柚木麻子 「踊る彼女のシルエット」(双葉文庫)
この人、本当に優秀な人で、ドイツにしばらく駐在し、本社に復帰。やがて、会社で最も大きな子会社に重役で出向し、そこ定年をむかえた。重責を担う仕事にうちこむため、電車で30分ほどかけて実家から通っていたが、終電車までに仕事が終わらないと言って自費で会社の近くにマンションを借りるほどだった。
40歳のころ、結婚相談所に登録、そこで知り合った男性と結婚。理由はわからなかったが、わずか一月足らずで離婚してしまう。
私が会社に入ったころは、女性で大学まで行く人は少なく、だいたいが短大どまりだった。
で、会社に入ると、遅くとも24歳までに結婚するのが普通だった。女性社員は仕事が終わると、料理、お花、お茶と花嫁修業にでかけた。
今は男女平等社会、女性の結婚適齢期なるものは無いが、それでも35歳以上になって独身だと、社会から変わっている目で見られる。
この物語で、主人公佐知子の親友、実花。アイドルグループのマネージャーをしていたが、気が付くと35歳。とても、結婚願望などありそうもない女性なのだが、結婚相談所に登録して、自ら男性を捕まえプロポーズする。しかしいずれもうまく行かず、結婚には至らない。
女性は結婚して、子どもを出産し、育児、子育てを担い、家庭を支える安定した人生を送るのが一番幸せ。こんなことを書いたら、今時噴飯ものと大きな叱責を食らうこと間違いないのだが、しかし社会の空気はこれが女性のあるべき人生であるという無言の圧力は強い。
30歳半ばになると、結婚相談所に登録する女性が急に増えるそうだ。
物語の実花もそんな一人。私の部下だった女性も40歳で申し込みをしている。
食事の途中で元部下の女性にはしたないことを聞いた。40歳過ぎてから恋はしたの。そしたら、彼女最近まで長い間恋をしてました。と。
ふっと良かったなと思った。
物語でアイドルグループのメインだった女の子が、グループを解散。それでこれからどうするのと聞くと、「喫茶店をしたいな。」と言う。あーあどこかで現実を離れてまだ夢をみていたい元アイドルだなあと思ってしまった。
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| 古本読書日記 | 06:11 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑