和田竜 「忍びの国」(新潮文庫)
伊賀は伊勢の南に接していたが、伊賀は変わった国だった。国主、藩主、国を治める殿様がいないのである。10万石ほどの小国なのだが、現在確認できているだけで小さな城が634もあり、未確認の城も含めれば868もある。これは地侍が小さな領地と農民を持を、そこから年貢米を取って、君臨している。だからいつも、地侍同士の争いが絶えない。年貢米だけでは食べて行けないので、農民は、幼少の時から、伝統の忍術訓練をして、忍者に育て上げられ、この忍者を傭兵として、他の領主に貸出、その際の傭兵料によって小さな領地を維持させている。この傭兵料は地侍と忍者に配分される。
伊賀の国として、何か決断しなければならない時は有力地主12人が集まり話し合いにより決める。
面白いのは、12評定衆会で信雄との戦いを決定したが、それを織田信雄に宣言するために、信雄の所へ行ったとき、大金を信雄から出され、織田の配下になるように要請されると、大金に目がくらみ、一瞬戦いをやめようとしたこと。
それに、織田信雄の伊賀との戦いの前線基地田丸城の構築に、伊賀の人達が携わる。織田から給金がでるから。その城が織田の伊賀攻めの拠点になる、にもかかわらずお金をもらえることが何よりも大事だから。
それから、決定的にユニークなのは、12評定衆が織田と戦うと決めても、農民忍者の多くがそれに従わない。忍者として傭兵になれば、給金がでるが、自らの国を守るために戦っても、何の給金もない。そんな無意味な戦いをするなら、伊賀の国を出ようとする。
しかし、最後は、彼らも国を守ろうと織田と戦う。
和田さんの、この戦いの忍術の溢れかえる描写が秀逸。
こんな心躍り、興奮する描写は和田さんしかできない。本当に面白い。
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| 古本読書日記 | 06:45 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑