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2019年01月 | ARCHIVE-SELECT | 2019年03月

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コナン・ドイル  「回想のシャーロック・ホームズ」(創元推理文庫)

 コナン・ドイルのホームズジリーズ短編集の第二巻。1894年に発刊されている。紹介の翻訳本は1960年の文庫版。少し古く、居酒屋と訳すべきところを今は死語になっている「酒保」と訳し、その古さを表している、最近では光文社古典新訳文庫で出版されており、こちらで読んだほうがなじめるように思う。

 本には11の短編が収録されており、どれも頭脳明晰のホームズの推理が冴えわたる作品ばかりである。11篇中10篇は推理物になっているが、最後の11篇目は推理小説でない異色の短編になっている。

 その11篇目「最後の事件」が当時のドイルの状況を反映していて興味をそそる。

ホームズの宿敵にモリアーティ教授がいる。犯罪というのは単純な犯罪もあるが、組織や権力に結びついて行われ、犯人は捕まらず迷宮入りとなる犯罪も多数ある。その犯罪を組織から依頼されて、計画だけをたて、実行者は別の人間を仕立てる。この計画者になるのがモリアーティ教授。犯罪はすべて迷宮入りとなってしまう。

 このモリアーティ教授の前にたちはだかるのがホームズ。モリアーティ教授はホームズの家までやってきて、自ら計画する犯罪にホームズがかかわらないよう説得する。当然ホームズは拒絶する。

 ホームズは、モリアーティを犯罪者として警察に叩き出せれば、死んでも構わないくらいに思っている。

 ホームズとワトソンは、ロンドンを出てスイスに行く。この時のホームズとワトソン、危険を回避するために車両を一車両貸し切りにする。これに驚いたのだが、何とモリアーティ教授は一列車特別仕立てで全部貸し切りにして、ホームズの列車を追いかける。

 スイスのマイリンゲンという村に行く途中で、大きな岩が落ちてきてあやうく下敷きになりそうなこともある。

 マイリンゲンに宿をとりローゼンライという部落にでかける。途中にあるライヘンバッハという滝を経由してゆく。その滝を見学しているところに、ローゼンライのホテルから手紙が届けられる。重病の宿泊者がやってきたので、ワトソン(彼の本来の仕事は医者)に治療に来てほしいと。

 ホームズを残して、ホテルに戻ると、そんな手紙は出していないと言われる。これは、危ないと滝に戻ると、ホームズはいなくて、書置きがある。これが最後の事件。モリアーティと対決すると。

 ワトソンは覚悟する。ホームズとモリアーティは滝の底に身を投げ、死んでしまったと。

ドイルにはルイーズという愛する妻がいた。そのルイーズが結核を患い、スイスに転地療養する。ドイルも妻の世話でスイスにゆく。この時ドイルは小説を書くことをやめようと決意する。それで、ホームズを死なせる小説を書いた。

 しかし、ホームズファンがそれを許さなかった。そのファンの熱い思いに応えて、実はホームズは死ななかったとして復活させた。

 ホームズは当時世界的英雄だった。実に興味深いエピソードである。

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エラリー・クイーン  「ローマ帽子の謎」(創元推理文庫)

 エラリー・クイーンの国名シリーズ第一作品であると同時に、クイーンの処女作品でもある。日本の推理小説でもよくあるが、作家と同姓同名の人間が主人公になって作品に登場する。この作品の場合、父子で登場。父はリード・クイーンで警部。そして息子エラリー・クイーンが名推理役となっている。

 ニューヨークのローマ劇場で、上演中にモンティー・フィールドという弁護士が毒殺される。その際、フィールドが被っていたシルクハットの帽子が紛失する。

 このモンティー・フィールド弁護士は悪徳弁護士。いろんな人の致命的弱みとその証拠をつかみ、それをネタに強請りをして、お金をせしめることを主たる仕事としている。

 こうなると、周囲はフィールドを殺害したいという人ばかり。容疑者だらけという状態になる。
 事実、物語は、フィールドと共同弁護士事務所を開設、一緒に行動していたベンジャミン・モーガン弁護士が、当日の観劇にもきていたため、モーガンが犯人ではないかというトーンで物語は進行する。しかし、劇場からでるときフィールドの帽子をかぶっていなかったり、所持もしていなかったため、捜査は暗礁にのりあげる。

 この物語、昔の正統的な推理小説の手順を踏んでいる。事件に関わったか、関わっていそうな出来事について、その捜査過程を事細かく描く。だから、捜査過程での不要部分が多くしかも長い。

 そして最後に、作者クイーンはすべての捜査について描写している。ここから、誰が犯人かあててくださいと読者に挑戦状をつきつけている。

 で、物語では殆ど登場することがない、舞台男優スティーヴン・バリーが犯人ということになる。

 物語のなかでバリーが大富豪の娘フランセスと婚約しているという記述が、犯人ではないかと推理するほとんど唯一の記述。

 実は、バリーは、わずかだが黒人の血がまざっている。大富豪一家ではそのことに気が付いていない。このことを知り証拠を握ったフィールドが暴露するとバリーを脅しお金を巻き上げようとする。そんなことを類推できるような記述は全く無い。これで、犯人を読者が突き止めるのは殆ど不可能。

 しかし、バリーが犯人であることを積み上げる論理は見事。犯人はわかっているが、証拠が無い。それで、フィールドの下僕であるマイクルズにバリーが犯人であることを知っているし証拠もある、もし、暴露されたくなかったら公園に来るように、という手紙をバリーに対して書かせ、そこでやってきたバリーを逮捕するという今でいう囮捜査のような手法で物語は終わる。

 しかし推理小説の手法は誠実。100年前の時代のアメリカが豊かに表現され、味わい深い古典推理小説だった。

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河野裕    「最良の嘘の最後のひと言」(創元推理文庫)

 私の学生時代、「明日に向かって撃て」で共演した、ポール・ニューマン、ロバート・レッドフォードが再び共演して、アカデミー賞を受賞した傑作作品「スティング」が公開された。この映画でコンゲームという言葉を知った。登場人物の殆どが稀代の詐欺師。その詐欺師同士が丁々発止と鮮やかな詐欺を働き、大金を最後にせしめる愉快、爽快のコメディ映画だった。この詐欺の戦いがコンゲームという。

 この作品も、典型的なコンゲーム作品。肝心な場面がくると、BGMとして映画「スティング」で使われた曲「ジ・エンターテイナー」が流れる。

 IT最大手企業のハルウィンが、特別な求人募集をする。採用者は1人。給与は年収8000万円。応募資格はたったひとつ、応募者が超能力を有すること。

 驚くことに、この採用条件に2万人の応募者がある。(中には動物の応募者もいた)書類選考などを経て、最後に超能力を持つと思える7人が残る。

 3月31日18時より最終試験を行い、4月1日0時に採用者を決め、採用通知書が渡される。

 実は、この7人のうち最も優秀だと判断されたNO1の志願者にすでに「採用通知書」が渡されていた。これを、最後の奪取して午前0時に試験官に渡すことができれば、採用される。この通知書をだましだまして最後に手にするまでが物語の中身。

 これが結構大変。中には超能力でフェイクを使う志願者もいて、嘘の「採用通知書」を創ったり、物を入れ替えたり、遠くのものを取り寄せたりすることができる志願者がいるから。

 全員が嘘をつく。すべてが嘘しかでてこない。しかし、そこには大切な3つのルールがある。「誠実の嘘」のルールである。

 一つ目は、自分のための嘘ではないこと。二つ目は相手が信じるまで嘘をつき続けること。
そして三つ目が最も重要なのだが、ネタをばらしたとき、だました相手と一緒に笑える嘘であること。

 私はいまだに超能力の存在は信じていないが、超能力があることの採用条件で2万人も応募があるということは、世の中には超能力を持つ人がいるかもしれないとも少し思う。

 この応募者の中に、仲秋という女性の超能力者が登場する。幼いころ、意識することなく超能力を使う。両親をはじめ家族から気味悪がられ、徹底的に排除される。それで、超能力を封印する。しかし、超能力を持つことが恐怖になり、他人と交わることができず、一人も友達ができなくて孤独。

 何とか友達がほしくて、採用試験に応募する。

あなたが毛嫌いしている、人見知りでおどおどしている人は、ひょっとすれば超能力者かもしれない。

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立川志の輔選 監修 PHP研究所編「古典落語百席」 (PHP文庫)

 古典落語100席を紹介している。
見開き2ページに紹介落語のあらすじと、数行の志の輔の解説が添えられている。
筋のまとめかたが実にうまい。話のポイントがきちんと書かれ、最後に落ちがピタと決まる書き方。志の輔の文章表現力に感服する。

 「禁酒版屋」という1席がある。

家来が酒で失敗を起こす。これに怒った殿様が藩内に禁酒令をだす。そして城の出入り口に番屋を設置し、ここを通る品物を改めることにする。

 城内にいた大酒のみの近藤という役人が酒屋に酒の配達を依頼する。酒屋はそんなことをすれば自分は大きな罰を食らうと断るのだが、何とか工夫して番屋を潜り抜けろと近藤は言うことを聞かない。

 そこで、カステラの箱に酒をいれたり、油瓶に酒を入れて通ろうとするが、悉く番屋に見つかり、検番の役人にすべて飲まれてしまう。頭にきた酒屋がしかえしてやれと小便を瓶につめ持ってゆく。

 番屋で検番に言われる。「何を持ってゆくのか」と「近藤さんから小便の注文がありましたので、お届けに」。すでに酒をたんまり飲んで酔っていた検番「最初はカステラ、次は油、今度は小便だと。こちらによこせ今改めるから。」

 瓶のふたをあけ、コップにつぐ。「さっきは冷だったが、今度は燗酒か。」とうれしそうに飲む。
 今の円楽や先代の小さんが得意演目で演じるが、この小便を飲むところがクライマックス。

 落語の素晴らしいところは、実際の物は全く使わず、仕草だけで演じる。ここが落語の真骨頂。もし、水を入れた瓶で、飲み込むと水であっても、観客は気持ち悪くなり、顔をゆがめる。

 ところが仕草だけの落語は、コップを手前に引いて、小便をついだコップを口元に持ってゆく。その芸にひきこまれ、この後どうなると生唾を貯め、緊張感がいっぱいになる。

 そして、直後に緊張感が強烈に破壊される。
仕草だからできる。まさに芸である。

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ブレッド・イーストン・エリス 「レス・ザン・ゼロ」 (ハヤカワepi 文庫)

 この作品は1988年に出版されている。エリスの処女作である。エリスはニューロストジェネレーション、MTVエイジといわれる作家の旗手として世界から脚光を浴びた作家である。

 主人公のクレイをはじめとして、トレント、リップ、ダニエル、ジェアード、アラナ、クリフ、ジュリアン、スピン、そしてクレイの恋人ブレアなど、パーティで知り合った若者たちが登場する。彼らは毎晩のようにパーティをしたり、クラブにでかけ、ドラッグや薬物に溺れる。

 全員がセレブ、富豪の子供たちで、お金は使い放題。クレイの父親は、映画会社の重役をしていて、その関係で有名俳優たちもパーティーに訪れる。

 奇妙なのは、つるんでいる仲間たち、名前は登場するが、それぞれが他者に無関心で、希薄な関係、常に空疎な空気が漂っている。

 それは家族関係でも同じ。クレイには妹が2人いて、時々作品にも登場するが、名前が出てこない。妹の一人が~すると一貫して書かれる。父と母は離婚をするが、父が威厳と世間を慮り、クリスマスや家族の誕生日には集まって食事会をするが、食事の最中全く会話が無い。

 それにしても、度肝を抜かれる想像不能なセレブの子供たち。ある子が愛車のBMWを盗まれる。それで、同じ車のもっと素敵な色違いの車が手に入るラッキーとその子がうれしそうに言う。

 さらに想像を超える究極の場面。
仲間のリップが言う。
 「もう、何でもあって、これ以上何か欲しいものは何も無い。」
 「じゃあリップ。何か失うものはあるの?」
 「俺には失うものは何もないんだよ」
こんな会話は、社会の最底辺まで落ち込み、後は死だけがあるだけの状況のときにでてくる言葉。

 失っても、また雨のように同じものが降ってくる。彼らも最底辺にいる人たちと同じように、後失うものは死ぬことだけと本当に思っているようだ。

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東山彰良     「罪の終わり」(新潮文庫)

 この作品前作の「ブラックライダー」の続編として書かれている。続編なのだが、おかしいのは、物語の舞台は「ブラックライダー」が誕生する前、つまり「ブラックライダー」という物語に至るまでの物語として書かれているところ。「ブラックライダー」を読んでない人でも読めないことは無いが(私もそうなのだが)、多分「ブラックライダー」に比べれば、迫力も中身も欠けるだろうということは予想がつく。

 2173年6月16日にナイチンゲールの小惑星がアメリカに衝突する。アメリカは衝突に備えて、世界各国に核弾頭を搭載した迎撃ミサイルを配備。このミサイルが発射されたため、アメリカのみならず世界は核の灰が覆い、50億人が死亡する。

 アメリカでは東部にキャンディ線という保護地域の線を敷き、その線の範囲内であれば、食料を支給したり、物品の売買もできるが、その範囲外では食料は無く、死んだ人ばかりの荒廃した地となる。

 ナサニエル ヘイレンとシリアル キラーのダニー レヴンアースはキャンディ線をでて、アメリカ放浪の旅にでる。その過程で、ヘイレンは人々が、死んだ人たちを食料にすることを受容することを語る。その言葉と行動が神格化されて、この物語の後にくる「黒騎士団」結成につながる。

 一方、その説法はキリスト教の教理に反するとして「白騎士団」が結成され、ネイサン バラードとビル ギャレットはヘイレンを刺殺する命を受け、彼らを追跡する。その過程を物語にしているロード小説である。

 この物語は結構よみにくい。
一つは、物語が客観描写で書かれず、ネイサンの紀行記として書かれているから。ヘイレンについては、ネイサンが見たことと、彼の想像だけが綴られ、ヘイレンの実像がつかみにくい。

 それから、キリスト教を軸に神の視点から書かれていて、その神の視点がわかりづらい。

 読むことが辛くなり、何度も投げ出しそうになった。

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奥田英朗   「向田理髪店」(光文社文庫)

 かっては炭鉱の待ちとして栄えたが、今はすっかり寂れ、財政破綻もし、高齢な人ばかりになった北海道苫沢町。
 そんなわびしさだけが迫りくる寂れた町をめぐる連作作品集。

奥田のシニカルで悲しいくらいのユーモアで描く、地方の町の姿が胸に痛い。
 どれも、見事な作品なのだが、特に印象深かったのが「中国からの花嫁」。

40歳を過ぎて、農家を継いでいる大輔。こんな沈む街で、農業をしている男性に嫁いでくる女性などいない。それで、どうにもならないので、中国人お見合いツアーに参加することになる。そこで、見合いした女性と結婚する。しかし、みっともなくてとても式や披露宴などやる気持ちにはならない。

 見合いの実際が知れると、とてもじゃないか、お祝いなんてな気持ちにはならない。

大輔の語る見合いの実際を聞いてみる。

 仲介業者に2百万を払いツアーに参加する。

「大連の空港に着いたら、出迎えの中国人がいて、マイクロバスで案内されるんだけど、それには私と同じように見合い目的の日本人がいっぱい乗っていて、それだけで気が滅入って・・・。
 それでホテルの見合い会場に連れていかれて、まるで団体客の部屋割りみてえに女の人をあてがわれて・・・。いや、渡航する前に写真と経歴書をみせられて、3人だけを選んで、そのひとたちと見合いをするんだけどね。それも『はい次の方お願いします』なんて時間を区切られて。それもすぐ隣には別の方が見合いをしてるから、落ち着いて話もできねえし、暖房が効きすぎて汗は止まらねえし、なんかカーっとして、わけわかんないまま見合いを終えて、誰がいいですか、なんて聞かれても、答えようがないし。」

 それで、200万円も払ったのだから、一番体力がありそうで、働きものに思える女性を選んで、これにするかと決める。
そして、決めた女性が奥さんになる。
 こんな過程をしれば、大輔が奥さんをお披露目したくない気持ちはよくわかる。

でも、大輔の選んだ奥さんは、明るく朗らかでみんなの人気者になる。

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秦建日子   「刑事 雪平夏見 愛娘にさよならを」(河出文庫)

秦は「推理小説」で小説家としてデビューした。この小説が話題を呼びテレビドラマ化される。そこでこの小説で活躍した刑事雪平夏見を主人公とした作品をシリーズ化する。この作品はシリーズ4作目の作品である。

 作品は3作目「殺してもいい命」の最終シーンから始まる。雪平が銃撃戦のなかで、犯人安藤を撃ち殺すが、雪平自身も肩と腹部に弾を受け、そのまま意識を失う。そのとき愛娘美央にも流れ弾が顔をかすめ飛ぶ。それから雪平は刑事の職をはずされ監査室勤務に。美央は祖父母に引き取られ美央との面会は許されなくなる。この作品にはそのため雪平の苦悩、切なさがずっと流れる。

 物語は、世の中からはじき出され、存在が殆ど無い人間は、ごみのような扱いを受ける一方、地位や力を手にした人間は、事実を糊塗として、ぬくぬくと生き抜く社会構造を描きだしている。

 しかし、ゴミのような人間だって、人間が持つ喜怒哀楽の感情はある。それが、力のある者たちからズタズタにされると、怒りは集中し盛り上がる。

 学者である門田は出版した本がベストセラーになり、テレビのコメンタイターとして活躍している。門田の妻香苗は、再婚で、門田の前に鷺沼という貧乏役者と結婚したが、生活力の無さに絶望して愛娘峲菜を連れて家を出、門田と結婚する。門田と香苗には長男の息子がいる。

 門田家族が仲間と一緒に釣りにでかける。そこで、息子と峲菜が川に流される。香苗と門田により息子は救出されるが、峲菜は流され溺死する。

 鷺沼は自分の子峲菜を助けようとしなかった、門田夫婦に強い憎しみを覚える。更にそのとき釣りを一緒にしていたのが、医者、警察官、小学校の先生。彼らもただ見ていただけで、助けることができたのに何もしようとしなかった。しかも、警察は居合わせた警察官や他の地位のある人たちのことを慮って、事故現場には門田家族しかいなかったように調書を書き換える。

 力さえあれば、全くなんでもありだ。鷺沼の怒りは大爆発する。

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村田沙耶香   「きれいなシワの作り方 淑女の思春期病」(文春文庫)

 小説家になったころのエッセイ集。

村田さんが、ある男の子から言われる。「村田さんも、A(その時一緒にいた女性)さんも結婚諦めているんでしょう。」
 村田さんが言う。
「願望はあるよ。でもできないのなら、老人ホームでもてたいです。」
 そしたら、男の子もAさんも「やばい、私と同じことを思っている」と声をあげる。

もう、30歳を過ぎているから、年齢は恋をするには上すぎる。でも老人ホームにはいれば、一番年が若い。だから、みんなにモテモテ。

 今の状況では、とても恋人ができるような状態ではない。その現状に目をつむり、遠い将来の世界を考える。要するに単なる現実逃避。切ないねえ。

 村田さんには捨てたいのだが、捨てられない物がある。オトナのおもちゃの店に行き小説の材料として購入してきたものである。

 キスをしたことのない女性が、疑似体験するオモチャである。よくあるオモチャの形状ではなく、男の人の顔から鼻の下だけを切り取ったような形をしていて、電源をいれると舌の部分がぐるぐるまわる・・・どうにもくだらない物なのだが、これが捨てられない。

 ゴミなどに出して見られたらと思うと・・・・。ベランダでハンマーで壊してから捨てる。しかし、そんな姿を見られたら。それで購入してから5年間も持っている。

 しかし、村田さんおもしろい物を持っているねえ。行動派でこれだけの好奇心が無ければ、読者の度肝を抜く小説は書けない。村田さんに大拍手!!

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| 古本読書日記 | 05:46 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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