黒木亮 「国家とハイエナ」(下)(幻冬舎文庫)
ハイエナファンドが最貧多重債務国から、金をむしりとる方法は債務国相手に裁判を起こし、100%勝訴して、それを背景に金を得る。この物語でも、多くの債権者が少しでも金を回収できれば御の字として、債務国と交渉によりお金を幾ばくか回収するが、ハイエナファンドは一切の交渉は拒否して解決は裁判によってなされる。
実は、国際慣習法で、国家は他国の裁判に服することはないと決められている。これはソブリン・イミュニティと言われる慣習法である。これで、どうしてハイエナ・ファンドが存在する国で、裁判ができるのか不思議に思うのだが、債権者は債務国と売買契約や投資受入れ契約を行うときにそっと、このソブリン・イミュニティ条項を削除しておくのだそうだ。
これに従い、ハイエナ・ファンドはイギリスやアメリカで裁判を起こす。そして絶対勝訴する。必ず勝訴するといっても、債務国が要求通り、債務を支払えないこともある。その場合、ハイエナ・ファンドは債務国の対外資産を事前に調査して、差し押さえる。
この作品でも、航行中のタンカーと石油が途中の寄港地で差し押さえられたり、飛行中の飛行機が途中の空港で差し押さえられ、その先に進めなくなったことが起きている。
どうして、国が最貧国でお金が無いのに、巨額な投資を受け入れたり、物品を輸入したりするのだろうか。それは権力者は、全く国民のことなど眼中になく、いかに売買や投資の間に入り金をくすねるかしか関心が無いからである。
権力者にとっては、国民はハエや蚊程度の存在。世界ではハエや蚊が夥しい数、存在する。
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| 古本読書日記 | 06:52 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑