最初「図書館戦争」を読んだとき、内容が突飛すぎ理解できず面白くないと敬遠したのだが、その後このシリーズが爆発的に売れて、遅きにしっしたが、やっと全シリーズを読んでみようと思い手にとった。この作品はシリーズ3作目。シリーズは4作と別冊2作系作品となっている。
メディア良化法が制定施行され、すべての本や番組はその執行機関である良化特務機関による検閲を受けるようになった。
これに対抗するために立ち上がったのが図書館。図書館隊が結成される。その中の堂上班隊長の堂上と部下たち、特に堂上に恋心を抱く笠原郁の活躍を描く。
週刊誌「新世相」の敏腕記者の折口は、今までにメディアの取材には決して応じてこなかった大スター香坂大地のインタビューに成功した。しかも香坂に何を聞いてもいいし、香坂のしゃべったことはすべて記事にしてよいという破格の条件だ。
香坂の両親は香坂が生まれたときには両親とも浮気をしていて、幼いころに両親は離婚。
それでお祖父さんに引き取られ育った。お祖父さんは床屋をしていて、その楽しい床屋の雰囲気を香坂は床屋という言葉を連発して語った。
そのままの内容を折口は記事にして、香坂の事務所に確認のため原稿を送る。
ところが、発売直前に香坂から記事はボツにしてくれとの指示がある。どうして?折口が香坂に言うと床屋が理髪店、散髪屋に変わっている。お祖父さんの店は「床屋」であり「理髪店」では無いと。「床屋」は良化機関により禁止語になっているから使えない。使うとその途端発禁処分となり「新世相」の出版社は大きな赤字となる。しかし「理髪店」の表現では記事は香坂は受入れられない。
有川さんは、最近の禁止言葉にかなり怒っている。そういえば「魚屋」使用自粛語になっている。「鮮魚店」と言わねばならない。床屋も魚屋も使えないと小説や作品にならない。
しかも自粛用語は、今はやりに有識者によって決定され、その理由は公開されない。有識者は現実の世界から遊離している人たち。こんな人たちに言葉狩りなどされたくない。
茨城の県立図書館が茨城近代美術館と共催で毎年2週間美術県展を開催する。今年の目玉作品は県美術最優秀賞作品の「自由」。この作品は悪名高き良化特殊機関の制服が破れ、破れた穴の先に青空が描かれている。特殊機関にまっさきに検閲により排除される作品だ。
これを阻止するために図書館隊が関東より派遣される。何か昨年話題になった「愛知トリエンナーレ」を彷彿とさせる。
この抗争に、「無抵抗の会」という団体が登場する。戦いはだめ、話し合いで決着させましょうという会である。しかしこの会は、すべて検閲を許し良化特殊機関の思惑通りに事が進行してしまう。何か「無抵抗の会」は何でも、話し合えばわかりあえると主張する市民団体にみえてくる。
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