辻村深月 「ハケンアニメ!」(マガジンハウス文庫)
今は、昔から続くアニメのごく一部は夕方テレビで放映されているが、殆どは深夜に放映されているのだそうだ。そんな深夜放送になっても、アニメは熱狂的なファンに支えられている。
タイトルの「ハケンアニメ!」のハケンは派遣社員のハケンではなく、一定の期間で最も視聴率が高かったり、DVD ブルーレイが最も売れた作品が覇権アニメとなることからきている。
この作品は、アニメや小説、最後はこうなってほしいとか、こうあらねばならないと読者、視聴者は思うのだが現実は希望通りにはならないことがしばしば、それでもへこたれず生きていかねばならないということを主張している。
斎藤瞳の創った作品「サウンドバック」。音が感知できないまま戦い続けたヒロイン トウコ。視聴者は最後はトウコは何らかの方法により音をとりもどすと思っていたが、結局取り戻せたかは不明のままで物語は終了する。
辻村が書く。
人生には、大事な何かを失っても、それでも何かを成し遂げたい時がある。やらなければならない時がある。
それがアニメの中のことだからといって、容易に失った何かが戻ってくるなんていう都合のいいことが起こるなんてあり得ない。
それから、その通りだと感服したところを紹介したい。齊藤瞳が同じマンションに住む太陽君に言ったこと。
「この世の中は繊細さの無い場所だよ。」
勉強に必要のないことを無駄だと切り捨てたり、社会や現実に役立たないと排除したり。わかりやすくお金を使った人が偉かったり、メインカルチャーに乗れない人が排除されたり。
この世には繊細さのひとつひとつを丁寧に掬い取ってくれる場所はない。
人見知り、繊細などということは、弱虫の象徴でだれも気にかけない。悲しい世の中になってしまった。
ランキングに参加しています。
ぽちっと応援していただければ幸いです。

| 古本読書日記 | 06:49 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑