誉田哲也 「インビジブル レイン」(光文社文庫)
そして9年後、その小林が殺される。そして警察にタレコミがある。犯人は柳井健斗であり、動機は姉殺しの復讐だと。
するとキャリアである長岡警視監は幹部を集めて、タレコミは無視して、捜査線上に柳井が浮かんでも、捜査はしてはならないと。もし、9年前の事件の犯人が小林だと判明すると、自分のみならず、当時の捜査幹部は事件捜査の責任を取らさられざるを得ず、結果警察組織は瓦解してしまう。小林充殺人事件はそれに警察組織の崩壊と引き換えるにはあまりにも小さい事件だからと。
物語は、この命令を裏切って、孤軍奮闘をする主人公女性刑事主任の玲子が活躍する。
誉田が、この作品で訴えたかったことを長岡警視監に向かって和田捜査一課長が言う。
「・・部長は、私らデカが、年間、何足の靴を履きつぶすか、ご存じですか。私らが行く場所はね、あんたらが歩きピカピカなタイルや、掃除の行き届いた絨毯の上とは違うんですよ。
アスファルトの地べた、小便や反吐で汚れた裏通り、沼のようにぬかるんだ土砂降りの空き地・・・私らデカはね、この身が汚れることなんざ、痛くも痒くもないんです。本当に痛いのはー胸を指でさしてーここですよ。
事件を解決できなくて、誰の役にも、何の役にもたてなくて、遺族に申し訳ない・・・
そう歯ぎしりする夜が、一番、ここが痛むんですよ。・・・・
いっとき泥をかぶるくらい、私ら屁とも思いません。私の首が捜査の枷になるのなら、どうぞ・・・いつでもさしあげます。」
少し青臭いが、本当にこうであってほしいと思う。
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| 古本読書日記 | 15:57 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑