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2018年11月 | ARCHIVE-SELECT | 2019年01月

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有栖川有栖    「火村英生に捧げる犯罪」(文春文庫)

臨床犯罪学者の火村准教授と推理作家有栖川コンビが活躍するミステリー小説集。
どれも面白いのだが、掌編である「鸚鵡返し」が印象に残る。

京都中京区のマンションで男が殺される。30歳くらい、現金など金目の物は残されていた。窃盗目的ではなく怨恨が殺害の原因と思われる。
犯行現場の一人住まいの部屋には鸚鵡が飼われていた。
その鸚鵡がしゃべる。
「ハンニンハタカウラ」と何回も。

犯人は高浦か。被害者の周囲を捜索すると、高浦の存在が浮かび上がる。高浦は、被害者とある女性をめぐって鞘当てをしていた。

被害者が殺されたとき、死の直前に「犯人は高浦だ」と何回も鸚鵡に向かって叫び、それを鸚鵡がしゃべっていると思われた。
しかし、鸚鵡が、死の直前にしゃべった被害者の言葉を簡単に覚えてしゃべるものだろうか。専門家に問い合わせると、絶対無いとはいえないが、可能性は少ないという。

実は対象の女性にたいしては、もう一人坂田という大学生が鞘当てをしていた。
犯人は、この坂田だった。

 彼は部屋に鸚鵡を飼っていた。そして、毎日「ハンニンハタカウラ」と鸚鵡に対しくりかえし、鸚鵡にこの言葉を覚えさせた。
 坂田は犯行後、自分の鸚鵡と被害者の鸚鵡をとりかえていた。

シンプルだが、パンチの効いたトリックだ。

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| 日記 | 06:13 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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有栖川有栖    「スイス時計の謎」(講談社文庫)

推理作家有栖川有栖と、犯罪社会学者で、名探偵でもある火村英生のコンビによる4作の中編ミステリー小説集。

 三隅和樹、村越啓、倉木龍記、神坂映一、野毛耕司、高山不二雄の6人は、高校の同学年で、高校の中でも成績がよく優秀な生徒たちだった。6人は、高校時代「社会問題研究会」というサークルを立ち上げた。しかし、中身は何もなく、排他的で、周りの人間とはちがう気取ったサロンのような集まりで、しゃべりあったり、すこしスノッブな会話するサークルだった。

 そんなサークルでも絆は強く、高校卒業しても2年間に一度の割合で同窓会を開いていた。

6人は、彼らの紐帯の強さを示すために、メーカーはイタリアの名門ブルガリだが、風防やメカはスイスメイドの30万円の腕時計を購入、それを嵌めて同窓会に出席するのが常だった。

 その同窓会が開催される日の午後、村越が自分の事務所で殺害される。そのとき、腕時計が破壊される。その破壊された腕時計を犯人はきれいに掃除をして時計が争っているとき破壊されたことを隠すように細工をする。しかし、使った掃除機から、破砕された一部の粉がみつかり、それが彼らの腕時計のものに一致していた。

 女性は腕時計の表面が手首の内側に来るように嵌める。これは、腕時計が破壊されないようにするためだ。被害者の村越も女性と同じように内側に表面がくるように嵌めていた。ということは、村越の腕時計が破壊されたとは考えにくい。また、高山は自ら時計にT.Fと名前の頭文字を彫り付けて他のメンバーに自慢していた。

 このような背景が浮かび上がってきて、ここから名探偵火村の推理が冴えて、犯人を言い当てる。

この推理が見事にロジカル。どこかで、有栖川が主張していたと思うが、本格ミステリーというのは、些細な物証から、ロジカルに推理を積み上げ真相を明らかにする作品だと。その意味では「スイス時計の謎」は本格ミステリーの王道をいく作品である。

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| 古本読書日記 | 06:10 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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もういくつ寝ると

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ファンヒーター前にて

寒くなりましたね。

| 日記 | 00:08 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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有栖川有栖    「作家小説」(幻冬舎文庫)

作家になるには、お金は殆どいらない。パソコンとプリンターだけがあれば良い。しかも、中央の大きな文学賞をとると、それで、家が一軒もてるほどの収入がある。本をあれこれ読んでいると、編集者の接待で、銀座の高級クラブや高級レストランでしょっちゅう飲食ができるし取材と称して、国内、国外のあちこちに顎足つきで旅行ができることを知る。

 生活は時間や決まった業務にしばられることなく、寝起き時間も自由。全く羨望してしまう生活。
こんなことが、多くのエッセイに書かれるから、小説家になりたい人がどんどん増加する。

 この作品は、そんな華やか、優雅な作家生活の実情をブラックユーモアをもって紹介し、その厳しさ辛さを描く短編集。

 作品が出版されたのは2001年。そのころの状況を背景に書かれているから、少し現在とは実態は異なるかもしれない。

  2000年1年間に出版された新刊本は6万7千点。これは驚くことに週末の土日を除くと、毎日250点もの新刊が生み出されていることになる。出版不況になり、業界は縮小しているのに、80年代前半に比し出版数は倍になり、出版社も増加しているし、あまり倒産の話も聞かない。一体どうなっているのだろう。

  出版社、取次店は本を出荷すると同時に請求書を書店に発送する。驚いたのだが、書店は売れない本は当然返品するのだが、返品の戻し金をもらう前に、届けられた本の請求金を支払わねばならない。

 だから、出版社や取次店は、返品本数以上に出荷数を多くしていれば、資金繰りが可能となり、出版社は持ちこたえて、倒産にはならない構造になっている。

 たまらないのは、書店。ネットで本を購入している人たちが増加しているし、かつ出版不況の影響をもろに書店だけが受けている。だから、書店が街からどんどん消えてゆく。

 この作品集を読んで初めて書店が消えてゆくからくりを知った。

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| 古本読書日記 | 06:14 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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有栖川有栖   「朱色の研究」(角川文庫)

臨床犯罪学者の火村英生が、教え子の貴島朱美から2年前の未解決殺人事件の調査依頼を受けた部屋は、夕焼けで真っ赤に染まった火村の研究室。そして、火村が、差出人不明の手紙をもらい、その手紙に従い殺害死体を発見したマンションが幽霊マンションとよばれるオランジェ夕陽が丘。この白亜のマンションが最も美しく見えるのは、夕焼けを浴び、オレンジにマンションが染まるとき。

 更に、2年前の未解決殺人事件が起きたのは、南紀白浜の隣にある、周参身(すさみ)という、夕焼けが美しく映える、小さな海辺の町。

 作者有栖川は、これでもかというくらい、夕映えの朱色の鮮やかな風景を、描写する。
そして、物語のクライマックス。犯人にとって、最も朱色に輝いている太陽のような存在、声もかけられないほどに思い詰めている女性。日蝕するように立ちふさがる女性を思わず殺害してしまう。そこを、浮き立たせるための、ちりばめられて朱色の風景。

 この作品で2点が印象に残る。

殺人を依頼されてそれを受けている人は、プロの殺人者以外、確実に殺人が行われたか、人殺しをしたところを、依頼者に見られているということ。

 それから、この作品では、殺人依頼を受けた人が、大きな石を上から浴びせて殺そうとしているのだが、その前に依頼人が直接衝動的に、被害者を撲殺してしまう。しかし、その状況では依頼を受けた人は、殺害が終わったかどうかわからないので、当初の意図通り、真上から石を落とす。

 この場合、被害者はすでに死んでいるから、殺人にはならず、罪は問われないとのこと。共犯にもならないのか。理屈はその通りと思うが、少し割り切れなさが残った。

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| 古本読書日記 | 06:12 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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寝姿三種

たまには犬写真をば。

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首が……

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腿が……

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腰が……

なぜこんなストレッチポーズで寝るのかは謎

| 日記 | 00:29 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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有栖川有栖    「有栖川有栖の鉄道ミステリー旅」(光文社文庫)

有栖川同支社大学4年のとき、鉄道エッセイでの名著宮脇俊三の「時刻表2万キロ」にであい、元々鉄道に情熱的愛情を持っていた「鉄ごころ」が覚醒する。これに、彼が師事し、尊敬してやまないミステリー作家鮎川哲也の鉄道ミステリーがさらに「鉄ごころ」を刺激する。

 そんな有栖川の「鉄ごころ」を聞き及んだ山と渓谷社が、鉄道エッセイを書いてほしいという依頼を受けて出来上がった鉄道エッセイ。

 名著「時刻表2万キロ」に比べると、申し訳ないがレベルはかなり劣る。
それは、この本が出版された2008年には、旅情をそそる、急行や準急列車がすべてL特急に変わったり、寝台列車も無くなったことがある。

 更に、国鉄改革により、たくさんあった盲腸線の殆どが廃線になり、基幹線ばかりになったこと。

しかし一番大きいのは、宮脇は当時中央公論の役員だったが、日本のJRのすべてを征服するという壮大な目標を持ち、多忙ななか、週末計画をたて、一人で未踏の鉄道を目指す。その緊張感が、彼の作品全体に覆われている。

 有栖川の作品は、山と渓谷社の依頼ということで、多分編集者も同行して、旅費も出版社が持っている。宮脇の著書と異なり緊張感があまりない。

 更に宮脇は旅行記で、その沿線にある、歴史的背景とか生活ぶりをよく調査していて、その情報を味わいある文章で描き、旅行記に豊穣なる味わいを醸し出させている。

 そんな違いがあるものの、この作品でも味わい深い旅行記が楽しめるのが、群馬渋川から終点大前に至る吾妻線。この線には、世界一短いトンネルがある。樽沢トンネル。全長7.2メートル。火山爆発により美しい岩脈ができ、国の天然記念物となり、これが線路上にある。破壊できないので、トンネルを通したのが短いトンネルを実現させた。

 今も同じかわからないが、渋川をでた電車は、最終駅大前のひと駅前の万座鹿沢駅が終点、ここから折り返す。鹿沢駅でその先たった一駅にゆくための列車を待つ。その待ち時間が1時間46分。

 その列車を待ち、たった4分で終点大前駅に到着。どうして、渋川から最終駅大前まで一本の列車で行かないか不思議な線路もあるものだ。

 この旅で、有栖川は川原湯温泉で一泊する。この川原湯温泉、民主党が政権を取った時、税金の無駄使いの象徴として扱われた八ッ場ダムが出来上がることで、ダムに沈む温泉だった。
 八ッ場ダムはすったもんだの末、完成した。きっとこの温泉は消滅したのだろう。八ッ場ダム論争を思い出し懐かしくなった。

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| 古本読書日記 | 06:15 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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渡辺淳一ほか    「本屋でぼくの本を見た」(角川文庫)

作家たち61人の、最初の作品が本になったときの、初々しいエピソードを綴ったエッセイ集。

 私が学生のとき、若さを発散した女優が登場した。目がぱっちりで可愛らしく、少し広いおでこが聡明さを表していた。映画「旅の重さ」でデビューした高橋洋子である。

 この溌剌女優がしばらくすると、本を出版し、それが中央公論新人賞を受賞した。「雨が好き」である。すぐ買って読んだ。

 文章は完結でしゃれていたが、内容はドロっとしていて、重かった。あんな溌剌ギャルが、こんな大人の小説を書くのかと驚き、その才能に感服した。

 それにしても、作家になることなんて簡単なことなんだと思った、ペンがあればちゃかちゃかと書ける。忙しい女優生活の間に。

 誰でも、一冊は自分を投影して書けばいいから小説は書けると言われる。問題はその先。高橋も出版社にせっつかれ、受賞後第一作を懸命になって書く。それが何とか苦戦しながらできあがり出版社に持ち込む。

 編集者から言われる。「これが小説か」と。

それから、編集者が一行一行一緒になって書きあげ2作目「通りゃんせ」ができあがる。殆ど編集者が書き上げた状態。

 このエッセイ集を読んでいると、本となる作品を作り上げるのは大変なことだとわかる。単行本を書き上げるには、数年を要する大作業だということを知る。

 柴田翔のデビュー作「されどわれらが日々・・・」。「雨が好き」ほど短くはないが、それでも160ページほどのわりかし短い作品。これが完成するまでに3年もかかっている。

 作家は簡単にはなれず、仮になれても生活ができるようになるのは並大抵のことではないことが身に染みてわかった。 

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| 古本読書日記 | 05:58 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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アンソロジー    「見知らぬ私」(角川ホラー文庫)

一流作家による、ホラー作品のアンソロジー。

35歳で亡くなった、大ファンの鷺沢萌の作品が収録されていて、亡くなって15年もたつのに、鷺沢の未読作品に出合い、感動しうれしかった。

 鷺沢の作品も素晴らしかったが、圧倒的によかったのが清水義範の「トンネル」。

主人公の岸和田啓二は48歳のサラリーマン。すこしくたびれている。

岸和田は都心のターミナル駅から2時間もかかる田舎にマイホームを作った。そこは都心のベッドタウンではなく、さびれた田舎。まわりに何もない一軒家だ。快速は止まらないから、普通電車で毎日通う。最終電車9時27分に乗り、最寄りの田舎駅に到着するのが11時15分。そこから15分自転車で走りマイホームに到着する。

電車は、郊外の住宅地に沿って走るが、やがてそれがまばらになり、田畑がひろがる。そして、小さな森を超えると、トンネンルにはいる。いくら田畑が広がる地帯といっても、都心から近い場所。こんなところにトンネンルがあるのは不思議だと思っていた。

ぼんやりしていると、走る先が薄ぼんやりとした明かりがみえる。そこに近付くと、窪みがあり、そこにこたつがあり、誰かが一人こたつに入っている。

それから2週間たった夜、また岸和田は同じ電車で家に帰る。そこで、トンネル内で、また薄明かりの窪みを通過する。そこには若い青年と手をつながれていた女の子がいた。

次の日同じ電車で薄明かりの窪みをしっかりみようとする。その窪みにいたのは25歳で山で遭難死した兄と、9歳のとき病死した姉だった。

兄は、岸和田より勉強もスポーツもでき、優秀な人だった。いつも岸和田は僻んでいたが、一方で兄のようになろうと目標にしてがんばってきた。その結果、48歳でマイホームを持つまでになった。「どうだ、兄さんおれも頑張っただろう。」と胸を張るとともに、兄のおかげでここまでになったと兄に感謝した。

それにしても、兄と姉は亡くなったときのまま年をとらず、暖かく、幸な表情をしている。うらやましいと思った。
次の日、トンネルをでたすぐの駅で岸和田は降りる。線路についていた舗道を歩き、トンネルに入ってゆく。そして、薄明かりの場所まで苦労したが進む。

兄がいる。
「兄貴・・・・」「ばかだな鞄なんかもって、うかつなやつだ。」「うかつ?」「だってお前はもう死んでいるんだよ。」
岸和田は幸せ一杯になって、兄の胸にむかって走る。

 こんな世界が死後あるのなら、死んでもいいかと少し思ってしまう。

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| 古本読書日記 | 05:59 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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有栖川有栖   「菩提樹荘の殺人」(文春文庫)

  推理作家有栖川有栖と英都大学犯罪社会学准教授火村英生コンビによるミステリー4作品を収録。

  今年のハロウィーン。ここ数年、突出したキャラクターが登場していないせいか、子供たちが集まったハロウィーンでは、ウォーリーやキティ、カボチャなど定番の仮装が殆どになってしまった。

 2年前には、ピコ太郎が大ブレーク。たくさんの仮装ピコ太郎が登場して「パイナップーアッポーペン」と舞台で踊り、喝さいを浴びた。テレビをあまりみないから、いい加減なことは言えないが、あのピコ太郎はどこへ行ってしまったのか。とんと御姿を拝見することが無くなった。

 それにしても、漫才、コントなどのお笑いタレントの底辺は膨大。次から次へと雨後のタケノコのごとく、新しいタレントうまれ、一瞬で消えてゆく。

 以前は「お笑いタレントを目指す」などと両親に言おうものなら即座に「そんな恥ずかしいことはやめてくれ」と拒絶されたものである。

 男がもてる条件というのは、見栄えがいい、経済力がある、タフでたくましい、それに高学歴、さらに家柄が良いというものだった。しかし、今は、これにお笑いタレントが加わってきた。

 若い男たちの最大の目標は女性にモテることだ。お笑い以外は、先天的有しているとか、特殊なものを持っているとか、モテる条件に適う男は限られている。しかし、お笑いには、制約はない。

 だから、お笑いタレントになろうという人がたくさんでてくる。

 最近のお笑いタレントは、舞台に登場してすぐに変則的なパフォーマンスをして、笑いをつかもうとする。そこで、笑いが取れて客をつかむと、その後多少笑いのレベルが下がっても、笑いが続くからである。だから、最初の驚かせるパフォーマンスにすべてをかける。

 この本に収録されている「雛人形を笑え」で殺される漫才コンビ「雛人形」の片割れ矢園歌穂、凶器で正面から殴られ、後ろの柱に後頭部を打ち、そのまま反動でうつぶせに倒れる。

 しかし、うつぶせになっているはずの死体が仰向けになっていた。しかも両腕を曲げて直角に真上にして。死の直前に、自らがうつ伏せから仰向けに変わるわけはない。

 漫才コンビ「雛人形」は舞台に登場するとき投げキッスをして、肘を直角にまげてひろげてつきだし、片足をあげ人形のポーズを決め漫才にはいる。

 有栖川は、このポーズを歌穂がすることで犯人は相方だと示していると書くが、私は何としても、最初に笑いをとらねばならないという矢園歌穂の強烈な思いが、死体のポーズになったのだと思う。

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有栖川有栖    「臨床犯罪学者 火村英生の推理 46番目の密室」(角川ビーンズ文庫)

 推理作家有栖川有栖と犯罪社会学者火村助教授コンビのシリーズ第一作目。

 45の密室トリックを書いてきた、推理作家の巨匠真壁が暖炉に上半身を突っ込むようにして殺された。真壁が殺された地下室は密室。これが46番目の密室殺人事件だったのか判別はしなかったが・・・・。

 トリックが実に面白い。

 真壁を暖炉に顔をいれるように仕向ける。そのとき犯人は、屋根の煙突から、おおきな花瓶にテグスを巻いて、真壁の頭が暖炉に入った瞬間に銃口の弾丸のように、その頭めがけて花瓶を落とす。そして、頭を破壊したのを確認して、するするとテグスを引っ張りあげ花瓶を屋根に戻す。ついでに、暖炉で殺しが行われたようにみせないため、テグスの先に点火物をつけ予め部屋に少しまいていた灯油に火をつける。つまり、真壁は何かで頭を殴打され、部屋に火がついたため、そこから逃げようとして暖炉までゆき、息絶えたようにみせかける。

 他にも殺人があったり、有栖川が殴打され意識を失う事件があり、それも種明かしがされるが、テグスで花瓶を落とし頭を殴打するというトリックは圧巻だった。

 それにしても、どうしてどんな分野でも大御所となると、あまたの女性との関係に飽き、かわいい青年との関係が欲しくなるのか。そして、そのことは、女性が自分のところを去るより、青年が去ることのほうが衝撃が大きく、絶対愛する青年を手放さないと強く想いこむのだろうか。

 健全な殆どの青年は、爺さん作家に囲われることは本質的に望んではいない。そんな関係はやがて素敵な女性が現れれば壊れる運命にある。

 しかし、爺さんである大御所に将来まで握られている若い新人推理作家は、身動き取れず追い込まれる。

 この作品の犯人真壁に囲われた若き作家、石町が原稿を書くとき使うパソコンは「だんしょう」と打ちこみ変換すると最初に「男娼」と表示がでる。石町はこのパソコンの設計者にシンパシーを感じる。

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恩田陸    「八月は冷たい城」(講談社タイガー)

 今からずっと先の未来、地球は「緑色感冒」という病気が世界的パンデミックになる。
治療の手立てがなく、コロニー、自治体単位に数百人、数千人と死んでゆく。

 食料生産者が少なくなり、食料不足が極端になる。そうなると緑色感冒者は、死んだ緑色感冒者を食料にして生き延びる。

 パンデミックが収まり、流行が終息に向かう。各コロニーは数人となってくる。しかしコロニーは緑色感冒者によって支配されている。この支配者を「みどりおのこ」と呼び、体全体が緑で蔽われている。

 「みどりおのこ」は、死に際の「緑色感冒者」と対決する。そして、相手を食べつくした「緑色感冒者」が「みどりおのこ」を引き継ぐ。
 このとき食した「緑色感冒者」の人格、記憶を「みどりおのこ」はすべて引き継ぐ。

 コロニーはだんだん統合され、「緑色感冒者」は最後には一人となる。

 こういう発想は恩田さん独自のものなのだろうか。それとも、どこかで読んだり、聞いたことに触発され生まれてきているものなのだろうか。

 いずれにしても、こんな奇想天外な発想を生むという才能には全く敬服する。

恩田さんは、この小説の最後に読者に宿題をだす。
 それまでのすべての人々の人格、記憶を引き継いだ「みどりおのこ」はどんな人物になってしまっただろうかと。

 恩田さんのひらめき、発想などとてもできない私には思いつくことなど不可能である。

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中山七里    「作家刑事毒島」(幻冬舎文庫)

 今作家になるには、出版社に原稿持ち込みで採用されないので、文学賞に応募してそこで賞を勝ち取るか、佳作になる以外にはない。新人文学賞は、中央の著名な賞で20数個。地方を含めれば300個の新人文学賞がある。作家になるには当然中央の文学賞を取らねばならない。

 他のコンテストは、絵でも音楽でも、運動でもある力量がないと応募できない。しかし文学賞というのは、力量は無関係でだれでも参加資格がある。最近は、メールやSNSなど書くという敷居が一段と低くなり、本など全く読んだことの無いひとでも、コンテストに応募してくる。出版不況にもかかわらず、中央のコンテストでは50000以上の応募がある。地方の賞も含めれば20万以上あるのではと推計されている。

 大変なのは、全応募作品に目を通し、書類選考する下読みをする人。あまり売れてない作家や書評家が生活費欲しさに引き受けるのだが、90%以上がとても読めたしろものでは無い。「てにをは」は間違える。でたらめな漢字。言葉の使い方を知らないなど。

 選考が進み、最終段階にはいる。選考委員は大御所や流行作家があたる。最近は、応募作家のレベルが落ち、賞の名に耐えうる作品が無いことが多い。しかし「該当作なじ」はできない。何しろ「賞」がつけば10万部程度の売上があり、出版社にとって売上、利益が見込められるから。

 この物語、新人賞を取ったが、力量が伴わないと思われる新人作家3人を、主人公の人気作家、元警部の毒島が本屋に案内する。

 今は、平均雑誌も含めれば200冊/日に書籍が出版されている。だから、書店には少し経った売れない本を置いておくスペースが無い。3年前に新人賞をとった作家の本は一冊の在庫もない。

 2年前の賞獲得作家の本は自由価格本コーナーにある。売れないから定価の40%で販売されていた。

 1年前の作家の本はまだ販売していた。書店員が説明する。その本には作家のサインがしてある。サイン本は汚れ本、キズ本扱いとなり出版社に返品ができないので仕方なくおいてある。

 さらに、毒島がこの3人を本の裁断場に連れてゆく。
返品本は、そのまま保管しておくと、出版社の資産となり税金がかかる。そんな無駄金がつかえないから、裁断する。その大量の裁断を目の当たりにして3人は衝撃を受ける。

 中山は、事件に絡めて、出版会社、本を取り巻く状況をこれでもかと暴く。正直大丈夫かと思う。流行作家の中山だから書けた作品である。

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萩原浩    「ギブ・ミ・ア・チャンス」(文春文庫)

 一般人として生きるのではなく、何者かになろうと挑戦しつづける、不器用な人たちを描いた短編集。

 主人公の相沢が勤めているのは浦浜市役所商工観光課観光係。数年前市の観光協会が補助金を使いまくって、県内外の企業を集め、デザインコンペを行い、出来上がった着ぐるみ人形が「タケぴよ」。

 不評というより、市民の誰にも認知されずに、放ったらかしになっている。補助金の無駄使いがマスコミで問題として取り上げられるようになり、「タケぴよ」も槍玉の的になりそうになったため、市の「イチジク祭り」のヒーローショーに登場させることになる。

 そして、この着ぐるみに体のサイズが最も合っている相沢に中に入ってもらおうということになる。

 この着ぐるみとにかく不細工。顔がやたら大きくバランスボールほどある。顔は黄色、唇はとんがり赤。市の主要産業である養鶏業のひよこをイメージしている。ところが養鶏協会からひよこの目は真ん丸ではないと指摘があり、楕円に変えられ、さらに養鶏協会のマスコットに目つきが似ているということで、修正に修正を重ね木の葉が吊り上がったような目にさせられる。その三白眼のような目をみて子どもが泣き出す始末。

 頭頂にのっかているちょんまげは市長の後援をしているシイタケ栽培協会の要求でしいたけになっている。

 「イチジク祭り」当日。くそ重たい着ぐるみの中にはいり出番を待つ。司会は元NHKアナウンサーの田保橋。彼女が今日は人気者がやってきています。誰でしょうと子供たちに問いかける。バトルレンジャー、アンパンマン、Pリクアクアエール。「ブッブー。可愛いキャラクターです。」ドラえもん、キティちゃん、ピカチュウ。

 「残念、みんなハズレ。それでは及びしましょう。シータK星雲ヨーK星から浦浜のためにやってきたタケぴよくんでーす。」

 子供たちや観衆が冷たく固まる。

 それでも相沢は、気をいれて舞台へ駆けあがる。しかし、この着ぐるみには使用上の注意として、ゆっくり動く、決して駆けてはいけないとあった。

 はずみで舞台の上で転倒する。頭が重すぎて起き上がれない。二歳年下の同じ観光係に勤めている秋津に持ち上げてもらい。やっと起き上がる。しかし、目の前が真っ暗。顔がずれてしまっていた。あわてて顔の位置を直すと、その反動でしいたけちょんまげが落下。あわてて拾うとするが、着ぐるみでは手に持てない。そこで足で抑えようとする。すると間違ってマントを踏んづけ今度は仰向けに倒れる。

 相沢はみじめになり、舞台からしょげ返って降りる。しかし、会場はそのキャラに大笑いが起こり、万来の拍手が起こる。

 そこから、「タケぴよ」は評判となり、あちこちのショーに呼ばれる。最後は全国ご当地キャラコンテストにまで出場となる。

 司会に呼ばれる。今は壇上にあがりわざとスライディングをして会場を沸かす。
 それにしても、相沢はこのまま市役所職員として「タケぴよ」をずっと演じるのだろうか。少し切ない気持ちになる。

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村上龍    「無趣味のすすめ」(幻冬舎文庫)

雑誌「GOETHE」に連載していたエッセイを収録。

1972年と1979年の2度にわたるオイルショックで、時代は変わった。オイルショック以前、世界は石油が有限資源であるという考えが無かった。この2度のオイルショックを前後してロックという音楽が急速に勢いを失った。ジム・モリスン、ジミ・ヘンドリックス、ジャニス・ジョプリンなどが相次いで死亡。愛と平和の祭典だったウッド・ストックはあっと言う間に忘れ去られ、ロックという運動体は消滅し、単なる商業音楽の一カテゴリーになってしまった。

 安価な石油は、特に西側諸国に大きな繁栄と利益を生み出した。だから、デモを中心とした反政府運動に世界、社会は余裕があり寛容だった。しかし石油が有限であり、価格が高騰すると、社会は反体制運動を排除し、ごく一部のテロ活動だけが残ることとなった。

 村上龍の主張だ。確かにオイルショックの前後のコントラストはくっきりとしている。しかし、日本にはこの主張は通用するような思いはするが、隣の韓国、アメリカ、フランス、スペインでは、大きなデモが頻繁に起こっている。これはどうしたことだろう。村上の主張では説明しきれない。

 企画アイデアはどうすれば生まれてくるのだろう。アマゾンやアップルなどは、何か新しい技術を開発して成功したのではなく、現在ある、ITやAIの技術を組み合わせて新しい企画アイデアを生み出し成功している。

 企画アイデアというのは、現在ある情報、知識、技術をどう組み合わせ新しい価値を創るかということである。

 発想力というのは、頭に蓄積されている、知識、情報を検索して組み合わせ生まれる。しかしそのためには「長い時間集中して考え抜く」ことが必要である。その結果、時に、考えをやめたとき、ふっと類まれな発想が浮かび上がってくる。

 優れた企画、アイデアは「長い期間集中して考え抜く」ことが前提で創られる。
これは村上に完全に同意する。

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