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2021年02月 | ARCHIVE-SELECT | 2021年04月

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伊岡瞬  「いつか、虹の向こうへ」(角川文庫)

 この作品は、第二十五回横溝正史ミステリー大賞受賞作品およびテレビ東京賞受賞作品で、伊岡の処女作品である。テレビ東京賞というのは、テレビ東京でドラマ化されることが約束された作品。

 主人公尾木遼平は、元刑事なのだが、ある不祥事の濡れ衣を着せられ、警察を馘首され、今は派遣社員として、警備会社に勤めている。警察くずれ、ハードボイルド作品の主人公としては典型的な人物。さらに不祥事のせいで、妻子には離婚される。この尾木は父親の遺産で、一軒家に住んでいる。この一軒家に3人の居候がいる。

 一人は外国経済ノンフィクションの翻訳家石渡、休学中の大学生柳原、元主婦の村下恭子。
この三人は、それぞれに厳しい環境にあって、やむを得ず尾木の家に居候。そして3人とも変わった個性の持ち主。

特に村下恭子のたどってきた人生は辛く、哀しく強烈な哀切を伴っている。暴力団の裏稼業を巡っての抗争、それに振り回される薄幸の女性、暴力団と警察との癒着。定番がこれでもかというくらい登場する。

 その中で、これは見たことないという場面がでてきて目を見張った。

事件の鍵を握る女性が、どうしてもわからない。すると石渡が昔の行きつけのジャズクラブで探している女性が不法薬剤の運び役をしていたのを見た気がすると言う。

 そして、自分がその女性の素性と今どうしているかバーに行って調べてくると言う。
内容が違法、それゆえ相当な危険を覚悟せねばならない。
しかし、石渡は期待した以上の内容をクラブから仕入れてくる。
実はクラブのオーナーは同性愛者。石渡はオーナーに体を投げだすことで情報を得てきていた。

 ありそうな内容なのだが、この発想はなかなか出てこない。そしてこの場面が、ステレオタイプの作品に味わい深さをもたらしている。

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住野よる   「麦本三歩の好きなもの第一集」(幻冬舎文庫)

 主人公麦本三歩は20代の図書館員。好きなことがたくさんあり、毎日がいつも楽しい。そんな三歩の日常を描いた連作短編集。

 私自身の感性がおかしいからと思うのだが、どの物語も描いている世界が私の感性にフィットしなくて、わかりやすく表現されているにも拘わらず、少し読むのに苦戦した。

 三歩が学生時代の男友達だった人が、三歩の住まいの近くに引っ越してきた。近くに転勤になったからだそうだ。

 何人かで歓迎会をしたあと、彼から水族館に行こうと誘われる。当日彼の車にのり、水族館に向かう。早く着いたので、ちかくのモールにあるファミレスにはいる。三歩はカレーをたのみ、おいしいとがつがつ平らげる。彼は小さなショートケーキ、それも少し残して店員に片付けてもらう。何でも8割ダイエットをしていて2割は残すのだそうだ。

 水族館であちこちみてまわり最後にイルカショーを観賞する。そのとき、彼が三歩と腕を組んでいることに三歩が気が付く。驚いて三歩は学生時代ふざけてしていた空手チョップを当時の7-8倍の力で彼の頭にむかってふりおろす。彼は腰を崩して倒れる。
 水族館をでて公園のベンチに座る。彼が「ごめん」と謝る。それが三歩にはわからない。何で水族館に誘ってくれたのに彼は謝らねばならないのか。

 そしてもじもじ「あの実は・・・」と言う。

三歩はとうとうまだ経験したことのない愛の告白かと期待して身構える。すると彼は転勤したことは実は嘘で、先輩や会社が厳しく、ずっと悩み死のうと思っていたのだが、どうせ死ぬのなら、三歩と最後に会って楽しんで死のうと、水族館に誘ったと言う。

 そして、2人は別れた。
その後彼から同じような内容の謝罪メールがきた。
三歩は簡単に回答した
「次は最初に2割食べさせてくれ。」と。

彼が必至で計画した水族館めぐりと人生の苦悩の告白。しかし三歩には彼の8割ダイエットしか印象に残らなかった。このギャップが面白い。

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道尾秀介     「風神の手」(朝日文庫)

 風が吹けば桶屋が儲かるという小話がある。その筋道にはなんとなくなんだが、理屈が通っていて、そうなのかと思ってしまうところがある。

 この物語、35年前、護岸工事中に川の汚染を隠ぺいしたことが露見したために、工事を請け負っていた町の一番大きな中江間建設が倒産。しかし、その汚染は当時町の不良仲間3人が仕掛けた悪だくみによって引き起こされていた。その不良3人が35年後に「町を盛り上げる会」を町役場と協力してたちあげ、町興しとなる「ウミボタル観察会」を企画運営して、町一番の立役者になるまでを人々の回想や、事実を調べあげ綴った作品。

 この作品はSFでもないし、ミステリーでもない不思議な小説だ。
SFやミステリーはどうしてそうなったかを理論的に説明する。この物語は、そんなたがをすべて外している。

 まず世の中には嘘が溢れている。本当のことを言うより、ここは嘘をついていたほうが良いと判断して嘘をつく。また、嘘をつく性癖の人もいる。その嘘をついたために、とんでもないことが引き起こされる。しかし嘘をついている時には、その場しのぎでそんな困ったことを引き起こしてしまう実感はない。

 この嘘に、予想できない多くの偶然が重なりあう。
結果、不良の3人が、町の名士になる。35年もあれば、新たに生まれたり、亡くなってしまう人もある。それも案外嘘と偶然の重なりあいによって起こる。

 道尾のこの作品、ミステリータッチなのだが、中身は人々の常識に挑戦している。
それでいて、嘘と偶然により、起きてきたことの謎を丁寧に回収している。

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| 古本読書日記 | 06:08 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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松本清張  「黒い樹海」

何冊か前に読んだ文庫本のあとがきで、
清張ミステリーに旅情は不可欠だ。『ゼロの焦点』は能登半島、
『球形の荒野』は奈良、『黒い樹海』は浜松……
と紹介されていました。

ヒロインは若いOL。ドラマで菊川怜や北川景子が演じたらしい。
 姉が浜松で事故死したとき、同行者は身バレを恐れて逃げた。
 きっと、新聞記者だった姉が担当していた有名人ね。
 姉と同じ新聞社に入り、その卑怯な男を見付けてやるわ!
という。

発端は浜松ですが、続く殺人は東京で起こるので、
旅情ミステリー感はないですね。
銀座とか築地とか横浜とか華やかな場面多し。
ちなみに、樹海も出てきません。
(タイトルは、しっくりこないパターンが多めですが)

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怪しい人間を複数名用意しているけれど、
強引に「こいつが犯人だから!」とまとめていった感。
関係者が、美しいヒロインにうまい具合に誘いをかけてくれる。
じいやも、よろしくないと評している。

婦人倶楽部という雑誌に連載されていたそうです。
キャッチコピーは「女のよろこび 妻のしあわせ」( ̄д ̄)

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原田マハ   「ギフト」(ポプラ文庫)

 原田さんは、2005年に「カフーを待ちわびて」で第一回の日本ラブストーリー大賞を受賞して作家デビューした。沖縄の小さな島の奇跡のような美しい愛を描いた作品。原田さんは1962年の生まれ、ということは「カフーを待ちわびて」は43歳の時の作品。よくこんな美しい愛の物語を43歳で書くとは、当時驚いたことを思い出す。そして今はもう60歳になろうとしている。それでも、原田さんは純真な心で、若い人たちの恋愛を描けるだろうかと思っていたときに、この掌編集が出版された。若い恋愛掌編集だ。

 正直原田さんも60歳、私も70歳になるので、読んでいて恥ずかしくなってしまう。60歳でこんな純真な言葉、物語を書くとは。

 学生時代に知り合った、彼の手は握り合うといつも暖かだった。しかし彼が転勤。たまに会っても、手を握りあうことは無くなった。間遠になった彼を思い切って訪ねてみる。バレンタイデーのプレゼントとしてレザーの手袋を買って。

 彼は、約束の時間ギリギリにやってきた。思い切ってプレゼントを渡す。彼は手袋をとりだしてうれしそうに笑い、片手にはめ、もうひとつを私にはめるようにうながす。私には大きな手袋だった。その手を握って彼がコートのポケットに入れてくれる。ポケットの中で2つの手袋をはめた手がしっかり握り合う。

 読んでいて恥ずかしくて苦笑い。でもさわやかな物語だ。アートの小説もいいが、こんなみずみずしい小説もずっと書いていってほしい。

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| 古本読書日記 | 06:16 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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久坂部羊、中村仁一   「思い通りの死に方」(幻冬舎新書)

 私は今年70歳になる。最近歩くのに少し左足に違和感があったり、以前は簡単に持ち上げれたものが、漬物石のように重く感じられるようになった。運動もこれっとしたものはしていないし、これはまずいと思い、CMにつられて、グルコサミン、ヒアルロンサン成分の健康補助剤を飲み始めた。これで少しは改善されるかと思ったのだがそんな兆候は全くない。それで痛感した。これはまさに老化だと。補助剤は現状維持は多少長くできても、以前の体をとりもどすことはできない。これからの体の不調は、病気によって起こることはあまりなく、殆どが老化により起こるのだ。

 老化を病院に行って、治療をお願いしても無理。しかし、老人は病院にあふれかえっている。

 紹介した本は老いるということを受け入れ、これからの生き方、老い方、逝き方を現役医師が語り合った対談集。

 中村は、60歳を過ぎたら、自分の死を考える具体的行動として「遺影を撮る」「遺言をしたためる」など15項目をあげる。

 その中に「棺桶にはいってみる。」という項目があり、これが一番おすすめと言っている。
中村は、70歳になったとき、記念に棺桶を入手した。段ボール製の「エコクラフィン」という組み立て式棺桶だ。強化ダンボール製なので、普通の段ボールのように柔らかくない。木のような固さ。実際に中へ入ってみると人生観が変わると言う。寝返りも打てない空間に、最後は裸に薄物一枚まとっただけで閉じ込められるんだから。

「金も名誉も地位も墓までは持ってゆけない。」このことを心底実感する。むなしく感じる人もいるかもしれないが、物事への執着心は無くなる。この「棺桶体験」を繰り返せば、いよいよ最後の時もじたばたすることはなく、「自分の人生もそれなりに良かった」と思い満足して死んでゆけるようになる。

 棺桶に繰り返し入るのか。死への道もそれなりに極めるのも少し大変だ。

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松本清張 映像化作品集3「遭難」

土曜日の朝日新聞にはbeという別冊があり、
先日、「今こそ!読みたい 松本清張 獅子奮迅で描いた『昭和』」という特集が。
そこに、読者の人気ランキングがありました。

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「天城越え」は、タイトルだけ知っているけれど読んだことがないと気づきました。


爺やの感想はこちら
「たづたづし」は、前に感想を書いています。消されるにおいがプンプン。
この作品の「三十二というと、そろそろ浮気もしたくなるころである」や、
「張込み」の、「割烹着の下のスカートがいつもと違う!」と刑事が気付くくだりは、
「清張地獄八景」でネタにされています。

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「天城越え」は、そんなにピンとこなかったです。
十六歳は、そんなに幼いイメージじゃないですからね。
(逆に、三十二は女を囲うには若いと思う)
子供だからと容疑者から外される? 女の嬌声が断末魔に聞こえた?
行為の意味がおぼろげにしかわからない?
母親の浮気場面を思い出したというのも、とってつけたような感じだなぁ……と。

「遭難」は、犯人の奥さんが実家に帰っている理由が、犯行動機と関係しているところで、
予想を裏切られました。
てっきり、旦那が一緒に登山した同僚を死なせたことで、
親戚近所にひそひそ言われて耐えられなかったということかなと。
『清張ボタン』を押したのに、地獄へ落ちず、しれっと生き延びそうなパターン。

「声」は、時代を感じる設定ですね。
コールセンターの人が、犯人の声を聞き分けてしまうという犯罪モノも、
探せばありそうな気はしますが。

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久坂部羊    「医療幻想」(ちくま新書)

 日本の医療では、皆保険制度により、医療費が比較的安く抑えられている。それでは病院の収入や儲けが少なくなるので、病院や医師会では、患者をたくさんあつめ、病人にしたて、フル回転状態にさせようとする。

 病人をたくさん生ませるための入り口が検査である。

検査の正常値の値をせばめるのである。昔は高血圧の値は160以上だったが、今は130以上になった。この数値を決める委員9人には、製薬会社から8億2千万円の寄付がなされている。医者と製薬会社が協力して患者製造をしているのである。

 この正常値は不思議に感じる。当然、年齢により、正常値が変化すべきと思われるのだが、すべて若者を基準で正常値が決められる。だから当然高齢の人たちの病人が増える。

 それから日本人の検査好きの象徴が人間ドックである。たくさんの検査項目があるため、検査にひっかからない人は7.8%しかいず、これも病人を作っている。

 久坂部がかって駐在していたサウジアラビアで知り合いが人間ドックを受けたいというので、ある病院を紹介した。担当の医師が人間ドックなど無いと言う。そこで、人間ドックで検査する項目をあげ、これらの検査をしたいと言ったところ、医師が「君はどこが悪いんだ?」
と聞く。「どこも悪くない」と答えると、「家に帰りなさい」と医師に言われたそうだ。

 それから最近は病気をやたら増やす。特に精神科が顕著。
昔は精神科の病気は4つしかなかった。統合失調症、躁鬱病、てんかん、神経症である。

今は、不安障害、パニック障害、広場恐怖症、社会恐怖症、強迫性障害、心気症、転換性障害、解離性健忘、解離性遁走、解離性障害、離人性障害、解離性性同一障害、気分障害、気分変調性障害、大うつ病性障害など。

 これでは、すべての人がどれかの病気になってしまう。

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| 古本読書日記 | 06:43 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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久坂部羊    「第五番無痛Ⅱ」(幻冬舎文庫)

 タイトルにある第5番はベートーヴェン作曲交響曲第5番を指していると同時に「エボラ出血熱」から始まり「エイズ」、「狂牛病」「SARS」の次の五番目のウィルス感染症、今でいえば新型コロナウィルス、物語でいえばエイズウィルスから変異した「新型ガボジ肉腫」を表している。

 この物語で驚いたのが、WHOの年間使う金額は、国連の2倍あること。半分は各加盟国の拠出金によるものだが、残りは寄付によるもの。寄付は製薬メーカーや医療機器製造メーカー。アメリカがWHO脱退しても、その埋め合わせは自国開発のコロナワクチンを世界に広める先導役にWHOになってもらおうと目論む中国や、その他の民間会社の寄付により実現している。

 だからWHOというのは、医薬品メーカーや医療器械メーカーの代弁者として活動する。

物語は日本で、エイズに酷似する新型ウィルス感染が発生。ウィルスは骨を溶かし数日で全身に転移、意識障害で死に至らしめる。あらゆる薬が効かず日本は恐慌状態に陥る。このウィルスが「新型カボジ肉腫」と命名される。

 創陵大学の医学部准教授の菅井は「新型カボジ肉腫」治療の権威になったが、薬事や、肉腫切除などの治療法を試したが、いずれも失敗し患者は死んでしまう。途方にくれていたら、WHOの伝染病対策部のコワルスキー部長より手紙が届く。
「高活性化したNK細胞による免疫細胞療法が有効ですよ。」と。 

その直後に菅井准教授自身が「新型カボジ肉腫」に感染する。早速エアメールの示唆による
免疫細胞活性療法を試みるが、免疫細胞ができるまで日数がかかりすぎ、その間に肉腫が転移してしまい、治癒することができずに菅井は死んでしまう。

 今のコロナ感染もそうだが、感染症にかかった人が全員死ぬわけではない。むしろ、肺炎などで死ぬ人のほうが圧倒的に多い。「新型カボジ肉腫」は治療をすればするほど転移や強力な変異種に転換。治療をしないほうがよい肉腫だと物語では言う。日本は治療全能主義だとWHOは揶揄する。

 しかし、「新型カボジ肉腫」はWHOとその協力団体メディカーサが作成し日本に送り込んだものだった。恐ろしい。中国武漢ウィルスも中国起源ではなく、アメリカからの冷凍食品から発生していると中国は主張している。この物語でもウィルスの発生元は輸入ヨーグルトからだった。こんなことが、グローバル医療機器メーカー企業とWHOが協力しておこなったらとんでもないことになる。

 再度言う。WHOの活動は医薬品、医療機器メーカーの莫大な寄付により成り立っていて、WHOはその代弁者となっている。これが実態だと恐ろしいことだ。

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久坂部羊   「介護士K」(幻冬舎文庫)

 この物語に登場する介護老人ホーム「アミカル鎌田」。夜間は3人の介護士が一人で二十人の入居者の介護をする。その仕事は凄まじい。

 前任者からの引継ぎ。その後夕食の準備。配膳と食事介助の後、食器の片付けと清掃、業務の記録、就寝時間が近付くと、寝間着の着替え、歯磨きと洗面の介助、排泄介助、飲水介助、おむつの交換、薬の手配、車いすからベッドへの移乗。

 この仕事に入居者が協力的であったならいいが、たいていは殆どが非協力的、あるいは反抗的。

 いつまでも食事を飲み込まない、むせる、嘔吐する、着替えをいやがる、トイレに行きたがらない、トイレ以外で排泄する、大声で叫ぶ、自室にあるパンや菓子でのどをつまらせる、昼夜逆転で徘徊する、ベッドから落ちる、ひっきりなしのナースコール、「お金が盗まれた」
「部屋がのぞかれている」「変なにおいがする」などと訴えてくる、発熱する、けいれんする、体がかゆい、腰が痛い、耳鳴りがする、他人の部屋に侵入する、夜這いまがいなことをする、そして多くの人が「寂しい」「辛い」「生きていてもしかたがない」「死にたい」と繰り返す。

 介護施設は給与面からいっても最悪の職場環境だ。超高齢化社会なのだから、介護士の人員を増加したり、待遇も改善すべきだという意見があるが、かなり困難だ。

 というのは、老人介護は何ら生産面での益を生み出さないからだ。そんなことに人材を使うなら、もっと、利益を生み出す産業やサービスに人材を投入すべきなのだから。

 私たちは、人命は地球より重いとか生きるのは基本的人権などとお題目を当然のものとして社会に要求する。しかし、信念、きれいごとの裏には、膨大な矛盾が存在している。

 この物語は、介護の現実問題を活写する。お題目では、抗らいきれない現実があることを厳しく問いかける。

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アンソロジー   「ほっこりミステリー」(宝島社文庫)

 殺人が起きない、柔らかいミステリー短編に、伊坂幸太郎、中山七里、柚月裕子、吉川英梨が挑む。それぞれの作品に、作家の個性が表れていて面白い。

 柚月の「心を掬う」。

郵便局にだした手紙が届かないという苦情がいくつかくる。田所という職員が、手紙にはいっているお金を抜き出し、封筒や手紙をトイレで捨てているのではと疑われる。

 それで佐方検事の指示により、田所の座席とトイレに隠しカメラを設置する。

佐方は自分あてに2万円いれて手紙をだす。2万円いれるとき紙幣番号を写真にとっておく。次の日、田所が手紙をポケットにしまい、トイレに行くところがカメラに、トイレで封筒を破るところがカメラに写っていた。

 これだけでは、田所がお金を抜き取ったとは完璧にはわからない。そこで、佐方は田所の席に行き、財布の一万円札をだすよう要求する。そして自分が事前に撮っていた札の紙幣番号と田所の財布の紙幣番号を照合、それが一致したので田所が犯人だと指摘する。

 私はこれで物語は十分だと思うが、何と佐方は便壺にはいり、破られていた封筒の紙片を笊で掬い上げる。
 集めた紙片を洗い乾かし、封筒の状態に再生する。そして封筒が佐方から佐方にだされたことを証明する。
 この真相を求めるしつこさが柚月さんの特徴だと思わずにんまりした。

私たちは、自然破壊はいけない、自然は大切にと主張するが、中谷七里の作品は限界集落の現場に読者を連れてゆく。放置されている原に、町が産廃処分場を造ろうとする。建築業者がいかにも自然破壊業者として悪の象徴のように登場する。

 一方自然保護を主張するグループに面白いのだがそれほど支持が集まらない。
「自然破壊反対。自然を守れ」というスローガンに業者が言う。

「こんな自然を残しても、こんな土地は全国に山ほどあり、観光地にもならない。放置しても何も生まない。処分場を造れば、働く場を提供できるし、お金も生む。」

自然保護の団体というのは、空疎なスローガンばかり。何の反論もできない。
中山らしい、痛いところをつく話だ。

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久坂部羊    「人間の死に方」(幻冬舎新書)

 久坂部は、現在の医療方法、倫理は間違っているという強い信念を持っている。そのことは、彼の父親(父親も医者)の生きざま、死にざまを見てきて、醸成されてきた。この本で、久坂部が父の生きざまを描き、自分の医療についての見方、考え方を展開する。

 久坂部は20代後半から9年間日本大使館の医務官として海外勤務を経験している。その間、父子でたくさんの手紙をやりとりしている。

 60歳を過ぎたころから、父の手紙の冒頭は、あと定年まで何年何か月という表現が書かれるようになった。そして65歳で定年になると、手紙の冒頭は今日から10連休とか30連休とか100連休になるとうれしさいっぱいで書いてきた。父は5歳の頃、何の束縛もなく自由だった時代と定年後の今が人生最高の時だと言い小学生から大学までの学生時代、それから仕事、定年までが最悪の時代だったという。これだけでも、久坂部のお父さんに共感を覚える。

 お父さんは30年代で糖尿病にかかる。血糖値が700もあった。正常値は100余だから、いつでも糖尿病昏睡になってもおかしくない状態だった。病院に入院、退院後食事療法とインシュリン注射を行うようになった。

 6か月は食事療法を続けたが、我慢ができなくなり、食事療法をやめる。インシュリンは家で自分で打つのだが、その前に血糖値を測り、量を決め行うのが常識。しかしお父さんは自分の体調で量を決め打つ。そして、お父さんは30年以上血糖値を調べたことは無かった。

 たまたまかもしれないが、医者の指示を守らず、87歳まで生きた。
世間では長生きを良いことのように言う人も多いが、お父さんが87歳まで生きるということは、長い間、足腰が弱って行きたいところにも行けず、視力低下で新聞や本も読めず、聴力低下で音や声も聞こえず、排泄機能も低下、おしめをつけられ、風呂にも毎日入れず、容貌も衰え、何の楽しみもなく、ベッドの上で介護をしてもらいながら、一人で死ぬまで暮らになる。

 本当にこんなになってまで、何年も暮らすことが幸だろうか。

医者は口癖のように「念のため」と言い、この検査、あの検査、この薬、あの薬と意味のない検査、薬を処方する。

 家で救急車にのせられたとき、すでに死に体なのに、病院に着くと、おびただしい管を体に入れられ、検査、検査を行う。延命治療だ。患者は全く意識は無いのだから、静かに死なせてあげるべきだろう。

 こんな常識を覆すような考えを久坂部は熱くかたる。久坂部の素晴らしい医療ミステリー作品が生まれることがこの本でよくわかる。

 お父さんのウィットに富んだ言葉が心に残る。
「むかしは、親孝行したいときには親はなし、と言ったが、今は、親孝行したくないのに、親がおり、やな」

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松本清張 短編全集04 『殺意』

爺やの感想は、たぶんこれ

「殺意」 
動機がテーマではあるけれど、毒を仕込んだ方法もなかなか面白いですね。
WHOは初めからわかっていて、WHYだけじゃなくHOWも盛り込む。
そういえばこの前、テレビのドキュメンタリーで
「自分しか知らないはずのサリンの反応式を書かれ、土谷元死刑囚は観念して自供した」
という話があった。

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「筵」
ずいずいずっころばしの「茶壷」は、お茶壷道中とも女性器ともいわれるんだと。
wikipediaに書いてありました。
この話は、どちらも押さえている感じですね。

「通訳」
家光以降の将軍を扱った話を読むと、よしながふみ「大奥」を思い出します。
漫画では、吉宗は家重に高い知性があると気づいていたという設定。
実際はこの短編にある通り、
「長子相続の掟を、将軍が破るわけにはいかない。
 諸大名が私情の子を立てるようになってしまう」
でしょうね。

| 日記 | 00:04 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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中山七里  「連続殺人鬼 カエル男」(宝島社文庫)

 中山七里は一般人の常識をはるかに超えた、超人的作家だ。その超人さは、2019年毎月本を刊行していることでわかる。しかもどの作品も中山得意の「大どんでん返し」が描かれ、多くの読者をうならせている。

 2009年の「このミステリーがすごい」の応募作品は350本あり、2次選考作品に21作品が選ばれた。このたった21作品の中に何と中山作品が2編含まれていた。これは杞憂なこと。

 しかもこの2作品とも、見事な作品でどちらも大賞を獲得しても不思議ではなかった。
結局大賞受賞作品は「バイバイ ドビュッシー」。刊行本では「さよなら ドビュッシー」に決まる。大賞を逸した作品が「災厄の季節」で刊行本では「連続殺人鬼カエル男」本紹介作品である。

 この作品でまず驚かされたのは、保護司を悪人として登場させたこと。こんな設定は全く考えつかない。読者は登場する保護司は、正義感、使命感が強く、清廉潔白な人として読むから完全に騙される。

 それから刑法第39条、心神喪失者の行為はこれを罰せずという法律。
これは、どんなに壮絶な殺人を犯しても、心神喪失者は罪に問われないということ。この喪失者が事件後、病院にゆき、医者が病気は寛解したと判断するが、社会にでて、また殺人をおかす。それでも、裁判になれば心神喪失者として罪から逃れられる。いくらでも殺人が可能となる。この現状をどうみるか、中山は読者につきつける。

 しかし、驚愕はこれだけでは終わらない。

中山はこの作品について、「読者を最後の一行で必ず驚いて戴く」と豪語している。
そして、確かに読者は最後の一行で驚愕する。全く恐ろしい作家である。

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久坂部羊   「糾弾まず石を投げよ」(朝日文庫)

 最近は医療問題を取り上げたミステリーが花盛りである。現役の医者が小説にするから、その描写は迫真にせまり、たくさんの読者をつかんで離さない。その中でも特にテーマにしばしばあがるのが医療過誤。

 医療過誤には3つのタイプがある。
①明らかに医療過誤がわかる場合。輸血や薬剤の投与ミス。
②手術を行った当事者全員が医療過誤が起こったことが認識しているケース。
③執刀医だけが、ミスしてしまったことを認識しているケース

  このうち①は、最近では隠し通せず、表面化する場合が多い。しかし②は病院にかん口令が敷かれ表にでることは少ない。③は全く表面にでてこない。

 この物語は、驚くことに胃がんで入院した患者が手術後亡くなる。この手術をした執刀医三木が、自らの手術に過誤があり、それにより患者は亡くなったと患者の家族に申し出、しかも個人的に慰謝料を払うことから始まる。

 こんなことは考えられないこと。このことがなぜ執刀医により行われたのか。その疑問を医療ジャーナリストの主人公菊川が追及する。

 医療過誤は、それにより患者が死亡するが、病院はそのことを隠そうとするし、医師は絶対に過誤を認めようとしない。だから通常ミステリーは病院、医師を悪の代表として描かれる。
 そして、決まった筋書きに従わない人物は、非常識、変人として描かれる。だから、三木は大変人となる。

 しかし作者久坂部は、この大変人三木の想いを深く、広く追及。そして、その変人のすばらしさを最後にカミング アウトさせる。

 私を含めた多くの読者はその姿に驚愕し、感動する。
 本当に人間は一様ではなく、十人十色。本当に偉人というのはすごいと心底思わせる素晴らしい物語だった。

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久坂部羊  「テロリストの処方」(集英社文庫)

 セレブ、富裕層の医師を狙った殺人事件が3件連続して発生する。その現場には「豚ニ死ヲ」という言葉が書かれていた。この真相、犯人を追って、医師から医事評論家に転進した主人公浜川が活躍するミステリー。
 ミステリー仕立てにはしているが、現在、および近未来の医療について、根本的問題を久坂部が告発する作品となっている。

 近未来のことだが、日本の医療費は45兆円に達し、日本の皆保険制度は完全に崩壊。2000万人の人が保険料を支払えず、病院に行けない状況になっている。一方富裕層はホテルのスイートルームのような個室で最高の医療が受けられるようになり医療も完全に2極化になっている。

 医者の質も劣化する。医師は「念のため」が口癖になる。「念のため検査をしておきましょう。」と不必要な検査をさせる。また、風邪に抗生物質を処方したり、効能がない薬を大量にだす。また厚労省と組んで、健康体の検査数字を狭め、大量の再検査要の人たちを作り出し、病院に行かせる。これはすべて治療費を膨らませ、病院や医師を儲けさせるために行っている。

 この作品で言っているが、最近ではどんな病気でも、CTスキャンをやることが必須となっている。CTスキャンは大量の放射能を浴びる。非常に危険な検査と久坂部は言う。

 こんな無駄な医療がはびこるのは、無能な医師が多いから。医師は一回国家試験を通れば、生涯医師として働ける。医療方法の変革は日進月歩。だから、先進医療技術を習得するには、懸命に学び努力をせねばならない。しかし、多くの医師はこの努力を怠り、医療技術が遅れている医師ばかりとなる。車の免許のように厳しい免許更新制度が必要と作品は主張する。

 そして、先進技術を有する医師は、高額な収入を保証し、それ以外は一般の人たちと同じ報酬額にする。
 うっすらとは思っていたが、この作品で医療の問題がよく理解できた。これを徹底し、ダメ医師を排除すると、物語のようにホームレス医師が生まれてくるようになる。

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| 古本読書日記 | 06:49 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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松本清張 『アムステルダム運河殺人事件』

恩田陸さんが実際の事件をもとに小説を書いたそうで、
昨日美容院で読んだ週刊誌に、書評が乗っていたんですね。
で、引き合いに出されていたのがこの本。

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被害者が見たがっていたという「飾窓の女」を知らなかったので、
途中まで「美術館の絵か何かかねぇ」と思っていました。
遊郭の見世のようなシステムなんですな。

実際の事件をモデルにしていて、推論だけで証拠はないので、
「そうだったのかもしれないねぇ」止まりです。
遺体に頭がないので、別人ではないかという説も飛び出し、推理が膨らみます。
中身の遺体が腐って膨らんで、スーツケースが浮くものだろうか。

併載された「セント・アンドリュースの事件」も、推論だけで証拠はない。
舞台が海外でも、時刻表が好きですねぇ。
「花壇」とか「飾り」とか、あんまり「銀座の高級店」っぽくない。
市内を検索したら、「じゃじゃうま」「わんこ」「友」……田舎ですから。

| 日記 | 00:53 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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マンガで読む 人生がときめく片付けの魔法

そうはいっても、実家暮らしなので、
親が買ってきたお土産とか、知り合いに貰った服とか、
がんがん捨てると揉めそうなものもあるわけで。

「思っただけでまだ手を付けていない『勉強本』は捨てましょう」
確かに。中身が古くなるし。
次にやる気が起きたときに、その勢いで新しく買ったほうがいいですね。

IMG_0126_20210321205106665.jpg


衣替えは必要ない。冬でもエアコンの効いた部屋では半袖を着る。
衣装ケースに入れて押入れにしまうより、出しておいて把握できるほうがいい。
……という話も。なるほどと思って、やってみました。
ちょうど、
「厚手のを洗濯してしまったけれど、まだ欲しかった!」
というストレスを感じる時期ですね。

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当然スペースが限られるので、
「30代半ばで、バーンとプリントされているこれは、恥ずかしいかな」
「骨格診断のサイトに影響されて買ったけど、しっくりこなかった」
という服や、よれた下着なんかも処分して、すっきりしました。

| 日記 | 00:49 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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木皿泉、山田あかね  「すいか2」(河出文庫)

 向田邦子賞受賞ドラマ脚本完結編。

 4人の個性的未婚女性が暮らす下宿ハピネス三茶。大学教授や売れない漫画家なんかが住んでいる。
 この下宿が昔のホームドラマの家庭になっている。この家庭は、誰もが生きてゆくよりどころになっている。

 この作品のような守るべき家族、生きてゆく基点を壊さないということが以前のホームドラマの約束になっていたのだが、今のドラマハは反対に、破壊することに笑いや驚きを求めるようになっている印象を受ける。

 このドラマ、日本テレビでドラマ化され放映されたようだが、あまり反響はなかったのではと想像できる。かおりが古すぎるから。

 それでも、場面が下宿を離れると、少し自由な会話になる。
 病気で入院した梅子が、同じ病室の川村さんと会話する。

 「人間は木星があるから生きていられるのよ。木星って大きいのよ。だから外からくる隕石を吸収するわけ。この木星がなかったら、地球に隕石がバンバン落ちてきて、生命が人間に進化することができなかったの。」
「つまり木星は地球のお母さんみたいなもの?」
「うまいことを言うねえ。木星がなけりゃあ、生きてられなかったくせに、誰も感謝しないんだから。」
「木星って寂しい星なんですね。」
「木星はね。もうちょっと温度が高かったら、太陽にもなれたんだよね。」
「ガスでできているから、太陽が2つになって、とっても熱くなり、地球では誰もすめなくなっちゃってたの。それで、飛んでくる隕石まで受け止めて。」
「そうですか偉いんですね、木星って。」
「そうですよ。涙がでるくらい健気な星よ。」

 面白い。しかしどこかやっぱし古臭い。

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木皿泉   「くらげが眠るまで」(河出文庫)

 年上なのに頼りがいのないバツイチの夫ノブ君としっかり者の若オクサン杳子の楽しい生活を描いたコメディドラマの脚本。

 本当は庭付きの家で、犬を飼いたかったのだが、かなわず、部屋でくらげのクー君を飼っている。

 2人が寝ぼけて、同じ夢をみている。
 
 ノブ君が机の上をみると、白い紙きれがおいてある。よく見ると、それは離婚届。
ノブ君が逆上する。杳子は「夢のなかのできごとじゃないか。」と懸命になだめる。
ノブ君は、夢のなかでも、懸命に優しくしてあげているのに。と憮然。

 場面変わって、ノブ君のズボンの後ろのポケットから白い紙がはみでている。杳子さんがすっととりだしてみると離婚届。
 今度は杳子さんが怒る。好き、愛してると調子いいこと言って心の底では離婚したいと思ってるんだ。
 そんなことは無いと懸命に否定するノブ君。
それで喧嘩の果てに2人は絶対に判をつかないと約束しあう。

 そして、2人はそんなこと思ってないのに、どうしてこんな夢をみるのか疑問に思う。
これはクラゲが見ている夢なんだと結論付ける。

 朝目覚めて、 ノブ君は安心しきって「何だこれはクラゲの夢だったんだ」と安心する。
杳子さんは「どうなるか待ちましょう。今夜のクラゲの夢を見るまで・・・・」
 少し面白いかな。

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| 古本読書日記 | 06:25 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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松本清張 『ミステリーの系譜』

爺やの感想はこちら
津山の事件は、「八つ墓村」のモデルになったといわれていますね。
事件は30人だけど、「八つ墓村」は32人。
事件は犯人が自殺しているが、「八つ墓村」は……親戚のババ様が始末したそうな。
(昔読んだけど、そこは覚えていなかったので、wikiで確認)

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「肉鍋を食う女」は衝撃的な事件ですが、食糧不足で、
食った女も継子も精神薄弱とくれば、何となく納得してしまう。
中島敦「狐憑」でも煮ていましたね。

「曲がった膝が丸ごと鍋に突っ込んであるのです。
 冷たくなった汁が底の方に残っていて、
 切断された手足は垢で黒くなっていました」
面倒だったので皮は剥がなかったという、処理の適当さ。
刻まれた腿肉だったら、カエルでもヒトでもウサギでも気づかないだろうけど、
垢でガサガサした足がごろっと入っていたら、さすがに。

そういえば、朝6時の電車に乗れば、10時半には小倉につくそうです。
コロナが落ちついたら、考えてみます。

| 日記 | 00:23 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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中山七里   「月光のスティグマ」(新潮文庫)

 スティグマとは、社会の多数者が少数者におしつけた否定的な刻印のこと。人種、国籍、病気、肉体的、精神的障害、癖、趣味などがそれの理由になり、浴びせかけられる汚名、恥辱、不名誉がそれにあたる。

 一方スティグマには、アッシジの聖フランチェスコの体に磔刑にされたイエスキリストと同じ場所に傷があらわれたという意味もあり、スティグマには聖と賤の両方の意味がある。
 物語にはこのスティグマの2つの意味が折り重なるように立ち現われる。

それにしても、中山の物語の構想は本当にダイナミックだ。

 2人の一卵性の双子の姉妹と隣家で仲の良い主人公が、阪神淡路大震災、東日本大震災を経て、最後はアルカイダによってアルジェリアの日本大使館の人質となり、そこでの救出劇まで物語が発展してゆく。

 この物語、権力が裏金作りのために世界の貧困子供を掬おうとする基金をつくる。この団体に企業や、多くの善意の人々が寄付金を提供する。しかし、このお金は貧困の子供の手には殆ど渡らない。一応貧困地帯の国に団体の現地拠点を設立し、一旦お金はその現地拠点に送金させ、貧困者に渡ったようにみせかける。

 現地拠点では、送金されたお金を使い国際金融公社の無記名債券を購入。この債券を日本に郵送したり、誰かに預けて運ばせる。無記名だから、誰が発行した債券かわからない。そして、現金では無いので、日本での通関にもひっかからない。この債券を日本で現金化する。マネーロンダリングの方法だ。
 なるほどマネー洗浄はこうやるのか。興味がわく。

 貧困の子供を救おうと時々テレビで寄付を募るが、そのお金はちゃんと貧困の子供たちに届いているだろうね。

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| 古本読書日記 | 05:59 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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久坂部羊    「院長選挙」(幻冬舎文庫)

 国立大学の最高峰、天都大学医学部の病院長が謎の死を遂げた。自殺、他殺両方がささやかれるなか、次期院長選挙が行われようとしていた。候補は4人。
心臓内科医の権威、徳富。外科のリーダー大小路、収益の4割を稼ぎ出す眼科の百目鬼、改革派の整形外科鴨下

 しかしこの4人はそれぞれ大きな欠陥、弱点を持っていた。

徳富は論文を盗用したり、データを捏造する。大小路は女性とみれば誰にでも手をだす、セクハラの常習者。百目鬼は金の亡者。業者にお金を要求したり、生活費を病院につけまわす。鴨下は目下の人間にすぐ怒り、暴力沙汰をたくさん引き起こしている。
 物語はこの4人の選挙経過を描写する。こういう物語で有名なのは「白い巨塔」。久坂部はどろどろした重厚な物語にしないで、病院の人たちの活動を世間話、噂話にして軽いタッチで表現する。

 大病院の薬剤部には大量の薬が保管されている。まぎらわしい名前の薬もたくさんある。

糖尿病薬アマリール、降圧剤アルマール、ステロイド剤サクシゾン、筋弛緩剤サクシン、抗生物質アモリン 睡眠薬アモバンなど、効能が異なっていて、似た名前の薬が溢れている。製薬会社が売れそうな名前をつけようとするので、こんな状況になってしまう。
 だから医師もまちがう。しかし、医師はプライドの塊。ミスを認めようとしない。

薬剤師が間違っていますと指摘すると、
「わかった上でだしてるんだよ。」
「それは僕のこだわりだからそのままだして」
「新しい投薬方法を試しているんだよ。」

とんでもないことだ。しかしこの作品を読んでいるとありそうな気になってくるから怖い。

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| 古本読書日記 | 06:01 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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木皿泉    「二度寝で番茶」(双葉文庫)

 この本の2冊前に木皿さんの向田邦子賞受賞の脚本「すいか1」を読んだ。我々の思春期の時代はテレビではホームドラマが全盛だった。3世代が住んでいて、個性的な住人ばかりで、それぞれがちょっとした出来事を起こして、家族が騒動になるが、最後は皆が楽しくまとまるというドラマだ。

 「すいか1」は、家族ではないが、昔ながらの下宿屋に個性的な住人が集まり、ちょっとした出来事をおこし、住人をかきまわす。読んでいて、昔のホームドラマと同じ。古いなあ、これで視聴者に受け入れられるのだろうかと疑問に思った。

 それで木皿泉について調べてみた。驚いた。木皿は脚本家夫婦で2人で一つのペンネームで脚本を書いている。
 しかも、夫和泉努は1952年生まれ、妻鹿年季子は1957年生まれ。私とほぼ同年代。ホームドラマ全盛時代に育ってきた世代だ。「すいか1」に私が同年代の雰囲気を感じたのもむべなるかな。

 紹介した本は、2人でテーマ別にまとめたもの。

そのうちのテーマ。恋って何?恋は幸一杯で、スコーンと突き抜けて明るく楽しいもの。それを表す恋の歌であげている2作品。

「恋をしましょう、恋をして、浮いた浮いたで暮らしましょう。熱い涙も流しましょう。昔の人は言いました。恋はするほど艶がでる。」
「地球はちっちゃな星だけど、幸一杯、空一杯。だってだって私は恋しているんだもん。」

今や誰も知らない化石のような歌。
畠山みどりの「恋をしましょう」島倉千代子の「恋しているんだもん」。こんな歌がでてくるのだから、彼らの描くドラマ、私が郷愁を感じるはずだ。

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| 古本読書日記 | 06:19 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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中山七里   「アポロンの嘲笑」(集英社文庫)

 原発で修理、メンテナンス作業を行っている作業者は、孫請けどころか現実は玄孫請け企業が集める派遣労働者だそうだ。玄孫というのは、孫、ひ孫の更に下に位置する事業者のことである。電力会社から下請け企業が仕事を依頼されそれを玄孫事業者まで、それぞれの業者が利益を中抜きするのである。

 原発で行われる作業は、死に直結する危険と隣り合わせの作業。
この物語でも、原発の配管が折れ、作業者の一人が、下敷きになるという事故が起きる。
作業者はタイベックという防護服を着用して作業にあたるが、この防護服は放射能汚染については全く役立たない。

 その時指導者は、作業者にパイプの下敷きになった作業者は放っておいて逃げろと指示する。もちろん作業にあたっていた全員が大量の放射能を浴びている。この時、主人公の作業者が指導者の指示を無視して、下敷きになった作業者を救う。

 事故後玄孫請け会社は作業者に言う。「労災申請はするな。事故があったことは言うな。ばれたら仕事が来なくなり、会社は潰れる。」と。

 この作業者の中に、テロリストが混ざり、爆発物をしかける。その除去に警察の爆弾処理班が動員できるか。
 「数分いるだけで年間被ばく線量の上限を超えてしまうような場所に、警察のどなたが行きますか。それとも自衛官?タングステンテンペストを着込んだ完全防護服を着こんでも、ガンマ線を四割しか遮断できない。工区は一般人には迷路みたいになっている。慣れない者なら爆発物がしかけてある場所に辿り着くまでに30分から1時間。そんな地獄にあんたたちの誰が行くんですか。」 物語にでてくる和明が言う。

 原発の破壊は自然災害により起こるのではなく、人間により引き起こされ、放射能被ばく被害は深く沈殿し、表面にでてこない。そしてそのすべては名もなき末端作業者がかぶる。

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| 古本読書日記 | 06:11 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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木皿泉    「すいか1」(河出文庫)

 日本テレビでドラマ化された作品の脚本。向田邦子賞を受賞している。

日常から少し遊離し、あり得ない行動、個性を持つ人たちを木皿は巧みに、日常に違和感が生じないように落とし込み見事なドラマにしている。

 まず登場する主な4人の社会人の女性が住んでいるのが下宿。今は住居は持ち家を除けば、アパート、マンション。社会人が下宿というのはまず無い。下宿ということは朝夕の食事付きということである。

 主人公の早川基子は34歳で信用金庫に勤めている。実は、信用金庫で同期の馬場万里子は銀行のお金3億円を着服して逃亡中。それから亀山絆。エロ漫画家。芝本ゆか。女子大生だが、下宿の持ち主の父親がスリランカへ長期滞在のため、下宿者の世話をしている。それから崎谷夏子。大学の教授をしている。
 基子は小さい時から決意して100円玉を貯金している。最初は小さな貯金箱からスタートしたのだが、34歳の今はポリ容器に変わっている。
 ゆかがそのポリ容器をみて、食事代の金額が間違って300円不足したので、払ってほしいという。そのポリ容器から」100円3枚くださいというが、基子は絶対ダメと断る。後で3枚補充すればいいじゃんとゆかが言うが、基子は1万円札100円玉に崩してくると外へ行ってしまう。
 しかし基子も人生を変えるために、貯めた100円玉を使ってしまおうとポリ容器を持って表参道に行く。しかし買いたいものも無いし、買おうかと思ってもどうしても100円玉を使えない。重い容器を持ちながら、疲れ切ってある公園にくる。
 そこでストリートミュージシャンが演奏している。100円玉を投げてあげる。ミュージシャンは「有難う」と答える。
 基子はその後、ポリ容器の100円玉をミュージシャンの前にぶちまける。
ミュージシャンは「そんなにはいりません」と言う。
基子は「何言ってるのよ、こんなにいっぱいあるのに。」
 こんな変わったやりとり、出来事が次々起こる。面白くてたまらない。

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| 古本読書日記 | 06:15 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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川上弘美    「森へ行きましょう」(文春文庫)

 1966年の10月のある日、留津とルツという2人の女性が誕生する。物語はこの2人の女性の0歳から60歳までの歩んだ人生をパラレルに描く物語になっている。

 この物語を読むと、人生は大事であれ小事であれ、日々それどころか瞬間、瞬間に人生の選択を決断して、その結果今の自分があるのだと思ってしまう。

 留津もルツも、異なった道を歩むが、2人の人生に影響を与える人たちがいる。ということは、その人たちも、留津とルツとの関わり方により、彼らの人生が変わってくる。

 留津は大学では、「門」という幾つかの大学生が集まる文芸サークルに入会する。そこのサークルに憧れのイケメン学生林君がいるから。しかし林君は箱根に旅行したとき、同性愛者であることがわかり衝撃を受ける。

 この林君は、生物研究一筋のルツの学生時代の人生にも登場し、ルツを揺さぶる。

留津は、大学を卒業してある会社に就職するが、友達の紹介により神原敏郎と付き合い、結婚をすることになる。神原の父は従業員100人ほどの会社を経営していて神原はいずれその会社を継ぐことが予定されている。この神原の母親キク乃が型破り。とにかく敏郎大事。敏郎を人生をかけて支えることを留津に求める。

 何しろ結婚式が終わり、留津と敏郎がマンションに帰宅すると、キク乃がいて、敏郎が大好きなオムライスを作って待っている。そして、一緒にマンションに泊まっていく。

 そんな環境から、敏郎と留津の関係も冷たいものになり、敏郎は愛人を作り家にも帰らなくなり、留津も大学の文芸サークルで一緒だった八王子と恋におぼれる。

 一方ルツは、大学院に進学して、卒業後、国立山際科学研究所の研究員となり、研究一筋の人生を送る。恋らしいことも経験するが結婚はせず、妻子ある男性に溺れ、実りのない恋を経験し独身で60歳になる。

 作者川上さんは、森の中にはすべてが存在していると考えている。留津もルツもその森に分け入ってゆきそれぞれ違った人生を送る。人生の森の中に川上さんは、留津やルツから分離した、何人ものるつを最後に登場させる。

 大学時代サークル友達だった八王子に冷たくあしらわれ別離を決意した留津が風呂あがりに裸で全身を鏡に映す。すると鏡の中には別のるつがいて、私はずっと八王子を愛してゆくと宣言する。また別のるつは、にっくき夫敏郎を殺害して死体処理をしている。

 森は本当に深く人生の瞬間の決断により、異なった世界が作られる。川上ワールドが満喫できる作品だった。

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| 古本読書日記 | 06:44 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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下川裕治    「週末沖縄でちょっとゆるり」(朝日文庫)

 週末にちょっと台湾だったりバンコクだったり、シリーズになっているうちの一作。
どの作品も、タイトルと内容があっていない。週末にでかけてみようと思わせる場所や出来事が紹介されているのではなく、下川が過去に体験したことを、週末とは関係なく綴っている作品になっている。

 下川が初めて沖縄に行ったときに感動した沖縄そばと30年たった今の沖縄そばは違っている。それを確認するために、沖縄滞在中沖縄そば店ばかりを訪ねて8回も沖縄そばを食べる。

 そしてどこが異なってきたかを考察する。

 そう思いながら食べたことが無いのでわからないが、アジアの国々では麺類は啜るのではなく、欧米と同じように噛んで食べるのだそうだ。

 30年前の沖縄そばは啜るのではなく、噛んでたべた。つまり、沖縄そばは日本ではなくアジアの食文化を体現している料理だった。しかし、本土から多くの観光客がやってきて、その人たちの食文化に合う様にそばの料理が変わってきた。それが寂しいと書く。

 LCC航空会社が沖縄の離島に就航している。JALやANAに比べれば4分の1ほどの航空運賃。沖縄の離島では石垣島と宮古島がライバルとして争っている、LCCの就航は宮古島が一歩早く、新石垣空港ができてやっと石垣島にもLCCが就航した。

 その効果は絶大で、観光客が30%も増え土産物店もものすごく忙しくなった。

しかし売り上げ、利益は上がらなかった。
LCCの客は、安いものしか買わない。宿泊費用など100円値上げすると、ピタっとお客は来なくなり、100円値下げするとドッドやってくる。

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久坂部羊 「日本人の死に時」

と、「思い通りの死に方」(中村仁一との対談風)

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生殖年齢にあるうちは健康診断や人間ドックを受けて、治療するのもいい。
ある程度の年齢に達したら、もう病院は行かないほうがいい。
気づいたらがんの末期というのが一番いい。
とはいえ、著者も言う通り、
「延命治療はしない。そのまま死なせてほしい」と決めていても、
公共の場で突然倒れたら救急車を呼ばれて、管をつながれてしまう。

80歳・90歳になっても、
「朝起きたらふらついたんだけど、どこが悪いのかしら」
「すこし不整脈がある? 薬を飲めばいいんですか?」
「若いころは15分で歩いていた距離に、30分もかかってしまう」
と憂える人は多いのだと。
高齢になるということは障がい者になるということだと、悟ったほうがいい。
そういう本です。

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齋藤孝 「読書する人だけがたどり着ける場所」

前回、左の本については感想を書いたので、今回は右。

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前の記事で予想しましたが、紹介されている本は、
夏目漱石「こころ」とか「カラマーゾフの兄弟」とか、老荘思想のなんとかとか、
「銀の匙」(注:荒川弘の漫画ではない)とか。
ただ、漫画にも読むべきものはあり、古典へのとっかかりとしては良いとのことで、
よく話題になる大和和紀「あさきゆめみし」に加えて、古屋兎丸さんを褒めていました。

「(ネットで)こんなことが話題になっているみたいですね」とは言えても、
それについて説明することはできない。そんな若者が多いそうです。
「炭治郎の耳飾りのデザインを韓国版で変更したと知っていても、
旭日旗が何なのかは知らない」という感じですかね。
で、それは読書しないからという話。

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