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2018年08月 | ARCHIVE-SELECT | 2018年10月

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道尾秀介   「笑うハーレキン」(中公文庫)

人生の大成功をおさめた人は、記憶は栄光の道を歩んできた輝かしいものばかり。しかし、多くの人は、もちろん楽しい記憶もあるかもしれないが、失敗、躓きが今の自分を表しているというような、失敗の塊が記憶に残る。

 特に、この物語のようにホームレスに落ちてしまった人たちは、失敗、躓きの記憶を嘆き、周りに語っても、それで明日が劇的に明るくなるわけではない。だから、みんな本質を隠して、仮面をかぶりながら生活する。

 家具製造会社を経営していた主人公の東口。最大手の取引先が倒産、更に息子を事故で失い、その一年後に失踪した妻から離婚届が送られてきて、絶望してホームレスに加わり、家具の修理をしながら暮らす。

 その東口が、商売用の軽トラにのると、必ず助手席に亡霊のような人が乗っている。そして、東口の魂を深く傷つけるようなことを言う。東口は、今のみじめな自分になったのは、取引先の社長の井澤が計画倒産をして、しかも妻が失踪したのは井澤のところに行ってしまったことが原因だと、井澤と妻を憎んでいる。

 この東口のところに奈々恵という若い娘が働かしてほしいとやってくる。もちろん、給料などとても出せないからと断るが、懸命に頼み込んでくるので、一緒に仕事をする。
奈々恵もホームレスとなる。奈々恵は幼い頃事故で片足に治癒できないけがをして、足を引きずって歩く。

 この奈々恵が、世界を回ってきて帰ったところだと言い、世界中の話をする。するとホームレス仲間のジジタキさんが、奈々恵に奈々恵が行ってきたという中国の話を懸命に聞く。
奈々恵も中国のことはよく知っていて、ジジタキさんは感心して聞き入る。

 そのジジタキさんがある日突然失踪して、一週間後にまた戻ってくる。そして次の日川に身を投げ自殺する。
 どうしても中国に行きたくなって、悪の組織に誘われ、中国から得体のしれないものを運ぶ仕事をした。悪の手先の仕事をしたことに、絶望して身を投げたのだ。

 実は奈々恵は、家をとびでて、最低の暮らしをしていて、とても世界旅行などできる人間では無かった。だけど、皆には嘘を言って、自慢したかった。

 東口の隣にいつも出現する亡霊、疫病神は実は東口の本当の魂だった。
東口は、ジジキタさんの遺書を読んだり、いろんな事件に遭遇して、自分がこんな状態になったのは、息子を亡くしたことと、妻を愛していたが、それに報いれなかったからだと心から思う。そして、そのことを隠さず生きていこうと決意する。その瞬間から亡霊、疫病神はでなくなる。

 暗いストーリーなのだが、ホームレス仲間が楽しく、明るく、物語は愉快な色調に仕上がっている。道尾の腕が冴えわたっている。

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佐藤雅彦     「プチ哲学」(中公文庫)

マイナスに見えることでも、違った角度からみると一転してプラスに変わる。思い方次第で困難を突破できる。そんな多面的な見方、考え方についていろんな事柄から例示する、ベストセラー本。

 時間というのは、人間を制御、拘束しているもので、いつも縛られている思いがする。
しかし、これを時間から見ないで、自分自身から時間をみてみる。例えば時間を厳守すると考えず、自分の時間を厳守するというように見方を変える。

 我々は通常2次元で物事を考える。しかし、花火は、どの場所から見ても同じ形に見える。これは花火が球形で上がっているから。次元を超えた見方、想像をする。

 新幹線で景色を窓からみる。速すぎて、見えたか見えないうちに景色は消滅する。ところが車内の人や物は同じように高速で走っているのに、きちんと見える。つまり、走っているものは、自分も同じように走れば見えるのである。

 3Mの発明したポストイット。くっつけるためのものを製造しているメーカーの社員がはがれやすいものを作ったらという発想ででき大ヒットした商品。
 枠のなかでかんがえるだけでなく、枠の外に立って考える。これが新しい商品を生み出す力となる

 石鹸いれ。これに水をいれても、底に穴があいているため、何の役にもならない。しかしこの石鹸いれをひっくりかえして水をあびせると見事なシャワーとなる。

 常識をずらして考える。こんな発想方法の逆転の面白さ、考えるためのヒントがたくさん紹介されている。

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岩瀬達哉     「年金大崩壊」(講談社文庫)

この本は、年金が大きな問題として表面化した2001年ころ行った取材がベースになっているため、現在とは少し事情が異なるかもしれない。

 2050年が、現役世代が年金受給世代を支えるピーク時を迎える。岩瀬の分析によると、今の制度のままで、その時でも、持ちこたえることができると主張する。今は少子高齢化が急激に進み、このままでは年金制度が破綻すると喧伝するために、厚労省がデータをねつ造して、国民に刷り込み、掛け率を上げようとしたり、年金支給年齢を上げることを国民に仕方ないと思わせるプロパガンダをしていると岩瀬は断じる。

 この本を読んでおかしいなと思うのは、年金というのは、老後の生活を保障するために、個人が積み立てたお金。だから、その所有は積み立てた個人にあり、それを管理することを社保庁に委託しているのが構図なのに、このお金を社保庁の経費に多くを使用していることである。

 本来、社保庁の事務費、諸経費は、きちんと予算申請を財務省にして、国の経費として支払うべきものである。ところが、1999年発生した経費1138億円のうちなんと860億円が年金掛け金から支払われている。

 年金事務のコンピューターシステムの管理費用、他の省庁のシステムは100億円ほどなのだが、社保庁の費用は500億円もする。しかも、この費用はNTTの独占。そしてNTT関連企業には11人も社保庁から天下りしている。

 社保庁に、OB組織のために社会保険協会と社会保険健康事業財団というのがある。この2団体は、全国にある社会保険事務所に場所を借りて業務をしている、しかし家賃は支払っていない。

 ここで、でた収益9億3000万円を社保庁は裏金として上納させている。それで社保庁幹部の遊興費、裏給与、ゴルフ代に流用している。

 役人は一旦手にいれた利権、裏金集金システムは絶対手放さないようにする。遊蕩生活の水準を落としたくないからである。

 更に年金は目の前にお金が自然と積みあがるシステムである。どうしてもお金を見ると、自分たちのために流用しようという誘惑を抑えることができない。

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| 古本読書日記 | 06:24 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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樋口明雄    「風に吹かれて」(ハルキ文庫)

読んだことが無い作家。経歴をみると、全日本冒険小説協会大賞、大藪春彦賞、エキチカ書店大賞を受賞していて、力量十分な作家であることがわかる。

 多くの作家が、ある年を経ると、自分の故郷や、最も印象深かった時代、小学校、中学校、高校時代のことを書く。

 しかし、その多くは、自分の過ごした時代のエピソードを脈絡もなくごった煮のように描く。同じ時代の空気を吸った人たちに思い出話をするように。だから、その時代をはずれている人が読むと、全然共鳴できない。そして、この小説のように舞台が岩国と特定な地になると、その地の人しかわからない。自己満足のための小説になってしまう。

 この小説も最初主人公のモリケン、ノッポ、ムラマサ、ミッキーの4人の活動場所が秘密基地であることから始まる。
 私の子供時代には、家に娯楽が殆ど無かったため、公園や空き地で遊び秘密基地を作ったが、この作者は私より9歳年下、1973年の中学時代を描くが、そんな時代でも、秘密基地を作って遊んでいたのだろうか。読者を引き付けるために、定番の秘密基地をもってきたのではと読みはじめた。

 ところが、この秘密基地が物語の核となり、輝きはじめる。その核を基盤にして、エピソードや事件が単なる羅列でなく、ひとつひとつがストーリーの構成にきちんと位置付けられている。

 村の宝物さがし、キャンプ、ちょっと恋愛もどき、登校拒否、それに家族問題、いじめの今日的問題が絡み、岩国米軍基地の問題も若干であるが登場。これらが見事に有機的に生き生きとつながっている。

 実際に樋口が経験したことが反映しているとは思うが、ノッポと不良生徒だが憎めない性格の原島が亡くなってしまったのは、切な過ぎた。
 中味は平凡だが、樋口の熱き想いが伝わってくる小説だった。

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| 古本読書日記 | 06:22 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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堂場瞬一    「大延長」(実業之日本社文庫)

 今年の夏の高校野球は大阪桐蔭史上初の2度目の春夏連覇という偉業達成で終了したが、大会の主役は大阪桐蔭でなく金足農業の吉田投手だった。決勝戦まですべての試合で完投、決勝大阪桐蔭戦の5回で疲労のため股関節痛が襲い、もう投げられないと降板。
 桐蔭戦での投球数は132球。甲子園での投球数は881球だった。

この物語も高校野球大会決勝戦を扱っている。対戦は新潟県で5指にはいる県立の進学校新潟海浜と、私立で5回連続甲子園に駒を進めてきた、野球の名門恒正学園。

 しかも、この2校、決勝戦を戦い15回0-0の引き分けで再試合となる。引き分けの試合で海浜高校のエース牛木は完投、165球を投げている。

 海浜の監督羽場は自身が高校野球で肩を壊し、その後の野球人生を諦めた経験から、将来ある牛木の野球人生を終わりにしてはならないと、先発を県大会初戦で痛打をあびKOされた横井にする。牛木をはじめナインには不満が残る。

 実は、牛木は高校2年のとき右膝を故障し、一年間棒にふっている。
もう一度ひざの故障がでれば、野球生命は終わる。

 再試合、横井は案の定恒星に打たれる。特に屈指スラッガー久保には2打席連続でホームランを浴びる。

この作品は、引き分けに終わった日の夕方から、決勝再試合終了までの物語になっている。
しかし、海浜もしぶとく攻め、5回を終わって恒星が7-4の3点リード。まだ頑張れば何とかなると思っていたところで、横井が痛烈なピッチャーライナーを顔面で受けケガをし退場。そして牛木がマウンドにあがる。膝は痛くない。快調な投球で恒星の後続を断ち、試合は6回にはいる。

 ここでランナーをおいて牛木が一塁線を破る。一塁ランナーの小嶋が生還。牛木は3塁まで走り滑り込む。このとき膝を痛める。
 ストレートは投げ込めないが、変化球でかわす。そして8回を終わり、9-7で海浜がリード。9回の恒星を抑えれば、海浜が優勝する。

 しかし、恒星は、牛木が膝を故障していることを掴む。そして、9回は牛木の前にバント攻勢。牛木が守備ができないため、内野が混乱。10-9で逆転される。

 この物語の愁眉が9回海浜の攻撃。先頭打者が3塁打で出塁。ここで牛木が打者で登場。ひざ痛で打てない、走れない。だから作戦はスクイズしかない。そしてスクイズをする。一塁手の久保が猛ダッシュをして打球をとる。そのまま捕手に投げれば完全にアウト。ところが、久保は何と一塁に放り、土壇場で同点になり、延長戦となる。

 久保は、相手投手のケガに乗じて勝つことはフェアでないという信念で捕手にボールを投げない。また牛木が一塁に残り、走れば膝は更に悪化する。それはいけないと思っていた。

 長い物語はここで一旦終了。結果は淡々と、回は不明だが、久保の3ランの後、ケガで戦列を離れていた海浜のキャプテン春名が逆転のサヨナラホームランで海浜の大逆転で終わったことが報告される。

 それにしても長い。再試合前日夕方から、再試合9回まで410ページ。しかも再試合の経過が280ページ弱まで描写される。
 昔「巨人の星」というアニメがテレビであったが、ああだ、こうだと心理描写が長く30分で3球しか投げないことがしばしば。この作品でそれを思い出した。

 この物語の牛本のように、金足農業の吉田投手の連投への非難が今湧き上がっている。しかし、それだと高校野球でも力のある投手数人を擁しなくてはならない。そうなると、全国から選手を集める私立野球校しか、甲子園には出場できなくなる。それは、何とも寂しい。

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司馬遼太郎   「司馬遼太郎 歴史のなかの邂逅2」(中公文庫)

歴史上の人物の魅力を発掘したエッセイを年代順に集大成。その第2巻。第2巻は、信長、秀吉を含む、室町時代末期より戦国時代から天下統一までの時代を生き抜いた人々について収録している。

 唐瘡は梅毒の当時の呼び名。梅毒はコロンブスが新大陸から持ち帰った病気で、瞬く間にヨーロッパに広がる。その同じころ、唐を経由して日本にももたらされた。

 秀吉は女好きだったが子宝には恵まれず、公式には、淀君との間に生まれ2歳で亡くなった鶴松という子と秀頼。しかし、この秀頼は淀君から生まれたのではないのではという説がある。そのあたりの真実、当然淀君も北政所も明らかにしない。

 実は、秀吉は唐瘡にかかっていたのではという説が濃厚で、子種は無かったと言われている。あちら、こちらの戦地に赴くときは、当然、多くの遊女を抱え秀吉は行く。そんな遊女たちと見境なく遊べば、当然唐瘡にかかる。

 これに比べ、家康はたくさんの子を持ったが、彼は身持ちが固く、正室、側室、部下の武士の娘、領地の生娘にしか手をださなかった。
 政治力にたけた、北政所、それに前田利家の正室お松の方は、秀頼の出の元を知っており、関ヶ原の戦いのとき、積極的に秀頼支援をしなかった。

 もし、秀頼が本当に淀君と秀吉の子供であったら、こんな態度はとらず、関ヶ原の戦いも違ったものになったかもしれないと司馬遼太郎は書く。

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| 古本読書日記 | 06:27 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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幸田真音   「スケープゴート」(中公文庫)

主人公三崎皓子は51歳東都大学経済学部教授であると同時に新進気鋭のエコノミストで、テレビ番組のコメンテイターでも活躍している。

 戦後ずっと与党として政治を動かしてきた明正党が衆議院選挙で大敗して野党として下野、その結果進志党が政権を奪還、しかし3年半後に進志党が選挙で負け明正党が政権を奪還し、その時、明正党総裁、総理大臣についたのが山城。

 山城は今の安倍首相を彷彿させるが、物語では、政権奪還した時点の年齢が69歳で、かなり安倍首相より年齢が高い。

 皓子に突然総理の山城から面会したいからと電話がはいり、皓子は驚いたが山城に途惑いながら出会う。

 そこで言われたのが金融担当大臣としての入閣を要請される。そこから、皓子の人生が大きく変わり、最後は日本で初めての女性首相に上り詰めるまでを描いた作品である。

 面白いのは、入閣要請の時、最初は断るのだが、最後はすこし考える時間をくれということで、山城と別れる。同意したつもりはないのに、しばらくすると官邸からすぐに官邸にくるようにと電話があり、そのまま金融担当大臣が任命される。

 総理から参院選挙に出馬するよう要請される。選挙区は京都。皓子は京都では問題があり、東京だったら出馬を受諾すると答える。そのまま、総理とは別れる。

 しかし、次に呼ばれたときは、京都出馬は決定していて、選挙参謀、選挙事務所まで決定されている。
 選挙に当選すると、当選祝いをする間もなく、総理に呼び出され、次期組閣で官房長官に任命することを告げられる。無理とか断るとか言う隙がない。

 この手法は何となく今の安倍首相を彷彿とさせる。自分の想いだけで人事を決める。調整という作業は殆ど無い。それに歯向かうようなら、2度と立ち上がれないように排除する。一見、相手の主張を聞くように振舞うが、自分の想いは権力をかさにきて貫く。

 今の日本の借金は1000兆円を超える。少子高齢化が進行し、社会保障制度の維持は誰もが困難と認識しつつある。こんな時にプライマリーバランスを黒字化させるなどということは、とても夢、絵空ごと。

 それで山城総理が国会に上程した法案がびっくり。
年金受給者をインドネシアに移住させる。インドネシアは生活費も安価だから、年金額も半減できる。移住を拒否することもできる。すると、国民保険、介護保険料を倍にする。

 なるほどと思ったり、恐ろしい政策だと私の心も揺れ動く。

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| 古本読書日記 | 06:19 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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柘植久慶   「震災の生存術」(中公文庫)

 読み始めから、引いてしまった。木造住宅は地震に弱い。築20年以上たった家は、大地震で半壊、倒壊する。しかし、家のローンだって30年から35年が当たり前なのに、ローンを払い終える前に、家をまた新築するか、家を捨てて別のところに移れとか。

 マンションも一階を駐車場にしているマンションは倒壊するから移れとか、窓ガラスにはガラスと一緒に、金網が張られていなければならない。

 もう、ここで、大地震が起きたら半分は死ぬことを覚悟しなくてはならないと思った。実行不能なのである。更に、火事が恐ろしい。少しでも延焼を防ぐため、毎日庭に水を散布しておけと。

 また、家から持ち出す物、あるいは生き抜くためのサバイバルグッズが厳しい。
一週間くらいは、何もない生活が強いられるから、一人30000円、4人家族だったら常に財布に12万円はいれておけ。地震は局地を襲う。少し離れれば、商店は開いている。そこで必要なものを結構購入できるから。(東日本大震災は局地地震ではない)

 サバイバルグッズも凄い。まず3種の道具。手斧、のこぎり、山菜掘り機。それに、市販されているサバイバルグッズ。(救急箱、鍋、ガスコンロ、携帯用ボンベ数個など)それから7日分に対応する食料と水。食料はインスタント食品から缶詰め、チョコレートなど。水は必須。一人一日最低でも3リットル必要。

 更に衣類。風呂にはいれないから、紙製の下着を用意しておく。冬はパーカーや厚手のジャンパー。
 加えて、簡易トイレと簡易テント。更に生活用水。
これを読んだだけでクラクラする。

 そして、地震は家にいるときにくるとは限らない。だから、会社のロッカーにこれらのグッズをいれておけとか、少なくとも3種の道具はいつも携帯しろと。

 通勤途上の電車内で地震がきたとき、電車の椅子が、長椅子形状のときは、すぐみんなでスクラムを組み、脱線した際の大きな揺れに対応しろと。更に電車が脱線したら窓を突き破り脱出。まずは水分が必要だから、飲料水の自販機をさがせ。非常時だから問題ないので、自販機を破壊し、飲み物を取り出せ。でも、自販機ってどうすれば破壊できるの?

 本ではすべての条件を設定して、対応策を提示する。しかし、とてもではないが実施不可能。

 てんこ盛りの対応を紹介してくれるのはありがたいが、まとめとして、せめてこれだけはという対応策の提示が欲しかった。

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| 古本読書日記 | 06:16 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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山本周五郎  「山本周五郎名品館Ⅰ おたふく」(文春文庫)

文学だけとは限らないが、何かに出会って、それを評価するとき、必ず、その基準となる原点といわれる物がある。沢木にとって文学評価の原点は山本周五郎作品であり、更にその原点は周五郎初期の作品集「日本婦道記」の「松の花」である。直木賞受賞作品となったが、受賞を周五郎が断った作品である。

 周五郎は女性を描くと、たぐいまれな力を発揮した。沢木が編んだ周五郎作品集の初回本はこの「松の花」を含む、女性を主人公にした作品集である。

 半分は既読。どれも珠玉の短編だが、中でも「晩秋」が印象に深く残った。

岡崎藩、御用人である進藤主計は冷酷な人間として評判であった。彼が勤めた20年の間、多くの人たちが罪人として捕まり、極刑を言い渡され、命を落としていった。特に後半の10年間はひどかった。

 進藤の重税策は人々を貧困に追いやる。これを見かねた主人公津留の父は何度となく、進藤に重税を見直すよう上申書をだすが、拒絶され、最後は切腹をさせられた。

 ところが、藩主が変わると、進藤は役を解かれ、江戸詰めとなった。その進藤が屋敷を与えられ藩に極秘に戻ってきた。そして、津留にお側の世話係として屋敷に詰めるよう命令がでた。

 津留は父の仇をうつチャンスがきたと、匕首を懐におさめ屋敷に上がった。その屋敷は寂しかった。食事の世話をする夫婦と、訪問者を取り次ぐ老人の3人しか進藤を除いていなかった。

 津留は進藤を刺す機会を狙っていたが、なかなかその機会は無かった。ある日、食事を世話する時があり、絶好のチャンスと思って、進藤の部屋に津留は出向いたが、ふすま越しに男たちの怒鳴りあいを聞き足を止めた。

 訪問した水野外記が進藤と言い合っていたのだ。
水野は声を荒げて言う。「わたくしには承服できません。あまりにも過酷です。こんな事実はありません。」

 実は、進藤が藩に送り返されたのは、進藤の罪状を調べ、裁きをするためであった。そして、進藤は自ら罪状を書き、自分自身は死刑に値すると裁きの証書を書いていた。その証書に反対する水野と言い合っていたのだ。水野は怒り進藤の屋敷をでる。

 これを聞いて、津留は匕首をそっと外に捨て、お茶を進藤のもとにお茶をさしだす。
進藤が言う。「今日は、匕首を忍ばせていませんね。自分は藩政の立ち行く基盤を造った。しかし、そのために多くの人たちが命を落とした。それは極悪非道の罪に値する。特にあなたの父については切なかった。申し訳なかった。」と。

 津留が進藤に寄りかかった。

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柚月裕子    「朽ちないサクラ」(徳間文庫)

この作品のタイトルにある「サクラ」というのは公安警察の呼び名である。

 物語で、捜査課の梶山課長が、事件の真相と犯人を特定するためには、公安警察が所持している新興宗教集団ソノフの監視対象者リストが必要となる。それで、公安警察の白澤課長にリストの提供を依頼する。

 その時の白澤課長の返答が印象に残る。
「梶さん、あなたたち刑事部の捜査員は、すでにおきた事件の捜査を職務としていますが、われわれ公安は違う。われわれは、これから起きるかもしれない事件を、未然に防ぐことを職務にしているんです。すでに死んでいる人間と、今生きている人間。どちらを守るべきだと思われますか。」

 3人の死者がでる。

一人は女子大生長岡愛梨。ずっとストーカーに付け狙われていて、恐怖を感じ、警察に被害届を両親も含め出していたのだが、警察は受理をずっと渋る。受理をすると捜査をせねばならなくなる。両親が弁護士をたてると極まって言ったために、しぶしぶ受理をするが、受理日を一週間先にしてくれと警察が言う。それから2日後にストーカーにより愛梨さ刺殺される。

 もう一人は、主人公で刑事泉の高校時代の友人で、現在米崎新聞社会部記者をしている津村千佳。実は、警察のストーカー苦情受付をしていて、1週間受理日を先延ばしをした担当の辺見は、この1週間の間に北海道に慰安旅行をしていた。このことを絶対マル秘ということで泉は千佳に伝えていた。その翌日の朝刊に慰安旅行の件が米崎新聞スクープで報道される。
 千佳は、絶対口外していないと泉に言い、おもいつくことがあるので、自分で調査すると次の日から新聞社を休み独自行動をする。その間に川から溺死体となって発見される。

 もう一人は生活安全課でアルバイトをしていた百瀬美咲。警察でアルバイトをしている。通常警察でのアルバイト、5-6年単位で契約が更新され勤務が継続できるのだが、2年で突然解約。それで、地元の実家に帰ったが、近くの森で首つり死体となって発見される。

 この殺人事件の過程で、奇妙だったことは、苦情受付で常に相談者のサイドにたって対応していた辺見が、愛梨の件だけは、冷たい対応に終始していたこと。

 そして、愛梨を殺害したストーカーの赤沢が新興宗教集団ソノフに入信していたところから、事件の背景にソノフが存在していることがわかってくる。

 ところが、ここで公安警察が登場して、捜査を邪魔する。事件の真相を知っている百瀬殺害の犯人を公安のスパイを使い殺害したり、辺見をノイローゼに追いやり警察を辞職させる。

 そして警察の実態は、刑事部捜査課より公安警察のほうが力が強いことが物語では描写される。

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岡田光世   「ニューヨーク日本人教育事情」(岩波新書)

 私が働いていたころ、中高生を持つ父親が海外赴任をすると、受験、進学の妨げになるからと、単身赴任するのが殆どだった。会社も単身赴任の弊害を考慮して、中高生の親はできる限り海外赴任をさせないよう配慮していた。

 この本を読むと、今は様相がかなり変わってきていることがわかり驚いた。日本人の海外駐在が増加するにつれて、主たる海外駐在地に、学習塾や進学予備校が進出し、受験進学の支援をしている。海外に住んでも、全く受験にハンディが無くなり、かつ、外国語を習得でき、将来の就職に有利ということで、家族で海外駐在する人たちが増加しているのだそうだ。

 それにしても、私自身まだ咀嚼できていないのだが、ニューヨークの小学校(アメリカ全土かもしれない)には、gifted programというのがあり、理解が進んでいる生徒と不十分な生徒をクラスわけして教えているのだそうだ。クラスわけするほどの人数がいない場合は同じクラスで、生徒をグループ分けして教える。だからあるグループでは足し算引き算を教えているのだが、別のグループでは√を学んでいるということがある。

 これを肯定すべきなのか、疑問視することなのか、考えがまとまらない。しかしとんでもなく日本とは異なることだけはよくわかる。

 ニューヨークである日本人がアメリカ人から強い叱責を受ける。子どもを殴ったり叩いたりすることはいけない。罪になると。
 そしてそのアメリカ人は子どものお尻の蒙古斑を指さしすごい痣があるという。

口に糸こんにゃくをつけた日本人の子どもをみて、寄生虫検査を受けるようにと言われた母親もいる。やっぱし海外生活は大変だ。

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雨の日は

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眠い

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岩村暢子  「日本人には二種類いる 1960年の断層」(新潮新書)

私の生まれた頃、病院で出産した子は殆どいなかった。家で産婆さんにより生まれてきた。第一実家がある町に産婦人科のある病院は無かった。ところがこの本によると、1960年以降生まれた子どもは殆どが病院で生まれたのだそうだ。

 私の生まれた頃の子どもは、育てるという感覚が親になく、ほっといても子どもはかってに育つものという感覚だった。

 ベビー用品やおもちゃは殆ど無かった。ガラガラとミルクの吸い口、その2つさえ与えておけばよかった。母親には産休など無かった。数日休むとおんぶひもで背負われて、畑に母親と行った。
子どもはおもちゃが無いから、外へ出てチャンバラごっこや秘密基地ごっこをみんなでするしかない。

 60年以降に生まれた子は、ありとあらゆるベビー用品によって育てられた。
 しかも、テレビアニメの世代。アニメの主人公や車のプラモデルで家で一人遊びをする。女の子もリカちゃんハウスやバービー人形でやはり家の中で一人で遊ぶことが主流になる。

 60年以前に生まれた子は、家族の労働力として使われた。家事手伝い、農作業は当たり前のようにやらされた。新聞は、少年が家計を助けるために配達した。

 しかし60年以降の世代は、家の手伝いは全くしないかわりにアルバイトに精をだすようになった。

 1983年、ちょうど60年に生まれた世代が就職するころ。入社してくる人たちを既存の会社員が全く理解不能という状態になった。60年を境に完全なる断層ができ、二つの異なった人間が存在するに至ったと著者の岩村は主張する。

 しかし、この本にはだから何が問題、弊害になったのか、どう社会は対処すべきかは何の提示もない。ひたすら、時代背景の違いを述べているだけ。

 最後に社会問題が生じたとき、2種類の人間がいるという視点から検討すべきと言っているだけ。何なのこの本は。

 それにタイトルの日本語も変。「日本人は2種類いる」か「日本人には2種類ある」とすべきだろう。

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橘玲      「リベラルがうさんくさいのには理由がある」(集英社文庫)

ときどき不思議に思うことがある。日本は暮らしていて、言論の自由、あるいは平等な社会が世界のどの国より保証されているように思うのだが、国際的調査によると、いつも下位にランクされる。調査方法が間違っているのではと懐疑的になる。

 従軍慰安婦の問題がある。この問題は、朝日新聞の誤報や、意図的報道により、中味が曲解され世界に広まり日韓関係を悪化させ、今日にきているというのが日本での理解である。

 だから、非難は朝日新聞に集中し、韓国の態度は間違っているというのが日本での一般的理解と感じている。しかし、従軍慰安婦を象徴する少女像は、世界各国で設置されどんどん増加している。いかに韓国の国際活動が上手くいっているとしても、少女像設置は、各国の自治体の決断で行われているということは、従軍慰安婦の問題は、韓国の主張が世界では徐々に深く、大きく浸透していることは間違いない。

 国連の人権委員会でも、日本を非難する勧告を今年も発表した。

日本軍が強制したかどうかは確たる証拠は無いが、強制であろうが、自由意志であろうが、朝鮮の女性を売春婦として従軍させた事実はどう言っても消すことはできない。世界はどうも、女性を侮辱的に扱い人権差別したことを非難しているようだ。だから、慰安婦の女性に対し、真摯に謝罪を面と向かってしなさいと言っている。

 日本人の想いと世界の想いに大きなズレがあると橘玲は主張している。

「働き方改革」が大きな問題として取り上げられたが、国際的にみれば、この問題は差別の問題である。新卒一括採用、定年制度の適用。これは年齢差別である。女性には、残業や休日出勤などができなかったり、減じなければいけない環境にある。そこを無視して出世ができないような状況。性差別である。同一労働、同一賃金は世界の常識。正社員か非正規社員かは雇用形態の違いであり、これで賃金差をつけることは、身分差別である。正社員か非正規社員でいるのは労働者の選択の問題である。非正規社員の増加が問題ではなく、待遇、賃金に差をつけることがいけないのである。この考えが浸透すれば正社員の非正規化が何の違和感もなく行われる社会がくるかもしれない。

 それから外国人と日本人で賃金に差をつける。特に海外で採用した人々に賃金差をつける。これは国籍差別である。

 この差別が、国際基準に合致していないから、日本は不平等社会と認定されるのである。
国際的標準に近付けることは、容易なことではない。しかし、徐々に変革はなされてゆくのだろう。

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| 古本読書日記 | 07:01 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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孤島の鬼

爺やの感想はこちら

IMG_1352.jpg
今回は右の、マリオネット風男女が描かれた文庫。
割と最近、漫画化されていました。
スマートな絵で美青年の愛憎が前面に出ている感じ。

たぶん大学時代に読んだことがあって、そのときは主人公が描いた島の絵も収録されていたのですが、
この文庫にはありませんでした。
殺されてしまう女性と、結合している女の子が姉妹だったという点以外、ほぼ忘れていました。
地下の冒険とか意外な下手人とか、覚えていてもいいはずなんですけどね。

親友である諸戸の親が黒幕というのはしかたないとして、
深山木は初代たちの母親が同棲していた過去があり、島の存在にピンときたというのは、
都合がよすぎるかもしれない。
限られた登場人物で話をとんとん進めるには、周りは事件関係者だらけという設定が便利。
それでいて、「君はきっと驚くだろう」なんてほのめかしつつ、種明かしを引き延ばすw

伏字だらけなのが、この作者っぽいですね。

| 日記 | 00:53 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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岩崎夏海  「まずいラーメン屋はどこへ消えた?」(小学館101新書)

完全に本のタイトルに誤魔化された。あちこちのラーメン屋へゆき、グルメの向こうを張って、こんなまずいラーメン屋は無いというくらい、そのまずさを表現し、まずいラーメン屋体験めぐりを想像して購入した。

 しかし、中味はドラッカーを神のごとく信望している岩崎が、ドラッカーの著書からキーワードを取り出し、そこからビジネスをどう展開すべきかという経営コンサルティング本だった。まったくとんでもないタイトルをつけたものだ。完全にひっかかった。

 西暦2000年頃、岩崎は東京のとある私鉄沿線に暮らしていた。駅前に通りを挟んで2軒のラーメン屋があった。昼飯は他に食べるところが無かったので、いつもどちらかのラーメン屋に行った。その時はわからなかったが、今思えばまずいラーメン屋だった。

 ある日ラーメン屋に行くと、張り紙がしてある。
「当店の悪口をネットに載せないでください。投稿者はすぐに削除してください。」と。
そうなのだ。ネットへの投稿は、投稿者でない限り削除ができず、ずっと悪口が残ったままになる。

 更にネットでは、近くのラーメン屋を検索できる。岩崎が調べると2駅区間に20店のラーメン屋があることがわかる。それで、他のラーメン屋にゆくことになる。

 以前からあったラーメン屋は向かいのラーメン屋の動向だけを注意していればよかった。しかし、知らない間に20軒ものラーメン屋と競争状態になっていた。当然2軒のラーメン屋はまもなく廃業した。

 毎週のように我が家に宅配便がくる。ちょっとしたものでも、嫁さんがネットで購入するからである。完全にネット通販に取り込まれてしまっている。

 書籍の販売数がどんどん減ってきていると言われている。しかし、最近電車に乗ると、スマホをいじっている人に混ざって、かなり本を読んでいる人が目立つようになった。何だか書籍販売数はそんなに落ちていないで、書籍を本屋で購入する人が減ったのではないかと思ってしまう。

 今はどうかしらないが、書店で書籍を注文すると、以前は到着までに1週間くらいかかった。アマゾンは大量に書籍を在庫しており、殆どの書籍が翌日には着く。こうなると、書店で本を購入することが馬鹿らしくなる。

 今は、店舗で販売する人より、顧客の方が、商品についての知識が詳しい。ネットで調査し、機能特徴を徹底的に調べ、店舗に購入にゆくからである。
 とんでもない時代になった。しかし、新しいビジネスモデルを開発できる可能性は一段と広がった。

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| 古本読書日記 | 06:27 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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花房観音   「どうしてあんな女に私が」(幻冬舎文庫)

春海さくらは、幼少の頃からとんでもない大食いで、ぶくぶく太っていた。それでいて、初潮は9歳と異常にはやかった。

 さくらは高校のころには体重が100kgを超え、怪獣、ゴリラと言われていた。里美もチビで太っていて中学校こころは「ゴマまんじゅう」と言われていた。しかし、高校に入って、クラスからまずつまはじきにされた怪獣さくら。あれよりは自分はひどくはないと、里美は自分以下の同級生としてさくらに上位者のつもりで、よりかかり共に行動した。

 ところが驚いたことに、とても男性など寄り付かないはずの、さくらが高校3年の時、売春をしているという噂がたつ。どうも実際していたようだ。里美はどうして私よりダメなさくらが男性と関係が持てるのかと驚愕する。


 木戸アミは作家を目指しているが、うまくいかず、今はちょっとした物書きと編集者のような仕事している。高学歴で、容貌もまずまず、知的でもあるが、出版会社に勤めていた頃上司と不倫、これで捨てられ、その後何人かの男とは付き合ったがすべて破局、30歳半ばになり、安定した結婚を望み、婚活パーティーに参加するようになる。

 そこで高坂という男性と知り合う。容貌スタイルもまあまあ、優しく、獣医をしていて収入も安定している。この男性なら結婚もありと思い付き合いだす。

 ところが、ある日突然メールで好きな人ができ、その女性と結婚するから別れると高坂がいってくる。

 半年ほど過ぎたとき、部屋のテレビニュースで、高坂が殺害されたことを知る。殺害者が春海すみれ。その写真は、まさに野獣、醜女。こんな女に高坂を取られたのかと大ショックを受ける。しかも、春海は、何と5人の男を次々殺害、更に男に貢がせてセレブな生活を謳歌していたというから驚く。

 高度な教育を受け、恵まれた家庭に育った女性は、揺るぎのないプライドと良識を持っている。だからプライドを捨てることはなく、そんなことはできないとか、それはダメと拒否をする。女優が水着までというのと一緒だ。

 自分より下等な女性に何で男がなびくのか。

 しかし、そんな抑制をかなぐり捨てた女性は醜女であっても、大きな包容力で男性を包み込む。このことを、アミは理解できない。
 と、こんなことを書いている私も理解できない。

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| 古本読書日記 | 06:09 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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青山七恵    「繭」(新潮文庫)

私たちは、友達、仲間、家族、親族、社会、地域など重層的な人間関係の中で生活している。そのことによる悩み、ストレスもあるだろうが、そうしたものも、重層的な人間関係が吸収して緩和してくれ、日々を送っている。

 しかし、その重層さが煩わしく、干渉されることを厭い、社会との係りを否定し、徹底的に孤立して生きること、あるいは人間的関係が上手くいかなくて、社会から隔絶して生きてゆくことを信念にしたり、社会からつまはじきにされ生きてゆく人々もいる。こういう人たちが、苦難を迎えると、それを克服したり緩和するバックヤードを持たないため、人生に行き詰まることになる。

 この物語には、2組のカップルが登場する。ミカミと舞。舞は美容室を経営している。ミカミは舞が美容室を開店したとき、一緒に働いていたのだが、そこを辞め、今はアルバイト、無職をくりかえし、実態は舞に代わり主夫専業のようになっている。

 もう一組が、希子と道郎。希子は旅行代理店に勤めていて、道郎はテレビの孫請会社で音声を担当する仕事に従事している。道郎は、出張が多く、希子のマンションには時々帰ってくるだけ。

 更に、複雑にしているのは、ミカミと希子はかっての知り合いで、ミカミは舞の過激な行動に対応できず、それは舞に友人がいないからと思い、希子に舞と友人になってほしいとお願いし希子もその依頼に沿って行動すること。

 舞は、ミカミの行動や態度が少しも気に入らないと、ミカミに徹底的に暴力をふるう。それに対し、ミカミは全く抵抗することはなく、されるがまま。

 それが舞は気に入らない。自分をミカミはバカにしている。同じ目線ではなく、いつもヘラヘラと上から目線でミカミは見ている。
 舞は、ミカミと対等の関係になりたいと思っている。そして、対等な2人だけで誰にも邪魔されないように繭をつくり、そこで暮らしたいと願っている。それができないからミカミを殴る蹴る。

 一方希子は道郎の家になりたかった。道郎が部屋のドアを開けたら、目いっぱい抱きしめる。そして、道郎が一緒になって、子供を作ってくれというのを夢み、心から願っている。

 もう道郎と2人だけの家、繭を作りだれにも拘わらず生きてゆきたい。

 しかし、そんな繭をつくることは幻想である。その繭が創れない現実を認識し、繭からでようとしたとき、暗く、凍り付くような社会が待っている。

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| 古本読書日記 | 05:50 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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乃南アサ    「水曜日の凱歌」(新潮文庫)

  戦争というのは、通常起これば悲劇となることが、悲劇にはならない。出征した男たちは戦死して帰ってこない。原爆や空襲で、亡くなった人もでる。亡くならなくても、大けがを負い、生涯体が不自由となってしまう。住む家は一瞬にして焼け落ちる。そんな災厄に遭遇した家族が当たり前のように存在する。こうなると、悲劇にはならない。

 事実、この物語の主人公鈴子の家も、父が亡くなり、長兄の肇も戦死、次兄の匡は出征して消息不明、姉の光子は空襲で死亡。妹の千鶴子も空襲で逃げているときに失踪して見つからない。結局家族は母と鈴子だけになる。幼馴染の勝子は、空襲で右腕が吹っ飛ばされる。
 戦争の犠牲者がいない家族がめずらしい状況である。

 こんな中敗戦を迎える。
そうなると、思想、評論、批評は全く役に立たない。誰から、何と言われようが生きていかねばならない。時勢に合わせて変わらねばならない。

 戦争が終了後、数か月後にRAAという組織が立ち上がる。特殊慰安婦施設協会である。アメリカが日本に占領軍としてやってくる。そのアメリカ人に売春婦をあてがう組織である。

 多くの女性が生きてゆくために応募する。中には、男を知らない女性もたくさんいる。そして、性交渉の恐怖の中、自殺する女性もでる。

 鈴子の母は、英語ができるということで、RAAで通訳、事務の仕事を得る。この仕事を紹介してくれたおじさんの愛人となることで、得た仕事だ。その後、アメリカ将校と恋愛に走る。

 鈴子は汚い、ずるいと思い込むのだが、母のおかげで、食うや食わずの生活や、ひもじい思いはしたことは無い。

 この鈴子の悩みをドカーンと吹き飛ばしてしまう乃南さんのミドリという女性の啖呵がすさまじい。こういう言葉を書ける作家はいない。特に男性作家には。

 「覚えておきな、日本の男ども!誰も彼も、女の股の間から生まれたくせに、その恩も忘れやがって、利用するときだけしやがって!戦争中は『産めや殖やせや』で、戦争に負けた途端に、今度は同じ股を外国人どもに差し出せとは、何と節操のなさなんだ!それで平気なのか!見ていやがれ、この国を駄目にした男ども!女一人も守れないで、何が日本男児だ!大和男子だ、バカ野郎!いいか、あなたたちは、いつか必ず復讐される。いつか、必ず報いを受ける。アメリカなんかじゃなく、日本のおんなたちからだ!」

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| 古本読書日記 | 05:54 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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高橋和夫   「アラブとイスラエル パレスチナ問題の構図」(講談社現代新書)

イスラエルがどのような背景で、生まれたのか。そのイスラエルとパレスチナの関係、さらにアラブ世界がどうかかわり、それに大国がどのように関与してきたかを、時系列整理して解説した作品。

 私の幼い頃、第3次大戦になるのではというキューバ危機というのがあった。これより少し前にスエズ危機というのが発生、内容はわからなかったが、第2次大戦が終わってまだ10年もたっていないとき、戦争の恐怖が消えておらず、皆が心配していたことをかすかに覚えている。

 この作品により、恐怖感を引き起こしたスエズ危機とは何だったのか、初めて知った。
トランプ大統領がエルサレムにアメリカ大使館を移設し、大きな非難を浴びたが、それもよくわかった。

 作品はアラブ、イスラエル論というより、起こった事象をその事象単位に羅列しているだけなので、問題の本質が何なのかは、はっきりとはわからなかったが、イスラエルの問題の本質はおぼろげながら理解できた。

 1791年起こったフランス革命は、王族支配を終わらせ、自由平等を謳ったが、一方で国家に忠誠を尽くすという国家主義、民族主義を引き起こした。その流れでナポレオンが登場した。民族主義は他の民族と自分たちを峻別することで成り立ち、民族主義による犠牲がヨーロッパ各地にいるユダヤ人だった。ユダヤ人に対する迫害が起きた。

 この風潮にオーストリーのジャーナリスト、テオドール ヘルツルが「ユダヤ人国家」というパンフレットを作り、配布。これにユダヤ人の多くが賛同し、ユダヤ人国家を創る機運が高まった。

 当初はユダヤ人国家ができれば、場所はどこでもよかった。イギリス植民地ウガンダが候補になったりした。
 しかし、ユダヤ教を背景に、どこでもいいというのは消え、ヘルツル達は、ユダヤ人の先祖の地、エルサレム、シオンの丘に創ろうと決定する。

 しかし、エルサレム旧市街はユダヤ教、イスラム教、キリスト教の聖地となっていて、ここをユダヤ教国家の地とすることは、他の宗教には許容できない。

 さらに、ユダヤ教国家を作る地には70万人のパレスチナ人が住んでいた。そのときユダヤ人の人口はたったの2万人。
 ユダヤ人たちは、多額の資金を世界から募り、パレスチナ人から土地を奪取した。そして、パレスチナ人を追い出し、イスラエルを樹立した。

 これがイスラエルのルーツであり、パレスチナとの再三にわたる戦闘の根源になっている。

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| 古本読書日記 | 06:07 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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鴨居羊子  「わたしは驢馬に乗って 下着を売りにゆきたい」(ちくま文庫)

思い切って買った、ひとひらの花弁に似たガーターベルト。買った翌日から洋服の下につけた。私の中身はピンク色に輝き、おなかは絶えずひとり笑いをした。とくにトイレに行くときがたのしみである。ぱっとスカートをめくると、たちまちピンクの世界が開ける。おしっこまでピンク色に染まっているようであった。」

 女性の下着と言えば白でズロースや肌着しか無かった戦争の傷に癒えない1950年代、
高価なガーターベルトを身に着けたことで触発され、勤めていた読売新聞を退社、退職金3万円を元手にして、彼女の言葉であるスキャンティやスリップ、ガーターベルトをカラフルなデザインで作り上げ、VANの石津謙介の向こうを張り、下着デザイナーとして一世を風靡した鴨居羊子の自叙伝。

 最初の商売のスタートが面白い。

 大金を借り、新聞広告までだして、大阪そごうの中2階のたった9坪の空間で、展示会をする。のるかそるか。ここで失敗すればすべてが水泡に帰す。

 数々の新しい下着を展示する。話題でマスコミ関係者や男性はやってくるが、元来女性の下着に好奇心はあっても、購入してもらえる人たちでは無い。

 だめかと思っていたら、展示会3日目。大阪府警が、かねてから手を焼いていたヌード喫茶に一斉取り締まりを行う。当時大阪には40軒のヌード喫茶があったが、業者には全く寝耳に水だった。早速業者は対策委員会をつくり対応を協議した。

 そんなとき業者のなかに、この展示会を見た人がいた。
 色とりどりのスリップやスキャンティ。

 これで取り締まりはクリアーできると対策委員会は思った。
だから、委員長をはじめ対策委員会の面々が鴨居を囲み、ヌード喫茶用に下着を作ってくれるように必死に頼む。鴨居はショックを受け放心していた。そのとき業者がポツリと言う。

 「肌を隠していても色気のある服装はできます。それが女の衣装というものやワな」
その一言で、鴨居が目覚め府警に決めセリフを放つ。
 「肌の露出でエロやワイセツの度は、測られません!」
これで府警が折れる。

 そしてヌード喫茶から大量の注文があり、鴨居は最初の大きなハードルを越える。

まだ、作家になっていなかった、山崎豊子や司馬遼太郎との交流も描かれ、強烈さと人間味があふれた読み応えのある自叙伝である。

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| 古本読書日記 | 06:07 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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恩田陸   「訪問者」(祥伝社文庫)

 このミステリーは「小説NON」に連載された小説だ。作品を読むと、恩田さんはこの小説最後まで筋を作ってなくて書き始めたのではないかという思いが強くする。

 まずミステリー雰囲気満載の場面を作る。人里離れたところに建つ館である。湖が近くにある。

 この館に3人の兄妹と末っ子千恵子の夫がいる。長女が湖で溺死する。更にこの館で育てられ、映画監督が事故死する。この館に、取材と称して、週刊誌の記者とカメラマンがやってくる。しかし、記者は、映画監督に依頼された弁護士だった。

 長女、映画監督の死は事故死と処理されていたが、この弁護士を含め殺害されたのではという疑いをみんな持っている。

 そして、豪雨が襲い、土砂崩れがおき、道がふさがれ、館は孤立する。更に雨のなか、二階に侵入しようとしていた男が事故死する。豪雨のなかに亡くなった長女が現れる。

 恩田さんは拡げるだけ物語を拡げたが、最後収拾ができなくなる。
それで、最後はどうしようもないつまらない結末を迎える。
 散らかし過ぎた失敗作だと思った。

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| 古本読書日記 | 06:04 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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湊かなえ    「ポイズン ドーター・ホーリーマザー」(光文社文庫)

 私は知らなかったが「毒親」という言葉が流布しているらしい。子どもからみて扱いが大変で、厄介とみなされる親の俗物的言い方だそうだ。この作品、この「毒親」を扱っているが、タイトルでは「毒親」でなく、「毒娘」親は「聖母」になっている。ここの反転が印象的。

 主人公の弓香は、女優をしている。たまたま出演したテレビのクイズ番組で、優秀な成績と個性を発揮し、「人生オセロ」という人気番組への出演依頼がある。

 この番組は出演者の人生記を、美しく幸な部分をまず語り、その後、どん底で苦節の部分をオセロの白黒が反転するように語る番組である。

 弓香の白の部分は、高校時代一緒に図書委員をした友達理穂との思い出である。本やマンガを交換しながら読んで語り合う熱い友達だったと弓香は思っている。

 黒の部分は、母親との暮らしである。弓香の父親は弓香が幼い時病死していて、弓香は女手ひとつで育てられる。父親は中学の国語教師で、人気も高かった。母親は弓香に国語の教師になることを幼い時から義務付ける。

 漫画はダメ、父親の残した蔵書を読め、他人の家に行ってはダメ、そんな暇があるなら勉強しろ、恋もダメ、これらに触ることが発覚したら、強烈な叱責、時に手もでる。弓香は何も言い返せずいつも「ごめんなさい」と謝るだけ。

 この暗転をテレビでしゃべり、弓香の母親は「毒親」となり、しばらく後に交通事故で亡くなる。しかし目撃者は、母親は走ってくる車に自ら飛び込んだように見えたと証言する。

 友達だと言われている理穂の義母は、弓香の母佳香を「毒親」とは全く違うイメージをもっている。義母は、仲間でグループ保育サービスをしていた。夜遅くまで働いている母親佳香は毎晩遅く、園に手土産を持って弓香を引き取りにやってきた。そして慈しむように弓香の手をにぎり家へと帰っていった。

 地元では、弓香の母佳香は、「毒親」どころか「聖母」にみられていた。そのことを義母の手記として理穂は自分のブログにアップした。

 ある日、弓香から理穂にどうしても会ってほしいと電話がくる。
会うと、弓香は母を冒涜した最低の女性と評判がたっている。こんなことを流したのは誰なのか教えろと弓香が理穂に詰め寄る。

 その時に理穂は同級生だった江川マリアがなぜ自殺したのかを話す。江川マリアは、弓香がいじめられていた時、唯一友になってくれた子だ。しかし、母佳香から、あんな母親の子と付き合ってはいけないと言われ、関係を冷たく断った。そこからマリアは学校に来なくなり、そのうちに学校を去った。

 マリアはだらしない母親に売春を強いられていた。しかも妊娠堕胎までしていた。まさに「毒親」だった。マリアはそれでもしょげずに我慢して明るく振る舞っていた。

 そんなマリアに恋人ができ、2人は結婚の約束までしたが、母親が引き裂いた。それでショックを受けたマリアは自殺した。婚約者は今でもマリアの命日には墓に花をささげている。

そんな話を理穂が弓香にする。弓香が言う。
 「婚約者は?マリアが傷ついても、婚約者が受け止めてくれたら、自殺することは無かったんじゃないの?」

 この後の理穂の言葉が実に凄く、拍手を送りたくなる。
 「それ、自分なら受け止められる覚悟があって言ってんの。自分がマリアの立場でも、婚約者の立場でも、まっすぐ立っていられる想像しながら言ってんの」

 この作品、直木賞候補になったが受賞はできなかった。しかし、湊さんの心の叫びはずっと残る。

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| 古本読書日記 | 06:58 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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唐沢俊一   「トンデモ一行知識の世界」(ちくま文庫)

一行とは言わないが、短い文章で、眼から鱗がおちたり、なるほどと思える蘊蓄を表現している文が世界にはたくさんある。そんな一行知識を表している文章を集めて紹介している作品。

 面白い文章が紹介されているより、その文章から作者が知っている知識を披歴している内容になっていて、少し鼻につく作品だ。また、これは本当?というのもたくさんある。

 知らなかったのだが、国歌「君が代」には2番がある。歌詞は次のとおり。
 「きみがよは、千尋の庭に、さざれいしの、鵜のいる磯と、あらわるるまで、
  かぎりなき、みよの栄を、ほぎたてまつる。」

 ラムネの瓶の中には栓用のガラス玉が入っているが、その玉の規格品はA。不良品はBと選別され、不良品は子どもの遊び用に下取りされた。その玉をB玉といい、ビー玉の語源となった。


大富豪のお話。
 大富豪、テキサスのメル パワーズ。健康マニアで自分の所有する高層ビルの屋上に、水泳用に人工の川まで作ったアスレチックジムがある。彼は毎日、そこで汗を流すが、屋上に上がるエレベーターを使う時間がもったいなくて、ヘリコプターで地上と屋上を往復している。

勝新太郎がコカインをパンツの中に隠していたが、発見され捕まったときに流行った小話。
勝「タイマー(ただいま)」
妻中村玉緒が迎えにでて
 「あらコカイン(おかえり)なさい。」

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中丸美繪    「日本航空一期生」(中公文庫)

1951年10月25日羽田―伊丹―板付までの初の定期航空輸送が日本航空により開始された。同じ行程でのフライトは、同年8月27日に招待フライトとして、「サザエさん」の作者長谷川町子や、随筆家の石黒敬七など政府関係者、著名人など70人の招待者によって行われた。当時は機材もパイロットもノースウェストにより提供された。

 羽田空港は当時まだ、ハネダエアベースと呼ばれていた。出発ロビーは掘っ立て小屋。風がふきっさらし。そこにパイプ机が並べられ、搭乗を待つ。

 機内食は、今のパレスホテルで作られたサンドウィッチが振る舞わられたが、このサンドウィッチはホテルから銀座の日航まで自転車で運ばれ、そこからキャビンアテンダントが手に持ち、バスで空港まで運ばれた。もちろんバスは乗務員、客が一緒だった。

 当時の機内にはエアコン設備はなく、扇風機が頭上でまわっていた。また気圧の調整もなかった。何か書こうとしてインク便を空けると、インクが噴水のように飛び跳ねた。

 サンドウィッチにチーズが挟まれていた。お客は見たことも無かったので、パンに石鹸がはさまっているとクレームがつく。

 ベルトをおしめくださいと言うと、ズボンのベルトを締めなおしたり、緩めたりする人がいた。またベルトをはずしてズボンを脱ぎ、ステテコで席に座る人もいた。

 そして飛行機酔いをする人がたくさんでた。トイレで吐いている客が入れ歯を便器に落としたと騒ぎになる。便器内に手をいれて入れ歯を拾ってやることもあった。

 羽田では糞尿を処理する設備があったが、伊丹にはない。それで客室乗務員が肥桶で、処理場まで運搬した。

 日本の空は、日本人によって運航、運営するのだということで日本航空はできたのだが、これに反対する人間が、当時の吉田茂首相の側近にいた。今は高く評価されている、白洲次郎だった。すべての陳情は、吉田首相には直接できず、白洲次郎を通すことになっていた。それで、なかなか日本航空は認可されなかった。

 白洲は鉄鋼産業も日本自前を反対し、イギリス企業との合弁を推進した。当時に日本製鉄社長の永野が銀座のクラブで白洲と偶然あった。永野は白洲の頭にコップの水を浴びせた。
 白洲は占領中に登場した国際ブローカーだったのだ。

 日本航空が軌道にのると、もうひとつの飛行機会社を創ろうという機運がでてきた。朝日新聞の幹部が中心となり「日本ヘリコプター輸送株式会社」ができた。これが全日空の元の会社である。今は日本航空の会社コードは「JL」で、全日空は「NH」なのだが、この「NH」は日本ヘリコプターが由来である。

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法月綸太郎 「名探偵傑作短編集 法月綸太郎編」(講談社文庫)

作者と同姓同名で、しかも名探偵である法月綸太郎が事件解明で活躍する短編集。
たいていの場合、法月が事件現場にゆき推理するのではなく、綸太郎の父、法月警部が事件の内容を綸太郎に語り、そこでヒントを得て、綸太郎が事件をひも解くという手順で展開する。

 綸太郎が松本の2駅手前の駅であずさ号に乗車。席は一号車の2Aである。松本を過ぎると、1ABに座っていた夫婦、窓側に座っていた夫がぐったりとなり、隣の妻が懸命に声をかけるのだが、すでにその段階で夫は死亡していた。

 実は、夫はかかりつけの眼医者の看護士西島あづさと不倫をしていた。それを知った妻は怒り狂った。それで、夫とあづさは悲観して、眼の病に使う薬、硫酸アトロビンを医院から持ち出し、それを二人で飲んで心中しようとしていた。

 夫は大糸線から走ってくる新宿行きのあずさの先頭車の一番前の席にのる。あずさは名古屋発長野行きの特急しなのの最後尾の車両の一番後ろの席に乗る。そして列車が数分停車する松本駅の直前に硫酸アトロビンをジュースにいれて飲み、松本で互いに窓越しに確認しあって死んでしまう。

 これだけでも、なかなか洒落たトリックで面白いと思ったが、こんなトリックは平凡と法月は満足しなかったのか、とんでもない真実をここから作り上げる。

 実は、夫の妻は、女子高の教師をしていて、あづさはその教え子だった。そして、実は2人は女性同士ではあるが恋人関係になり、今でも続いていた。

 それが、心中に絡まり、悲劇性を強く印象付ける結末を法月は描く。しかし、ちょっとやりすぎのように思う。

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| 古本読書日記 | 06:24 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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島本理生    「夏の裁断」(文春文庫)

主人公の千紘は作家。もうすぐ30歳になろうとしている。作家だから、付き合う世界は自らが積極的にならない限り自然と決まってくる。

 恋が生じるのは、出版社の人か、表紙の装丁作家、それに。作品が映像化される機会に遭遇する俳優やモデル。すべて、個性的な自由人。
千紘はそんな男たちに惹かれ、特に出版社の柴田とは痛い恋をする。そんな柴田との辛くヒリヒリする付き合いが、島本の瑞々しい表現で描写される。

 ここまでは、理解できるし、心理描写が上手いと感心して読み継ぐ。
ところが、突然物語が飛躍する。

 夕立が突然やってきたある夕方。スーパーに行こうとしていた千紘が、面倒になり駅前の焼き鳥屋にはいり、焼き鳥をつまみにしてビールを飲む。すると隣から、「七味いいですか。」と声かけられる。

 そこから、そんな突っ込んだ会話があったわけではないが、自宅に男を一緒に連れて帰る。
男は青野といい、普通のサラリーマンで、業界内の男は違う。

 それで青野は淡々と「しましょうか。」と言う。すこしは逡巡したが次の瞬間抱かれキスをされている。そして、当然の成り行きで抱き合う。

 焼き鳥屋で初めて出会い、そんなにひかれあうのでもない。でも、気が付けば抱き合っている。
 この飛躍が、どうもうまくこなせない。描かれるのは七味だけなのに。

当然、青野には妻子がある。千紘がいなくても、セックスできる女性がいる。だから、千紘にのめりこむことはない。
 それで、最後はこのような会話になる。

千紘が言う。
 「何の約束もない。関係性の定義付けもない。二人で、どこへ行くわけでもない。私はあなたのことを何も知らない。そんな状態がずっと続いて、それでも私はあなたのことを理解したくて、でも、限界です。あなたにとって自分の存在に、肉体関係以上の意味があるとは思えない。」

 青野が言う。
「関係性を定義付けられたら、離れていかないものですか。」

 千紘は詰まる。
「不安なんです。信じられないんです。何か言ってください。」
「何も言えないよ。」と言って青野はでてゆく。
普通は、女の人が激烈に男をなじって、それでパっと男を捨てるように思うのだが。

七味から、男に抱かれるまでの心理の変化を表現しなければ、並み以下の作品になってしまう。

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獅子文六    「おばあさん」(朝日文庫)

私の祖母もこの物語の主人公のおばあさんと同じ明治生まれだった。子どもは7人。いつも何かにつけ、父の弟や妹が我が家にやってきた。そして、困ったことを相談する。おばあさんは全く出しゃばらなかったが、父が困ったりすると、かならず、びしっと、意見を言って、収めていた。子どもだったからもめごとの中味はわからなかったが、優しいが、一本筋が通っていて、気骨のある明治の人だった。

 この作品の主人公納冨家のおばあさん、女学校を卒業している明治生まれのインテリ女性。普段は穏やかな雰囲気なのだが、ひとたび周囲でトラブルが起きると、気骨があり、ビシっと決めて、解決をする。

 この作品は、1942年から44年、戦争中に「主婦の友」に連載され、舞台は太平洋戦争に突入する1941年になっている。ということは検閲が厳しく、それをクリアしないと連載はできない。

 おばあさんを慕っている孫娘の丸子が父親の上司の紹介で立上恒夫と見合いをする。丸子は社会にでて活躍したいし、自分の意見も主張する、新しいタイプの女性で、見合いをしても結婚など考えられない。しかも、恒夫の父親とおばあさんが、2人をめぐって大喧嘩をして結婚話は立ち消えとなる。

 ところが、2人が偶然、丸子が勤めている工場の食堂でであい、恋が芽生える。それで結納をして2か月後に式をあげることになる。ところが、恒夫に召集令状がくる。出征は1週間後。

 丸子の両親、立上の父親は、出征ということは死ぬことを覚悟すること。まだ2人は式をあげてないのだから、結婚はとりやめにしようと言う。

 しかし、おばあさんは結婚は両家で約束したこと、何があっても結婚はせねばならないときっぱりと言う。さらに、丸子も全く同じことを言う。

 それで2人は何と三日後、出征の4日前にあわてて式をあげ結婚する。

 戦争中こんなことになると、結婚ができなくなって、愛し合う2人が引き裂かれ戦争の悲劇を描く物語になる。しかし、出版時は戦争の最中。こんな物語にしては出版できない。

 軍も、こんな事態になっても、この物語のようにあるべき姿として決然と結婚する姿を推奨したい。そんな意図が貫かれた小説になっている。戦争の最中に本を出版するということは、どういうことなのか印象に残る作品だった。

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吉田篤弘     「電球交換士の憂鬱」(徳間文庫)

世の中には存在しえないだろう、切れて点灯しなくなった電球を交換することを職業にしている人は。そんなあり得ない職業についている主人公十文字扉が遭遇する厄介ごとをめぐる連作短編集。

 電球交換士なんて仕事が成り立つのかと思うのだが。美術館などの公共施設やデパートなど一度に大量の交換が必要な場合がある。

 それから、十文字の電球は、一般の電球と違う。ずっと昔からあるカンザキ印の電球を、マークを十文字に変え、交換に使っている。
 古き良きものにこだわる人たちが結構たくさんいて、十文字が交換する電球でないと受け付けない、そんな人たちのために十文字は電球を交換する。

 東品川駅の電球を交換しているとき、誤って十文字は電流を浴び、倒れ、失神する。連れていかれたのがヤブと言われる医院。

 ヤブが太鼓判を押す。あんなに強い電流を浴びても死ななかった十文字は不死身の人間であると。

 だけど不思議なのは、月一回病院に通院している。不死身の人間が何で通院などするのだろう。そして思う。人間がみんな不死身になったら、真っ先に世の中から無くなるのは病院、医者だと。

 吉田の作品はいつもじわっとノスタルジーを感じさせる。

私の幼い頃には、家に机や腰掛が無かった。畳にべたっとお尻をつけて、ちゃぶ台で勉強や遊びをした。

 物語でアスカの部屋の電球をとりかえるのに、電球のソケットまで手が届かない。それでアスカの丸めた背中に乗って、十文字が電球を取り換える。

 私の家でもそうだった。兄貴が丸まって私がその背中に乗り、高いところにある物を取ったり電球を変えたりした。

 カンザキマークの社長神崎が十文字を裏切って、半永久的に壊れない電球を作った。こんなことをされれば、電球交換士の仕事は無くなる。

 これは寂しいことだと思っていたら、十文字の後をいつもつけていた不気味な男が最後に登場して、交換に自分のところで製造している電球を使ってほしいという。ほっとして本をたたむ。

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梨木香歩    「海うそ」(岩波現代文庫)

物語の舞台は南九州の遅島。この島の描写が凄い。地名とその由来、動物、植物のひとつひとつの生きざま、かって修験道の島だったことで残存する祠、洞穴、修行をした山々、そして蜃気楼である「海うそ」。

 まるで柳田国男、宮本常一のフィールドワークを読んでいるみたいで、完全に引き込まれる。
 しかし、地図で探したって遅島は実在しない。微細なところまで描写する、たぐいまれな梨木さんの想像力、表現力のすばらしさは驚嘆に値する。

 物語のテーマは喪失。この作品は東日本大震災をモチーフにして書かれている。

昭和初期、人文地理学の研究者秋野は、師であった佐伯教授の調査報告書に触発されて、南九州遅島のフィールドワークにでかける。

 この時の秋野の置かれた状況。一昨年許嫁が突然自殺する。昨年は相次いで両親が亡くなる。そして今年は恩師だった佐伯教授も他界する。大切な人々が亡くなった、まさに喪失を背景にした旅だった。

 修験道のための島だったから、多くの名刹があった。しかし明治維新の廃仏毀釈ですべて壊されて存在はしていない。それでも、その姿は人々の生活や口伝、残されている修験場で獲得できる。

 秋野の想いが伝わってくる表現が素晴らしい。
「その地名のついた風景の中に立ち、風に吹かれてみたい、という止(や)むに止まれぬ思いが湧いて来たのだった。決定的な何かが過ぎ去ったあとの、沈黙する光景の中にいたい。そうすれば人の営みや、時間というものの本質が、少しでも感じられるような気がした。」

 この時の営みと喪失が呼応するところもいいが、センチな私は、少し本質からずれるかもしれないが、許嫁の回想と物語が共鳴するところが強く印象に残る。

 フィールドワークの途中で秋野はカモシカに遭遇する。
ヤギにも会うが、ヤギは何だか人をバカにしているような瞳をする。カモシカの眼差しは、曰く言い難い神秘的な気配をまとっている。じっと見つめてる瞳に哀愁が漂っている。時間が止まったように見合っていると、ものがなしさとしかいいようのない情景が、ひたひたと辺りをみたしてゆく。

 許嫁はロシア風の黒い大きな瞳をしていた。あの何もかも見透かすような瞳で、世の中を渡っていくのには、やはり無理があったのだろうか。
 許嫁は自ら命を絶った。

それから50年後、息子の会社が遅島に総合レジャーランド、リゾートを開発し、そこに赴任していて、息子の誘いで秋野は遅島を再訪する。

 50年前のありとあらゆるものが破壊され尽くし消えてしまっていた。ヤギは生き残ったが、生活する場所は、囲われていた。
 そして、あのカモシカは絶滅していた。

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