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2017年06月 | ARCHIVE-SELECT | 2017年08月

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星野道夫    「森と氷河と鯨」(文春文庫)

切り立った氷河と深い森。何万年も変わることのない世界。そこで伝えられてきたワタリガラスの神話に寄り添って、神とともに生きる人々と同じ目線で歩んだ紀行記。柳田国男に似ている。

 人間はその生き方で2つに分かれる。
「目にみえるものに価値をおく」か「目にみえないものに価値をおくか。」ほとんどの人は「目に見えるものに価値をおき」生きるが、星野はごく少数派の「目にみえないものに価値をおいて」生きる。

 20世紀になって、欧米の強国は、世界中の美術品の強奪、収集にのりだす。星野と先住民族ハイダ族のボブがやってきたアラスカに近い島、クィーンシャーロット島も例外ではなかった。つぎつぎに持ち去られる人類史で重要なトーテムポール。これに対し、住民は立ち上がり、持ち去ることを拒否した。しかし、欧米人は言う。
 「こんなところに放っておくとやがて朽ち果てトーテムポールは失われる」と。

ボブが言う。
 「その土地に深く関わった霊的なものを、彼らは無意味な場所に持ち去ってまでして、何故保存しようとするのか。いつの日かトーテムポールが朽ち果て、そこに森が押し寄せてきて、すべてのものが自然の中に消えてしまってもいいのだ。そして、そこはいつまでも聖なる場所になるのだ。なぜそこがわからないのか。」
 目に見えないものでも、目に見えないことに価値をおけば、それは長い連なる子孫をこえてずっと見えるものなのだ。

 薬草をとりにゆくドゥの言葉も胸に響く。
「薬草を採りに行く朝は水だけを飲むんだ。そして自分自身も植物と同じレベルにもってゆく。だから心の中で植物に話かけることも大切だ。そうやって心も身体も植物のレベルになって森の中に入ってゆくと、自分が薬草を見つけるのではなくて、薬草に導かれながらいつの間にかその前に立っている。植物も人間と同じように魂を持っているから・・・。」

素晴らしい先住民族の酋長の言葉を最後に記す。
「物語とは矢のようなものだ。もし、おまえが正しく考えたり行動をしなければ、誰かがおまえの心を物語で射抜くだろう。」
そんな素晴らしい物語にいつか出会いたい。 

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真梨幸子    「人生相談」(講談社文庫)

六洋新聞の「人生相談」に、多くの人たちから相談が寄せられる。一見バラバラな相談のように思えるのだが、その中にとんでもない事件が隠されていた。バラバラな当初が一つの事件に収斂してゆく過程の描写は見事。

 会社勤めをしていたせいか4番目の相談「セクハラに時効はありますか。」というのに、ありそうなことだと感じいった。

 その内容。

大手家電メーカーに勤める相談者(48)は、人事部に呼ばれ、現在の部長が病に倒れたため、急きょ部長昇進してもらうが、その前に簡単な審査があると告げられる。品行方正、謹厳実直に今まで勤め上げてきた。しかし14年前部下のAさんと残業していた際、気持ちが昂り、Aさんと事務所内で体の関係を持つ。その直後Aさんは退職し、関係はなくなったが、最近そのAさんよりメールが届くようになる。もし、14年前のことが明らかになると、セクシャルハラスメントということで部長昇進はだめになる。セクシャルハラスメントに時効はないのだろうか。

 これを読んだ、ベテラン女子社員の飯田博美がみんなにメールする。これは豊田課長がだした相談だと。それで、部内は豊田課長非難一色となる。そんなとき変化球が投げられる。これはライバルの大崎課長が豊田課長を追い落とすために、豊田課長になりすまして投稿したのではないかと。

 そうなるとそれこそ真実だと、今度は大崎課長非難一色となる
そして、当初をしたのは、大崎課長、豊田課長ではなく、14年前セクハラされた、浅川さん。

 いかにもありそう。そして、メールにより、一斉に右にいったり、左にいったり。ネット時代の恐ろしさも表現している。

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中村航 中田永一    「僕は小説が書けない」(角川文庫)

主人公光太郎は高校一年生、強引に七瀬に勧誘され文芸部に入部する。中学生のとき書きかけた冒険小説がほとんど冒頭だけで、そこから書けれなくなって放ったままになっている。

 秋の学園祭で、生徒会長から同人誌をだし、その内容が、読むに堪えうる水準の達していない場合は廃部にするとの宣告をうける。

 この文芸部にはシナリオライターになっている原田という先輩と、当人は作家と称しているが、まだ本の出版どころか、一作も小説を書きあげていない御大と言われている先輩がいる。

 この2人の小説観が180度異なり、光太郎に小説について迫ってくる。

原田は、まず小説を書く前に物語の構成を決める。そして、2つのターニングポイントと、物語に大きな影響を与えるミッドポイントを具体的に設定する。それが終わってから、執筆にかかる。

 一方御大はすごい。
「答えは求めるな。自問自答しろ。悩め。お前の書き方は、お前が小説を書きながら見つけるしかないんだ.そうすることでしか作家にはなれないんだ。まずは書いてみろ。百枚でも千枚でも書いてみろ。書きはじめてようやく、それが自分が書きたかったものなのか、そうじゃないものなのかわかるんだ。書くのがつまらないと感じたら、そこでやめればいい。そんな原稿は価値のないゴミだ。また初めから何度でもいいから書き直せばいい。そうして磨いてるうちに、お前自身のもとめているものに近付いていくんだ。・・・・お前自身の姿が映りこんだ、お前しか書けない物語を求めているんだ。」

 この2つの部分は、中村航、中田永一どちらが書いているのだろう。想像するとおもしろくなってくる。

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吉井理人     「投手論」(徳間文庫)

近鉄のエースからヤクルトへそれから海を渡り、メッツを皮切りに大リーグのチームを転々、そして日本に復帰オリックスへ、最後はロッテで現役を退き、日ハム、ソフトバンクの投手コーチを経て再度日ハムのコーチに復帰。輝かしい野球人生を歩んできた著者の投手とは何かに応える論文集。

 中味は、メンタル的なものが多く、また現役のコーチのため核心を避けているのか、なるほどとうならせる部分は少ない。

 よくピンチになると外角低めをつけと言われるが、外角というのは、打者が目いっぱい腕をのばして打つことができ結構打者としては御しやすい。やはり、打たせないのだったら内角をつくべきというのは説得力がある。

 もうひとつ、書いてあることはよくわからないが、ハンカチ王子として名を馳せた斎藤佑樹について、間違いなく一流ピッチャーになると信じているところ。

 現在の斎藤をみていると、もうプロでは限界。引退をすべきだというふうに思える。何故栗山監督はこれほどだめでも斉藤を起用しつづけるのか、えこひいきなのではとずっと思ってきた。

 びっくりしたのだが斎藤は新人のときには6勝していた。2年目は5勝だったが開幕投手までつとめていた。そこからは鳴かず飛ばず状態。それなのに吉井は斎藤は確実に成長していると書く。

 今は目先の1勝にこだわり、勝てない、勝てないと落ち込んでいる状態。しかし、齊藤はパワーピッチャーで、投げ続けることで成長する投手。だから、だめということで2軍に落としてはいけない。負けても、ずっと使い続けることが大切。そうすることで、齊藤はそう遠くない時期に勝ち星が大きく負けより上回る投手になると吉井は言う。そうか、それで栗山監督も世間の批判を浴びても使っているのか。

 しかし、どうみても斎藤は終わった投手にみえてしまい、日ハムは甘やかしすぎていると思ってしまうのは私だけなのか。

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川上弘美    「水声」(文春文庫)

主人公都は1996年家族で暮らした家に弟陵とともに戻ってきた。すでに50歳を過ぎていた。

 弟陵を都は好きだったし、陵も都になついていた。あるとき、自分たちの父は本当の父ではないことを知る。驚くことに両親は兄妹だった。この時点で父親は誰だったのかは完全に類推できる。

 この作品は、長い時間をかけて、都が現在に至る、母親との対話の歴史である。まだ都が誕生する前の、母親に起こる出来事。母親を通して、語られる祖父母。そして自らが母親を通して感じきた祖父母、祖父母の店の番頭、甥、姪。それから、母と自分、母と弟、いとこ。そして、母を愛した人。兄である自分を育ててくれた育ての父。

 この作品でなるほどと思ったのは、遠い過去で起こったことでも、今現在でも新しい発見があり、よみがえり、今にたいしても影響を与えているということだ。

 1969年、アメリカで生まれ育った菜穂子が帰ってきた。都と同じ11歳だった。菜穂子は言葉が完全に英語なまりで、同級生から疎外されていた。それで、都、陵姉弟だけと交わった。50歳を超えた、菜穂子と都がセブンアップを飲む。初めてセブンアップを11歳で菜穂子と飲んだとき、菜穂子は「セブンナッ」と発音したが、今は「セブンアップ」となった。

 喉を通るときの音「シュワ、シュワ」を思い出す。しかし、今思い出すに、別の音が確かにあった。
 炭酸が喉を痛くしつつ飲み込まれていった、その後、胸元で「じーん」っていう静かな音がする。
 菜穂子が言う。
 「水のものを飲み込むと、体が迎えて音をたてるの。」

都はおかしく感じたが、その通りだと思いながら、弟陵との体の交わりのことを思う。
 陵が私の体にはいってくるおりに、最初にふれあうのは、陵とわたしの体そのものではなく私たちの体のなかに蔵された水と水なのではないか。そのとき水と水はどんな音をたててまじりあっていくのだろう。

 私たちは、水と水がかさなり、まじりあって人間が生まれ、人生が作られる。そして、ふとしたときに、その交じり合う水の声を思い出すことがある。

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津村記久子    「やりたいことは二度寝だけ」(講談社文庫)

芥川賞作家の津村さんは、大阪に住み、このエッセイを書いたときは会社員と作家の2足のわらじ生活をしていた。こんな生活では、毎日が窮屈で、型にはまり、小説の題材をおもいついたり、みつけたりすることは難しい。

 そんなときにエッセイの注文がはいる。しかし殆どネタ切れ状態。新たにネタを探しにゆく余裕もない。それで、何かが浮かんだらネットで検索。それをベースにしてエッセイにしようとして書き上げたエッセイ集である。

 「歳時記」という言葉が浮かぶ。それで、浮かんだときが夏なので、夏の歳時記で検索する。俳句の季語のようなものである。
 「イカ釣り舟、帰省、ナイター、寝冷え、暑中見舞い、川床、花火、」
イカ釣り船はともかく、他は今でもありそうなものだけど、津村さんは寝冷えの経験しかない。実に季節感の無い生活をしているものだとつくづく思う。

 歳時記の言葉はそれなりに素敵だとは思うが、現在の生活とはかなりかけはなれている。
それで、自分の歳時記とはと考えてみる。
 9月は「衣替えを忘れてまだまだ半袖。服の加減がわからずに常に風邪ひき。新型インフルに怯えながら、9月はまだ夏みたいなもんだからそこまでの猛威はと言い訳。」

 新幹線は大阪から東京に向かうときは、乗客はビジネスモードで車内も緊張感がはりつめピリっとしている。逆に東京から大阪に向かう場合は帰りモードでおだやかでゆったりしたモードになる。ビール片手に、弁当をたべている人が多い。

 そんなとき、ある人が缶をあやまってひっくり返し隣の人にビールをあびせる。しかし、ゆったりモード。隣の人は「いいから、いいから」と気にしない風情。

 よかった。東京から大阪に向かう新幹線で。
これは少し違和感がある。夕方一仕事終え、東京でも大阪でも向かう新幹線はゆったりモードのように思う。でも、雰囲気はよくわかる。

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馳星周    「ブルーローズ」(下)(中公文庫)

上巻はノアール小説にしては静かめな作品で、これは馳がいつもの路線を変えたのかと思ったが、下巻は暴力、戦闘満載のノアール小説に変転した。

 最後の徳永と警察組織、それも特殊急襲部隊SATとの闘いは、血が随所でほとばしり、強烈な場面が次々繰り広げられ圧巻だった。

 しかし、馳の作品はいつも思うのだが、中味がかなり雑である。特殊急襲部隊はSATなのだが、この作品ではSAPになっている。

 徳永が手に入れた銃は、確か銃弾は11個しかなかったはずなのだが、乱射につぐ乱射でとても11発では収まらない。
 また、ぼーっとしていて気が付かなかったもしれないが、手榴弾を使い警察部隊に損害を与えるところがあるが、その手榴弾をどこで手にいれたのかわからない。

 何よりも、警察を退職して、大酒を毎日飲み、これ以上ないというほどのだらだらした放漫生活をしていて、ちょっと走るだけでもすぐあごが上がってしまう徳永が、日本最強の急襲部隊SATまでも撃退してしまうというところが無理すぎでとても読むのに耐えない。

 馳作品を読む人は、暴力、残虐シーンの迫力だけを求めており、物語の人物、構成の整合性などどうでもいいのかもしれない。

 そういう点では私は馳にたいして良くない読者である。

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馳星周   「ブルーローズ」(上)(中公文庫)

警察から追い出され、弁護士事務所から仕事をもらい糊口をしのいでいる探偵業徳永に、かっての上司で警視監である井口から娘が失踪してしまったので、捜索してほしいとの依頼が持ち込まれる。

 捜索をしていくうちに、娘がメンバーになっている「ブルーローズ」というグループが主婦売春でしかもSMを愛好しているグループということがわかる。

 更にそのメンバーが警視監の娘のみならず、政界トップの政治家の妻などが関わっていることもわかる。

 上下2巻の作品。警視監の娘の捜索をしてゆく過程で、警察組織、政治家の闘争にまきこまれ、戦いをくりかえしながら、なかなか娘には到達しない物語になるのではと思っていたのだが、意外にあっさり娘は上巻の終わり近くで居場所がわかり、連れ出される。

 この作品を読むと、何で強行採決までして、共謀罪を通したのかよくわからなくなる。

警察の中の公安部は、いくらでも人をしょっ引いたり、脅迫をしている。しょっ引いてから、その人の罪をほじくりだす。無ければ、証拠もつくり、罪をでっちあげる。

 しかもその動機は、人々の安心、安全を優先するのではなく、自らの組織や活動を妨げる者、あるいは、警察トップの争いで、自分たちがかついでいる人間を、絶対にトップにつけるために、それを阻止しようとする者、勢力を捕まえてきて罪を作るのである。

 こんなことが好き勝手できる組織を持っているのに、共謀罪など必要を全く感じない。
怖い組織である。

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藤原正彦    「とんでもない奴」(新潮文庫)

私は、車のナンバープレートをみると、ついつい4桁の数字を、掛けたり、足し引きして結果どうやったら最後「10」になるかを頭でこねくりまわす癖がついている。

 数学者である藤原も、数字をみるともてあそぶ癖がある。353だったら左右対称、1かその数字の2つでしか割り切れない素数だとすぐ思うそうだ。258だったら差が3だと思う。こんな風な癖がつくと数字の覚え方が身に付き忘れがたくなるのだそうだ。

 1564年はシェークスピア、ガリレオの生まれた年。これを「ひとごろし」として記憶する。

 松井秀喜の背番号55をみると1から10までの和だと思うし、1-5までを2乗して足し算した数字だと思い浮かぶ。

 東北大震災が発生したのは3月11日の2時46分。アメリカの9.11のテロが発生したのは9月11日の8時46分。
 311と911、246と846。どちらもその差が600だと気が付く。それで、これはすごい発見と思って妻に勇んで言う。
 妻は
「あなたって、基本的根本的本質的にヒマ人なのね」と答える。

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増田俊也  「木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか」(下)(新潮文庫)

プロレスには真剣勝負というのはなく、すべて台本があり、その台本がいかに素晴らしく、また、その台本通りに演技できるレスラーの技術があるかが、面白く興奮、熱狂させる試合となるかを決める。

 力道山の必殺技空手チョップは、力道山がプロレス技術を学ぶために行ったハワイで習得している。手を水平にして相手に打ちこんでいるように見えるが、実は最後のところで手の甲で打つようにして衝撃を和らげるようにしている。

 史上最強の柔道家といわれた木村政彦は、プロ柔道を目指したが失敗し、ハワイに逃れそこでプロレスに出会う。力道山より一年早いプロレスラーとなる。その後、アメリカ、ブラジルと転戦し、格闘家としての名をあげる。

 自らが格闘家としては史上最強と思っていたが、その後力道山が頭角をあらわし、最強格闘家の名を欲しいままになる。そこで、木村は力道山に雌雄を決する試合をすることを申し込む。

 プロレスは台本がある。この試合61分3本勝負とされた。そして一回目は力道山がとり、2回目は木村がとり、3回目は両者反則で引き分けというのが台本だった。

 ところが、未だにわからないのだが、突然力道山が、台本を無視して、真剣に空手を打ちこんできた。真剣を考えていなかった木村は対応できず、リング上で倒れ一瞬意識を失う。
 その後なんとか持ち直そうとするが、力道山の真剣な攻撃は収まらずついに倒れ、病院に運ばれるはめになる。
 この結果、木村の名声は地に落ち、その後苦しい生活が待っていることになる。

何故力道山は台本破りをしたのか、著者増田は懸命に真相を追おうとしたが、増田の想いだけが先走って、真相にまでは至っていない。

 増田も北海道大学で柔道選手として活躍した。で、結局は格闘で最も強いのは柔道家であることを最後に言いたかったのだ。

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増田俊也   「木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか」(上)(新潮文庫)

戦争を挟んで15年間不敗記録を持つ、柔道家であった木村政彦七段。「木村の前に木村なく、木村の後ろに木村なし」鬼の木村と異名をもつ持っていた。

 その木村も世間から忘れられた存在になっていたが、この本が大宅壮一ノンフィクション賞と新潮ドキュメント賞のダブル受賞を獲得、ベストセラーとなり復活。そして、史上最強の柔道家としての名声も確立。

 木村が、講道館柔道の支配にいやけがさし、プロ柔道連盟を設立。その後、格闘技決戦といわれた力道山との対決を軸に、木村の柔道、格闘家としての生涯を描いている。

 全体の感想は、下巻を読了してから書く。

それにしても、武術、武士道がまだ社会に色濃く浸透していた昭和初期の木村の毎日の稽古がすさまじい。これだけ行えば、最強の柔道家になるだろうが、並みの選手であれば多分死んでいると思う。

 柔道の段取り。5時間が限界といわれている。しかし、木村は毎日朝十時に警視庁に出稽古。昼食を食べて拓大で三時間。そして夕方6時から講道館、その後深川の義勇軍道場、生活場所としていた牛島塾に戻ってくるのが毎晩23時。それから夕食をかっ込むと、うさぎ跳びをしながら風呂に行き、またうさぎ跳びで戻ってくる。すぐに腕立て伏せを千回やって、その後バーベルを使ったウェイトトレーニング、巻き藁突きを左右千回ずつ、更に立ち木への数千本の打ち込みを行う。布団に入るのは午前2時過ぎ。そこから頭の中でイメージトレーニングが始まる。眠そうになると、顔を抓って目を覚まさせる。これが4時まで続く。

 これを一日も欠かさないのである。

重量挙げの練習場にでかけ、スナッチで100kgのバーベルをあげ、そのバーベルを首から腕に何回もごろごろ転がした。夏の暑い日、師匠である牛島から団扇で扇いでくれと頼まれると、畳を持ち上げ、その端を持って、上下に扇いだ。
まさに怪人である。


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馳星周    「不夜城完結編 長恨歌」(角川文庫)

どうもすっきりしない。主人公の武基裕満州生まれ。田舎で、蔑まれた生活脱却を目指し、日本にやってきて新宿にどっぷり。戸籍を偽り残留孤児として日本人として振舞うが、生粋の中国人。現在は、中国マフィアの最下層で、麻薬を売ったりしてやっと糊口をしのいでいる。

 満州をでるとき、ずっとお兄ちゃんと慕い、まとわりついていた小文に「必ず迎えに来るから」と約束した。

 そして、12年後、クラブホステスをしていた小文と武は再会をする。武はずっと忘れていた、故郷をでたときの小文との約束を思い出し、それを果たせなかったことの悔恨の強さに、小文を絶対何があっても守ると誓いをたてる。

 一方小文は、新宿の中国マフィアの黒幕に売られ、その後錦糸町を制している徐鋭に売られていた。小文も、新宿に流れ、春をひさいでその日を暮らす、辛い生活をしている。だから12年前の武との約束などずっと忘れていた。

 2人ともどん底の生活をしてきて、それが何とか耐えられたのは、12年前の強い約束ということが2人の背景にあるのなら、それからの壮絶な殺人事件の数々が発生しても愛を貫こうとすることは理解できるが、まったく思い出すことも無かったほどの約束が、2人特に武の行動を縛るところは、それはないだろうと思ってしまう。

 また、物語の重要なキーとなる、割符というものがよく理解できなかった。一万円札が半分にちぎられている札束。これが地下銀行の印鑑に代用される。この割符を持っている人が組織の頂点にたって、権力をふるうことができる。この割符の争奪戦が物語の軸をなしているのだが、それがなぜ権力を持つ印となるのか、それらしき説明は少しはでてくるが、どうにもまともに信じることができない。

 馳の作品はどれも大長編。かなり飽きてきた。

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馳星周     「虚の王」(光文社文庫)

主人公の隆弘は、高校生の頃「金狼」という名のグループで渋谷を唸らしていた。あるとき、ヤクザを刺殺し、隆弘だけが少年院にいれられる。そして少年院をでた今は、ヤクザの末端で薬を売って毎日を凌ぐところまで落ちている。鬱屈とした日々の連続でいつも「いったい俺は何をしているのだろう。」「何者かになりたい。」と呻いている。

 この隆弘の目の前に現れたのが、隆弘がこれぞ「何者」として思える栄司。一般の人間は、まずい出来事が起こると、思考がとまりパニクる。それを脱却しようと、感情が恨み、憎しみ嫉妬、恐怖に転化して、最後には殺人に行きつくことになる。

 ところが栄司は何がおころうとも、感情が揺れることなく、超然として存在する。体つきも華奢で弱そうにみえる。だけど頭脳の切れ味は鋭い。

 強烈な掃除機のように、まわりに人を寄せ付け吸い取る。吸い取られた人たちは初めは何も気が付かないのだが、必ず最後には破滅の道を辿る。

 すごく恐ろしい人間に栄司は思えるのだが、実体がとらえきれない。だから「虚の王」ということになるのか。今日もニュースが報じていたが、自分でも人が殺せるかためしてみたかったといって全く面識の無い人を殺した事件があった。

 因果応報、恨みつらみ、憎悪からの人殺しではなく、何となくというわけのわからない事件が多くなった。このわけのわからないというのが「虚」に近いイメージのような気がしないでもない。

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垣根涼介  「真夏の島に咲く花は」(中公文庫)

元々住んでいた原住民であるフィージー人。そこにインドからの移住人。更に中国人。そして日本人が暮らすフィージー。

 着るものには困らないし、食べるものは自然からいくらでも手にはいる。こんなところでは楽しく愉快に生きよう、それを実践してきたフィージー人。ここに経済システムが持ち込まれ、知らない間にフィージー人が下位に位置付けられ、彼らを移住してきた人たちがコントロールする国になってしまった。

 この国で、反政府勢力により、大統領を含めて大臣を人質にして立てこもるクーデターが発生する。首都スバでは、暴徒が商店を襲い、商品を強奪するという事件が頻発する。

 反政府軍と政府とのにらみあいは膠着する。そのまま50日にも達する。反政府軍は、民衆の共感があまり得られず、段々追い込まれる。

 それで、人質を解放する条件として、反政府軍の罪は問わないことを提示。これを政府が全面的に受け入れ人質は解放される。

 人質の犯人は、犯罪者である。彼らが罪を問われないというという事態。外からやってきてフィージー人を押さえつけている人々に対して、理屈ではなく、ひとりよがりな感情がフィージー人に火をつける。

 中国人がやっている質屋に、ネックレスが持ち込まれる。それを担保に質屋が60ドルを貸し出す。そのネックレスを取り戻すため品物が流れる前に、借りたフィージー人50ドルを質屋に差し出す。質屋は当然品物は返さない。これにフィージー人は、質屋はフィージー人を馬鹿にしているとして、質屋を襲う。人質をとったって、罪には問われないのだからと。

 国、人々の置かれている立場というのは複雑で、皆、自分こそは正義だと思い示威を誇示しようとする。難しい時代に突入するようになってきた。

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馳星周     「雪月夜」(双葉文庫)

「裕司は人を殴る。幸司は人に嘘をつく」。2人は憎しみ合っているのに、いつもつるんで悪さを学生時代していた。その学生時代が終わり、裕司は東京にでてヤクザの世界にはいり、幸司は右翼団体にはいる。

 幸司は、故郷根室にかえり暮らしていた。そこに高校時代につるんでいてその後ヤクザに入った敬司が、組のお金2億円を持って根室に逃走、それを追って裕司が来て、その憎悪の対象になっている裕司と幸司が敬司を追って2億円を略奪しようとするのがストーリー。

 どことなく軽井沢を舞台にした「沈黙の森」に物語は似ている。

苦しい作品である。何故憎悪しあっている裕司と幸司が、再度結ばれともに行動せねばならないのかまったくわからない。馳もそこに納得感を持たせようと、ことあるごとに「裕司と幸司、幸司と裕司」あるいは「裕司と敬司、敬司と裕司」のフレーズを読者の頭に刷り込まそうと挿入する。しかし、無理があり、かなり白けさせる。

 更に2億円と言うお金。確かに独り占めできれば大金には違いないが、複数で追いかけると分け前は分割され取り分は数千万円になる。

 そのお金のために、拳銃を手に入れたリ、盗んだりして、銃撃戦が行われたくさんの人間が殺される。
 コストパフォーマンスがあまりにも悪すぎる。

この内容では、リアリティからほど遠く、物語としての出来はあまりよくない。

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立川志らく    「まくらコレクション 生きている談志」(竹書房文庫)

あの立川談志から「落語家のなかで一番才能があるのは志らく」と評された立川志らくが、落語のまくらで語った談志評を収録。

談志への強烈な思慕、愛がこれでもかと伝わってくる。一方、兄妹弟子への対抗心、嫉妬が激しい。特に、小説「赤めだか」を得た、談春にたいする嫉妬はすごい。自分のほうが、落語はうまいし、だしている本だって談春の「赤めだか」より面白いのに、何故談春なのだという情念が伝わってくる。

 落語家の住む世界は狭い。凝っているひとは、落語はすごいと思っているだろうが、一般では落語家は「笑点」に出演している人しか知らない。「笑点」に出演しないで、頑張っている落語家は涙ぐましい努力をしても、なかなか報われない。

 談志ももちろん落語家としてはスターだったが、やはり「笑点」にでて世間に知れ渡った。

志らくも厳しい。談志にすがりつき、よりかかり、談志色にそまって、生きていかざるを得ない。

 その壁を破ることができない。談志もすでに忘れられてきている。
ものすごいジレンマのなか、志らくももがいているのだろうと想像する。

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馳星周    「帰らずの海」(徳間文庫)

物語は北海道警察本部の捜査一課から、故郷の函館西署に異動となり20年ぶりに故郷青柳町に戻った主人公の田原稔、そこで、海岸に変死体があがり、それが、彼がかって愛した水野恵美であるところから始まる。

 田原は三上とコンビを組んで捜査を開始するが、関係者のすべてにかん口令がひしかれていて、なかなか捜査が進展しない。
 このかん口令をしいていたのが、被害者恵美の兄であり、函館中央署の捜査一課長をしている邦夫。

 この邦夫、悪徳警官で函館の暴力団とつるんで暴利をむさぼっている衆議院議員の吉田秀人の手先として活動している。捜査一課長も吉田の一言でその地位を得たもの。

 20年前、田原は中学時代、サッカークラブで頑張っていたが、恵美が誰かストーカーにつけられ危険を感じているとの告白により、サッカーをやめ、ボディーガードとして常に恵美とともに行動する。
 この20年前のストーカーが変死体の事件にもつながる。

馳は故意にか、それとも欠落しているのか、吉田の悪がどのようなもので、何故邦夫がその手の中で踊らされていて、県警が吉田の思惑どおり動かねばならないのかを突っ込んで描写しない。形而上学的表現で、読者はそういうものだと思いなさいと強制してくる。

 それでokの読者もいると思うが、私はそれぞれに起こる事件と登場人物の行動が、どうして?と常に疑問が残り、その都度理解できない吉田が浮かび上がりどうも入り込めずに困った。

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林家たい平  「林家たい平 快笑まくら集」(竹書房文庫)

 最近の食品異物混入に対する社会の反応は異常ではないかと思う。

「ワァー。このナゲット、東南アジアの工場で作っているんだ。衛生的じゃないよね。もう食べるのよそう。」

 でも、どうなの。台所なんか年に数回しか掃除はしない。台所にたつとき、白衣を着る?マスクをつける?パジャマを着たまんま。昨日から痒かったゴムのところをポリポリ搔きながら、その手を洗いもしないで、そのまま肉の調理をする。花粉症で、調理中くしゃみをする。「焼けちゃえば大丈夫」なんて言っている。断然東南アジアの工場のほうが清潔である。

 人間は動物の一員なのに、どうもそれがわかっていない。動物は地べたに落ちている物も平気で食べる。それで、病気になったり腹を壊すことは殆ど無い。昔は、お菓子などテーブルから」落としても、ちょっと埃を払って食べるのが普通だった。

 トオモロコシをゆでると、コーンの間に虫がくっついている。お母さんに虫がついてるよと言うとお母さんが答える。美味しい証拠よ。

 ラーメンに小さなゴキブリが浮いている。
「ちょっとゴキブリがはいっているよ。」と店主に文句を言う。
店主が答える。
「泳げなかったんだねえ。」 

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| 古本読書日記 | 05:57 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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伊集院静    「大人の男の遊び方」(双葉文庫)

今は個人情報保護の観点から、個人の所得番付けは発表されなくなったが、その番付け発表が行われた最後のころ、いつも金沢という名の3人が高額所得者の10位以内にはいっていた。この金沢親子はパチンコの機械で大ヒット作品「海シリーズ」を製造しているメーカーの社長、役員である。

 パチンコも、賭けも、機械を作ったり、ホールを経営したり、賭場を経営するひとは蔵をいくつも建てるが、客で蔵を建てる人は皆無と言われている。つまり、客は絶対負けることになっているのである。

 伊集院は、この作品で、カジノで勝つ極意、麻雀では勝つためにはどんな打ち方をすべきか公開している。
 60歳も半ばを過ぎて、かけ事で大損をこいていて、もう足を洗うべき時にきているはずなのに、未だに極意、流儀を、負けないギャンブラーの体で書く。
 何だか子供がどうだと叫んでいるような雰囲気である。

まあ、かけ事は男のロマンなのだろう。

 戦前、日本海軍が航海演習でヨーロッパへでかけ、かの山本五十六海軍大将がそのときモナコのカジノで遊んで言う。
 「今、海軍が軍事予算の半分でも私に預けてくれたら軍事費を倍にしてみせるのに。」

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| 古本読書日記 | 05:55 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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角田光代    「笹の舟で海を渡る」(新潮文庫)

どうももやもや感が残り食い足りない小説である。

戦争中、金沢近辺に空襲から逃れるために学童疎開していた主人公の左織。戦争が終わり、朝鮮特需で国が湧き上がっているとき金沢で一緒に疎開していたという矢島風美子に突然街中で声をかけられる。疎開先で苛烈な虐めにあっていて、もうだめだと思っていたとき、いつも左織が助けてくれて自分を救ってくれたと風美子は言う。

 風美子は戦争で、家族はもちろん親戚縁者も亡くなり、天涯孤独になったという。
しかし、左織には風美子は全く思い出せない。引っ込み思案の自分がいじめられている子を励ましていたなどということはありえないと思う。

 左織はおばさんの勧めで見合いをして大学教授と結婚する。すると風美子は、風来坊で仕事にもつかないその教授の弟と同棲をする。そして、左織に子供ができ、その子が誕生したときに風美子は弟と入籍すると宣言する。

 左織は教授夫人として、一見平凡で安定的な家庭を作ろうとする。風美子は、料理研究家としてのしあがりテレビにも登場し人気者となる。旦那である教授の弟は、何をしても長続きせず、風美子によって養われている。

 こんな風美子。左織とは真逆の生き方をしているのだが、しょっちゅう左織の家にいりびたり、疎開時代の話、左織には記憶の無い話をする。そして、左織の長女百々子が風美子になつき、左織を嫌悪し、百々子は風美子の家で寝起きするようになる。

 左織の家庭が揺れ動く。その度に、風美子がどうして自分に近付いてきたのか、不信と恐怖が湧き上がってくる。

 左織の子供たちは、全く家によりつかなくなり、母親も夫も亡くなり、左織は風美子とであった40年後、まったく独りぼっちになる。

 左織は思う。大学教授夫人として地位を得て、戦争中は多少の苦労もあったが、幸せな人生をおくれるはずだった。風美子は戦争ですべてを失い、混乱の時代を耐え忍んで生きてきた。疎開時、虐めを自分にして幸せになろうとしている子に復讐するために左織に偶然を装って近付いたのではないかと。そして長い時間をかけて、左織の幸せを吸い尽くす復讐をしたのではないかと。

 角田さんは、こんな風に思わせるように書いた部分もあるが、はっきりと断定はしない。それに、テレビで売れっ子になった風美子が、復讐に執念を燃やすというところがピンとこない。

 人生なんていうのは、正悪はなく、川に揺れている笹舟のようにはかなく、だれも行き着く先などはわからないものということを角田さんは表現したかったのかもしれない。 

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| 古本読書日記 | 05:58 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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佐伯一麦    「渡良瀬」(新潮文庫)

もちろん想像もあるだろうし、事実をかなりデフォルメした部分もあるだろうが、佐伯自身の若き頃の現実を綴った物語である。

 東京で親方について、配電工をしていた主人公の南條拓は、長女優子の緘黙症、長男の川崎病もあり、都会暮らしをやめ、茨城県古河市に移って来た。片道一時間半の通勤を続けていたが、体が持ちこたえられず、工場団地にある下請け工場「平塚電機製作所」にはいり、配電盤制作工として働きだす。

 長女優子の緘黙症も原因はわからないが、ある夏の日、優子と次女の夏子を連れて通りを歩いている。その通り沿いのお菓子やでガムを買ってあげる。優子も夏子も喜んでガムを噛んでいたが、夏子が誤ってガムを落としてしまう。それを見た優子がうれしそうにこれみよがしにガムを噛んでいる姿を夏子に見せつける。

 それでカチンときた拓が、大声で優子に「おまえもガムをすてろ!」と怒鳴る。その時優子は憎悪の籠った目で拓をみつめ、口からガムを放りだす。そして身もだえしながら、大声で叫び声をあげた。獣が吠えるような声だ。そこから、優子は一言もしゃべらなくなった。

 妻幸子が冷え切った声で拓をなじる。
ここが妻幸子と殆ど会話がなくなってしまったスタート地点だった。

 平塚電機製作所の基本給は15万円。残業をしなければ家族は養えない。それに後ろめたいことだが拓にはサラ金に50万円の借金もあった。

 子供たちも可愛いし、幸子も愛している。しかし、冷え切った家族の中にどうにも入り込めない。何をしても演技にみえてしまう。

 ごくたまにだけど、工場が定時に終わることがある。そんなときには、早く家に帰ろうとは思うのだけど、逡巡して居酒屋に行ってしまい、帰宅は深夜になる。幸子が仕事で遅くなっていると信じているかはわからない。

 悲しいと感じたのは、平塚製作所の下請けである並木工業の並木社長が急に倒れ、明日までに納品せねばならない配電盤と配線を作らねばならなくなり、それを拓が引き受けるところ。

 夜9時に拓が家に電話する。次女夏子がでる。お父さんはいつもと違う会社で、大きな仕事をしている。今夜も遅くなるから、早く寝なさい。遅くなることお母さんに伝えて。そこから病気の長女優子の様子を聞いて電話を切る。

 夜中の3時。何とか明日早く起きて作業すれば、配電盤は完成するところまでこぎつける。もう帰宅はできない。汚れた2枚の毛布を工場の隅に敷いて、埃まみれのなかで眠る。

 幸子は拓が帰らなくても、仕事をしていると信じてくれるはずと拓は思いこむ。
本当に幸子は仕事と思ってくれるだろうかと思うと読んでいて胸が締め付けられる。

 拓の家庭はここからどうなってしまうのだろう。続編を読みたくなる。

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| 古本読書日記 | 05:56 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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高野秀行   「謎の独立国家 ソマリランド」(集英社文庫)

アルカイダとかISはイスラム原理主義派と言われている。この本を読んでびっくりしたのは、中東の国々で最もイスラム原理主義を貫いている国はサウジアラビアだということだ。それで、なるほどと思ったのはアルカイダやISの資金源になっているのがサウジアラビアのお金だということ。

 ソマリアという国は難民もたくさんだしているし、暴政がまかり通り悲劇の国。そしてもうひとつは、輸送船を襲う海賊の国というのが一般的イメージ。日本からも自衛隊が行き、船の運航を守る活動をしている。とにかくあまりイメージがよくない国である。

 この本を読んで、驚いたのは、ソマリアには国内に3つの国が存在し大統領や、議会、行政が独立して存在することだ。

 北方地域を治めているソマリランド。それから、海賊で国家を成り立たせているブントランド。南を治めているソマリア。
 ソマリランド、ブントランドは、独立前は英国領。英国は、植民地の秩序に介入することなく手を引く。だから、従来からの氏族が支配する。しかし、南部はイタリア領であり、イタリアが世界大戦で敗戦し、混乱のまま独立となる。

 氏族では、氏族間で争いが起こっても、解決できる掟が決まっている。例えば、男性が殺害されると、和解のためにラクダ50頭、女性ならばやぎ20匹を殺害氏族は相手に与えるということが決まっているのである。

 氏族間の契約ごとがびっしり細部にわたり決まっていて、すべては契約により、お金により解決されるようになっている。

 そして、ソマリランドはハイパー民主主義が確立され、銃など武器を携行している警察官や一般人もおらず、世界で最も安全な国の一つだと高野は断言するし、欧米や日本より民主化は進んでいるという。そんな国が、国連に申請しても加盟が認められないことはおかしい。

 しかし、周囲からみると、「ソマリア」という国になるのだが、ソマリアからソマリランドへ行くには、パスポートを用意したり、ビザを内容によっては取得せねば行かれない。

 大変な国である。

 高野は恐怖、謎の国ソマリアに3回も赴き、180度我々が抱いているソマリアに対する概念をひっくりかえしてみせる。

 その行動力、観察力、思考力は賞賛に値する。

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| 古本読書日記 | 06:15 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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吉田健一   「わが人生処方」(中公文庫)

食うために、仕事をする。よく言われることである。食わなければならないから仕事をして、そしてその仕事を続ける、就職するためには教育を受けなければならないから学校へ行き、段々さかのぼれば、我々は食うために生まれてきたように思える。生まれてきたからには、食わねばならない。生きるということは、仕事をするということと同一である。

 ごくまれに、芸術やスポーツの分野で卓越した力があり、それを生業にして、食っている人は確かにいる。しかし、殆どの人は、個性とか能力とは別に、就職して、集団の中で仕事をして、定年を迎える。

 この姿を寂しいこととか、つまらないというように非難するのではなく、食うためには当たり前の姿なのである。

 このエッセイ集は吉田が50歳のときに書いたものを集めている。吉田は、50歳までは食うために、英国文学を研究し、没頭、集中し、世に論文を発表した。

 37歳での「英国の文学」。43歳での「東西文学論」、47歳での「英国の近代文学」49歳での「文学概論」。

 そして50歳で、自分の食うためにやってきた仕事は終了したと吉田は宣言。後は余生。
余生は自分の想いの赴くまま、肩の力を抜き、翼を拡げいろんなものを書いていきたいと言う。

 仕事として成し遂げた業績も素晴らしいものだとは思うが、50歳を過ぎてからのほうが吉田の作品は味わい深くなり、賞賛される作品を世におくりだした。

 「絵空ごと」「本当のような話」「金沢」「埋もれ木」「旅の時間」「怪奇な時間」そして名作「時間」「変化」。
 吉田文学が一斉に花開いた。

 惜しむらくは余生がたった15年しかなかったことだ。

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| 古本読書日記 | 05:47 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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馳星周    「美ら海、血の海」(集英社文庫)

東日本大震災の3日後、石巻に入った主人公の老人真栄原幸甚は眼前に広がる惨状に、自らが生まれた沖縄で、敗戦真近に遭遇した惨状に思いを重ね合わせていた。その時、14歳で沖縄一中一年生だった。中学生までが熱血勤皇隊として軍に徴用された。そして、沖縄本島南部に米軍攻撃を逃れる日本軍の道案内命じられる。

 この最後の沖縄戦では12万人以上の日本人が犠牲となり、何とそのうち97000人は民間人だった。

 幸甚は、米軍が上陸して、無差別に民間人を殺戮しているが、頑張って耐えていると、いつか日本軍がやってきて、アメリカを追い出してくれると信じていた。しかし、待てど暮らせど日本軍はやってこない。それで、気が付く。日本は沖縄を米軍本土上陸の防波堤にする。沖縄は日本に捨てられたことを。

 駐留するわずかな日本兵もひどかった。米軍の攻撃を避けようと、防空壕に退避している住民を銃で威嚇し、追い払い、自分たちが避難のため籠る。

 最初は空中からの攻撃だったから、防空壕退避も効果があったが、上陸を許すと、米兵は防空壕を探索して、住民がいると、無差別に銃を乱射し、皆殺しにした。

 この無差別殺人の悲惨さを、逃げる幸甚と少女敏子に目撃させ、実感させる。死ぬかもしれないという切迫感が、二人の想いを曝け出し、行動する愛の姿が美しい。

 そして、昼間みた夥しい数の死体が浮かび、血の色に染め上げられた海が「月の形をした金のかたまりの周りに砂金を散りばめたように光輝いている。」

 そんな海を、幸甚は震災直後の三陸海岸をみて思い出した。しかし、その海は血には染まっていなかったし、沖縄の海のように月に照らされ輝いていただろうか。

 馳の得意のノアール小説とは全く異なる作品。成功まではもう一歩かなというのが実感。

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| 古本読書日記 | 05:43 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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馳星周     「クラッシュ」(徳間文庫)

1997年から1999年の間に発表した短編集。馳の出世作品「不夜城」が発表されたのが1996年だから、馳初期の作品集である。

 馳作品の特徴といえば、強烈なノアール小説である。最近馳作品を集中して読みだしたが、初期の作品は内容のわりに、どす黒さや邪悪さがそれほど強く感じない。

 どうしてだろうと考えながら読んでいたのだが、この短編集を読んでそれがわかったように思った。

 例えばこの作品集でベストといわれている「ジャンク」。

主人公のヨシオは15歳の少年。父親は愛人を持ち、家をでている。いつも母親に抱かれて生活している。

 母親の財布から金を抜き取り、渋谷の街にでる。そこで、拾った優子をSMもどき行為で徹底していたぶる。倒れて起き上がれない優子の免許証を見て住所を暗記し、携帯電話の番号を登録する。

 郵便屋を装って優子の部屋に行き、優子を縛り上げ、またいたぶる。そこへ、優子の男が帰ってくる。それが何とヨシオの父親。その父親もヨシオは縛り上げ優子とともにいたぶる。

 どくどくしい内容なのだが、表現は実にさらさらしていて、どくどくしさは伝わってこない。

 ユウコとの情交を終えてから、ヨシオが優子の住所を盗みみるところ。

化粧品道具一式。携帯電話。システム手帳。財布。名刺入れ。システム手帳に挟まれた免許証。
 松井優子。住所は三鷹。年齢は二十三。ちょうど一か月後が誕生日。

読んでわかる通り、すべての表現が体言止め。他の文章も短く、情景をさらっと描く。
ちょうど、録画のコマ送りのような文章。

 これが、良いか悪いかはよくわからないが、確かに他には見られない文体、表現である。

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馳星周   「9・11倶楽部」(文春文庫)

消防士だった織田は、地下鉄サリン事件で妻子を失う。それを契機にして、人命を救う使命感のもと、救急救命士に転身する。

 2004年、石原都知事の命令で、歌舞伎町浄化作戦がスタートする。暴力団や非合法な性風俗店の摘発や、不法滞在外国人の追放が行われた。長期間不法滞在する外国人は当時多数いて、たくさんの、不法滞在外国人の間に生まれた子供も多くいた。

 親は故国に強制送還されたが、国籍の無い子供たちが日本に残された。

 織田が路上に倒れていた少女を助ける。この少女笑加は、国籍の無い子で、同じ境遇の子たち7人でアパートの部屋で暮らしていた。

 この笑加が再生不良貧血という放っておくと白血病に至る病気を抱えていた。適切な治療と薬が与えられれば、治癒する可能性は高いのだが、日本国籍も無いし、保険にも入っていない。治療費は 600万円半年にかかる。

 学校にも行けず、日給の安いアルバイトで凌いでいる少年、少女。それだけでも、理不尽なのに、医療費が払えないため衰弱してゆく少女がいる。

 この少女を助けなくてはと、織田は中国マフィアに近付き、高額な仕事をくれるようお願いする。それが、織田の堕ちてゆくきっかけとなる。

 最初は、麻薬や、銃を運搬する仕事をする。そして、最後には殺された死体を運ぶ。

 これをきっかけに、マフィアの抗争に巻き込まれ、織田自身も人殺しに手を染めるし、7人の子供の一人が殺されるし、重傷を負う子もでてくる。

 警察の手がのびてきて、織田と子供たちは極限に追いつめられる。それで、最後には子供たちを追いつめた都庁を爆破することを計画する。

 読むにつれ、子供たちと織田に気持ちが取り込まれて、何とか都庁爆破が成功してほしいと知らないうちに私は願っている。

 織田が逮捕される。車で連行される途中、都庁がでかい爆音とともに大きく揺れ出す。

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馳星周    「バンドーに訊け!」(文春文庫)

読書狂いの馳星周が、まだ本名坂東齢人の名で書いていた91年から97年までの書評を収録。

我が家もそれほど貧乏というわけではなかったが、高校後半になるまでテレビが無かった。

別に勉強の邪魔になるからとテレビを買わなかったわけではない。父親が全くテレビに関心がなかったからだ。ただ、子供にとっては辛かった。学校での90%以上の話題がテレビだったからだ。鉄腕アトムも鉄人28号もウルトラマンも話すことができなかったのだから。それで仕方なく、本を読むことに熱中した。

 馳は、家にはテレビはあったが、祖父母に溺愛され、年がら年中祖父母の家に行った。

この祖父は、北海道浦河の山奥で、虹鱒の養殖場兼釣り堀をやっていた。山奥で町まで10キロ。数キロメートル行かないと隣家が無いという場所。

 電気はなく電話もない。ランプの灯りで暮らす。もちろんテレビなど無い。
途中で小さな自家発電機を買って、電気はついたが、テレビは買わず、もっぱらラジオを聴いていた。
 馳は小さな椅子と本を持ち込み、たくさんの本を貪るように読んだ。

 へえ、すべてではないが馳の小説家としての原点はこんなところにあったのだ。少し私と似ているところがあるように思われるのだが、今の暮らしぶりでは圧倒的に差をつけられた。

 たくさんの本の書評がのっている。私も同じ時代に本を読みながら過ごしたが、最初は興味の違いか、全く知っている本がでてこない。これは、全部未読な作品が並ぶのかとちょっとしょげかえって読むと、四分の一くらいを読み進んだところから、芦原すなおの「青春デンデケデケ」が登場。この作品に感動したと馳の書評。全く私と同じ感動。思わずそうだよと拍手をした。

 馳の作品とは対極をなす佐伯一麦も激賞されていてうれしかった。その後は隆慶一郎や藤田宣永、篠田節子、浅田次郎まで登場して、何だ私と同じ道を歩んでいるじゃんと思い、安堵して読み進んだ。

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| 古本読書日記 | 05:54 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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馳星周  「馳星周的W杯観戦記 蹴球戦争」(文春文庫)

韓国が審判を買収したのではというほど疑惑の試合がたくさんあった2002年の日韓共催ワールドカップの観戦記。韓国がベスト4まで勝ち上がり、流石に3位決定戦では疲弊し4位で終わった。優勝は2-0でドイツをブラジルが破りチャンピオンとなった。

 今は、国間だけでなく、人々の間でも日韓関係は最悪状態。元来そういう傾向は強いものだと思ってきたが、この観戦記を読むと、2002年ころは、同じアジア人としてかの国韓国でも、日本と他国の試合では、日本をたくさんの人が応援していた。今では想像がつかない。

 当時(今でもそうだが)、静岡県は清水、磐田とJ1に2チームを持つサッカー王国。ワールドカップとなれば、サッカー王国に試合を誘致せねばということで、私の住んでいる袋井市に静岡エコパスタジアムなる球技場を、後の採算など考えず建設した。

 このエコパで3試合が行われた。その3試合目イングランド対ドイツ戦を馳が観戦している。観戦記は試合より、エコバスタジアムの酷さを書く。

東京から新幹線で2時間弱で掛川に到着。小さな駅は人で埋もれている。2泊分の荷物を持っているのでコインロッカーを探すがどこにもない。(本当に今でも無いのだろうか。今度確かめてみよう)。ボランティアの人に尋ねると、コインロッカーは無いので、民間の手荷物預かり所を使ってくれという。おいおいワールドカップの開催地なんだろう、ここは。(袋井駅にはわずかですが、コインロッカーがあります。)

 シャトルバスは快適だが、バスの停留所からスタディアムまでが、遠い。(そうなんだよね。それもずっと上り坂)。こんな田舎にスタディアムを作って。これはないだろう。エコパは屋根があって合理的だが、サッカーのスタディアムにしては陸上トラックもあって、減点20.私のエコパに対する印象は非常に悪い。

 端的にいえば、こんなところでワールドカップを開催するなよ、ということになる。

うーん。そうか。2年後にはラグビーのワールドカップがエコパで開催することになっている。

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三浦しをん   「政と源」(集英社オレンジ文庫)

国政と源二郎は73歳で幼馴染。国政は、大学をでて銀行にはいり、妻、清子も母親に勧められて、無難な道と、見合いで決めた。多忙だったけど安定した道を歩んできた。

 源二郎は、親の後を継いで、中学卒業後、つまみ簪の職人となる。妻花枝は小学校の先生。当然、花枝の両親は結婚に反対したが、花枝が夜中に家を抜け出て、源二郎の家に居つき、
両親もしぶしぶ認めた、駆け落ちのような結婚。

 とても、親友になりそうもない2人が、幼馴染ということをベースに、ずっと友達としてつきあっている。

 国政は突然妻が家をぬけだし、娘夫婦の家に入り込み、一人暮らしをしている。何年もの間妻とは顔もあわしていないし、声も聞いていない。懸命に家族のために頑張ってきたのに、一体この仕打ちはどうしたことかと、卑屈な気持ちで毎日を過ごしている。

 一方、源二郎は、妻花枝を5年前に亡くしているが、20歳の徹平を弟子としてとり、その徹平に美容師のマミが恋人となり、いつも源二郎の家にいて、若いものに囲まれ暖かい生活をしている。マミの美容室で、源二郎はマミに頭を整髪してもらっているが、禿げ頭の脇にちょっぴりついている髪を、赤から始まりピンク、最後は緑に染めてもらっている。

 マミと徹平が結婚することになり、国政夫婦に仲人をお願いする。しかし、数年ぶりに妻清子に会いに思い切って行っても、まともに口もきいてもらえず追い返されている状態。とても仲人などできる状態ではない。弱りはて電話をしても、仲人などお断りといわれ即、電話を切られる。

 しかたなく、毎日近況と「仲人を引き受けてくれ」とハガキを送る。

 それが通じたのか、哀れに妻清子が思ったのか、とにかく仲人は引き受けてくれた。そのまま家に戻ってくるかと国政は思ったが、娘の家に行きますと言って式が終わると国政の元を去ってゆく。しかし、「手紙は時々書いてくれてもいいのよ」という言葉だけは残して。

 それにしても、国政はみじめだ。離婚とはいわない。蛇の生殺し状態。切ないねえ。

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馳星周    「約束の地で」(集英社文庫)

これがあの馳星周?馳の特徴は、物語を際立たせる風景とか心象を描かず、ひたすらぐいぐい画面のみを展開させ、風景や心象は読者が描いてくれという文体である。

 ところが、この短編集は馳の印象を一変。心の動きや揺らぎが、北海道の暗い自然の風景をBGMにして、描写され、同じ北海道作家の桜木柴乃を彷彿させるほどの内容になっている。

 どの短編も、悲しみ、絶望、恐怖、切なさと、人生をどうあがいても浮揚させることができない人々を描く。

 中学生15歳で、虐めにあい、精神的におかしくなり、時々言葉がでなくなった智也。父が浮気をしていて、愛想をつかした母は妹を連れて家をでる。ということは智也は母に捨てられたということ。

 学校へも行かず、一人でサッカーボールを蹴って遊んでいたところ、雅史というけがをしてサッカーを断念した高校生と出会う。この高校生に無理やりスクーターを5万円で売りつけられる。

 もう世の中がいやになり、愛犬レオをバックにいれ、死のうと夜の道路をスクーターで走る。20KM以上走ると苫東開発地帯になる。苫小牧が内地の企業進出をあてにして開発したが、石油備蓄のタンクがあるだけ。柵で仕切られているがその先は草茫々の荒れ果てた地。 ここぞ死に場所と入ってゆく。すると愛犬レオが土を懸命に掘り返す。そこから人間の骨がでてくる。

 そこで智也は思う。こここそ「世界の終わり」の地だと。自分とレオ以外の人間の骨をすべてここに埋めて、レオと自分だけでこの世界の終わりで生きてゆこうと。

 それで、もっと埋める骨が欲しくなる。骨はどこにある。祖母や祖父が埋められている墓地にたくさんある。それで、頭陀袋をもって墓地に行き骨を掘り返し、袋につめ「世界の終わり」にゆき、その骨を埋める。

 レオとの楽しい生活を、骨を埋めている間想像して楽しくなる。

しかし、骨運びの最中、警察の尋問につかまる。そして、智也のテポケットには鋭いナイフが2つ隠されていた。

 悲しいけど、ほんのわずかでも夢がみられた、その時は本当に幸せだった。

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