冲方丁 「十二人の死にたい子どもたち」(文春文庫)
この13人目の人をどう扱うか。無視して12人で死ぬと、警察が入り13人目の人が、安楽死した12人により殺害されたとして、12人に罪をきせる可能性があるということで、一人がそれは受け入れられないとして一斉自殺に反対をする。
安楽死のルールは全員が一斉に実施するということになっているので、このままでは実行できない。それで、集まった12人は、13人目がどうして存在したのかを追求することとなる。
その追求の過程は12人それぞれの思いが交錯したり、廃病院の構造が複雑でわかりにくく、集中して読み込まないと、なかなか理解するのは難しい。
最近、精神障害や知的障害を持つ人たちが、強制的に不妊手術をさせることを義務付けていた法律「旧優生保護法」のもとで、子供を産めなくさせられた人たちに対する人権侵害が社会的に大きな問題となっている。この法律は1996年に廃止されているが。
物語で集まった子供たちのなかに、生まれたことが、その子に不幸を背負わせていることになってしまっている子どもが何人かいる。それで、生きることに意味を感じず、安楽死をしようとしている。中には4歳で自殺を考えた子もいる。
こんな中、子どもの一人、アンリが懸命の訴えをする。
自分たちのような不幸な子を産ませないために、不妊報酬制度、不妊した人に報酬を与えるという制度創設させようと訴える。道は険しいかもしれないが、今12人が一斉に死ねば、世の中の不幸な子どもたちの存在と問題に気付き、大きな変化が生まれることになると。
この強い訴えが、集まった子供たちに変化を生まれさせる。
アンリの考えはひとりよがりだと。今自分が不治の病に陥っていても、いじめなどで絶望のなかにいても、やっぱり、死ぬまで生きようと。
この物語の価値は、アンリの訴えが逆に安楽死をやめて、みんなが生き抜くことを選択」した変転にある。しかし、その変転を、読者が受け入れられるだろうか、少し首をかしげたくなる。
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| 古本読書日記 | 06:16 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑