会社時代の最後の頃、取引先が川崎駅東口をでてすぐの近代的ビルに事務所があり、よく訪問した。
久しぶりの川崎。駅も素晴らしい駅になり、駅の周りも開発され、さすが県庁所在地以外の都市では最大、風格がある近代都市に生まれ変わっていた。
川崎に初めて行ったのは40年前。田舎で知り合った女性を誘って、ファンだった西武ライオンズの試合を川崎球場に見に行った。
駅は小さく田舎駅風情。駅前はゴミゴミして汚く、球場に向かう道は、昼間からネオンがつけられ、呼び込みのお兄さんが、かけ声をあげる。けばけばしいお姉さんがいっぱい歩いている。飲み屋は昼間も商売している。ホームレスが立ちしょんをしている。目つきの悪いお兄さん喧嘩腰で闊歩している。
とんでもないところに来てしまった。女性は怖がってしがみついてくる。球場に行く道には、黙々と歩くおじさんがいっぱいいる。川崎球場の試合なんてお客がはいるはずないのに変だと思ったら、球場には行かずまだ先へ行く。そのさきに競輪場があるからだ。
新宿も実家に帰る列車の乗換駅だったので、たまに行った。本などで怖い街と紹介されていたが、怖い雰囲気は川崎の比では無かった。
川崎は日雇い、流れ者の街。底辺で暮らす人が多い。川崎では、生まれてから生涯を川崎で過ごす人が多いそうだ。中卒で社会にでる人が多く、進学してもせいぜい高校まで。実家を離れて大学まで行く人の割合が少ない。
中学をでると、貧乏な家をでて、不良になる。そして家には帰らない。やくざの最底辺とつながり、後輩や、別の仲間をカツアゲして金を奪い上納金としてヤクザに収める。
ラップの大スター、LIL MANこと鈴木大将。彼が人生を語る。
鈴木が生まれたとき、父親は19歳、母親は18歳。鈴木が4歳の時父親が逮捕され8年の刑をくらう。シングルマザーとなった母親は鈴木を連れて実家に行く。
ばあちゃんはアル中。小学4年のとき、ばあちゃんが言う「お前を殺して、わしも死ぬ」包丁をつきつけられ、鍋を盾にして必死に防ぐ。なんとかじいちゃんが帰ってきて殺されはしなかったが、じいちゃんはばあちゃんを何回もぶったたく。
小学6年のとき、家に怖いおじさんたちが入ってきて家の物を投げたり、ひっくりかえす。それは警察のガサいれ。母親は逮捕され帰ってこなくなった。
これは、極端かもしれないが、似たような環境の子供は多い。
子どもが答えられない質問は、「将来の夢は?」で答えられるのは「明日の予定は?」
しかし、こんな中から、鈴木のような世界的ラッパーやスケートボードのスケーターが生まれている。川崎には底知れぬエネルギーがある。
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