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2018年06月 | ARCHIVE-SELECT | 2018年08月

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高橋克彦    「写楽殺人事件」(講談社文庫)

浮世絵作家として誰でも知っている写楽の正体は実は謎に包まれ、写楽は存在したのか別人の誰かが名乗っていたのか判明できず現在まで至っている。

 写楽というのは、北斎や歌麿のようにはじめから有名な画家ではなく、明治43年にドイツ人であるクルトにより紹介され、日本での浮世絵作家として有名になった。

 しかも、絵を創作発表した時期が寛政6年5月から翌年2月の10か月だけ。その間140枚の浮世絵を発表。それも、すべて蔦屋という美術商を通じて。10か月間の活動が終わると、ぷっつりと写楽は消える。
 このため、正体不明の作家となったのだ。

この作品では、写楽が誰なのかということで九つの説があり、それを詳しく紹介している。

 写楽研究家の主人公津田は、ある古書物店主から、秋田欄画集50枚を手に入れる。その中に、写楽改昌栄というサインの入った浮世絵がある。また昌栄だけのサインの画も数点ある。

 この昌栄は近松昌栄として実在した絵描きで、平賀源内の孫弟子だったというところまで津田の調査でわかる。

 そこで、津田は、昌栄こそ写楽ではないかと考え、秋田まで調査にゆく。

田沼意次が腐敗で失脚。それの権勢下にいた源内をはじめとする画家達は、厳しい迫害を恐れて、秋田佐竹藩の庇護を求め逃亡する。その中に近松昌栄もいて、写楽の名を改め昌栄として浮世絵を描く。つまり写楽は昌栄であることが津田は間違いないと思うようになる。そしてこれは、日本美術史上の大発見と、本当ならなるはずだ。

 ここまでを作品の半分以上を高橋は費やす。高橋は多くのエネルギーを使って写楽について調査し、写楽おたくとして、その調査研究を披歴したかったのだと思う。

 その後に、事件がおきたり、浮世絵研究の権力闘争や、計略が描写されミステリーになってゆくのだが、何だかその部分はつけたしのような雰囲気。

 高橋は自らが発見した写楽の正体を、一旦はこの作品で否定するが、最後に、これは間違いないと津田に熱っぽく語らせ、物語を終えている。

 高橋の「どうだ、凄いだろう」という思いだけが伝わってきた作品だった。

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| 古本読書日記 | 05:50 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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小池真理子    「危険な食卓」(集英社文庫)

日常の出来事に少しサスペンスの要素を混ぜ合わせた8編の短編集。

70歳を過ぎた主人公の西村与平は、現在三女の直子夫婦と一緒にマンションを買ってあげ住んでいる。少し物忘れがひどくなってきていて、その度に直子にきゃんきゃんときつく叱られ、一緒に住むのがいやになってきている。

 少し前、娘夫婦が夜映画を観に行き、その間行きつけの小料理屋「三上」で夕食をとる。帰ってきてドアを開けようとすると鍵が無い。探しても、「三上」に戻っても鍵はみつからない。それで、娘夫婦が帰ってくるまで玄関の外でじっと待っていた。
 老人は無くしてはいけないものは、常に身につけておくようにと厳しく叱られた。

息詰まる窮屈な毎日を過ごしていた時、同じマンションに住んでいる若い女性絵里と知り合う。絵里は、仕事もしないで一日中マンションにいる。

 ある日、たまたま出会った絵里から、一緒に昼ごはんを食べようと絵里の部屋に誘われる。部屋にはマルチーズの老犬モモがいた。

 絵里は薬剤師として病院に勤めていたが、そこで知り合った製薬会社の営業マンとつきあいプロポーズされ、結婚後住むためにこのマンションを購入したのだが、結婚直前に彼から別れを告げられる。死のうと思い、実家の工場から青酸カリを持ってきたが、死ぬことはできなかった。
 しかし、そんなどん底から立ち直り、今は元気を回復したと与平に宣言する。

絵里は気分転換に2泊3日で京都に旅行にゆく。その間、与平に部屋の鍵を渡すので、モモの面倒をみてほしいと与平にお願い与平も了解する。

 絵里が出発した夜、いつもの「三上」から帰って、絵里の部屋を開けようとしたとき、鍵が無いことに気付く。どこを探しても無い。

 次の晩「三上」に行く。そこで以前空き巣をしていて、どんな鍵でもたちどころに開けて見せることを自慢していた鍋島とあい、絵里の部屋を開けてもらうことをお願いする。鍋島は即了解。そして30秒もかからずに部屋のドアをあける。モモが元気でいることを知り与平が喜んでいると、鍋島は犯罪をさせたのだから50万くれと与平を恐喝する。

 しかも、鍋島は部屋の家探しを始める。金目のものが無かったが、目についたレミーマルタンを、もらってゆくと言って持ち帰る。

 次の日、定期預金を解約して50万円をもって「三上」に行く。すると、おかみが鍋島さん亡くなっただってと新聞をみせる。警察によると、青酸カリを飲んで死亡したが、どうしてあんな大量の青酸カリを手に入れたのかがわからないと小さな記事がでていた。

 絵里がお土産を抱えて京都から戻ってきた。レミーマルタンが無くなっていることに気付く。あわてて与平は、「あんな恐ろしいものはトイレに捨てた」と答える。絵里はおじいさんは凄い千里眼を持っているんだと感激し与平に抱きつく。

 ちょっと洒落たミステリーだ。

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| 古本読書日記 | 05:57 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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大平光代    「だから、あなたも 生き抜いて」(講談社)

本の帯に「感動した」という読者の声とともに、「自分も勇気と力をもらった。めげずにがんばるぞ」という内容のメッセージがたくさん掲載されている。

 しかし、私の感想は、唖然、茫然である。事実が小説を完全に超えている。作家をもってしてもここまでの物語は作りえない。もし、これが小説だったとしたら、こんな現実離れした内容は受け入れられないと拒否にあうこと間違いない。

 昭和53年、著者の大平さんは7月に祖母の家に転居したために、中学校を転校せねばならなくなる。そこから、強烈ないじめにあう。2年生になりクラス替えで3人の友達を得、一時楽しい学生生活を送ったが、その3人から、嫌いだけど付き合ってあげたと裏切られ、また全員から無視、いじめの世界に入る。

 学校へもいけなくなり、様子を心配した母にしつこく迫られ、いじめを受けていることを告白する。

 すると次の日、担任の先生が、いじめの首謀者を非難するのでなく、2人は今日から友達と言って握手をさせる。そこから、首謀者の子は大平さんがチクったとさらにいじめは激しさを増す。
生ごみを机に山のようにまかれるなど。親も先生も味方になってくれないと絶望した大平さんは、生きていてもしかたないという気持ちが高まり、何と驚くことに割腹自殺を試みる。

 発見が早く一命はとりとめた。

高校には入学したが、学校にはいかず、街をさまようことになる。完全に不良となり、これもびっくりだが、暴力団の組長の妻に16歳でなる。そして、親の承諾書をかってに作成して、背中に入れ墨を彫る。

 転機はどん底生活のなか、北新地のクラブでホステスをしていたとき、父の友人だった大平浩三郎さんが客としてやってくる。それから、しつこく大平さんがクラブをやめまともになるように説得する。父の友人大平のこの言葉が大平さんを目覚めさせた。

 「確かに、あんたが道を踏み外したのは、あんたのせいだけやないとおもう。親も周囲も悪かったやろう。でもな、いつまでも立ち直ろうとしないのは、あんたのせいやで。甘えるな!」

 就職に挑戦したが、中学もまともにでていないような人には、全く就職口は無い。まして極道の妻だったりしたから。

 そこで、何か資格を取ろうと挑戦。まず宅建に挑戦して取得。次が司法書士。ほとんど独学でこれも取得。

 そしてなんと次は司法試験に挑戦しようとする。そのためには、大学へ入学せねばならない。それから、中学校の教科書、参考書を手に入れ、学ぶ。その勉強描写はすごい。そして大学入学資格認定制度をクリアして、ある大学の通信教育学部特修生コースに入学。

 懸命に勉強して大学の単位を取得、そして大学3年生29歳のとき、最難関の司法試験に一発で合格、司法修習生を経て、弁護士となる。その後、大阪府副知事までのぼりつめる。

 日本でかってなかったたし、これからも絶対でないだろう中卒で、弁護士になったのである。

 正直絶賛する気持ちはあるが、自分と比較して不甲斐なさばかり思い出し、ため息ばかりがでる。
大平さんは超超スーパーウーマンである。

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田中文雄    「ザナドゥー」(角川ホラー文庫)

 日本が戦争に突入した時代にある男の子が生まれる。そのまま、男の子として育て、青年の年齢に達し、その時戦争が続いていると、男の子は戦争にとられる。それが、両親としては全く受け入れられない。そして両親は生まれた子は女の子として届け、女の子として育てることを決意実行する。

 その男の子は、見事に美しい女性として育つ。そして映画にも出演する。その映画で助監督をしていた高山は完全に女優に惚れ、結婚の申し込みまでする。

 2人は江の島の海で溺れ、高山は助かるが、女優は海の藻ずくとして消えた。女優は死んだかと思われたが、実は生きていて熊谷典子から、山谷の労務者安田の戸籍を買い取り、その後安田豊樹として男性に変わる。

 それから年が過ぎ、映画助監督の神波は、嵐の夜、住んでいるアパートからみえるさびれた洋館の窓から稲光に浮かび上がる「女」をみる。

 翌日オーディションに現れた女性の一人、中野真理子がこの女性にそっくりで驚愕する。
しかも真理子は神波と同じ鎌倉のマンションに住んでいた。
真理子はこんど撮ろうとしているヒロインの二十歳前を演じる主演女優となる。ヒロインの20歳過ぎを演じるのは当時の大女優、宮原五月。

 映画の監督をしている児玉は、女優にすぐ手をつけることで有名。そして宮原を愛人にしていた。児玉は神波の師匠。

 そして、大女優の宮原がマンションから飛び降りて死ぬ。監督の児玉が交通事故で瀕死の重傷を負う。この2つの出来事に謎の女性と老人の影がつきまとう。

 そして、最後に洋館にいた、稲光のなかでみた女性とそこに住んでいる老人安田に物語は収斂してゆく。

 もう少し、男の子が女の子として育てられる描写を突っ込んで書けば、面白い作品になったのではと思われるが、それが無いため、中身の薄い作品になってしまった。

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和田はつ子     「恐怖の骨」(カッパ ノベルズ)

 この物語は、人間誰でも共通価値観、あるいは本能として、生きることがもっとも大切なことだということが真実なのかと読者に疑問を提示する。

 テレビ番組にもしばしば登場する有名精神科医龍本は、ピアノ演奏で天才少女と言われていた妹がいた。11歳のとき石油ストーブを誤って操作したお手伝いによりボヤが発生。
 このボヤで妹が顔半分に火傷をおい、ピアノ演奏で全く指が動かなくなった。衝撃を受けた妹は窓から飛び降り自殺した。
 妹が死んでから3年後、母が肺炎をこじらせ亡くなり。後を追うように父親も進行性癌で亡くなった。
 と、龍本は主人公の検死官に語る。

 しかし、これは真実でなく、すべて龍本が殺害していた。生きることに意味を見出せず、死ぬことが生きがいとなっている状態だから、殺したのだと龍本は言う。

 そして難病研究所の所員となった龍本は、死ぬことしか意味のない、人々に出会い、自分の信念に間違いないと確信に至る。

 それで、絶望に陥っている人に、死の直前に最高に幸せな気持ちにさせてあげられる、脳下垂体か抽出した液を注入してそのまま死んでいけるようにすることを実行する。

 身長が足らずにバスケットボールをあきらめざるを得ない人に、この液で、身長を伸ばしてあげ死なせる。拒食症で絶望状態になっている元アイドルを、どんどん食べずにはいられない状態にしたところで死なせてあげるなど。

 作品を読んでいると、生きる意味が無く、死ぬことが生きがいという人はいるのではないかと思ってしまうが、和田さんは、それは他人がかってに思い込むだけで、どんなに絶望の淵にあっても、人間は生きたいと願っているのだということを最後に物語を通して主張する。

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高橋克彦     「長人鬼」(ハルキ ホラー文庫)

無軌道、無慈悲、わがままし放題の陽成天皇がわずか17歳で退位されたとき、それまで干されていた陰陽師の弓削是雄が復権して陰陽寮の頭になる。

 しかし、怨霊の出現なのか、自然が引き起こしたことなのか、陽成天皇が失脚してからも年10件と、多くの凶事が陽成天皇時代と同様の数発生していた。凶事が起こる頻度が多すぎる。桓武天皇が奈良から京都に遷都したときでさえ凶事の発生件数は6-7件/年だから現在は異常事態である。

 そこで、凶事が発生していると思われる、筑紫と出羽に陰陽師が派遣され、調査と悪霊によって発生していることがわかれば、霊を鎮めるよう関白より指示がでる。2人の陰陽師が2つの国にでかける。

 実は、その時、陰陽寮に所属する正式な陰陽師は是雄を含んで4人しかいなかった。二人派遣されてしまうと残りは是雄と紀温史しかいなくなる。

 そこを狙ったかのように、京都に人家の屋根を超える長人が現れる。人々はそれを長人鬼とよび、恐怖におののき、街は混乱に陥る。

 しかし、その時、讃岐の国主に左遷されていた菅原道真より、淡路島で凶事がたびたび発生。その怨霊を除去するため、陰陽師の派遣要請が朝廷にくる。

 百年以上も前、孝謙上皇より謀反の疑いをかけられ帝位を退位させられ、淡路島に流罪にされた淳仁天皇、流刑にあって一年後に亡くなったが、その怨霊が取りついておきている凶事と思われ、力のある陰陽師の派遣が求められたのだ。そんな力のある陰陽師は是雄しかいない。

 不穏な京都にたったひとりの温史を残し、是雄は淡路へと向かう。
淡路を何とか鎮め、京に戻った是雄や温史とその部下たちと長人鬼との戦いが物語のクライマックスとなる。

 この長人鬼は塀や建物をまたいで歩く。そんな表現があったかと思うと、実際長人にみえるのは二人の人間がいて、下の人間にもう一人の人間がのり長い着物を着て、長い袴をはいて長人にみせているという描写がある。

 それで、どうやって塀をまたいだり、建物をまたぐの?と素朴な疑問が起きる。野暮は言ってはいけないということなのか。

 こんな具合にホラー現象の謎が明らかにされ、その背後にある謀略が明らかにされる。
内容はともかく、平安時代の話としては読みやすい。

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| 古本読書日記 | 06:14 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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安岡章太郎    「安岡章太郎 戦争小説 集成」(中公文庫)

戦争小説というと、悲惨な空襲場面や、実際の戦闘場面を描くのが一般的だが、兵隊に入隊しても、実際の戦争にゆくのはそうしばしばあるのではなく、兵営に集められ、そこで生活や訓練をしながら、出撃の命令を待つのが普通。

 この戦争小説集には5編が収録されているが、空襲も戦闘場面も一切登場しない。長編の「遁走」が帝国陸軍の満州での兵営生活を描写している。安岡の初年兵時の経験がベースになっていて、かなり実話が多いと思われる。

 初年兵は、とにかく殴られ、殴り倒されるために毎日存在する。
歯をみせたといって殴られ、笑ったと言って殴られ、こわばっていると殴られ、ぐにゃりとしていると殴られる。

 殴られることから逃れることができるのは、食べているときとトイレで排泄するときだけ。戦うなどという本来の兵隊が思うべきことなど到底思いつかない。
食べて、殴られ、寝るよりほかにない生活のなかでは、頭は食欲しか思いつかない。食器と便器だけにとりつかれてしまう。

 ある日、小銃の部品が盗まれはじめる。薬莢や銃口蓋くらいであれば、代えがあり、問題ないのだが、弾倉バネや撃芯となると、補充というわけにいかず、盗難を隠蔽していることもできない。しかも、小銃は天皇からの賜りもの。部品が無くなるなどいうことは天皇、神への冒涜。

 だから懸命に捜索するのだが、見つからない。そのうちに石川二等兵が、部品を盗んでは、絶対見つからない隠し場所、肥溜めに投げ捨てているのが目撃される。

 何しろ天皇からの賜りものだから奪還せねばならない。昼食後、兵隊が集められ、バケツに糞尿を掬い、肥壺にいれる作業をする。しかし、これが思うようにはかどらない。3時間やっても、糞尿が半分も減らない。

 突然、浜田伍長が「作業止め!」と命令する。
伍長は、上着を脱ぎ、袴もとり、褌一丁になり、マンホールの蓋をあけ、しずしずと糞尿のなかに入ってゆく。糞尿をかきわけながら、「冷たい!」と言ったかとおもうと、首までつかる。そして、伸ばした手で、肥溜めの底を探り始める。

 そして、伍長がにこやかに笑って両手を高く上げる。その手には弾倉バネがひとつ握られていた。

 それを見ていた兵士たちが「やったー!」と歓声をあげ、大拍手をした。
安岡のブラックユーモア全開。それにしてもやはり超異常な世界である。

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町田康    「ギケイキ」(河出文庫)

私は読んだことがないのでわからないが、義経の生涯を描いた古典、かなり虚実が混然としているらしい「義経記」を、結構忠実に現代のパンク、フュージョンの言葉に置き換え、町田が描いた、町田版「義経記」である。

 わかりやすく、楽しく、最後息切れした感はあるが、義経のことがよくわかり面白い。

義経は平治の乱で謀反を働き殺された源義朝と静御前の間に生まれ、幼名を牛若丸と名付けられる。

 牛若丸は13歳の時に、熱田神宮にて自らの手で元服し、九郎判官義経と名乗るようになる。義朝の息子。長男が善平、次男が朝長、三男が頼朝、四男が希義、五男が範頼、六男が今若、七男が乙若、そして八男が牛若、とこの作品では書かれている。今まで九郎というから義経は九男かと思っていたが、八男だった。本来は八男判官と名乗らねばならないのだが、為朝が八郎と名乗っていたために九郎にしたそうだ。

 日本では釣り人として有名な中国の太公望が書いた兵法書「六戇」がある。この「六戇」は軍事マニュアルなのだが、本を読みこなした人はみんな奇跡的な軍事技術をみにつけた。

 張良というひとは、90センチの竹棒にまたがりインドから満州まで飛んだ。礬膾というひとはこの本から強烈パワーを取得。敵と相対すると兜から頭髪が抜け出たり、鎧から胸毛が抜け出る。

 義経はこの「六戇」を所持している将門という男から、下女を篭絡して盗みだし筆写する。

悪事が国を栄えさせると考える弁慶がある日気が付く。千という数字が肝要だと。千手観音、千羽鶴など。だから千の太刀を奪い取れれば自分はとてつもなく出世できると信じて、夜、通りを徘徊して、歩いている武士の太刀を奪う。

 これが九百九十九まで奪取。あと一刀というところで義経に夜中に会う。

義経は弁慶の振る薙刀をフワっととんで避け、あの「六戇」で会得した技術により、空中でピタっと止まる。さらに驚くことに、重力に逆らってここから2メートルも飛び上がる。
 この義経の術で弁慶は敗れ、義経の側近として忠誠を誓うようになるのである。

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柚月裕子   「最後の証人」(角川文庫)

ホテルの一室から、女性の遺体が発見される。胸には食事の時に使うナイフが刺さっている。死亡推定時刻の直後に同じ部屋に一緒に泊まっていた男が、ホテルをでてゆくのを防犯カメラがとらえている。

 どうみても、男が刺殺した犯人しかありえない。通常このような場合、弁護人と男は、正当防衛とか、殺人の意図はなかったと主張して、殺人は認めるが、減刑を多く獲得する戦術で裁判に臨む。

 しかし犯人とされた男は、男が犯人でしかありえない状況で、自分は無実だと主張する。
こんな事件の弁護を引き受けたのが、ヤメ検の佐方弁護士。佐方弁護士が検事をしていたときの上司が筒井。この事件の検察側の検事はまだ若い女性検事真生。彼女も筒井の薫陶を受けている。

 筒井は常に言っている。
「事件は、表面にでている証拠をみるのではなく、まず事件に関係している当事者たちの人間をみろ。」と。
 佐方は、この思考を完全に筒井よりたたきこまれていた。

 殺人犯とされた男が、これだけ証拠が明白なのに、どうして無罪を主張するのか。動機は、不倫関係にあった男女、女が男に今の妻と別れて一緒になってくれとしつこく迫り、それを堪えきれなくなった男がホテルに女を呼び込み殺人をしたといういかにも世間にありがちな動機だと思い込まれ男が犯人にされたていた。

 しかし、よく調べると、犯人と被害者は知り合ってまだ2か月。そんな短期間で、不倫はこんな状況にまで至るものだろうか。

 そうすると、被害者の女性と男の関係の違った部分がみえてくる。この違った部分と今回のホテル密室殺人事件がつながってくる。

 この違った部分の掘り起こしと、公判で追い詰められた佐方が、最後の切り札として起用した証人。その証人を証人台にたたせるまでの執念が、読者に鋭く迫ってくる。その迫力と筆力が素晴らしい。

 被害者と思われていた女性は、自分で胸を刺し自殺をしていた。女性はそれを殺人事件に仕立てて、男を殺人犯にすることが目的だった。

 しかし、自殺してまで男を殺人犯に仕立てる動機に読者の納得感が得られるようなものがあるだろうか。
 そこを柚木は、見事に描き、読者を納得させている。

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本谷有希子    「腰抜けども、悲しみの愛をみせろ」(講談社文庫)

東京で俳優を目指していた澄伽が挫折して故郷の田舎に帰ってきた。

 その時のさびれた田舎に対する澄伽の印象、嫌悪感が胸に沁みる。ここまでは酷いとは思わないが、実態を鋭くついている。

 「東京であれば3日もたたないうちに誰も関心がなくなるだろう他愛もない騒ぎや、昔起こった騒ぎの余韻をできるだけ長く反芻したり、いつまでも執念深く語りあう。
 周囲を四方とも山に囲まれているため、田舎だというのに全く解放されているという気がしない。ふもとの平地をとりあうようにして密集している水田や家屋。あぶれた者は山の傾斜に家を建て、猫の額ほどの畑を幾つも階段のように作って暮らしている。細々と慎ましい生活などというイメージは微塵もなく、澄伽にはあさましい人間が狭い土地を貪っているという印象しか抱けなかった。
 それに今は太陽によってごまかされているものの、夕暮れともなれば、どこからともなくにじみでる、侘しさや貧乏くささがあたり一面に漂いはじめる。腐りかけた木の電柱。雨風にさらされ絵も文字もはげおちてしまった何かの看板。脚の曲がっているバス停の標識。鎖につながれ毛並みの逆立った雑種犬。その足元に転がる飯粒のこびりついたアルミのボウル。それらがいっせいに夕日をあび、哀れさをかもしだす光景はみすぼらしいこと極まりなかった。」

 澄伽は心の底では自分の能力では女優になることはできないと感じているが、こんな田舎に埋もれる人材ではないというプライドを強くもっている。

 それで、雑誌の文通欄にあった、シナリオライターであり新進の映画監督である小森哲生に自分の田舎暮らしへの不満と東京で飛躍したいという思いを毎日のように手紙を書く。

 3-4回に一度小森より返信が届く。
最初は通り一遍の内容なのだが、そのうちに今執筆している映画脚本についての報告があり、最近ではこの映画でヒロインをできるのは澄伽以外にはあり得ないと強い出演依頼に変化する。

 でも、澄伽は一向に田舎をでてゆく様子が無い。
澄伽は手紙の発信も返信もひとりでしていたのだ。なんとも切なく、悲しい。

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佐藤青南     「ジャッジメント」(祥伝社文庫)

私の知り合いに同い年の、かっての名門高校の野球監督をしている人がいる。練習時間も長く厳しい。だから、他の職業にはつかず、野球監督だけの収入で生計をたてている。

 彼から聞いたが、月給35万円。監督当時は子供2人は中高生で、よくそれっぽっちのお金で暮らしていけるのか不思議に思った。しかも、ベンツの高級車をのりまわしている。

 この作品を読んで、そうかと思った。選手の父兄から、多額の謝礼をもらう。高級車も実はセレブ父兄のプレゼントだった。大会のベンチに子供をいれてほしくてお金をだすのである。

 10年以上も前、巨人の原監督が暴力団2名に恐喝されて1億円を支払うという出来事が発覚した。20歳代の女性と不倫をして、子供を妊娠させていた。その女性の日記を手に入れた暴力団員が恐喝を働いた事件である。

 この物語は、原監督を思わせる、名門チームアストロスの榊監督が、川原で真夜中バットで撲殺されるという事件があり、犯人として、6年前榊監督より熱望され、長崎の島原の高校よりドラフトでアストロスに入団、しかし1軍にあがることはなく、クビを宣告された宇土が逮捕される。

 宇土と高校のとき親友だった新米弁護士中垣が、宇土の弁護にまわり、無実に導くまでの過程を描く、法廷ミステリーである。

 物語は法廷場面と、無名校の島原北高校が宇土を得て、甲子園出場まで勝ち進む過程を途中から交互に描写する方法で進行する。
 しかし、どうにもこのパラレルの描写が共鳴せず、物語を盛り上げない。
高校野球はもっと凝縮して綴り、法廷部分を深堀してほしかった。

 物語の核心は、野島という証人が、真夜中、宇土と榊監督が犯行現場である川原に向かって歩いているのを目撃したという証言にあった。

 しかし、野島は事故に遭遇し、高次脳機能障害を患っていて、視機能が機能していないことを中垣が解明して、証言は偽証だと見破ることにより解決に向かう。

 高校野球の展開描写より、なぜ、野島は偽証をしたのか、それを物語に進行過程に盛り込みミステリー要素を拡げてほしかった。欲求不満が残った。

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笹生陽子    「楽園のつくりかた」(角川文庫)


  この作品産経児童出版文化賞受賞作品である。そうか、中年が選者となるとこういう作品が評価されるのかと思いいたった。

 最近、笹生さんの作品も含めて、中高生が主人公になっている作品を集中して読んだ。

 殆どが、家庭に問題があったり、クラスから疎外され、最低の学生生活を送っているのが主人公で、それに対応する周囲に問題があり、集団から逃げる子供を暖かい眼差しで見つめ周囲も主人公も勇気をもって行動せねばいけない物語ばかりだった。

 この物語は優という中学生の子が突然、田舎に引っ越し転校させられるところから始まる。
父の実家にゆくのである。母親は自然が大好きと言って、引っ越しを待ち望んだように振舞う。

 優は都会にいて、優秀で、良い学校にはいり競走を勝ち抜いて、有名大学に入りそこを卒業して大企業に就職、そこで活躍することが自己実現の姿だと思って懸命に頑張っている。

 ところが突然転校した先は廃校寸前の田舎の中学校。何しろ優のクラスには優を含めて4人しか生徒がいない。純粋に村出身の生徒は山中一人。後は都会で登校拒否をしていた子とクラスからはぶせにされていた子、田舎留学体験生だけ。

 こうなると、優は当然こんな生徒たちになじんではいけないと一緒の活動を拒否する。そして中学校のイベントへの参加は拒否して、大手予備校の模試を受ける。

 そこで、里山と衝突する。こういう物語では、大概の作家は里山の子供たちを応援し、その純粋、無邪気さを強調する。

 この物語も少し異なるが、その純真さに優が触れ、未来に成長する物語になっている。
そんなに優の生き方が否定されるべきなのだろうかと感じる。
 この優と素朴な田舎の子供たちの大きな相違を一方的に田舎よりにならず作家は突き詰めてほしいと思う。

 優が、韓国フランス シンアガポールと海外駐在をしていて、多忙で日本に帰国できない。それで田舎に行かざるを得なくなったと父親に非難のメールをする。だけど、父親はシンガポールで交通事故で亡くなっている。優は父親になりかわって「頑張れ」と自分に父親からのメールを書く。このやりとりが胸を鋭く刺す。

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朝倉かすみ    「てらさふ」(文春文庫)

  タイトルの「てらさふ」は古語で「みせびらかす」という意味だそうだ。

  この物語は、作品が出版になった直前に起こった、佐村河内作曲偽装事件を思い出させる。広島被爆者2世で天才作曲家として一世を風靡していた佐村河内作曲の作品は、佐村河内がイメージを創り、それを基にして新垣隆という覆面作曲家が実際の作曲をしていたことが暴露され、佐村河内氏は、世の中の湧き上がる非難のなか、奈落の底に完全に落とされた事件だ。

 主人公の堂上弥子は14歳の中学生。読書やもの書きが大好き。彼女は何としても最年少で天下の芥川賞をとり、注目を浴びたいことを願っている。

 弥子の中学校に札幌より鈴木笑顔留とかいてニコルと読むキラキラネームの子が転校してくる。ニコルは美女でモデルのような子、音楽大好き、いつかタレントとしてはばたきたいと思っている。

 弥子は自分は大人しく、社交的でなく、容貌、体形も中クラスで見栄えもしないため、ニコルを前面にだし、自分は裏方で作品をつくり、2人共同で、作品を発表することを計画する。

 まずは小樽市が主催する読書感想文コンクール(実作者は弥子、発表作者はニコル)で発表して、最優秀賞を受賞。全道大会で知事賞を全国大会で文部科学大臣奨励賞を受賞する。
 しかし感想文コンクールでは有名にはならない。高校生になり弥子とニコルはいよいよ本命の芥川賞に挑戦する。

 しかし、高校生では小説のモチーフは浮かんでこない。そんな時同級生の糸田君のおばあさんが昔小説を書いて同人雑誌に発表していたことを知る。そして、図書館でその雑誌を発見。そこには2作あった。「あかるいよなか」と「うさぎ」である。

 「あかるいよなか」はおばあちゃんの青春時代昭和40年代が描かれる。ボンカレーや水原弘が物語に登場。とても、現在の高校生が書けるとは思えないが、もうひとつの「うさぎ」は戦争体験の物語、これよりは真実性があるだろうと「あかるいよなか」を、糸田君におばあさんが強度の認知症で記憶がよみがえれないことを確認して、文芸誌に作者ニコルで送り、雑誌に掲載される。

 作品は文芸誌新人賞を獲得。その後、見事に芥川賞を受賞。作家ニコルことニコが美少女であったことが、反響をよびニコは超有名人となる。

 しかし、読書が好きでないニコが数々のインタビューに登場。いくら指南者の弥子がいても、ニコが作者で通すことは難しい。
 また弥子も芥川賞受賞の次作が書けない。
 さらに、賞金や印税は弥子とニコで2等分していたが、税理士に見つけられてしまい立ち往生する。これでは、ニコが偽作者であることはばれる。

 佐村河内さんのときは徹底的に世間から叩かれ、もちろん弥子もニコも叩かれたが、それで真っ暗闇に突き落とされたという感じは全くしない。

 ちょっと人生の道をはずれてやってみたいことをやっただけと結構あっけらかんとしている。ネットの普及により書くことの敷居が一段と低くなった現在、普通感覚でホイホイいろんな文章が生まれ、こんな感じで本ができるのが主流になる時代がくるかもしれない。

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池波正太郎      「秘密」(文春文庫)

池波正太郎は20年ほど前、熱を入れて読み、殆どの作品を読んだのではと思っていたが、古本検索でこの作品が未読だとわかり、早速購入し手にとってみた。

 主人公の片桐宗春は、やむを得ない事情のため、篠山藩家老の息子堀内寛蔵を果し合いの末刺し殺す。そのため、寛蔵の弟、堀内源二郎に父親が命令して仇討を果たそうとする。源二郎とその仲間を含め3人が、宗春を仇討のため追い詰めてゆくことが物語の主題になっている。

 宗春は、医者である父宗玄が友人だった滑川元敬の息子で同じ医者である滑川勝庵の隠れ家に身を寄せ、一時江戸は離れたもののまた舞い戻りひっそりと逃亡生活を送ることになる。

 いかにひっそりと言っても、人間は他人との係りのなかで生きていて、その係りが新たな難事を呼び込み、それを取り込み、克服しながら生きてゆく。池波の作品は、その係りに無理が無く、なるほどと読者を納得させながら、物語を進行させるのが実にうまく見事である。

 勝庵の患者で、袋物商で財を築いた吉野家清五郎。勝庵では病気が快方しないため、宗春を紹介して診てもらうと、痛みが消え元気になる。清五郎は喜び、掛かりつけの医者として宗春を指名して宗春もそれに応える。その宗春は、先妻の後妻にお初を娶る。このお初は、実は宗春がかって恋した女性。しかも宗春がお初にとって初めての男。

 さらに、源二郎が宗春と思って、刺した男。一見、宗春とそっくり。名前は萩原孝節。実は宗春の腹違いの兄だったことが後に判明する。

 これに元娼妓で、その娼妓館が火災で焼け、館主が館を閉じ、それで解放されて料理屋「大むら」の女中になったお民。宗春とこのお民が恋仲になる。

 物語にキーとなる人間が無理なく結びつけ活動できるように、周りに多くの人たちが上手く配置されて見事。

 池波は昭和の時代に江戸を描いた作家とは思えず、まさに江戸時代を生きて物語を描いているように思わせる。
 江戸言葉、人情、そして鮮やかな風景描写。加えていつものようによだれがでそうになる料理の数々。読者に物語だけでなく江戸を堪能させてくれる。

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笹生陽子    「世界がぼくを笑っても」(講談社文庫)

浦沢中学校2年生のハルト。貧乏で父子家庭。母親は3歳のときメール一つで家を出て行ったきり。親父は賭け事に狂っていて、いつも負け続けている。

 ハルトが8歳、まだサンタクロースの存在を信じていたとき、
「今年はお父さんサンタさん家に来てくれるかな。」と聞くと
「サンタクロースが来てくれるかって?お前も結構幼稚なことを言うんだな。昔とちがってきょうびのサンタは簡単には来てくれないの。ボランティアにお願いするときでも、予約が必要で、登録料が500円いるの。500円払ったからって必ずプレゼントがもらえるわけではないの。あたりはずれがあるんだ」なんてことを言う。

 なけなし小使い500円を親父に渡す。
そして一夜あけプレゼントがあるかと思ったら紙切れが一枚ピローン。そこに
「次の重賞レースでほんきだす。今回はごめん  サンタより」と書いてある。

 こんなハルトのクラスに、4月から小津というダメ先生が担任として新しくやってきた。
小津先生のダメっぷりも筋金いり。

 始業式に校長より紹介されマイクを持ち、自分の紹介と決意を披露しているときに、貧血を起こし倒れてしまう。

 社会科授業で、裏の山500mの探索にバスでゆく。そのバスのなかで酔ってしまいゲロをはく。生徒を何人か引き連れ登山。下山時に道に迷い、結局消防団がでて発見。

 ハルトの家へ家庭訪問でやってくると、断りながらも親父に進められて酒を飲む。そして次の日二日酔いで学校にやってくる。

 先生は、小さいころは体が弱く殆どが病院暮らし。中学校を終えて2年後に通信制の高校にはいり4年間勉強。そして苦労して25歳で大学に入学。そこで先生になりたくて免状をとる。

 大学を終えても、なかなか先生の就職ができず、やっと代用教員として浦沢中学に赴任してきた。

 この小津先生のおかげで、ハルトは自分自身だけでなく、クラスそのものがダメクラスとして、学校中の笑いものになる。
 がっかりし、厭になる気分が蔓延しているとき、のけ者にされてきた小津先生が言う。
「バカにされたら、下をむいたり、ニヒルに笑うんではなく、思いっきり大きな声で笑え。」
先生はこのバカ笑いで辛い日々を超えてきたようだ。

 この一言で、卑屈な気持ちがふっとぶ。思いっきり笑い返した向こうに明るそうな未来がみえてきた。

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山田詠美    「珠玉の短編」(講談社文庫)

「珠玉の短編」というから短編を集めた作品集だと思った。その推測は正しかったのだが、本のタイトルはその短編を集めた作品の中のタイトルだった。

 主人公は小学4年生の治子。舞台は昭和30年代か40年代の初めの地方か。そこに化学薬品工場ができることになった。村は賛成、反対で二分されたが、工場長が菓子折りを持って家々を回ったため、みんな工場誘致はよかったと思うようになった。

 治子の家にも工場長はやってきた。そして、娘の美津子が治子と同学年と知り、美津子は体が弱いからぜひ友達になってくれとお願いされる。

 田舎の子供は純真。治子は絶対友達になってあげると決心する。クラスは別だったが美津子に治子は声をかけて友達になる。帰り道、美津子は治子に家に上がるようにいう。

 レースのカーテン。食べたことのない洋菓子。そしてピアノ。
 その豪華さに家に帰って母に報告する。

「そんなお家にあがってはダメよ。美津子さんはうちと違って箱入り娘なのだから。」
治子には「箱入り娘」がどういうことかわからない。でも、美津子に憧れる。

 ある日、美津子の家に行ったとき、治子は美津子は箱入り娘。うらやましいと言うが聞いた美津子も「箱入り娘」の意味がわからない。

 それで美津子は、お人形がいっぱい入っていた籐のチェストから全部の人形を放りだし、このチェストに入れと治子に命じる。治子が入ると蓋をしめ、そこにたくさんの本をおいて「箱入り娘の出来上がり」と声をあげる。

 美津子がでてもいいと言うまで、治子はチェストに入っていることにしたが。美津子が遊びに飽きてどこかへ行ってしまったとき、蓋を両手であけ、逃げ出す。

 その後も美津子は治子は私の召使と言い、籐の箱に入れて遊ぶようになる。「箱入り娘遊び」とでも言う遊びなのか。

 化学工場はその後公害をまきちらし。不況にもなり、閉鎖され、工場長と美津子はおちぶれてどこかに行ってしまう。
 あれから50年。治子は亡くなり、死体となって棺にはいる。死人の治子はつぶやく。「やっと憧れていた箱入り娘になれたわ」と。

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恩田陸    「ブラック・ベルベット」(双葉文庫)

「MAZE」からスタートしたウィルスハンター榊原恵弥シリーズの3作目。

T(トルコ)共和国で国際薬品見本市が開催される。恵弥は出張に行くつもりは無かったが、友人の国際感染症研究所の研究員多田から、現在トルコにいて失踪している人探しをしてほしいと依頼され出張を決意する。

 多田の友人のジョエル・スタンバーグ博士の妻アキコ・スタンバーグ博士が講演をかねトルコに一週間の日程で旅にでたが、「まだ研究したいことがあるからしばらくトルコにいる。心配無用」というメールを残して、一週間を過ぎてもアメリカに帰国しない。どうしているか捜索してみつけてほしいということ。

 その失踪したアキコ・スタンバーグはすぐみつかる。しかし、アキコは目の前で通りを歩いていて、何者かに後ろから包丁で刺され殺されてしまった。著名な博士であり、アメリカ人。大きなニュースになるかと思いきや、新聞の三面に名前もでずベタ記事。それも不思議。

 恵弥があわてて国際電話で多田に伝えようとすると、驚くことに多田が交通事故にあい、重傷を負っていた。

 さらに、驚いたのは、イスタンブールの食堂で、アキコの夫ジョエルが何人かと楽しそうに食事をしているところに遭遇する。妻が殺されたのに、どうなっているのか。

 これにD.F(死の工場)という怪しい薬が登場。これについて、アンタレスという人間が恵弥に接触してくることとなっているがいつまでたっても現れない。

 こんなミステリーな出来事が息つぐ暇もなく展開し、どんどんこの先どうなるのかと物語に引き込まれてゆく。さすが恩田だとその手際には感服する。

 それで最後。ここが、それまでの展開に比べしょぼかった。
ひっくりかえすとこまで行かなくても、悪の正体を大地震で揺れ動かせあわてさせるところまでの物語にしてほしかった。

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本谷有希子   「乱暴と待機」(MF文庫 ダ・ヴィンチ)

この作品はわかりにくい。何がわかりにくいかというと、陰気な借家に同居する妹奈々瀬と兄英則が、兄は奈々瀬を殺して復讐を遂げるという強い思いがあり、妹奈々瀬は兄の復讐を心から待っている、ただ復讐するための原因が不明朗のために、それがわかるまで2人で同棲して、原因が判明すれば兄は妹が納得づくで、妹を殺して復讐を遂げるという設定がすっと飲み込めてこないところだ。

 実は、この奈々瀬と英則は兄弟ではなく、家が隣同士の幼馴染。小さいときから2人で遊び、互いに兄妹のように仲良く暮らしていた。そして、復讐の原因は、英則家族と奈々瀬がドライブに行ったとき、踏切のある線路上で車がエンストして、そこに電車が突っ込み、英則の両親は死亡。英則は足に思い後遺症が残るけがをしたが奈々瀬は無傷だったことに原因がありそうだと物語は匂わす。

 ここに、英則の仕事場の部下番上と恋人のあずさが絡んでくる。

今の時代、命を懸けるということはどういうことだろうか。私たちの少し前の世代では、仕事を懸命にするということだった。それは高度成長につながり、その成果、見返りが給料アップ、暮らしが目に見えて向上することが認識できた。

 今は、全く命を懸けるような対象はなくなり、漠然とした不安や恐怖が漂っている。健康や癒しがキーワードとなり、健康産業や美容、マッサージが流行。長寿にはなったが、認知症や介護難民がその先に控えている。ただ、漫然と生きることが悪とだんだん思えてくる。そんな時代を反映しているのが、番上とあずさの関係だ。

 そして、この先、命は軽いものとなり、英則と奈々瀬の関係のように、簡単に命を落とすことは普通になる世界がやってくる。こんなことを物語は描いているのかと思った。

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森絵都     「クラスメイツ」(後期)(角川文庫)

この作品の前に、中高生を主に扱っている作家、朝倉かすみと笹生陽子の作品を集中して読んだ。2人とも力のある作家で、中学、高校生の悩みや心の彷徨を鮮やかに描き、見事だと感心したが、私の感性が低いのか、読んでいてどうにも眠くなって読むスピードが落ちた。

 しかし、何が違うのかよくわからないのだが、森さんのこの作品は、楽しく、興奮を伴って読めて面白かった。

 クラスに田町という登校拒否の女子生徒がいる。勉強遅れを取り戻してあげねばということで数学の堤先生が、特別補習をすることになる。これを知った日向子、堤先生が大好き。
自分も補習授業を受けたいと堤先生に訴える。そして一緒に補習を受ける。
 日向子は、算数が小学校のころから大の苦手。特に円周率を表すπの文字が登場してからわけがわからなくなる。

 補習の時、堤先生に言う。
「πなんか覚えたってなんの役にたつの。」と。
先生は「マンホールの設計や製作に使うのです。」と答える。

 試験のときが、日向子の誕生日。だから日向子は、いい点がとれたら何かプレゼントと堤先生にねだり、堤先生も了解する。その時の日向子の言葉が素晴らしい。

 「先生!絶対ですよ。約束!ウチ、石にかぶりついてもいい点とってみせます!。」
中学生は、身についていない言葉を感覚でよくしゃべる。「石にかぶりついても」。このあたりの森さんの表現は、中学生の有り様をよくでていて秀逸である。

 日向子のテスト結果は、前よりは上がったが59点。
それでも堤先生は約束通り、プレゼントを日向子にくれた。

 それは「マンホール」の写真集だった。

中学生は、楽しくても、辛くても、何もなくても、いつも輝いていて無駄な日はひとつもないということを森さんのこの作品は語っている。

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森絵都    「クラスメイツ」(前期)(角川文庫)

小説は2冊に分冊されているが、上下巻ではなく、前期、後期と表現され分かれている。学園小説の香りが漂いなかなかしゃれている。

 北見第二中学校は、北見小、原小の卒業生が入学してくる。少子化によりどんどん生徒が減少し、北見第一中学校に統合される話もでている。

 4月に入学してきた一年生も数が少なく、クラスもA組とB組の2クラス。物語の中心になるA組の生徒数は24人。
 森さんはその中から主人公を選ぶのではなく、24人一人一人の日常の出来事を切り取り連作短編集に仕上げている。24人みんなが主人公になっている。

 蒼汰と心平はクラスを楽しくさせるため、ボケとツッコミのギャグコンビとして活躍しようとしている。しかし、ギャグが辛辣。ポッチャリ型のこのみには「あたしはハム」という歌をつくり捧げる。天然パーマの志保理には「大仏さま」「大仏さま」といって拝み倒す。
父親がタイ人のアリスには「タイカレーを食わせろ」としつこくつきまとう。
 だから特に女の子にはシャレにならず無礼として蒼汰は嫌われている。

蒼汰がクラブが終わり、着替えにクラスに戻ると、窓ガラスが割れてその先にサッカーボールが転がっている。誰かがサッカーボールで遊んでいて間違って窓ガラスを割ったのだ。

 藤田先生を呼び、発見状況を話す。クラスには蒼汰と心平しかいなかったと。先生は、犯人追求は熱心にしようとしなかったが、学級委員長のヒロがきちんと犯人をみつけようと言い張り、事が大げさになる。実はクラスにはその時蒼汰、心平だけでなくヒロもいた。

 クラスの生徒や藤田先生の厳しい追及を受け、蒼汰は犯人はヒロだと言う。

 しかし、正義感あふれクラスの信頼を勝ち得ているヒロ、しかも犯人を捜そうと言い出したヒロが犯人のわけがないと誰もが蒼汰の言うことを信用しない。

 それどころか、犯人は蒼汰だと指摘され、大ウソつき呼ばわりされる。
まだ中学生になって4か月しかたっていない。あと、2年8か月もある。その長さを思うと蒼汰は暗澹たる気持ちになる。

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本谷有希子     「自分を好きになる方法」(講談社文庫)

三島由紀夫文学賞受賞作品。

主人公リンデは「お互いに心から一緒にいたいと思える相手」を求め続ける。そんなリンデの3歳、16歳、28歳、34歳、47歳、63歳のある日の数時間の出来事を切り取ってリンデにはそんな相手がみつけられないという事実を描写している作品。

 秀逸だと思ったのは、幼少時から63歳まで順番にエピソードを配置するのではなく、3歳を63歳と47歳の間に挿入したところ。この3歳のエピソードが、相手を見つけられないのは仕方ないと読者に納得させる大きな力となっている。

 47歳の時、友達を集めてリンデの家でクリスマスパーティをする。ほのかに恋心を抱いているジョンさんもやってくる。その準備にジョンさんと一緒にツリーに飾るオーナメントを買いにホームセンターにゆく。しかし2人とも、どのくらいの長さのオーナメントが良いのかわからない。それで、一番長い15メートルのオーナメントを買ってくる。

 オーナメントは床にだらりととぐろをまくように置かれたが、電飾をつけると金色に灯りを放ちすばらしい雰囲気となる。

 そんな、パーティが楽しい雰囲気で終了。リンデの家ではこんなでかく長いオーナメントを保管できるスペースが無い。それで、誰かに持っていってくれるように頼む。しかし、誰も無視する。ここでリンデが爆発して癇癪をおこす。
 「全部私におしつける。みんなで私をバカにして」と。この癇癪でパーティは台無しとなる。

 リンデがホームセンターに行こうとしていて、玄関のポスト受けを確かめたら、宅配の不在者伝票が残されている。配達業者に連絡するとこれから配達にいってもいいかと聞かれる。これからは外出するので難しい。できれば9時以降にしてほしいとお願いすると、規則で9時までしか配達できないと業者が答える。

 そんな態度だと、運送配達などやっていけなくなるよと怒り電話をきる。
パーティが終わり家でリラックスしていると、電話がある。
 9時は過ぎているけど、おたくの近くまできている、配達に伺ってもいいかと。少し、むかっぱらがする。しかし、いいですと答える。

 63歳のときの配達業者のやりとりと重なるのだが、そこまで来ていると言ってた業者がなかなかやって来ない。15分、20分と待つのだが。それで堪忍袋の緒がきれて、どうなっているのかと配達業者に電話する。もうすぐです、でも明日の配達にしても構いませんと業者が言う。

 そこにまたカチンとくるから、「持ってきなさい」と強く言う。それからも随分待つ。
もう眠ろうかとしたところでチャイムが鳴る。そして、業者から荷物を静かにもらう。

 これだから、心穏やかになる相手に恵まれないのかなと思い、3歳から今までの出来事を思い出す。

 人間は嫌なことだけは記憶にこびりつき、いつもわいてでてくる。63歳のリンデ、悪い思い出ばかりのように思うが、きっと忘れてしまっている楽しい思い出もたくさんあっただろうと私は信じてしまう。

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笹生陽子   「ぼくは悪党になりたい」(角川文庫)

2つの物語の設定が突き抜けてユニークで、それに振り回される17歳の主人公エイジの行動描写がうまく表現されている。

 エイジには羊谷という悪友がいる。羊谷は超美男子。長身、やせ型、細面。さらさらとした髪にきれいな瞳。2月14日には大量のチョコをもらい、配り歩くのが大変。女性はとっかえひっかえ。だけど、少し悪で、女性のことで因縁をつけられ、ぼこぼこに殴られる。

 そして今は、ヤンキーな娘マヤと交際をしている。
その、羊谷が修学旅行に行ったあたりから、急に元気がなくなり、疲れた様子が強くなり、目の周りも黒ずんでくる。

 それに比例するように、マヤとも会話、付き合いが殆ど無くなる。何があったのか不安になったマヤは、エイジに羊谷の様子をみるようにお願いする。

 羊谷の部屋に行ってエイジは驚く。羊谷はメイド・ロボットであるチイちゃんに完全に恋してしまっていたのである。チイちゃんは、何でも言うとおりにしてくれるし、心配して優しい声をいつもかけてくれる。マヤみたいに不貞腐れたり、きつい言葉などかけてくることなど一切無い。

 このチイちゃんと朝まで愛の言葉の交歓を毎日しているので、目に隈ができるのだ。

こういうロボットは、女性とうまく関係ができない男性が利用するもの。女性にもてっぱなしの羊谷のような男性が偏愛するのはありえないのでは。

 それからエイジは8歳年の離れた弟ヒロトと母親の3人家族。母親はシングルマザーでエイジもヒロトも父親を知らない。

 母親は輸入雑貨の商売をしていて、しょっちゅう商品の買い付けに海外にいく。その間はエイジが家事をとりしきり、ヒロトの世話もする。

 そのヒロトが母親が海外出張で不在の時、水ぼうそうにかかり、熱をだす。エイジはそのとき修学旅行のため、家を空けざるを得ず、ヒロトの世話を母親の手帖にのっている、杉尾にお願いする。杉尾は過剰なほど、家事をし、ヒロトの世話をする。そして、母親が帰ってきてからも、ヒロトの家庭教師となり、家にやってくる。それを母親は嬉しそうにむかえる。

 今母親は42。杉尾が31.ヒロトが9歳だから、母親33、杉尾22のときにヒロトは生まれたのだとエイジは考える。そして、ある日決意して杉尾にこれが事実か聞く。

 すると杉尾が驚くことを言う。
「私はヒロト君の父親ではなく、実はエイジ君の父親だと。」
 何と、エイジを生んだとき母は24歳でその相手杉尾は13歳だったのだ。

 これは確かに突き抜けた発想である。

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松本清張 「巨人の磯」

爺やの感想はこちら

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色々と強引なので、推理したい読者には向かないのかもしれない。
松本清張の本って、大体そんなものですが。
凶器の選び方・死亡推定時刻のずらし方・死因の偽装といった、アイデア勝負。
犯人あてを楽しませる作風ではない。
「清張は、ちょっと心にひっかかることを何かで知って、そこからああでもないこうでもないとその材料を広げるのが楽しくて、楽しくてしょうがない作家なのだと思う」
爺やも書いております。

「巨人の磯」
嫁が丈夫じゃないので、嫁の妹に手を出して痛い目を見るパターン
巨人は、膨れた溺死体の比喩です。

「礼遇の資格」
若い嫁をもった男が不幸になるパターン① 
凶器の一部を、元凶である妻に食わせるというところが、なんとも。
で、わがままな妻に痛い目見せてやったと思いきや、足がつく原因も妻の無神経な行動だったという。

「内なる線影」
若い嫁を持った男が不幸になるパターン② 
漫画「屍活師」で、青酸ガス中毒で死んだ人を、一酸化炭素中毒で死んだと偽装するネタがありました。
今回は硫化水素だそうです。窒息させるガスはいろいろありますな。
都合よく、キップ装置の破片が見つかっちゃうという。

「理外の理」
若い嫁を持った男が不幸になるパターン③ 
『反古のうらがき』は実在する随筆だそうです。縊鬼も、wikiにある。
今の時代だったらググっておしまいで、編集部の中で話題になることもないんでしょうな。

「東経百三十九度線」
若い嫁を持った男が不幸になるパターン④ 
あとがきで、「占星術殺人事件」でもネタにされていると知り、パラパラ見返してみました。

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なるほど。石岡君が古今東西のミステリーを熱く語って、御手洗さんがうんざりしている。
語呂合わせでヒミコはさすがに無茶かと思いますが、地形とか植生とか星座の見え方とか、なにか共通項はあるのかもしれないですね。

| 日記 | 16:46 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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笹生陽子    「家元探偵 マスノくん」(ポプラ文庫)

高校入学時に体を壊し、一週間ほど休んだために、友達作りに失敗した主人公のチナツ。仕方なく、なりゆきで孤高の変人ばかりが集う「ボッチ部」へ入部することになる。

メンバーはチナツの他に、次期華道家元で探偵趣味のあるメガネ男子マスノくん。女優志望の西園寺さん。自称魔剣の現身田尻くん。それに正体不明のスカイブさん。
 この「ボッチ部」が、周囲に起こる事件を協力して解決していく連作集。
気楽に読めるライトノベル。

 面白いと思ったのはよくある叙述トリック。

田尻くんは両親を口も聞かないほど嫌っている。
その原因になったのが10年前。
テレビでいじめを苦にした自殺のニュースが流れる。そこで田尻くんが両親に聞く。自殺したのが田尻くんだったらどうすると。まともな両親だったら、怒りに震え、いじめた奴を許さない。命にかけても真実を追求する、くらいのことを言うと思ったら、一言親父が「ほっとくか」と言っただけ。

 これに、怒り心頭した田尻くんは両親を拒否するようになる。

 西園寺さんが、あるシナリオを与えられ叫ぶ。「やるか!」と。この「やるか!」には、「そんなばかなことやるもんか」という意味と「さあやろうか」の正反対の2つの意味がある。

 田尻くんの親父の「ほっとくか」は、「ほっといたままにする」という意味と「そんなこと、ほっとくことができるか」と2つの意味がある。親父が後者の意味で言っていたことを「やるか!」で気付く。

 こういう叙述トリックは、私もいつも簡単にひっかかる、単純な人間である。

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朝倉かすみ   「幸福な日々があります」(集英社文庫)

36歳で3歳年上の守田裕一と結婚した森子。10年たった正月元旦「夫としては好きじゃなくなった。」と突然言う。さらに「別に嫌いになったわけじゃない。親友としてなら好き。
でも、もう一緒には暮らせない。」と言って、離婚手続までしだす。

 裕一はびっくり。好きだけど暮らしたくないということが理解不能。何回か、話し合いを持つが、完全に平行線。そして、森子は清掃の仕事をみつけて、川崎のアパートをでてしまう。

 友人が森子に聞く。
「そりゃあ、夫婦の問題だし、積年の思いが積み重なって、ちょっとずつの思い違いが溜まっていってということがあるのはわかるが。それにしても、なんで?」
「好きじゃなくなったんだ。いろんなことが溜まったっていうより、淀んじゃったという感じ。排水溝に詰まってしまった。」
「そんなこと当たり前のことじゃないの。排水溝に溜まっても、そのうち目が粗くなっていつのまにか流れていって、最後には添い遂げるんじゃないの。」

 友人の忠告が全く常識。好きじゃなくなったって夫婦が離婚していたら、世の中離婚だらけ。

で、一人生活を始めた森子の生活が充実しているかと言えば、全くそうではない。

 休みになると、顔も洗わず、歯も磨かないことが多くなる。食事作りも身が入らなくなる。
湯豆腐のような簡単なものを最初は作っていたが、それも面倒になり、コンビニのおにぎりやカップ麺ですごすことばかりになる。昨夜はカップ麺を2個食べた。

 明日こそちゃんとしようとおもうのだが、その明日になると、明日こそちゃんとしようとまた思い、やがてそれが重圧となり、それをまぎらわすために飲めなかったお酒を飲みだす。
 そして、とうとう嘔吐し、隣の人に介抱してもらう。

 これじゃあ、何のために一人になったのか理解できない。でも、物語は2人はもとのさやにおさまらないまま終わる。

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笹生陽子     「ぼくらのサイテーの夏」(講談社文庫)

笹生のデビュー作。児童文学者協会新人賞、児童文芸新人賞を受賞した作品。
男子は、児童といわれる時代には、集団で仲間をつくり、遊びも喧嘩も仲間で塊ってする。

 主人公の桃井は小学校6年生。いつもの仲間と外階段飛びのゲームを2ふた組のチームとする。階段から飛び降り、着地を手をつかず決めると、その階段の段数と着地で点数が決まり勝ち負けをつけるゲーム。最終ゲームまで桃井が属する4組が2点リード。そこに2組の栗田が登場して何と9段目から飛び降り見事に着地を決める。桃井も9段は経験が無かったが、自分も9段から飛ばないと負けてしまうと思い挑戦するが、失敗して骨折し意識を失う。

 その翌日、親まで呼び出され、学校より大目玉を食らう。しかも、階段飛びをした全員が集められ、指導教師から夏休み毎日プール掃除が命じられる。
 しかし、夏休みは遊び楽しむとき。だから、誰もがしぶる。そんな時、栗田が「おれはやります。」と名乗りでる。先生が「一人では無理だ」というので、桃井が「おれもやる」と言ってしまう。

それで桃井と栗田は毎日プール掃除をすることになる。
桃井は栗田が嫌いだ。だから、2人とも簡単な挨拶はするが、それ以降はばらばらで口もきくことなく掃除をする。昼食も互いに離れて一人で食べる。

 そんな、何日かたった夕方。家から少し離れた公園を散歩していると、栗田と出会う。そこで、家はどこなのから始まり少ない会話が始まる。栗田は5歳の妹を連れていた。その妹はストレスが少し加わると、耳も聞こえなくなるし、目も見えなくなるという難病を抱えていた。栗田が家に引きこもってばかりでは体力が無くなると散歩に連れ出してるのだ。

 実は桃井にも引きこもりの中学生の兄がいた。気にさわることがあると、大爆発して、家にあるものをぶち壊す。それ以外は部屋にひきこもり、ごはんも部屋の前に置くという生活。

 それから、栗田と桃井は昼食を一緒にとり、心を少し通わせるようになる。
不思議なのは、栗田の家にいやがる兄を引っ張り出し連れてゆく。すると兄と栗田の妹が楽しそうに話をする。

 プール掃除が最終日になるころには、桃井は栗田がいいやつだと思うようになる。そして栗田は大切な友達となった。

 ところが栗田の家が、火事になり、栗田は遠くへ引っ越す。
そして、桃井は中学生となった。栗田とはそれでもごくたまに会う。中学生になった桃井は集団とつるまなくなり、一人、一人個別に友を持つように変わった。

 サイテーの夏を超えて、桃井は少し大人になった。

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本谷有希子     「ぬるい毒」(新潮文庫)

主人公の熊田のところに、向伊という見知らぬ男から突然電話がかかってきた。向伊は高校時代クラスは違ったけど、熊田と同学年だったと言った。しかし、熊田には全く記憶が無い。向伊は、高校の時、熊田から借りた金を返したいから会いたいと言う。向伊の声が魅力的だったから、全く金を貸した記憶は無いが会うことにした。

  会うと、向伊は、背も高く恰好もよく、熊田は心が惹かれる。
一年後に、帰郷した向伊に会う。一緒に奥出と野村という同じ高校の出身だという2人がついてきた。

 熊田も、多少の嘘と虚飾をしゃべったが、向伊は明らかに嘘だとわかる話をする。それに調子を合わせるように奥出、野村が熊田は見たことも無いほど美しいとはやし立てる。

 そして、わかってはいるが完全に熊田は向伊にとりこまれる。向伊が、熊田を利用して両親をだまし、金や財産を奪おうとしているところまで感付く。

 それでも、両親と大喧嘩をして、向伊と同棲しようと熊田は東京に向かう。
東京に着くと、奥出と野村が迎えにでていて、今日は向伊をいれて熊田の歓迎会をやると居酒屋に連れられてゆく。そこには何人かの女性がいた。向伊を見る目がみんなとろんとしている。あの女たちとは違うと熊田は思うことにした。しかし、向伊が耳元でささやく。
 「僕には、東京に5人の女がいる。」
その瞬間熊田は全くあの女たちと同列となっていることを実感する。

 ここからが、本谷のユニークなところだが、熊田は、だまされて、嘘をつかれていることがわかっていても、ひたすら向伊についていく自分の姿が愛おしく、この上なく可愛いと思い、このまま生きていこうと決める。

 一途に思い込んだら、騙されていることがわかっていながらもどうにもならない。

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筑摩書房編集部編  「女が読む太宰治」(ちくプリマー新書)

太宰治はすごい作家である。芥川賞などの文学賞には縁が無く、夏目や芥川のような文豪に列せられるのでもない。そして、大嫌いと太宰を徹底的に嫌った三島や川端がいる。

この本の出版は約10年前の2009年。その時でさえ太宰は綿々と読み継がれ、「人間失格」615万冊、「斜陽」は356万冊が売れている。

 読者層の多くが好悪は別として女性。そこで、女性作家を中心として、太宰とのかかわりについて綴ったエッセイを収録したのが本書。

 雨宮処凛のエッセイが印象に残った。

雨宮は全く太宰には興味が無かった。しかし、発売された宮沢りえのヌード写真集に引火されたように興奮状態に陥った男子生徒が、エロやオナニーの話題から一切離れ、急に太宰がブームになった。

 それで、雨宮も気になって太宰作品を手にとる。それが「トカトントン」。

 主人公は郵便局員。彼はずっと「トカトントン」という音に悩まされている。その「トカトントン」が始まったのは、戦争で負けた昭和20年8月15日。玉音放送が終わると、中尉が壇上に登り、戦争に負けても軍人は徹底抗戦をし、大君とともに自決すると宣言。主人公もその通りと思い、徹底的の戦い自決するぞと決意する。そのときに胸の中で金槌が釘をうつ音が響く。「トカトントン」。その音に急にへなへなとなり、気持ちが反転する。

 それから「トカトントン」が始まる。

郵便局の仕事が超多忙になり、懸命に働く。その繁忙が今日で終わるというとき「トカトントン」。片思いの相手とやっと2人きりであえる、気持ちが高揚するその直後「トカトントン」。労働者のデモ行進をみて感動し、真の自由を見たと涙を流したところで「トカトントン」。

 主人公が熱中したり感動したりすると、その金槌の音はどこからともなくやってきて、何もかも色褪せて思えるようにひんやりさせる。

 雨宮はこういうことは自分にも起きるという。
死ぬほど悩んでいた時、ふと目にした看板「スナック そてつ」そして「焼肉 ちょんまげ」。これで急に力ががくんとぬけた。それから、韓国の焼き肉屋でカルビの説明がメニューに日本語で書いてある。「いじくりまわした牛肉」。

 こういうことって確かによくあると思う。追い詰められどうしようもなかったときに出会う超脱力系の看板や、言葉に救われ、今まで悩んでいたことがばからしくなること。

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朝倉かすみ    「乙女の家」(新潮文庫)

主人公は女子高生の若菜。その青春物語なのだが518ページの大長編。よく、このテーマで大長編を創ったものだと感心していたら、新聞連載小説だった。

 若菜は純真で、自分探しの毎日を送る。こんなにピュアな子なのに、家族背景はへんてこ。
 曾祖母は78歳。17歳の若菜に曾祖母が健在なのである。なかなかあり得ないことだ、と思ったらお祖母さんが58歳なのに、母親洋子は42歳。母親は、お祖母さんの16歳の時の子なのだ。

 曾祖母は祖母を生んだときの相手と相手の家、親族から家柄が合わないと反対され、結婚できず妾として人生を送ってきた。

 祖母は、高校生の時当時同い年だった、不良グループロイヤルストレートフラッシュ総長の安藤智巳の子供を宿し、高校を中退。一方の安藤も中退し、2年後には2人は結婚を両家も含めて行うことが約束されていたが、2年たつ前に2人は別れる。それで、看護師の免許をとったりしてシングルマザーを通してきている。

 こういうまっとうでない祖母、曾祖母の人生をみてきて、それを反面教師にして、母親はきちんとした家庭、家族をもちしっかりした生き方をしようと努めてきた。

 ところが何があったのか、もともと家族が住んでいたマンションから母親が若菜と弟誉をつれて、祖母が暮らす実家に戻ってくる。加えて不思議なのだが、毎晩父親は実家にやってきて、家族で夕食をとり、その後マンションに帰ってゆく。

 さらに、若菜が大事な友達にしている、文学少女で真面目そうな高橋さんが、若菜と2人で家出をもくろんで失敗して、夜中のファミレスで話をしていたとき、ヤンキーな金髪男たち不良3人に絡まれたのだが、この時のヤンキーの一人に恋心を抱いてしまう。

 若菜は、祖母、両親、高橋さんの抱えている難問を解決するための支援をすることで、自分を確立させようと、くらげのようにこの3つの人たちの間を揺れ動く。

 うまくいったのもあれば、うまくいかなかったものもある。結果、自分が探すことができたのかよくわからなかったが、物語に挟んである、私も若い時よく口ずさんだクレイジーキャッツの「学生節」が人生の基礎のような印象が残った。

 歌詞を紹介
一言文句を言う前に ホリャ親父さん、ホリャ親父さん
あんたの息子を信じなさい ホリャ信じなさい、ホリャ信じなさい
柳は緑、花くれない 風が吹いたらナンマイダ
アンタの知らない明日がある ホリャ明日がある、ホリャ明日がある
どっこいここは通せんぼ、ここには入れぬわけがある
アンタの息子を信じなさい、ホリャ信じなさい、ホリャ信じなさい

 この後「おふくろ」「先生」「恋人」にバージョンが移る。
やきもきして、干渉ばかりするのではなく、まず人を信じて関係をもつのが大切なのだ。

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本谷有希子    「嵐のピクニック」(講談社文庫)

奇妙な雰囲気のある短編集。大江健三郎賞を受賞しているが、解説も大江健三郎がしている。

 どれも、妙な味わいのある作品ばかりなのだが、その中では「マゴッチギャオの夜、いつも通り」が印象に残った。

 マゴッチギャオは猿。動物園で、みんなと仲良く楽しく暮らしている。仲間と蚤取りをしていると、新入りがやってくる。ちょっと自分たちとは、容貌、恰好が違うと思っていると猿ではなくチンパンジーで名前はゴードンだという。チンパンジー仲間とうまくやれなくて、猿山に入れられたのだという。

 マコッチギャオたちはすぐに仲間にしてあげようと気をつかって話しかけたりするが、まったく一人ぼっちで馴染もうとしない。人間からもらったバナナなどの餌をあげようとしても全く受け取らない。

 しょんぼりしているようだが、どうも人間を意識しているようだ。

ゴードンは人間に育てられた。ゴードンは人間を理解し仲良くしたかったのだが、うまくいかなかった。ゴードンは寂しそうに、人間はイルカが大好きなのだという。イルカは、人間に対して、口の端を広げて笑う。これが可愛くて人間はイルカを大好きになる。

 ある夜、猿山にむかって人間が花火を放ち遊ぶ。この花火を避けようと猿たちは避難をする。しかしゴードンは動かない。マコッチギャオが懸命にひっぱってもゴードンは動かない。

 火がゴードンに降り注ぐ。マコッチギャオがゴードンをみると、ゴードンは花火を打つ人間に向かって口の端を広げている。
 ここが、じーんと胸を打つ。

ゴードンは焼け死ぬが、何と猿はとんでもない力をもっていて、ゴードンを生き返らす。
ゴードンはこれは奇跡というが、猿には当たり前のこと。奇跡が何のことなのかわからない。

 ここらあたりが本谷の独特の味である。

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