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2019年10月 | ARCHIVE-SELECT | 2019年12月

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吉田篤弘    「おやすみ、東京」(ハルキ文庫)

 この物語は不思議な物語。登場人物がたくさんいる。その人物たちは、それぞれに悩み、希望、挫折などそれぞれの物語を持っている。だから、登場人物一人一人を主人公にして物語を紡ぐことができるのに、それを一つの物語の枠にはめて描いてる。

 だから、この人はどんな人だったけと常に思い返さないと、物語がわからなくなる。

共通しているのは、登場人物が行動し、働いているのが深夜から明け方にかけてと、行動の起点や終点になっているのが、全員ではないけれど、4人の女性がやっている「よつかど」という食堂と夜だけ開店している「イバラギ」という古道具屋。

 この「イバラギ」が面白い。壊れている物を仕入れたり、拾ってくる。中には、主人のイバラギが修理して売るものもあるが、殆どは壊れたまま。イバラギはそんな品物に自分が製品名をつけて販売する。

 イバラギは品物が壊れていることにうれしさを感じる。ようやく人間に従事することから解放されて品物が自由になるからである。
 「月光増幅器」「透明インクペン」「半分ハット」「温風マシンガン」「穏水保存容器」
などが店の販売品の名前。

 対になっている時計がある。一つはいつも15秒遅れ、一つはいつも15秒進んでいる。2つの時計を見ることにより今の時間をしる。これが吉田マジックの文章で読者になるほどと一瞬思わせる。しかし、しらふになると何これ?と思ってしまう。

 アヤノは食堂「よつかど」を他の3人と共同でやる前、一人で食堂を開いていた。そこに毎日やってきて一番安い「ハムエッグ定食」を注文する田代に恋心を抱く。

 近くにあった工場が閉鎖されると田代はやってこなくなった。それでも「よつかど」で働いていてもいつか田代にあってまた「ハムエッグ定食」を創ってあげたいと願っていた。

 そのアヤノが古道具屋の「イバラギ」にゆく。

イバラギが14枚の板をとりだす。これは階段の踏み板だとイバラギが言う。この踏み板に商品名をつけねばならないがいい名前が浮かばない。

 まとまった名前をつけるのではなく、踏み板一枚ずつに名前をつけましょう。と言って、これは13段目ですから「二階まであと二段」これは14段目ですから「二階まであと一段」という名前。

 アヤノはこの階段を踏みしめ二階に上がれば、そこには田代がいると信じる。それで「二階まであと一段」だけを500円で購入。そして食堂「よつかど」まで抱えてかえる。それは少し重い。

 階段の踏み板はどれも同じ。イバラギはこれが「二階まであと一段」と言ったが、一番下の「二階まであと14段」だったら2階にあがることはできない。どうしよう。そんなことを思うと踏み板がぐっと重くなる。

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柚月祐子   「臨床真理」(角川文庫)

 柚月の長編第一作目。

臨床心理士になったばかりの主人公佐久間美帆が担当したのが、藤本司。藤本は知的障害者更生施設に入所していた。

 ある晩、同じ施設に入所していた彩という子が、手首を傷つけ、救急車で搬送される。彩は、救急車を呼んでから到着まで1時間以上かかり、救急車内で、亡くなってしまう。この時、救急車に同乗した司が、彩は自殺ではなく、殺害されたのだと騒ぎ、一緒に同乗していた施設長の安藤を切りつけけがをさせる。

 ここから、主人公の美帆が、同級生だった警察官の栗原とともに、事件の真相にせまり、どすぐろい真実をつきとめる。
 物語については読んで頂くとして、強く感じたことを記述する。

柚月さんは他の作品でもそうだが、当然起きるだろうということを、それは露骨すぎるから際どくかわしてということを一切せず、起きることは起きると描ききる。

 この作品で主人公の美帆が、亡くなった彩の遺品を施設の倉庫に忍び込み探す。そこに障碍者の少年が入ってくる。少年は下半身をさらけだし、美帆にせまる。一般の小説なら、ここで誰かが登場したり、何かが偶然に起こり、危機は回避されるのだが、この作品では、美帆は下半身の下着を力で脱がされ、丸出しになってしまう。男根を挿入しようとするのを、足で挟んで回避しようとする。そこで少年はたまらず暴発して強姦をやめる。

一般の小説では、主人公の若き女性がこんなことになることは無い。

 それから、真正面から障碍者の性の問題を扱っていることにも驚く。普通ではとてもテーマにはできない。実態を斜めには見ないで、真摯に向き合っている姿勢には感動する。

 それから、これは現実に存在することだそうだが、共感覚ということがテーマになっている。人間は言葉により、物事を認識するが、物語では共感覚能力のある人が登場。

共感覚は、人間の喋る言葉が、色に染まってみえる。白は真実を言っているが、赤だと嘘をついているという風に。
 おそらくこんな感覚を持っている人間は、数百万人に一人くらいだろう。だから殆どだれもが、そんな人がいるなどということの認識は無い。

 そんな時に、共感覚を持っている人間は、そのことを誰に言っても、信じてもらえず、気が狂ったとしか認識されない。はかりしれない奥深い苦悩の中での生活を強いられる。

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辻村深月    「東京會舘とわたし 下 新館」(文春文庫)

 会社を定年退職でやめる。家でごろごろしていることもできない。それで、外出をする。顔の面が厚い人は、職場まで行き、かっての上司顔をして、事務所内を歩く。そこまでしなくても、かっての部下などを呼び出し、応接室などで、「最近はどうだ」などとふんぞりかえって問いただす。それを繰り返し行う。

 そんなことをする人もあるだろう。そこまではいくらなんでもという人でも、外出すると、自然と会社付近に行ってしまう。
 そこで、馴染みの喫茶店とか本屋にはいり、店主と思い出や自慢話をしながら過ごす。

 主人公の三科文佳の夫は定年退職をする。一日中家にいるのがたまらず、東京會舘のクッキングスクールに通うと言い出す。文佳は婚約当時を思い出す。文佳に美味しい料理を作ってほしいと夫は思い、自分が時々食べている東京會舘のクッキングスクールに通ってほしいと。

 夫は料理も含め、家事という類のものは一切やらずに通した人。
そんな夫が東京會舘のクッキングスクールに行くとは。夫は、自分が働いていた丸の内のあたりに行きたくて言っているんだと文佳は思う。

 男というものは、覚えるとすぐ実践したがり、どうだうまいかと聞く。そう思っているのに夫は1年もスクールに通うけど、全く家で料理を作ってくれない。

 一緒にかってクッキングスクールに通っていた友達に変だと聞く。

実は、スクールの講師が、料理は教えるが家で作ってはいけないと最初に言う。キッチンは女性だけの神聖な場所。調理器具、調味料、茶碗、お皿などは、全部決められた場所に収納されている。いちいち調理の最中に「包丁はどこだ。調味料はどこだ」と聞かれたては、妻はたまったものじゃない。そしてひっかきまわすだけで、ほったらかしされてはたまらない。使った器具は元あった場所にきちんと洗浄して収納する。そこまでできない人は絶対料理をしてはいけないと教えていると友達は言う。

 それを夫は忠実に守っているのだ。

文佳が銀座に友達とでていたとき、東日本大震災がおき、公共交通が全部止まる。しかたなく東京會舘の喫茶室で過ごす。しかし交通機関はいっこうに再開する気配が無い。携帯もかからない。不安になり夫は大丈夫かと気をもむ。

 そんなとき東京會舘のスタッフが公衆電話は通じますと、電話のあるところまで案内してくれる。
 夫は無事だった。文佳は心配になり
「食事は大丈夫?炊飯器は使える?」
「心配いらない。おまえは自分のことを心配しろ」と言い放ち夫は電話を切る。

翌日、交通機関が再開され家に文佳は帰る。
家から、クッキングスクールで教わった、東京會舘のカレーの匂いがしてくる。
夫が結婚して初めて作ってくれた料理だ。

心の底から美味しいと思った。台所のまわりを見る。
 調理器具、調味料は元ある場所にきちんと収納されていた。

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辻村深月    「東京會舘とわたし 上 旧館」(文春文庫)

 東京會館は大正11年に創業。創業当時は會館だったが、昭和27年に會舘と館の表記が変わった。東京會舘は戦争中は大政翼賛会に接収されて「大東亜会館」と変わり、戦後「東京會館」となったがGHQに接収され「アメリカン・クラブ・オブ・トーキョー」になりそれが「ユニオン・クラブ・オブ・トーキョー」に変わり、昭和27年に「東京會舘」となった。過去二度にわたり、建替えが行われ、今年の1月末に2回目の建替えが終了し営業が再開された。

 この作品は、東京會舘の節目節目を物語にして、現在までを描いている。
上巻では大正時代の名バイオリニスト クライスラーの演奏会から、東京オリンピック時代までを描いている。

 どの作品も味わい深い作品になっているが、」「灯火管制の下で」が印象深い。

 主人公の関谷静子は、昭和19年5月20日、かっての東京會館、現在の大東亜会館で結婚式をあげる。相手は法学部卒業、判事になる予定の水川健治。

 静子は、今日の結婚がいやで、いやでたまらない。何しろ、今日までに水川と逢ったのが2回。顔も見たことが無い。そんな人と結婚するなんて・・・。

 花嫁衣裳を着付けされ、部屋をでる。すると向いから水川家の人たちがやってくる。その時初めて、水川健治の顔をちらっと見る。そして、自分はこんな顔の人と一緒になるのかと思う。

 披露宴も厳かに進み、そろそろ終わりになろうとしていた時に、突然窓のカーテンがスタッフによりおろされる。暗くなったが、ほどなくしてカーテンは上げられる。

 水川が披露宴の後、会館のスタッフに聞く。
「さっきカーテンを下ろしたのは、敵機がやってきたからでしょう。」

 スタッフが答える。
「敵機が一機偵察でやってきたとの情報が入りました。大事な人生の門出の日に、敵機を見せてはいけないと思い、カーテンを下げさせていただきました。宴会係のものが勝手なことをしてしまいました。今は情報はでておりません。大事なことにならず、ほっとしています。」

 東京會舘の一貫した心使いがあらわれた物語だと印象が残った。

作品は、辻村が想像を膨らまし描いているとは思うが、取材を通じて手に入れた事実を基底にして創られていると思った。

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司馬遼太郎   「国盗り物語」(四)(新潮文庫)

 足利将軍家の家督相続者以外であったため、仏門に入っていた覚慶を、還俗させ、名前を足利義秋に変え、信長は、足利時代最後の将軍として就任させる。その後義秋は形だけの将軍に不満を持ち、武田信玄、朝倉義景らと呼応して、信長と対立する。しかし信長が打ち勝ち、義秋を追放。信長は武士で初めて皇族の称号右大臣大将に就任、織田幕府ができあがるが、その後本能寺の変にて光秀の謀反にあい、殺害されるまでを描く。

 吉田松陰の思想が頭に浮かぶ。

思想はフィクション。虚構である。それを具体化し革命を実行するのは狂である。そして、革命が実現したのち、また新たな人間が立ち現われ、統治制度、仕組みを創る。これらはすべて異なる人によってなされる。

 まさに信長は狂の人、同じ意味で言えば、秀吉も狂の人である。

ブラック企業といわれる企業が現在問題になっているが、信長は究極のブラック企業である。人間を単なる機能と考え、体力、知力の限界を超えてこきつかう。それで、無理とか言い訳をすると、自らの組織から追放するだけでなく、その場で首をはね、殺す。

 そんな信長をなるほどと思わせるのが、言葉を持ち、考えたり、話したりすることができるのは、人間のみという考え。
 信長は宗教を徹底的に否定する。寺にある、仏像を破壊する。阿弥陀仏であろうが弥勒菩薩であろうが、すべて単なる木や金属という物質。それを仏なりと世にうそぶく人間こそ悪人と断じる。比叡山の戦争では、僧兵など反逆する兵だけを殺害するだけでなく、比叡山に住む、すべての人、女子供も含め、全員悪人として虐殺する。

 京都に、義秋のための将軍家を創る。石垣を備えたかってない豪壮な屋敷にする。数年はかかる工事を2か月で仕上げろと命令する。石垣にする石を山から切り出すだけでも、大作業。簡単にはいかない。

 すると信長は命令する。人も死ねば単なる物体になる。墓石は石以外なにものでもない。
墓を掘り返し、墓石を使えと。

 狂人。信長に敵対する、朝倉義景、浅井長政、久政を打ち破り城に引き揚げてきて、信長は戦利品だ3つの桐箱をとりだす。その中身は3人の頭蓋骨。その頭蓋骨に勝利の酒をなみなみと注ぎ、明智光秀に美味しいぞ飲み干せと渡す。飲まないと殺される。

 光秀は完全に疲れ、信長に対し恐怖を感じ、心理的に追い込まれていた。信長は光秀の軍功にたいして、近江、丹波の2領を与える。

 しかし、その数か月後、領地を取り上げ、伯耆をはじめ山陰地方2国を与えるという。しかしその2国は、敵対している毛利の領地である。戦い奪い取れば領主にしてあげるということだ。この仕打ちにとうとう光秀は、信長を討つ決心をする。

 狂の極みである。

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| 古本読書日記 | 06:06 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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はぴはぴくるねこ5

胡ぶんはまだくるねこ家にいる。(ブログでは、すでに新しい家)
いつも思うのですが、くるねこ家は夫婦仲が良い。
数日前の記事も、外食時の待ち時間に「もしもうちの猫が掃除を手伝ったら」と
夫婦で喋ったという内容。

メインはやっぱり、ぽっちゃんの大往生。
数えで20歳。きっぱり食を断ち、大きく息を吐いて眠るように死んだとのこと。
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茶々丸は1か月くらい前からゼーゼーいっていたし、
ちこりは、風邪かな?→絶食→死の展開が早かった。
(2015年11月2日に死んだので、もう4年)

ももこも、次の春で18歳。早いものだ。

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2010年

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ついさっき

この写真(2012年3月)に写る5匹のうち、ももことゆめこしか残っていない。
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ねこがかわいいだけ展でも、飼ったことのある柄の猫を探すし、
ちこりみたいなフサフサ猫に憧れる気持ちはありますが、たぶんももこが最後ですね。
(上の写真、右端でおっぴろげているのがちこり)

| 日記 | 15:37 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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ねこがかわいいだけ展

ひきこもりのねえやには珍しく、静岡市まで出かけました。
電車で1時間くらい。

まず、はなゆめママがリクエストした高級「生」食パンを求め・・・
店が開いていませんでした。11時開店。いったのが10時半。
それでも警備員がいて、二人ばかり開店を待っていましたが。

先に「ねこがかわいいだけ展」in松坂屋
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ねこがかわいいだけです。
既に出版されている写真集からよりすぐりの写真を引き伸ばして展示し、
応募された写真をテーマ別に展示し、出口には猫グッズの販売コーナー。
「あらかわいい」「すごい顔ww」と笑うためのイベント。

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前を歩いていた私より少し上の女性二人が、世界の猫を紹介するパネルを見つつ、
「へぇ。『問題解決能力に優れる』だって。うちの部署にほしいね」
「○○部長とかね」
「この猫を雇って、『君に任せるよ』と言ってほしい。ほんと、頼りにならない」
あああ( ̄▽ ̄;)

応募写真の中にも味のあるものが多かったです。
出口に写真を缶バッジにしたガチャガチャがあったので、回してみました。

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かわいいけど、優雅で愉快なトムおじさん(くるねこ)を思い出すけど、
もっと変顔の方がよかった。

パンは無事に買えました。
我が家の前で空き地をショートカットしようとしたところでコケましたが、
つぶれていなかった。(掌に小石が食い込んで穴あいた)
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さあ帰ろうと地下道を歩いていたら、「秋の大北海道展」の文字。
エンデパ(浜松)でやっているといううわさは聞いたが、静岡でもやっているとは。
ということで、引き返して、大道芸ワールドカップでごったがえす街を歩き、伊勢丹に。
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コロッケ詰め合わせと鮭キムチ。

歩き疲れたので、カレーとシーザーサラダのセット。
KIMG0082.jpg

わりと充実した休日でした。
ねこがかわいいだけ展の受付で「障碍者手帳をお持ちですか?」と聞かれ、
鮭キムチの売り場のおじさんには「おう。どれが気になるんだ?」と聞かれ、
カレー屋に入るまでも色々店を決めかねてうろつき、
全体的に挙動不審だったかもしれない。

| 日記 | 15:30 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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司馬遼太郎   「国盗り物語」(三)(新潮文庫)

 美濃の国主となった斎藤道三は、半ば捨てられていた稲葉山城を大改造し巨大な城に作り替え住居とした。

 この城を奪取して、美濃を自らの領国にしようと織田信秀は攻め入るが、その都度失敗をする。それで、奪取は困難と考え、息子であり世継ぎでもある信長の縁談を道三に申し入れる。信秀も道三も、互いに和解して親戚になったほうが、ゆくゆく天下取りをするのに都合がいいと考え、この縁談を進める。

 道三の娘濃姫を信長の妻にするわけだが、周囲は、信長がうつけ者といわれて手に負えない息子ということで大反対したが、道三は信長と面会し、常識を超える破天荒な想像力を備えていることを見抜き、縁談を決意し実行する。

 道三はその後、信長に厚情を持ち指導する。信長の生きざま、生き方は道三の生き方が貫かれている。更に道三は、明智の郷にいる明智光秀の能力のすばらしさにも目をつけ、道三は光秀を第一の部下にすえ徹底的に指導教育を施した。

 道三はその後、世継ぎである長男の義竜と戦いになり、戦死をしてしまう。
その時、信長に「美濃の国を与える」と遺言している。

 道三は「天下をとる」という野望実現に走りぬいた。しかし、美濃の一国を撮るために20年も要した。
 とても天下を取ることなど自分の存命中には不可能と悟り、その夢を娘婿の織田信長に託した。

 そして美濃の国は織田信秀の領国となる。
その間に信長は桶狭間の戦いで今川義元を撃破する。牢人となって流浪していた明智光秀は自分より能力が劣ると思っていた信長の今川撃破に驚き、牢人の身を嘆く。

 斎藤道三、名前だけは知っていたが、そんなすごい武将だったとは知らなかった。革命児信長の原型は道三にあったのだ。

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| 古本読書日記 | 05:55 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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司馬遼太郎   「国盗り物語」(二)(新潮文庫)

 庄九郎は美濃の国の重臣の位置を獲得したが、よそ者ということで、住民からは嫌われ者になっていた。そこで政頼の反撃にあい国外に追放させられる。そこに、隣国尾張の織田信秀が美濃に攻め入り美濃を奪取しようとする事変が勃発。急ぎ美濃に庄九郎は戻り、織田を撃墜。

 直後美濃に大水害が起こるが、復興に陣頭指揮をとる。これにより、人々の名声を勝ち取る。

 この実績に伴い、国主頼芸より、世継ぎが途絶えていた守護代の名跡、斎藤の性を与えられ「斎藤道三」が誕生する。

 そして驚くことに、自分を支えてくれた国主頼芸を国外に追放して、念願の美濃守護大名国主となる。

 さらに頼芸の妻だった深芳野を、頼芸より奪い取る。しかも、その後、明智城主である明智光継の愛娘で明智光秀の姪である那々姫と結婚し小見の方として抱える。

 深芳野が道三のお抱えになったときには、すでに深芳野のお腹には子供がいた。頼芸の子である。もちろんこの子は道三の子として育てられる。

 この娘は濃姫といわれ、信秀の息子、信長に嫁いでいる。

 戦国時代、武将同士が同盟を結ぶために、互いの娘、時に息子を相手に差し出した。それにしても、武将の女性への執着はすさまじい。

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| 古本読書日記 | 06:25 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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司馬遼太郎    「国盗り物語」(一)(新潮文庫)

 私が高校の頃、週刊誌サンデー毎日に連載された、戦国時代初期油売りから実を起こして、美濃の国の国主になった斎藤道三と、うつけものと言われ、少年時代からあばれ者として手がつけられないほどの尾張の国の国主のもとに生まれた織田信長の2人の武将を描いた4巻にわたる壮大な歴史小説。

 作品は大河ドラマにもなり、そのブームに乗ってテレビで「国盗りゲーム」なる番組も放映され「国盗り」が一大流行語となった。

 一巻、二巻は斎藤道三編、三巻、四巻は信長編になっている。信長編は全編明智光秀の視点から描かれ、光秀の人生記のようになっている。

 主人公の庄九朗は僧侶だったが還俗して、牢人となり京都洛中に現れる。そこで油売り屋に入り、商売をするが、いつか武将になりどこかの国主に成り上がることを夢にみてそのための行動を起こす。まず、どこの国主になるか。まとまりにかける美濃の国に絞る。

 当時美濃は鎌倉時代からの守護大名土岐氏が収めていた。活気もなく、勢力は衰微していく。国主の土岐政房には八男二女の子供がいた。長男政頼が国主を継いだが、国主政房は次男頼芸の力を高くかっていて、本当は頼芸に国主を継いでほしかった。
 ここに庄九朗はつけこみ、策謀して、政頼を美濃から追放して、頼芸を国主にする。

この策謀を含め、庄九郎の策謀の数々を描く第1巻は、庄九郎が頼芸の寵愛を一心に受けるまでの過程を描く。

 第1巻を読んで、庄九郎は信長に似ていて革命児だと思った。

当時は寺社の力が圧倒的だった。商売をするためには、寺社に申請書を提出そこから認可書を入手しないと商売はできなかった。寺社は認可と商売からでる利益の一部を上納させる。更に道路にたくさんの関所を置き、そこから通行料をとり、莫大なお金を手にいれ、その制度を維持するために、僧兵を雇っていた。

 庄九郎は、美濃で寺社からその権利をはく奪して、自由経済市場を実現。これが楽市楽座である。そして関所も廃止させた。

 楽市楽座は、信長が初めて実行したものと思っていたが庄九郎が最初に始めたことだった。

 それに、出身階層に関わらず、力のあるものを抜擢。農民であっても幹部にとりたてたりした。

 庄九郎こそその後の斎藤道三であり、その思想、手法を革命武将の信長が引き継いだ。

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宮部みゆき    「おまえさん」(下)(講談社文庫)

 事件の解明は、いつも通りの天才美少年弓之助の鮮やかな推理で行われる。その解決は、下巻の最初の三分の一で終わる。後は逃げている犯人を追う部分が登場人物の人間模様描写のついでで描かれる。

 宮部が大好きな江戸時代の下町の人間模様を望んでいる読者はここからが本番なのだろうが、ミステリーのひも解きを楽しむ読者は、後半紐解きが終了したらその後は付録に思える作品である。

 最初の事件は、辻橋という橋のたもとで殺害死体が発見されたことで始まる。次は新薬「王疹膏」を売り出していた瓶屋の主人新兵衛が切り殺される。
最初の死人は捜査の末、久助という放浪者とわかる。

 実は、久助、新兵衛は生薬屋大黒屋でざくという新薬開発の職人だった。それで、同心平四郎が、大黒屋に事件の根があるのではと大黒屋主人大黒屋藤右衛門を追求する。すると、藤右衛門がとんでもない告白をする。

 藤右衛門がざくだった時代に、久助、新兵衛と一緒に、風呂屋で同じざくの吉松を風呂で溺死させたと。吉松は天才的ざくなのだが、できた新薬のレシピを抱え込み公開せず独り占めする。さらにまわりのざくとも交流しない変わり者。それが嵩じて殺害ということになる。

 それから、実はかゆみ、傷に万能な膏薬「王疹膏」を吉松は開発に成功。新兵衛はこのレシピを入手して、大黒屋から独立して、新薬の製造販売を独占して大儲けすることを目論んでいた。

 同心平四郎や将来を嘱望される同心の信之輔、岡っ引きの政五郎、甥っ子の弓之助が、吉松殺害に犯人は関係していると推理し久助、新之助殺害犯人を捜す。

 吉松にはおせつという恋人が当時いて、子供を身ごもっていたことを知る。おせつは、3人が吉松を殺害したことを知っていて、特に「王疹膏」を販売して儲けている新之助を脅す。しかし、新之助が逆におせつを脅し、それに降伏してどこかに消える。

 吉松殺害から20年。おせつのお腹の子が20歳になる。母の仇をとろうとして久助、新之助を殺害したのではと平四郎の考え、2人の捜索に全力を傾ける。しかし、2人は犯人でないことが明らかになる。

 では犯人は。読んでいる私も戸惑う。
ここで天才弓之助が登場して犯人を明らかにする。

 本当にがっかりしたのだが宮部さんは推理小説でやってはいけない禁じ手を使ってしまう。
 ここまで、全く物語に登場していない人間をいきなり犯人として登場させるのである。

 推理小説を読む楽しみは、探偵や刑事と一緒になって、犯人は誰かを推理することにある。この楽しみを作品は完全に奪っている。

 推理小説と思って読んできた私は、気が抜け、がっくり肩を落とした。

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| 古本読書日記 | 06:22 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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宮部みゆき     「おまえさん」(上) (講談社文庫)

 「日暮し」シリーズの3作目。分厚い。上下巻それぞれ600ページを費やしている。これだけの作品で解説がついていない。不思議だと思ったら、宮部の執筆が大幅に遅れ、単行本と文庫が同時発売になったからだそうだ。

 作品全体の感想は、下巻の紹介で記載する。

この作品で引き起こされる殺人事件の原因となる事件が風呂屋で行われる。大黒屋といわれる生薬屋で、大黒屋独特の言い回しだが、新薬を開発しているざくという職人の吉松をほかの3人のざくが風呂の中に押し込めて、溺死させる。

 ほかの客がいなかったかもしれないが、番台には店のものが見張っているのだから、この殺害がわからないはずはない。

 しかし宮部の説明で、我々の常識を覆し、なるほどと思わせた。

舞台は江戸時代なのだが、西暦何年のことだかわからないが、この事件の起こる少なくとも10年前までは、風呂屋はどこでも男女混浴だった。そこで、風紀はみだれ、男女が愛し合ったり、男が無理やり女性を襲ったりする事案が頻発。風紀紊乱が目に余るということで、街の風呂屋での男女混浴を禁止した。

 そんな風紀紊乱は、見ていればわかり、止めるように回りが抑え込めばいいのにと思うのだが、不思議だ。

 風呂屋が明るい見通しの良い場所だと思うのは、現代の風呂屋をみて、そこから江戸時代の風呂屋を想像しているから錯覚が起こる。

 江戸時代の風呂屋は暗かった。灯火には魚油を使う。本当は菜種湯を使えば明るくなるのだが、高価で使えない。だから、風呂場ではみんな手探りで移動していた。前後左右が殆ど見えないのである。
 風紀紊乱をお題目で客を集めていたところもたくさんあったろう。

 だから、ちょっとした事件が起きても、番台は、事件を起こした犯人の嘘の告白をそのまま受け入れることが殆どだったのだ。

 なるほどそうなんだと宮部の着想の深さに感心した。

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司馬遼太郎   「世に棲む日々 (四)」(文春文庫)

 高杉晋作は、藩に反旗を翻し、クーデターをたった80人の兵で起こす。さらに、これに山県狂介(後の有朋)が200人の兵で呼応する。それにしても藩兵は万の規模に上る。更に幕府が長州藩を潰すことを決定して広島まで軍を進めてくる。

 これに晋作、山県が挑む。とても勝ち目はないと思われるが、晋作、山県の類まれな戦法、更に、当時の武士は戦うことを知らない無力集団、更にこれがすごいのだが、小さな集団にどんどん農民やその他の武士以外の人たちが戦うたびに加わり大きな集団となってゆく。

 そして、晋作、山県はかろうじてクーデターを成功させる。しかし藩政府には参加せず、その後の余韻の残った小倉戦争などを戦う。

 しかし、すでに晋作は結核を患っていて、下関で亡くなる。これほど、日本を改革のために、駆け抜け、強烈すぎてドラマ作品でも描けない人生を歩んできた高杉晋作僅か享年28歳である。

 驚きである。

先日新聞に、維新の群像という特集のなかで、白石正一郎が取り上げられていた。
下関の先端、竹ケ崎にわずか2軒あったうちの一軒「小倉屋」の主人である。

地の利を生かして、海峡を通る船から雑貨や食料を買い込み販売、更に商船まで持つようになった富豪である。晋作には戦う金が無い。それで、晋作はこの白石に全面的に頼ることになる。

 白石は平田国学を学び、これに傾倒し、尊王であるなら全面的に支援すると応じ、維新実現のバックボーンとなる。この白石の家には、坂本龍馬も西郷隆盛も寄宿し相談にやってきている。

 白石は晋作に対し、あなたに全財産をかけると宣言し、事実全財産をささげ、「小倉屋」は倒産。その後出家して僧になる。

 晋作が亡くなったのも白石の屋敷だった。白石の屋敷は、維新実現のための基地だった。
 白石は歴史上の人物として、もっと評価されるべき人だ。

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| 古本読書日記 | 05:49 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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