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2019年07月 | ARCHIVE-SELECT | 2019年09月

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石井光太   「浮浪児1945―戦争が生んだ子供たち」(新潮文庫)

 1948年発行の「朝日年鑑」によると、戦争で家族を失い戦争孤児となった子供(14歳以下)は12万人。そのうち住む家もお金もなく、浮浪児となっているのが3万5千人となっている。浮浪児は全国を流浪しているため、実数はこの2-3倍はいたのではと推定される。

 著者石井さんは、戦後70年の2015年にこの作品を出版している。石井さんは、戦後浮浪児だった人を探しその生の体験の声を拾った。生の声を聞くことができる限界が戦後70年だと思い調査を開始した。

 浮浪児たちは上野の地下道に集まった。物乞い、新聞売り、残飯あさり、靴磨き、それから闇屋の手助け、窃盗、スリ、ありとあら
ゆることをして生き延びようとした。

それにしても食料が無かった。朝日新聞によれば上野では毎日2-3人、一月間で6-70人の餓死者がでていると記事にしている。

 兄弟がいた。食べるものがなくて、人糞を食べ飢えをしのいでいた。弟はやせほそり、倒れて動けない。「ラーメンを食べたい」とつぶやく。兄は物乞いをしてお金をもらい、5円をもってラーメン屋でラーメンを作ってもらい、弟のところに持ってゆく。しかし、その時すでに弟は呼吸をしていなかった。こんな切ない話がある。

 しかしこの作品のハイライトは孤児施設「愛児の家」の話である。「愛児の家」は戦争末期、石綿たたよさんが一人の孤児を家に連れて帰ってからスタートし、何と今でも施設は続いている。

 石綿さんは、戦争孤児をみかけると、「子供がかわいそう」と言って、家に引き取る。多少資産もあった。そのすべてをなげうって、孤児支援をする。国からも都からも補助はない。どんどん浮浪児、孤児は膨れ上がり200人も生活するようになる。資金が底をつくから、年がら年中いろんな家をまわり、資金を募る。子どもに空腹を味合わせてはいけないから。

 コメ確保に新潟まで職員とともにでかける。しかし、警察の取り締まりが厳しく、すべて召し上げられる。そこで、途中の赤倉で、コメを炊いておにぎりにする。

 上野に到着する。警察がヤミ米を摘発し、コメを全部とりあげる。そんな時、「愛児の家」の子供たちが「おかえりー」と出迎えてくれている。職員たちは子供に向かっておにぎりを放る。ヤミ米摘発を後目に、子供たちと一緒におにぎりを頬張る。

 遊び道具などないし、貧乏。そんな環境では、先生と子供たちはいつも大声で歌を歌う。

冬雪が降っていて、寒く冷たい。そんな時
  雪さんひっこめ!! 雪さんひっこめ!!
  お日さんがんばれ! お日さんがんばれ!

魂がはいった石井さんのルポルタージュである。

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| 古本読書日記 | 05:49 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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井上荒野     「だれかの木琴」(幻冬舎文庫)

 どうみたって異常な行動なのに、当人は全く異常だとは感じていない。更に、その異常行動は、どこにでもある普通の日常に、ふっとしたきっかけから無意識のうちに入り込んでしまう。

 警備会社に勤める光太郎は、部下の信頼も厚く、仕事もでき、部長昇進が目の前。中学生の一人娘かんなは体操部に所属して毎日張り切って学校へゆく。アパート住まいから脱却して、中古ながら一戸建てを購入。手を入れてリフォームが進む。主人公の光太郎の妻小夜子は、幸せな生活を満喫している。

 そんなとき、近くの美容院「MINT」に行き、海斗という若い美容師に髪を切ってもらう。海斗への印象も薄く、特に何も感じたわけではない。そこに海斗から簡単な来店お礼の営業メールがくる。

 それに突きあがってくる感情が抑えられなくなり、つい返信メールを返してしまう。そんなことは今までになかったことで受け取った海斗は驚く。

 堰を切ったようにそこから、小夜子はあふれかえるほど、海斗にメールをだす。また短時日のうちに必要もないと思われるのに、髪を少しなおしてくれと小夜子は頻繁にMINTに訪れる。それから、無言電話もMINTにかける。
 「今日夫婦用のベッドが届いたの。どう思う」と写真付きのメールまでくる。

 そしてとうとう海斗のアパートを探し当て、アパートまで行く。海斗はそのとき恋人の唯とベッドイン中。その部屋にあがり、3人でお茶まで飲む。

 完全に小夜子はストーカー状態。ところが当人は海斗が大好きだというわけでもなく、ストーカーをしているという認識は殆どない。

 事実、夫と抱き合っていても一瞬海斗が頭を過ることはあるが、夫を愛し、夫に身をゆだね幸せを感じている。

 日常にふとしたことで異常がはいりこんでくる。こんなことがあるのだろうかとは思うが、それでも少し心が穏やかでなくなる。

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| 古本読書日記 | 06:02 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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湊かなえ     「絶唱」(新潮文庫)

 湊さんは、武庫川女子大を卒業している。この武庫川女子大時代に阪神淡路大震災に遭遇している。卒業後アパレルメーカーに就職。1年半後に退職して、青年海外協力隊に入り、2年間トンガで活動している。この作品では湊さんは千晴という女性になっているが、トンガでゲストハウスを経営している女性に会い、この女性との運命の出会いが、湊さんを作家になることを決意させる。

 この本はトンガと大震災を結び付けた4つの作品を収録している。

主人公の千晴は大学4年生。ミュージカル同好会で友達だった静香と泰代にくっつく形でいつも3人で行動していた。武庫川の海岸で、真夜中3人ででかけ、大声をあげ「sunrise sunset」を歌ったことが3人の絆を深め、大切な青春の一コマになっていた。

 そんな時、大震災が発生した。千晴のアパートは何とか持ちこたえた。しかし、ライフラインは破壊され、とても生活できる状況ではない。そんな時、バイト先の女性から電話があり、千晴に高槻の自分の家まで逃げてと言われる。

 阪神電車が甲子園と梅田の間を運行すると聞いて、歩いて甲子園まで行き、何とか高槻の友達の家に着き、生活をとりもどす。そして、数日後大阪にいる高校生の時の憧れていた男性のアパートにたどりつく。

 そんなとき、友達の泰代から電話があり、静香がマンションの下敷きになり亡くなったと知らされる。そして、泰代は千晴が心配になり、歩いて千晴のアパートまで行き、千晴が高槻に行ったことを知り、なぜ無事だったら静香のところに行かなかったのか、自分だって千晴が心配になってアパートまで行ったのに・・。どこが大切な友達なんだと厳しくなじられ泰代とそこから別れることになる。

 千晴は、自分のことだけを思い、全く静香、泰代のことは頭にうかんでいなかった。これが、千晴を完全にうちのめした。

 数日後、千晴はアパートに帰る。こんなひどい状況でも、郵便が届けられていた。

その中に、静香からの手紙がきていた。震災前に出されていた手紙だ。

 「泰代も含めて千晴は一番大切な友達。武庫川での絶唱は素晴らしかった。何か困ったことがあったら、いつでも言ってね。すぐに駆け付けるから。」

 千晴は参った。これを克服しようとトンガにボランティアにでかけることになった。

湊さんをうちのめし、そして支えてくれた小説家になるための原点となった作品だ。

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| 古本読書日記 | 06:03 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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浅田次郎    「帰郷」(集英社文庫)

 浅田は戦争を知らない世代。しかし、普通の人々を主人公にして、戦争の悲惨さ、切なさを見事に描き出して、戦争文学の現代の第一人者になっている。

 こんなことは戦争中にあったとは思いつかないことを、そうだな、こんなことはあったんだろうなと思い起こさせ、それがクライマックスに登場して、感慨深く読者にズシーンと共鳴させている。

 南の島で、食料もつき、ジャングルの中、次々兵士が倒れ、そのまま餓死してゆく。そして、アメリカ軍の攻撃により、玉砕となってしまう。

 何万人もの兵士が全員死ぬ。しかし、その中に数人がたまたま生き残る。ジャングルの中をあてどもなく彷徨う。
 しかし、食べ物が無い。どうしようもなくなり、倒れた兵士の人肉を食べる。ここまでは、いくつもの戦争小説に登場し、読者はその生臭さに顔をしかめ、悲惨なことだと作品を読む。

 浅田はそこで、もうひとつ突っ込みいれ読者をぐっとうならせる。

息もたえだえの倒れた兵士が言う。
「故郷へ帰りたかった。でも、もうここで死ぬしかない。故郷へ帰りたい。俺をお願いだから食べてくれ。そうすれば、君の胃の中に納まって、僕は日本に帰ることができる。お願いだから食べてくれ。」

 玉砕ということになれば、全員死亡ということになる。だから、戦死通知が家族に届けられる。だから、家族のもとでは、悲しみのなか、葬式をして次の暮らしに踏み出してゆく。

 しかし、生き残った息子が、故郷の家族との再会に思い焦がれて、帰還してくる。故郷の駅に到着するとおじさんが待っている。
 おまえはすでに死んだ人間。それで、お前の妻は、お前の弟と再婚した。おまえの2人の子供も、父母になついている。しかも、弟と妻の子供も誕生している。

 お願いだから、家にはもどらず、どこかへ消えてくれ。こんなに切なく悲しいことはない。

太平洋の真ん中で、潜水艦が沈められる。中尉が2人乗っている。100mの深海だ。救助されることは全くありえない。最早死しかありえない。

 そこで一人の中尉が言う。
「戦死だろうが殉職だろうがかまうものか。俺は人を傷つけず、人に傷つけられずに人生を終えることを心からほこりに思う。」
 そして、2人は歌う。チャップリンの映画「モダンタイムス」で歌われる「スマイル」を。

じわじわと沁みてくる余韻がたまらない。

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| 古本読書日記 | 05:59 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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石井光大   「蛍の森」(新潮文庫)

 私の小学生時代、 授業で、籟病という病気があって、この病気にかかると、目がつぶれたり、鼻や耳がもげてきたり、手足が腐り死んでゆく恐ろしい病気だと写真つきで教わり、怖くなった。絶対そんな人がいたら近付いてはいけない。その病気は伝染するから。

  小さいころは、よく物乞いがやってきて、玄関口にたって、お米やお金を恵んでくれるようお願いをしていた。その中に、目がつぶれていたり、足が無い人が時々いた。
 「籟病の人だから、家からでちゃあいけない」と強く注意された。

家族から籟病患者がでると、その家族は村八分にされた。その家では、村八分が怖くて、病人を捨てにいったり、中には殺してしまうという事件まで起きた。

 石井光大は、世界の貧困を描いたりするノンフィクションライター専門の作家だ。しかしこの作品は小説になっている。

 石井はノンフィクションの題材として、籟病の悲劇の歴史や実情を丹念に調べた。しかし、これをノンフィクションにした場合、場所も人名もAだNだと仮名にしないと、作品にできない。それではノンフィクションにならないと考え小説の形式にしたのだ。

 この物語で知ったが、籟病にかかった人の多くは、歯にいくつかの金歯の人が多かったらしい。地を這うような暮らし、それができなくなったら、金歯を抜いて、金にかえてしのごうとしたためだそうだ。

 それから、病死や自然死はしないという決意をもっていたひとがたくさんいた。もう、どうやっても生きてゆくことができず、これ以上はもう無理となったとき、自らが命を絶つために、懐に青酸カリをしのばせていたそうだ。

 籟病は今は差別語でハンセン氏病と言わねばならない。この前、ハンセン氏病患者の人たちが、国を相手どり差別され続けられたことの訴訟で勝訴して、国の敗訴が確定した。

 もう、患者さんの姿は無く、その子、孫の世代の人たちが原告だった。
長すぎる道程だった。子どもの頃のハンセン氏病患者に対する強烈な差別を思い出し、涙がでそうになった。

 小説という形をとっているため、どうしても石井自身の想像がはいり、そこが若干弱点になっているが、それでも全体は、渾身の力を込めて書き上げたノンフィクションだ。

たくさんの人に読んでほしい作品である。

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| 古本読書日記 | 05:57 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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渡辺裕之   「傭兵の召喚 傭兵代理店・改」(祥伝社文庫)

 浩志が率いる傭兵部隊「リベンジャーズ」に参加していた主人公の明石柊真は、イラクのモスルで活動中、仲間の京介が何者かに狙撃され亡くなるのだが、その責任はすべて自分にあると思い込み、柊真は、犯人捜しと仇討に立ち上がる。

 リベンジャーズにはサブリーダーのワットが、アメリカ最強の特殊部隊にかって所属した関係で、特殊部隊出身の、狙撃兵が4人いる。しかし、簡単にはみつからない。しかし、彼らの居場所を知っていると思われるファイセルから、アブドゥラという男がパリにいる。そいつとまず接触しろと柊真は言われパリにむかう。

 パリの大規模なデモのなかに、柊真はファイセルを発見する。ファイセルが背負っていたバックパックを群集の中に放り投げる。あわてて柊真が拾い上げる。そこには時限爆弾がはいっていてあと5分で爆発するところだった。ファイセルは何者なのか。結局よくわからないまま、狙撃され殺されてしまう。

 ファイセルを殺した男は2人。彼らの乗っている車を衛星通信で捕捉しながら追跡、やがてフランクフルトにゆきつく。

 ここでパリから柊真を追ってきたリベンジャーズのメンバーが2人が柊真と離れ、柊真を支援する立場で2人を追跡。

 柊真は、追跡していった米軍基地で拉致される。米軍兵士の乗った車は、フランクフルトの郊外の街にある、中東都市を模した秘密訓練基地に行き、それをリベンジャーズの隊員が追跡、ここが物語のクライマックスになる。そこでの戦闘で、米軍兵隊をリベンジャーズが殲滅させる。拉致された柊真は、軍用機に載せられるが、スイス上空で自動脱出に成功。パラシュートで地上に降りる。

 なぜ京介が射殺されたのか、よく読まないとわからない。京介は、米軍の麻薬組織解明のために潜入捜査をしていて、その麻薬組織から指示されたISILの人間に射殺されたらしい。
 しかしリベンジャーズが殲滅した米軍兵の中に京介殺害指示をした人間が含まれているかは判明しない。

 それに、最初に追跡したファイセルは、何のために物語に登場したのかもよくわからない。

 まったく、すっきりしない物語だった。

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| 古本読書日記 | 06:28 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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小関智弘   「町工場・スーパーなものづくり」(ちくま文庫)

 日本の技術力を基礎からささえる町工場の実力を、元旋盤工ならではの視点から描きだしたルポルタージュ。

 小関さんが旋盤工になりたての頃、先輩の旋盤工が「100分の1ミリ」とはどういうものか教えてあげるといい、小関さんに髪の毛を一本抜いてみろという。それで髪の毛を一本抜く。

 すると職人の旋盤工が、「俺の髪の毛も一本抜け」と命令する。それで、その職人の髪の毛を抜く。職人がそれぞれの髪の毛を左手と右手の親指と人差し指に挟んでふりましてみろと言う。そして、どっちの髪の毛が太いか答えろという。

 「私の髪の毛が太い」と小関さんが答える。

 職人が100分1ミリまで計測できる測定器マイクロメータをもってきて計る。
 小関さんの髪の毛が100分8ミリ。職人の髪の毛が100分7ミリ。
これが100分1ミリの世界だと職人が言う。

 一人前の旋盤工になるには8年かかると言われていた。

 でもこれにより100分1ミリを身近感じられるようになった。

 それにしても、人間の指先というものは、こんなにも鋭いものかと小関さんはこのことにより学んだ。

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今野敏    「真贋」(双葉文庫)

 警察小説を書かせたら横山秀夫と双璧をなす今野敏。この小説も警察組織やそれに伴う人間模様が描かれる。

 窃盗現場に臨場した、主人公の萩尾刑事と相棒の秋穂。その手口、盗難品のある場所だけを特定して盗みをはたらく、これは「ダケ松」にしかできない。それで「ダケ松」の身柄が確保され、「ダケ松」も自らの犯行を自白し、逮捕され身柄を検察庁におくられる。

 しかし、萩尾は犯行は「ダケ松」の犯行ではなく、彼の弟子がやったと確信し、検察の起訴に待ったをかける。
 手口は「ダケ松」しかしない手口だし、自白もしているのだから逮捕、起訴は当然と警察内部から大きな非難が起こる。

 ミステリーというのは、事件現場での現場検証や、聞き込みが行われ、真相に近付くことに面白さがあるのだが、この作品、そうした捜査場面はほとんどなく、ひたすら、萩尾と署内の他の人たちとの会話ばかりが続く。

 その間、萩尾が「ダケ松」の犯行ではないと主張する新たな材料が生じるわけではない。これで200ページ近くが費やされるのだから、読む方は辛い。

 それで、物語は、この窃盗に結びつくような形で、デパートで開催される陶磁器展に出品される国宝「曜変天目」の真贋が、時間をおいて何回か鑑定される。その都度、本物だったり偽物だったりと変転する。

 この部分の手口は、面白い。

 それで、物語の半分をかけた、「ダケ松」の弟子が特定され逮捕されることはない。いったい、あの前半200ページは何のために描かれたのか納得がいかない。

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| 古本読書日記 | 06:25 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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石井光太    「ニッポン異国紀行」(NHK出版新書)

 高齢化社会で不足した労働力を、外国人労働者を受け入れて対応しようという政府方針が示されている。外国人が日本に居留して生活をしてゆくことに、表にでていない、厳しい現実と、その中でもしたたかに生き抜いている外国人を焦点にあてたルポルタージュ。

 私の家の近くにUSSという会社がある。東京ドームをゆうに超える敷地に大量の中古車が置かれ、しかも次々と運びこまれてくる。

 でも購入者を殆ど見ることがない。いったいこの中古車販売会社、こんな大量の車をどのようにして売りさばいているのだろうといつも疑問に思っていたが、この本でその方法を知った。

 ここに集められた車の殆どは海外に輸出され販売されているのだ。ここの車は毎日のようにオークションに出品される。USSでは全国に17の会場をもち、月72回のオークションを開催、12万台を毎月販売している。

 このUSSの会員に中古車輸出業者は登録。ここで仕入れた車に20%の利益をのせ海外に販売している。

 驚くことだが、例えばトヨタのカローラ、新車で販売価格は150万円なのだが、これが3年落ちの中古車となると販売業者購入価格だと70万円ほどになる。
 これに利益20%を乗せる。さらに輸送費を含め、左ハンドルにするなど改造を施すと、現地販売価格は新車の倍くらいの価格になってしまうのだが、それでも売れるそうだ。

 実は、国内で販売する車に対して、海外で販売する同じ車種は、マフラーやシートなどの部品の質をメーカーは大分落としている。

 そのことを海外ユーザーは良く知っていて、高くても質の良い日本国内仕様の車をもとめているのだそうだ。
 これは驚きだった。

 また中古車輸出販売業者で日本人がやっている会社は殆どない。ハンドルの位置を変えたり、輸入国の実情に合うように車を手直しする方法を、日本の会社は殆ど知らない。そのネットワークを築けれないと中古車輸出はできないからだ。
 海外中古車ネットワークも興味深い。

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| 古本読書日記 | 06:22 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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石井光大    「絶対貧困 世界リアル貧困学講義」(新潮文庫)

 現在1日1ドル以下で暮らす人は世界で12億人いる。石井がアフリカ、中東、アジアの貧困地帯を歩いて、その実態をつまびらかにしたルポルタージュ。

 グローバル化といえば、売春市場はもっとも国際化が進行している。
売春婦がグローバルに大きく移動する要件は3つある。
 ①戦争や災害による難民
 ②国際的イベントを狙っての渡航
 ③豊かな国で売春の需要がある

特に気になるのが②。サッカーワールドカップでは、多くの海外の人々が集まる。試合の数量後、ファンが興奮して、酒飲み場で大騒ぎする。騒いだ後、どうしても売春婦を求める。

ドイツのワールドカップでは4万人の売春婦が海外から流れ込んだそうだ。

 東京で開催するオリンピックではどうなるのだろう。

スラム街の売春婦は集団で行動する。売春を無差別にすると、当然妊娠する。アジア、中東では、表向き、売春や未婚者のセックスは存在しないことになっているので、中絶手術することは困難なことになる。

 もちろん例外が存在するが、その費用は60万円が相場。売春婦が稼ぐ年間の収入は多くて2,30万円。数年分の年収が必要となり、中絶などできない。

 それで、「お腹を殴ってもらう」「冷たい水の中に一週間入り続ける」「膣の中に毒をいれる」というとんでもないことをする。だから死亡する売春婦も多くいる。

 で実態はどうなっているかというと、結局産むということになる。

生まれた子供は、他の売春婦仲間が育てる。

 子供たちは、夜売春の手伝いをする。しかし昼間は、他の貧困の子供たちと異なり、学校へ通う。

石井が売春婦に言う。
 「子供に売春の手伝いをさせるのはよくないじゃないか」と。

売春婦が答える。
 「娘には売春婦になってほしくない。だから学校にも通わせている。私が売春することで可能になっている。娘は大きくなると母親が売春婦だったことを軽蔑すると思う。彼女は絶対に売春婦にはまらないだろう。そうやってしっかりした人間になってくれれば、それでいいのよ。」

 この後、6年後石井が同じ売春宿を再訪する。
当時、5人の子供がいたのだが、全員高校生になって頑張っていた。

 少し、切ない思いもしたが、よかった、嬉しくなった。

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石井光太    「アジアにこぼれた涙」(文春文庫)

 石井の出世作「物乞う仏陀」を出版する前に、石井がアジアの難民キャンプを中心に訪ね歩いたルポルタージュ。

 ブータンは、数年前国王夫妻が日本を訪問、その微笑みに日本国民が感動して、「世界で最も幸の国」として知れ渡る国になる。

 このブータン1970年代にはもともとブータンに住んでいたネパール人と、その後移住してきらネパール人とあわせて、国民の30%以上をネパール人が占めるようになる。インドからも移住してくる人たちもいて、多民族国家となっていた。

 当時の国王はこの状況に、王制が転覆されるのではないかと危惧するようになる。そこで、単一民族国家にすると宣言し、ネパール人を強制的にネパールに追放。ネパール系住民はその政策に反対するが、弾圧、拷問、投獄でネパール系人民を力で圧迫。15万人から20万人のネパール系人民がネパールに逃亡し、難民キャンプヲ形成し、どうにもならず現在に至っている。

 ブータンを追われたネパール系人民は、劣悪な住居環境、教育も受けられず、苦難の生活を強いられている。

 この悲惨な状況を見た石井は、ネパールの権力者で、憲法を制定した、元法務大臣に無策ほったらかしは人間の生きる権利を否定することになる。難民を支援し、移民として受け入れるべきと迫る。

 元法務大臣が答える。ほったらかしにする原因はすべてネパールの貧困にある。ネパールは、農村は反政府ゲリラに支配され、都市には失業者があふれかえっている。多くの国民が海外に出稼ぎする。男性は肉体労働に従事し、女性は売春婦となっている。
 ネパールは国内に難民を創っている。

 こんな貧しい国が、ブータンからの20万人の難民を受け入れられると思うか。自分の国の人たちの生活を保障できないのに、ブータンからやってくる難民など受け入れることができるわけが無い。

 私たちは難民の悲惨さをマスコミを通じて知り、憤りとともに、どうにかならないかといらだちを感じる。
 元法務大臣の言葉は実に重い。うわついた主張や議論が軽薄に思えてくる。

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