黒木亮 「リスクは金なり」(講談社文庫)
本作品は、黒木が国際金融マンとして活躍していたころを描いたエッセイ集。
黒木は、高校の時陸上競技を始め、早稲田大学に入り、また走りたくなり、陸上部に入部する。そしてびっくりしたが、3年、4年の時、箱根駅伝に出場している。そして、4年の時では3区を走り、2区を走った瀬古よりバトンを渡される。首位を走っていたのだから、当然カメラは黒木亮を真正面に大きく映す。大歓声の中を走る。箱根駅伝でトップを走ることはすごいことだと感動する。
黒木は知的能力、体力とともに、人並み以上に優れていて、かつ将来に対する生き方を持ち、それに向かって懸命な努力をするとても凡人にはできない生き方をする。
真山の作品は、息をもつかせず、緊張した場面が続き、興奮が絶えることはないが、黒木の作品は、緊張する場面の間に、普段の登場人物の暮らしや食事、街の風景が見事な描写でさしはさまれる。文章も練れていて、描写は、文学的香りがふんだんにして、素晴らしい。
よくこんな見事な描写が描けるなと思っていたら、このエッセイにその訳が書かれていた。
それは、30代半ばにであった開高健の「輝ける闇」を再読した時。
「30代半ばなって読み返し、眩暈がするような衝撃を覚えた。一つ一つの言葉が紙面から立ち上がり、ナイフのように切りつけてきた。それから開高さんの本を読み漁った。開高さんの作品は、内容とは別に、文章そのものが途轍もないほど魅力を秘めている。言い回しや言葉の使い方に新鮮な驚きが溢れている。小説に限らず、エッセイの躍動感も素晴らしい。」
なるほど開高健か。私も大好きな作家。開高健がベースにあるなら、黒木亮は間違いなく素晴らしい小説を生み続けるだろう。
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| 古本読書日記 | 06:04 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑