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2017年08月 | ARCHIVE-SELECT | 2017年10月

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中島たい子   「おふるなボクたち」(光文社文庫)

今よりだいぶ未来の話。短編集。

心臓移植を受けた主人公。その前後で行動、生活が変わる。手術2週間後、その変化に驚き、手術を受けた病院に行く。

 手術前は肉を食べることができずカレーも肉をより分けて食べていたのに、手術後は欧米人みたいに肉、肉と言って毎日ステーキを食べる。普段は家でごろごろしていたのに、手術後はいつも目がギラギラしていて、やたら外出をする。漫画ばかり読んでいたのに、今は新聞を熱心に読む。

 以前は心臓移植をすると、移植した心臓の元の持ち主の性格が移るということが信じられていたが、今は、移植臓器は人工のものがすべてで、生の心臓が移植されることはなくなった。だから、性格が移るということは考えられない。と、思って読んでいくと中島さんの発想が面白い。未来では、人口臓器が普通で、中古市場も一般的になる。つまり、主人公に移植された人工心臓は中古で、前の使用者の性格が移ってきてしまったのだ。


 別の作品。

 我々が見ている星は、数億年前、或いは数千年前のものだ。望遠鏡で見て捕えた粒子は大昔のもの。その望遠鏡に乗り、過去の世界にゆく。そこで、起こっていることを変えてはいけない。それをすると今が変わる可能性がでてくるから。だから物語に登場するニセ博士は、未来に影響を与えることのないと思える、タワシや古びて捨てられていたやかんを過去から持ち帰ってくる。

 しかし、ニセ博士の暮らしている未来は人間の免疫力、抵抗力が落ち込み、もし細菌でもはいってきたら人間は死滅するかもしれない状況になっている。しかも生殖能力も衰退していて、めったに子どもが生まれるということもなくなった。

 そこでニセ博士がある人間に依頼して、未来に影響が与える可能性のない健康な人間を過去から拉致してくるようにする。
 その人間の細胞を増殖させ今の人間に移植して、元気で生殖機能が強い人間をつくる。それにより人間の滅亡を防ぐ。

 派遣された男は、3人の候補者に出会う。一人目はホームレスの男で、3日後に死んでしまう。しかし健康人間とは思えないので拉致をやめる。2人目は認知症を患っているお婆さん。このお婆ちゃんも認知症を持ち込む恐れがありやめる。
 3人目は道路工事の作業員。若くて、健康体。しかし、人生の生きてゆく目的を喪失していて数日後には自殺する。

 これはピッタシな人間。だけど派遣者は彼を連れて来なかった。その代わり、自殺をやめさせた。つまり、過去を変えたのだ。ここからは、一気に未来の今に飛ぶのだが、その過去を変えたことにより、人間は元の免疫力や抵抗力を取り戻し、生殖能力もとりもどすことができた。

 過去を変えてみたら今がどう変化するかという逆発想がユニーク。

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矢月秀作     「烏の森」(角川文庫)

 私の知り合いにどうも胡散臭い元市会議員がいる。この人、県会議員にもなったことがあり、時々県会議員をやめ、市長選に立候補する。うさん臭さが知られているのか、ことごとく落選して、今は元○○の称号で暮らしている。

 この人、大きな公共事業があると、必ず首を突っ込み、その都度金をたくさん奪い、ぜいたくな暮らしを拡げてゆく。酒を飲んだとき、どうやって金を手に入れるのか酔った勢いで聞いてみたが、笑ってごまかされた。

 この物語は、まだ未開発の西新宿の一角を金持ちの子供を入学させる御田園学園グループが開発して、学校を創立。西新宿を学園街にするという計画を都で進めさせようと画策することを描く。

 この計画実現に滝本という有力な国会議員、坪内という都議会議員が精力的に動く。更に裏方として暴力団のフロント企業である保岡工業の社長、保岡が暗躍する。

 政治家というものは、こういう利権に群がるものだという通常概念があるが、よく考えるとそれが彼らにどんなメリットがあるか、即ちここからどのようにして合法的に金を奪取するのかがもうひとつわからない。御田園グループから計画実現に伴い現金で、政治家や暴力団に謝礼が渡されるということなのだろうか。

 このカラクリが説明されないと、読んでいてしっくりこない。

物語では滝本の息子が、苛めで三並という同級生を殺害してしまう。これを、新宿烏の森の借家に住み付いた住人たちが真相を追い、学園創設計画に込められた悪にたどり着く。ということは、滝本のバカ息子が引き起こした事件が無ければ、悪は実現していた。森友や加計学園もこういった政治家や裏の世界がしゃぶりつくように悪が存在していたのだろうか。

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宮木あや子    「野良女」(光文社文庫)

桶川の彼氏はとび職人である。もう付き合って一年になるが、一か月もたたないうちに、彼は暴力をふるうようになった。それまでに15人の男とつきあってきたが暴力をふるわれなかったことは一人もなかった。

 ここから桶川の暴力をふるう男の分析が、偏見ではないかと思うくらいの内容。
・家庭の事情が複雑
・中卒、もしくは高卒。高卒にもならず中退
・肉体労働者
・上下関係の厳しい会社
・無口

そして桶川は言う
「だいたいね、無口な男なんて、喋るほどの知識がないんだから無口なだけなんだよ。で、女の方が知識があればそれが気にいらなくて殴るの。職場の上下関係が厳しければ、さらにその職場において、彼が下っ端なら、鬱憤がたまって殴るの。肉体労働者はコミュニケーションが肉体だから殴るの。中卒とか高卒とかも、とりあえず文化として殴るの。」

 主人公の朝日30歳は、合コンで29歳の畳職人としりあい、その朴訥さに今までにつきあった男性と異なることに憧れ恋人になる。

 ある日、初めて彼のアパートにでかけこっそり侵入する。
買ってきた肉をいれようと冷蔵庫を探したが無い。それで再度部屋を見渡す。驚くことにテレビもないし、電子レンジもないし、洗濯機もなかった。そして電話機もパソコンも無かった。生活のインフラになるものが何も無いのである。

 あるのは見たことのあるジャケットとジーンズ。それも焼けた畳の上に投げ出してある。後は布団だけが敷いてあるだけ。

 何だか、見てはいけない現実が世の中にはあるのだということをこの作品で知り少し暗澹とした気持ちになった。

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宮脇俊三   「増補版 時刻表昭和史」(角川文庫)

列車大好き、時刻表大好きの宮脇俊三が、少年の眼を通して昭和という激動の時代と家族の風景、青春の日々を綴った体験的昭和史。

 戦前の海外への旅は遠かった。昭和12年宮脇の父が世界一周にでかけた。その時の時刻表をみると東京発午後0時30分発横浜港行きの電車がある。この電車には注釈がついていた。「日本郵船会社桑港航路汽船横浜出航日ニ限リ運転」と。

 上海への通常ルートも遠かった。東京発午後11時の急行に乗る。22時間かけて翌日午後9時に下関に到着する。関門連絡船で門司に渡り、門司発11時の長崎港行きの列車に乗る。

この列車が翌朝の7時35分に長崎港に着き、それから午後1時発の上海丸に乗船して翌日の午後3時に上海へ到着するのである。ヨーロッパへはすべて船で渡る場合もあったが、結構一般的だったのはシベリア鉄道を使って行く行程。この場合は敦賀まで汽車でゆきそこから船に乗り換え、朝鮮の2つの港を経由してウラジオストックまで行きそこからパリ行きの列車に乗ってヨーロッパを目指すのである。

 戦前は驚いたのだが電化されていた区間が少ない。省線と言われていた東京、京阪神を走る近距離路線。それ以外は、横須賀線。東海道の沼津まで。中央線の甲府まで。それに信越線の横川―軽井沢間。それから上越線の水上―石打間。軍部が発電所が攻撃された場合ひとたまりもないということで電化を制限したからだそうだ。

 どうして水上―石打なんて辺鄙な区間が電化されていたかというと、この間には当時日本一長い清水トンネルがある。この区間を蒸気機関車で走ると運転士が煤煙に巻き込まれ失神する恐れがあったからだそうだ。

 宮脇は幼いころから汽車が好きで、よく作文に汽車のことを書いた。そして父親から手直しされた。
 丹那トンネルを旦那トンネルと書いてしまったり「フルスピード」を「古スピード」と書いたため。
 当時車の新車は静かにゆっくりと走った。しかし古びた円タクなどはスピードをあげガムシャラに走った。それで古いは速いということだと思っていたからだ。

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小川糸     「サーカスの夜に」(新潮文庫)

主人公の少年の僕。重い病気を患っていた。薬で病気は克服したが、その副作用で身体が大きくならない。今は13歳だが、10歳にしかみえない。そんな時両親が離婚する。父も母も僕を引き取ってくれない。このままでは生きてゆけない。何とか自立しなくては。

 それで少年は街の番外地にやってきているレインボーサーカスに飛び込む。

大人になっても身体つきが10歳のままでは、世間からははじかれ馬鹿にされ通用しない。しかしサーカス団は、そんなことは決してない。それは、団員の殆どが、過去や現在におおきな傷を持っている人たちの集まりだからである。
 サーカスは障害があっても、心はちゃんと成長させてくれる場所だ。

 僕は最初はコックの補助とトイレ掃除からスタートする。そして、個性的ではあるが、他の団員たちに支えられ、ジャグリングを習得し、綱渡りを習得する。綱渡りを訓練する団長との真剣なやりとり、そしてサーカス団員であるキャビアの励ましが印象に残る。

 ピエロとクラウンが違うものということを知った。
ピエロはクラウンの一種で、もっとも馬鹿にされる役をするのだそうだ。ピエロには涙マークがついている。馬鹿にされながら笑われている、ピエロの悲しさを表しているマークなのだそうだ。

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宮木あや子    「セレモニー黒真珠」(MF文庫)

宮木あや子が創作するお仕事シリーズの連作短編集。

今回の舞台は街の小さな葬儀屋「セレモニー黒真珠」。29歳なのに42歳にみえるという笹島、21歳なのに35歳にみえる妹尾。それに死んだ人が見えるという、喪服がやたらに似合う木崎。この3人が織りなす物語である。

 みんな変わり種。笹島は最初の就職が、葬儀屋でなく結婚式場。元来明るく接客にむくタイプ。だから担当した結婚式では、必ず新婚夫婦から丁寧な礼状をもらっていた。ところがあるカップルから礼状が来なかったことにショックを受け、結婚式場を退職して葬儀屋に転職した。

 妹尾の話が悲しい。16歳のとき父親が蒸発。母親はヤク中の更生施設に入って一年後に首を吊って自殺。高校に行くこともできず、年齢をごまかして風俗に勤める。雪寅にあったのは風俗3店目のコスプレソープ。

 殆どの客が、通り一遍のようにソープ嬢になった経過を聞くが、親身になることはなかった。しかし雪寅だけは真剣に聞いてくれて、それから毎週通ってくるようになり、2人は恋におちる。

 そして雪寅から、俺のお袋に会ってくれ。俺はお前と一緒の墓に入りたいと言われ、妹尾は、夢のようになり、この人についてゆきたいと思う。

 しかし雪寅の母親が興信所を使って妹尾を調べ上げ、とても妹尾を嫁にはもらえないと妹尾を拒絶して2人は泣く泣く別れた。

 そして今日、通夜と葬儀を依頼してきた四ツ倉家の亡くなった人は34歳で死因は多発性骨髄腫。実は、妹尾はそれが雪寅であることを知っていた。雪寅に死に水はお前にとって欲しいと妹尾は遺言され、それで黒真珠に派遣として入社してきたのである。

 通夜が終わり、参会者がだれもいなくなった葬儀場で、突然、灯りがともり、笹島がマイクを持って声をあげる。

 「新郎新婦のご入場です。皆さん盛大な拍手をもってお迎えください。」と。木崎が思いっきり拍手をする。そして木崎の乾杯の音頭と祝辞が続く。

 棺に納められている雪寅と妹尾にスポットライトが浴びせられる。心暖かくなる短編である。

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長尾剛    「漱石ゴシップ」(朝日文庫)

漱石の「こころ」までの作品は、大倉書店と春陽堂から出版されていた。ところが「こころ」は岩波書店から大正3年9月に出版されている。

 当時岩波書店は、創業者の岩波茂雄が女学校の教師をやめ、一年前神田に古書店を始めたばかりだった。こんな古書店が当代人気随一の漱石の本をどうして出版できたのか。

 漱石の一番門下生で最古参の安倍能成が一高時代から岩波と親友だった。その安倍の紹介で岩波も漱石門下生となった。

 そして、ある日岩波は自分の書店から、今度の作品「こころ」を出版させてほしいと頼み込む。加えて出版費用が無いのでお金を貸してほしいと付け加える。

 岩波の性格も影響したし、漱石のおおらかさもあっただろう。漱石は
「ならば僕の自費出版というかたちをとろう。僕が装幀もやって岩波から出す。経費は一切僕持ちで、売上金は夏目家と岩波書店で配分しよう。」

 そして、豪華な装幀の本が出版される。
「こころ」以降の漱石の作品は岩波から出版されることになる。岩波は古書店から出版社への道を漱石により開いたのである。

 岩波茂雄は私と同じ高校をでている。毎年夏に小学校の同級会を地元でする。その小学校で最初に担任になった先生が原和子先生、御年92歳のご高齢にも拘わらずお元気で健在である。

原先生は進取性に富んだ先生で、故郷の女学校を卒業、昭和17年に上京して岩波書店に就職している。昭和20年、東京が空襲に攻撃されるなか、岩波書店も出版が困難になり、会社を縮小せざるを得なくなり、多くの社員が退職した。そんな空襲のなか、原先生に岩波が「あなたは東京に私と一緒に残って欲しい」と懇願されるが、流石に御両親が心配して故郷へ戻るよう説得され、泣く泣く故郷へ戻ってくる。

そんな話を同級会の思い出話として原先生がしてくれる。漱石と岩波の関係をこの作品で知り、また原先生のお話がよみがえった。

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宮脇俊三   「旅は自由席」(新潮文庫)

学生時代の北海道は遠かった。青森から函館までは船、青函連絡船で渡った。何しろ、船の所要時間が、一番短くなっても3時間50分も要した。

 私が初めて北海道に渡った昭和48年が、連絡船輸送実績のピークだったらしい。定員1140名。当時の連絡船は7隻。従って、乗り遅れると何時間も次船を待たなければならないので、青森駅から桟橋を争うように走った。「桟橋マラソン」と呼ばれていた。

 そんなピーク時オイルショックがあり、その翌年には輸送実績が半減。青函連絡船が廃止されるころには、北海道への輸送は飛行機が95%で連絡船は5%までに変化した。1140名の定員に乗客が100名にも満たないことが常態化した。

 宮脇は飛行機嫌いもあるが、昭和17年を皮切りに7-8回青函連絡船で北海道に渡っていて、ことのほか青函連絡船に愛着を持っていた。

 だから、飛行機で北海道に渡るなど言語道断。いろんなエッセイで飛行機客を非難して、連絡船のすばらしさを伝えようとした。
 「青函連絡船は北海道というオペラの序曲である。そして、函館から札幌までの函館本線がその第一幕だ。しかるに飛行機で一気に千歳に着くとは何事であるか。第二幕からオペラを見るようなものではないか。」

 「北海道は遠いところなのだ。その遠さを実感させてくれるのが青函連絡船である。飛行機では不可。」

 こんな卑猥な文章もある。
「前戯なしで北海道へズバリ乗り込むのはよくない。北海道に対し失礼にあたる。」

 こんな連絡船も1988年に青函トンネルができて、廃止になった。もう船の時代のことは知らない人たちが多くなった。トンネルどころか、今は北海道まで新幹線で行ける時代になった。墓の中から宮脇の嘆きが聞こえてくる。あちらの世界で宮脇は今でも連絡船の旅を楽しんでいるのだろう。

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佐藤正午    「5」(角川文庫)

主人公の小説家、津田伸一は著者佐藤正午を投影しているのだろう。この津田かっては直木賞を受賞した作家なのだが、女優をたぶらかしたり、間男のようなことをして、しかもそれを思わせる小説も書いて、世間の非難を浴び、出版会社から干される。今や、出版界と繋がっているのはある出版社の塩谷のみ。しかし津田は不遜な態度をとるため、最後には塩谷からも見放される。

 世間から顰蹙をかっても、津田のファンという女性や、或いは彼が行っている文章教室の生徒の女性から、切々とした恋心を訴えるような手紙や電話がくる。

 津田をいやな奴だと思うのは、今5人の女性が、程度は別として、津田と繋がりを持っているのだが、とにかく女性に対して、感情は一切排し、馬鹿にしているような会話に終始するところ。この作品を女性が読んだら、嫌悪感が心を覆い、途中で投げ出すのではと思う。

 それでいて、女性からの連絡が途切れると、毎日のようにメールや電話を繰り返し気を引こうとする。それで女性からも、間をおいて連絡が来る。

 不思議に思うのだが、津田が出版界から干され2年間が過ぎる。それから、この作品は650ページもある大長編。その間どれだけ時が経過しているかわからないが、世に小説、作品を発表できないでいる。

 普通は経済的に追い詰められるし、出版社にすがろうとするはずなのに、そんなところはあまりない。よくこれで焦りが来ないのか不思議でしょうがない。しかも、女性との逢瀬にはお金を使う。

 この物語に石橋という女性が登場する。この石橋はいつも手袋をしている。この手袋をとり掌を繋ぎ合わせると、石橋の生きてきた時代に自分が辿ってきた記憶が移植される。しかもそれが過去だけでなく、これから経験するだろう未来も移植され未来が思い出のようにあらわれてくる。
 津田が石橋と手をあわせ未来が最後に現れてくるのだが、これが単に石橋とまた付き合っているというところしか表現されていない。一番興味があるのは小説家としての津田がどうなっているかということ。流石に佐藤はそれは描けれなかったのか。

佐藤は遅まきながら今年直木賞を受賞した。

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池井戸潤     「銀翼のイカロス」(文春文庫)

2009年7月腐敗しきった自民党政治を終了させ、しがらみのないまっさらがキャッチフレーズの民主党が政権を奪取した。この物語で言えば、憲民党が進政党に切り替わったときだ。

クリーンな政党を標榜していた進政党だが、党の実力者である箕面は、舞橋市の林野に飛行場ができることを知り、東京第一銀行から自らのファミリー企業に無担保で20億円の融資をさせ、その資金で林野を買い取る。その林野が空港建設用地として買い上げられ箕面は莫大なお金を手にする。この融資は担保もなく、稟議もない問題融資。東京第一銀行が組織的に仕組んだものである。

 東京第一銀行のトップが行う不正。そして政治家への闇献金。進政党はクリーンどころか真っ黒。

 2009年当時は、悪は自民党、官僚、そして銀行だった。マスコミは連日この悪を攻撃していればよかった。官僚から政治を取り戻す。官僚統治を破壊する。銀行は、貸し渋り、貸しはがしで中小企業を見殺しにする。

 物語の中心に帝国航空が登場する。日本航空を思い起こさせる。憲民党時代に、倒産寸前だった帝国航空を再建する計画を銀行団がタスクフォースを組み創り上げる。これが、最も適切で有効な計画であったにも拘わらず、進政党は、憲民党のすべてを否定するということで、白井国土交通大臣の元に怪しげな弁護士を長として、帝国航空再建案をと作る諮問員会を立ち上げる。

 銀行団タスクフォースチームは、多少の資金を貸し出すが、現状を改革して再建の道を示したが、弁護士率いる諮問委員会は銀行に対し70%の再建放棄を要請してきた。

 銀行は、倒産寸前の時、国民の税金を使って救済をしてもらった。日本の代表する帝国航空を破綻させていいのか。銀行は救済をしてもらった重みを考え債権を放棄しろと迫る。

 銀行も、政治家と癒着していかがわしい融資をしてきた。その暴露が恐ろしいから、諮問委員会の要求を飲まざるを得ない雰囲気になる。

 ここに我らがヒーロー半沢直樹が登場する。頭取になり替わり、債権放棄要請を政治家に対峙して拒否する。この場面が半沢シリーズの胸がすく場面だ。

 しかし、日航の再建は、5000億円以上の債権放棄がなされ、更に3500億円の税金を投入して行われた。半沢は現実には存在しなかったのである。

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百田尚樹    「カエルの楽園」(新潮文庫)

国を追われたアマガエル2匹。厳しい放浪の末、平和に暮らしているツチガエルの楽園にたどり着く。周りの世界では争いが絶えないのに、この楽園は、争いも無く穏やかな毎日が長い間続いている。

 それは、2つのことが守られているからとツチガエルは信じている。
一つは三戒を守る。三戒とは
 「カエルを信じろ」「カエルと争うな」「争うための力を持つな」
もう一つは「謝りのうた」を歌うこと。
 我々は生まれながらに罪深きカエル
 すべての罪はわれらにあり
 さあ、今こそみんなで謝ろう

このカエルの楽園は今の日本を象徴している。

3戒は日本国憲法、戦争を放棄し、憲法のもと平和を守ろうとしてきたからこそ今の平和が実現している。
謝りのうたは、大戦で特に中国、韓国で日本が犯したとされる残虐行為について、いつでも謝罪、謝罪と言っていれば平和は保たれるということ。

 カエルの楽園は7人の元老により、物事が決められている。楽園が戦争に巻き込まれず平和を維持できたのは、スチームボートという大鷲が、楽園を守ってきてくれたからと考える元老が多数を占めていたが、三戒と謝罪だけが平和を守れるという勢力に押され、多数が逆転する。そして、スチームボードとの協定を破棄。スチームボードは楽園を去る。三戒と謝罪を信じる勢力は、自分たちが勝利したと気勢をあげる。

 しかし、南の島にウシガエルがやってくる。話し合えばわかるはずと話し合いをしようとするが、そんなことは無視して、どんどん楽園に浸透し、ついにツチガエルを殺したり食べたりするようになる。そして楽園はウシガエルが収め、ツチガエルは奴隷にされる。

 百田さんの思想に賛同する人は、この作品手放しで賛同するだろうが、反対の考えの人は唾棄してしまいたい作品である。

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楡周平    「フェイク」(角川文庫)

この作品はノアール、ハードボイルド小説第一人者としての楡のイメージを一新して、銀座のクラブを舞台として、笑い満載の抱腹絶倒小説である。

 昔すし屋で一杯やっていたら、少し風体がギラギラであまり関わりたくない2人連れの客がやってきた。彼らの話がどこまで本当かわからないが、清原選手は子分に数百万円の札束を持たせ銀座を何人も引き連れ豪遊。支払いは子分にさせていたと言う。

 大リ―グで活躍した佐々木もこの間テレビで今でも同じような生活をしていると言っていたから、多分、本当のことであり、そんな連中が毎晩銀座を徘徊しているのだと思ってしまった。

 こんな人たち超高価なお酒をがぶ飲みして散財するから、酒の味などわからないだろう。ウィスキーまではともかく、ワインなど素面で飲んでもわからないものだから、酔っ払っては絶対わからないだろう。

 だから、安いウィスキーを輸入、高級ワインの瓶とラベルを用意して張替え銀座や別の飲み屋に卸す。よくわからないが、今は特殊な機械があり、貼ってあるラベルを跡形もなく剥がすことができるそうだ。この物語では、経営に苦しんでいる街の印刷屋に高級ワインのラベル偽造印刷させ貼りかえる。これで、数百万円一日で儲ける。

 何だか今でも現実行われているのではと思えてしまう。

それにしても、銀座のクラブのシステムは変わっている。客の代金は、最初についたホステスにつき、それが彼女が店を変え、客が変えた店にくると、その代金は最初のホステスにつく。それが、そのホステスが、当日その客につかず別のホステスが接客しても、最初のホステスにつくのだそうだ。ついたホステスへの給料は時給で店が払う。

 だから、銀座で一流のホステスになると年間数億円を稼ぎだすのだ。

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楡周平    「ターゲット」(角川文庫)

北朝鮮の核開発の進化を目の当たりにするに連れ、疑問が深くなることが2点いつもつきまとう。

 北朝鮮はいつも敵はアメリカであり、グアムでもアメリカ本土にむけてもアメリカにむけ攻撃できる武器をすでに開発が終了し、いつでも撃てる用意ができていると宣伝する。

 しかし、殆どすべてのアメリカ人は、遥か遠い北朝鮮から、核弾頭が飛んできてアメリカ本土を攻撃できるということなど全く信じていることは無い。しかし、日本、韓国は結構深刻な状況にある。北朝鮮はいつでも、この2つの国に核弾頭を撃つことはできる。
 この状態で、日韓が同盟国だからといって、北朝鮮から攻撃されたらアメリカは本当に日韓を守るため北朝鮮に攻め入るだろうか、大いに疑問が残る。

 もし、アメリカが北朝鮮に上陸した場合、戦費はセルビア攻撃でも一日1億ドルもかかったが、北朝鮮との戦いではその2-30倍はかかるらしい。更に21万人の戦闘員が上陸することになるが、結果4-5万人が犠牲になることになる。アメリカが北朝鮮から攻撃される可能性を殆ど信じていないアメリカで、日韓のために莫大な戦費を使い、アメリカ人の犠牲者が多く発生する戦争をアメリカ大統領が決断できるとはとても思えない。

 そして、もし北朝鮮が崩壊したら、何が変化するのだろう。日本の米軍駐留基地は、大戦後、ソ連を仮想敵国として設定し、ソ連の攻撃から日本を守るための目的で存在してきた。そのソ連が北朝鮮に代わり現在の駐留の根拠ができている。

 北朝鮮が崩壊した場合、果たして、中国、ソ連を敵国として日本の米軍駐留が正当化できるのだろうか。アメリカ軍の日本駐留が継続できるのだろうか。そんな疑問がこの物語では語りかける。

 それから、生物化学兵器とは、その即効性が最も優先する目的として開発されてきた。しかしこの物語では、即効性ではなく、長い時間をかけ発症させ、確実に死に至る兵器が北朝鮮によって開発される。1年から30年位かけ、菌をばらまかれた国は人々が感染しなくなり国が死滅してゆく。恐ろしい発想の転換である。これは楡の妄想なのか、それとも現実に開発されているのだろうか。背筋がゾクっとする。

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池井戸潤    「花咲舞が黙っていない」(中公文庫)

この小説は、読売新聞連載小説。一回の話を一か月でまとめることで出来上がっているのが第一話から、第五話まで。六話と七話はそこから抜け出し、話も普段の銀行から発生するちょっとした不祥事、事件から、急に銀行の持つ本質的な問題を抉り出す、重厚感のある物語になっている。そして六話と七話は一つの物語として繋がっている。

 主人公の花咲舞は、東京第一銀行の支店で5年間窓口業務を担当し、本店の支店統括部臨店チームに配属され、支店の業務監査や指導を行うことになる。上司は、支店時代も上司だったことのある相馬。

 花咲は地位も権力にも、出世にも関心が全くない。そして、現場の視点で上司には、「間違っている」と率直に言い、その率直さと真逆な動機で動く銀行とぶつかり、行内では、はねっかえりとして煙たがられる。

 臨店チームから異動して、横浜の希望が丘という出張所に勤務している相馬のところに花咲舞が臨店にやってくる。

 そこで、地元のシマタニ不動産という会社へ2億円の融資の伝票を発見する。更に運転資金として数か月おいて5億円の融資がされている。当然これだけ大きな融資だから、何に使うか明確な目的があり、それにより経営計画がどうなるのかその効果も綿密に添付されていなければならないのに、全く無い。更に一出張所で決裁できる金額範囲を超えており、当然本店決裁となるのだが、こんないい加減な稟議が、本店でも問題なく決裁されている。

 ここから舞が八面六臂の活躍をして、真相を暴きだす。実は、このお金は運転資金にはまったく使用されておらず、シマタニ不動産はその頃、粉飾決算が暴露され経営的に難しい局面にたたされていた東東デンキの株取引に使われていたことを突き止める。

しかもそこで大儲けしたお金は、一部政界の重鎮石垣代議士にも渡っていた。更に、粉飾が大問題になり株が暴落するとの情報は東京第一銀行から石垣サイドに事件の発覚2か月前にもたらされたようだとの観測も得る。

 こんな不正やインサイダー取引がまかり通るのはいけないと舞は報告書をあげるが、それは無かったことにしろという上からの指示があり、報告書は握りつぶされることになる。

 銀行は、顧客の接点となる行員で企業ができあがっていなくて、行員が顧客を離れ、行内政治や妖怪重役に連なり、隠ぺいなどが上手くできるかどうかで行員や銀行の価値が決まる。それは、どう表面を塗り替えても、本質は全く変わらず、舞のようなはねっ返りには大きな壁となる。そこを現実とは離れて、そのはねっ返りの正義が最後には勝利するところに池井戸の物語の痛快さがあるのだが、現実を思うと虚しさが深くなる。

 それにしても株というのは上がるから儲かるものとばかり思っていたが、下がることでも大儲けする場合があることをこの作品で知りびっくりした。

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| 古本読書日記 | 05:59 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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楡周平    「朝倉恭介 Cの福音完結編」(講談社文庫)

1970年代から盛んにになったハードボイルド小説。北方謙三、船戸与一、逢坂剛、大沢在昌、藤田宣永が登場して、冒険小説が作られそれがヒーロー小説に展開、その後衰えることなく、90年代、鳴海章、真保裕一、藤原伊織を生みだし、更に乃南アサ、高村薫、桐野夏生の女性陣作家も加わり、まさに「ヒーロー小説」が全盛時代を迎えた。

 この作品も、その「ヒーロー小説」の系譜にのり、ヒーロー朝倉恭介はその頂点に立つ。

朝倉を頂点とする、最近のヒーローの特徴は、人生に絶望して自ら犯罪者の道に進み、自分以外に信じるものはいず、孤独な一匹狼となる。更に挫折したエリートという矜持を持ち失う物は持たないという強靭な男という特徴を持つ。

 ヒーロー朝倉は、商社勤務の父親を持ち、ロンドンで生まれ、その後ニューヨークに移る。学業も優秀で将来を約束されていたのだが、両親を交通事故で失うことで人生が暗転する。

 ミリタリースクールに通いトップの成績で卒業するが、路上で暴漢に襲われ、反撃し2人の暴漢を殺害してしまう。正当防衛で無罪にはなったが、これでまともな道を行くことができなくなり、イタリアマフィアの一員となる。この朝倉シリーズで楡は繰り返し朝倉の背景を書く。ここが共感を呼び、私たちは朝倉と一緒になって物語を読むことができる。

 この物語は、朝倉が築いてきた日本でのコカインビジネスシステムを日本で起用していた田代という男に裏切られ、田代を排除して、最後の取引に朝倉自らが行うことから始まる。

 コカインを積んだ船が嵐で遅れ、コカインを抜き出す倉庫をCIAや朝倉のライバルであるカメラマンの川瀬、日本の警察に知られ、その3つの組織、個人と闘いながらコカイン奪取をする朝倉との闘いが物語の白眉。

 最後、朝倉が海に沈んで亡くなったように装い、シリーズ終結となるが、多分朝倉は死んでいなくていつか忽然と復活することになるように思う。

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| 古本読書日記 | 05:52 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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身体隠して

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頭も足も隠さない。

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おねむの時間。明かりがまぶしいようです。
まだまだ子供……といっても、そろそろ避妊手術を考えるころですがね。

敬老の日は過ぎましたが、茶々爺さん(16歳)のアップも貼っておきます。

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輝く瞳ですな。

| 日記 | 23:40 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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池波正太郎 「黒幕」 「あばれ狼」 (新潮文庫)

先に買ったのが、「黒幕」。
裏のあらすじにある、夫の仇と結婚してしまう女性の話(「猛婦」)が気になったので。
武士の時代を取り上げた話が多いですね。最後の1つだけ、明治維新後です。
11編入り。

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それが結構面白かったので、爺やの棚から拝借したのが「あばれ狼」。
7編入り。
博徒や盗賊が、情の移った女やら生き別れの子供やらのため、命を捨ててしまうような話がいくつか。
短篇集はいいですね。気楽に読める。

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池波正太郎=鬼平、というイメージでして、真田一族の興亡がライフテーマと言うのはこの2冊を読んで知りました。
そして、上杉と言えば謙信、武田といえば信玄、真田といえば幸村が浮かぶんですが、生き残った信之(信幸)の話が結構出てきます。
「男の城」では正妻の眼を盗んで於順という娘に興味を示し、「獅子の眠り」では隠し子の存在が明らかになり、「命の城」「幻影の城」にも登場し……と。
どこまでがフィクションなのかわかりませんが、嫁の小松の方が強かったことは史実のようです。
全然歴史は詳しくないので、wikiで調べて、名胡桃城は跡しかないんだな~沼田城も公園になっているのか~という感じです。
(大河ドラマ「真田丸」のためか、史跡を巡る旅の案内サイトがいろいろ出てくる)

現代ものの、人の醜さや生きづらさが綴られたリアルな小説に飽きたら、歴史ものもいいですね。

| 日記 | 23:33 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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楡周平      「陪審法廷」(講談社文庫)

裁判員制度が何の目的で必要なのか、このアメリカの陪審員制度を扱った物語を読んでよくわかった。

 中米のグアテマラの最貧層、物乞いで毎日の生活を凌いでいた少女パメラは、1400kmを超える道を年上の子と歩いて、アメリカに密入国する。そして、縁あってフロリダ州サラソタに住むクロフォード夫妻の養女となる。養父のクレイトンは外科医、養母のリサは看護師。養父母はやさしかった。ストリートチルドレンだったパメラは信じられないほどの幸せな生活を送った。

 しかし、その幸せが12歳のとき、ハリケーンの夜に暗転した。養父クレイトンにレイプをされたのである。それから、3年間、リサが夜勤の日には、必ずクレイトンに犯されることになる。パメラはリサに告げたかったが、もし告げると2人の仲が引き裂かれ、自分がまたみじめな生活に陥ってしまうのではという恐怖で、どうしても言えなかった。しかし、パメラは段々クレイトンに殺意を持つようにになった。

 パメラの隣の家には、同級生の牧田研一一家が住んでいて、パメラと研一は幼馴染でとても仲が良かった。
 卒業寸前にパメラが研一にクレイトンのレイプを告白する。研一はパメラに代わりクレイトンを卒業パーティーの夜に殺すことを決意する。そして、殺害はしたが、その現場が見つかり警察に逮捕される。

 フロリダ州には少年法が無く、殺人は終身刑か25年の刑しかない。
ここから陪審法廷が開始される。法律からみると、研一の殺人は明白で、25年か終身刑での服役しか選択肢は無い。

 裁判はその線により進行する。この陪審員のなかに、60歳になる由紀枝テンプルという日系アメリカ人がいた。そして彼女は突然他の陪審員に向かって言う。

 「この事件の悪人は明らかにクレイトンである。そのクレイトンの悪の行為を断ち切るために、研一は殺人を犯した。そのために研一は15歳から生涯刑務所で暮らすか、40歳になるまで刑務所で暮らすかになってしまう。これは理不尽なことである。」と。

 これが陪審員を動かす。そして法律を超えて研一は無罪となる。

裁判官は法律の条文だけで、判決を決める。しかし、法律は万全ではない。市民の感覚は法律に勝ることがある。なるほど裁判員制度とはこんな判決を下すためにあるのか。

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| 古本読書日記 | 05:49 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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村上春樹 安西水丸   「夜のくもざる」(平凡社)

掌編小説集。

主人公は徹底的に留守番電話が嫌いだ。ところが母親が留守番電話機能つきの電話を購入した。それで頭にきてわざわざ母親の家まで文句を言いにでかけた。

 玄関でチャイムを鳴らす。ドアを開けるとそこに留守番電話がたっていた。留守番電話が言う。
 「こちらは6694の7984の奥田ですが、ただいま留守をしております。ピーっと鳴りましたらご用件を吹き込んでください。」と。そして留守番でんあ電話がピーっという。

 「冗談じゃないわよ。お母さん私は留守番電話が大嫌いよ。だいたい成り立ちからしておしつけがましいし、一方的じゃない。そんなものにいちいちメッセージなんか吹き込むつもりなんかないからね。」と留守番電話に怒鳴る。

 よくよく留守番電話をみると母親に似ている。
それで少し言い過ぎたと思い、
 「何もあなたを個人的にどうこう言うつもりはないのよ。私はね、ただ留守番電話自体があまり好きじゃないのよ。だから別にあなたのことを傷つけるつもりじゃなくてお母さんにむかって言っているだけなの。」

 留守番電話が言う。
「かまわないのよ、恭子さん。そんなに気にしなくていいのです。私たちはどうせ留守番電話。何と思われても、何を言われてもしかたないところはありますもの。」
少し留守番電話にシンパシーが沸く。

留守番電話がちょっと上がっていきなさいよ。虎屋の羊羹があるのよと言う。
主人公は、靴を脱いで上がる。だって虎屋の羊羹が大好きだから。

こんなすこしシュールな物語が満載の作品集である。

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| 古本読書日記 | 05:56 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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楡周平    「修羅の宴」(下)(講談社文庫)

  バブル経済が過熱して、土地も株も際限なく上昇を続けた。この過熱経済を恐れた財務省は、公定歩合の引き上げと不動産向け融資の総量規制を行う。するとバブルははじけ、株は下がり出すし、今まで日本ではありえなかった土地価格が急激に下がりだした。

 こうなると浪花物産にハイエナがとりつく。これは絶対に儲かるという株券や会員権はすべて偽造だった。どこで金を膨らまし負債をなくし、利益を生み出したらいいのか。投資先がみつからない。そこにいづみ銀行の鏑木から紹介のあった真田が妖怪のような容貌をした高木を連れてきて、絵画が絶対儲かると言われ、時価の数倍の値段で絵画を購入する。

 ここからしょっちゅう顔をだしていた真田が全く音信不通状態になる。絵画が塩漬けになり販売できないのである。
 高木や真田が浪花から引き出したお金は暴力団にも流れていた。
浪花は一兆円の借金を抱える。そして滝本は背任容疑で逮捕される。

  この事件はバブル期が終了して起きたイトマン事件をモデルにしている。

  倒産寸前だったイトマンに当時ワンマンだった住友銀行の磯田頭取が腹心の河村常務を送り込む。そして磯田頭取が至福を肥やすための案件、ダーティーでリスキーな腐れ案件をすべてイトマンに押し付け、イトマンをひっかきまわし、みるも無残な状態にさせた。

 だからこの事件はイトマン事件ではなく住友銀行事件なのである。

 巨悪は住友銀行にいたのだが、罪を被ったのはイトマンの河村。磯田は頭取をしりぞいただけ。磯田の汚れた案件を被り逮捕された河村が少し哀れにみえる。

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| 古本読書日記 | 06:12 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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楡周平    「修羅の宴」(上)(講談社文庫)

  1985年9月22日アメリカ ニューヨークのプラザホテルでアメリカの景気回復のためにドル高を是正する合意が先進5か国財務大臣、中央銀行総裁会議で決まる。これにより一気に円高が進む。政府は日本経済が不況にはいることを防ぐために公定歩合を今とおなじようにほぼ0金利にして、企業への投資が促進できる環境や、預金ではなくお金が消費に回るための政策を実施した。

 預金がだめとなると、お金は投資に回らず、株式や土地へと向かった。ここから狂ったバブル経済が始まった。

 いづみ銀行のワンマン頭取鏑木から300億円の負債を抱えて倒産寸前の繊維商社浪花物産に出向させられた滝本は、素晴らしい経営手腕を発揮して300億円の負債をまたたくまに一掃して、利益を稼ぐ会社に浪花物産を変貌させた。

 滝本の崇拝者、鏑木頭取は「向こう傷を恐れるな」と、担保などとらずに金を貸し出す。怪しげな会社や裏社会がらみの投資や個人の私腹を肥やすためには、浪花物産を経由して取引を行う。

 その浪花物産の滝本も言う。
「額に汗して働く時代は終わった。頭に汗して金を生み出せ。」と。

 浪花物産の連続増収増益がとぎれそうになる。すると滝本はA社とこんな取引をする。
A社の土地を100億円の6か月手形で購入する。それをほぼ同時にまたA社に150億円の6か月手形で売る。更にそれを170億円で買い戻し、200億円の手形でA社に売る。A社は浪花の手形を市中で割り引く。200億円まるまるはお金にならないが、それに近いお金を手にする。

 浪花にメリットが無いのかというと100億円の土地が200億円でうれ100億円の利益が計上できる。
 これは前提に土地は現実に200億円以上で売れることが条件となる。こんなことがバブル期は実現できたのである。

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| 古本読書日記 | 06:10 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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朱川湊人     「月蝕楽園」(双葉文庫)

ホラーの雰囲気に纏われた恋愛小説集。

主人公の春山は、猿そっくりの顔でちび、しかも母親が一回浮気したことで父親が毎日責めたて、それに耐えきれず小学校5年のとき首吊り自殺をする。高校をでて家電量販店で働いたが、営業などとてもできず、事務仕事も失敗続きで、耐えきれずプレス工場の工員に職替えする。

 月給も安いし、仕事も単調。こんなところに何年も勤めてはいけないと言いながらどんどん人はやめてゆく。しかし春山は今の仕事は相手は人間でなく機械。人と接触する必要はなく、アパートに帰っても一人で、やっとわずらわされない暮らしが実現したと満足している。

 そんなある日、昼食中に松田と言う工員から声がかけられる。この松田も皆から浮いている。なにしろ一流大学卒なのにちっぽけなプレス工場で働いているのだから。

 しかし、そんな松田と春山はうまがあい、時々飲みに行くようになる。そんなある日、松田と飲んでいると、松田の中学の同級生の犬飼が現れ一緒に飲むことになる。犬飼は尚美という女の子を連れていた。松田と犬飼は積もる話があるということで、春山が自転車で尚美をアパートまで連れてゆく。尚美が部屋にあがってゆくように言う。

 春山は今まで恋愛はしたことはなかった。躊躇はしたが部屋に上がる。互いの話をするうちに2人は恋愛関係に陥った。

 ある日、春山が尚美の携帯に電話をすると、犬飼がでる。犬飼は「俺の尚美に手をだすとはどういうことだ。150万円だしたら尚美をくれてやる」と言う。春山がとてもそんな金は無いと懇願すると、犬飼にとって尚美などどうでもいい存在だったのだろう、20万円でいいという。

 20万円をもって犬飼のところにゆく。犬飼はそのときプレゼントと言って袋をくれた。そこにはDVDが2枚はいっていた。1枚目は尚美が本番をしていた。2枚目は8人の男に輪姦されていた。

 それから尚美は好きなのだが、SEXがうまくいかなくなった。その後、犬飼から尚美は10人子どもを堕したと聞く。しかも、尚美が中学のときに松田も2人子どもを堕させたと知る。それでも、春山は尚美を愛していた。

 そして、包丁で犬飼と松田を刺し殺す。
警察に逮捕されたとき、自分も死んで猿になり猿の尚美と森の中で幸せに暮らしたいと言う。切ない物語だ。

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| 古本読書日記 | 09:32 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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楡周平    「外資な人たち」(講談社文庫)

アメリカでは政府関係者や日本研究者以外の人たちは、殆ど日本に関心は無い。GNPが世界3位で大きな市場なのに、地図でみればちっぽけな国。こんなところで商売をしようなどとは思わない。だから、当然日本市場に進出しても、日本の商売風習に合わせたリ、日本仕様のものを作って販売しようなどとは考えない。それで、日本でどうして商売がうまくいかないのかと言うと必ず一斉にいうのが「非関税障壁」という言葉。それがどういう内容かは一切考えない。

 アメリカ人が日本に赴任してくるとだいたい家賃が100万円の住居。ニューヨークのマンハッタンあたりではこのくらいの値段の住居はあるかもしれないが、そこを離れれば100万円も家賃がする住居など殆ど無い。だから100万円の家賃のところに住んでいるなどと言うと、そこはお城かなどと聞かれる。奥さんは、部屋もたくさんあり、プールもある大邸宅に住めると思って東京にくるから、現実を知り夫に何よと厳しくあたりちらす。

 日本に派遣されてくる多くのアメリカ人は、過去に世界のあちこちでの駐在経験がある。郷に入っては郷に従えということで、過去の経験にてらして、日本語など数か月でマスターしてみせると豪語して日本語学校や教師に日本語を習う。しかし1か月で断念する。

 わからないのは、一本はイッポン、二本はポの丸がとれてニホン、三本は丸が ゛に変わってサンボンになる。こんなことは理解不能。わけがわからない。

 それで秘書などに通訳をさせる。秘書は一般的なことは通訳できるが、仕事上の専門的な言葉になると全くわからなくなる。
「フロッピーディスクドライブ」を「ひらひらと宙を舞う円盤」と訳した秘書がいたそうだ。

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| 古本読書日記 | 09:30 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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さくら、6か月

久々の犬猫写真。
さくらは元気です。

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視線の先にあるのはアイスクリーム

食事時は、しっかり爺やにへばりつく。
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ゆめこも負ける。
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はなこと2匹の頃はよかったのにと、ため息?
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(後ろにあるのは、はなこの写真)

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猫たちも元気です。
茶々丸は最近、私が朝起きると器の前でスタンバイしています。
カリカリが十分に入っていても、「ちゅーる」を求めて待ち続ける。

| 日記 | 00:19 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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村上春樹    「はいほー!」(新潮文庫)

車で道路を走っている、無意味な看板が美観をそこねやたら目につく。「親と子で何でも話せる楽しい家庭」。看板をみると、小学生の標語コンクールで優勝した作品らしい。しかし、けちをつけるわけではないが、面白味がなく、平板な標語である。小学生でなく、先生が作って小学生の名前で応募したのではと思ってしまう。

 それからよくあるのは某団体が作った標語。「世界人類が平和でありますように。」。平和を望まない人はこの世に独りもいない。ヒットラーだって金正恩だって平和主義者と言ってはばからなかったし、はばからない。

こんな標語を叫ぶ人や集団ほど、自分たちに気に入らない集団や人が登場したら率先して戦争をしてしまう。
「平和をとりもどす」ことを大義名分にして戦争をするのである。大切なのは、今の世界をどう認識して、戦争をしないようにどうするかが問われるのであり、こんな無味乾燥な標語から平和は生まれない。

 こんな何の影響も及ぼさず、ひたすら美観をそこねる看板は取り外してほしい。

どうせ看板をたてるのなら、こんな看板にしてほしい。ラブホテルの前に
「ほんとうにそんなことしなくちゃいけないんですか?」「終わると虚しいでしょう」
という看板をたててほしい。

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| 古本読書日記 | 06:23 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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楡周平   「猛禽の宴」(角川文庫)

指導力も包容力もないのに、策略や偶然でアメリカの黒幕社会のボスにのし上がったコジモを朝倉とギャレットでタンパ近くの別荘を襲う場面は迫力もあり、痛快で面白い。

 だけど、その前提になるところがどうも疑問が残る。
朝倉が日本の通関システムの盲点をつき、経費をあまりかけずに、日本でコカインを売りさばき上部組織のアメリカマフィア頂点にたつファルージオに称賛されるそのシステムの内容が納得できない。

 アメリカに暮らす日本人に組織を通じて近づき、コカイン中毒者にさせる。この日本人が日本に帰国する。絶対にどこの組織からコカインを入手したかを秘匿にさせ、彼らを通じてコカインを日本で拡販させる。

 そのコカインをアメリカで輸送する途中で、荷抜きがあったと輸送をとめさせ、コカインを荷積みする。それを日本に運送するが、「通関保留」とさせ、通関する前までに密かにコカインの入った貨物を抜き出し正規の貨物に入れ替える。

 この「通関保留」という状態が正常行為として作れるのかということが本当なのかと疑問を持ってしまう。これが盲点なのだと楡が言い切るのに無理があるように思えてしまう。

 それから、軍の廃棄物処理センター(DRMO)。米軍というのは、武器の技術を開発したり、武器を作るところは秘密のセキュリティが確立されているのだが、廃棄については制限が厳しくなく、いくらでも勝手にDRMOに捨ててしまう。そこは先端技術、先端武器の巣屈。そこから、先端情報技術や武器そのものが敵国に武器商人を通じて、北朝鮮や中国に流れている。

 ここも実感がわかない。本当に廃棄場所がいいかげんな管理になっているのか。そして武器職人がアメリカでどういう活動をしていて、DRMOのどんな人物から先端情報、先端武器を入手しているのか、そこにつっこまないと、どうにも物語がうそっぽくなってしまう。

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| 古本読書日記 | 06:21 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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楡周平     「『いいね!』が社会を破壊する」(新潮選書)

最近本や新聞を読まない人が若者を中心に急激に増加して、活字離れが深刻な状態にあると巷間言われている。

 しかし、活字離れは本当のことだろうか。電車に乗ると、8割くらいの乗客がスマホに何かを入力したり、情報を読んでいる。ある高校生は一時間にメールのやりとりを300件しているそうだ。大学生に一日スマホを持たせないで行動させると、ノイローゼになりおかしくなってしまうそうだ。

 レベルは別だが、書く、読むことはかってより人々には沁み込み、活字離れではなく、活字に寄りかかって生活している。
 世の中の大きな変化に「活字離れは深刻」などと声高に言って、活字によりかかっている現状を認めないで対応ができないようでは出版業界は大丈夫なのかと思ってしまう。

 小説家を志願している人は全国に推定10万人いるそうだ。その人たちが小説家になるためには、各出版社が設けている文学賞を受賞しないと小説家にはなれないと思われている。

 しかし、以前流行ったような携帯小説。別に大金を払わなくても、書き物を発表する場は身近にある。
 ここから、ベストセラーになる小説家が生まれる可能性は高い。

ふんぞりかえって、文学賞こそ登竜門なんて言っていることを続けているようでは、出版社の未来はあまり明るくない。

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| 古本読書日記 | 05:46 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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村上春樹    「やがて哀しき外国語」(講談社文庫)

村上は大学時代から、ジャズ喫茶を経営していて、会社勤めは一切経験が無い。アメリカのベストセラー本に「人生に必要なことはみんな幼稚園の砂場で学んだ」というのがある。村上は自らの小説を思い返して、自分は「人生に必要なことはみんな店で学んだ」と言う。

 店をやっているとき、店に来る10人のうち、一人か二人しか店を気に入ってくれなくても、その一人か二人が店を本当に気に入り、「もう一度この店に来よう」と思ってくれたなら、店というものはうまく成り立っていくものだと村上は言う。危なくなるのは、10人中8-9人がいい店じゃんと言うが、本当に気に入ってくれない客ばかりの場合。

 同じ村上の村上龍は、すべての作品が、みんなからいい作品だと言われないと頭に来ると言う。
 村上春樹の作品には、たくさんの悪評が世間にはある。そんな経験が村上春樹をして心の奥に生きづいてしまって言わせているのだろう。

 村上春樹は、肉体労働通じて学び取ったことを書くことが小説、作品であると言う。それが村上春樹の働くということなのだ。

 だから、時々机に座って書いたり、考えたりする「文学の世界」は異物だと思ってしまうそうだ。

 村上の小説は確かに我々とは異なった世界を描いているとは思うが、別に小説の中だけでなく、村上春樹の実際の生活、生きざまも我々の世界とは異なっていると思う。

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| 古本読書日記 | 05:47 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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楡周平    「クーデター」(講談社文庫)

日本海でロシア船が爆発炎上。それに、近くを航行していたアメリカ原子力潜水艦が巻き込まれ、何人かの犠牲者もだし、航行不能となる。

 これと並行して、新興宗教団体の「龍陽教」の教主の篠原天祐がクーデターを起こし政府を転覆し,日本の権力につこうという動きが進行していた。

 天祐はロシア、アメリカ船舶航行不能事件をクーデターにもってこいの事件として利用する。石川県木浦市にロシアから密輸して集めておいた武器を使い、木浦市を襲う。木浦市には原発があり、これが破壊されるととんでもない大惨事となる。それを恐れて多くの市民が金沢を目指し避難しようと走り出す。

 天祐は船舶航行不能事件を北朝鮮がしかけたように見せかけたのだ。

そして天祐は、その翌日、東京でアメリカ大使館、警察庁を爆破させる。最後には国会議事堂を爆破し、議員を殺そうとする。それらは、すべて北朝鮮の攻撃と思わせ。破壊のあと、北朝鮮に対峙する救世主として日本に君臨することを目論む。

 この作品、爆破場面、さらにその爆破のなかをくぐりぬけ真相を摑むカメラマン川瀬の活躍はそれなりに面白い。しかし、「龍陽教」の天祐の日本を何故転覆せねばならないのか、そしてどんな国にするのかが深堀されていないため、クーデターの実感がわかない。

 それから、破壊場面ばかりで、木浦から逃走する群衆。警察庁やアメリカ大使館爆破により起こる都内の状況が殆ど描かれていないので、実に現実感の無い物語になった。

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白石一文     「愛なんて嘘」(新潮文庫)

この短編集を読むと、一般常識で人をみて判断してはいけないと思ってしまう。それぞれに生きてきた異なった年輪があって今があるのだということを考えてしまう。

 与田は京都大学を卒業して、2年間アメリカに留学。そして美緒子のいる会社に入社。与田は優秀で、DCVという高密度の画像処理技術を創り上げ、これにより会社に大きな利益をもたらす。

 与田には奈美という妻がいたが、結婚一か月で妻が突然いなくなる。その奈美は変わっていて、何年かすると与田のもとに突然現れ、そして何日か、何週間か同居してまた失踪する。
そんなことを繰り返す。その間に奈美と与田は離婚する。

 与田は今は美緒子と週末は過ごす。2人は愛し合い、結婚をしようと思っている。だから、美緒子は奈美の行動を嫌うし、それを受け入れている与田にも不信が募る。

 与田と美緒子は結婚をする。その一年後、倉敷で会社の創業者の銅像の除幕式があり、美緒子は出席する。

 その後、美緒子はチボリ公園跡にできたアウトレットモールにでかける。そこでは数々のイベントが行われていた。そのイベントでチャップリンの恰好をして、ボールなどを回してジャグラーをしている奈美を見つける。

 2人は夕食をしながら、話をする。

奈美は、家族も無く天涯孤独。友達も一人もいない。人と一緒にいるのが窮屈で、会話もできない。だから、一人でいたいという思いが強く、与田のところもとびでて世界を彷徨する。
でも、ときどきガクっとくることがあり、その時には与田のところで骨休めをする。女性版「寅さん」のような生活を送っている。

 奈美は少し左足を引きずる。与田と奈美は、与田が留学中に知り合う。与田はアメリカになじめず思い鬱病を患っていた。与田がある日「俺は死ぬ」と言って車を駐車場からだす。奈美は「行ってはダメ。死んじゃダメ。」と両手を拡げ車の正面に立ちはだかる。そのとき与田が奈美を轢いてしまう。

 美緒子はそんな奈美の過去や告白を聞いて、別世界にいて懸命に生きている奈美を知り、その魅力に憧れて、好きになってしまう。そして骨休みにいつでもおいでと言う。

 私も美緒子同様、奈美に取り込まれてしまった。

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