吉田修一 「熱帯魚」(文春文庫)
本のタイトルになっている「熱帯魚」も大工の大輔が変わっていておかしく書かれ面白かったが、最後に収録されている「突風」を紹介したい。
ひさしぶりに少し長い休暇のとれた主人公の新田は、パーティー コーディネーターとの約束を断って、一人で愛車にのり、千葉房総に向かう。
そこで目にとまった民宿にゆき、雇ってもらえないか主人に尋ねる。主人はすぐにでも働いてほしいと採用し、泊まりはバイト専用の離れの家を用意する。
そして、ベッドメイキングなど、即働く。とても、不思議なことだが、民宿は夫婦でやっているにも拘わらず、奥さんは民宿の2階にいて、何もしない。だから新田が、客用の食事を作ったり、片付けや掃除などをやらされる。
たまに、奥さんが、主人と新田のためにまかないの食事を作ってくれる。すると高級牛肉のすきやきとなる。主人がしかりつける。使用人が客より高価な飯など食ってはいけないと。
奥さんは、この仕事がきらいという。毎日知らない人に会い、サービスしたり会話がいやと。主人ともうまく行ってないと不満ばかり。
それである晩、新田が奥さんを誘う。「東京まで行きましょう。」
奥さんは待っていましたとばかりに、助手席に乗ってくる。東京までドライブする間、奥さんは夫への不満ばかりを口にする。運転しながら、新田は奥さんの手を握ったり、肩を抱いたりする。
奥さんも新田にしな垂れかかる。
車は新宿までやってくる。さあと奥さんがその次を期待していた時に、新田が言う。
「今は夜11時。まだ房総への最終電車は間に合う。さあ車を降りて帰りな。」と。
奥さんはがっくりきて新宿駅にむかう。
最近は、こういう場合、いつも男が突き放され、どつぼにはまる話ばかり。
すこしこの作品で、溜飲をさげた。
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| 古本読書日記 | 05:54 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑