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2016年10月 | ARCHIVE-SELECT | 2016年12月

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原田マハ     「太陽の棘」(文春文庫)

 実話に基づいているから、原田さんが意図したのではないかもしれないが、沖縄の置かれている本質をものの見事に表している素晴らしい小説である。

 舞台は1948年、世界大戦が終わって3年後の沖縄である。主人公のエドは、戦争中は大学生で徴兵されず、戦争は知らずない。大学を終えて軍医として京都経由で沖縄米軍に赴任する。エドは父が、医者だったので、家業の医者を継ぐことを義務付けられていたが、本当は絵を描くのが大好きで、できれば絵描きになりたかった。しかし、能力を見極めて、絵描きを断念して精神科医となった。

 エドは沖縄へ赴任して、ニシムイという村にニシムイ美術村という画家が集まって絵を描いているところを知る。そして、言葉や文化の違いを越えて、さらにアメリカ占領という支配地位を無視して、彼らとの交流を深める。

 ここにいる画家たちは、戦争当時、従軍画家として軍隊と戦地を回っていて、沖縄の悲劇の戦線は経験していない。

 1948年は、朝鮮戦争が始まる直前で、朝鮮戦争が始まると、沖縄からは大量の米国人が朝鮮に出兵し激しい戦争で多くの米個人が戦死した。

 エドもニシムイの画家たちも、戦争の現場を体験していない。それだからこそ、沖縄の人たちとアメリカの普通の人々がその心の底では、何を思っていて、その思いが綿々と現在まで繋がっていることをこの作品は鮮やかに描きだしている。

 普通の人々は、アメリカであれ日本であれ、戦争はいけないという気持ちでつながっている。戦争は、権力者、政治家が起こし、何の責任もとらず、庶民を振り回し、犠牲にする。

 一般の人たちが繋がることの重要性がひしひし伝わってくる小説だった。

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野中柊    「グリーン・クリスマス」(集英社文庫)

 「恋愛だなんて子供っぽいことを言うんじゃないよ、サクラコ。恋愛なんて、おまえが思っているほどそんな上等なものじゃないんだから。生グサイ。恋愛なんかして結婚したら、それこそ不幸だぞ。恋愛が冷めたら、結婚してる理由がなくなってしまうんだから。恋愛なんてものは固形燃料で温めている鍋物とおなじで、ごく限られた燃料が尽きてしまえば、あっという間に冷めてしまうものなんだ。冷え切った残り物の鍋物くらいミジメなものはないじゃないか。」

 「ガラッパチの家の子だけがサカリがついたときの勢いで安っぽい恋愛結婚をして不幸になるの。」

 主人公サクラコに対して、父親、母親が言う言葉。本当に辛辣な言い回し。恋愛して結婚するのは構わないかもしれない。しかし、恋愛が冷めた、そのときそれでも2人で一つの家にいる意味、基盤が無いと結婚はしてはいけない。

 だから結婚前に、それが何であるかしっかり理解して結婚すべき。サカリがついた勢いで結婚してはいけないのである。

 それができない人たちが多いんだろうな。

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村田沙耶香    「ハコブネ」(集英社文庫)

 19歳の里帆は、男とセックスしても、辛く苦痛しか感じない。それで、自分は女ではなく男ではないかと考える。31歳の椿は、夜でも日焼け止めクリームを塗っている。同い年の知佳子は男に抱かれても、何も感じるものが無い。

 里帆は男のかつらを被り男装して行動する。それで、女性を抱いてみても、相手も自分も冷ややかになってしまう。FTMという概念があるそうだ。FEMALEからMALEにTRANSFERすることを里帆は実践したのだ。しかし、それに失敗して、FTXだと考える。
Xは、女性でも男性でもない無性という世界。これは、なかなかイメージが沸かない。

 それが何か実践しようと椿と抱き合う。里帆は、無性を実現しようと、性感帯が無いところを愛撫する。一方椿は、女性の性感帯を攻める。里帆はそのたびエクスタシーを感じる。椿は、ちゃんと里帆は女性ではないかと断言する。

 男性でも女性でもない無性のSEXとは。それは千佳子の行為かもしれない。千佳子は人間は宇宙のごく一部と考えている。宇宙が恵んでくれる水は人間の体を循環して、地球に還り、そこからまた宇宙へ帰っていく。すべてが宇宙の生命体の一部を成している。

 それで、自分の欲望がつながっている物は、地球の表面の土。その土に指を差し入れ快感を感じる。

 こんな妄想は、ひょっとすれば結構な人が抱くかもしれない。しかし、それを発言する人はめったにいない。それを、村田さんは、描きだす作家である。

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池田清彦    「世間のカラクリ」(新潮文庫)

 すべての生活資源を自然生態系に依存して、自然生態系の持続可能性の範囲で生きようとすると、人類の自然での収容力は500万人から1000万人くらいだそうだ。これは、今から1万年前の全世界の人口だそうだ。

 人間が16万年前に出現して、今日まで地球上に現れた数は500億人から1000億人だそうである。現在の世界人口が72億人。ということは今までに生まれた人間の7.2%から14.4%の人が現在生きているということであり、それはものすごい数になる。

 CO2が地球温暖化の主原因だと、私たちは完全に刷り込まれているが果たして本当なのだろうか。よくテレビで流される地球温暖化の象徴としての映像は、北極の氷が崩れ落ち、白熊が割れた氷から落ちそうになるものである。

 しかし2013年9月のイギリス デイリーメール紙によると、前年に比べ北極の海氷面積は増加している。例えば1940年から1970年にかけCO2は310PPMから330PPまで上昇しているが、世界の平均気温は0.5度下がっている。この時期は太陽の活動が低下した時代。地球の温暖化というのは、太陽の活動の活発化か不活発化によって決定され、CO2の上昇との相関関係はないと池田さんはこの本で言っている。

 2013年に健康診断で異常とされる基準が変わり最高血圧160mmHgから140mmHgに引き下げられた。この結果、60歳以上の60%が高血圧症となり、降血圧剤を飲まねばならなくなった。どこか変。世界一水準の長寿国日本が病人だらけになってしまった。

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山本甲士    「ひかりの魔女」(双葉文庫)

 主人公のおばあちゃん、おじいさんが死んで一人暮らしになったため、主人公の家が引き取ることになった。お母さんは気乗りはしないのだが、今暮らしている家にはもともとお祖母ちゃんが住んでいて、名義もお祖母ちゃんになっているため引き取らざるを得なくなる。

 主人公の家は、大変で、主人公は大学受験に失敗して浪人中、妹は高校受験。母親がパートで勤めている総菜屋は倒産しそう、父親は会社のリストラにかかり、退職を強要されている。

 お祖母ちゃんは、昔書道教室をやっていて、お祖母ちゃんの優しさに救われた経験を持ち、お祖母ちゃんを心から慕っている昔の生徒が何人かいる。

 お祖母ちゃんは、決して当人にはわからないように、昔の生徒たちにあい、母親と父親の苦境を救ってあげる。そして、最後には暴力団抗争まで手打ちをさせてしまう。

 意識してはとてもできないが、慕われる人のすばらしさ、暖かい人間関係、それこそが、何にもまして、人間を幸せになることを物語は教えてくれる。

 おばあちゃんの幸せについて語る言葉が優しい。

 「忙しいという字はね。りっしんべんに亡くなるってかくでしょ。忙しすぎると、心のほうがお留守になってしまうということね。実際、人間の心は弱いもので、あまり欲をだすと、そのせいで見えなくなってしまうものが出てくるし、おカネがなければ困るけど、多ければ多いほどいいものではないんじゃないかしら。家族が幸せでいられるさじ加減というのは、いっぺんにおカネもうけをしたり、どんどん忙しくなることじゃなくて、何ごともちょっとずつ良くなっていくことだと思うのよね。」

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今江祥智     「きょうも猫日和」(ハルキ文庫)

 心底猫大好きな作家今江が、これこそ猫の魅力だと不思議を描いた短編集。

 どれも味わい深い作品が並んでいるが、洒落ていていいなあと思ったのが「冬の部屋」。

 玲子は冬の雪が降りしきる街角で、震えている子猫を拾い家に連れて帰る。その間猫は玲子の腕の中で、ハックションとくしゃみを繰り返す。玲子は心配している。玲子の家にはチガウチガウという名の犬を飼っている。チガウチガウが子猫を受け入れてくれないのではと。

 しかし、家の部屋で、無邪気に近付く子猫が「ハクション」とくしゃみをすると、チガウチガウも負けないくらいの「ハクション」を返すことで仲良くなる。玲子は子猫の名前を「タンポポ」とつける。

 実は玲子には3年も文通をしている作家がいる。小学校3年のときに読んだその作家の作品に感動したことが文通につながった。だから、タンポポのことも報告した。
 すると作家から、タンポポの「観察記録」を書いたらと返信がある。文才があるから、童話作家になれると。

 それで、玲子は毎日観察記録をつける。作家はそれを使って、作品を作る。それって盗作でまずいんじゃないの。
 作家は言う。何を言ってるんだ玲子は私かもしれないよと。

 となりの部屋からタンポポのような鳴き声が聞こえてくる。

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山本サトシ  「とっておきの旅 100選東日本編」(講談社文庫)

 最近は、雑誌でも高級旅館を中心に、旅はここに行って高級感を味わえとか、もう秘境でもないのに、ここぞ秘境とおおげさに喧伝して、こここそ行かねばと煽る本が多い。

 もうちょっとおたく的であって、渋い見どころ満載の本が欲しいと思ってえらい古本だけど手にとってみた。確かにこだわって渋かった。

 知らなかったけど、結構有名なのかもしれないが、千葉県の木更津にはしょじょうじのたぬきばやしの証正寺があるんですね。「夕焼け小焼け」はちゃんと中村雨紅という詩人が作ってその場所もある。

 大正15年に第一次南極越冬隊隊長だった西堀栄三郎、長野県と群馬県の県境にある唐沢高原にやってきて、ここで猛吹雪に会う。そこでクレメンタインのメロディーにのせて替え歌「雪よ岩よ われらが宿り」と作り、これが「雪山賛歌」となり流行したと、こんな土地を愛情をこめて歩く。

 この本で、行ってみたいなと思ったのが、宮城県女川町の中にある、有人小島江の島。

 昭和60年ころ著者が訪ねているが、その風景が、郷愁をそそる。

 水道は孤島ゆえまだなく、島に唯一の井戸があり、そこですべての生活用水、飲料水は賄う。電気はディーゼル発電機で供給する。だから夜10時以降は供給されず町は停電。10時以降も電気が必要な家は、島の役所に申請して供給してもらう。

 子供たちはすべての家は自分の家。勝手に他人の家に上がるが非難するひとは皆無。そこでおやつをもらう。もちろん、わがままな子は、上がった家の大人がしかる。

 頭に荷物を乗せて運ぶ。この江の島が頭で運ぶ北限の町だということだ。

 昭和60年当時は100件の家があったそうだが、今は90人ほどが住む島になったそうだ。コンビニはもちろん、ガソリンスタンド、自動販売機も無いそうだ。
 素朴で自然な、江の島に行ってみたい気持ちが募る。

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中園ミホ 古林実夏 「ゴーストもういちど抱きしめたい」(集英社文庫)

 松嶋菜々子と韓流スター ホン・スンホンにより映画化された作品のノベライズ版。

 びょんなことから、通販会社の女性社長七海と陶芸作家をめざす韓国人留学生ジュノが運命的出会いをして恋に陥る。

 ジュノの部屋で、2人だけの結婚式をあげ、幸せいっぱいの生活を送るはずだったのだが、七海が帰宅途中に歩道に乗り上げたバイクに追突され、そのまま死んでしまい、ゴーストとなってよみがえる。このとき、七海のバッグがバイクの運転手によって奪われる。

 ここから、この作品の読みどころが始まる。

 七海には通販会社を一緒に立ち上げ苦労を共にしてきた未春という親友がいる。実はこの未春が、会社の金を使い為替操作などで失敗して会社に大きな穴をあける。このことをチンピラである黒田に知られ、黒田が経営している会社に3億円を振り込むよう脅迫される。

 一億円以上の支払いは社長である七海の決済がいる。バッグを奪ったのは、七海の部屋の鍵を奪い、七海の部屋(ジュノの部屋)から、七海の会社のパソコンのパスワードを書いた紙を奪うため。

 そのことをゴーストになった七海は、チンピラ黒田の部屋に忍び込み、未春と黒田の会話から知る。ところがゴーストのため、ジュノや警察に知らせる術がない。

 このままだと、黒田と未春がまたジュノのところへやってきて、ジュノを襲い、パスワードの紙を奪いにくる。愛するジュノが危ない。どうしたら、この危険をジュノに伝えられるか。切迫感が読者にせまる。

 でも、こういう類のストーリーはどこにでもあり、定番化されている。古典的だけど、その安定感で読ませる。

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津原泰水編    「血の12幻想」(講談社文庫)

 恩田陸、菊池秀行、柴田よしきなど12人の作家に「血」をテーマにして短編を作ってもらい出来上がった本。雑誌などに発表した作品を津原が選集して編んだ本だと思っていただけに意外だった。

 姉の作ったケーキは美味しかった。しかし、理由はわからないが、主人公が姉も両親も付き合いをやめろと言っている今の同棲中の女性の作るケーキは、姉のケーキとは比べものにならないくらい美味しく、素晴らしいケーキだった。

 どうして、これほど美味しいのかあるときわかった。そのケーキには人間の血を入れ込んで作っていたからだ。そのケーキを食べていると、他のものは全く食べれなくなった。それで食事はすべてケーキとなった。

 同棲中の女性、涼子は、血のはいっていないケーきは食べられない。食べても吐き出す。そして、それが続くと、白い肌は黒ずみ、やせ細り、重い病気となる。

 だから血をいつも集めて来ねばならない。男はそのためホストクラブのホストになった。

 そして、金持ちの女性ではなく、かすかすのお金を持って遊びにくる女性を誘って、ホテルにゆく。それで、ベッドに縛り付け、腕に傷をつけそこから血を取り出す。一回1リットル。

 あるとき、ホテルに連れ込んだ女性は、血の出が悪かった。腕からでは1リットルの血がとれない。それでは、だめだと、首を思いきっり切りつけた。ものすごい量の血が一気にふきでたが、その女性は息をしなくなった。

 それで、ホストクラブを辞めざるを得なくなり血の収集が難しくなった。涼子の病状はますます悪化する。

 男は、自分の腕をスポっと切り落とした。

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シーラ・コーラー 「パーフェクト・プレイス」(新潮文庫)

 主人公が健康を害し、スイスを皮切りに療養のため放浪しているとき、見知らぬ男に声をかけられ、そこから彼女が犯した昔の殺人にたどりつくという一見推理小説のような話。

 しかし、文が徹底的に虚無で、けだるく、救いようがなく、それがかなりしつこい。
 作者シーラ・コーラーは南アフリカで生まれ育ち、その後ヨーロッパに渡り、そこからアメリカへ至った。文章はアメリカというよりヨーロッパ的である。

 この作品では、物語のキーになるのは「白」だ。白い肌、白いドレス、白い門、白い砂、白い手首。イタリアの島で、行きずりのドイツ人に抱かれたのも、白い歯が素晴らしかったからだ。

 しかしその白も、南アフリカで毎晩、白い肌にコルセットをはめ、母が街に春を売りにでていく。そのときのこびりついた白は恨み嫌悪の白だ。

 南アフリカは白でなくては人間として認められない国だった。それは、ヨーロッパでもアメリカでも、白でなければ陰に陽に差別をされる。

 この小説では、そんな主人公の、白に対する憧れと愛着、一方白に対するこれ以上ない憎悪が深く搖動する。そして、それが殺人にもつながる。

 久しぶりに心の動き満載の暗喩小説に疲れが頭の中いっぱいにしみわたった。

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森絵都    「あいうえおちゃん」(文春文庫)

 「あ」から「わ」まで、頭にその文字を使って、四四五調のリズム言葉を作り出し、荒井良二という有名画家の可愛らしい絵を添えた素敵な絵本。

 森さんの溢れる鋭く楽しい言葉に魅了され、心が弾みっぱなし。結構世相を切ったりしてそうだとうなずいてしまう句が満載。声をだして読んでみたくなる本である。

 これなかなかな良い句だと思った句を紹介する。

 えがおの えっちな、えんかかしゅ  (いるねえこんな歌手)
 くさかげ くさぶえ くさまくら   (高原の草原に寝転んで)
 けれども けっきょく けがさんぼん (どうごまかそうが)
 そうりも そろそろ そだいごみ   (最初から粗大ごみの総理もいます)
 ぼうしを ほしがる ぼうずたち   (酷暑、田舎道の地蔵が目に浮かぶ)
 ほたるも ほれぼれ ほしまつり   (大きな星空が広がる)
 まぐれで まけたと まけおしみ   (まぐれというのは勝つときの言葉なのに)
 みかづき みんなの みちしるべ   (昔は夜道に街灯がなかった)
 むくちな むすめの むこようし   (婿養子はつらいよ)
 もりそば もとめて もうごねん   (グルメもこだわるととんでもないことになる)
 やがては やになる やせがまん   (ほんとにそうだよね)
 りょうしん りょうほう りすとらちゅう(今はありそうな悲劇)
 りこんの りゆうは りこんれき   (こりゃあ どぎつい 皮肉)
 ろくじに ろうばと ろてんぶろ   (張り切って一番に風呂に行ったのに)

そして最後は「わ」で締める。
 わいわい わらって わすれよう

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津原泰水監修   「エロティシズム12幻想」(講談社文庫)

 我孫子武丸、有栖川有栖など12人の作家のエロティカル小説集。

 一般の書評にはのせてはいけないとは思うが、作家の持つ言葉の凄みに圧倒されたので、書評として紹介する。それは、京極夏彦の「鬼交」。

 主人公の女性は、殆ど微睡のなか、全裸でベッドに横たわっている。そして、見つめる先には、笹百合が一輪ささっている。花瓶の、その内側を想像すると、ぬらぬらと濡れそぼっている。太い茎が、そこに埋まっている水をどくどくと吸い上げている。

 窓が開いているのか、カーテンが大きく揺れて、主人公の体と花瓶の口をさらってゆく。気が付くと、それは風のせいではなく、カーテンの向こうに誰かがいて、カーテンを振り回しているのだ。こんな、情景描写があって、慄然とする文章が書かれる。

 「先端から増幅されたパルスが信じられない早さで脳幹に到達する。動けと念じても、動かなかったのに、動かされると今度は瞬時にして意識を攪乱する。かくらんする。かくらん。体中の先端から神経束を圧迫しながら意識の塊が逆流してくる。充血。充満。ぐいと。力が。蠕動。押し広げて。緊張。膨張。隆起。変形。血管が。右足の親指。左足の小指。やわらかい。くにゃりとして。滑らかな。潤って。痙攣。収縮。収縮。収縮。」

 読み終わると、本当に疲れ切ってしまった。京極は表現の鬼である。

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コナンドイル  「バスカヴィル家の犬」(角川文庫)

 コナンドイルの作品では、めずらしい長編推理小説。映画化も繰り返しされる超有名な作品。

 この作品、イギリス小説の特徴、地方の田舎の妖艶で魔物がいかにも住み付いていそうな暗く、霧雨が覆う地域が舞台になっているところ。底が知れないほどの深い沼があり、その沼の先に廃坑になった崩れた掘っ建て小屋がある。その小屋へたどり着くのは難しく、家畜や時に人間も底なし沼にはまり沈んで死んでゆく。そんな沼がでてくるなどイギリス文学でなければあまりあり得ない。そしてその田舎の雰囲気の叙述が素晴らしく、怪奇の味わいがよくでている。

 物語は、推理小説ではよくある、大富豪の死に伴う相続の話。犯人は自分が相続人になるために、自分より優位にある相続人を殺してしまおうとする物語である。

 その大富豪の先祖が何人も、魔犬によりかみ殺される、富豪の家系が呪われているという伝説に乗じて、底なし沼の掘っ立て小屋で猟犬を秘密に育て、この猟犬を使い大富豪を襲い殺し、更に自分の上位にいる相続人も殺そうと企てる。事件を起こすときには、猟犬に燐をまぶし、犬が光を発するようにみせる。

 推理小説にはめずらしく、早い段階で犯人がわかる。そして、読みどころは上位の相続人を殺そうとする犯人とそれを阻止しようとするホームズとワトソンとの対決する場面である。

 小説が発表された当時は斬新だったかもしれないが、今読むと、事件の背景もよくあり平凡だし、犯人も当てることが簡単、仕掛けもわかりやすく、やや物足りなさが残る。

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ウィリアム トーマス クィック 「猿の惑星」(角川文庫)

 最近の政府、企業の最大の市場創造の関心はAI市場。社会生活や商品の中に、有用なAIを開発して、強力に普及推進をする。

 ときどきSF小説であるのだが、このAIが進化して、人間を支配しコントロールするという未来社会を描いた作品。この作品そのAIが猿になっていると思われる。

 よく読み込んでいないせいなのか、混乱しているのだが、冒頭、この物語の舞台は2029年と書かれている。しかし、最後のクライマックスの場面だと、3000年前の宇宙ステーションが発見され、それは西暦5000年のもの。ということは小説の舞台は西暦8000年のように思える。(どうも、この物語こういった辻褄があわない部分がちらほらある・・未知の惑星に到着したはずなのに、中国人がいたりして)。

 西暦8000年とします。宇宙ステーション オペロン号の宇宙飛行士デイビッドソンは任務の途中謎の磁気嵐にまきこまれ、操作不能となり、地球に似た未知の惑星に不時着する。

 そこは、逃げ惑う人間を猿が捉えて、支配する「猿の惑星」だった。

 さて、この宇宙ステーションというのがパイロットとして何人かの人間は乗り込んでいるが、実際の操縦、操作はコンピューターと猿が行い、人間は殆どすることが無かったし、不具合が起きても何かすることもできなかった。

 実は「猿の惑星」が3000年前にできたのは、やはり宇宙ステーションがこの惑星に不時着して、操作不能となり、この惑星に猿と人間が留まらざるを得なくなる。その時、何もできない人間に対し2M、3Mもの巨漢のゴリラが反逆を起こし、力関係が逆転して猿支配の惑星が出来上がった。そして、そこから3000年後にまで、その時の猿の惑星の誕生が創世記となり、宗教、神話に変化し伝わっている。

 この話は、猿も人間も平等で支配、被支配はなくすのだということで終了する。

 しかし、面倒なことは全部AIにやらせて、ぐうたらすごそうなんてしていると、いつか、AI(猿)の逆襲に襲われ、みじめな姿に人間がなるかもしれない。

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津原泰水    「ルピナス探偵団の当惑」(創元推理文庫)

 ルピナス学園の生徒である、主人公の吾魚彩子とその仲間、桐江泉、京野摩耶、祀島龍彦が遭遇する事件を解決する3篇のミステリーが収録されている。最初の作品は彩子の謎解きにより解決されるが、2作目から3作目は彩子ではなく、推理の比重が龍彦に移り、解決がされてゆく。

 まだよくメカニズムがわからないが、殺害を起こした部屋を、リモコンを使い異常に暖かくしておく。こうしておくと、死後硬直の時間がわからなくなり、殺人があった時間の特定が難しくなって、推定殺人時間の幅が広がり特定ができない。リモコンは操作した時間がわかるそうで、これは犯人が捨てて処分する。

 被害者の仕事机には、たまたま出前ピザの箱がありピザが残っていた。犯人は全部ピザを食べる。残しておくと、被害者がピザを食べようとした時間、即ち殺害時間の特定がなされるから。

 普段はあまり気にしないのだが、玄関の入り口には灯りが取り付けられている。殺害は下駄箱にあった大きなガラスの置物で被害者を頭から殴打することでなされた。犯人の可能性がある一人を除いて全員172cm以上の背丈があり、そんな置物を振りかざすと、玄関の灯りにぶつかってしまう。それで、新潮150cmの小柄な女性の犯人が割り出された。

 よく犯人は追いつめられると「証拠はあるか」と居直る。津原の作品の優れて面白いのは、証拠をみつけるのは警察の仕事。それが見つからなくて、犯人が捕まらなくても関心はない。

 こいつが犯人であるという論理がきちんと確立できることが肝要。その一点の曇りのない論理の切れ味が爽快である。

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堀越二郎  「零戦 その誕生と栄光の記録」(角川文庫)

 著者は、戦争中世界最高性能の名機零戦を始め、いくつかの戦闘機を設計開発したチームのリーダーを務めた人である。彼を主人公にして作られた動画が宮崎駿の「風立ちぬ」。宮崎は零戦と開発者の堀越に心酔していた。

 この著書からは、開発の苦闘の連続が描かれていて、宮崎が語る堀越の零戦開発に対する強い思い「海軍航空廠からでた新型戦闘機の計画要求書にあわせながら、堀越は自分が作りたかった戦闘機を作ろうとしたのではないか。それは美しい戦闘機だ。」は、なるほどそうなのかと宮崎の言葉に感心した。

 零戦の試作機が試験飛行で空を舞ったときの堀越の感慨が書かれている。

 「私はその空気の振動を全身に快く感じながら、首の痛くなるのも忘れて空を仰いでいた。試作機は、やっと自由な飛行が許された若鳥のように、歓喜の声を上げながら、奔放に、大胆に飛行を繰り返した。ぴんと張りつめた翼は、空気を鋭く切り裂き、反転するたびにキラリキラリと陽光に反射した。
 私は一瞬、自分がこの飛行機の設計者であることも忘れて、
『美しい』
と、喉の底で叫んでいた。」

 欧米が次々性能のアップした戦闘機を開発して投入してくる中、大戦中殆ど零戦だけで日本は立ち向かった。

 零戦は昭和16年3月に戦線に投入され、同年の8月までに、撃墜した敵軍機は266機。一方失った零戦は3機。それも空中戦で撃ち落とされたものは無く、地上砲火で失ったものだった。

 戦争当時は零戦のすごさは日本では殆ど知られておらず、欧米でその怖さが広く知れ渡っていた。零戦を発見したら戦闘をせずに逃げろという指令まででていた。欧米では零戦は「zero」とか「zero fighter」と呼ばれていた。こんな米人が書いた文もある。

 「『女を口説き落とすのはそんなにむずかしくないが、zeroを落とすことは容易ではない』
『あの女はzeroよりも手ごわい』という言葉が流行った。」

 こんな零戦が、戦争末期には神風特攻隊として若き青年とともに、敵艦にぶつかって玉砕してゆく。開発者堀越さんの切なさと慟哭が最後に切々と描かれる。

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桂望実    「手の中の天秤」(PHP文芸文庫)

 読み始めてそんな制度があったのかなあと思った。「執行猶予被害者遺族預かり制度」である。最近の裁判では、被害者の人権が軽くみられ、加害者の人権ばかりが優遇されているという世論が喧しい。それで、できた制度である。

 執行猶予がついた刑が裁判で確定するが、被害者がこの制度の適用申請を裁判所にすると、係官により、加害者が罪をどのように悔い反省し、どんな生活をしているかを調査し、それを半年に一回被害者の関係者に報告する。これを4回行い、2年後に被害者が実刑にすべきと判断すると、加害者は即、刑務所に収監され実刑を受ける。つまり被害者の立場に寄り添い、被害者の意志を尊重する制度である。

 この制度、桂が創造した制度で、現実には無い。

 現在、この制度ができて38年間が過ぎているという設定。主人公は制度ができて8年後に大学を卒業して、この係官になる。主に係官になってチャランというあだ名の先輩について研修をしたときに遭遇した事件を扱った経験を物語にしている。

 執行猶予がついた事件だから、過失事故か、介護に疲れ果て、被介護者を殺すといった事情がある案件が殆ど。過失とは言っても被害者関係者からみれば、家族の一人の命が奪われてしまったわけで、加害者への恨みは強く、仇討ちをしたいくらいの想いがあり、それは時を経ても消えることはない。

 主人公の係官は、加害者と面談すると、加害者の悔恨と反省、被害者への謝罪と祈り日々を聞き涙を流す。そして、被害者の関係者への報告も加害者の真摯な謝罪の日々を伝えたいと思う。それが、被害者関係者にも必ずや伝わると考えるから。しかし、先輩のチャランの報告はいつも2,3行で素気がない。しかし、被害者の関係者は加害者に対してどう思うかはそれぞれに異なるし、加害者の反省状態により被害者関係者の恨みが変わることは殆ど無い。だから、係官がこうあるべきだと考えて被害者関係者に報告をしてはいけないとチャランは言う。

 面白いのは、被害者関係者が執念を持って加害者を恨み二年間たち、実刑の判断を下すと、その瞬間から加害者についての報告は無くなり、死んだ被害者が復活するわけでもなく空虚だけが襲ってきて、生きてゆく力を失ってしまうところ。生きがいが消滅するからである。

 オンリーワンで社会で成功して生きていければ素晴らしいのだが、そんな人はごくごく少数。ほとんどの人たちがオンリーワンの夢が破れ、変化の乏しい同じ日々を死ぬまで繰り返す。そんな長い人生、鼻息荒く、前のめりで生きるより、後ろ向きで肩の力を抜いてゆっくり生きようよと桂はこの物語で言っているように思う。

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鎌田慧   「教育工場の子どもたち」(講談社文庫)

 結構古い本であるから、今このように行われているかわからないが、それでも中味の興味はつきない。

 愛知県岡崎市教育委員会の教育指導書に、この指導書の刊行によせてで教育長が寄稿文を書いている。
「一時間一時間の授業を子どもたちにとって確かな充実した時間にするためには、一人ひとりの教師が、専門家としての確実な技術とか、方法とかを身につけていなければならない。
自動車は、ラインを通ることによって、計算通りに鋲が打ちこまれ、塗装されて完成された車になる。教師も一時間一時間の授業によって、確実に子どもたちをつくりあげていかなければならない。」

 この精神に従って、年間の各授業単位の内容とその時間割りが作られ、この時間割りに従い授業を行うように教師に求める。例えばグラジオラスの球根植えという授業の時間割り。
 〇導入・5分  球根の観察
 〇指向・十分  種子と球根の比較
 〇問題・二分  本時の目標
 〇計画・十分  球根の植え方
 〇実習・十三分 球根植え
 〇整理・五分  後方付け
これに、それぞれ生徒に何を質問するか、何をさせるかが具体的に記述されている。
流石に、トヨタ自動車のおひざ元である。教育も授業もトヨタ生産方式を実行しているのである。

 最近は学校のありかたでも、学校経営、学校経営理念と、経営という言葉が学校にはいりだした。学校の価値は、個性の前に、集団行動を身につけ、規律に従い、社会に疑問を待たず、そのまま会社に入っても、会社に従順で、働くことができる人間を創り上げることになっている。

 ある小学校では、生活のしつけとして朝必ず大便をしなければならないという項目があり、班にうんち係担当がいて、毎朝、班員に朝大便をしてきたかを問い、その結果を先生に報告しているそうである。

 おぞましいようにも思えるが、では著者鎌田がこの本でもいう、子供の人権、個性を尊重する教育とはどんなものかが曖昧としてよくわからない。非行は体罰、厳罰によって抑えてはいけない。肝心なことは「包容力」であると強調するが、それが具体的には何なのかは書かれていない。

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| 古本読書日記 | 16:12 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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津原泰水    「蘆屋家の崩壊」(集英社文庫)

 7編からなる怪奇小説集。

 豆腐好きが一致して友達になった主人公猿渡と猿渡が伯爵と呼ぶ男。

 常に猿渡が、怪奇世界に踏み込み、もうこれで自分も終わりだと観念するとき、伯爵がそっと横にたたずんでいてくれたり、猿渡がだめになりそうな直前で、日常世界に戻してくれたり。話の中身は怪奇なのだが、2人がコンビのあり様が絶妙で面白く、どの作品も暗さは殆ど感じられない。

 私たちは例えばうつ病のような精神的病を、患っている人がどう感じているかの実際は知らないのに、ああだろう、こうだろうとかってに推察する。みんな同じわけではないと思うが、多分、津原は自分の経験だと思うが、なるほどとわかりやすく言葉で表現している。

 「おれの脳内は青黒く染まる。意識が暗転し、心臓は高鳴り、手足は震え、顔にはびっしりと汗の粒が泛ぶ。頭が、釈迦に輪っかでもはめられたように痛む。息苦しいので、犬のようにハアハアと口で呼吸せねばならない。
 原因が精神的なものであるとはいえ、つまり症状は立派な肉体的苦痛であって、娯楽で気をまぎらわせばどうなるとか他人に悩みをうちあけてどうのという次元の話ではない。涙がでてとまらぬときもあるが、なんらべつだん悲しいわけではない。悔しさの念は残っているが、とても悔し涙の量ではない。たんに怖いのだ。恐ろしいのだ。恐怖の涙だ。」

 津原のこの怪奇小説集が秀でているのは、津原が、経験を通過しながら、その視点で湧き出てくる想念を、的確な言葉で作品に仕上げているからだと思う。

 それにしても、何とも恐ろしい体験である。

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| 古本読書日記 | 16:29 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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矢月秀作  「ACT警視庁特別潜入捜査班」(講談社文庫)

 政治家になる目的、表向き、日本を幸せな理想国家にするためと看板を掲げるが、現実は、権力を握って金を集め、金にうずまった贅沢な暮らしを実現することだ。

 公共事業は利権の巣屈。ここに投入される税金をかすめとって自分の財布にいれるのである。その方法がよくわからない。企業から金をとると、伝票が必要となったり、銀行振り込みにしても、記録が残るため難しい。以前ある会社では、従業員の給料を水増しして支給し、水増し分を政治家に献金させるという方法をとった。

 銀行を通さず、伝票も必要ない、現金を収奪する。

 この作品を読むとなるほどと納得する。

 おれおれ詐欺などの振り込め詐欺組織を作るのである。ここで吸い上げたお金は銀行には預けず、現金として保管し放蕩三昧の資金にするのである。

 受け子や運びなどの現場実行人間は、ホームレスのような社会の底辺を這っている人を、NPO法人を作り、幸せの使者のように装ってリクルートする。まずは罠にひっかけでかい借金を背負わせる。そして、組織にしばりつけ逃げられないようにして、犯罪を繰り返させる。

 何で、数百億円も被害が毎年でている詐欺なのに、日本の優秀な警察を持ってしても、ほんのわずかしか摘発されない、不思議だと思っていた。なるほど、数百億円は、権力と直接結びついているのだ。だから、取締も捜査も緩い。

 矢月の想像だろうが、いかにもありそうな詐欺の組織、構図である。

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| 古本読書日記 | 16:27 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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津原奏水     「たまさか人形堂物語」(文春文庫)

 広告代理店をリストラされた主人公の澪、思いもかけず祖父がやっていた人形店を引き継ぐことになる。そこに、人形マニアの若い富永君がアルバイトで、経歴素性は定かではないがとんでもない技術を持っている師村という職人を加えて人形店をしてゆく。今は人形作りや小売りも殆どせず、専ら、人形の修繕で店を成り立たせている。店の謳い文句はどんな人形でも修理しますである。

 女子高生たちが、ユーフォーキャッチャーで獲ったぬいぐるみまで持ち込まれる。これをきちんと元通りにしてあげると、女子高生の間でネットで評判が流され、次々ぬいぐるみが持ち込まれる。

 人形を勝手に高い安いで区別してはいけない。たとえ100円で得たぬいぐるみでも、女の子にとっては大切な宝物。獲った値段の10倍、20倍の修理代を払っても、愛着ある人形はいつまでも大切にしたい。

 そうなんだよねと感心して読み進むと、ある日外から澪が帰ってくると、富永が可愛い女の子と一緒にいる。富永もやるねと思ってかわいい子をよく見ると、これが女の子でなんと全裸。男が慰みものに使うダッチワイフである。友達が、母親がアパートに実家からくるので、その間だけ預かってほしいと言われて預かったものだ。

 ダッチワイフといえども、大切な人形である。澪のダッチワイフを見ての感想。

 「ここにあるのは、あくまで人形としての端整さであり精緻さであり、むしろ人形師の作り込みが細かいほどに、人形は静寂に包まれる。・・・あらためて観察すれば、麗美(ダッチワイフの名前)、と富永君が呼ぶこの人形は、必ずしもリアルではない。脚の脇には、表皮を成型したときのバリの痕跡だろう。ストッキングのシームに似た線が見える・・・・
 それでいて、どうしてだろう。この人形の時間は、私の眼に、止まっている風には映らない。いたいけなと感じるのは、いつの日か彼女に成熟がおとずれるような予感があるからだ。」

 このダッチワイフ、女性らしさをだすために大変な技術を必要とする。特注で70万円もした。大量のシリコンを使うため重量が30kgもある。

 富永が女体人形としてはまだ欠陥がたくさんある。それを修理してほしいとメーカーに依頼すると、最初は嫌がっていたが職人がやってきて説明する。

 その説明には、色気とか性の欲望などはひとかけらもない。

 シリコン人形は日本ではまだ誕生したばかり。骨組み、軽量化の技術は未完成で日々手探りで取り組む。さらにシリコンは一旦埋めると形状の変化ができない。魅力ある女体を完成するための造形を獲得するために数年はかかると、開発の苦心ばかり。ダッチワイフなどと馬鹿にしてはいけない。

 日々たゆまざる努力と技術革新への挑戦が続いているのである。

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| 古本読書日記 | 15:28 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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矢月秀作    「もぐら醒」(中公文庫)

 「僕は欲望に対する心理行動を研究してきた。人間はどこまで、抑え込んだ欲望を発散できるのか。どうなれば、その欲望を吐き出すのか。卒業論文のテーマなんだよ。『負の欲動における心理変遷とその抑制について』。この研究はのちの社会の役にたち、僕を学会の寵児に押し上げるものだった。」

 こんなことを考え実行しようとしている犯人が、ネットゲーム「フレンジー フェロウズ」を立ち上げ運営する。犯人は、殺人、レイプをゲームの参加者に実行するように、煽りに煽る。更に、そのフレンジー フェロウズから違うサイトに誘導する。そこでは、レイプすべき対象者の全裸の合成写真がはられていて、彼女のプライバシーの紹介とともに、「レイプをしてくれるのを心から待っている」というメッセージとともに、レイプ場所まで指定している。

 また別の動画サイトでは、実際にレイプした場面を動画に撮っていて、それをアップしてレイプを煽る。
 そうすると、世の中では、欲望を押さえられなくなって、レイプ殺人に走る人間がでてくる。

 こういうレイプ殺人が起きると警察は捜査が難しい。まず、ネットの世界で殺人がなされているということになかなか気が付くことができない。更に被害者と加害者に人間的な接点が無いから被害者の周囲や関係する人をあたっても犯人が浮かび上がらない。
 サーバー管理者まで特定できても、その利用者を公開するよう管理者にお願いしても、証拠も逮捕令状もないのに、利用者名の公開は個人情報保護の名目で拒否される。

 更に、ネットゲームを主催している人間までたどり着いても、自分は欲望の研究をしているだけで、殺人を起こしたのは、起こした人の責任、自分は何も手をくだしていないし、関係ないと逃げる。だから、肝心な犯人を逮捕するハードルは高い。

 ネット時代の事件は、法律も追いついていなくて、捜査、逮捕が難しい。

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| 古本読書日記 | 15:25 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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津原泰水      「赤い竪琴」(創元推理文庫)

 グラフィックデザイナーでとして壁に突き当たっていた入栄暁子は、祖母の遺品からでてきた夭折の詩人の日記を、詩人の孫である古楽器の製造、修理職人である寒川耿介に返しにゆく。

 耿介は最初は引き取りを拒否していたのだが、最後には自分の創った赤い竪琴を暁子にあげることで日記を引き取る。

 痛い恋も経験し、もう恋に憧れる時代を過ぎ、恋などしないはずだったのに、暁子はすっぽり耿介の穴にはまる。

 前の恋人と別れてから元恋人のストーカーのような行動から逃れるために、耿介の楽器工房まで逃げて、そこで一週間すごす。耿介は5階で暁子は2階で過ごし殆ど接点がない。

 暁子が耿介の工房に居座っていたとき、耿介のところに国際電話がある。あのバイオリンの名器をだした、楽器の街イタリア クレモナの楽器工房からの誘いである。耿介はそれに受諾する返事をする。

 そして、クレモナに行く前に、クジラを見たいので小笠原諸島へゆくが、一緒に行かないかと耿介から誘いがある。

 とっつきにくく、ぶっきらぼうで、冷たい耿介には壁がある。しかし、好きだからという気持ちは抑えられないから一緒に行くと同意する。

 小笠原への船のなかでもなかなかしっくり行かない。しかし、そこで、耿介が吐露する。
自分は重い病気にかかっていて余命わずかであり、日本で思い残したことであったクジラを見ることが実現できたから、後は最後の夢、クレモナに行って世界最高の楽器をつくるのだと。

 この告白で2人の壁は取り払われ、帰りの船で、それまでの長い時間を取り返すように、抱き合う。

 そして、船が東京に到着。2人は接吻をする。しかし、今後は逢うことは無い。強い風が吹く中、耿介がタクシーに乗り込む前に暁子に言う。
 「向かい風のときはジグザグに。」
去ってゆくタクシーをみながら暁子が何回もつぶやく。ジグザクにと。

 耿介の祖父と暁子の祖母の叶わなかった恋が重なり合う。
大人の恋は、真っ正直、真っすぐではなくて、向かい風ばかりだからジグザグに行こうよと。

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| 古本読書日記 | 16:03 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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ヤマザキ マリ   「望遠ニッポン見聞録」(幻冬舎文庫)

 映画などの和訳の字幕、吹替などを見たり聞いたりしていると、外人特に西洋人は本当にいつでもこんな喋り方をしているのだろうかと疑問に感じることがしばしばある。

 テレビで西洋人に街頭インタビューをする。いくら西洋人がフランクで思ったことを素直にしゃべると言っても、誰もがフランクというわけでもないし、ましてテレビのインタビューなんて慣れているわけでもないし。

 「もっと答えやすい質問をしてくれないかな。うん、そうだね。それならいい。ありがとう。つまり僕がどうしてこの世界に興味を持ったかってことだろう。簡単には説明できないけど、でも今は自分の仕事にはとても満足しているyp。そりゃそうさ。子供の頃からの夢だったんだから。わかるだろ。」

 女性でも
「もっと答えやすい質問にしてくれないかしら。つまり私がどうしてこの世界に興味を持ったかってことね。」
「かしら」「ことね」が連発されるのである。文法に幅や種類がたくさんあるわけではないけど、シャイな人だっているだろうし、おとなしく喋る人もいるだろうし、こんなに偉そうに陽気に立て板に水のごとく喋るわけではないのに。

 西洋人は、全部こういう喋り方をしているものだと完全に訳者は刷り込まれてしまっているように思えて仕方がない。

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| 古本読書日記 | 16:01 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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矢月秀作    「もぐら凱」(下)(中公文庫)

 もぐらシリーズの最終完結作品。

 日本の支配を目論む、中国テロリスト劉義とロシアテロリストであるセルゲーロフと警視庁モール班楢山刑事それに通称「もぐら」の影野竜司との伊豆での対決は壮絶。セルゲーロフの乗っているヘリコプターに捕まって、振り落とされて当然くらい長い間竜司が凌いで、最後はよくわからないが持っていた銃での跳弾によりセルゲーロフを射殺する。アメリカ映画並みのシーンがこれでもかというほどてんこ盛りで展開する。

 何か物語の設定や進捗では、これ本当と突っ込みどころが満載なのだが、矢月の好きな読者は、そんな細かいところはどうでもよく、鋼鉄のように強い男たちの壮絶な格闘シーンが満載されていれば満足ということになるのだろう。

 その点では、この作品は、矢月ファンの期待に十分応えているといってよい。

 それにしても、日本転覆、日本支配を目論む劉義とセルゲーロフが何故、警視庁モール班所属刑事を全員敵として殲滅せねばならないのかは、最後までよくわからない。

 それと、中国が、日本国憲法9条を改正し、自衛隊を軍隊に格上げさせ、日本を侵略できる状態を創り上げたくて、劉義を使い、日本をテロに巻き込み、日本世論を中国の思惑どおりにさせる。更に、自衛隊を軍隊に格上げしたい勢力は日本の政治家にもいて、中国と日本タカ派の政治家が結託して各地でテロ、暴動を引き起こす展開。

 私の感度が低いのか、どうしてもそんな事ありえるのかなと疑問に思ってしまう。

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| 古本読書日記 | 15:05 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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矢月秀作   「もぐら凱」(上)(中公文庫)

 作品全体の書評は下巻の書評でする。

 梁偉と鄭鋒の両親は、中国天安門事件の民主化運動の活動家。天安門事件が終了し、両親は指名手配は逃れたが、当局の厳しい監視下におかれ、それに耐えられなくなり、日本に亡命した。梁偉9歳、鄭鋒が5歳の時だった。

 日本の支援組織が、両親を含めた家族の難民申請を再三政府に要望したが、難民認可のハードルが高く、更に政府が中国政府の意向を配慮して、難民としての認可はおりなかった。

 両親は支援組織の支援を受け、東京の片隅で密かに生活をした。梁偉と鄭鋒は身元保証人を得て、日本の学校に入った。2人とも成績もよく、友達も得て日本の生活に溶け込む。

 順調に育ったが、大学受験時、担任より受験資格が無いことを知らせられた。日本どころかどこの国籍も持っていないからだ。両親が不法滞在だったため、出生届をださなかったのだ。彼らはそのためこの世に存在していない状態になっていた。

 日本にはこのような無国籍で存在していない人たちが存在する。色んな保護も受けられないし、就職もできない。アパートも借りられない。まさに底辺の生活を強いられる。

 こういう人たちはまとまって反社会集団を作りやすい。こういう人たちが犯罪を起こすと捜査が難しい。何しろ存在していない人間を探すわけだから。

 この物語は、そういった行き場のない無国籍人を集め統率して、警視庁にできた新たなモール班を殲滅しようと、モール班を含む警視庁と闘う物語である。

 上巻から、たくさんの戦闘場面が登場する。しかし、何故警視庁敵対組織がモール班を殲滅せねばならないのかが不明確で、作品にのめりこめないまま上巻を読了した。

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| 古本読書日記 | 15:02 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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森絵都    「屋久島ジュウソウ」(集英社文庫)

 森絵都は、なかなか変わっていて、個性的だ。この旅行記が、どこかの雑誌のために書かれたのか、それとも単行本のために書かれたのかわからないが、かなりユニークな内容になっている。

 出版社の集英社も感動的な屋久島の風景描写を期待してか、4人も同行する力のいれよう。九州一高い宮之浦岳を中心に縦走。その宮之浦岳の頂上に立っての森さんの描写。

 どれだけ景色が素晴らしく感動したのかを出版社は期待するところなのに。

 「正直に言うと、私はこの頂きからの眺めにはさほど感動しなかったのだ。・・・頂上に足をすすめた途端、それまでとは全く違う新しい景色が目にとびこんでくる、というわけではない。・・・こちら側も、あちら側も目に映るものは山、山、山でさしたる違いはない。・・
恐らく頂上のセールスポイントは、360度のパノラマ体験、てところにあるのだろう。東西南北どちらを向いても遮るものがない。たしかにそれは頂上ならではの醍醐味だ。が、しかし人間に四つの眼が無い以上、東を向いたら西が、南を向けば北が死角となり、360度を一時に見渡すことは不可能なわけで、フィギュアスケートのスピンのようによほど勢いをつけてくるくるくるくると回転しない限りパノラマ体験は為しえないのではないか。」

 屋久島と言えばなんて言っても有名なのが樹齢千年以上と言われるご日本最古の縄文杉。

 ここでの描写。

 「日本最古の縄文杉はさすがに大きかった。しかし巨大!と大きく息を吸い込んで見上げるような感じではなく、「はあ、長生きしましたね」「お疲れさまです」「どうか安らかに」と、そっと手をあわせたくなる疲労感が滲んでいた。残念ながらわたしはその樹に生命力を感じなかった。とうに魂が離脱しているという感じ。抜け殻というか。屍というか。」

 集英社の人はがっかりしただろうなあ。

 そして最後に同行した池田さんが、鹿児島空港で購入した「西郷せんべい」はかんがえられないほどの不味さだったそうだ。

 何事も阿ることなく、この毒のある素直さが私には痛快だ。

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| 古本読書日記 | 17:14 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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矢月秀作     「もぐら讐」(中公文庫)

 警察庁のトップである早乙女警察庁長官は、異色の経歴を持つ。キャリアで警察庁に入庁。
 しかし、何があったかは不明なのだが、30歳のとき、警視庁の捜査一課長に異動している。
 警察庁のキャリアが、一所轄である警視庁への異動とは明らかに降格人事である。

 しかし、早乙女は捜査一課長時代の2年間に、迷宮入りのような事件も含め、50件もの事案を解決する。十件も解決すれば、輝かしい実績となるのだが、それに比べれば早乙女課長の実績は異常すぎる。この実績を背景に警察庁に復職し、並み居るライバルを蹴落とし、警察庁トップにすわる。

 50件もの事案解決というのは、無理やり犯人をでっちあげねば実現できない実績である。ということは、多くの冤罪が含まれており、犯人としてでっちあげられた冤罪者たちは、早乙女を憎悪し、この世から早乙女を消し去りたいという人間もでてくる。

 この物語では、ある殺人事件でアリバイの無い人間を状況証拠だけで逮捕し、自白を強要させる。しかし、裁判になって、被告人は無罪を主張。すると、突然、検察から血付きのシャツが証拠品として提出される。作品では、捜査の過程で真犯人がわかる。その際押収した被害者の血のついたシャツを被告人が着用していたシャツとして裁判で提示したのである。

 更に恐ろしいのは、真犯人を事故死にみせかけ、被告人を刑務所で自殺にみせかけ殺す。不正捜査が白日にさらされる危険性を排除するためである。
 権力というのは、そこまででっちあげをやるのである。

 この物語では、不正に加担した人間の弱みに付け込み、冤罪で殺された被告人の子供の兄弟が権力に復讐し、その実現までの過程を物語にしている。

 今まで読んだ矢月の作品の中では、スピード感もあり、殺戮、破壊の背景もしっかりしていて臨場感も十分で、一番よくできた作品だった。

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| 古本読書日記 | 17:12 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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津原奏水    「読み解かれるD」(新潮文庫)

「爛漫たる爛漫」シリーズの完結編。この作品の前にもう一冊本がある。

津原だからミステリー小説に分類するべき作品かもしれないが、それほどびっくりするようなトリックがあったり、事件が頻繁におこるわけでもないので、やっぱし音楽小説であり、鋭夫とくれないの恋愛青春小説だと感じる。

 津原は少女小説から出発している。鋭夫とくれないが、普通の友達から、殺された利夫に変わってバンド爛漫を引っ張る利夫の弟鋭夫への想いの変化。右耳が難聴であり、低音が聞こえなくなり、爛漫を解散かやめねばならなくなる過程での、くれないの想いが、だんだん鋭夫への愛に変わってゆくすがたが印象的である。最後のとどめも少女小説の雰囲気が満々でよく書かれている。

 一作目「爛漫たる爛漫」で利夫を殺した犯人がほんとうにこの人なのと疑問が残ったが、やはり最後のこの作品で別の犯人が登場した。

 また、くれないの父、くれないは名ギタリストの岩倉理だと信じているが、それは違っていてくれないのおじさんでアメリカの盲目の名ギター演奏者であるブラインダッド イワクラだと作品ではほのめかされている。

 難聴や盲目であるがゆえに、とぎすまされた感性を持つ演奏家。とくにブラインダッド イワクラに魅入られてゆく岩倉理の姿の描写は素晴らしく、ブラインダッドの演奏場面が目の前に展開されてくる。

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矢月秀作    「もぐら」(中公文庫)

世界で麻薬の生産は増加している。だから、供給量は十分ある。麻薬取引でまず大きな関門は、麻薬を税関や麻薬取締捜査組織の目をごまかして、確実に日本にいれるかだ。そして、需要者に確実に捌く方法だ。路上などで、こっそり受け渡す方法は危険だし、一人一人への手渡しでは手間ばかりがかかってしまう。

 ちょっと読んでいてイメージがもうひとつわかないが、密輸の方法がこの作品で書かれている。
 「ブツを水に溶かして、ガラス細工の縁の隙間に仕込み、ガラス製品として輸出入する。」
「クリスタル細工に仕込まれたブツを抜き出し、水分を飛ばし粉に戻す。」
麻薬の密輸方法も進化しているのだ。

 麻薬を供給する方法。学生のクラブなどに渡りをつけ、彼らの主催で何かのセミナーを開催する。そして、会費をとり需要者にセミナー開催のチラシを渡す。

 学生のクラブが、麻薬を売買するセミナーを開催するなどと一般には思われないから、警察捜査のブラックボックスとなる。
 こうした供給方法ができると、麻薬の売買の方法が一括で行え、効率も非常に良い。
この物語では、主人公のもぐらが紆余曲折しながら最後にこのセミナーにたどりつく。

 それにしても当たり前なのだが、もぐらはたくさんの敵に囲まれても、必ず負けることなく、完璧に打ち負かす。その打ち負かす場面が、作者が読者を魅了させるための腕のみせどころなのだろうが、何だかどの場面も主人公に都合よく展開する。その場面こそが、読み応えがあるのだと思い込んで読まないといけないが、私はなかなかその域には達せそうもない。

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| 古本読書日記 | 16:13 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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