗って、ウチはボロ家でボロ国産車なわけ?」

その時、真夏は心で叫ぶ。
「言えてまっ! だけど石橋さんって、お家がいいから、ウチと違って・・・。」

その時父親が咳払いをひとつして言う。
「お前たち二人を私立にいかせなきゃ、とっくに家を建て直して、輸入車に乗ってる。その上一人は、服代やら遊び代やら、せびりにくるし、一人は、本代、CD代・・・・ゆすり屋とたかり屋と同居してるようなもんだ。」

 輪姦パーティに溺れていて、主宰までしているヒロシが言う。
「体と体を結ぶのは、すっごく簡単なことなのに、どして二人の心を結ぶとなると、こんなに難しいのかなぁ・・・・」

 こんな部分がまれに登場すると、少し安心する。
 もしかすると、私のような老人が思い描く世界はすでに滅んで、異世界と思える世界が普通の世界になっているのかも知れない。

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家田荘子    「熟年婚活」(角川新書)

 老年の恋。それに、離婚したり、相方の死亡により、一人孤独の老人が、新たな相方をみつけるための婚活現場に潜入して、取材を行ったルポルタージュ。

 家田さんは、老人の婚活、恋愛の実態を取材してそれを本にしたいと思い、その企画を持って、たくさんの出版社をまわったが、殆どの出版社が

「高齢者の恋愛なんて気持ち悪い」「自分の親父が、まだセックスしているとは考えたくない」「今は知りたくない」「別に高齢者の結婚や恋愛なんて、誰も興味を持たないし・・・」
などと言われて出版社に拒絶された。

 しかし今や65歳以上の人口比は28.9%。このうち一人暮らし世帯は何と592万人もいる。
 いくら高齢でも、こうなると伴侶を求める人達が多くでてくる。今や、高齢者の婚活はちょっとしたブームになっている。

 この作品でも、婚活の実態が描かれているが、内容は想像でき、平凡。むしろ驚くのは養護老人ホーム内での、恋愛。この実態はすごかった。
 私の嫁さんも、老人用施設で介護の仕事をしているが、施設内での恋愛は老人といえども、当たり前のように日々の風景として存在しているそうだ。

 この作品に登場する、老人ホームでの、青木はるさん82歳と田中孝作さん76歳。恋愛を経て、結婚に至る。

 こんなことを書くと、不謹慎とは思うが、はるさんに孝作さんが、もう自分達は結婚したのだからと毎週、セックスを要求してくる。孝作さんのことを大好きだから、我慢しているが、痛くてしかたないと嘆く。

 笹倉さんと幸子さんは何と90歳同士のカップル。笹倉さんが、毎晩夜這いで幸子さんの部屋に通う。幸子さんは下着を脱いで、笹倉さんを毎夜待っているそうだ。

90歳になってもだ。
 すごい。老人ホームでの恋の実態は。

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家田荘子   「愛していればいいの?」(集英社文庫)

)この本は、今から25年前に出版された。当時は、書店にたくさんの、恋愛相談、恋愛HOW TOものの作品が溢れかえっていた。今は、あんなにたくさん並んでいた、この種の本は、気を付けて探せばあるかもしれないが、殆ど目につかなくなった。

 この本は、女性のための恋愛HOW TOもの。「私を抱いてキスをして」「極道の妻たち」
など当時ベストセラー作品を連発していたノンフィクション作家の家田荘子が、こんな作品を書いていたのだと驚いて手にとってみた。

 今は、結婚をしないで独身のまま人生を送る人が増加した。しかし、この作品が出版された当時は、結婚することは当たり前の時代だった。

 偏見かもしれないが、女性は意識を持って、独身を貫く人が多いように思うのだが、男性は恋も結婚もできないまま、生涯を終える人が存在するような時代になった。 

この本が出版された時代、女性は結婚することが当然の時代だった。当時、男性の独身の人には、前述したように、全く女性に振り向いてもらえない人と、女性から憧れられ、恋人や遊ぶための女性を複数持っていて、家庭を持とうとしない男達がいた。
この作品によると、結婚をしない男は次のような男として描かれている。

「表の顔と、服を脱いだ時の別の顔があって、かっこつけて表の顔を引きずるから、へんなことをしたら、彼女に怒られるかなと心配になって、結婚しないとか、野望があって、この先どうなるかわからない、だから結婚して妻子を抱えていく自信がないとか、また独身生活が長く、何でも自分でできるので、結婚は面倒くさいとか、独身生活に全く不自由を感じない。みんな、常に寝るためのガールフレンドはいるが、「子どもを産ませたい女はいない」とうそぶく男。

 そして、家田さんは、女性に全力で真正面からぶつかってみましょうとアドバイスする。だまっていても道は開けないのだから、勇気をもって告白しましょうと。

 女性からみるとこんな風に結婚に憧れる時代があったのか。とても信じられない。

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百田尚樹、有本香  「『日本国紀』の副読本」(産経セレクト)

 私は、今時の日本人では希有なのだが、新聞を東京新聞、朝日新聞、産経新聞と3紙を購読している。

 朝日新聞は際立った特徴がある。社説や天声人語では、あまり「日本」という言葉を使わない。日本は「この国」と表現する。何か今の日本を嫌悪しているのではと思ってしまうことがしばしば。

 村上春樹の作品は、もちろん殆どすべて読んできた。
しかし、その度に思うのだが、村上春樹は私とは全く違う世界に住んでいて同じ人間ではないように思えてしまう。

 会社に通っていた時代、まれにだけど、会社の仕事がいやになり、サボって、映画を観に行った。映画が終わって、映画館をでる。その時、見上げる空。午後の街のたたずまい。それをみて、皆は会社で今働いているのだとそれを思うと、普通の人々とは違った世界に迷いこんだ思いがこみあがってくる。村上春樹は、こんな世界にいて、その世界で作品を紡いでいるのではと思った。

 村上の小説を読むと、「あれ?この人どこ国の人間?」「どうしたら、こんな考え方ができる人間が生まれるの?」「この主人公は、どんな両親の元で、どういう育てられかたをしたらこんなふうになるの?」と、この本でも指摘しているように、思ってしまう。

 しかし村上は言うだろう。「これは、コスモポリタン」。村上は世界全体を想定して物語を創るから、私のような土着日本人には、中々作品を読んでも自らを投影できない。

 私は、浅田次郎や百田尚樹のような土着の日本人を描いた作品を好む。
百田と有本は、年表だけが描かれ、まさに朝日新聞のような「この国」の歴史本ではなく「日本」の歴史本「日本国紀」を一年かけて紡ぎだす。

 この「日本国紀」は全く今までにありえなかった、ネットから評判を呼び、なんと発売前の予約段階でアマゾン販売数トップになる。それほど多くの人が、「日本」の「日本人」が確かに見える、歴史書を待ち望んでいたのだ。そして、発売日にはすでに第3版になっていた。もちろん100万冊以上の販売を記録している。

 今や、オールドメディアの時代から、ネットの時代に変わったことを実証した作品だった。

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有馬頼義   「四万人の目撃者」(双葉文庫)  

 江戸川乱歩が創設した日本推理作家協会賞受賞作品。

プロ野球セネタースの4番打者新海清が長打を放ち、3塁ベース手前で突如倒れる。そのまま病院にかつぎこまれる。しかし、病院に到着した時にはすでに死んでいた。球団は死んだ時間をずらして欲しいと医師に頼み込み、病院で狭心症で死亡と死亡診断書を発行する。

 この死に違和感を持った、高山検事と、検事の指示で動く笛木刑事が、孤独な捜査を開始する。まず、遺族に依頼して、遺体の解剖を実施する。その結果、新海の血液の中に不自然な痕跡が発見された。

 自然死ゆえに、事件捜査にはならないので、高山検事、笛木刑事は秘密裡の捜査。それだけに捜査は困難を極め、大きな壁にぶつかりながら、事件の謎、トリックを暴いてゆく。

 特に、事件当時から遡り、6か月間の不審死未解決事件を調査すると、面白いことに、事件発生翌日の試合では死んだ新海は、必ずノーヒットで三振も複数喫している。

 野球選手というのは、手首にかすり傷を負い、野球をすることには障害が無い傷なのだが、バッターボックスでバットを振る時、どうしても小さな傷が気になって、バットを振るタイミングがずれ、力一杯のスィングができない。

 こんなことから、犯行方法やトリックが徐々に明らかになってゆく。

物語の途中で犯人は、殆どわかるが、決定的証拠がでてこない。
 そして、すべてが最後に解明され、犯人はつかまる。トリックの解明過程に緊張感があり面白かった。

 しかし、動機があやふや。戦争中の軍隊での生活の中で出来上がった人間関係に犯行動機があるようだが、それが何なのか最後までわからず、モヤモヤ感が残ってしまった。

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和田竜  「村上海賊の娘(四)」(新潮文庫)

 ここまで、リズムよく、進行していた物語のスピードが止まった。なにしろ、3巻の終盤から毛利村上海賊と織田方泉州海賊の戦いがこの4巻の殆ど終わりまでの300ページ以上を使い描かれる。これがしつこく、本当に長い。

 展開は、殆ど主人公村上女性海賊景の活躍により、泉州海賊が負けそうになる。ここで、かの泉州海賊の大怪物、当主眞鍋七五三兵衛が登場して、戦況をひっくり返す。この繰り返しが延々と続く。
もう完全に飽きがくる。

 そして最後、景と七五三兵衛の対決。そこでの七五三兵衛の妖怪、怪物ぶりがすごい。

「景が刀を叩き折られたとき、夢中で放った斬撃は、船の揺れで七五三兵衛が思わず泳がせていた左腕に、首を断ち切って達していた。
『がっ』
七五三兵衛は、首と手首両方から、一挙の血を噴き出させた。
しかし、大男の桁外れた精根は、まだ尽きてはいなかった。それどころか、この期に及んでも一向に死ぬつもりがなく、
『義清っ(泉州海賊の船頭(かしら)』)

七五三兵衛、甲板の上にどしんと倒れる。ここで初めて七五三兵衛は「俺は死ぬのか。」と声を上げる。それと同時に景は
「勝った。」とつぶやく。

そして、10万石のお米は、泉州から、大阪石山本願寺の一向宗門徒に届けられる。

ここで、びっくりして目が覚める。ということは、毛利村上海賊は、織田信長を負かしていたことになる。

 あの無敵の信長を村上海賊が負かした。これはフィクションではないかと調べてみると、確かに村上海賊が信長を負かしたのは事実だった。

 すごい。村上海賊そして女性海賊景!こんな知らない歴史があったとは。

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家田荘子    「リスキー ラブ」(青春出版社)

 この本は1996年出版の本。
当時、私が住んでいた地方の都市の郊外に、イタリア人がやっているイタリアン レストランがあった。

 この経営者のイタリアン、60代半ばの初老の爺さん。何でわざわざ、日本にまでやってきてイタリアン レストランをやるんだろうと疑問に思って聞くと、イタリア人というだけで、日本の若い女性が虜になるからととんでもないことを言う。

 事実、この時、女子大生3人と初老のくせに、いれかわりたちかわり、ベッドをともにしていると自慢していた。

 そういえば当時、日本の女子大生がツアーでイタリアに行き、全員がイタリアでレイプされたという事件が起きたことを思い出す。

 また、山田詠美が「ベッドタイムアイズ」で黒人との恋を描いて文壇デビューして、この作品が、日本に衝撃を与え大ベストセラーになった。

 当時は、日本人は性に淡泊になったと言われだしたころ。ところが、街を行くかっこいい女性たちの横には、日本人男性では無く、黒人男性がいることがトレンディになった。

 この作品の作者の家田さんも、その一人。お決まりのコース、黒人との恋にはまり、結婚、離婚、再婚、出産、離婚を経験している。

 そんな家田さんが、黒人男性と付き合いをしている女性たちにインタビューをして実情を描いたのがこの作品。

 例えば、この作品に登場する弘美。高校一年の時に、横須賀米軍基地のAクラブに行き、ここで黒人たちとの遊びにはまる。遊びも恋も黒人以外は考えられない。それで、彼女はこう答える。

 日本人の男「お父さん、弟、親戚、親族みたいなもので、恋人対象など考えられない」一方黒人は、「何かを勉強するとか、仕事をするとか、前向きに生きるためのエネルギー源。そして、自分を一番楽しませてくれる人物。」とまで言う。

 しかし、どうみても、相手の黒人男性は、遊びで、弘美以外にもたくさんの日本人女性の遊び友達を持っている。そして、お決まりの妊娠にいたる。黒人たちは結婚などしてくれるのはまれ。それで堕胎か出産を繰り返す。捨てられた女性たちは、シングルマザーになって長い苦しい生活がその後続く。

 今でも、同じような経験を積む女性たちは多くいるように思う。だけど今はこんな作品をだしたら、人種差別になる。つまり、世間によく見られる当たり前の現象になってしまったのだ。

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和田竜   「村上海賊の娘(三)」(新潮文庫)

織田信長の軍勢と大阪石山本願寺の戦い、織田方の怒涛のような攻勢に鈴木孫市率いる紀州雑賀党の一千の銃口が一斉に火を噴き、織田方の前進を食い止める。

 ここで、この戦いに信長まで参戦して、形勢は織田方優位となる。しかし、総大将の原田直政が討ち死にし、織田方に、多くの死者が発生、この状況に織田信長は、戦いはやめて、元のように、兵糧攻めに切り替える。

 それで、能島村上の主人公の娘景は百姓の留吉、源爺を残して、能島に帰る。
一方毛利は、織田信長と断交を決断。石山本願寺からの要請の10万石の米を本願寺に届けることを決める。

 しかし10万石もの米を送るには、1000艘の船、米輸送のための船700艘、大阪泉州海賊との戦いのため兵士輸送のために300艘の船が必要となる。これを実現するためには、村上海賊の力が必要となる。

 景の父親能島村上の領主村上武吉は、変わらず、毛利に協力する条件として、景を毛利の警固衆の長、児玉就英が嫁にもらうことをしつこく言う。就英は強く拒否していたのだが、毛利の重臣、乃美宗勝、小早川隆景の説得により、景を嫁にもらうことを承諾する。

 それでいよいよ千艘もの大船団が、大阪泉州に向け出発する。
その船団が、明石海峡を抜ける。当然、迎え撃つ泉州海賊にもその姿が見える。この船団が驚くことに淡路島周囲にとどまり、いっこうに泉州海賊に向かって来ない。

 一方船団に乗ってやってきた景は、残してきた留吉、源爺の消息が気になり、早く泉州沖に行くよう、船団総大将乃美宗勝をせっつく。

 しかし毛利は、信長を敵にして戦うことになれば、信長には勝てず滅ぼされる。越後の上杉謙信が参戦して、京の北より攻め、毛利が南より攻め、織田を挟み撃ちにすれば勝てる。そのためには、上杉謙信の織田攻めの決断を待つしかないと毛利は決める。

 しかし、上杉謙信は決断しない。景はいつまで待つのか宗勝に迫る。3か月このまま待つと宗勝は答える。

 そして3か月が経過する。すると見守っていた泉州海賊は驚く。大船団が舳先を西に向けて戻りだす。しかし、その船団のうち50艘は、淡路島を南下。その船団は、何としても留吉、源爺を救わねばならないと、景が率いて、泉州の拠点港、堺にむかって走る。

 更に、その景の船に向かい、舳先を東に向け、西に向かっていた大船団が泉州にむかって突進してくる。

 これより、織田方と、毛利村上海賊との戦いの火ぶたがきっておとされる。

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小林よしのり、有本香  「はじめての支那論」(幻冬舎新書)

 この本が出版されたのは、2011年。かってあった民進党が、自民党にかわって政権を取った時代。中国船が日本領海侵入して船長を拿捕、即釈放された事件や、東日本大震災が発生した時代。

 作品は、小林よしのり、有本香が対談形式で中国について語る。
小林、有本ともに、この対談で何を話すか、綿密に準備しての対談では無く、思いつきでしゃべりあう内容になっており、中味は薄く、正直、こんな内容を本にしてはいけないと感じた作品だった。

 ただ一点印象に残った会話があった。
アフリカ、ザンビアでの鉱山から銅を運び出すタンザン鉄道の建設。中国の支援事業として行われる。

 通常、日本企業や他の国の企業が中国に進出する場合、中国労働者の人件費が安価であることに、メリットを感じ進出する。ということは、会社の主要幹部は進出企業が存在する国から派遣されるが、他すべての労働者は中国の人達で賄われる。。

 ところが、中国が新興国に進出する場合、ザンビアの場合もそうなのだが、労働者も現地人を採用するのでなく、中国人を連れて進出する。ザンビアの場合、ひとつの田舎の中国の村が移住で消失したそうだ。

 もちろん、ザンビアで支払われる賃金は、労働者がザンビアで生計がなりたてばよいのだから、ザンビア水準で支払われる。危険な仕事ではわずかながらザンブア人を雇うが、この賃金は未払いで、現地と軋轢が生じる。

 当然、連れて行かれた中国人労働者は殆ど中国に戻ることはなく、そのまま中国人社会を造る。世界にたくさん存在する中華村、中華街だ。

 できあがった中華街は、その国の法律ではなく、中国本国の文化、風習法律に従い生活が行われる。中国の飛び地が世界に出来上がる。

 各国の中国大使館には、住んでいる国の秘密を持ち込むと報酬を支払う部門があるそうだ。最近では、中国の警察署までできているという。

 ひたひたと中国が世界を侵食、そして拡大が進む。

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和田竜  「村上海賊の娘(二)」(新潮文庫)

 能島村上海賊の一人娘景は、一向宗の信徒百姓の源爺、留吉とともに大阪湊まで、小早(小船)でやってくる。源爺と留吉は一向宗の総本山石山本願寺を攻撃する織田信長に戦うために、やってきたのだが、一方の景は違う。瀬戸内では醜女、男勝りの大女として、誰も寄り付かないことに悲観して、傷心を癒すために、大阪難波までやってきている。

 当然、大阪難波の湊の玄関口、泉州湊にも、湊をとりしきる、海賊がいる。その海賊の中の盟主が眞鍋海賊。

 景、留吉、源爺一行は、その泉州海賊の大歓迎を受ける。そして驚くことに、泉州海賊の男達に景は、可愛くて魅力的な女性として、入れ代わり立ち代わりもてはやされる。瀬戸内の男どもは女性を見る目が無い、やはり大阪の男達は、違うと景はご満悦状態になる。

 そして大酒を飲んで、酩酊状態で宿泊所である眞鍋曲輪の部屋で倒れ込んで眠る。

その、寝相がすごい。
 「その寝相がまたきたない。夏のこととて夜具などとうに撥ね退け、付け根が見えるほど股をおっぴろげている。両手は耳の横まで上げており、ちょうど潰れたカエルのごとき格好で高いびきをかいていた。」

 ここに庭の草むらに忍び込んで、夜這いをかけていた泉州海賊が何と3人もいた。
どうなる、大ピンチ景。しかしここに眞鍋海賊の若き当主眞鍋七五三兵衛が登場して、危うく3人の海賊を追い払い危機を脱する。

 この七五三兵衛がすごい。銛を振り回す。その銛が地面や土塁に当たると、大地は轟音とともに、震える。敵の兵は、束ねて、首が飛び、体が切断され、大量の血しぶきが舞い上がる。

 こういうアニメのような無敵の大怪物が登場して、活躍するのが、読者にはたまらない。

さて、肝心の、一向宗石山本願寺と信長との戦い。どれほど景が活躍するかと読み進むが、戦いでの主役は景ではなく、紀州雑賀衆を率いる首領、鈴木孫市が主役。

 雑賀衆は日本で最も早く、ポルトガルから伝来した鉄砲を取り入れた戦団。そして鉄砲を使った高等な戦術を開発したり、製造も日本で初めて行っている。

 強烈な織田鉄砲隊を、次々打ち破る雑賀衆孫市軍団の見事な戦法が本当に読んでいて通快だった。

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| 古本読書日記 | 07:24 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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和田竜   「村上海賊の娘一」(新潮文庫)

 和田竜の大長編、何と4巻まである大ベストセラー、本屋大賞を受賞した本書をやっと今頃手にとってみた。

 今の広島、安芸の国から四国伊予の国にかけて、瀬戸内海を南北にたくさんの島々が縦断するように点在している。その島々の狭い海峡を通過する船から通過料を徴収して勢力を拡大してきたのが村上海賊。

 この村上海賊には、安芸の国に近い毛利の支配下にある村上因島、伊予河野家の支配下にある、村上来島、2つの村上海賊と、全く武将の支配下になく独立していて、しかも海賊の中で、最も力の強い村上能島の3系統の海賊があった。

 物語の時代は、織田信長の支配が強くなり、信長が京に上った時代。信長は、理由は定かではないが、一向宗の総本山、今の大阪城の所にあった石山本願寺の場所に自らの居城が欲しくて、石山本願寺に退去するよう命じていたのだが、本願寺が拒否。本願寺と信長が戦っていた時代である。

 織田の兵糧攻めにあい、食料が枯渇寸前の本願寺が、西国の雄、毛利家に助けを求めてくる。それが、10万石の米、途方もない量である。

 毛利の能力では、こんな量の米を難波、大阪まで運搬できない。それができるのは村上海賊だけということで、村上海賊に運搬の要請がある。

 村上海賊の支配者である、能島村上の首領、村上武吉には3人の子供があった。長男元吉、次男影親、その兄弟の間に1人娘景があった。この娘景は、歴史史料一か所に登場するだけ。本当に娘がい存在していたのか確たる証拠が無い。
 この作品は、そんな景の幻の存在を和田のたくましい想像力で膨らませた作品である。

 この景がすごい女性。当時20歳になるが、こんな女性として描写される。
 腕っぷしが強い大女で、顔立ちも男受けしない醜女、海賊の間ではブスとして通っている。

  毛利の米運びの要請に、頭領で景の父親である村上武吉が受諾するための条件をだす。

 それは毛利の警固の長、児玉就英が、景を嫁に迎えること。景は男前の就英を見て、嫁になりたいと思うのだが、就英は景の大女、醜女を見て景の嫁入りを拒否。

 景は、瀬戸内の男どもは女性を見る目が無いとしょげるとともに、怒り狂い、一向宗門徒である、百姓の源爺と留吉とともに、大阪難波に向け、小早という小船で旅立つ。ここまでが一巻。

 こんな破壊的な大女、景が、どんな活躍をするか、和田の面白い設定に、わくわく興奮してしまう。評判通りの面白さである。

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| 古本読書日記 | 06:55 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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畠中恵    「いっちばん」(新潮文庫)

 「しゃばげ」シリーズ第7弾。いつものように5作品が収録されている。最後に収録されている「ひなのちよがみ」が印象に残った。

 病弱でほぼ寝たきりの主人公、廻船問屋兼薬種問屋長崎屋の後継者一太郎の所に、紅白粉問屋一色屋のお嬢さんお雛が相談に訪れる。

 このお雛、普段は白壁のように、顔中白粉を塗りたくり、素顔がわからない。しかし、一太郎を訪ねた時は、薄化粧しかしていなくて、その顔は可愛らしくチャーミングだった。

 一色屋のお雛の両親は他界していて、祖父母と一緒に雛は暮らしている。ところが一色屋は大火のもらい火で家が焼失。祖父母も高齢のため、今はお雛が店を切り盛りしている。家を消失しているため、販売する商品が少なく、年末の支払いが不可能な状態。何とか商売の糧を見つけなければならない。

 そこでお雛は、千代紙で可愛い小袋を作り、その中に紅白粉を入れて販売することを考える。しかし、千代紙を仕入れる問屋を知らない。そこで一太郎に紙問屋を紹介してもらいにやってきたのである。

 一太郎は紙問屋の志乃屋を紹介。そして、紙袋入れた紅白粉は順調に販売を伸ばす。

実は、お雛には木材問屋の息子の正三郎という許嫁があった。

 ところが紹介した紙問屋志乃屋には秀次郎という息子がいる。秀次郎は、お雛をみて、お雛を大好きになり、お雛にしつこく言い寄る。そして秀次郎は、千代紙で小袋を作り、売り出す。小袋は、何でも小物を詰めることができ、人気商品となり、お雛の商品が売れなくなる。

 そこで、一太郎は一計をはかる。秀次郎は白粉を塗りたくったお雛を知らない。秀次郎を一太郎がよびつける。そこには白粉を塗りたくった3人がいた。その3人のうち、どの人がお雛か当たったら、正三郎はお雛から手を引き、お雛は秀次郎と結婚できるという賭けにでる。秀次郎は懸命に一人一人を吟味して、この3人のなかにお雛はいないと言う。

 さて、その結論は?

もし、秀次郎の答えが正解しても、秀次郎は白壁のお雛を生涯愛していけるだろうか。それは難しいのではと思った。

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| 古本読書日記 | 06:58 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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