萩原浩 「母恋旅烏」(双葉文庫)
そして、ホームエンターテイメントサービス社略称HES社に家族で登録。レンタル家族として生計をたてている。
レンタル家族というのは、家族を失ったり、核家族となった一人暮らしの老人の家庭などにゆき、そこで、なつかしい家族になりかわり幸福な家庭を再現したり、結婚披露宴に呼ぶ友達などがいない場合、その友達に成り代わり、披露宴に出席するサービスを行う会社のことをいう。
この物語でも、そんなレンタルサービスの風景が萩原独特のギャグをふんだんに取り入れられて描写されている。
一人暮らしのおばあさんの家にゆく。清太郎が23歳で亡くなったおばあさんの息子秀之を演じる。しかし、清太郎が秀之だと言い張っても、本当の息子とは異なる。それにどんな息子だったかも清太郎は知らない。
「お前が23で死んだときはつらかった。」とおばあさんは言う。
それに、清太郎が上手く答えられないでいるとおばあさんが怒る。
「お前はどうして死んだのかも知らないのか、ばかたれ。」と。
寂しく一人で暮らす、女性の家に清太郎が父親として行く。
でてきたご飯とともに、女性の話を聞く。女性は最愛の恋人に裏切られ死にたいと思っている。しかし、一人で死ぬのは辛いし、寂しい。お願いだから一緒に死んでほしいと。こりゃあ大変と逃げようとするが、体が思うように動かない。女性が言う。ごはんには眠り薬を大量に混ぜてあると。そして今ガスの元栓をあけたからと。
バラック小屋に一人住む老人の家にゆく。すると突然の激しい雨。トタン屋根をはじきおちる雨だれがものすごい音をたてる。
すごい雨だと清太郎が言うと、老人はあれは雨では無い。敵機の空襲だ。すぐ外に出て対空射撃をしろと掃除機のホースを握らされ、雨の中に飛び出させられる。
主人公の末子寛二の姉が披露宴にレンタルとして出席。友達籍席に座らされるが、聞くと全員レンタル。その時の花嫁は中学、高校と最も嫌いだった香織。香織の悪行を全部桃代に肩代わりさせ、そのせいで高校を退学させられた。
その香織から友達代表でスピーチと一曲歌を頼まれる。
桃代はスピーチで新婦香織の悪行を披露。援助交際までしていたことを言い、最後に一曲。曲は「今日でお別れ」。
このむちゃくちゃで終わるかとおもったら、披露宴が終了すると、披露宴に出席していた芸能プロ社員から「歌手になりませんか」とスカウトされそのまま歌手になる。
まず、ここまでのエピソードが破天荒で面白く笑いが止まらない。
後半は、レンタル業をやめて大柳団之助にわびをいれて、清太郎一家は劇団にもどる。ここからは、落ち目になってしまっていた劇団を立て直す過程が描かれる。
萩原はレンタル部分で力を集中して精力が尽きたのか、後半は描写は平板で、ストーリーもどこにでもある平凡なもの、ありきたりの人情噺となり急につまらないものになってしまった。
レンタル家族をもっとつきつめ、そのまま最後までいってほしかった。
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| 古本読書日記 | 06:18 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑