柚木麻子 「さらさら流る」(双葉文庫)
これで終わりなのかと思っていたら、伊藤さんは民事裁判を起こし、裁判ではレイプが認められ山口氏は30万円の罰金が課せられていたことを知った。
これを見ていると、男というものは女性を犯すことはたいしたことでは無いし問題にならないと振る舞っている人が少なからずいると思ってしまう。山口氏も裁判で負けても、全くジャーナリストとして排除されることなくメディアで活躍している。社会はいまだに男によって支配されていると心底思う。
この作品で大手コーヒーチェーン広報部で働いている主人公菫は、学生時代に付き合っていた光晴にせがまれ、仕方なく裸の写真を撮らせてあげる。
その写真がネットに載っていることを知り、菫は驚愕する。しかも、コピーされ拡散している。
会社にいても電車に乗っても、自分の裸を見ている人がいるのではと恐怖にさらされている。服装や髪形を変えて行動する。この恐怖は一生続くと思うと愕然とする。
一方光晴。今ではもう手の届かないところに行ってしまった菫。でも、光晴には写真がある。いくら菫でも、自分の裸の写真だけは、他人がぶちまけた吐瀉物のように簡単に目をそらすことはできないはずだ。ずっと光晴は写真によって菫とつながっていられると思う。
男は起こしたことの重大さを認識できない。自分の都合のよいように解釈する。
そして、世間は、「裸を撮らせるような女性はすきがある」と男に非難がむかわず、女性に非難がむかう。
悲しい話だ。こんな卑劣な男たちは立ち上がれないほどの罪を負わせるべきだと思う。
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| 古本読書日記 | 06:11 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑