平松洋子 「すき焼きを浅草で」(文春文庫)
平松さん10歳の時。グループサウンズが花盛り。ショーケンこと萩原健一はゴールデンカップスのボーカルをつとめ、超大人気ボ-カルになっていた。「エメラルドの伝説」「神様お願い!」平松さんだけでなく、全国の少女たちが熱狂した。
その時、日本テレビから半年間ショーケン主役のドラマが放映された。大ヒットとなった「傷だらけの天使」である。
主役の私立探偵オサムを萩原が演じる。探偵事務所の女性社長は岸田今日子。オサムを兄貴と慕う手下が水谷豊。
起き抜けのショーケン演じる朝食シーンが印象的でいつまでも残る。
オサムが革ジャンを羽織って冷蔵庫を開ける。トマトに塩をぶっかけて丸かじり、リッツを一枚口に放り込み、缶にはいったままのコンビーフにかぶりつき、読みかけた新聞紙をシャツの胸元に突っ込んでナプキン扱い、すかさずソーセージの一本食い、口に入ったソーセージを包んでいたビニールをペロンと口から出して吐き捨てる。
テレビを観ていた人たちは度肝をぬかれる。
まだちゃぶ台が主流の時代、朝飯はごはんと味噌汁とおかずの時代なのに。
極めつけは、牛乳瓶のふたの開け方。瓶の口ごとカバっと口に入れて、前歯で紙ぶたを押し開ける。そして紙ぶたをおざなりに捨てる。それが恰好よかった。
たくさんの子供たちがショーケンのまねをした。
そしてなんと最後に口に含んだ牛乳をカメラにむかって吹き付ける。
さすがにこのシーンは、親たちから批判を浴び、ある時からカットされた。
このドラマからハードボイルドという言葉がはやり出した。
平松さんショーケンに取り込まれていた時代のお話。
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| 古本読書日記 | 06:10 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑