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2016年10月 | ARCHIVE-SELECT | 2016年12月

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津原泰水      「爛漫たる爛漫」(新潮文庫)

 人気ロックバンドのボーカルだった新度戸利夫がオーバードーズ(麻薬の一種?)を過度に飲まされ死んでしまった。そんな利夫の年子の弟鋭夫がいて、利夫と容姿もにているため、彼をボーカルにして利夫の追悼コンサートが行われた。ところがそのコンサートの最中に今度は鋭夫が弾いているギターで感電し、倒れ失神して、コンサートは中止されてしまう。

 このコンサートに来ていた音楽ライターが母の娘くれない、中学校の不登校児が、事件の真相を、鋭夫や、くれないが自分の父と信じているギタリストの岩倉などに導かれながら追う。

 ここからが、ロックに詳しくないと、取り残されてしまう状態に読者はなる。ロックバンドの機材には何があり、どんな機能を有するか。それから、ギターのチューニングにはいろんな方法があり、そのチューニング方法が真相解明の一助となる。また、どうもロックバンドと薬物はきってもきれない関係にあるようで、それぞれの薬物の用法がどうで、それは、どの程度服用すれば、生命の危険を及ぼすかなどの知識が無いと、なかなか物語の内容が把握できない。

 またロックを言葉で表現することに、津原はものすごい神経を注いでいるが、やっぱり読み手はロックが大好きでないと通じない。きっとロック好きにとっては面白くてたまらない小説なのだろう。

 事件の真相はもちろん明らかにされるが、半分ほどが明らかになっただけでもやもや感が残る。また岩倉がくれないの父なのかも明らかにされない。

 続編があるそうで、そちらも読んで欲しいということなのだろう。

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| 古本読書日記 | 16:52 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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矢月秀作     「もぐら戒」(中公文庫)

 新しい技術、産業が世界的に求められている。こんな時には、技術開発競争が企業、個人を巻き込んで戦争になる。そして、どの企業、個人に投資したら莫大な利益を稼ぎ出せるか、金満投資家が鵜の目鷹の目で必死に投資先を探している。

 現代で言えば、地球温暖化防止などの環境ビジネスがまさにそうした産業ビジネスである。

 こういうビジネスでは、動きが遅い大企業にいては、自分の能力は発揮できないと感じている人たちの多くが、外へ飛び出てベンチャー企業を立ち上げようとする。

 企業をたちあげるには、それなりの資金がいる。ここに目をつけるのが、投資家たち。この投資家が、悪意に満ちていたり、裏組織と繋がっていることが多い。

 投資家はベンチャー企業に資金と弁理士を伴って近付く。お金がのどから手がでるように欲しいから、開発者はその話にのる。弁理士は、開発者の新技術を開発者に先駆けて特許を別名義で申請し取得する。そして、この特許を転売して利益をあげる。

 ベンチャー企業が新技術を使った新製品を開発して売り出そうとすると、その技術特許は別の名義人が取得しており、逆にそこに特許料を支払わねばならなくなる。そうなると、企業はたちゆかなくなり、企業自体を特許を有している企業に転売して、裏世界仲介企業は更に金を儲ける。

 この作品を読むと、環境ビジネス分野では、こんなブラックビジネスが、国境を越えて毎日のように行われているのではと感じさせる。

 作品では環境ビジネス裏世界で、殺人や拉致が行われる。もぐらと言われている主人公竜司や配下のテツの活躍で、事件を操っている黒幕は誰かが明らかにされ、最後は東京を大混乱に陥れながら、黒幕組織との対決がなされる。

 黒幕は、寸でのところで逃げ切り、また次の戦いに臨むところで物語は終了する。

 黒組織が竜司の恋人とおぼしき沙由美に72時間を経過すれば自動的に爆発するという爆弾を取り付ける。ここから、爆弾爆発を阻止するところまでが、物語のクライマックスになるはずなのだが、この間がいかにも間延びして、全く72時間が効いていず、興奮も緊張感もわかなかったのが残念である。

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村山由佳     「永遠」(講談社文庫)

 幼馴染の弥生が、短大を卒業。東京のアパートを引き払って故郷へ帰ってくる。その故郷のよく待ち合わせに使った水族館で帰りの弥生を主人公の僕が待っている間、過去の思い出を辿っているところから物語は始まる。

 この物語のうーんとうなったところ。

 弥生の家は代々お水の系統の家。曾祖母は芸者。祖母も芸者だが、どこかの旦那の愛人となる。そして弥生の母、葉月は、スナックで働いている。その葉月が恋したのが真山悟。2人は結婚の約束をするが、真山が代々医者の家。お水の家柄の女性とは結婚はさせないと悟の母親の猛反対で結婚には至らない。葉月は、少し待ってはみたが、優柔不断で物事が決断できない悟との結婚はとても無理と思い、徐々に悟から手をひいて、別れる。

 しかし、そのとき葉月は身ごもっていた。それで誕生したのが弥生。

 葉月は、がんに侵され、余命幾ばくもないときに弥生に悟のことを始めて話す。

 弥生は怒り狂う。そして言う。
「お父さんのこと恨んでないの。」

 その次の葉月の言葉が印象的。
「どうして恨める?あなたを、わたしにくれた人なのに。」

 参った。こんなことを言える女性がいるものだろうか。この言葉は女性作家からしか発することはできない。

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藤沢周平     「静かな木」(新潮文庫)

 短編3編が収録されている。

 藤沢の作品は、藤沢の言いたいこと、クライマックスを印象付けるための仕掛けが実に見事にさしはさまれているところにある。それによって、読者は完全に藤沢ワールドの魅力を読後ずっとひきづる。

 最初の作品「岡安家の犬」。岡安家では一家全員犬が大好きである。今はアカという赤犬を飼っている。みんな犬は大好きには違いないのだが祖父の十左エ門だけは、大好きの質が他の家族とは違っている。十左エ門だけは、とにかく闘犬が大好き。どこかで犬の喧嘩があると常にその場所へ行って喧嘩をはやし立てる。

 岡安家の家主、甚之丞が仲間に誘われ犬肉鍋を食べに行く。その宴の最中誘った金之助が言う。
 「この鍋の犬肉はアカだ。」と。

 それを言われるまでは、おいしい肉だと思っていた甚之丞はその場で肉を吐き出す。そして、その場で金之助に果し合いを申し出る。その場は、仲間に諭され態度を保留するが、金之助には絶縁宣言をする。

 そして、翌日甚之丞は自分の想いを、十左エ門に吐く。すると十左エ門がぼそっと言う。
「アカは年寄だ。年寄は、屋敷で死のうが、野垂れ死にしようが、誰かにつかまって人の口腹を養おうが大した違いがあるわkじゃない。」

 ここで、藤沢は十左エ門とアカとのエピソードを入れる。
ある晩したたかに酒を飲み酔った十左エ門がアカを連れて家に帰るが、酔ってふらつき道がわからなくなりいつまでたっても家にたどり着かない。そして、家並みが切れたところにある小川に落っこちて気を失ってしまう。気が付くと、アカが着物の首元を銜えて、顔が水につからないよう引っ張りあげていた。

 十左エ門は今度は自分がアカを助けてあげようと思い抱っこをするが5.6歩あるくと足が前に進まなくなる。それで、アカをおんぶして家路につく。

 そんなエピソードをさしはさんだ直後に十左エ門が言う。
「どうだアカの肉はまずかったろう。」と。

 年老いたものはどんな死に方をしようとどうでもよいこと。そしてエピソード。最後の「肉はまずかったろう。」の3つが、実にうまく共鳴しあっていて、物語に滋味を与えている。

 鮮やかだと感服せざるを得ない。

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| 古本読書日記 | 15:49 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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辻原登     「翔べ麒麟」(下)(文春文庫)

 「天の原 ふりさけみれば春日なる 三笠の山にいでし月かも」

 阿倍仲麻呂が詠んだ有名な句は、この物語では、30数年ぶりに唐から日本へ帰国する船に仲麻呂は乗り込んだが、その船が暴風にあって難破し、今のベトナムに漂着するとき、帰ることが叶わない故郷日本を思って詠んだ歌とこの物語ではしている。

 この作品の肝は、その仲麻呂が密かに唐の都長安に潜入し、崩壊寸前の唐の国を陰で支えて、安禄山率いる敵対軍や、悪徳宰相楊国忠と彼を支えた袁木を蹴散らし、再び唐の国を再建させたところにある。

 その祭、この仲麻呂の命を受け、縦横無尽に活躍したのが、同じ遣唐使で唐にわたってきた若き藤原真幸。

 かの世界の中心と信じられていた偉大なる国唐の崩壊の危機を、漢人ではない、日本人が救ってあげたというロマンを辻原は創り上げたのである。史実は曲げることはできないが、中国史の大きなうねりの一部を日本人が作っていたという、中国人が読んだら顔をしかめるだろうが日本人にはわくわくする物語である。

 楊国忠がみずから組織していた、兵隊組織が反乱を起こし、楊国忠の命令に従わず、命令をだしている楊国忠の首を兵員が切り付けて楊国忠を殺す。これで、もう楊の時代は終わったと悟った楊貴妃が、側室の部屋で胸を刺し自害する。その血まみれの死体は、懸命に親族である楊国忠の首なしの顔を抱きしめている場面は思わず背筋がゾクっとした。

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| 古本読書日記 | 16:43 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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辻原登    「翔べ麒麟」(上)(角川文庫)

 作品の書評は下巻の書評でする。

 百人一首にもある阿倍仲麻呂の有名な句
 「天の原 ふりさけみれば春日なる 三笠の山にいでし月かも」
遣唐使の使命を終え、日本に帰国するとき、王維などとの送別会の時、日本語で詠んだ句とされる。

 しかし、この時仲麻呂の乗った帰国船は漂流し、仲麻呂は遭難して死んだことになっていたが、実は死んでおらず、今のヴェトナムに漂着。そのまままた中国の都長安に戻る。再度帰国を図ろうとしたが、唐朝はこれを認めなかった。

 仲麻呂は唐に残り、唐朝の官吏として出世し、外国人にはあるまじき、秘書監まで上り詰める。彼は唐では中国名で朝衛と名乗る。

 この物語は、遣唐使の一員であった仲麻呂が、唐の玄宗皇帝に信頼され、官僚組織をかけあがり、とうとう唐朝の生死を決定するまでに上り詰めたと想像を膨らまし、彼の唐朝での血みどろの暗躍、活躍を描く。

 一方、玄宗皇帝は、だんだん政治への意欲をなくし、仲麻呂が秘書監につくころは、楊貴妃に惑わされ、楊貴妃と色事を行うだけの状態であった。玄宗は楊貴妃に振り回され、楊一族を徴用するようになった。その中に、楊貴妃の又従妹である楊国忠がいた。楊国忠は、やくざで賭博師だったが、口が上手で玄宗皇帝に取り入り、最後は宰相にまでのしあがり、唐の政治をすべて取り仕切った。政敵はすべて殺し、私利私欲で固まったひどい悪政を行った。

 この楊国忠と闘うのが仲麻呂という構図で物語は進む。

 遣唐使の実態や、唐史が面白く学べて貴重な小説である。

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| 古本読書日記 | 16:41 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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二宮敦人    「文藝モンスター」(河出文庫)

 よくミステリーでは登場する物語。新進作家が、文学賞を獲り、その作品がベストセラーとなる。ところが、作品のアイデアや筋立ては、彼の裏に覆面作家が控えて創っている。覆面作家も小説家になって表舞台で活躍したいと思っている。新進作家は、最早自分だけでの執筆能力は無くなり、覆面作家の作品に自分の名をつけて本を世に送り出している。

 そして、ある時から、覆面作家は新進作家の小説を書くことを拒否するようになり、やがて自らの作品を文学賞に応募しようとする。

 新進作家は、すべての作品が覆面作家の創作であることがばれると、世間からはじかれ、生きてゆくことさえ困難になる。だから、覆面作家を殺すことを企てる。

 作者二宮は何か特別な意図があるのかしらないが、殺人を起こす新進作家の名前を朝倉リョウタとしている。ちょっと今直木賞をとり波に乗っている作家を彷彿とさせる。

 それにしても、殺した作家の殺人時間をごまかすために、吹き出た血を全部体からとりだし、代わりにホルムアルデヒトとメチルアルコール、および赤色の着色料をポンプにより押し込み、赤くなった元気そうな顔のまま、上半身だけをパソコンの前に置き、執筆をしているかのように目撃者に錯覚させる仕掛け。大げさで現実的ではないように思った。

 ところで、本というのは、映画や音楽と違い、自らが手にとって開いて読まないと味わえない。その読み方や速度も自由だし、繰り返して読むことや、前に戻ることも自由。読書は受け身ではなく能動的活動である。

 ということは、過激な帯などに魅かれて、購入はするが、後で読もうとして本棚に仕舞われる本も存在することを意味する。購入して読まれることの無い本が、世の中にはたくさんあるそうだ。皆さんは購入した本は必ず読んでますか?

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大槻ケンヂ   「グミ チョコレート パイン パイン編」(角川文庫)

 この作品には、しばしば映画「卒業」が登場する。

 青春はとにかく振幅が激しい。有頂天になって、これ以上の幸せはあり得ないと思っていたすぐあとにドカンと底に落とされる。もう死んでもかまわないと思う。

 「卒業」。結婚式での彼女の略奪。その瞬間は、もうヒーローになった気持ちだ。しかし、次の瞬間とりかえしのつかないことをしてしまった。もう、これからお先真っ暗と底に打ち落とされてしまう。

 17歳の主人公大橋賢三も底へ打ち落とされる。青春はうちのめされたら、どういうわけか寂れた映画館のオールナイトショウに行きたくなる。そして、同じ俳優が登場しているポルノ映画を何本も、落ちこぼれた人たちと一緒に観る。そして、俺は何をやっているんだろうと更に落ち込み、夜明けの街へと歩を進める。

 そうすると、早朝から営業しているファッションヘルスにぶつかる。呼び込みのお兄ちゃんに腕をとられ、店に引き入られる。店の名前が「ふぞろいの淫娘たち」。

 最高に愛している人と、ロマンティックな状況で、初めて憧れの女性と体験するはずだったのに、大橋君の初体験は、憧れの女の子には程遠いおばさまにリードされ実現する。

 普通物語はこれでもっと落ち込むはずなのに、大橋君には待っているバンド仲間がいた。
今、心をまっさらにして、バンド仲間の初ライブの会場に向かい走りだす。

 よかったね。大橋君。青春を駆け抜ける友達がいて。

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警察アンソロジー   「所轄」(ハルキ文庫)

  覚せい剤取締法違反で旅館従業員の室田が逮捕されていた。スナック経営者の武宮美貴の室田が覚せい剤を所持しているという目撃情報により、逮捕状が請求され、その逮捕状をもとに、室田の部屋を捜索したところ、注射器と覚せい剤0.2gが発見され、室田は現行犯逮捕されたのである。

 一週間後にこの事件の公判が開かれる。この調書を読んでいた公判担当検事の佐方は美貴の目撃情報に違和感を覚えた。
 美貴の目撃情報は、美貴が学校に息子を迎えに行く途中で、路肩に止まっている室田の車を発見。その車を覗くと、室田が覚せい剤を注射しようとしていたということだった。この目撃をした日が5月24日(月)。実はその前日の23日に小学校では運動会があり、決まりで運動会の翌日は振替休日であった。つまり、美貴は息子を迎えに行く必要はなかった。

 更に美貴が室田を見たという15時には、室田はまだ旅館で仕事をしていた。

 完全に嘘の情報である。

 証言に偽りがあった場合、その証言に基づいて取得した家宅捜査令状には法律違反の疑義が生じる。そうなると逮捕そのものが、法律違反となり、無効になる。

 そして、この逮捕は、結果無効となり室田は無罪で釈放されると物語ではなっている。

 全く不思議だ。情報は虚偽で、捜索令状は法律違反かもしれないが、現実は室田の部屋で覚せい剤は発見されているのだから、室田は完全に法律違反者で逮捕されるべきだと思う。
 その事実を前にしても、室田が無罪放免されるとは。こんなこと本当にありなのだろうか。

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大槻ケンチ゛   「新興宗教オモイデ教」(角川文庫)

 三島由紀夫や村上春樹は、我々一般人が暮らしている世界とは違う世界で暮らす。そして時々一般人の世界をみて、奇妙な変わった世界だと彼らは思う。彼らの世界は一般からみたら全く別世界だから、彼らは自分の住む世界をそのまま書けばいい。それが、私たちには想像できない世界なのだから。

 大槻の場合はどうなのだろうか。

 ゾンというバンドで共演している男を描写する。

 ゾンは火のついた芋虫、永遠に脱皮できぬ地獄苦を見せつける一匹の芋虫となって、ステージ上をのたうち、叫び、時には自分のシャツをひきちぎり、全裸になって、総立ちの客席に向かって飛び込んでゆくのだ。客を殴り、そして殴られ、鮮血で顔面の半分を真っ赤に染めながらも、ゾンは美しかった。・・・

 ボクはゾンを仲間やと、考えとったけど、そんなレヴェルやない。もっと尊いお方や。そう思うと鼻の奥がツンとなり、涙が溢れてくるのだった。

 これで、ステージ演奏が終わると何もなかったように寡黙でおとなしいゾンになる。

 大槻は、こちらの世界にいて、ゾンを奇異にみているのだろうか。もっとふっきれて、ゾンの住む世界に飛び込み、その世界から私たちの世界に向かって、エッセイも音楽も発信しているのか。ゾンのパフォーマンスは大槻の住む世界では普通なことなのか、この物語ではよくわからなかった。でも、俺は違うぜ、狂ってみせるぜという意気込みは伝わってきた。

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三島由紀夫    「美しい星」(新潮文庫)

 書店で新装版になってこの本が平積みされていた。どうして今頃再販されるのだろうか。三島にはもっと有名な作品があるのに。驚いたことに、この作品が来年公開で映画化されるのだそうだ。それに合わせて、新装版になり書店で売られているということがわかった。

 この作品、表面的にはSF小説の形態をとっているが、実際の本では、絶対これが宇宙人であるという確信的な人が登場するわけでなく、むしろ、宇宙からみたら、地球全体はどのように見え、人類、地球はどうあるべきかを論じた、哲学的小説である。

 また、この小説が書かれた昭和37年は、東西冷戦のなか、アメリカ、ソ連が核開発競争にしのぎを削り、頻繁に核実験が行われ、放射能が拡散し、規制値の何倍もの放射能が、世界各地で計測された。今の方が核の恐怖は高まってしるかもしれないが、当時の方が圧倒的に核の恐ろしさが世界に蔓延していた。

 それまでの戦争は、戦争する場所に多くの武器を持ち込んで戦う局地戦だった。しかし今の戦争は、ボタン一つ押せば、核爆弾を同時に世界中へばらまいて爆発させ、世界全体を破滅させるように変わった。狂った人が最強権力者となり、ボタンを押せば、世界の人々が等しく、一斉にこの世から滅亡する時代になった。

 この物語の主題は、火星からやってきた(と信じている)大杉重一郎と太陽系の星からやってきたとされる彼の家族たちと、白鳥座61番星からやってきた羽黒助教授をはじめとした3人とが今後の人類、地球をどうすべきかという論争にある。

 どちらの考えにも、37年当時流行っていて、三島もその影響を受けているアナーキー、虚無が貫く。

 羽黒助教授は人間は不完全で気まぐれで危険な存在だから、地球を守るために、水爆により一気に滅亡させるべきと主張する。一方、重一郎は不完全で気まぐれだから人間は美しいとして、人間は守られるべきとして和平を希求する。

 両者の論争は平行線をたどり結論はでない。しかし、どうころんでも人間は滅亡する運命にあり、そうならば、今この瞬間に安楽死したほうがよいという羽黒助教授の考えが三島の考えなのではないかとこの作品からは感じられる。

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大槻ケンヂ    「オーケンののほほん日記ソリッド」(新潮文庫)

 大槻ケンヂの本を集中して読んできた。正直、何が面白いのか殆どわからなかった。とにかく、すべての事柄への反応が突き抜けている。UFO,格闘技、空手、プラモデル、凝りだしたら際限なく突入する。

 テレビのバラエティ番組にも最近はとんと見かけないが、90年代は引っ張りだこのごとく頻繁に登場し騒いでいる。ステージでも、パフォーマンスは音楽よりすごく、やりたい放題。一般には殆ど関心がないのだが、一握りの超熱狂集団を引き入れ、周りは知らなくてもいい、内輪だけで異常に盛り上がり、それで昇天できれば満足。それから、自分たちの集団は何をやっても許されるという思いが強烈。

 「オーケンの紅白歌合戦」というのを開催して、同じ系統のバンドを集めてライブをする。

 出演ミュージシャンの一人がどさくさに紛れて、他のミュージシャンの彼女にいきなり無理やりディープキスをする。そのままもの隠れに隠れ、自分の出番のときになってもついに舞台には現れなかった。

 日経連のPR紙に投稿を依頼される。アントニオ猪木について書きおくる。

 「ブラジルには金玉を人に蹴らせて平気のやつがいるんですが、あれは脳内にベーターエンドルフィンを分泌させる特訓をしているんです。」

 すると、日経連の雑誌を編集している女性から手紙がくる。
「寄稿文に『金玉』という表現があります。猪木さんのお人柄を表している表現とは存じますが、何分、企業PR雑誌ですので、『急所』と表現を変えさせていただきました。ご了解のほどお願いします。」

 大槻、この反応に極端に感動する。そして、次はもっと女性編集者を困らせてやろうと「ふぐり」と書いてやろう。どういう変換をするかなとほくそえむ。

 こんな厚顔無恥の大槻と私の間にはとてつもない高い壁がある。

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垣根涼介    「迷子の王様」(新潮文庫)

 過労死が社会問題化している。100時間、150時間の残業が当たり前の企業がある。そんなに必要な仕事があるのだろうか。本当に人手を増やせば、残業は無くなるのだろうか。

 今は、仕事の形態が大きく変わってきた。事務を中心とした人手がいる仕事は、殆どはコンピュータが行うようになった。わずかに残る人手がいる作業は、外部の会社に委託したり、事務専門の子会社を作り、本体から切り離しコストを抑えようと会社はするようになった。

 すると、会社で中心な仕事は、企画、業務や工程の改革、顧客にも、単なる物品を販売するのではなく、ソリューションとかプロセス改革を提案して付随して物品を販売するように変わった。

 変革の創造、提案とその訴求力が会社の最も重要な業務となった。

 変革の創造、訴求力のある提案なんてことは、努力だけではできるものではない。すると、仕事は、価値ある提案を追い求めて際限がなくなる。どこまでやったら、満足できる仕事になるのかわからなくなる。勢い上司も、鋭い提案がしょっちゅう上がってくるわけではないから、どこまで体を酷使して頑張っているかが、部下の評価につながる。

 だから、際限のない労働が巷にあふれる。

 そして合わせて、こんな世界を生き抜くための必須条件として、自分の想い考えを臆面もなく発言できる人、プレゼンが上手な人間だけが評価される。気おくれして、物の言えない、引っ込み思案なひとは捨てられてしまう。

 引っ込み思案な人は本と似ている。本は帯などによって自分を表現をしているが、全くといっていいくらい自分のことを主張できない。とにかく、お客に手にとってもらい、購入し読んでもらわないとその価値を主張できない。最も現代社会から取り残された商品である。

 しかし、読んで手にした価値観が、読者の人生を大きく揺さぶることがある。そして、そういった本は、大切な人生の伴侶となる。20代で、40代で、60代で、繰り返し読まれる。そして、その年代で、違った色合いで読者の心に侵入してくる。

 この作品の香織。引っ込み思案で、他人とうまく会話ができない。それで、読書が人生の支えとなっている。書店に勤めて、個性は存在するだけある無口な本たちと人びとと繋げてあげ、本読む楽しさを伝えたいと頑張る香織に心より拍手をしたい。

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岸本葉子    「やっと居場所がみつかった」(文春文庫)

 自治会の公会堂ができて25年になる。建てた当初、年寄は和式便所がいいだろうと思い、便所4つのうち3つを和式、1つを洋式にした。今は年配の人も和式を嫌い洋式になった。子供の集まりで公会堂を使うと、子供がトイレに行きたがらず我慢するので、病気にでもならないかと心配になる。

 当然我々の小さいころは洋式トイレなどなかった。すべて和式でそれも汲み取り便所。

 トイレの入り口にはスリッパが置かれている。小さい足に大きなスリッパ。便器の向きが入ったドアと同じ方向であれば問題ないのだが、たいがいは横向き。便器にまたがるとき、片方の足は便器を横断させねばならない。この時、大きすぎるスリッパがぶらぶらして足からはずれ、便器の中に落ちてしまう。汲み取り式だから、落ちたら拾うことはできない。それで、失敗はしてはいけないと慎重に片方の足、便器を横断させる。すると今度はスリッパが金隠しにふれ、またまた足を外れて、便器の中に落ちてしまう。また叱られると衝撃を受けると、パンツを脱ぐ前に、おしっこをしてしまう。こんな失敗談を岸本さんが披露している。

 中国に行くと、歩道に並べてあるベンチが、通りのほうではなく、家の壁のほうを向いている。見ていると、そこにカップルが座って、接吻などをする。中国では背中の後ろには壁があると思われている気がする。今は殆ど都会ではみなくなったが、公衆トイレは昔は仕切りがなく、溝に並んで用を足した。つまり、相手の背中、お尻をみながら用を足すのである。そんな時、中国の人は背中に仕切りがあるのだと思ったのは、手前の人が用を足した後でも、同じ格好で文庫本を読んでいたからだ。

 女性の人は、自分の用を足している音を聞かれたくないので、そのときには同時に水を流して、用足しの音を消すそうだ。これだと、2回、3回と水を無駄に流すため、東京のある公衆トイレは、押すと水が流れ出る音がするボタンがついているそうだ。本当なの?

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村田沙耶香    「タダイマトビラ」(新潮文庫)

 家庭的香りが何一つない家に育った主人公恵奈は、自分の部屋のカーテンにニナオと名前をつけ、ニナオに包まれ自慰行為にふけりながら思う。このニナオにある扉をあければ、そこには本当の恋や本当の家族がある。その扉を開けて本当の世界に行きたいと。

 で、高校生の今、恵奈は3つの家を行き来している。

 一つは、何のために一緒に暮らすのかわからない我が家。それから、恋人である大学生浩平のアパート。浩平からは、結婚しようとせがまれている。それから、大きな一軒家で一人暮らしをしている渚さんの家。渚さんは家の一階をオープンハウスにして色んな人たちに開放している。ただし、渚さんは人の声が嫌い。だから、絶対会話をしてはいけないことがオープンハウスで過ごす条件。

 渚さんの家では、アリスというアリを飼っている。渚さんはアリスは18歳だという。恵奈の生まれる前から生きているということか。そんなことはない。アリは数か月で死んでしまう。すぐに死んだときのアリスに似ているアリを探してきてまたアリスと名付けて飼う。

 アリスは次々その生を受け継がれて永遠に生きる。
そのアリスを見ながら、自分の無価値な家族生活、意味なく悩み苦しむ恋愛。本当の家族、恋愛など無いのではないかと思う。
 家族やそれにつながる恋愛など、脳が後から創り上げた幻影にすぎないと確信する。
それは脳が作り上げたシステムに過ぎない。

 カーテン、ニナオの扉の向こうにあるのはそんなシステムができる前のアリスの世界がある。ニナオのカーテンの扉を恵奈は渡る。アリスと同じになった恵奈は、次の生まれてくる恵奈に生を引き継ぎ、永遠にアリスという人間世界を生きるようになる。

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大槻ケンヂ   「ロコ!思うままに」(角川文庫)

 短編集。

 主人公は妻と幼子桃太を亡くしてしまっている。世の中に絶望して、死ぬことでしか楽になることはないと思って、家をでて街を歩いている。

 死のうと思って歩いていると、ゲームセンターから「助けて、ここから出して」という声が聞こえた。UFOキャッチャーの中の赤子と同じくらいの大きさの黄色い子熊のぬいぐるみと目があった。こいつがさけんでいるのだ。主人公は、こいつを助け出さなくてはと強く思った。だからUFOキャッチャーに挑戦した。しかし、何度挑戦してもうまくいかない。もう1万円以上使っている。

 「あきらめるな。」とぬいぐるみが主人公をみつめる。そこで、思いをこめて挑戦する。
今度こそいけると思ったらキャッチャーのアームからするりと落ちる。頭へきて機械をくりかえし叩く。
 とうとう、見かねた、やくざ風の店長が機械を開けて、持ってきなと渡してくれた。

 マンションにギュっと抱きしめて連れてかえり、桃次郎と名付けて、一緒に寝る。
この桃次郎が喋る。「パパさん。死んじゃだめだよ。」と。

 そして、翌朝天気のいい日だ。桃次郎がねだる。
「鎌倉に連れてってよ」と。主人公は逡巡する。「みんなに狂っていると思われるよ。」「だからいいんだよ。あの二人狂っていると思われるから、誰も寄り付かない。二人だけでのんびりできるじゃない。」

 それで、主人公は了解して、2人で外へでる。街の人は、主人公が気が違って、腹話術をやっていると思い、誰もが2人を避けて道をあけてくれる。モーゼの十戒のようである。

 北鎌倉で電車を降りる。たくさんの人がいる。みんな気味悪がって近付いてこないが、一人の美しい老婆がやってきて、桃次郎の頭をやさしくなでる。「名前は?桃次郎。可愛い名前ね。私にもテディベアがいるの。美香っていうの。ちゃんと私とおしゃべりするのよ。」と。

 大仏やいろんなところを回り、やがて夕方2人は海辺にくる。すると、桃次郎が言う。
「パパさんとお別れしなくちゃならないの。」

 実は、桃次郎は海綿宇宙生命体で、自分の星が破壊し、宇宙で新しく住む星を探していた。
タイのぬいぐるみ工場で、桃次郎のぬいぐるみの綿となって住み付き、日本に送られ、あのゲームセンターに入れられていた。

 誰か優しい人に地球を去る前に出合いたいと念じていたら、主人公に出合い、なんとしても、この人に拾われたいと機械の中で思っていた。幸せな一日だった。

 夕焼けの江の島の海にお椀のような物体が空に浮かんでいる。そこに、幾つかの綿の生命体が集まってくる。すると機械からアームがでてきて、綿を掴んでお椀にひろいあげる。
 なかなか、桃次郎を掬えなかったが、何とか掬ってお椀にいれてあげる。

 小さい女の子は、たくさんのぬいぐるみに埋もれて暮らす。そして、いつも抱きながら話をしている。あれは、一人芝居でも、独り言でもない。私たちには聞こえないが、ちゃんとぬいぐるみとお話をしているのだ。

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| 古本読書日記 | 16:13 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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誉田哲也    「歌舞伎町セブン」(中公文庫)

 新宿歌舞伎町の鬼玉神社で、一丁目町内会長高山が死体で発見される。高山はその直前まで「歌舞伎町リヴァイヴ」という再開発委員会に出席していた。警察、監察医の検死の結果突発性心不全による死亡と断定された。高山は61歳。それまで特に心臓が悪いということもなかった。

 その5年前にも小川という区長が、突発性心不全で亡くなっている。この2つの死因が状況から考えるに、自然死とは思われず、誰かに殺されたのではという不審がある。しかし、外傷が何もなく、心臓を止める殺害方法などあるのだろうか。

 その方法が最後に三田静江の殺害で明らかにされる。

 目を塞ぎ、鼻を塞ぎ、少し上を向かせる。息が苦しくなったのか、それとも単に怖かったのか、ふわりと、静江の口が開く。
 その瞬間を逃さず、針先を喉の奥に送り込む。舌の根の辺りからは上向き、脊椎と頭蓋骨の間に生ずるわずかな隙間を狙って、直接脳幹に突き刺す。すぐさま先端で、半径二ミリの円を描く。

 脳幹は、生命維持を担う中枢神経系器官の集合体だ。口から刺し込んだ針先で脳幹を確実に破壊し、相手を即死に至らしめる。

 静江の瞳から命の光が消え、ゆるく瞼が下りてくる。
 力の抜けた体を片腕で支えながら、ゆっくり、真っすぐ針を引き抜く。先端が鋭く、かつなめらかなので、真っすぐ引き抜きさえすれば傷口は殆ど残らない。

 ものすごく高度な技術が必要だろうが、こんな殺しの方法が可能なのだろうか。

 新聞の死亡記事で「心不全」と書かれていたら、すこし疑ったほうがいいのだろうか。

 この作品は、殺害方法に現実感があるかに成否がかかっている作品。惜しむらくは、殺害方法をそのまま描くのではなく、名刑事か探偵が、推理してあててみせて欲しかった。

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| 古本読書日記 | 15:49 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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岸本葉子   「幸せな朝寝坊」(文春文庫)

 今では考えられないのだが、私が会社に入社した40年以上前では、女性は4年制大学に行くと就職が難しい時代だった。だから、高卒、短大卒の人が多かった。

 入社試験でも、女性だけ集められた。そして、面接官が真っ先に聞くことが
 「結婚しても仕事は続けますか。」だった。会社にはいることが社会にでることとイコールの時代だった。

 岸本さんは、学生をおりて保険会社に就職した。学生最後、みんなは海外へと卒業旅行にでかけたが、自分はお金がなく、ずっとアパートにいて、就職奮闘記を書いていた。それを会社に入って一年目で、朝日新聞にもちこみ、3年後に本となって出版された。

 すると、会社のあちこちから、声がかけられるようになった。だいたいは、中年になろうとしている男性だった。
 「読んだよ。」ここからが、会社員である男の独特な言い回しになる。
 「僕も書くという方面についてはまんざら関心のないほうでもないから、君にとってよけいなことかもしれないが、あえて言わせてもらうとね、はっきり言って、ああいうのは本ではない。それともああいうのこそ本になる時代なのかねえ。・・・・・僕にも、書こうと思ったことはあった。学生の頃だけどね。
 僕の気持ちは会社からとうに離れてしまっている。・・・もっと違った人生があったと思う。」

 そして延々と学生の頃書こうとした物語を喋る。

 こういった自称元文学青年で会社とは距離をおいているのか、会社が距離をおいているのかわからない人がたくさん近寄ってきたのだ。

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| 古本読書日記 | 15:47 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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誉田哲也    「ハング」(中公文庫)

 作品の最初は、警視庁捜査一課堀田班の面々が、海水浴に行き、ちょっとした恋の描写があったりして、堀田班の楽しく絆の強さが描写される。ところが、宝飾店オーナー殺人事件の被疑者が、一転公判で、自白を強要されたと犯行を否認する。しかも、その強要させたという堀田班の一人が自殺する。そして、それを前後に、堀田班が解散させられ、全員がバラバラに異動させられる。

 ここから、物語は一気に前半の明るさから、これ以上ないくらいの暗いトーンに変わる。そして、次々、事件関係者が自殺をする。最後には、殺される人間もでて、殆ど関係者で残っている人は、堀田と主人公の津原だけとなる。

 誉田の作品に一貫して流れているのが、警察機構で最も最優先されることは、警察機構で権力を持った人の権力の増大と安定した天下り先をいかに維持拡大させるか、そして出来上がった機構、天下り先は絶対守ることであること。天下り組織を拡大してつくることだということ。天下り組織費用は税金で賄われるわけだから、税金の分捕り額を拡大させることを意味する。

 この行動理念、組織に矛盾を起こすような事件は、絶対まともな操作をしない。まともに捜査をしようとする刑事や警察官は、アウトローの力を使ってでも排除する。

 それにしても、この作品に登場する吊るし屋を稼業にしている人というのは驚いた。吊るし屋というのは、人殺しを自殺にみせかける造作を専門にする人。

 首吊り自殺の中にはかなりこの吊るし屋の仕業であるものが含まれていると誉田は書いている。

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| 古本読書日記 | 16:08 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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大槻ケンヂ   「大槻ケンヂのお蔵出し」(角川文庫)

 ハードボイルド作家の北方謙三は、雑誌の人生相談で、死にたくなったら、小説を50冊読めと言った。その中に太宰治を2冊いれろ。しかし、連続して読んではいけないと。

 それにならって大槻、50冊とは言わないが、この3作品を読めという。
沢木耕太郎の「深夜特急」。これはわかる。次に濱田成夫の「自由になれ」これは知らないからわからない。そして最後が何とも理解できないが、遠藤誠の「帝銀事件と平沢貞通氏」。

 遠藤誠は山口組の弁護士をしたり、オウム真理教の麻原からの弁護依頼を断ったり少し強面の弁護士。なぜにこの本が、死にたくなったら読まねばならない本なのか。

 帝銀事件の死刑囚である平沢について、冤罪、無罪だという本は多い。この本もその類の本だが遠藤がすごいのは事件の犯人を特定して名前まで公開していることだ。犯人は731部隊に戦争中所属していた諏訪中佐だと。私も読んでどきっとした覚えがあるが、死にたくなったら読まねばならない本とはとても思えない。

 バレンタインデーの由来になっている聖人バレンタインは3人いるのだそうだ。その中で最も有名なのが15世紀末アルザス地方に建てられたてんかん患者用の病院でてんかん病を治療することで名を成したバレンタイン氏からとられたいう説。バレンタインはてんかん患者の守護天使となった。病名も当時は彼の名前をとって「聖バレンタイン病」と呼ばれていた。

 現在のバレンタインデーのあり様からは想像がつかない由来である。

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| 古本読書日記 | 16:06 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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誉田哲也     「国境事変」(中公文庫)

北朝鮮はどうして国が成り立ち、何でお金を稼いでいるのだろうか。もちろん、国民が全員いなくなっても、自分だけが繁栄できればいいという独裁者が治めているから国が存立しているとも言える。

 私たちは、北朝鮮の表側の情報だけで孤立していて、誰も味方にならず、とんでもなく貧しい国という概念のなかで暮らしている。しかし、北朝鮮と外交関係を樹立している国は世界で161か国ある。
 大使館を置いている国も46か国にのぼる。

世界は複雑で、私たちはアメリカや安倍政権の価値観を通しての情報で北朝鮮をみているが、その反対側の世界も大きく、深く存在している。北朝鮮を信望し、頼っている国々も多々あることを知らねばならない。

 その多くの国は、北朝鮮の武器を大量に購入する。世界の武器生産高は185兆円なのである。

 北朝鮮が核開発をしてその成果をパフォーマンスしているのは、もちろんアメリカ、日本、韓国への威嚇のためもあるだろうが、北朝鮮支援国への武器開発の宣伝をしているのである。

 核爆弾というのも、破壊力がおおきすぎると使用できない。この作品では使える核爆弾としてミニニュークという広島原爆の三分の一の威力の爆弾が主人公として登場する。なるほど、世界ではこういう武器を開発して拡散しているのかと納得した。

 この物語は、ミニニュークの存在を基底にしながら、公安という組織が、人の命より、国体の維持ということを主眼にして活動していることを知る。そして、それにそむかないのなら、人殺しを含め犯罪を見逃すことを平気でする組織だということも知る。しかも、

日本の警察権力を握っているのがこの公安人脈。公安は時に他の犯罪捜査組織に、この事件は追うなと命令もすることがある実態を教えてくれる。

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大槻ケンヂ   「大槻ケンヂが語る江戸川乱歩」(角川文庫)

乱歩の傑作「屋根裏の散歩者」の冒頭。

「郷田三郎は、どんな遊びも、どんな職業も、何をやってみても、いっこうこの世がおもしろくないのでした。・・・・・かれにできそうな職業は、片っ端からやってみたのです。けれどこれこそ一生をささげるに足りると思うようなものには、まだ一つもでくわさないのです。・・・・親元から月々いくらかの仕送りを受けることのできるかれは、職業を離れても別に生活は困らないのです。」

 郷田三郎は25歳。この世は面白くないし、疎外されていて、いつも死にたい、死にたいと言っているのに、死にきれず、ひきこもりのような生活を送っているダメな人間。こんな男が、社会で存在感をみせつけるには、犯罪をしでかすしかないと考える。

 乱歩も作家になる前は、おびただしい数の職業を転々とする。飽きっぽくて、人嫌いと乱歩も自分自身を語っている。
 そして、乱歩が描く犯罪者の殆どは、社会に適応できすはじきだされた人間である。

私たちは少年少女のころは仮想世界を現実世界と混同して育つ。憧れや恋人対象は、漫画やヤングアダルト小説の中に存在する。しかし、思春期から青春にかけ、それは、現実の人間へと対象が変化するのが一般的。

 ところが、中には変化せず、そのまま大人になる人がいる。しかも最近は結構多い。
こういう人は、社会とのかかわり、他人とのかかわりが上手くできなくて、社会の外に放り出されたままになる。

 乱歩は、放置された人々の、異様さ、暗さを根底にした作品を生み出す。多くの人々は少年時代に乱歩を読み、耽溺するが、大人へ脱却すると無関心になる。しかし、放置された人たちは、乱歩の世界を引きずり大人の世界を徘徊する。

 大槻も、バンドマンとして一世を風靡したが、まだ乱歩と同期して人生を歩んでいる。

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誉田哲也     「月光」(徳間文庫)

 恋というのははずみで発生するものなのかもしれないが、学校の音楽教師が、名前くらいしか印象がないのに、音楽室で弾いているピアノを聞いただけで、感動して、そのまま、その生徒と抱き合う。生徒も懸命に先生を受け入れようとする。しかも、同じ行為を同じ場所で繰り返す。

 学校なんて、無数の目が光っていて、ばれない場所などない。こんなことを学校でしていたら誰かに見られるのではと思い、普通は場所を変えると思うのだが。

 そして、案の定、男の生徒2人にみつかり、それを写真に撮られ、女の子が脅される。そして女の子は脅迫に屈して、男たちにも凌辱され続けられる。

 このことが、最後、女の子の死亡事故や凌辱をしていた男の子の一人の殺人につながる。

 最初のとっかかりにあまり納得感が無かったこと。しかも、女の子を音楽教室で抱き合っていた不倫教師が、学校でも噂になっているし、凌辱していた男の子が殺害する現場にもいたのに、何の社会的制裁も受けず、変わらず学校の教師を続けられるというのが、どうにも受け入れがたく、後味がよくない作品となった。

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| 古本読書日記 | 15:54 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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岸本葉子   「ぼんやり生きてはもったいない」(中公文庫)

 充実した人生を送るための指南エッセイ。

 旅館というのは、日常のわずらわしさから解放され、一人をぼんやりと味わうところ。だから、静かをまず基調としてほしい。

 良い旅館というのは、例えば廊下に沿って休む部分があり、そこに椅子が、互いが気にならない距離をとって、大きな窓に向かって配置されている。窓の外の豊かな自然、風景をながめながらボーっとしてもよいし、ちょっとした読書をしてもよい。

 サロンも、一人を大事にして、机や椅子が配置されている、そんな旅館が岸本さんは最も行ってみたい旅館だという。

 哲学者であるアランは「幸福の秘訣のひとつは自分自身の不機嫌に無関心でいること」と言う。森田療法で有名な森田正篤は「感情の法則」を説く。

 感情は、それに注意を集中すればするほど強くなるが、自然のままにしておけば、ひと上がりした後、下り、やがてはおさまる。とらわれたり、無理に打ち消そうとしたりせず、今日は今日なすべきことを、こなしていればいい。

 あるべき旅館の姿といい、森田正篤の言葉といい、そうだよなと心より思う。

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誉田哲也   「ガール・ミーツ・ガール」(光文社文庫)

 前作の「疾風ガール」は、殆どバンドシーンが無かったが、この作品は結構音楽を描きだしている。
いよいよ主人公の柏木夏美が、CMソング歌いとそのCMそのものに出演するというメジャーデビューを果たすことになる。ところが、自分の音楽に拘る個性派夏美と周囲がなかなかかみあわず、混乱するが、名ドラマーのゴンタが加わることで、夏美の思っている演奏ができ、順調にCMはスタートする。

 こんなとき、映画監督と大女優の間にできた娘で、六本木の豪華マンションに一人で暮らす売れっ子シンガーの島崎ルイと夏美のコラボの企画が持ち上がる。

 夏美は、母が死に、父は、事業に失敗して失踪し行方不明。だから養女となり、貧乏で孤独な青春を送ってきている。一方、ルイはお金持ちの何不自由なく育ったお嬢さん。

 当然、これは大きな軋轢が生ずるな。また、それらしい雰囲気も書かれているのだが、夏美の父親の借金も返さねばという前提のもと、夏美が個性を押さえて、2人は協力して企画実行にまい進する。

 この企画のキーボード奏者に、ガクという引退してしまった幻のピアニストを引き込むために、夏美とルイがガクの経営している楽器店に時給250円のアルバイトになり勤めだす。

 売れっ子シンガーでセレブの生活を謳歌しているルイが、アルバイトなどするだろうか、とちょっと疑問符がつく。

 さらに、借金を抱えて困り果てていた父親が、デイトレードで4日間で1千万円かせぎだし、借金生活から脱却し、底辺生活から抜け出す。

 ここも、何となく安直で現実感が乏しい。中味があまりなく、薄い作品だと感じた。

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大槻ケンヂ    「オーケンののほほん日記」(新潮文庫)

 この日記が書かれた1990年代というのは、パチンコ全盛期。パチンコ人口は3千万人にもなり、売り上げは30兆円に達した。今は急激にさびれ、パチンコ人口は970万人、売り上げも16兆円に減った。減ったと言っても16兆円とは大きい産業ではある。

 3000万人ということは、猫も杓子もパチンコにはまった。作者大槻も27歳のときに始めて、ビギナーズラックに恵まれ完全にはまったようだ。

 大槻はパチンコがでるでないは「パチンコ神」が決めていると主張する。だから、真剣に「パチンコ神」に祈り、ご機嫌伺いをしなければならないと言う。

 しかし、中には、あれは店が入ってくるお客をみて、誰にだすかを決め、遠隔操作でコントロールしているということをまことしやかに言う。だから、入り口付近に取り付けてある監視カメラに向かって深くお辞儀してから台に向かうという人もいる。

 90年代は日本が全盛で、アメリカを凌ぐのではないかと言われた時代。アメリカとの貿易摩擦が極大に達していたころ。だから、アメリカは日本たたきに必死だった。

 そんなとき、パチンコについてでた説が、アメリカ陰謀説。すべてのパチンコの出玉はアメリカ ペンタゴンがコントロールして、日本国家、日本人をだめにするようにしているという説。

 中には、機械に不具合が生じて、台をはずす時、白の配線を指さし、これがアメリカ ペンタゴンにつながっているケーブルだと言う人も登場した。

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誉田哲也    「黒い羽」(光文社文庫)

 誉田の初期の作品ということだ。まだ、小説家としての力量が未完成状態での作品に思える。
右肩にある黒い疵を持つ主人公の典子。どんな治療をしても、全く治らない。主治医の野本の勧めにより、遺伝子治療を試みようと、北軽井沢にある研究施設に向かう。

 実は、疵は、典子ばかりでなく、姉にも父にもあり、そのことが悲劇の原点になった。

 この研究施設に体中疵だらけで、背中が盛り上がり全身真っ黒な患者の永田がいた。その姿はゴキブリそのもの。その永田が言う。

 ゴキブリは全く姿が変化せず、3億年生存している。それに対しホモサピエンスの誕生は2百万年前、人間に至っては2万年前。この地球上で一番強く生存能力のあるのはゴキブリ。
 だから、人間もだんだん進化してゆくと、ゴキブリに近くなってゆく。

 そして、我々が黒い疵があるのは、病気ではなく、人間が進化した形態になってきた結果だと。人間だって、最初に登場したときは、まわりから比べて異常な形にみえ、迫害されたのではないか。今、自分たちもそんな状況にいる。

 何かおかしいとは思うが、変な説得力がある。

 私たちも時を経ながら、ゴキブリのような形に変化してゆくのか。

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大槻ケンヂ   「ゴシック&ロリータ幻想劇場」(角川文庫)

 ファンタジー掌編集。

 マーヤは移動式サーカス団に売られてきた。一方トーイは農場に売られてきた。トーイは苦力が連日続くなか、パン三つと干しブドウしか与えられていなかった。

 マーヤは真っ暗闇の穴のなかにいた。そして、穴の蓋が明けられた。穴の先に丸い青空が見えた。マーヤはいつもと違い、目いっぱい空気圧をあげた。

 団長が「発射」と大きな声で叫ぶ。マーヤが空気圧を最高にあげていたので、ものすごい爆発音があがり、マーヤは穴から空にむかってとびたった。

 そのときトーイは、干し草を積んでいた。毎年移動式サーカスはこの時期やってきた。その都度、少女が爆発音とともに空へ飛び出す。トーイはここまで飛んできたらいいのにと思っていたが、必ずサーカスの広場の端っこに落ちてしまう。

 ところが、今日は端っこを超えて、飛んでくる。そして、何と干し草の上に落ちてくる。
落ちたマーヤにトーイが「大丈夫?怪我はしてない?」と。「大丈夫」とマーヤ。
「どうして今日はこんなに遠くまで飛んできたの?」「空気圧を目いっぱい高くしたの。だっていつもあなたがここまで飛んできてほしいと願っていたし、私もあなたのところまで飛びたかったから。」

 二人は抱き合いそして手を握りながら「二人でどこかへ行こう」と走り出しました。

 団長が2人を捕まえようと追いかける。寸でのところで捕まえそうになると、手を握り合った2人は空へ舞い上がる。

 強く、熱い恋は奇跡を起こすのだ。

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誉田哲也    「感染遊戯」(光文社文庫)

 「僕は知ってしまったのだ。人は、特に恨みを抱いた人間は、ある種の情報を引き金に、殺害を決意する可能性があるということを、むろん百パーセントではない、むしろ可能性としては低いほうだ。ただ、情報はばらまくことができる。劣化することなく蔓延することができる。
 そう、まるでウィルスのように。
僕は殺意を蔓延させる方法を、思いついてしまったんだ。」

 この作品のアンマスクなるサイトを管理する辻内眞人の言葉だ。

 「この国は欺瞞と偽善に満ちている。」

 それを、実行し支配しているのが政府官僚組織。改革だとか官僚支配からの脱却だとか声高に叫ばれるときがしばしばあるが、この組織が破綻したり崩落したことはなかった。
 だから、ネットを使い、官僚組織と闘う。これはまさにテロである。
そして、拡散された悪の情報に揺さぶられた人間が、悪をこらしめるため殺害を実施する。

 製薬会社に天下りをばらまき、薬害エイズを放置して多くの国民を殺した厚生省。
 女性職員を性的対象とみなして恥じない外務省
 国民に還元すべき700億円の厚生年金を支払わず、自らの不正を正当化するように法律を書き換えてしまった厚生省と社保庁。
 裏金を作り、天下りを押し付け、パチンコ利権、駐車場利権を貪る警察

 それにしても大変な時代になった。ネットを使い、自分は手を下さず、人殺しを実現する時代が来たのだ。

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岸本葉子    「女の旅じたく」(角川文庫)

 別に空き巣がはいるわけでもないのに、何かの本に触発されて、パスポートをとても空き巣でも気が付かないようところにしまう。普段は使用することがないので、他でもよくあるのだが、いざ使わねばならないとき、どこにしまったのかすっかり忘れてしまうことがしばしばある。

 空き巣でも気が付かないような場所だから、肝心な当人にも特殊すぎて全く思いつかない。

 ある会社員が明日海外出張という日に暗い顔をして会社にやってくる。そして上司に謝る。
 「すみません。パスポートをなくしました。」
上司が𠮟りつける。
 「ばかやろう。もう会社はいいから、家に帰って徹底的に探しなさい。」と。
社員は家に帰る。夕方、その社員から電話がある。
 「パスポートみつかりました。」と。
 「よかったじゃないか。もう会社はいいから、今日は早く寝て、明日飛行場に遅れないように行きなさい」
 「それが大変なんです。全然寝る場所がないんです。」

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| 古本読書日記 | 16:28 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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