村山仁志 「午前0時のラジオ局」(PHP文芸文庫)
そして、このラジオ局の鴨川が担当する番組ディレクター蓮池陽一が不思議なディレクター。ラジオ一筋30年間ディレクターをしている。必要があれば、昼間でも真夜中でも登場してくる。
まるで局に寝泊まりしているのではないかという状態。
鴨川の担当する番組は午前0時から始まる「ミッドナイト☆レディオステーション」そしてアシスタントの選考オーディションを夜中の3時に行うと蓮池が言う。
そのオーディションで選ばれたのが山野佳澄。中学をでて、高校には行かず、パン工場に勤めているという変わり種。このオーディションも不思議。7人が応募してきたが6人しかやってこず、6人で終了と思われていたのだが、アシスタントに選ばれたのは来ていなかったはずの番号7番の佳澄が選ばれる。すると来ていないはずの佳澄がどこからともなく現れる。
そして一回目の放送。その途中で蓮池より紙が差し入れられる。
八峰村で大雨が降っている。道路の崖崩れや、落雷停電や、孤立した集落のあることを緊急放送。落ち着いて避難するようによびかける。新しい情報を次々報道する。
すると八峰村の村長から電話がはいり、放送のおかげで、村の人は何のケガもなく無事避難できたと感謝が伝えられる。
番組が終わってディレクターの蓮池が言う。
「ラジオは確かにテレビより影響力が少ない。良くも悪くも一対一のメディアだからね。しかし、真っ暗のなか停電したときは、これほど頼れるメディアは無い。僕はラジオは心のライフラインだと思っている。」
この「心のライフライン」という言葉が輝いて迫ってくる。
この話にはびっくりする落ちがある。
実はその晩、大雨は八峰村にはまったく降っていなかった。但し10年前には集中豪雨は確かにあった。????
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