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2018年02月 | ARCHIVE-SELECT | 2018年04月

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おでかけは最高のリハビリ!

母上(はなゆめママ)が介護系の仕事をするようになってから、エッセイ漫画をたまに買ってきます。
ブログの書籍化というパターンかな。

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この3冊なら、真ん中の「ハードロック介護!」が面白かったです。

で、割と最近発売されたのがこちら。

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表紙に書いてある通り、要介護のお母さんを夢のウィーンへ連れて行く話です。
お母さんが倒れる前の家族関係、ウィーンへ行くまでの準備(リハビリ・心構え・貯金等)、実際にウィーンで経験したこと、などなど。
読了後、最初にしたのはブログの検索ですね。
本は、ウィーンから日本に戻る便の思い出で終わります。盛り上げて、終わり。
目標達成して燃え尽きちゃって、「このブログは3か月以上更新されていません」なんて状態じゃなかろうかと。
↑ひどい
マメに更新されています。安心してください。
要介護5のお母様は元気で、猫に「シシィ」と名付け、施設にいる妹さんも訪ね、日常は続いている模様。

「是非読みなさい」とプッシュした母上は、私が何か触発されることを期待しているかもしれん。
どうでしょうねぇ( ̄▽ ̄;)
私が著者の立場だったら、「どうせもう分からないでしょ。これからお金がかかるだろうし、体力があるうちに整理したいから」と、
DVD・漫画・本・食器(もらいもの)・服など、がんがん処分して、縮小方向・閉じこもる方向へ向かうでしょうね。
旅行、それも海外へ行こうだなんて、たぶん思わない。
障害のある娘(著者の妹)を連れてエジプトに行っちゃうような家族と比べてもアレですが。

| 日記 | 21:32 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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東山彰良  「逃亡作法」(下)(宝島社文庫)

脱獄した、女性暴行殺害被害者のテロリストグループ、ツバメグループ、ホモグループ、暴力団組長、連続暴行殺害者川原がだんごのようになって逃走する。

 逃走せねばならないわけだから、互いに知恵を絞り、強力しあって逃走するのが普通のように思うのだが、これらの逃走グループはそれぞれいがみあい、殺し合いながら逃走する。もうすこし真剣に読んでいたら、どうしてこんな状態になってしまったのかわかっただろうが、全くそれがわからないまま読んでいたので、少しも物語に入り込めない。

 「一度引き金を絞った指は、いともたやすく脳みその統制から離脱した」
こんなまわりくどい表現が果てしなく続き、どうにも読みにくい。
しかも、こんな殺し合い、銃の撃ちあいが100ページも続く。それで、ものすごいのがその間、たまに撃たれ傷つく者はでるが、一人も殺されないのである。

 このまだらこしさは、異常。

いったいこの長い無駄と思える描写は何のために行われているのだろうか。ハードボイルドを楽しんでくれということなのだろうか。
 これで、東山が大好きなアフォリズムがいたるところに散りばめられるから、私はますます白けてしまう。

 まだ東山の未読の本が数冊手元にある。苦痛だ。

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| 古本読書日記 | 06:18 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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東山彰良      「逃亡作法」(上)(宝島社文庫)

第一回の「このミステリーがすごい」で大賞銀賞、読者賞を受賞した東山の実質デビュー作品。
 これは、ミステリーでは無い。クライム小説、ピカレスク小説である。ミステリーの要素は殆ど無い。

 この物語が舞台となった未来、人権擁護派が強くなり、その要求に従い死刑が廃止された。
それに従い受刑者の人権も擁護すべきと、刑務所という名はなくなり「キャンプ」と呼ばれ、隔てる壁も低くなり、守備も緩やかになり、脱獄が容易な環境になっていた。

 しかし、脱獄してもそれが無駄なことだと思わせるために、首にマイクロチップが埋め込まれ、電波の届く範囲はどこにいるかがいつでもわかり、電波が届かないところに行ってしまうと、両目の眼圧が強くなり、目の玉が飛び出すというアイ・ポッパーという方式が採用されていた。

 死刑が廃止されると、当然だが、人権擁護に反対する強い勢力がでてくる。特に家族や愛する人を殺された人々が復讐せねばならないという気持ちが強くなる。このキャンプに15人の少女を暴行して殺した川原昇が収監されていた。

 この川原を殺してしまおうと被害者4人がテロリストになりキャンプに侵入する。これに乗じて、所長を人質にとり、アイ・ポッパーの機能を解除させ、多数の受刑者がキャンプから脱走する。182人当時受刑者がいたが114人が脱走。24時間以内に検問にひっかかった21人が捕獲され、16人が交番に出頭したが残りは逃走中。この逃走のなかで4人の警官が射殺され、3人が何者かによって殺される。

 当然、テロリストも逃走するわけだが、加えて物語では、ツバメというグループ、張、朴というホモの在日韓国人のグループ、それから菊池という暴力団組長、更に連続暴行殺人犯の川原の逃走劇が物語となっている。

 物語はともかく、死刑廃止は実現するのだろうか。凶悪殺人が起こると、徹底的に死刑廃止派は攻撃されるだろうと思うし、廃止は一旦は実現することはあるかもしれないが、すぐひっくりかえるような気がしてしまう。

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| 古本読書日記 | 06:16 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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さくら、1歳

母上(はなゆめママ)が、インスタでジャーマンシェパード(GSD)のアカウントをフォローしています。
とくに、もふもふの子犬は可愛らしいですねぇ。

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いや、さくらもかわいいですけどね。それなりに。
出不精だし、毎日2時間散歩が要るような大型犬なんて眺めるだけで十分っすよ。

というわけで、週末は公園で放牧。

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飼い主はゆっくり歩きます。

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右側にいます

完璧に呼び戻せれば、オフリードでも全然問題ないんですが、ねえやはなめられているので聞いてくれないこともある。
最近は、バイクを持ち込んでジグザグ走行したり丸太を飛び越えたり、アクティブな人がたまにいるんですが、さくらが近寄って行ってしまうことも。
子供の存在に気付かずオフにしていた時も、ひやりとしたさ。

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しゃがんで、かばんをがさごそすると、戻ってきます。

| 日記 | 00:04 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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米原万里      「真昼の星空」(中公文庫)

米原さんのお父さんは日本共産党の中央委員だった。それで小学生の時、東側の国だったチェコでお父さんについて行って暮らしている。そのお父さんの影響もあると思うが、反権力、反官僚、反大企業のエッセイが多い。ところが、このエッセイ集には殆どそういう主張のエッセイが無い。どうなったのだと思って読むと最後に近いエッセイで登場した。

 このエッセイ集は読売新聞に掲載したものを収録。読売新聞から依頼された内容。
「ご自由に何でも自由にお書きください。ただし、下ネタとイデオロギー的なものはご遠慮ください。」と指示されたとさりげなく書いている。ちょっとした読売への意趣返し。

 米原さんの性格からして、執筆中かなり程フラストレーションがたまったのではと想像する。

 それで、このエッセイではロシアや旧ソ連の楽しい小咄の紹介が中心となる。

驚いたのは、宇宙を初めて人類で飛行したのが、1960年、27歳のガガーリンだったのだが、彼が成功するまでには、多数の若者が飛行に失敗して亡くなっている。ロシアにはその墓がある。独裁体制の恐ろしさを感じさせる話だ。

大衆食堂でやたら面倒くさい注文をウェイトレスにする男がいた。
「目玉焼きなんだけど、片面は焦げすぎて、片面は生焼き。片面は何もかけないで、片面に塩をドバっとかけすぎた感じでしあげてくれない。それで、皿に盛らずに、フライパンに載せたまま僕の鼻先につきだして、『ほら、早く食いな。この豚めが!』って憎々しく叫んで欲しいんだ。」

 変な男だとは思ったが、食堂の主人もウェイトレスもその要求に応じた。そして、主人が尋ねる。どうしてこんな要求をするのと。
「出張にでて2か月にもなります。これでも、時々家庭の味がなつかしくなりましてね。」

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| 古本読書日記 | 06:07 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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佐藤愛子    「花は六十」(集英社文庫)

この作品、1983年の作品。今から35年前。そのころの60歳の女性が主人公。このころは、会社の定年は55歳が主流。戦争で青春がとられ、恋も愛もあまりなく、無理やり見合いで結婚した世代。

 今は定年は60歳、それが65歳に延長され、かなりの人が70歳までは働く時代。ということはここで60歳という女性は、実際は70代後半くらいに調整して読まねばならない。

 妻から見ると夫が急速につまらない男に見えてくる。妻が話しかけても、ボーっとしてテレビをみつめ生返事。そのくせ、飯だ風呂だは威張って言う。一日中ほとんどでかけず一人で家のなかにいる。

 何でこんなつまらん男と結婚して35年も一緒にいたのだろう。

女子大での同窓会を開くと夫がつまらないと全員があけすけなく言う。
 夫は私に隠れてずっと浮気をしていた。その間、私は家事に子育てに没頭。浮気の一つもしていない。今は一日家にいてうっとうしい。まだ、私を女中さんのように思っていてあれやこれやと言いつける。

 まあ、こんなあたりから始まって、夜の営みでの不満を、この作品のように言い合うのだ。
 浮気で使い過ぎたんで、もう5年前からダメとか、はげて年寄じみて匂いも臭いし、もう体をあわせようとしてくると気味が悪くなり、逃げ出しちゃうわ。

 で、やっぱし、男ばっかりいい思いをしてと悔しがり、何とか最後は愛に恋に燃えたいと真剣に思う。

 その気持ちが現実をみる眼を曇らせて、風俗嬢のようなひたすら献身的につくすサービス業のようになったり、これはいけると思える状態になったところで、相手が心臓発作で倒れたり。

 老いらくの恋は、思うにまかせれない。結構現実はつらいぞ。

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| 古本読書日記 | 05:51 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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米原万里     「真夜中の太陽」(中公文庫)

エッセイ集。米原さんは、世の中の本質を的確に見つめ、それを見事に表現させてみせる卓抜な能力を持つ作家、翻訳家。

 そんな鋭いエッセイはこの本でも満載なのだが、鋭さを少し離れた皮肉なるユーモア、米原さんが創造したのか、ありねたなのかわからないが、作品の中から紹介する。

 トルストイの作品に「性欲論」という作品がある。トルストイはこの本で
「セックスほど罪深いものはなく、子供を産む目的以外でするものではない。」
あるロシア人がつぶやく。

「トルストイにそんなことを言われたくない。彼は文豪というおり性豪だよ。大伯爵の令息だった彼は、抵抗できない農奴女をかたっぱしから強姦しまくっていたというからねえ。
 トルストイの家からモスクワの別宅まで二百キロほどあるんだが、この道路に沿って、トルストイおぼっちゃまにそっくりの子が二百人も生まれたというんだから。あの通りにはトルストイの末裔がうじゃうじゃいるんだから。」

もうひとつ。

日がな一日ハンモックに揺られ、傍らにあるバナナの木からバナナを食べて暮らす男がいた。みかねた友人が忠告する。

 「おまえ、ちったあ働けよ。」
 「働くって何をすりゃあいいんだ。」
 「食べてるバナナを街へもっていて売るんだ。すると金が手にはいる。」
 「金が手にはいったら何するんだ。」
 「リヤカーを買え。そしたら、一度にたくさん運べる。だからもっと金がはいる。」
 「もっと金がはいったらどうするんだ。」
 「車を買え。もっとたくさんのバナナを何回も街に運べ、膨大な金がはいる。」
 「膨大な金がはいったら、どうするんだ。」
 「運転手を雇え。そしたらおまえは一日中楽して暮らせる。働かなくてよくなる。」
 「なんだ。それじゃあ今と同じじゃあねえか。そんな面倒しなくてもいいってもんだ!」

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| 古本読書日記 | 05:55 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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植木等    「夢を食いつづけた男 おやじ徹誠一代記」(ちくま文庫)

植木等のお父さん徹誠の人生を植木が紡いだ波乱万丈の人生記。

植木等の父親徹誠は三重県の片田舎の村で生まれる。明治42年、小学校を卒業して東京にある御木本真珠の付属工場の職工として働きだす。ここで、当時の勃興してきた社会主義に目覚め、人間平等を信条にしてしばしば会社と対峙する。そこに大震災がおこり、工場は休業を余儀なくされ、徹誠は実質解雇される。

 それで仕方なく、母方の叔父さんのやっているお寺に家族全員で移る。ここで父親は叔父さんに仏教を習い、僧となる。
 父親は、社会運動をやめることをしない。そこで叔父さんが植木一家との同居をいやがり別の田舎の無僧寺を紹介し、また一家で移る。

 その小さな村では、部落民地域とそうではない人々と住んでいる場所がはっきり区分けされ、部落民は忌み嫌われ困難な生活を強いられていた。

 それに怒りを感じた父親徹誠は、水平社の部落解放運動に飛び込み活動をする。人間平等、戦争反対を訴え、集会を開催する。そのため、治安維持法でしょっちゅう逮捕され刑務所にでたりはいったりを繰り返す。

 その刑務所での拷問がすごい。
「拷問には、幅の広い腹巻用の皮が使われた。その、まだなめしていない皮を胸から腹のあたりに巻き、留め金をガチャっとはめる。そして、そのままの姿で水風呂につけられるのだ。皮は水を含むと急速に縮むので、キリキリと胸が締め付けられ、呼吸困難になって父親は気絶した。・・・・足の爪、手の爪と肉の間に針をさし、そこに電流を通すのだ。電源のスイッチを入れると、体がガクガク震えたり、ンガッ、ンガッとつんのめるようになったりする。」

 こんな拷問にも耐え抜いたのだから植木等のお父さんは真に闘士だ。

戦争中、檀家に召集令状がくる。お父さんはでかけこう言う。
 「戦争というものは集団殺人だ。それに加担されることになったのだから、なるべく戦地では弾がとんでくるようなところは避けるように。周りから、あの野郎は卑怯だとかなんだとかいわれても、絶対、死んじゃだめだぞ。必ず生きて帰ってこい。死んじゃっちゃあ、年とったおやじやおふくろはどうなる。それから、なるべく相手をころすな。」

 こんなことを平気に口にだして言う。だから刑務所にぶちこまれるわけだが、こんなだれにも負けない熱情で生き抜いたお父さんを持った植木は大変だったが幸せな人だと思った。

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| 古本読書日記 | 05:48 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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藤岡陽子   「手のひらの音符」(新潮文庫)

2年前、突然小学校の同級生から連絡があり、当時担任だった女性の先生が私に会いたがっていることを知った。先生はそのとき90歳。もうこの先が長くないから会いたくなったのかなと思って、先生が参加される同級会に行った。

 およそ60年ぶりの再会。先生が担任になっていただいたのは小学校一年、二年のとき。正直先生のお顔は浮かんできたが、その時の記憶は全くと言っていいほどに無い。

 しかし、会うと先生はことのほか喜んでくれて、その後折に触れて、ボールペンで懸命に書いた封書の手紙を何回も送ってくれた。最近はfaxからe-mailでコミュニケーションが行われる時代。封書をやりとりするなど皆無。ラブレターを懸命に交換しあった学生時代を思い出した。

 この物語も、高校時代の友達から、高校のときの先生が重い病で倒れたという連絡から始まる。自分の人生を変えてくれ、更に今も頑張って働いた会社を離れ人生の岐路に立たされている45歳の主人公水樹が倒れた先生に会いに故郷に帰るところから始まる。

 そこから、幼いころや、高校時代の忘れていた記憶がよみがえってくる。

 私は、この作品に登場する悠太のように、体が異形で、歩きかたもぎこちなく、変わった子供だった。そのため、運動神経がとりわけ未発達で、体育がいやだった。

 私の場合、いじめではなかったと思うが、高校のとき面白半分でクラス対抗のリレーマラソンでアンカーにされた。当然大幅に遅れて、グランドに入ったが、校長が閉会のあいさつをしていた。忘れられるほど遅かったのだ。

 この作品でも、運動音痴の主人公水樹と更に同じ運動音痴の女生徒が運動会のリレー選手に選ばれる。こちらはいじめだ。
 そのとき、水樹の幼馴染の悠太の兄の同級生で、リレー選手に選ばれた信也が、バトンの渡し方を教えて、懸命に励ましてくれる。そして最下位だと誰もが思っていたリレーで3位にはいる。そこで、信也、水樹に恋が芽生える。

 しかし高校3年を終えたとき、2人は別離をむかえる。

この物語、幼いころ団地住まいの水樹と信也、悠太兄妹引き起こす出来事も読者を揺さぶるが。何といっても高校を卒業して27年間の水樹の人生、その間の信也と悠太の厳しかった人生の道のりが胸をうってやまない。ありえないと斜めでみてはいけない。その互いに交渉が全く無かった27年もの間水樹と信也が互いを一番大切な人と思い続けていたことの尊さが感動的なクライマックスに導く場面は強く印象に残る。

 今年93歳になる私の小学校の恩師は、この前の封書で「100歳まで私は間違いなく生きる」と宣言されていた。私もその手紙で100歳以上まで生きる恩師を確信する。

 60年近くもの間、会いたいと思っていてくれた先生の気持ちがうれしくそしてずしりと重い。

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| 古本読書日記 | 06:26 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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加藤千恵     「いびつな夜に」(幻冬舎文庫)

歌人加藤千恵さんによる、短歌をベースにした、恋愛掌編集。2-3ページの短い作品ばかりなのだが、どれも胸に堪える作品ばかり。うまく今を掬いあげている。

 彼と長い間つきあっている。最近はもりあがらず、ひょっとするともうだめかもしれないというあまり思いたくない予感もある。

 突然、彼が海に行こうと誘ってくる。それで、乗り気ではないのだが、電車にのってでかける。

 平日の海岸はだれもいない。捨てられたペットボトルやビニール袋が散乱している。そんな海岸に腰を下ろして海を見つめる。
少し前を行く彼の背中をみながら、こういうときには昔は手をつないで歩いたなと思う。かといって今手をつないで歩きたいという想いは湧き上がってこない。 

 海岸に打ち上げられた流木に腰掛ける。二人で昔来た海の風景と、愛し合っていた彼とのことを瞼に浮かべる。

 ふと気が付くと、彼がいない。見渡してみてもどこにもいない。
あわてて彼の携帯に電話する。何回かけても、
「お掛けになった電話番号への通話は、お客様のご希望により、おつなぎすることはできません」を繰り返す。

 着信拒否されているのだとようやく気付き、怒るより、悲しむより先に、納得してしまった。

 彼は別れるつもりだったのだ。
何も海までやってこなくても、別れることはできたのに。こんな風に気持ちを伝える彼の不器用さを考える。

 こんな別れの風景は、殆ど無いと思うのだが、味わい深い別れ方だなと思う。

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| 古本読書日記 | 06:30 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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黒岩重吾    「飛田ホテル」(ちくま文庫)

古多木は48歳になる。三か月前までは一流会社に勤めていたが、ある事件に巻き込まれて会社をやめざるを得なくなり、今は保険外交員として働いている。

古多木には良男という一人息子がいた。良男は幼い時、木登りから落ち、股関節を骨折して、一生びっこをひく障碍者として生きねばならなくなった。

 良男は、成績がよく、神戸の一流大学に入学する。大阪から障碍者として通学することは大変と古多木は思い、神戸の岡本に下宿をみつけてあげた。

 その良男が殺害される。その殺された場所は、神戸の場末で、人も近付かない「中国飯店」というレストランの近く。この「中華飯店」。売春婦がいるということで有名。しかもその売春婦がすべて唖の女性。

 何で、実直で潔癖な性格の良男がこんないかがわしいところで殺されたのか。
古多木は外交員をやめ、貯金を使いながら、良男殺害の原因追跡と犯人捜索を開始する。

 調査の過程で古多木は、この「中華飯店」にいる娼婦が、すべて純情で美しくとても娼婦などするような女性でないことに驚く。
 唖の女性。全員が恋をすることはできないと最初から諦めている。だからとても結婚などできないと思っている。たまに、言い寄ってくる男もいるが、遊び、面白半分。体だけを求めそれが叶うとすべて女性から去ってゆく。そして、外出することはなく、ずっと家に匿われている。

 我慢できない。自由に外へでて、遊びたい。男を知らずに一生を送ることはとても寂しい。
こんな唖の女性の心の中に付け込んで、娼婦をしようと誘う光子(彼女ももちろん唖)が「中華飯店」に唖の女性を送り込んでいた。

 良男は散歩の途中でりつ子という女性に出会い恋に陥る。りつ子は、恋も結婚も諦めていたが、良男の真摯な姿勢に惚れ、一抹の不安はあったが、良男を愛するようになる。

 このりつ子に光子の手がのびる。そして、りつ子が恋している良男は、いい加減な男で以前自分にも近付いて、そして光子を捨てた男と嘘をつく。

 そのことを聞かされた良男は、聾唖学校の先生に口の動きで何をしゃべっているかよむ口話法を習い「中華飯店」にのりこむ。光子に嘘を言ったとりつ子に謝って欲しい一念で。

 その「中華飯店」で光子は同僚の唖の女性とくちを動かし話をしている。それは、麻薬の運び屋の話。良男は、その中味を聞き、筆談で光子を問い詰める。光子は口話法ができる良男に驚く。
 良男は秘密を知ってしまったと警戒した、運び屋を依頼していた中国人の男に殺される。

口話法をトリックに使ったところも面白いと思ったが、それ以上に悲しく、切ない唖の女性たちの暮らし、心情を切々と描いた黒岩の文章が、いつまでも心にこびりつき離れない。

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| 古本読書日記 | 06:27 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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東山彰良  「ワイルド・サイドを歩け」(下)  (宝島社文庫)

麻薬「百歩蛇」。生産地台湾で麻薬撲滅運動がおこり、極端に品薄になる。この「百歩蛇」を巡って、弱小暴力団井島組、ストリートギャングラプターズ、スラムキングそして主人公である高校生理一のグループが暗躍する。

 銃によってたくさんの人間が殺される。ハードボイルドの色合いを持っている作品と思うが、それぞれの殺される場面がいかにもあっさりしている。撃たれるまでのせめぎあい、殺されていく過程での死に行く場面が殆ど描かれない。

 それから、主人公の理一が高校生で、かつ男娼であると規定されているが、それが、作品を読んでいてまったく浮かび上がってこない。しゃべる言葉は、インテリヤクザで30歳くらいの雰囲気。銃を持って戦ったり、酒を煽って夜中の街を徘徊する。高校生活の場面は全く無いのだが、勉強をよくでき、いい大学を目指している。字面で書かれても、どこにそれを納得させる描写があるか、全く無い。

 それから舞台であるだろう福岡も全く生きていない。福岡の特徴をふんだんに描き、だから福岡であることが必然なのだと思わせるところも無い。

 唯一、弱小暴力団の組長イジーと組員戸松が面白い掛け合いをして、物語の中で生きている。

 東山の観念だけが描かれているだけ。生きている作品にはなっていない。
あまり意味のない言葉だけがちりばめられている作品。今のロックン・ロールを映している作品なのかもと少し思ってしまう。

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| 古本読書日記 | 06:38 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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東山彰良    「ワイルド・サイドを歩け」(上)(宝島社文庫)

年寄なんだろうな私は。東山には殆どついてゆくことができない。直木賞だけでなく、他の文学賞も結構受賞している大衆的で楽しい作家のように思うのだが。中味よりも、弾むようなロックの文体がいいのかと思うと、難しいアフォリズムもさしはさまれる。ごった煮のようにいろんなことが表現される。

 主人公は有数の進学校に通う、高校2年生の相原理一。夜は男娼という裏の面ももっている。ある男と、ホテルで遊ぶ。その男が首を絞めてくるので、怒って花瓶で頭を殴り、気絶させてしまう。そこで男の鞄を奪って逃走する。その鞄には拳銃と百歩蛇という麻薬が入っていた。

 この麻薬を所持していた男というのが、地元の弱小暴力団井島組、組長の通称イジー。組長といっても組員は戸松ひとりだけ。この百歩蛇は台湾人唐から購入している。

 この百歩蛇を巡って、主人公理一と友人2人、更に井島組、それに不良集団ラブターズが絡み唐からの熾烈な争奪戦をくりひろげる。そこに、理一を支援する男娼ボノとトップレス ゴーゴー ダンサーのペティが名脇役となり絡む。

 明日をもわからないような底辺で暮らしているが、底抜けで明るい女の子の会話場面が秀逸。

 病院での理一とペティの会話。
 「あたし、この前、火星を買ったんだ」
 「え?!何言ってるの、こいつは、火星って買えるの。」
 「インターネットでね。一エーカー三千円。」
 「って、どれくらい?」
 「だいたいサッカー場くらいだってさ。・・・ということはあたし火星に家を持てる。」
 「火星の重力って地球を一としたら、だいたい0.38なんだって。その分楽に生きていけそうな気がしない?・・・・理一くんラッキーなんだよ。だって、火星人とSEXできるんじゃない。」

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| 古本読書日記 | 06:36 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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東山彰良   「ラブコメの法則」(集英社文庫)

主人公の松田杜夫は、福岡で雑誌に映画コラムを書いて暮らしている。本当は個性的な30歳の人間だが、その個性がどうにも突き抜けるように発揮されない。なんとなくくすんで、いつもいじけているような雰囲気。

 それは、周りにどんと存在する母親を含む4姉妹とその子供たちである従妹たち、その子供たちが、とびっきり美人、しかし、あけすけない物言いと行動、そのすさまじさに、いつもふりまわされ、ついつい委縮してしまうものだから。

 相変わらずの東山が創造する独特なとんでもないシーンに度肝を抜かれる。

モデルをしている従妹の恭子が、杜夫がカップラーメンを食べていると、テレビに登場する。
 司会者が恭子の初恋の人は誰かと聞く。すると恭子が恥ずかしながら「松田杜夫さん」と答える。
 「じゃあ今からその松田さんに電話をかけてみましょう。」
ラーメンが口からとびだしそうになる。

 突然携帯が鳴り、松田が紹介され、恭子が電話にでて「私、お兄ちゃんが大好きだったのよ。」と告白される。

 司会者がそこで言う。
「それでは、恭子ちゃんの愛がどうして冷めてしまったか紹介しましょう。」
とパネルをだす。そこには股間にニョキっと、大根が屹立している。「それでは、恭子ちゃんに説明してもらいましょう。」
 「えっとお兄ちゃんが、あそこにわっかをはめて遊んでいたらそれが抜けなくなっちゃたの」
 「あそこが膨張して、わっかがとれなくなったんですね。それでどうしたんですか。」
「母がワイヤーカットで切りました。」
「エー!」

まあ、そんなバカなことがあるわけはないけど、松田の巨根はおかげで評判になり独り歩きを始め、松田より巨根が有名となる。

人々は巨根をとおして松田を認識するようになる。
 松田はつぶやく。
 それではいったい私は何者なのか?
 巨根のおまけのような存在でしかないのか?

すごいブラックユーモア。こんなジョークが満載。読者の私はひたすらため息。
東山は、作品の中で自由にロックン・ロールする。

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文芸春秋編    「なんだか・おかしな・人たち」(文春文庫)

 昔は貧乏だったがのんびりしていた。そんな時には一風変わった変人奇人がいた。その変人たちの珍談、奇談を集めたエッセイ集。

 戦争直後、上方では漫才がブームとなったが、落語はまったく売れなかった。それで、落語家は本当に貧乏だった。

 笑福亭松鶴はその頃夫婦で今里駅近くに住んでいた。電気はもちろん、ガスも止められていた。しかし、ご飯だけは食わねばならなかった。そこで、街場から薪になるようなものを集めてきて、それに火をおこし、お米を炊いた。

 ある日、今里に松鶴を訪ねた桂小文枝(今の文枝、前の三枝の師匠)拾い集めたたきぎで火をおこしご飯を作っていた。そのたきぎのなかに白いペンキを塗った板っぺらがあった。その板に「IMAZATO」と書いてある。何と今里駅の看板だった。

 雑誌「釣り人」を創刊した佐藤垢石は無類の酒好き。起きている間はずっと杯を傾けて酒を飲んでいた。

 あるとき、酒を飲んでいて酔っ払って言う。
「おしっこがしたい。」

 それで、一緒につきあっていた人が便所か縁先へ連れて行く。しかし、立ったまま用たしをしない。それで、ボタンをはずしてあげる。それでも、悠然と酒を飲んでいる。しかたないから、ズボンから手をさしこんで、だしてやる。そうするとシャーっと小便をする。

 小便が終わると悠然と命令する。
「振れ」と。

猛烈な型破りな人がいたものだ。

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