河出書房新社 編集部編 「太宰よ!45人の追悼文集」(河出文庫)
この太宰を追悼し、思い出をつづった中から45人の文章を厳選し収録した作品集。
太宰が最初に単行本を出版したのが「晩年」。実は、この「晩年」ができあがったとき、太宰は自殺をしようと考えていた。もし、自殺していれば、太宰の本はこの一冊だけになっていた。それほど、太宰の思いが詰まった作品だった。太宰はその後13年間生きたが、「晩年」から始まり、最後「晩年」に戻る道をたどったように思われる。
出版社の機関紙に太宰が小説とは何が大切か「晩年」を紹介しながら書いている。
「『晩年』は私の最初の小説集です。もう、私の唯一の遺書になるだろうと思いましたから、題も『晩年』として置いたのです。読んで面白い小説も、二、三ありますから、おひまな折に読んでみてください。私の小説を、読んだところで、あなたの生活がちっとも楽になりません。ちっとも偉くなりません。なんにもなりません。だから、私は、あまり、おすすめできません。『思い出』などは読んで面白いのではないでしょうか。・・・・
(小説は)やさしくて、かなしくて、おかしくて、他に何がいるでしょう。
あのね、読んで面白くない小説はね。それは下手な小説です。」
そして、太宰は仏文学者河盛好蔵への手紙に自分の小説の源泉を書いている。
「文化と書いて、それに文化(ハニカミ)とるびを振ること、大賛成。私は、優、という字を考えます。これは優れるという字で、優、良、可、なんていうし、優勝なんていうけど、でも、もうひとつ読み方があるでしょう。優しい、とも読みます。そうして、この字をよくみると、人偏に、憂うると書いています。人を、憂うる、人の淋しさ侘しさ、つらさに敏感なこと。これが優しさであり、また人間としていちばん優れていることじゃないかしら。
そうして、そんなやさしいひとの表情は、いつも含羞(ハニカミ)であります。私は含羞でわれとわが身を食っています。・・・・そんなところに『文化』の本質があると私は思います。」
ナルシスト気味で、若干引いてしまいたくなる文体だけど、なるほどと感じ入る。
吉行淳之介が、とんでもないことを太宰の自殺について書いている。
太宰が亡くなった時、精神安定剤としてトランキライザーが売り出された。薬メーカーが太宰と組んで、精神不安定な人が増加させ、トランキライザーが大いに売れるように、自殺を仕組んだのだと。
強烈な想像だ。
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| 古本読書日記 | 06:13 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑