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2016年09月 | ARCHIVE-SELECT | 2016年11月

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誉田哲也     「インビジブル レイン」(光文社文庫)

 9年前、柳井健斗の姉智恵が殺される。犯人として智恵と肉体関係を継続していた父親が浮かび上がる。しかし、健斗、真犯人は智恵と恋人関係にあった小林充であることを知る。警察は父親を容疑者として徹底的に締め上げたが、犯行を自供しない。そして、最後父親は警察官の銃を奪い、警察署の出口で自分のこめかみを射ち自殺する。警察は被疑者死亡として捜査を終了する。

 そして9年後、その小林が殺される。そして警察にタレコミがある。犯人は柳井健斗であり、動機は姉殺しの復讐だと。

 するとキャリアである長岡警視監は幹部を集めて、タレコミは無視して、捜査線上に柳井が浮かんでも、捜査はしてはならないと。もし、9年前の事件の犯人が小林だと判明すると、自分のみならず、当時の捜査幹部は事件捜査の責任を取らさられざるを得ず、結果警察組織は瓦解してしまう。小林充殺人事件はそれに警察組織の崩壊と引き換えるにはあまりにも小さい事件だからと。

 物語は、この命令を裏切って、孤軍奮闘をする主人公女性刑事主任の玲子が活躍する。

 誉田が、この作品で訴えたかったことを長岡警視監に向かって和田捜査一課長が言う。

 「・・部長は、私らデカが、年間、何足の靴を履きつぶすか、ご存じですか。私らが行く場所はね、あんたらが歩きピカピカなタイルや、掃除の行き届いた絨毯の上とは違うんですよ。
アスファルトの地べた、小便や反吐で汚れた裏通り、沼のようにぬかるんだ土砂降りの空き地・・・私らデカはね、この身が汚れることなんざ、痛くも痒くもないんです。本当に痛いのはー胸を指でさしてーここですよ。
 事件を解決できなくて、誰の役にも、何の役にもたてなくて、遺族に申し訳ない・・・
そう歯ぎしりする夜が、一番、ここが痛むんですよ。・・・・
 いっとき泥をかぶるくらい、私ら屁とも思いません。私の首が捜査の枷になるのなら、どうぞ・・・いつでもさしあげます。」

 少し青臭いが、本当にこうであってほしいと思う。

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| 古本読書日記 | 15:57 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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大槻ケンチ゛   「のほほんだけじゃダメかしら?」(集英社文庫)

 この作品のあとがきで大槻が書いているが、ロックバンドマンは決して女や金にきたない人ばかりではないと。お金はともかく、バンドをやる動機は、女の子と次から次へHをしたい以外にはないように思われる。

 この作品、ちょっと調子に乗りすぎ。何と大槻が、追っかけギャルの何人かと、対談をしている。
 それで、随所で、どうしてバンドマンとパックンしたいの。終わってどんな感じがしたのとか、帰って友達にどんな報告したのとか、どうにもスター目線で馬鹿なことを聞いている。

 もう、勝手にやってくれという気持ちになってしまう。

 大槻の友人にSMクラブで、Sの女王をしている女の子がいる。
 最近は、すべてのプレイが終わって、背広に着替えた後、「最後にもう一度顔をひっぱたいて」とお願いする男が多いそうだ。

 アントニオ猪木の講演会のとき、学生が猪木を殴らせてほしいと声をあげてお願いした。
猪木が了解して、学生は壇上にあがり、猪木の腹にむかって拳を突き刺そうとした。猪木の防衛本能が作動して、突き刺す寸前に、顔面を強烈にひっぱたかれた。その学生は吹っ飛んだ。

 ところが、その時、俺もひっぱたいてくれと舞台前に行列ができたそうだ。

 家で父親も、学校で教師も、生徒を殴ることはなくなり、優しくなった。しかし、男は、自分が悪いことをしたときは、殴ってほしいと思っているから、こんな変な現象が起きるのかもしれない。

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| 古本読書日記 | 15:55 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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誉田哲也     「春を嫌いになった理由」(光文社文庫)

 テレビ番組で最近はあまり見られないが、以前、霊能者、透視能力者が(たいてい海外からやってきたが)出演して、失踪者を探し当てたり、犯人らしき人を絞り込むという番組がよくあった。

 この作品も、そんな番組を扱っている。だいたい、こういう類の番組は、事前に調査をしておき、失踪者の遺留品(本物ではないのだが)をどこかの山の中においておき、透視者がそこにとんでもないひきつける磁力があるようなことを言って、その遺留品を発見したという筋を辿る。

 つまり、番組放送前に、すべて筋書き、脚本ができており、それに従って番組が進められる。

 そんな裏側ができていることを、この作品でも描きだしている。

 この作品の面白いところは、ポルトガルからやってきたという霊能力者のエステラと、エステラが通訳として何人かの候補者から選んだ主人公の瑞希が、実は本当に透視能力があるというところ。しかも、瑞希はその透視能力により、小学校時代、うそつきを言われはぶせにされたトラウマがあり、霊能、透視能力というものを極端に嫌っていて、そんな人がこの世に存在するということを全く信じていないこと。

 エステラは瑞希に折に触れていう。
「目に映っているものは、あるがままに受け入れなさい。」と。エステラは瑞希が霊能力者であることを知っていたのだ。

 そして、新宿でエステラが透視で発見した白骨死体事件を解決したのは、この番組中、刑事の腰巾着と思われた影の薄い男の活躍によるものだった。その腰巾着は実はすでに死んでいた人だった。しかし霊能者の瑞希にはその姿が見えていた。

 この作品を読んでから街を歩くと、街で見かける人が、あのひとは生きている人か、それとも幽霊なのかと変なことを思うようになってしまった。

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| 古本読書日記 | 16:47 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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大槻ケンヂ   「猫を背負って町を出ろ!」(角川文庫)

 大槻は驚くことに20歳まで女性とは縁がなかったそうだ。ロックバンドを組んだのは、新たなる音楽表現や芸術を創造したいというのは全くなく、ただ女性と交わりたいという欲望からだけ。そして、バンドのおかげで思いは実現したそうだ。

 盛岡だか仙台でのライブハウスでのライブ。会場が変わっていて、お客の間を縫っていかないとトイレに行けない構造。女の子の客というのは、一人ではやってこない。大抵複数。

 その中の一人だけをゲットせねばならない。複数ついてきたらお楽しみにならない。

 そのライブハウスで、客の間を縫ってトイレにゆく。目指した女の子以外は右手で握手をする。そして、その女の子のところへ到達する。左手で初めて握手をする。そこには紙が握られていて、宿泊ホテルや部屋番号が書いてある。

 これで今日も楽しめるとほくそえんでいたら、紙を渡した女の子が突然大声をあげる。

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「キャー、見て私こんなものをもらっちゃった。ねえ見て、私大槻くんにさそわれちゃったあ。キャハハ。『他の子にいわないでね』だって!!。ヤダ、ホテルの番号まで。ヤラシー!!
イヤラシー!!。」

| 古本読書日記 | 16:45 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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あわわわわ!

遅刻してしまったーーー!
大事な大事な我が家のお姫さま(?)のはなこ
よりによって10周年のうちの子記念日 の次の日デス今日\(^o^)/

10年ひと昔というけど 10年なんてあっちゅーまですわな

甘えん坊なはなこ
お散歩大好きはなこ
でも朝は寝坊助はなこ
食いしん坊なはなこ
抜け毛がハンパないはなこ
ソファーでおしっこもらすはなこ
お口がちょっとクサイはなこ
全部全部大好きだよ はなこ
ずっと一緒にね!

IMG_1294.jpg

| 日記 | 20:45 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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伊集院静    「なぎさホテル」(小学館文庫)

 伊集院が、最初の結婚が破綻して、養育費や慰謝料をたくさん取られ、無一文状態になり、もうこのままでは生きていけない、故郷へ帰ろうとして、東京駅から電車に乗る。故郷につく前に、海の見えるところを歩きたいと思い、葉山で電車をおりバスに乗ってたどり着いたのが、クラシックホテルとして有名だった小さなホテル「逗子なぎさホテル」。

 伊集院は、このホテルの支配人の暖かい人のおかげで、宿代も催促されず、何と7年間をこのホテルで過ごす。

 このホテルに逗留を始めて、支配人をはじめ、個性的な従業員に支えられ、鎌倉などの飲み屋、漁師、古書店店主など、徐々に交際範囲を拡げ、伊集院の人柄もあるだろうが、彼らに愛され、小説家になっていき、美人薄明なる女優夏目雅子と結婚し、「なぎさホテル」を去るまでを物語にして描く。

 たぶん、伊集院はここでのモラトリウム期間の僥倖が無ければ、もっと厳しい暮らしと社会にもまれて作家にはなれなかったと思う。非常に幸運に恵まれた作家だ。

 伊集院はこの作品で、小説家としての彼のありようを書いている。

 「今でもそうなのだが、私は自分の小説を一から新生していくことはできない。作品の基軸に、どこかに真実から生じているものがなくては書きすすめることはできないし、そのことは己の創作能力の欠如を証明していることかもしれないが、私には作家の頭の中で考えることより、世間で日々おこっていることの方が遥かに人間的だと思えるからだろう。」

 さりとて伊集院が、決まりきった場所にとどまり、会社生活をしているような状態では、いい作品はできない。伊集院の魅力は、常に競輪場を徘徊し、麻雀にあけくれ、とても一般人にはできない、放浪の旅を続け、そこから受ける旅の哀歓を軸に、小説を紡ぐところにある。そこで出会う真実を深堀し、更に拡大して、これからも小説を創作していってほしい。

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| 古本読書日記 | 13:58 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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北杜夫    「ぼくのおじさん」(新潮文庫)

 40年前、当時の上司から呼ばれて「クレーム処理で、悪いけどヨーロッパに出張してくれ。」と言われた。何をとんでもないこと。海外など行ったこともないし、言葉もできない。飛行機も国内で過去一回だけ乗った経験しかない。

 それで、クレームを起こした技術者に電話したら、何回も海外に行ったことがある。何と当時は日本から行くことが困難だった東欧チェコにも行ったことがあるという。え、何だ、海外慣れているじゃん。じゃあついていけばいいだけか。海外など一生かかってもいけないかもしれないと助平根性を起こし、ヨーロッパ出張を了解した。

 当時会社では、海外に出張する人はわずか。何しろ「海外出張を命ず」という辞令がでるし、送別会まで開いてくれた。

 技術者の人は、威張って、海外に行く心得を延々と出張前に語ってくれた。飛行機に乗って、ビールや食事がお金がいらないことを知って本当にびっくりした。驚くたびに技術者から「馬鹿。恥さらし。」と叱られた。

 フランス入国の際、イミグレーションで捕まった。イミグレーションカードを書いていなかった。ここで係官にどなられ技術者はびびりあがった。私はそばにおいてあった入国カードを記入して、さっさと入国。技術者も私のまねをして審査に向かったが、当人がビビってしまっていたことと、最初の行動が不信に思われ、別室に連れていかれた。40分もかかって、青ざめやせほそった感じで別室よりでてくる。

 あれほど、海外など自分の庭のように威張っていたのに、それからは、ホテルのチェックイン、食事。私にズボンを掴み、どこにも行かないでと金魚のふんのごとくずっとついてくる。

 スウェーデンのイミグレーションでは、私が呼ばれても、一緒にくっついてくる。係官に離れろと注意され、しぶしぶ次の番のところまで下がる。私が通って、技術者が何か係官に聞かれている。

 技術者は何を聞かれても、大きな声で私を指さし「SAME,SAME」と叫んでいた。

 この作品のおじさんのハワイ旅行を読んで、私の初めての海外出張を思い出した。

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| 古本読書日記 | 13:56 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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真梨幸子   「ふたり狂い」(幻冬舎文庫)

 どうしてこう失敗ばかりするのだろうか。本のタイトルを本屋で見て一瞬これは読んだことがあるとは思ったのだが、新刊コーナーに置いてあるし、初版出版日も2016年10月10日になっているから、私の勘違いと思い購入して家で開いてみたら、やっぱし既読作品だった。
 以前読んだときは出版社がハヤカワ文庫だったが、今度は幻冬舎文庫。こういうことはしないでほしい。これで、ここ一週間で、4冊目だ。しかたなく再読する。

 こんなところにずっといてはならない。早く本社に戻って、企画や広告の仕事をしなければ。主人公はデパ地下で、総菜を作って販売している。その会社は北海道屋といって総菜全国チェーンの大手。毎日、工場から送られてくる冷凍総菜をマニュアルに従って解凍、簡単調理をして店頭販売している。何人かの派遣アルバイトのおばさんを使いながら、何も創造的なところがない仕事をこなしている日々。

 そんなとき隣のメンチコロッケ屋のコロッケから指が混入していたというクレームが客からある。早速、デパートでは総菜コーナーの営業を停止。調査をする。このお客というのが有名なクレーマー。しかも12時半にコロッケを買ってテラスで食べていたのに、実際のクレームは13時30分。指がはいっていたという大変な事態なのにクレームが一時間後。

 これはおかしいということで、結局自作自演ということで落ち着く。

 しかし、主人公の店である北海道屋もそれから客足は落ち、主人公は、こっそり本社の販売部長より、ここのデパートの出店を閉じて、主人公を本社に戻すことを告げられる。

 主人公は明るくなる。どんな背景であろうがいよいよ本社に戻れる。喜びがあとからあとから浮かび上がる。

 そんなある日。自分が指に着けていた絆創膏が剝がれていることに気が付く。もし、絆創膏が総菜に混ざっていたら。ものすごい恐怖に襲われる。そんな時、主人公指名でお客のある爺さんからクレームがくる。自分の大失敗だ、本社に戻るどころか、会社を首になることまちがいない。もう人生の終わりだ。老人が紙に包んだ総菜を見せようとする。そのとき極まった主人公は、おじいさんを刺して殺す。

 その死体を処理しているとき、店ではアルバイトのおばさんたちが話している。
「あなたのエプロンになにか付いているよ。」「あらこれ店長がやっていた絆創膏。」で、はがしてゴミ箱にポイ。

 ちょっとコミカルなホラー。

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貫井徳郎   「ミハスの落日」(創元推理文庫)

 あーあ、またやってしまった。先月の発売新刊文庫。なんとなく手にとるときに読んだことがあるような気がしたのだが、まさか新刊にそんなことはないだろうと思って購入して家に帰って確認したら、数年前新潮文庫で出版されていて既読だった。悔しいので再読。

 オルガスはスペインで薬品メーカーを起こし大富豪となっていたが、60歳を過ぎて独身だった。

 オルガスがある日ミハスという町の大邸宅に主人公ジュアンを招く。そこでオルガスとジュアンの母であるアリーザの物語をオルガスから聞いた。

 アリーザとオルガスは幼馴染で仲良く、小さいころはいつも二人で遊んでいた。そのとき優しいおじさんパコに出合う。パコは2人にお菓子をしょっちゅうくれた。2人も懐く。

 ある日パコはオルガスだけに、自分の住まいにくるよう告げる。そしてオルガスがゆくと、何とパコは殺されていた。パコは事故死として処理されていたが、オルガスは真実を知っていると20数年たってジュアンを呼んで真相を語りだす。

 実はパコは幼い子のポルノ写真撮影に狂っていた。小さい子供は、たいがい男の子のほうがふっくらして可愛くて、女の子のほうより魅力がある。

 アリーザは、パコの性癖を知っていた。そしてオルガスが一人で呼ばれたことを知り、危険を察知する。それで、オルガスに被害が及ばないよう、オルガスの前にパコの住まいに行き、パコをアリーザは殺してしまったのだ。

 それが、ずっとオルガスの心にこびりついて、オルガスは独身を貫くことになった。

 切れ味があり、心に迫る短編である。

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松尾由美    「雨の日のきみに恋をして」(双葉文庫)

 本屋に行って、新刊文庫の場所にこの本を見つけて、久しぶりの好きな松尾さんの作品だと思って、すぐ手にとって買ってきた。松尾さんと言えば人気作家に押し上げた「雨恋」の作者である。幽霊である千波とのはかない恋の物語が今でも心に残っている。
 で、早速読み始める。何、この本あの「雨恋」じゃないか。思わず、表紙を見つめなおしてみる。するとタイトルの「雨」と「恋」の文字がわざわざ赤字にしてある。まいったなあ。

 こういうことはやってほしくはなかった。
 悔しいし、お金を払った分、取り返したくて再読した。

 今読み返すと、やや中身、当時は斬新に思えたが、平凡かなという印象。

 主人公の渉が入居したマンションの部屋に、この部屋で3年前自殺に見せかけ殺されてしまったという千波という幽霊がでてくる。しかし、姿は見えず、声だけがする。自殺として処理されたのだが、自分は殺された。このままでは成仏できない。何としても犯人を突き止めてほしいと渉にお願いする。千波は変わっていて、雨の日にしか現れない。現れるところは彼女が亡くなった場所。

 この物語が楽しく優れているのは、千波の残された写真がなく、顔がわからないのだが、当時捜査にあたっていた若手刑事が本当に可愛くて自分のアイドルのように考えていたこと。それが、読者にどんな子なのだろうといやがうえにも心が高ぶってくるように物語を展開させているところ。

 更に、渉が真相に近付くにつれ、足だけが見え、もう一歩のところまでくると顔以外すべてが見えるようになる。しかし、ここからが遠い。なかなか真相に到達しなく、読者をいらいらさせる。しかし、一方読者は、真相がわかり、全身が見えるようになるということは、千波は、幽霊ではなくなりあの世に行ってしまうことを知っている。だから、真相がわからない状態でも読者は心地よい。

 真相がわかったとき、千波は即消失するというような、すげない小説に松尾さんはしていない。ちゃんと朝まで千波と渉は抱き合ってすごせるようにしている。そして朝の光のなかで千波はだんだん消失してゆく。この終わり方が哀切この上なく、印象深く読者に残る。

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辻原登    「ジャスミン」(文春文庫)

 世界文学が最も頂点に達した19世紀。フロベール、スタンダール、トルストイなどが描いた長編人間文学。その香りを受け継ぎ、大きく重厚な小説に挑戦しているのが辻原登である。

 この作品も大きく重厚な作品である。

 天安門事件直後、主人公の脇彬彦は神戸から「新鑑真号」で上海に渡る。中国から謎の手紙によって、中国に渡り、消息不明になった父親脇種彦の消息を追及するために。

 そこで脇彬彦は、中国の新進女優杏杏と恋に落ちる。ところがこの杏杏には天安門事件の首謀者として指名手配されている恋人がいた。

 この恋人の逃亡を手助けしたことが当局に発見され、彬彦は国外追放、杏杏は当局に捕まり、青海省の田舎に労改に送られる。労改というのは、刑務所には入らないが、中国の田舎の村に思想改革として送られ、辛い労働を強いられることをいう。

 一方、恋人は、蛇頭や反政府組織のネットワークに助けられパリへと亡命する。

 彬彦が日本の神戸に帰って5年後、何と女優杏杏が、在大阪の中国副領事の婦人となって彬彦の前に現れる。そして、副領事が東京へ出張しているとき、2人は示し合わせて淡路島に人形浄瑠璃をみにゆく。その夜、ホテルで深い愛を確かめ合った直後に阪神淡路大震災に遭遇する。

 天安門、追放、労改、大震災、うごめくスパイの恐怖の影、大きな人生の搖動に常に見舞われながら、彬彦と杏杏の一貫して2人の愛を貫こうとする姿が全編にあふれる。

 物語の最後、再度中国に渡った彬彦が、中国北西部の田舎黄土高原の穴居に暮らす、父種彦にであう。
 父種彦は中国語で言う。
「日本など知らない。私はここで生まれ、ずっとどこへも行かず、ここで今まで暮らしてきた。」と。

 それでも、しつこく彬彦が「おとうさん」と迫ると種彦が
 「とっとと失せろ」と日本語で叫ぶ。
このところは感動的である。

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薬丸岳     「死命」(文春文庫)

 追う刑事も、追われる犯人もともに末期がんにかかっていて余命幾ばくもない状態で物語が進み、最後事件が解決し、同じ病院でほぼ同タイミングで亡くなる。

 犯人は、女性とセックスをすると、最後のクライマックスの時に、殺す、殺すと叫びながら、女性を絞殺したくなるという特異な精神的病を持つ。そして、究極は母を殺したいと常に心の奥で強く思っている。

 澄乃が小学校高学年のとき、主人公の信一が澄乃の故郷新潟寺泊に転校してくる。そして信一と澄乃は仲良くなる。

 ある日、澄乃と信一が外から澄乃の家に帰ってくると、信一の父と澄乃の姉が裸で抱き合っているところに出くわす。

 また別の日、信一はいつものように母に下半身を裸にされ、性器をくわえられていた。その時、父が帰ってきて、現場を見られ思いっきりぶん殴られる。父はその後澄乃の姉のところへ行ってしまう。ここから、父の暴力が激しくなり、信一は聴力を失う。

 この子供のころからの体験がトラウマとなり、女性をセックスの最後に絞殺したい衝動にかられることになる。そして信一は逮捕されるまで、6人の女性を殺害する。

 動機、設定があまりありえない内容で、事件の犯人と追う刑事が末期がんというのも、すこしやりすぎ。ここに引っ張られすぎ、物語が必要以上に感傷的すぎ、全体としては薄味になっている印象は否めない。

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高田純次     「適当教典」(河出文庫)

 高田純次が、人生相談に、タイトル通りにいい加減に回答したものを集めている。

 上司にみんなのいる前で、お前は本当に仕事ができず、だめだ、といつもボロクソに言われる。もうプライドもズタズタ。とても耐えられないとの相談がある。

 これへの回答。
 何を落ち込んでいるのだ。落ち込む必要などまったくない。君みたいにできないやつが会社には絶対必要。会社がもしできるやつばかりなら、自分は本当に仕事ができるのだろうかとみんな悩み、会社の活力がなくなり、業績も悪くなる。きみみたいなできないやつがいるから、できるやつが浮かび上がり、ますますできるやつは頑張ろうとする。そうすれば会社は伸びる。君あってこその会社だ。どんどん上司に自信をもっていびられ叱られろ。

 夫が帰宅するまで起きているべきでしょうか。
 回答は、起きている必要はない。寝ているとき気をつけなくちゃいけにことがある。35歳くらいまでは全裸で寝てていいが、それ以降はだめだ。夫が寝姿をみて、ゲロするからだ。

 まあ、こんなくだらない問答が満載の本である。

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柳美里     「男」(新潮文庫)

 男の体のどの部位に官能を感じるか、部位ごとに掌編を作り集めた作品。

 主人公の体を通り過ぎた数々の男たちがいる。その、ひとり、ひとりを思い出して、かれらの体のどの部位が印象的に強く残ったかを官能をこめて描いている。

 耳が面白いと思った。

 耳というのは印象が薄い。この人はおかしな耳の形をしていると思うのだが、それを思った瞬間、即その形を忘れる。次に会ったときにあれだけ印象に残ったはずなのに、耳だけみても、それはあの人と当てることができない。

 耳は、愛の交歓では、噛まれたり、なめられたりされるのだが、小説などの官能シーンに殆ど登場することはない。全く影が薄い存在である。

 しかし、交わっている姿態を眼で実際を見るのと、隣部屋で行われている交歓シーンを薄い壁一枚をへだてて耳に聞こえてくる状態と、どちらが興奮を覚えるか。たぶん耳で聞こえてくる方のように思う。

 耳は繊細で、尖った神経をもっており、決してあなどれない器官なのである。

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小路幸也    「旅者の歌 始まりの地」(幻冬舎文庫)

 ファンタジー小説。この作品「始まりの地」となっているから、この本だけでは物語は簡潔していないことを読み終わってわかった。

 シフィル。大地に星がぶつかりくぼ地になった場所。そのため周りが高地になり、山々に囲まれ、どこからも侵入されないところ。

 主人公ニィマールは14歳。すでに幼馴染、同い年のジェイラが許嫁になっている。どちらも好意を互いに持っているので結婚については問題ない状態。ニィマールの兄トゥールは21歳。トゥールには双子の姉ティアラがいる。

 シフィルでは、7歳、14歳、21歳の誕生日の前日、試しの檻にはいり、誕生日の午前零時に、そのまま人間でいれば、人間が続けられるが、檻のなかで野獣に変わると、野獣となって、山に向かわねばならないということになっている。

 ニィマールは野獣にはならなかったが、許嫁のジェイラは猫に、トゥールは馬に、ティアラは鷹に変わってしまっていた。3人は動物になったが、姿は動物でも魂は人間のまま。こういう状態になった生き物を「離者」という。シフィルの伝説では、はるか山の向こうに「離者の地」というところがあり、ここに到達できれば、動物から人間に返ることができると言われているが、誰も「離者の地」をみたことはない。

 この「離者の地」へは、「リョシャ」という人に導かれて行かないと、人間には返れない。
 そしてニィマールが「リョシャ」になり3人とともに、「離者の地」を目指し旅にでる。

 当然、物語は行く先々で、猛獣がでてきたり、凍結している山で極寒に襲われ、ピンチピンチを脱出する手に汗握る展開になると想像していたが、「始まりの地」編ではそんなことはなく、山は知らないうちに越え、アルワンという一族の集落に行きつき彼らの支援により、次の段階に淡々と静かに進んでゆく。最後にライオン2頭に会うが、このライオンは、もともと野獣だったが、人間の魂をいれられたライオン。このライオンも一緒に「離者の地」へ向かうところで話は終わる。

 何か冒険ファンタジーというより、人間の魂とは何か、どうして争いが行われるのかを問うているような物語になっている。

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玉木正之編    「9回裏2死満塁」(新潮文庫)

漱石をはじめ、野球についての文章を集めて収録した作品。
桑田真澄の大学卒論なんかも収録されている。

野球は米国の国技といわれているが、歴史はそんなに古くない。起源は1845年なのだそうだ。ウィルソンという明治政府が招聘した英語教師が日本にベースボール持ち込んだのが1872年だから、アメリカ野球誕生から27年後、それほどアメリカとの比較で日本の野球の歴史に大きな差があるのではない。

 ベースボールを野球と訳したのが、正岡子規であることは有名なのだが、野球という言葉が生まれる前は、何て訳されていたのか、もちろんベースボールという呼び名が一般的だったと思うが、明治4年発行の辞書「和訳英辞林」では「打球鬼ごっこ」と訳されている。

 野球は最初はピッチャーはソフトボールのように下手投げしか認められなかった。これがどんな投げ方でもよくなったが、ピッチャーは打者が指示したゾーンに投げないとボールと判定されていた。打者有利だから、今でいうフォアボールは、ナインボールだった。

 これだけ打者有利だと、試合では異常にたくさんの点が入った。100点以上入る試合も普通で、1回に4度も5度も打席がまわってきた。試合時間も長く、朝から夕方までかかることが普通だった。

 アメリカで大リーグ第一号のチームは1869年のシンシナティ レッドストッキングス。同年ボストンに移りボストン レッドストッキングスとなる。このチームにスポルディングという名投手がいた。スポルディングは野球引退後、スポーツ用品メーカーを起こし今のゴルフクラブ製造で有名なメーカーとなっている。

 面白いのは、明治末に朝日新聞が「野球害毒論」を展開し、野球を止めようと論陣を張る。これに対し「野球擁護、礼賛」で論陣を張ったのが読売新聞。明治から朝日、読売の対立ははじまっていたのだ。それにしても野球害悪論を張った朝日が、全国中等学校野球大会(現、全国高等学校野球大会)を開催したのだから、朝日もいい加減な新聞社である。

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織田作之助     「天衣無縫」(角川文庫)

織田は結構読んでいたと思っていたから、新刊文庫短編集を書店でみつけ、まだ読んだことのない作品があったのかと思って買い込み、家に帰って開いてみたら、殆どが既読である、とんでもなく損した思いになった。

 織田の作品は、「夫婦善哉」もそうなのだが、だいたい主人公の男は、仕事を地道にやろうという人間でなく、妻が貯めたお金を掠めて、遊蕩しようとするダメ男である。今では、こんな男は即絶縁され捨てられるのだが、織田の時代では、女はどんなに放蕩をくりかえされても、離別することはなく、男と大喧嘩を繰り返しても、ずっと一緒に生きる。そして、織田の願望もあるのだろうが、それでも、女は男を好いている雰囲気で物語を閉じる。

 タイトルになっている作品。主人公の女に見合いの話がはいる。写真をみると大した男でない。みてくれもよくない。だけど、主人公は男とつきあった経験がない。それで、まあ我慢するかと、見合いにゆく。ところが約束の時間になっても、男はやってこない。一時間たって、酒がはいって赤い顔して男が現れる。同僚に会社帰り際に飲みに行こうと誘われ、断れず行ってしまったから遅れたのだと言う。

 主人公は、完全に頭にきて、見合いの間殆ど口をきかない。だから当然相手から断りの話がくると思っていたのだが、彼女のすべてが素敵で、ぜひ妻に迎えたいとの返事がくる。

 とてもいやな奴とは思ったが、今まで好きだなどと言われたことが皆無だったので、そんな人、今後は現れそうもないので、見合いの男を受け入れる。

 この男は、不思議な男で、金もないのに、相手が喜んでくれるとうれしくなり、金を貸してやると誰彼かまわず言ってまわる。当然、金が無いから、実家や兄妹から工面して金を貸してやる。で、借金でくびがまわらなくなる。

 こんな男だから、結婚後は、主人公が財布をにぎり、小使いを渡すようにする。ある日、男が遅くなって帰ってくる。どうしたと聞くと、友達にお金を貸してあげたという。そんなお金はないはずなのにと思ったら、上着もチョッキも着ていない。質にいれて金を工面したのだ。主人公は、夫をなぐりつねり折檻した。

 夫は帝大をでている。会社に帝大出などいない。それでも、昇給やボーナスは同僚より低い。何だかとても情けない男だ。でもヒステリーが収まるとこんな男でもまあいいかと思って男のそばで寝入る。

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| 古本読書日記 | 17:45 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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法月綸太郎   「ふたたび赤い悪夢」(講談社文庫)

 推理小説の域を超えて、それぞれの重要な登場人物の変転する人生が太く厚く描かれ、小説としても質が高く、読み応えがある作品だった。

 それにしても、小説の重厚さに呼応するように、殺されたとされる人が生きていたり、こいつが間違いなく犯人であるかのように書いていて、最後のところは叙述トリックで、断定しないように懸命にぼかした表現にしていることに腐心している法月の姿が浮かんできた。

 殺人をする人間が、本物のナイフと芝居などで使うダミーのナイフを持っている。ダミーナイフというのは刃先が相手を刺すと、バネで刃先が縮み、そのかわりに血糊がとびだすというやつである。鑑識がでてきて、血が血糊ではまずいから、予め殺人をする人間の血を採取して起き、それが凝固しないようにクエン酸カルシウムを注入しておく。

 この状態で、ある人が、殺人をしようとする人間からダーミーナイフで、殺人をもくろむ人を刺す。血が飛び出すから、自分がてっきり殺したものと思い込み逃走する。そこで本当に悪い黒幕が登場して、殺そうとした人を刺し殺す。そうすると警察も黒幕にたどりつく前に、ダミーナイフを使って殺そうとした人間にたどりつき、こいつが犯人だとして逮捕するし、刺した人間も血が飛び散るのをみているから、自分が犯人だと信じ込んでいる。ここに完全犯罪が完成する。

 自殺した人の身元確認。警察もだいたいの身元はわかっていての親族などを使っての最終確認をしてもらう。身元確認をする人間が犯罪にかかわっている。自殺した人は、警察が想定して人とは異なるが、確認者が想定した人に間違いないと言い切ると、死んだことになっている人が、実は生きていることになる。

 こんなからくりが重なり合って物語は進む。しかし、最後には悪はすべて明らかにされ、これが一番良い終わり方だと思っていたところで終わる。無難な内容でよかった。

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| 古本読書日記 | 15:30 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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小路幸也    「探偵ザンティピーの休暇」(幻冬舎文庫)

 マンハッタンで探偵をしているザンティピーに、北海道で「ゆーらっくの湯」という旅館の息子に嫁いで若女将をしている妹サンディより「会いにきてほしい」との電話がある。

 旅館に着くと、村人たちの掟で、絶対近付いてはならないという御浜という場所の中心にオンジョイワという大きな岩があり、そこで妹サンディが拾ったという人骨をみせられる。

 調べてみると、御浜に入ってはいけないというのは、ずっと昔から言われていたのではなく、この旅館を81歳の善二郎始めたころから始まっていた。善二郎は漁師だったのだが、突然お金がはいり、旅館を始めた。そのとき、御浜も買い占め、絶対御浜に入ってはいけないと村人にお触れをだす。

 サンディも御浜にはいってはいけないという掟は知っていたが、旅館の愛犬タローと散歩中リードがとれて、タローが御浜にはいってしまう。そのタローを追いかけていったところ御浜で人間の骨を発見したというわけ。しかも、人骨は3体もあった。

 旅館は善二郎から始まり、今は2代目吉一が経営している。吉一の息子が龍一でサンディの夫である。

 ザンディピーはこの名前の並びから、善二郎には善一郎という兄がいたはずと確信する。

 息子、孫の名前に一がはいっているからだ。そして御浜の白骨死体は善一郎であることを掴む。更に残り2つの死体は、ロシア船が難破して船員が御浜に打ち上げられたものだとわかる。このロシア人が身に着けていた高価な装飾品を売って、旅館をはじめたり御浜を購入していたのだ。

 からくりは名前にあった。ライトノベル感覚の探偵小説である。

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| 古本読書日記 | 15:28 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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小路幸也    「わたしとトムおじさん」(朝日文庫)

 この物語の「初めての旅」の章に、10歳の学校になじめない帰国子女でハーフの帆奈と、孤児児童施設に入っている恭一が、トムおじさんの指示をあおぎながら、旧西洋館においてあった壊れたストリートオルガンを分解修理する場面がある。

 帆奈と恭一がオルガンを分解してゆく。再生できるように部品と元のオルガンの形を写真にとりながら。そして、2人は、その部品の点数の膨大な数に驚く。

 時々、とても不思議に思うことがある。管楽器や弦楽器は、音楽の進歩に従って作られてきたことは想像できるが、ピアノは誰が必要として、なぜ作られたのかと。ピアノは部品点数だけでも8000個もある。

 18世紀初めに発明されたそうだ。このピアノを発明した人は、ピアノが完成したときにどんな音を奏でて、どんな役割を担うのか想像できたのだろうか。8000もの部品を加工しながら作り、組み合わせ、形にしてゆく。奏でる音や音色もバラバラだったりして、試行錯誤にとてつもない時間を要して完成しただろうことは想像できる。

 更に驚くことは、8000の部品が、それぞれ個性が異なり、それぞれが共鳴、共存してピアノの奥深い音色が実現することである。ひとつとして無駄のものは無いのである。

 この物語には、その個性故に、社会や学校からはじき出された人々が登場し、そうした環境に置かれた彼らが、協力しあい、人間として成長してゆく姿を描く。

 小路さんは、ピアノの部品のように、豊かな人間社会を築くためには、人間に価値のない不要な人間はいない。更に、個性の違う人間が、他人を尊重して、協力しあえば、美しい音楽を奏でることができるような社会ができることをこの作品で言おうとしている。

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| 古本読書日記 | 14:42 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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新津きよみ   「ダブル・イニシャル」(角川文庫)

 松本亜衣里は、合コンで逢った男相川公也から結婚を申し込まれていて困っていた。それを主人公の堂本悠子にどうやって断ったらいいか相談した。そのころアメリカで流行っていた呪い、名前のイニシャルがダブッていた場合は、不幸が訪れる、亜衣里が結婚すると相川亜衣里になり不幸になるから結婚はできないと断れと言われる。そして、その通りに相川に言うとあっさりしかたないと言われる。

 ところが、亜衣里はその後安藤という男と結婚し、安藤亜衣里となりAAでイニシャルがだぶる。

 実は、相川公也は、腎臓に疾患があり、大学卒業後就職した会社で、腎臓疾患が悪化、それで姉貴子から生体腎移植をしてもらっていた。腎臓は多少よくなったが、その直後精神を病んでしまい、結局会社を退職せざるを得なかった。そして、将来を公也ははかなんで首を吊って自殺をしてしまう。

 姉貴子は、弟思いの姉で、愛する弟の自殺のきっかけは、あの松本亜衣里に結婚を断られたことがきっかけと思い込む。しかも、松本は、ダブルイニシャルは不幸になるからと断っておいて、その後安藤と結婚してダブルイニシャルになっているではないか。

 貴子は銀座で占い師をしていた。それで、公也、KIMIYAの全文字のダブルイニシャルになっている女性を殺せば、公也は再生すると信じるようになる。

 それで、ワイン仲間やステンドグラス制作仲間に加わったり、結婚相談所などで、該当する女性を見つけて近付き、次々殺す。まず、安藤亜衣里、木村京美、市川郁子、芳村曜子、そして最後は峯村道子が狙われる。

 何だか、ゲーム機の殺人ゲームをしているような小説だった。

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| 古本読書日記 | 14:41 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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法月綸太郎     「密閉教室」(講談社文庫)

 法月綸太郎の処女作。

 教室7Rは完全に密室だった。朝一番にやってきた笙子が教室のドアを開けようとしても開かない。どうして?そこに担任の大神がやってきて開けようとするがやはり開かない。そこで、大神はドアをぶったたきながら力ずくで、はずす。すると、教室には48組のすべての机と椅子が取っ払われていて、生徒の一人である中町が血まみれになって遺書のコピーとともに死んでいた。

 他殺か自殺か。この謎に探偵小説マニアの工藤と森刑事が挑む。

 一番の謎は、48もの机と椅子がどうして教室から外へ出されたのか。

 実は、中町は、7Rの教室ではなく、職員室で殺されていた。これを自殺にみせかけるには、職員室での自殺は現実的ではないので、死体を7Rの教室へ移動させる。更に床に貼ってある血だらけのタイルを7Rのタイルと交換して、7Rで中町が自殺したようにみせかけねばならない。タイルを交換するためには、椅子と机をどかさねばならなかった。

 ここまではわかるが、こんな大がかりな作業を犯人が行えるわけがないと思っていたら、この学校、暴力団に弱みを握られていて、彼らが扱っている覚せい剤の隠し場所になっていた。先生というのは気の弱い保守的集団で、こんな不祥事が明らかになったら、学校だけでなく自分の人生も終わると思い込み、殺人を自殺とみせかける行為を先生みんなで行っていたのである。ちょっとびっくりしたトリック。

 それから、実際は密閉教室になっていたのではなかった。笙子が学校にやってきて教室のドアが開かなかったのは、死体処理がまだ終わっていなくて、先生が中にいて、笙子がドアを開けようとしたとき、中の先生がドアを押さえて開かないようにしていたのだ。

 思わず笑ってしまった。

 法月が現在発表している作品と異なり、オーソドックスな推理小説になっている。

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| 古本読書日記 | 16:05 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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森沢明夫    「津軽百年食堂」(小学館文庫)

 この前、近くの外科医院が廃業した。たくさんの患者を抱えていた。経営が不調というわけではない。継ぐ人がいないのだ。シャッター商店街というのが田舎の町にはたくさんある。もちろん、人通りが少なくなって経営できずに止める商店もあるだろうが、かなり多くは跡取りになる人がいなくて店じまいをする。

 この作品は、弘前の老舗ソバ屋の長男と、同じ弘前のりんご農家の一人娘の話だ。

 どちらも、高校を卒業して東京にでてきている。長男である大森陽一は東京産業社というイベント会社に派遣されている社員。イベント会場でピエロ姿になりバルーンアートを演じている。一方、リンゴ農家の一人娘深沢七海はプロの写真家を目指し、厳しい師匠のもと修行中。

 東京は、若ければ、今が苦しい生活をしていても、たくさんの可能性が開かれている。
活躍場所は都会にはたくさんあるし、その場所も日本全国、世界にも開かれている。いろんな職種、自立経営者の可能性もある。

 もし、ソバ屋を継ぐことを決断すれば、生活のためのお金は稼ぐことができるかもしれないが、一気の世界へ広がるような可能性は閉ざされ、同じ場所で近所の人とつきあい、同じ毎日の繰り返しで一生を送ることになる。

 一方、写真家の卵は、もうひと踏ん張りで、プロの写真家になれそうなところまできている。ここで、実家に帰るのではあまりにも切ない。

 こんな2人が、東京で偶然知り合い、恋愛に落ちる。互いに本質的問題を抱えているのだが、先送りしながら、恋愛を深めてゆく。

 しかし、どこかで、互いにこの問題にぶつからざるを得ない。そして、ぶつかって2人は荒波に揺さぶられる。

 ソバ屋の長男陽一は、ソバ屋を継ぐことを決断する。七海はカメラマンとして生きてゆく。
それで2人は、長距離恋愛を添い遂げるまで続けることを決意するところで物語は終わる。

 作者森沢、2人は強い愛で結ばれ、将来幸せになることをこの作品で予感させているが、現実にはハードルは高いと思えてしまう。

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| 古本読書日記 | 16:00 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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宮本延春   「オール1の落ちこぼれ、教師になる」(角川文庫)

 中学校の通知表は常にオール1。卒業時の最後の通知表で初めて音楽と技術で2をもらう。

 書ける漢字は自分の名前だけ。英語で知っている単語はbookのみ。九九は2の段までしかできない。こんな落ちこぼれの著者が24歳で定時制、通信制併用の私立豊川高校へ入学。そこで、数学では愛知県内トップの成績をとり27歳で名古屋大学に入学。以降大学院まで進み9年間の大学、大学院生活を終え、現在母校豊川高校の先生となる、奇跡の人生を語った作品。

 この作品を読むと、我々は普段気が付かないが、すべての人々に、勉強適齢期があるのだということを知る。ただ、残念なことだが、それがいつなのかこれまた殆どの人が気が付かない。

 宮本の場合、小学校中学校通して、徹底していじめられ、学校へゆくのもいやだった。しかも、ラーメン屋をやっていた両親が、早逝してしまい、孤独の身となる。この状態では勉強など身にはいるわけがない。

 結局大工になって、そこそこの給料がはいり、金銭的に少し余裕ができ、そんな時アインシュタインについてのテレビ番組をみて、勉強したいと思った、このタイミング17歳のとき、勉強に目覚める、彼の勉強適齢期だった。そこで一念発起。小学校3年生のドリル、教科書から勉強を始める。

 それにしても、このタイミングをがっちり掴んで勉強一直線にひた走る姿は熱い。熱い気持ちや姿勢は人を引き付ける。職場の理解者。社長、専務。そして豊川高校の熱心な先生たちが、身を挺して彼を支援する。

 その熱い支援に恵まれ名古屋大学を目指して宮本はひた走る。

 しかし、この作品であまり登場しないが、一番応援、支援したのが現在の奥さんになっている純子さん。どうして知り合ったのかわからないが、純子さんはある会社の社長のご令嬢で、国立大学卒業の経歴のある人。普通、中卒の大工さんが、こんな人と付き合うことはまずない。奇跡のカップルである。この純子さんが、懸命に小学3年生のドリルを宮本と一緒に手にとって、九九から手取り足取り教えたのだと思う。

 純子さんの家では、2人の交際に大反対だったが、宮本が名古屋大学へ入学すると豹変。そして2人は愛を成就させた。

 そうか、やっぱし勉強適齢期だけ掴んでも、望みは成就はできなかったのだ。純子さんは素晴らしい奥さんでありパートナーである。

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| 古本読書日記 | 16:10 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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中村うさぎ    「家族狂」(角川文庫)

 ハードボイルド作家の主人公北村のマンションの部屋に、ある時から変な幽霊一家がでてくる。でていけと北村は怒鳴るのだが、自分たちこそここに以前から住んでいて、先住権があるのだからあんたこそ出て行けと言って居座る。

 幽霊一家が、夕食をとる。幽霊なのだからごはんなど食べないだろうと北村が言う。幽霊はその通りだが、家族の絆を深めるには、団欒こそ大切と言い、北村にあんたも一緒に団欒に加われという。

 最初はこんな調子で、面白おかしく、これはコミカル小説かと思って読み進むと、途中からがらっと雰囲気が変わり、強烈なホラー小説となる。

 幽霊と生身の人間たちが溶け合って、誰が死んでいて、誰が生きているか判然としなくなる。生首だけになった人が生きていたり、老いぼれた母親と思われる人が、北村に襲いかかったり。そして、その混乱の中、母親を含め、編集者の女性を北村は殺してしまう。

 で、今、北村は、精神病院にいれられ、そこに移り住んできた幽霊家族と一緒になって夕食を食べながら家族団らんを楽しんでいる。

 霊能力がある人が世の中には存在していて、その人たちは幽霊が見ることができたり、会話したりすることができると言われている。

 そんな時、幽霊にかかわって何か事件を起こしたら、大変だろうなと思う。なにしろ現実の世界では幽霊はありえないものとしていて、誰も証言しても信じてくれないから。

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| 古本読書日記 | 16:01 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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森浩美     「こちらの事情」(双葉文庫)

 作者の森さんは作詞家で有名。田原俊彦や荻野目洋子などの曲の作詞を多く手掛けている。

 この本は、家族をテーマにした短編集。「短い通知表」が印象に残った。

 主人公は中堅広告代理店の幹部。3代続いた同族会社。3代目が最近社長についたばかりで、社内改革をしようとはりきっている。今までのぬるま湯体質から脱皮するために、きっちり社員を評価し、ダメな社員は、会社を去ってもらっても結構という制度を導入した。

 主人公が部下と酒を飲んでいる席新しい評価制度が話題になる中で、主人公が言う。
実は、主人公の家でも年末、家族それぞれが、自分以外の人を評価して通知表をだしていると。最初は主人公である父親は除外していたが、それでは不公平ということで、今は主人公も通知表を家族からもらうようになった。

 父親への評価はあまりよくない。食事中にオナラをするとか。約束をすぐ破るとか。

 こんなとき妻の潤子が昼突然倒れ、そのまま不帰の人になった。茫然とする主人公。

 妻の遺品を整理しているとき、チェストの抽斗に「明日やること帖」というノートがでてくる。「午前中、美容院」「クリーニング店」などと書かれている。
 妻が倒れた日には「すき焼き用松坂牛肉500g」。亡くなった日にはすきやきを食べようと思っていたのだ。

 そんな中に時々、こんな記載がある。
「連絡なし、急に帰宅 食事-10点。」「頼んだケーキ買い忘れ、しかも開き直る-10点」
「酔っ払って居間で寝る-10点」「きんぴらごぼう褒める 10点」そして「検診に行けと言われる。気遣いあり 10点」

 自分はいい加減に採点していたのに、妻は折に触れ真面目に点数をつけていた。

 主人公は目頭が熱くなる。愛などという青くくすぐったい響きのあるものはなくなったが、一つ屋根の下で長年暮らしてきた夫婦の強いきずながあったのだとしみじみ主人公は感じる。

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| 古本読書日記 | 15:47 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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メアリ・H・クラーク  「追跡のクリスマスイヴ」(新潮文庫)

 欧米にはたくさんあるクリスマスストーリー。

 主人公、7歳のブライアンの純粋で、まっすぐに信じる心の美しさが物語を貫く。キャサリンは2人の息子、マイケルとブライアンとともに、夫のトムをクリスマスイヴに入院している病院に見舞いにでかける。実はトムは重い白血病を患っている。

 病院にゆく途中聖パトリック大聖堂の前で聖歌がうたわれている。キャサリンは足を止めて一緒に歌う。ブライアンはこんなところで寄り道しないで、早く父の病院に行きたいと思っている。

 それは、おじいさんから預けられ、おばあちゃんも父さんの病気を治してくれるというペンダントを早くお父さんにプレゼントをしたいからだ。このペンダントは、おじいさんが戦争の最中、おじいさんを守ってくれた。何しろ銃弾の跡までついているのだから。

 お母さんが1ドル札をだして、ブライアンに寄付をしてくるよう言いつける。その後、財布が中途半端にポケットに入れられ、その財布が地面に落ちる。それをコーリーという看護師が拾い持ち去る。

 財布には大切なペンダントが入っている。ブライアンはコーリーを追跡して、アパートまで行く。そのコーリーのアパートに、服役中に看守を撃ち殺し脱走した弟のジミーがやってくる。逃走資金をねだりにきたのだ。ジミーはキャサリンの財布とブライアンを盗んだ車に入れ込んでカナダに向かって逃走をする。

 逃走と警察の捜索が続く。ブライアンは首にかけていたペンダントをお父さんに渡すまでははなさないと懸命に手で握っている。テレビもラジオも大騒ぎとなる。

 そして、ペンダントへの純粋な気持ちと信じる心が通じて最後、危機を脱してブライアンは無事救出される。ペンダントがイエスキリストを象徴しているのだ。

 この物語の捜索で、逃走車の発見の鍵になったのが、車に貼られていたステッカー。通常、車種、メーカー、車のナンバーだけが捜索には求められる。しかし、車全体での特徴を見つけることも重要だと認識した。

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| 古本読書日記 | 15:44 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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高田郁    「晴れときどき涙雨」(幻冬舎文庫)

 今や売れに売れている「みをつくし料理帖」シリーズの作者高田郁のエッセイ集。

 高田さん、小学生のころは天文学者になりたいと思っていた。大学は中央大学法学部。法曹界で生きてゆくことを目指し、司法試験に何回も挑戦するが、ことごとく失敗。法曹界にはいることはあきらめざるを得なかった。学習塾の講師をしながら、漫画原作者の道に入る。そのときの作家名は川藤士立夏。漫画原作者で15年間、そこである編集者の、直接読者に作品を届けたらという一言で、江戸時代を描く作家に。それは山本周五郎が最も愛する作家だったから。

 高田さんは、小学生のころはいじめられっ子だった。うまく他人との会話ができない。いつも孤立していた。小学5年生のとき、担任のN先生が「家に遊びにいらっしゃい」と誘ってくれる。そのころ先生の家までゆくのには、まだ走っていた蒸気機関車に乗る。

 先生の家は農家で、ウドの栽培方法を教わったり、おいしいお弁当を頂き夢のような時間を過ごす。もう帰らなければいけない時間がくる。涙がいっぱいあふれる。

 先生は「送ってあげましょう。」と言って、一緒に蒸気機関車に乗る。恥ずかしいから、眠ったふりをしている。途中で薄目をあけて先生を見ると、先生は涙を流している。

 そのとき先生は文庫本を読んでいた。その文庫は壺井栄の「母のない子と子のない母へ」。
家の近くの本屋で早速買って読んで、高田さんも涙があふれる。

 今高田さんの書棚にはあっちで買った、こっちで買った「母のない子と子のない母」がおさまっている。

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| 古本読書日記 | 16:21 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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法月綸太郎   「法月綸太郎の功績」(講談社)

 足立茜が刃物で刺されて殺される。彼女が死んでいるサイドボードの電話機横のメモパッドに「=Y」なるダイングメッセージが書かれている。ただし、このメッセージ一枚目に書かれていたメッセージが、はがされていて、2枚目に筆圧で写されていたもの。

 この殺人に関連する人々が登場する。

 まずは、茜の姉で、既婚の坂崎緑。それに旦那の坂崎庸介。殺された茜は、姉のマンションに遊びに来ていた。庸介は旅行の添乗員の手伝いで2泊3日の旅にでていた出張していた。

 この庸介には、小西真弓なる会社の部下の愛人がいる。更に、隣部屋の住人で、警察に事件を通報した円谷朱美とその夫。結婚式出席のため名古屋から東京に来ていて、それを機会に、大学時代友達だった緑に会おうとしていた東郷ゆかり。

 それでこのダイングメッセージが何を表すかが事件の謎を解く鍵となる。

 東京へ来ていた東郷ゆかりが緑に会う約束をとろうと、電話をする。そのとき緑が不在だったため電話を茜がとる。そして、出会う場所をゆかりが「かざみどり」という喫茶店を指定する。茜はメモパッドに「キッサ カザミドリ」と書く。

 茜は刺され死ぬ間際に、キッサのうちキッの部分を=の日本線で消す。そして、カザミドリのザとミの間に「キ」の字を挿入しようとしてYの記号をいれたがそこで力尽きる。

 犯人は坂崎緑であることを茜は伝えようとした。死ぬ間際の文字は筆圧が強く2枚目に克明に写されたが、「キッサ カザミドリ」は筆圧が弱く2枚目には写っていなかった。

 推理作家というのは変わったことを思いつく。

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| 古本読書日記 | 16:19 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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辻原登    「花はさくら木」(朝日文庫)

 徳川時代が爛熟期を迎えた、第9代家重から家治の時代、若き田沼意次が台頭して老中まで上り詰めた。

 この時代、日本の殆どの産品は上方に集められ、そこで相場により値決めが行われ、江戸に売られていった。上方の豪商が、経済を握り、経済により幕府や諸大名をコントロールする時代となった。

 私だけが知らなかったことだったら恥ずかしい限りなのだが、この当時、大阪を中心とした地域と江戸では流通通貨が違った。大阪は銀貨が中心で、江戸は金貨だった。鴻池などの豪商は、大阪通貨と江戸通貨の交換相場を決め、その両替で大儲けをした。

 この物語は、2つの時代背景がベースで描かれる。

 一つは繁栄する大阪の、その源である経済を、大阪から何とか江戸に移したいと画策する田沼意次。

 もう一つは150年前に豊臣は滅んだが、徳川をよく思っていない土壌が大阪にあった。
秀吉の側室だった淀君。秀頼を産み、秀吉が没後、秀吉の側近だった大野治長と恋に落ち子供を召された。密通の噂が広がり、大野は追放されたが、子供はキリシタン大名だった小西行長に託され、行長は、娘のマリアが、対馬藩主宗義智に嫁いでいたので、この子供を宗に預けた。

 この淀君の不義の子供の3代下ったときにできた娘が菊姫。

 秀吉につながるこの菊姫を、鴻池と一緒に商売をしている北風が対馬から引き取る。そしてこの菊姫をおったてて、新豊臣勢力を結集幕府を転覆させようと考える。

 この2つのことが、物語の進行のエンジンとなる。

 しかし、やはり、印象に残るのは、添い遂げられる、菊姫と田沼の部下の青井との恋。それに対して、添い遂げられることは絶対ありえない田沼ろ内親王、智子との悲恋が印象に残る作品。智子は後桜町天皇となる。

 この智子と田沼が大阪の街をデートするところと、最後の別れのところはどことなく「ローマの休日」を彷彿とさせる。

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| 古本読書日記 | 15:46 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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