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2016年08月 | ARCHIVE-SELECT | 2016年10月

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加納朋子    「七人の敵がいる」(集英社文庫)

 この物語は、本当に今の地域、学校の抱える問題をよくとらえている。読んでいてそうだそうだと手を叩く場面が多かった。

 私の地域活動の始まりは地域のスポーツ部員だった。この物語にもでてくるが、少年サッカークラブの父母会の役員は、大変である。まず、練習場所の予約確保。これがあちこちの団体とかちあいなかなか取れない。用具を運んだり、子供たちを運ぶ車の提供。監督への手つくり弁当。選手や、父母たちへの飲み物の準備。

 私のスポーツ部員も同じ。毎月地域で何らかの球技大会が行われる。その打ち合わせと対戦決めが毎月ある。さらに、出場する人たちの練習場所確保の抽選会議が別にある。そして、練習日には練習前に場所へ行って、ネット張りをしたり、用具の準備をする。練習がおわるとネット等の片つけ、コートの掃除がある。どうしてかわからないが、出場者は何も手伝ってくれない。会議や練習日には、17時には仕事をやめて、会場に行かねばならない。後ろめたい気持ちがいっぱいだ。

 防災隊長も大変だった。

 それでも、一番大変だったのは、13班ある地区の自治会長と地域全体の連合副会長をした時だった。毎月2回資源ごみ回収の立ち合いをはじめ、やたらに行事が多かった。

 特に秋祭りは大変。祭り実行委員や参加者たちへの食事を作ってくれるボランティアが集まらない。何軒も土下座をするくらい頭をさげまくりやっと人員を確保した。それから今は消防団員があつまらない。この確保で一時地域をこの作品の主人公のように敵にまわした状態になってしまった。

 今は、地域はサラリーマンがほとんど。しかも共働きが普通。にもかかわらず地域もPTAも、現代の社会の変化は無視して、何十年も過去やってきたことを引き継ぎ行おうとする。

 私のときもこれでは限界無理とは思うが、自分の任期が終わると、やれやれと思い、今年やったことをそのまま次に引き継ぐ。

 それに、「このやり方はおかしい」などと言ったものなら、瞬間に全員を敵に回す。そして、それならあなたがやったらとくる。恐ろしい。

 どこもそうなのだろう。どうなるのか、この先地域やPTA。

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| 古本読書日記 | 16:17 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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加納朋子    「レイン レイン・ボウ」(集英社文庫)

 高校時代の弱小ソフトボール部員、卒業7年後ある一人の部員が亡くなることで、疎遠になっていた部員同士、また繋がる。高校卒業して7年後の25歳の彼女たちの青春が短編連作として編まれた作品。

 25歳だから、誰もが豊かで楽しい生活が送れているわけではない。編集者、保育士、看護師、栄養管理士といろんな職業について、まだ社会人になったばかりで、結構苦しんでいる。この他に主婦もいれば、就職に失敗したプータローもいる。

 タイトルのレインボウは虹。虹には7色あり、それぞれの人生を7つの色にわけて、描きだす。

 面白いと思ったのは、高校生のころの個性が、今の職業やおかれている状況にきちんと繋がっている、7つの色の個性が、現在でもそのままの色でいるところ。

 更に、部員は全部で9人。一人亡くなっているから、7色の物語では語られない人が一人いて、しかもどの物語にも実在している女性として全く登場してこない。

 加納さんは、本質はミステリー作家である。この、まったく登場することのない一人を7人とつなぐ、ミッシングリングとして活用し、青春小説にミステリーの香りを上手につけている。

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| 古本読書日記 | 16:15 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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別館設置

gscard.jpg
爺やとねえやでブログを分けてみました。
リンクに別館をこっそり追加しましたので、猫写真を見たい人はどうぞ|д゚)

| 日記 | 07:41 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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折原一     「遭難者」(文春文庫)

 犯罪をするなら山でやる。どこかの尾根から突き落とす。こうしておけば、死体がみつかっても、殴ったり刺したりした証拠はなく、まず100%事故死として処理される。警察はいったん事故死として処理すれば、これを覆すことはまず余ほどのことが無い限りしない。死体現場に足を運ぶにしたって、山のなかでは、現場にたどりつくことだって大変な作業だ。

 北アルプスに大崎商事という松本にある会社の山岳倶楽部、岳友会の一行が登山をする。その途中で、若手総務部社員笹村雪彦が滑落死する。

 その後、笹村の母親と妹が遺品を整理していると、写真の額裏に雪彦が、結婚まで約束していた恋人を横取りされてしまったという慟哭のメモを発見する。このメモをよりどころにして、母親の真相追及が始まる。母親は岳友会の雪彦追悼登山を企画に参加する。そして、息子の恋愛について追及しようとする。ところが、驚くことにこの母親も中谷という女性とともに、雪彦が滑落したほぼ同じ場所で滑落死する。

 岳友会は、雪彦の在りし日を偲んで、追悼本を作り関係者に配布する。追悼登山に参加した大学時代の学友の南が、本を読んで、雪彦の事故死には不可解なところがあることに気付く。雪彦の会社が、事故死として処理しようとしている節があると思い、それを雪彦の妹千春に伝え、2人の追跡が始まる。

 そして、雪彦がわずかな金額だが、会社のお金を着服していたことをつきとめる。更に、同じ手口で、上司である課長が5000万円会社の金を着服していたことを突き止め、それをめぐって雪彦と課長の葛藤があったことを知る。それで邪魔になった雪彦を課長が登山で突き落とそうとする。そのことをつきとめた母親も突き落とす。

 この物語は、リアリティをだすため、追悼集に収められている、登山計画書、登山アルバム、葬式での弔辞、遺稿、追悼記、思い出をそのままに羅列する形で出来上がっている。
 なかなかチャレンジングな試みである。

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加納朋子     「スペース」(創元推理文庫)

 駒子シリーズの3作目。

 双子姉妹の妹まどかは家をでて、静岡県の短大に進む。登校初日に遅く起きてしまい、あわててアパートをでて、バスに乗る。バスの運転手が変わっていて、短大のバス停の場所がわからないからまどかに教えてと頼む。

 まどかは他に3人が入居しているアパートに住む。最初はみんなで交代で食事当番をすることになっていたのだが、まどか以外は料理ができず、結局まどかが他の3人からお金をもらい食事をつくることになる。

 まどかのアパートと背中合わせに、オンボロ男性社員寮があった。料理をしているとき、換気で窓を開けると、向かいの男性寮の部屋から声が聞こえる。社員が電話をしていて、挫けそうになっている後輩を年中はげましている。

 5月にまどか達は学年全員で東北に研修旅行にでかける。まどかは一人である資料館を見学して、バスへ戻ると、バスはまどかを残して出発してしまっていた。当時は携帯もなく、まどかは宿泊旅館名も覚えていなくて、途方にくれる。

 そこに、団体を連れてきた観光バスがやってくる。まどかは弱って運転手に事情を話す。
運転手は25分間この地にいることになっている。早くバスに乗れとまどかをせきたてる。

 バスは高速で走り、とある食堂の前でまどかを下す。運転手は何かを食堂のおばさんに話し立ち去る。まどかは食堂の電話を借りて、宿泊する花巻の旅館をかたっぱしから電話をして探し出す。先生が迎えに来てくれる間食堂の手伝いをする。

 そして、驚くことに、運転手はまどかのアパートの向かいに住んでいた青年と知る。
彼は静岡でバス運転手をしていたが、会社になじめず、郷里に帰りそこで運転手になっていたのだ。

 運転手は、資料館で置き去りにされていたのがまどかだとわかっていたから、まどかを必死に救ったのだ。そして、2人はつきあいを始めて、結婚に至った。

 この物語のおしまい近くに書いてある加納さんの文章が印象的。
「無数の物語がギリギリのところですれちがったり、ときには交錯したりしている。それは誰の身にもきっと起きる。もちろん私自身にだって。大切なのはそれに気付くかどうかということ。」

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折原一     「樹海伝説 騙しの森へ」(祥伝社文庫)

 ある大学のハイキングクラブ10人が、樹海にハイキングにでかける。樹海のちかくで宿泊した民宿の主がいう。この樹海には、10km進むと、ある小説家の山荘がある。その山荘で10年前、小説家が妻と子供2人を斧で斬殺する。そして小説家はいまだに見つかっていない。数年前、ある若者が事件の真相をするために樹海に入り遭難する。そして彼の書いた「遭難記」だけが発見される。

 クラブの部長である児玉は、遭難記に従って樹海を歩こうと提案する。しかし、一旦樹海に入ったら戻れないのではという恐怖で5人は別の山に行くと言う。児玉と恋人の麻衣は樹海に入るという。麻衣に片思いをしている片岡も児玉に同行するという。大島は体調が不良ということで民宿に残る。この樹海近くのハイキングを計画した野々村は家庭に不幸があり、家に帰るという。

 それで、樹海へは児玉と麻衣と片岡が入る。途中で片岡が恐怖で体調が悪いと言って、2人が帰ってくるまで体調の悪くなった場所で待つということになる。

 実は片岡は、待つといったのは嘘で、2人が出かけた後をみつからないように追いかける。片岡はチャンスをうかがい、児玉を殺害して麻衣を独占しようと企んでいる。

 麻衣はストーカーに悩んでいて児玉に相談していた。児玉はストーカーは部員のなかにいると確信していて、ストーカーを樹海の中に引き入れ彼もストーカーを殺そうと考えている。

 ここに、家庭不幸で帰ったはずの野々村もまた麻衣のストーカーで、実は内緒で、児玉、麻衣を追う。

 とにかく樹海で殺害すれば、遺体は見つからず、仮に見つかったときには、白骨化して、遭難者として処理される。この樹海の持つ特徴を使って、2重3重の殺し合いが起こる。

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加納朋子     「ななつのこ」(創元推理文庫)

 鮎川哲也賞を受賞した加納さんのデビュー作。

 「ななつのこ」という本の表紙に惹かれた主人公の駒子が、周辺でちょっとした不思議な出来事が起こるとファンレターという形にして「ななつのこ」の作者佐伯綾乃に出来事の経過を報告、それを佐伯が見事に推理して、その原因をひもとくという形式で進む、短編連作作品集。

 駒子は不思議に思う。幼稚園のときのアルバムのなかの一枚が知らない間に抜け落ちてしまっている。いつだれが抜き取ってしまったのかと不思議に思っているとき、突然一美という女性から抜き取られた写真が送られてきた。

 一美は小学校5年のとき、転校してきて一年後にまた九州へ転校していった。特に駒子と仲良かったわけでもないし、印象も薄い子だった。あれから10年近く過ぎているのになぜ突然写真が返送されてきたのか。

 そう言えば高校のとき一美のことが話題になった。何と彼女は16歳で結婚し、子供までもうけたとのこと。びっくりした。

 一美は印象の薄い子だったけど、ものすごく不器用な子だった印象がある。運針はくねくね曲がるし、特に印象が強かったのは、当時はマッチの火をかざしてガスコンロを着火させるのだが、これが決してできなかった。

 そんなことを書いて綾乃に手紙をだす。

 綾乃の推理が手紙でかえってくる。

 写真をよくみてみなさい。うっすらと駒子の後ろに一美が写っているでしょう。一美が火をつけられないのは、一美の家が火事になったから。だから火が怖いから。火災保険で新しい家を建てることはできるが、家族の歴史である写真が全部燃えてしまった。唯一一美が写っていて残っている写真は駒子が持っている写真。だから、抜き取って持ち帰ってしまった。

 では、それを何故今返したのか。一美に新たな子供ができ、愛する子供の写真があふれるほどたまった。それで、駒子の写真は不要になった。

 こんな結構不思議でほっこりする短編が収められている。

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| 古本読書日記 | 15:43 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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中谷美紀   「インド旅行記Ⅰ 北インド編」(幻冬舎文庫)

 この旅行記は、本当に不思議だ。普通作者は、読者を驚かしたり、感動させるために、遭遇した出来事を、これは面白いと思うと、大げさに膨らましたり、ちょっとした嘘まで作ってしまうものだ。それで、どうだ、面白くて参るだろうと読者に迫り、たくさん本を売ろうとする。

 ところが、中谷さんの場合は、これは大変だと思われることに遭遇するのだが、心の動揺はみせず、起きたことを淡々とまではいかないが、日々の出来事のごとく報告するだけで終わっている。

 インドのリキ車の車上で、まとわりつく子供たちとわたりあっているときだと思うがー後からあのときだったのではと推察―パスポート、財布、デジカメを盗まれる。

 まず殆どの人はパニくる。それも、どこあろう、混沌のインドである。それなのに、中谷さんにそういう様子はさらさらみられない。まずは、パスポートを再発行してもらわねばならない。それには、警察署にゆき盗難被害届を書いてそれに警察署の署名をもらわねばならない。まあ、クレディットカードと大きなお金は別管理していたから幸いだった。

 ホテルで警察署の場所を聞き、でかける。日本の昔の役所のように警察はやる気がない。

 盗難しただろう場所を言うと、それはその警察署の管轄ではないと言う。それで、盗難のあった場所に連れてゆくと、ここは管轄内だという。だけど、本当に盗難にあったのか証拠がない。どこかで、紛失したのではないか。盗難とはちがうだろうと、言を左右にして、盗難届の用紙をくれない。

 そこで、中谷さんは自分は日本の女優だ。日本の役人や政府にも知り合いがいる。このひどい警察署の事を日本に伝えると半ば脅迫する。途端に、警察署の態度が一変する。

 これをインドの地方の町で、やりきるのだから豪傑である。文章はあくまで淡々としている。その時はとんでもなくパニくったが、日本で文章にするときは平常心だったから文章も落ち着いたのか、それとも何が起こっても泰然自若な性格なのか。とにかく中谷さんには驚愕する。

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ニール・ゲイマン   「スターダスト」(角川文庫)

 この物語には、最後にむけて2つのことが、埋め込まれている。

 ひとつは主人公のトリストラムが愛するヴィクトリア・フォレスターから、「さっき地上に落ちていった流れ星を持ち帰ってきてほしい。」と要求する。そこでトリストラムは「持ち帰ったら僕の言うことをちゃんと聞いてほしい。」と。本当は、恋人になってくれて、ゆくゆくは結婚したいと言うつもりだったが、そう言っていないところがミソ。

 それから、トリストラムの母親が、実は妖精でなおかつ妖精の国ストームホールドの女王だったこと。

 主人公の住む国はウォール国といい、その境には大きな壁があり、いつも門番がいて、壁からはでられないようになっていた。実は隣のストームホールドは、魔女や妖精たちの国だった。

 上記のように、片思いだったヴィクトリア・フォレスターと恋人関係になりたくて、主人公のトリストラムが言い寄ったところ、落ちた流れ星を拾ってきたら考えてもいいと、とても実行できないことを要求され、それを真に受けて、トリストラムは壁を突っ切って妖精・魔女の国ストームホールドへ行く。そして、困難な道程をたどり、トリストラムは落ちた流れ星を見つける。流れ星はイヴェインという女性になっていた。

 実はこのイヴェインを3人の男と老いた魔女が捕獲を狙っていた。3人の男はストームホールド国王の息子たち。国王より、イヴェインを捕獲したものが次の国王になると宣言されたから。年老いた魔女は、イヴェインの心臓を抉り出し、自分に植え付け、若さを取り戻し、自らの消えかかった魔術をよみがえらせるため。

 読みどころは、トリストラムがイヴェインを連れて、この2組との戦いやあらゆる策謀をくぐりぬけ、ウォール国に帰還するまで。

 それで、肝心なところは、イヴェインが人間の国ウォール国にひとたび入ると、女性ではなくなりただの隕石になってしまう。果たしてイヴェインをウォール国にはいらせないで、トリストラムと結ばれるようにできるか。

 ここで、最初に記した2つのポイントが使われ大団円で物語は終わる。

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大江健三郎   「自分の木の下で」(朝日文庫)

 この作品で引用しているノースロップ・フライという人の書いた「大いなる体系」なる本の一文が考えさせられた。

 「先生とは、本来、すくなくともプラトンの『メノン』以来認められてきたとおり、知らない人間に教えることを知っている誰か、というのではありません。かれは、むしろ生徒のこころのなかに問題をあらためて作り出すようにつとめる人であって、それをやるかれの戦略は、なによりも、生徒にかれがすでに、はっきりと言葉にはできないけれど知っていることを認めさせることなのです。それは、かれが知っていることを本当に知ることをさまたげている、心のなかの抑圧の、いろんな力をこわすことをふくみます。生徒よりむしろ先生の方が、大抵の質問をすることの、それが理由です。」

 先生だから、生徒の知らないことを教えます。それは生徒の頭のなかに記憶される。先生の肝腎なことは、この頭脳の奥に保管されてしまった事柄を引き出す力がどれだけあるかどうかだ。

 更に、ぼんやりある記憶を、鮮明にしてあげて、それをまとめあげ表現できる言葉を作り上げられるようにすること。それらを妨げている抑圧をときほぐしてあげる。

 学んだことは、表現され、使えるようにしてあげないと、無駄な記憶の積み重ねになる。
そうしていけないことを先生は常に自覚して教鞭にたたねばならないと思わされた。

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黒木瞳    「母の言い訳」(集英社文庫)

 日本文芸大賞エッセイ賞受賞作品。

 私は全く知らないが、黒木さんが最も影響を受けた本が「三ケ島葭子全創作文集」。
三ケ島さんという人は大正時代の歌人だそうだ。

 平塚らいてうが、
「人が持ちうる時間と精力には限界があり、人は同時に二つもしくは、二つ以上の事に自分の魂のすべてを与えられない。」
と言ったところ、これに反論して三ケ島は言う。

 「食べるための職業と、孤独な魂の要求に基づく仕事の二つをいかに選択すべきかを考えるのは無駄である。もうぶつかってしまった現実なのだから、それを一刻もはやく自覚して努力すべき。何故なら時間や精力に限りはないのだし、そんなに心細いものではないはず。女性は子供を産むことによって、その魂は制限されるのではなく、より拡大する。」

 この言葉はすごい。黒木さんはここに強い感銘を受ける。

 三ケ島の前記の言葉を体現した歌を紹介する。
「子のために ただ子のためにある母と、知らば子もまた寂しかるらむ。」

 そういえば黒木さんも詩を書き、詩集も何冊か出版している。その詩も紹介する。

 あなたの世界が増えていく 私から一ミリずつ遠ざかる
 私の知らない話がとびだしてくる
 私のうしろにあなたが いたりする
 ママにはうしろにも目があるから、あなたが見えるのよと 私がいう
 あたしもみっつ目があるの とあなたがいう
 ふたつのおめめ こころのおめめ

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| 古本読書日記 | 16:34 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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森見登美彦    「聖なる怠け者の冒険」(朝日文庫)

 独身で会社に働いていて、出勤日は、猛烈に働き、残業で午前様帰宅。で、今は青春真っ盛りだから、週末も独身寮のみんなと連れ添って、運動をしたり、ドライブや映画に食事と徹底的に遊んで過ごす人たちが一般的人間として世の中には多い。独身寮にいて、週末、寮で過ごしていると、自分以外はみんなでかけていて、寮には自分以外いないのではと思う。

 こんな若者は、社会から疎外されていて、人間として積極的でなく、ダメ人間と烙印を押されてしまう。

 だけど、余計のお世話、週末位はダラーっとして、グータラ、グータラと過ごしたい。

 この作品は、こんな怠け者の社会人2年目の小和田君が、京都の街に人助けとして登場する、穴のあいた旧制帝大のマントと狸の面をかぶっている「ポンポコ仮面」に宵山祭りで、色んな経緯から、間違ってなってしまう話である。

 柳小路にある八兵衛明神の部屋に小和田君が連れていかれる。八兵衛明神が、これが小和田君に勝るとも劣らない怠け者で、10年間ゴミ出しはしたことがない。「ポンポコ仮面」は困った人を助けるわけだから、八兵衛明神はゴミを片付けるよう命令する。当然小和田君は拒否する。この時の怠け者同士の言い合いが面白い。

 私も、生き方積極派でないから、小和田君にシンパシーを感じる。

 森見さんの、人間の本質は怠け者であると書かれている下記文章に大拍手をしたい。

 「内なる怠け者の歴史は長い。我々は人類であるより前に、まず怠け者であった。ご先祖様が木で暮らすのを止めたのは、木に登るのが億劫だったからである。勤勉な猿たちが木登りテクニックに工夫を凝らして高みを目指していたとき、木登りを苦手とする怠け者たちは地べたでグウタラしていた。」

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高島徹治  「月10万円で豊かに生きる 田舎暮らし」(幻冬舎文庫)

 都会のあくせくした生活から脱却して、本来の人間性あふれる暮らしをとりもどすため田舎に生活の場を求め移住する。それを実現した人々の豊かな生活を紹介して、田舎生活賛歌本である。

 この本、スローライフのすばらしさ、豊かさを喧伝しているが、本当に田舎生活をするとそれが実現するのか、もうひとつ読んでもピンとこなかった。

 自然を堪能し、スローライフを実現している紹介事例の殆どが、定年直前か定年後に移住した人々を扱っているからだ。そういう人たちは、預貯金もあり、更に年金で生活できる基盤が整っている。正直、都会で暮らそうが、田舎で暮らそうが、せわしい、厳しい生活に陥ることなく暮らせる人々である。都会にいるか、田舎に移住するかは、価値観の相違で、暮らしぶりはそれほど変わるものではない。

 過疎化というのは、若いひとたちが田舎を離れて、帰ってこないから起きる現象である。
いくら田舎生活が素晴らしいといって、60歳以上の人ばかりが移住するのでは、老人世帯が増加するばかりで、そこでの暮らしは不安がぬぐえない。

 この作品では、田舎に住まいを移した後、どのように生活資金を確保するのかが、書かれてはいるが、これで田舎に移って大丈夫なのかという思いばかりが残る。

 まず資格をもって移住しろ。特に医療介護関係の資格が有用。住人は老人ばかりだから働き場はいくらでもある。

 就職場は極端に少なくなるから、再就職はかなり難しい。だから、起業しろという。それも抜きんでたアイデアをもって。それができれば都会でも活躍できる。

 自家菜園くらいの楽しみだったら問題ないが、農業で生計をたてるのはまたこれも厳しい。農地の確保に1000万円。耕作危機、資材に1500万円がかかる。自宅取得以外にかかるのである。しかも、1-2年は無収入という場合が多い。

 田舎に移住して、生計をたてるには、とてもスローライフを楽しもうなんてわけにはいかないとこの本を読んで思った。

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黒川博行    「後妻業」(文春文庫)

 私のよく行く喫茶店のママさんは今66歳。正直、ママさんの風体は、すべての油を吸い取ったような鶏がらのよう。この婆さんママに驚くのだが72歳の爺さん恋人がいて、今同棲中である。そこに、85歳のよれよれの爺さんが現れて、この前「俺の女に手をだすな」と72歳の爺さんに声をあげ喧嘩していた。

 妻に先立たれたりして、独身の爺さんは、本当にどこまでも女性に弱くてどうしようもない。この弱さに付け込むのが、後妻業という詐欺師。

 男性老人をひっかける場所は、結婚相談所。ここに登録してくる、男性老人の資産を調べ、大きな資産があると、結婚相手として婆さんをあてがい、婆さんの体を老人男に与える。

 そして、老人男が幸せ絶頂のとき、遺産相続が全部婆さんにくるよう司法書士に、相談所の仲間と立ち合いの元、遺産相続の公正証書を書かせる。そして、爺さんが死亡したとき、遺産のすべてが詐欺仲間に入るようにする。爺さんもうれしい絶頂にあるから、ホイホイ婆さんの要求に応じる。

 それにしても、男というのは情けない。この物語に最初に登場する、爺さんの年齢が91歳。90歳にもなるような男が結婚相談所に登録するとは。

 婆さんの名前は小夜子で、今は69歳。何と9回も入籍を繰り返している。詐欺師というのは、1回の詐欺では済まない。次々、詐欺をして大金を収奪しようとする。ここで、困るのは、相手の老人が入籍してからも更に長生きすることだ。公正証書を書かせたら、老人はすぐに死んでもらいたい。だから、たくさんの不審死が発生する。ここに、この詐欺の弱点が潜む。

 それにしても黒川の関西弁のしゃべりの場面の描写は秀逸。登場人物が物語の中で生き生きと跳ね回る。

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ミシェル・スラング選   「スロウ・ハンド」(角川文庫)

 ミシェル・スラングが選ぶ世界の女性作家によるポルノ グラフィー短編小説集。

 「かわき」が良かった。

 主人公の娘は、大きな熱帯地方の国にある、島に暮らしている。娘は、母親が国を支配していた白人と本土で関係を持ち妊娠して、白人に捨てられ、島に帰ってきて娘を産んだ。そして、母親はまた娘を捨て本土に消えていった。娘は白人の血が入っているということで、島の村全体から呪われていた。

 そんな時、白人が乗っていた戦闘機が島に墜落する。飛行士は、意識不明の重体となる。

 そして、娘の家に運ばれる。娘が介抱するように命ぜられる。娘はおかゆを飲ませたりして懸命の介抱をする。

 仰向けにして、男の着物を全部脱がせて、スポンジで体の隅々まで洗い拭いてあげる。謎めいた熱帯地方の揺らぐ灯りの下で、慈しむように男根をふきあげる場面は、熱帯の独特な背景描写の効果とともに、異様な雰囲気を醸し出す。

 しかも、物語全体に、明日にも、白人部隊が島にやってきて、戦争の血に彩られた島に変わってしまうだろうという恐怖が漂い、徐々にそれが高まっていきエロティックな効果を増幅させている。

 コンラッドが描いた、熱帯地方の道徳を堕落させ、意志をむしばみ、謎めいた熱気と無気力に満ちた独特の雰囲気が満ち溢れた作品となっている。

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町田康    「実録・外道の条件」(角川文庫)

 実録とタイトルにはつけているが、多分、事実を大分デフォルメしたり、空想したことも書いているだろうと思う。確かに、芸能界、出版界というのは、世間常識からはずれた変わり者が多いだろうとは想像がつく。町田さんの思いは本読む限りなるほどとは思うが、これは町田さんからみるみかたであって、編集者やプロダクションから見ると、また違った風景が見えてきて、彼らにとって町田さんは扱いにくい存在だろうなと思ってしまう。

 事実、出版社のニューヨークに行き小説を書く企画、行きたくない、必要性を感じない、目的がわからないとゴネにゴネて、そこまでしてどういう経過があったのか知れないが町田さんはニューヨーク便に乗っているのである。それも、出版社の用意したファースト・クラス。

 契約してニューヨークに来てしまったのだから割り切って目的に従い取材をすればいいのに、あれこれ気が乗らないといってゴネる。そこを出版社の同行者に懇願され出版社の準備した場所へ、いやいやながら行く。

 町田さんからの思いでこの本は書かれているからそうかとは思うが、同行の出版社の社員の気苦労を思うと、町田さんの対応は大人気なくわがまますぎる。
 実際をデフォルメしてはいるが、ここまで糞みそに関係者をけなして大丈夫なのか。町田さんも一流作家になったものだと感心する。

 ただ彼の主張で一点だけはその通りと思う。

 温泉が流行っているが、町田さん同様、私もどうにも温泉が好きになれない。

 コーヒー一杯飲もうと思う。家なら自分でいれて飲める。旅館ではいちいち電話して仲居さんを呼びコーヒーを注文する。この仲居さんがなかなか部屋に来ない。それで、やっときてコーヒーを頼む。今度はコーヒーがなかなかこないのである。この間、催促しようかどうしようかとずっと気を病む。

 夕食も食べる時間が束縛される。仲居さんや従業員を遅くまで働かせないためか、この時間がやたらに早いのである。6時からとか6時半からとか。何だか入院しているみたいである。

 昼間、あちこちをぶらぶらする。午後2時ころ、空腹を感じる。蕎麦でも食うかと思うがこれができない。今食べてしまうと旅館の夕飯が食べられないのである。で、我慢するとやたら飢餓感が募る。

 本当に温泉旅館に宿泊することは窮屈だ。

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ランダル・ウォレス   「パール・ハーバー」(角川文庫)

 これは、戦争物語に無理やり悲劇的恋愛をはめこんだ、かなり唖然とした物語だった。

 固い友情で結ばれていたレイフとダニーは、いつか戦闘機の飛行士になることを夢見ていた。そして、その夢が叶い、2人とも優秀な飛行士になる。レイフは美人の従軍看護師イヴリンに恋をする。

 ダニーとイヴリンは、勤務地のハワイに行くが、レイフは志願して義勇軍飛行士となってヨーロッパ戦線にでかけ、ドイツ軍との戦闘で、ドイツ軍戦闘機に撃墜され、軍機は炎上、パラシュートも開かず、そのまま墜落死した。

 レイフの死亡連絡に衝撃を受けたイヴリンはダニーと関係を持ち、しかも妊娠までしてしまった。

 で、何これ?というのは、アメリカ小説らしいのだが、実はレイフは死んでいなくて、スペインの民間船に救出され、レイフは帰国し、そしてダニーとイヴリンのいるハワイにやってくる。そりゃあないぜとかなり白ける。

 アメリカ小説だから、きっと最後は、ダニーとレイフが戦闘にでて、ダニーが戦死して、死ぬ間際にイヴリンと子供を頼むとレイフに頼み、ダニーの願いをレイフとイヴリン一緒になってその頼みを実現してゆくということになり物語は終わるのではと想像できる。
 で、読むと本当にそうなる。

 実は真珠湾攻撃は、アメリカは日本の通信を傍受していて、攻撃される前に知っていた。それが理由なのかわからないが、真珠湾を母港としていた、空母3隻は真珠湾にはおらず、日本の攻撃は大打撃を与えることはできなかった。また、日本軍は、真珠湾攻撃では民間人、民間施設は攻撃しなかった。犠牲になった民間人の殆どはアメリカ軍が撃った流れ弾にあたったためだった。その後の東京大空襲や広島、長崎の原爆はアメリカが国際法を無視して、どれだけ酷いことをしたか、この作品を読んで、また思い返してしまった。

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本多孝好     「WILL」(集英社文庫)

 本多のベストセラーとなった「MOMENT」の姉妹本。短編連作となっている。

 収録されている「爪痕」に「WILL」について意味が記載されている。

 リビング ウィルという言葉がある。死が迫っている患者が、まだ判断能力のあるうちに、どういう治療をして、死をどうむかえるか書面にしておくことを言う。

 「WILL」というのは意志である。意志というのは未来をどうするかということと同意味。だから「WILL」は未来と同じことを指す。

 佐伯という船舶会社の部長だった男が死亡する。主人公の森野が営む小さな葬儀店で、葬儀が行われた。

 それからしばらくして牧瀬裕子と名乗る女性がやってきて、佐伯の葬儀をもう一度してほしいと依頼がある。それはできないと断った森野。気になってどういうことか調べる。実は牧瀬は、佐伯の愛人だった。更に驚くことに牧瀬は佐伯との関係に悩み、自らの手に刃物を刺し傷つけ、病院に佐伯が亡くなったときには入院していた。しかも、佐伯が亡くなったことを知った直後、病院を抜け出て自殺していた。つまり、すでに亡くなっていた人が、森野を訪れ葬儀依頼をしていたのである。

 死んだ人が、葬儀依頼などできるわけがない。更に森野が調べてゆくと、牧瀬が入院していた病院の事務員橋口が牧野をかたって葬儀依頼にきたことを知る。

 橋口は、牧瀬のベッド脇で、入院の保証人を誰にするか、牧瀬に迫った。牧瀬は身よりが誰もいなかった。だから「いない」と言うしかなかった。

 橋口も牧瀬とほぼ同い年で、孤独で似たような境遇だった。牧瀬が孤独な死を選択する。橋口は自分に重ね合わせて牧瀬がかわいそうで不憫で仕方なかった。だから愛していた人の葬儀を牧瀬が喪主でしてあげたかった。

 都会の暗い闇、せつなさがひしひしと迫ってくる作品だった。

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吉田紀子     「ハナミズキ」(幻冬舎文庫)

 高校時代には、多くの人たちが純粋で熱い恋愛をする。この作品のように、高校を卒業すると、互いが遠く離れてしまうということも結構よくある。

 北海道の地元の水産高校をでて、漁師を継いだ康平。進学校を卒業して、東京へでて早稲田大学に入学した紗枝。超遠距離恋愛だから、電話と手紙で互いを繋ぎ合う。しかし、北海道の田舎の暮らしと東京大都会でのキャンパス ライフが二人の知らない間に溝を作る。

 康平が、クリスマスに久しぶりに紗枝に会い東京にでてくる。康平は来る前に電話、手紙のやりとりで十分すぎるくらい再会に気持ちは盛り上がっている。しかも、イブに康平は紗枝の下宿に泊まることになっている。

 康平は、腹いっぱい食べてもらおうとクーラーボックスに蟹、昆布、ホタテ貝をいっぱいつめて東京にやってくる。待ち合わせまで時間がたくさんあったから、康平は早稲田大学に行ってみる。あか抜けた自由奔放の若い学生が、華やかにベンチにたたずむ康平の前を通り抜ける。完全に気おくれする。そんな時、紗枝が男子学生と一緒にいるところを目撃する。

 康平の心にしこりができる。その後、紗枝に予約したレストランに連れていかれるが、素直な気持ちがおこらない。わだかまりが爆発して、店をとびでる。そしてチンピラと立ち回りを演じ、持ってきた蟹や昆布は路上に投げ出される。

 紗枝の下宿で、それでも紗枝に治療をしてもらいながら、お互い大好きだと確認し合って翌日、北海道へ康平は帰る。

 その次は、紗枝は英語を生かした仕事をしたくて、日本を飛び出てニューヨークへ向かう。
ここで、2人の別れは決定する。

 康平は、地元の漁協の事務員リツ子と、妥協結婚をする。紗枝は康平が早稲田にやってきたとき見た学生とニューヨークで偶然再会して、彼にせがまれ付き合いを始める。

 ここから、色んな偶然が重なって、2人は再会することになる。
 そして2人は、高校時代の初恋の情熱とともに最後は結ばれようとしているところで終わる。

 しかし、これは物語だから出来上がる世界である。多くのひとにとっては、純粋で熱い恋愛は、記憶の中に強く刻まれ、年を経ても、時々うずくように懐かしくこみあげてくるだけのものである。

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土屋賢二   「無理難題が多すぎる」(文春文庫)

 人間関係がうまくいかないのは、思っていることを率直に言い合わないからだ。十分に自分のことを知ってもらえば尊重してもらえる。これはおかしい。あいつを殺したい。憎いやつだ。こんな風に思っていて、率直に口にしたら、険悪になるばかりだ。妻は「言いたいことがあるのならはっきり言いなさいよ」と怒るけど、怒るようなことを考えているのだから、言えるわけがない。

 魔神が現れる。60歳になったら、一つ何でも願いをかなえてあげると。妻は世界旅行をしたいと言ったら、チケットが目の前に現れた。夫が30歳若い妻が欲しいと言ったら、途端に夫は90歳になっていた。

 留守電は、クレームか金の請求ばかり。だから、次のような留守電サービスにしてほしい。
「ピーと鳴ったら用件をお話しください。ただしピーは一時間後になります。」
「ピーと鳴ったら用件をお話しください。」と言った後「ピペ、パピ、プペ、プパ」と鳴り続けいつまでたっても「ピー」と鳴らない。

 毎週、毎週土屋先生、こんなことを絞り出して、週刊誌に連載している。ご苦労なことだ。

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市橋達也   「逮捕されるまで」(幻冬舎文庫)

2007年3月26日、NOVAで働いていた英会話講師のリンゼイ・アン・ホーカーさんが全裸で扼殺される事件が起きる。犯人は個人レッスンとして契約していた市橋達也。警察は彼のアパートを取り巻き身柄確保をしようとしたが、その包囲網をかいくぐって市橋は逃亡する。その逃亡から逮捕に至るまでの2年7か月間のを市橋が綴ったのがこの作品。

 市橋は両親は医師で、当然両親からは医師になることを求められていた。そんなに難易度の高い大学の医学部に行かなくても、裕福な家庭なのだから、どこかの医学部にはいることは難しいことではなかった。それが、何と4浪をして千葉大の医学部ではなく園芸学部に入学。卒業しても就職はせず、親から15万円の仕送りをしてもらい生活をしていた。

 この事件を起こしたときは、さすがに両親は市橋を見放し、仕送りを止めた直後だった。

さて、作品である逃亡記なのだが、本当に不思議な作品だった。とにかく、逃亡をしている今しか書かれていない。

 殺人についての記述は全くない。それに至った経過、動機が全く書かれていない。しかも、殺したリンゼイさんへの謝罪、悔恨も殆どない。唯一、図書館で「ゴンドラの歌」の歌詞を読んで思い出す部分だけ。

 市橋は多くの野宿をしている。そんなとき、人を殺した後悔などが沸き上がり抑えられない気持ちに陥ることはなかったのだろうか。大概、こういう殺人者は、自分の免罪符として、育ってきた環境や友人関係などがひどかったからと回顧するものである。

 関心のすべては、警察に捕まらないこと。それで、異常に顔を変えようとする。自分で鼻に針を通したりする。飯場で働き、100万円くらい稼ぎだすのだが、殆どすべてを整形病院で顔を変えることだけに使ってしまう。その整形外科医院からの通報で捕まることになるのだから。

 この本は、事件への一般の関心が強く、ベストセラーになり、幻冬舎は儲かった。儲ければ何をしてもいいのだと考えた幻冬舎は神戸連続児童殺傷事件の犯人、酒鬼薔薇聖斗のエッセイ「絶歌」を出版し世間の大顰蹙をかった。

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秦建日子   「殺してもいい命」(河出文庫)

 事件の幕開けは、主人公で美人刑事雪平の元夫佐藤和夫がアイスピックで刺され殺されるところから始まる。その死体には赤いリボンで結ばれたチラシがあり、そこに「殺人ビジネス始めます。新規開業につき、最初の3人までは特別価格30万円/人で請け合います」と書かれている。

 その後、中堅電機メーカーの人事部長の岩根が殺され、同じようなチラシが死体にある。

 この他、一見殺人事件とは関係なさそうな、事象があれこれ起こる。一つは刑事部長の姪っ子の愛美が永井というストーカーにつきまとわれる。この永井を逮捕するなりして愛美から離すようにしてくれという刑事部長からの依頼がある。この愛美が飼っているナイトという猫が、足玉の部分を切り取られ失踪する。

 同じ猫に関連して、署管内に猫を虐殺する人がいると動物愛護同盟から、犯人をつきとめるよう署に被害届がだされる。

 神無月元刑事が、自宅で他殺死体となって発見される。

 これらバラバラな出来事が最後に一つに収斂される。

 実は雪平は過去に2人の犯人を、刑事事件で射殺している。その際、銃を使ったことに対しマスコミから問われる。雪平は「犯人を殺したことについて何も感じるものはない。」と平然と答える。

 雪平の元夫を殺した殺人請負人は、この雪平の冷徹な反応を見て、感激し、殺人をしても自分も何も感じない人間になると決意した元夫の再婚妻。しかもこの妻は、雪平の友達でもあった。 

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| 古本読書日記 | 14:41 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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ペニー・ジョーダン   「苦いレッスン」(ハーレクィーン文庫)

 近くのブックオフに行った。100円/冊コーナーではあまり本の入れ替えがなくて、もう手に取るべき本が殆ど無くなっていた。しかたなく、投げやりな気分でタイトルだけで買ってきてみて家で確かめたらびっくりしたのだが何とハーレクィーン文庫だった。

 日本でいえばヤングアダルト作品で、中学生、高校生に読まれていて、ハーレクィーンはそこにあちらこちらに性描写が散りばめられている作品だと思っていた。まあ、老年にはいりつつある私のような人が読むようなジャンルではない。でも買ってしまったから素通りもできない。

 この作品、意外と性描写も少なく、物語としても結構しっかりしていた。

 主人公のニコラ。18歳の時に、パーティに誘われ、着飾って出席したのだが、当時の彼に無視され、更に彼がとくてい別の子と踊ったり、楽しそうにしていることでショックを受ける。やけになって酒をのみ、介抱してくれた男に車に乗せられ、男の家に連れてかれる。

 朝目覚めると、下着だけになってベッドに横たわっている。まだ男性を知らない身。とんでもないことをしでかしたとショックを受け、あわてて我が家に帰る。

 それから8年後。地元の建設会社の社長秘書として働いている。その会社が乗っ取られ新しい社長がやってくる。何とその社長は、8年前に拉致した男だった。ここから、ニコラの激しい動揺が始まる。

 うれしいといって、せつないといってまあよくニコラは泣く。それに発熱したり、青ざめよろけたり、とにかくゆらめいてばかり。これがハーレクィーン作品の特徴なのか。

 確かにティーンエイジャーの子たちが喜びそうな小説だ。

 作者ペニー・ジョーダンはこの15年に100冊のハーレクィーン作品をだし、6000万冊の売り上げを記録しているそうだ。僕らの知らない小説の世界がある。出版不況と言われているが、それとは関係のない世界が確かにあるのだ。

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| 古本読書日記 | 14:39 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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有栖川有栖選    「小説乃湯」(角川文庫)

 滝沢馬琴から始まり、谷崎、太宰を含め、お風呂、湯船、サウナが登場する作品を収録。
既読の作品が半分。どの作品も素晴らしいが、私が大好きな作家、長野まゆみさんの「恋も嵐も春のうち」が一番よかった。

 東京郊外にある宿屋「左近」は、今は逢引の客が主なる客の宿。看板もだしていないので、予約のあった客は、宿屋の番頭が駅まで宿名のはいった提灯を持って迎えに行く。

 その日、テレビにも出演している浜尾が来るとき、宿の息子、桜蔵しか家におらず、浜尾は桜蔵が迎えに行った。浜尾はいつも先にきて、情人は1時間遅れくらいでやってくる。

 桜蔵がむかえにでると、「宿の人かい」と声のかけてきた男がいた。桜蔵はそうですと言って、男を宿まで案内し、部屋へあげ風呂の支度ができていると告げる。

 男は一番風呂は肌が痛いから、桜蔵に入るよう言う。しかたなく桜蔵が湯船に向かう。足元に桜の花びらがひらひらと落ちる。湯船にも開いていた窓から、桜が舞い落ち、湯船を一面ピンクで覆う。このあたりの描写が本当に美しい。

 湯から上がり、桜蔵は男を湯に案内する。桜が降りしきる中、16歳の桜蔵を男が抱き寄せそっと接吻をする。

 男を案内して、帳場に戻ると、家の者が帰ってきている。そこに電話が鳴る。
「浜尾さんが駅についたのだけど、宿の場所がわからず迷ってしまっている」と。桜蔵は「迎えもできないのか。」と家人から叱られる。

 じゃあ、あの男は誰なのだと風呂と部屋にゆくが、男の影も形もなかった。

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| 古本読書日記 | 16:33 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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関口尚    「ソフトボーイ」(ポプラ文庫)

 高校野球も格差は広がっているのだろう。有名校になると、全国から優秀な選手を集め部員も100人以上。誰もが高いレベルの技術を持っている。一方、地方予選にでるために、人員集めをしている学校も多くある。それでも、集める生徒は、中学のとき野球はやっていたが高校では違う部に入っている。違う部から員数合わせのために借りてくる。それなりの経験や、運動神経が発達している生徒が加勢する。

 これがソフトボールとなると、簡単ではない。ソフトボールに高校生活のすべてをかけようなんて思っている生徒は殆ど皆無。だから集まってくる生徒は、仕方なく、しぶしぶである。暗くて、落ちこぼれていて、無気力。生まれてこのかたボールなど握ったことがない生徒ばかり。

 では、何故、この作品では部員が集められたのか。もちろん言い出しっぺの野口の魅力もある。しかし、落ちこぼれて、根暗の人たちは、孤独がいやで、友達が欲しいと真剣に願っているから、部員の誘いに応えているのである。

 部員になった日から、声を掛け合い、一緒にいてくれる友達ができることがうれしいのだ。

 それから、発想力、表現力が豊かでみんなをその瞬間ひきつけることができる野口がいる。しかし野口は、少しだめになったり、うまくいかなくなるとすぐに投げ出す。

 こんな野口の性格がよくわかっていて、もうあいつはいやだと思っているが、知らないうちに野口についていってしまっている主人公の鬼塚がいる。

 鬼塚は料理に人生をかけようとしていた。フランスの三ツ星レストランシェフ、ジャンピエールが東京でワークショップを開催する。ピエールに手紙を書いたらそのワークショップに招待される。しかし、地方大会を不戦勝で勝ち上がったソフトボール部の全国大会第一回戦がワークショップの日と重なる。鬼塚は悩んだが、料理を選びソフトボール部をやめる。

 すると、途端にソフトボール部が瓦解する。

 組織は、野口のような派手な発想力を持つ人も重要だが、それを実現する具体的方法まで落とし込んで、周りの人をまとめあげていく参謀も必須であることをこの作品は教える。鬼塚は結局ピエールをあきらめ、野口をはじめソフトボール部の仲間を選択する。

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| 古本読書日記 | 16:31 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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高橋三千綱     「さすらいの甲子園」(角川文庫)

 私の少年時代は、誰もが野球に憧れ、野球に毎日明け暮れていた。そして、その憧れの中心にいて輝いていたのが長嶋だった。チームを作ると誰もがサードを守りたがった。

 長嶋が引退したのは大学最後の年だった。日本全国が引退セレモニーに感動し、泣いた。

 その長嶋翌年に巨人の監督になったが、何と最下位に終わった。この小説は、最下位に終わった長嶋を助けてやろうと考えた主人公が、草野球チームを作り、そこから優秀な選手を巨人にいれて巨人を強くしようという動機から始まっている。

 このころ会社に入り社会人と私はなった。会社でも、地域でもたくさんの草野球チームがあった。朝5時に集まって、会社が始まる前に野球の試合をする、早起き野球が流行した。

 そんな時代背景でできあがったのがこの小説である。

 野球は、素人でも、試合の面白さは一瞬で、その裏で、練習をして常に技術を向上させるか、維持させなくてはならないスポーツである。更に、自己犠牲を強いられ、草野球でもフォア ザ チームを求められる。我慢、協力が優先された昔の社会では、マッチしていたが、今は個性が重要視される時代、全く草野球は流行らなくなった。

 私の会社のチームも解散するか、40年近く誰も新人で入ってこず、年齢がそのままあがり平均60数歳のチームになっている。

 だから、この小説を今読むと、古いという印象が強い

 またあまり試合の場面に臨場感を感じない。むしろ、このチームに集まった、吹き溜まりの人生を送っている、個々の人たちの個性的な言動が読むべきところだった。

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桜井よしこ    「日本の決断」(新潮文庫)

 ここにきてまた安倍内閣の支持率が上昇している。昨日のNHKでは57%。安倍政権には批判的とされる朝日新聞でさえ54%である。今三つ巴になって代表選を繰り広げている民進党は本来政党支持率がアップするところなのだが、逆にダウンして7%にまで落ち込んでいる。

 この本は、民主党政権時代に桜井さんが書いた時事評論を収録している。だから、かなり今からみると色あせてはいる。安倍首相の考え方と近い桜井さんだから、その頃の主張は安倍内閣になって着々と実行されているから、あまり驚きやなるほどと新鮮に思われるものは無い。

 ただびっくりしたのは、鳩山内閣時、外相だった岡田現民進党代表が、日本総研理事長である寺島実郎氏をアメリカ大使に任命しようとしたという事実。寺島氏はアメリカ、中国、日本は位置関係を正三角形の等間隔でなければならないと主張、これを当時の民主党が飛びついて、アメリカとは距離をおき、中国に日本が近付く政策をとろうとした。

 結果鳩山さんはアメリカからルービン(愚か者)と呼ばれ相手にされなくなり、一方すりよった習近平からは、尖閣諸島領海に中国船が侵入する常態を作り、レアアース輸出禁止の制裁を受け、日本企業を震え上がらせた。

 こんな状態にならしめる寺島氏の駐米大使が実現していたらどうなっていたかぞっとする。日本は、自由、民主主義、法治を国の基本的姿として軸足を定め、ぶれることなく、世界に主張する国であってほしい。

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| 古本読書日記 | 16:22 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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本多孝好    「MISSING」(角川文庫)

 父親は小さな保険会社に勤めていて、生保レディの管理をしている。よりどりみどりという状態で、女性の出入りが激しい。実は父親は再婚で当然母親も元生保レディ。年の差は15もある。当然、また父親には愛人ができる。そして夫婦関係は最悪となる。父が激昂して母を殴り倒すなどということは年中。

 娘である2人の姉妹は、父に憎悪して、母に頼る。姉の名前は美郷。妹は典子。典子は眼が悪く、でかいレンズの眼鏡をかけている。

 ある雨の日、姉妹は、母に傘をもっていってあげねばと思い、母の勤めているスーパーにでかける。通りの向こうに母が見つかる。その途端に妹が傘をもって飛び出す。そこに車がやってきて妹典子をひき殺し、そのまま逃げ、犯人はみつからないままになる。

 通りの向こうの母は、実は、男に抱かれるようにして歩いていた。

 美郷は、その時から、美郷という名を捨て、自分は典子であると言って、典子になって生きる。母と父に、殺された典子を忘れさせないために、そして、母と父が典子を殺したのだとずっと思えるようにするために。

 そして、10年間典子として生きた美郷は、通りがかった火事の現場で、逃げ遅れた子供を助けようとして飛び込み、焼死してしまう。

 美郷は両親の不貞をすでに知っていた。そして、あの雨の日眼の悪い典子が、通りの向こうの母の存在がわかるわけがなかった。だから、典子は、美郷が「おかあさんが向こうにいるよ」と言わなければ飛び出すことはなかった。そんなことを言ったかどうかは不明。何かが無ければ典子が飛び出すことは無かった。どうして車に轢かれてしまったのか真相は不明。

 最後に焼死した美郷が読者にぐっと鬼気をもって迫ってくる。

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| 古本読書日記 | 15:30 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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井原美紀    「リコン日記」(集英社文庫)

 正直、よくこんな離婚に至る個人的なことを書いて本にしようと思ったし、出版社も本にしようとこれもよく思ったものだと読んで思った。

 こんなことを書く井原さんという人はどういう人かと思って調べてみると、会社を経営していて、流行雑誌を中心に活躍しているし、海外もとびまわっている。途上国の子供たちの識字率向上にも取り組んでいる大活躍な人だった。しかも、結構美人で自信をもって生きているという風格もあり、何でこんな人が離婚で苦しんだのかと不思議な思いがした。

 結婚半年後で、夫に愛人がいることが判明する。この夫、脇が甘く、愛人とやりとりした手紙などの証拠品を家に持ってかえる。普通、それだけでも怒り狂って、夫にせまる。5人も愛人との浮気が続けば、生活は持ちこたえられず離婚が普通である。

 わからないのは、離婚を決意して、その後の交渉を有利にするため、興信所に頼んで決定的現場を押さえた証拠写真レポートを入手。そこまでしても、彼を今でも愛している、戻ってきてほしいと彼の浮気に耐えたり、彼に懸命に愛想を使うところ。何のための興信所調査なのか。

 正直、関係者には関心のある本だけど、無関係な人たちにはどうでもよい本で、どうぞかってにやってという内容。 

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| 古本読書日記 | 15:28 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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佐藤愛子    「何がおかしい」(角川文庫)

 バラエティ番組では、少しも面白いとは思わないのに、スタジオで笑い声があふれることがしばしば。番組を盛り上げるために、笑いを強要するのである。こういう類の番組がでてきた当初は、笑い屋という専門の人たちがいて、そういう人たちをスタジオに集めて笑いを作ったそうである。

 今は、多くは若い女性たちがスタジオでこの役を引き受けている。明石家さんまが登場して、何をしゃべっても笑って反応するのである。ここで、付和雷同せず、笑わないでいると、その人は、蔑まれ、団体から弾かれる。先を争って笑わねばいけない。

 その昔、葬式ごっこというのがあって、標的にされた子が、苦しみ自殺したことがあった。

 驚いたことに、この葬式ごっこに先生が担任も含めて4人が加担していた。廻ってきた色紙にある教師は「やすらかに」別の教師は「かなしいよ」また別の教師は「かなしいよ」と書いた。

 事件が発覚したあと、ある教師は「ジョークだから、書いてよ」と言われたからと、また別の教師は「ばかなことをするなよと、たしなめながら書いた」と証言した。

 自殺した子は、机の上に飾られた遺影や花束、寄せ書きをみてただ笑っていた。

 先生には最悪な人間、それでも教師かとの非難が一斉にわきあがった。

 「冗談じゃん。ジョークもわからないのか。」とさんまのしゃべりに笑いをせねばならないように、参加を強要し、もし参加しなければ、あいつは冗談も通じないと疎外する。

 先生も集団からはじかれたら困る。いじめっこグループの冗談につきあわないと、馬鹿にされはじかれ、まともな授業ができないのである。

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| 古本読書日記 | 15:03 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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