多和田葉子 「地球にちりばめられて」(講談社文庫)
そしてどうしてかわからないが、祖国日本は消滅してこの世界には無い。
そこでHIRUKOはパンスカという新しい言葉を開発する。パンスカはスカンジナビア諸国のどこでも通じる言葉だ。
言葉は、表現することから始まる。その後に文字ができる。
「ハマチ」は「ハウマッチ」、「マッチャ」は「マッチョ」、「タコ」の複数形は「タコス」と言葉をつないで覚えていったり、新しく作る。こうした言語を物にするとネイティブかどうかなんて意味をなさなくなる。
物語は、言語とは何かを探して、HIRUKO、クヌート、アカッシュ、ノラ、ナヌーク、SUSANOU6人が旅にでる。
現在は地球上は多くの国によって区分けされている。そして、国により主に居住している民族が異なる場合が多い。さらに使用する文字も異なることもしばしばある。
しかも、ネイティブな人種の国に多くの移民がはいり、差別や問題を引き起こしている。移民の流入を止めたり、排斥をしようとしている国もある。しかし、多くの国が移民を受け入れないと労働力が不足して国家が持たなくなりつつある。
遠く離れた人々とも、ネットによって国境を楽に超えて、会話ができる世界になった。地球温暖化対策のように、地球という観点から解決しなければならない課題が増えた。もはや、国単位で課題に対処する時代はおわりつつある。むしろ国の存在が、地球の課題解決に邪魔になる存在になりつつある。
言葉は、地球にとって壁にもなるし、繋がりにもなる。
この物語を読むと、HIRUKOがしたように、新しい方法で、世界がつながる言語が今最も必要なことだと思えてくる。
そう、最後失語症になってしまっているSUSANOUに対して通用する表現、言葉が。
私たちは日本人である前に、地球人だ。移民もネイティブもあるものか。
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| 古本読書日記 | 05:56 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑