平野啓一郎 「マチネの終わりに」(文春文庫)
ど田舎の村からでてきて、初めて街らしい街の高校に通った。恋などまったく知らなかったころ、坊主頭の時代の頃。
初めて、恋愛映画をみて大きな衝撃を受けた。エリア カザン監督、ナタリー ウッド主演の「草原の輝き」だった。
高校3年生だった、バッドとディーンは愛し合い、将来結婚の約束をしていた。しかしディーンの母親は、バッドの父親が暴君で、素行がよくないバッドを嫌い結婚に猛反対をしていて、完全に恋愛、結婚は暗礁に乗り上げていた。そして、それを悲観したディーンは「草原の輝き」というワーズワースの詩の授業中に校舎を飛び出し、近くの川に飛び込み自殺をはかる。しかし、ディーンはバッドにより救われ、一命をとりとめるが、この時の衝撃で、2人は別れさせられ、別の道を歩む。そして長い年月を経て、ディーンはバッドがどうしているか見に行く。そして、子供、愛する妻とともに幸せに暮らしている、バッドを知る。
悲しい映画だった。これが恋愛。そしてむくわれない恋愛の悲劇を生まれて初めて知った。
紹介の作品、天才ギタリスト蒔野と国際ジャーナリストの洋子がもう40歳を互いにこえていたが、パリで知り合い、恋に墜ち、結婚の約束をする。
しかし、この時、洋子にはリチャードという学者の婚約者がいた。
だから、ものすごい抵抗にあったが、洋子はリチャードに新しい恋人ができたから別れたいと宣言し、何とか別れた。
また、詳細は省くが、蒔野のマネージャーをしている早苗は、一方的に蒔野に恋こがれていた。洋子が結婚の準備に日本に帰国した時、偶然に蒔野の携帯を手に入れた早苗が、蒔野になりすまし、メールを洋子に送る。
「もう、あなたとは別れる。連絡もしないでください。」と。
そして、この後、洋子はリチャードと、蒔野は早苗と結婚。どちらも、子供に恵まれる。
しかし、この結婚には相当無理があった。
一旦は別れると決めたのに、復縁して結婚した後のわだかまり。それから、謀略を用いて結婚した早苗。この謀略したことの圧迫に耐えられるか。
物語は、この仮面のような結婚後の夫婦の関係が壊れてゆく過程をじっくり、丁寧に描く。その表現が見事。まさに文学だった。最後の場面も鮮やかで印象深い。
高校時代をなつかしく思い出した。
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| 古本読書日記 | 06:21 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑