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2016年05月 | ARCHIVE-SELECT | 2016年07月

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今野敏    「ICON」(講談社文庫)

 私のような時代遅れの人間には先ごろ起きたアイドル殺人事件というのが全く理解できなかった。富田真由さんというアイドルがライブハウスで切り付けられたという事件である。

 私の世代の人間が知っているアイドルというのは、テレビ、映画に活躍していて、誰でも知っている人だった。しかし富田真由さんというアイドルは知らなかった。そもそも、私たちが理解しているアイドルからはかけ離れている。ごく一部の熱狂的なマニアックの人たちしか知らない存在、その人をアイドルと呼ぶ。サブカルにカテゴライズされる人である。

 この作品も、パソコン通信で熱狂的なマニアが燃え上がる、有森恵美という名のアイドルが事件の鍵を握る。熱狂的ファンを集めて、ライブハウスなどで、「有森恵美コンサート」が行われる。これが不思議なのだが、有森本人が登場したことがないのである。有森公認という「アリモリ ファミリー」「アリモリ サポート バンド」が演奏するだけ。この2つのバンドが有森公認というだけで、CDがそこそこ売れるのである。

 今世界には、サブカルであるアイドルマニアが存在していて、いるかいないかわからないバーチャルの世界でアイドルを作り出しているのである。

 この作品では2つの殺人事件が起きるが、事件の鍵となるのは、バーチャルのアイドル有森恵美が実在するかどうかであった。

 こんなことはパソコン世界では当たり前なのだろうが、全く疎い私には面白く新鮮だった。

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| 古本読書日記 | 16:21 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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小松成美     「和を継ぐものたち」(小学館文庫)

 日本の伝統文化を引き継ぐ人たちと著者とのインタビュー集。
 将棋は紀元前2000年前にインドで始まったゲームが起源と言われている。それが西洋に伝わりチェスになり、日本に伝わり将棋となった。

 それにしてもコンピューターが人工知能AIまで持つに至っても、こうやれば絶対勝つという指し手が発見できないのだから、将棋というのは有限のゲームにもかかわらず、奥行きの深さ、広さは計り知れない。

 今のゲームの形は戦国時代にできあがったそうだ。生け捕りした相手方武士を更に技を強くして敵にぶつけるのだから、ゲームは複雑極まりないものになる。

 最近は和楽器奏者が、ロックなど西洋音楽と共演して、その魅力を発揮させていることが多い。日本の笛は、音階をあげることができない。だから、篠笛奏者の狩野さんは、音階の異なる12個の篠笛を常に持ち歩いているそうだ。

 能は本来、観客を集めて演じるものではない。将軍とか天皇などに奉納。原則は一対一で演じるものなのである。だから、たくさん集まった客の前で演ずることはやめ、本来の形に戻して徹底的に一対一の美を追求すべきように思う。もちろん、国よりお金を補助して。

 狂言は、今で言えば、コントや漫才のようなもの。観客に一段高い伝統芸として緊張感をもたせてみせるより、観客が遠慮なく大笑いしても構わないという雰囲気でみせたほうがいいように思った。

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| 古本読書日記 | 16:16 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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ジョン・サンドフォード 「ハッカーの報酬」(新潮文庫)

 ニューヨークに住んでいる新進画家キッドは、天才的ハッカーでもある。このキッドにある防衛産業の大企業から、ライバル企業の次期戦闘機開発計画を混乱させ破壊して欲しいとの依頼がある。報酬200万ドルにかかった必要経費をすべて負担するというのが条件である。

 ここで2人の共同実行者が登場する。一人は女性で泥棒稼業のルーエレン。もう一人は元ジャーナリストのデイス。

 どうしてコンピューター破壊のために、この2人が必要なのだろうかと不思議に感じる。

 女泥棒は、ライバル企業の重役の家にキッドと忍び込み、女泥棒が盗みをしている間にキッドは重役のパソコンに入り、ライバル企業のシステムから重要データを取得したり、システム内容を把握するのである。これにより、自分のPCよりライバル企業のシステムに入り、ウィルスや爆弾をしかけるのである。

 ジャーナリストは、ライバル社のシステムが大混乱に陥ったときを見計らって、ライバル会社が崩壊するとかスキャンダルをでっちあげ、情報をマスコミに流し、ライバル社の存立基盤を揺るがすのである。

 この3人に更に超天才ハッカーボブが正体はださずネット上だけで登場する。

 たった4人で、確固たる大企業を崩壊させることができるのが現代社会である。

 この間の英国EU離脱なんかも、限られたごく少数の人間が、裏で操り、現実化させたのではと、この作品を読み頭の隅を過った。

 戦争反対、核開発反対などと叫んでいることがどこか現代ではズレているような気持になる。

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| 古本読書日記 | 16:55 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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今野敏    「曙光の街」(文春文庫)

 元KGBだったヴィクトル、KGBからFSBに組織が変わったとき、そのFSBに移れず、貧しい暮らしを強いられていた。そんな苦境な時、KGB時代上司だったオギエンコに、日本の暴力団津久茂組の津久組長を殺すように命じられる。2万ドルがその報酬である。

 津久茂組長、毎晩、組員の兵藤とその配下のリョウを用心棒にして、ビリョースカというクラブに繰り出す。そしてそこにいるエレーナというホステスを連れ出し自分のマンションに連れ込み遊ぶ。
 こんな隙だらけだから、ヴィクトルはいつでも組長を殺すことは簡単にできる。何故そうしないのか少し読んでいてイライラする。まあ、これでは物語にならないから仕方がないとは思うが。

 しかし、ヴィクトルがエレーナを連れて、組長のマンションに忍び込み、組長を射殺し、そこからエレーナの父親だった、公安外事課の滝課長と対面、対決する場面は、描写に迫力があり興奮のしっぱなし。この過程でオギエンコの目的、滝課長の警察への裏切りが暴露されてゆき、一層この場面の印象が強く残る。

 それにしても、女性をあてがわれて篭絡されてゆく、諜報活動者たちの実態。実際もそうなのだろうかといつも疑問が残る。それから、滝課長は女性と引き換えに色んな情報をKGBに流していてとんでもない男なのだが、こういう男は決して逮捕はされることはない。辞職をするだけで、後は普通に社会で生きていける。

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香納諒一    「噛む犬」(徳間文庫)

 新宿副都心のビルの植え込みから変死体が発見される。死体は、警視庁捜査二課の警部補刑事の溝畑悠衣。溝畑はノンキャリアの刑事。捜査刑事の世界で女性がいることは極めてめずらしい。しかも警部補、部長刑事の上位の階層である。余程、人一倍苦労して刑事の仕事で類まれな成果をあげてきた刑事である。

 一方新宿署でKSP捜査一課を率いているリーダーはキャリアで現在刑事の身であるこれも女性の村井貴里子。この地位も女性刑事としては、かなり辛い存在である。率いるメンバーは、出世とは縁のないノンキャリアの刑事だけ。彼らは上司が女性というだけで、女性が捜査で何ができるかと信頼を寄せない。更にキャリアだから、いずれどこかに異動して出世の階段を上る人とみている。

 一方、貴里子を上にすわるキャリアたちは、捜査現場はノンキャリアたちが行うことで全く興味をしめさない。上手い人脈をつかまえて保身、出世の階段を上ることしか関心がない。そのために、捜査をゆがめたり、上部権力を支えるために、捜査に手心を加えることばかりする。

 こんな男の論理だけで動く組織で、女性であって、真剣に捜査現場で頑張ろうとする貴里子は上に下に敵ばかり。

 実は、溝畑が死んだのも、男社会ではじかれる中、キャリア幹部と大企業の暴力団を使った不正癒着に切りかかり、そのために起きたことだ。貴里子も危ない場面ばかりだったが、沖という部下の刑事に支えられ危機を乗り越え事件を解決する。

 とにかく警察の中で、女性が活躍するということはとんでもなく大変だということがわかる作品だった。

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| 古本読書日記 | 21:04 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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今野敏   「二十標的」(ハルキ文庫)

 若者ばかりが集まるベイエリアのライブハウスで30代のクラブホステスが青酸カリを飲まされ殺される。同じころマンションで大手建設会社の営業課長が殺される。全く関係ないと思われていた事件が、ライブハウスの客に、この大手建設会社の秘書課の女性社員が一人で当夜ライブハウスに来ていたところから、関連があるのではとベイエリア分署の安積警部補が思いつき、2つの事件の真相を追い、安積班のメンバーが活躍する。

 実は真相は、よく推理小説で使われる交換殺人がなされたのだ。営業課長を殺した犯人と、クラブホステスを殺した秘書課女性社員があらかじめ出会って、お互いが殺したい人がいることを表明し、互いが面識も利害も全くない人を殺す。

 交換殺人は、交換殺人をしあう相手をどうやって知り合ったかが物語の一番重要なところになる。

 今でもあるのかどうか知らないが、この物語では、殺人犯同士の接触は一時期大流行りになったテレクラが使われていた。面白いところに目を今野はつけた。

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| 古本読書日記 | 21:02 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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起終点駅(ターミナル)

オリーブオイルはクレンジングオイルになるんですね。そういえば、DHCでそんな商品があった。
表題作で知った豆知識です。

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映画宣伝バージョン

爺やの感想はこちら
私もやっぱり、「スクラップ・ロード」が印象的だと思います。
失踪して記録の上ではすでに死者になっているとはいえ、父親の死骸を、本人が生前掘っておいた穴へ埋めるというのは、なかなかないシーンです。
見栄っ張りな元カノをだますところとか、再就職の面接で辞めさせられた銀行にこだわるところとか、「女王の教室」に影響されてしくじった女教師の話とか、興味深い。
田舎の母親に仕事をやめたことを打ち明けて泣いたり、コンビニの早朝バイトを始めたり、主人公が歩き始めたという前向きな描写もありますが、不穏な雰囲気のまま話が終わります。

IMG_8750.jpg
通常バージョン

「恋はひとつひとつ真理子に何かしら学ばせたが、学び続けているうちに、結局ふたりになりそびれた」
こういう言い回しで、連城氏を思い出しました。
別れた妻について「一度は想いあった者同士」という気障な言い方をする初老の男も、彼の本に出てきそうだ。
自分の死後書かれるであろう物語を意識して、小説家の若者と晩年を過ごしたという歌人の話も、「戻り川心中」「私という名の変奏曲」が思い浮かぶ。
自分の死を演出し、セリフもどこまでが本心でどこからが筋書き通りなのかという設定。
巻き込まれた側も、利用されたことになんとなく気づいているというところが、新しいかもしれない。

里和の出てくる話が2つ入っていたのはいいですね。
2話目で、紺野デスクもそう悪い奴じゃないと読者が感じて、いい気分になれる。

| 日記 | 23:04 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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読んだら忘れない読書術

読み終えてからしばらくたつのですが、記事にしていなかったので。

IMG_8748.jpg

同時並行だったんです。
で、左の本で、「知りたい部分を先に読んでしまう『ワープ読書術』」なんて部分がありまして、右の本がなかなか読み進められなかったこともあり、最後どうなるか確認してしまった……と。
「ワープ読書術」は、一字一句読むのが億劫な実用書にしか使っちゃいけませんな。
救いのない終わりだと知った後で、小説を序盤から読めるほど、私は本好きじゃない。
まさか映画「うなぎ」もこういう終わりなのか? とググったら、そっちは明るい終わり方らしい。

読書術の本は、なかなか面白かったです。
ドグラ・マグラを読んで精神科医になったとか、グイン・サーガで読書の喜びに目覚めたとか、村上春樹の本に書き込みしまくって「借りたけど、これじゃ気が散って読めない」と奥さんに怒られたとか、体験談もいろいろ。
実際に役立つかというと、なりたい自分や知りたいことがはっきりしている人にはいいかもしれません。
糧とするために読むという意識がそもそもない人には、「2日で読み切ると目標を設定」「通勤時間が●分なら、週に△冊は読める計算」「読み終えたらすぐ次に行けるよう、電子書籍を持ち歩いて」といった話は窮屈に感じるだけでしょう。
読書って、そんなに追い立てられてするものなんだろうか(^▽^;)

スマホでだらだらゲームやらメールチェックやらするよりは、なんか得というか高尚というか、聞こえがいい気がする。
いきなり固い本に挑戦するより、入門書から読むのがいいというのはもっともです。
最後に紹介されている本の中では、スティーヴン・キングの「書くことについて」が面白そうでした。

| 日記 | 22:21 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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梶尾真治   「つばき、時跳び」(平凡社ライブラリー)

 シンプルなタイムトラベル恋愛の話。椿が咲き誇る「百椿庵」には、150年前に遡ったり、150年前の人が現代に来れたりする、場があった。そこに、一人で住んでいる作家のところに突然150年前、その「百椿庵」に住んでいた武家の娘つばきが現れる。

 つばきは、この物語の叙述によると、「マイフェアレディ」のヒロイン、オードリー ヘップバーンに似て清楚であるが、凛々しい女性だ。当然、江戸末期から現代へ跳ぶから現代をみてふれて驚きの連続となる。テレビ、パソコン、電話、炊飯器、ガスコンロ、風
呂場のシャワー、電気。それから、2人で外出する。広い舗装道路。車。ビルディング。

 主人公の作家は、つばきの純真な驚きの表情、清らかな心に触れ、恋心が強くなる。一方つばきも作家に恋慕を抱く。しかし、文箱に入っている金属棒が気化して無くなると、つばきは江戸末期に還らねばならない。

 一方作家もあるとき、つばきの住んでいる時代に跳ばされる。そこで、2人の熱い時を過ごす。しかし、やがて作家も還らねばならない時がやってくる。 この別離の切なさ、はかなさを鮮やかに梶尾は描きだしている。物語は平凡だが、ひとつ、ひとつの情景がていねいな描写で、読者には印象的な物語になっている。

 梶尾の面白いところ。

 舞台になっている熊本には「びっくり団子」という名物菓子がある。江戸時代に跳んでいったときに主人公、つばきと行った茶店で、この団子にであう。当然名物だったから、「びっくり団子」だと声をあげる。ところがつばきも茶店の人も怪訝な顔をする。そしておもしろい名だということになり、この団子を「びっくり団子」になることが決まる。

 主人公の作家が江戸末期「びっくり団子」という名をつけ、今では名物になっている。結構洒落た作り話だ。

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| 古本読書日記 | 17:47 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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今野敏     「防波堤」(徳間文庫)

 私の住んでいる街でも秋祭りがある。見た目は華やかなのだが、これを維持継続させることはなかなか難しい。

 もともと地の人が少なくなっている。更に、祭りの核になっていた商店街が姿を消す。更に、賃貸マンションの住人も多くを占め、戸持ちの住人も殆どが勤め人。人間関係は地元より会社関係が強い。祭りを実行する人がいないのである。

 私の街でも集めた自治会費の多くを祭り実行委員会に拠出していた。遊興費でもなんでもいいからこれだけ好きなように使って、祭り実行委員を務めてほしいというわけだ。

 こういう組織は、暴力団など悪の手に染まりやすい。今は民事不介入から暴力団についても民事介入が警察が法律改正でできるようになったから、みかじめ料などの収入が暴力団ではできなくなった。そのため暴力団は民間企業を装ったフロント企業を作り、その企業に活動させて、収入を得る。

 屋台、夜店を稼業といているテキ屋。彼らを管理運営するフロント企業を設立して、実行委員会に近付き、彼らが吸い上げた出店料の幾ばくかを実行委員につかませ、その地域をその暴力団の配下地域とする。

 今の暴力団は、甘い隙だらけの弱い組織や人々を食い物にしようと虎視眈々として狙っている。

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| 古本読書日記 | 17:44 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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有川浩    「ヒア・カムズ・ザ・サン」(新潮文庫)

 主人公の真也は、特殊な能力を持っている。他人の記憶、過去の行為が見えるのである。

 これは先祖代々遺伝として引き継がれている。お祖母さんから言われている。これを自分の都合によく使ってはいけないと。そういう使い方をするととんでもないしっぺ返しを食らうと。

 真也には同じ出版社に勤めるカオルという恋人がいる。付き合いも深くなり結婚を互いに意識する段階に至っている。ところがここで問題が生じる。カオルの父親の存在だ。

 ここで有川さんは全く異なった父親を登場させた2つの物語をこの作品で載せている。

 一人目の父親は売れっ子脚本家で、しょっちゅう締め切りの迫った脚本をいくつも抱えていて、その執筆で忙しく全く家庭を顧みないというか顧みれないという脚本家。

 カオルの出産にはつきあったが、名付けはしない、妻とカオルの退院にはつきあわない。何しろ、出産にはつきあうと、それで仕事は溜まる。何で退院などに付き合わねばならないのだという考えの持ち主。そんな父親に成り代わって父親代わりをしたのが友達の榊。
 父親は、自分の脚本を採用してくれなかったテレビ局と喧嘩して、アメリカに渡る。その際、妻から離婚をつきつけられる。こんな父親だから、当然アメリカに迷いなく渡る。一緒に榊も渡米する。

 変わらず妻子を無視する父親に代わり、榊が父親になりすまし、カオルにプレゼントを贈ったり手紙を書く。この父親が交通事故死する。ところが榊の父親なりすましは継続する。そして、父親が20年ぶりに帰国するということになり榊が父親になりすまし、帰国する。
 この嘘が真也には見える。ここからが大変になる。

 もう一人の父親は自意識と能力がかい離している売れない脚本家。あのドラマもこのドラマも自分が作っているか、アイデアをだし採用されていると言いふらす。幼いカオルはそれを信じクラスで言ったり、作文に書く。すごいと皆に賞賛されるが、それが嘘
だとばれると、嘘つきと皆から蔑まれとんでもない辛い学校生活を強いられることになる。

 そのことを父親に問いただしても、絶対父親は嘘をついてないと言い張る。

 そして父親はアメリカに渡る。当然能力は無いから、アメリカで脚本家の道には進めない。それで皿洗いなどをしてやっとこさ生活を支える。しかし、日本の家族には、売れて売れて大変と手紙を送る。カオルは思う。何でアメリカまで渡りこんな嘘ばかりつくの。
 そして20年後。うらぶれて帰国する。

 その父親の過去が真也にはすべてみえる。それでも父親は、売れっ子脚本家だと嘘を言はる。そして同じように真也は大変となる。

 後半の父親に何となく私はシンパシーを感じた。

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| 古本読書日記 | 17:20 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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今野敏    「烈日」(ハルキ文庫)

 短編集。
 この作品集では、東京湾臨海署が、いつもの作品と幾つか変化があった。建物がバラックのような簡素な2階建てだったものが7階建てのビルになっている。強行犯係は安積班だけだったのが、2つの係ができていた。一係は今の安積班が引き継ぎ、新たに二係ができていて、何と係長に安積のライバルの相楽がついていた。更に、安積班が一名増員され水野という女性部長刑事が加わっていた。これで部長刑事が3人。水野の他に、村雨と須田である。

 村雨はしっかり、厳しく働き、報告もきちんと上げ捜査官の見本のようなタイプ。一緒に組んでいる部下にも、厳しくあたる。一方、須田は体が太っていて、動作も緩慢。見た目刑事にはみえないが、事件の見立てが幅広く、カンも鋭い。そのカンにより犯人逮捕につながることがしばしば。周囲はツキだけと言うが、安積係長はそんなことはなく名刑事だと評価している。

 メゾネットタイプのマンションの一階部分で女性の変死体がみつかる。二階部分の階段手すりからロープがぶら下がっていて、鑑識により死因は縊死。自殺で間違いないと判断がなされる。

 しかし、水野がキッチンのゴミ箱に、新しい料理の材料が捨てられていることを発見する。料理をしている人が、途中で自殺するだろうか、更に首つりという自殺は、覚悟の自殺方法であり、衝動的には行われない。
 そんな時、カンの須田がぼそっと言う。

 「これは『地蔵かつぎ』だ。」と。
地蔵かつぎというのはロープを首にまきつけ、背中合わせになり、相手を背中にかつぐことを言う。相手は足が地面から離れ、宙つり状態になり、首が絞められる。
 このつぶやきが殺害方法だろうと捜査の指針となり、事件は解決する。

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| 古本読書日記 | 17:16 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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三崎亜記    「玉磨き」(幻冬舎文庫)

読んでいる間中、奇妙な落ち着かない感覚にとらわれた。空想ルポを物語にしている。

面白かったのは「古川世代」という短編。

誰が何の目的で始めたのかわからないが、実は日本を引っ張てきて、これからもリードしてゆくのは、古川という姓を持っている人々だということがネットを中心に広まった。
それに火に油を注いだのが週刊誌の特集。それで、古川姓の人々は超優秀で裏で権力を握り、日本は古川姓の人々のおかげで成立していることが何の根拠もなくみんな社会の常識となった。

 ある大学で、本当に古川姓の人々は優秀で国を動かしているか実態を調査する。しかしそんなことは当然あり得ない。それを発表はしたが、関心を示す人は誰もいない。
 就職戦線でも古川狩りが熾烈を極めた。苗字が古川というだけで、高額な報酬が与えられたり、特別待遇が約束された。

 しかし、実際は古川姓の人が特別でないことは明白で、いつかそのことが白日の下にさらされる時がくる。古川姓の人が臓器移植をせねばならない難病に陥った。そこで古川姓の人を救わねばと募金が集められ、移植は成功しその人は助かった。そのことについて、ある小学生が新聞に投書する。

 「古川っていう人は優秀なのに、何で自分で手術代をだせないの。」

この一言が古川優秀の常識の潮目を変えた。

 更にこれに拍車をかけたのが「古川姓詐欺事件。」。優秀なのにお金がない古川姓の人々に、事業資金を投資して、高利回りの運用を実現しようと資金を集める。それが大型詐欺になり、4000人400億円がだましとられた。

 こうなると、手のひらを返したように古川姓の人々に猛烈な社会バッシングが行なわれる。古川姓の人々は社会からはじき出され、まともな暮らしを営むことができなくなる。

 今でも都市伝説が突然蔓延し、瞬間で萎むことがよくある。この話、今の社会の有り様をよく表していて、本当に起こるのではと思いぞっとした。

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今野敏 「黒いモスクワ ST警視庁科学特捜班」(講談社文庫)

モスクワに怪僧ラスプーチンが最初に予言を行ったという古ぼけた小さな教会がある。そこで教会の持ち主である新興財閥主ヴィクトル・ヴォルコフが爆発にあい怪死をとげる。
更に、日本のフリージャーナリストである本田も同じ教会で怪死する。

たまたま、モスクワ警察の招きにより研修に来ていたSTの百合根班長と班員の赤城が研修を兼ね、この怪死事件の真相をFSB(社会主義時代のKGB)捜査員アレクと追及する。

 結構、強引すぎるのだが、たまたまその時、班の黒崎と山吹は休暇をとりモスクワ滞在中、しかもフリージャーナリスト怪死を受け、その捜査に百合根と捜査でコンビを組む菊村刑事および百合根の班の、青山、結城もモスクワに派遣され、いつものすべてのメンバーがモスクワに集結して捜査にあたる。
 教会で起こるポルターガイスト現象の謎が解明されたり、大量の小麦粉の粉塵が地下室に巻き起こされ、それが電球のフィラメントに接触すると爆発が起こることが解明され、犯人はアレクの上司とわかる。

 その上司から、上司がやった事件ではなく事故として処理しろという強迫、命令に正義感溢れるアレクは自分の身の危険も顧みず、上司を逮捕するのだが、ロシアに限らず、同じことが日本の警察内に起きたらどうなるのだろうか。唯々諾々と上司の命令に従うのではと思ってしまうのは私だけだろうか。

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桂望実    「我慢ならない女」(光文社文庫)

 役者バカという人がいる。どんなに極貧になっても、役者をやめようとしない。役者をやめるくらいなら死を選ぶという人である。

 この作品は作家バカを扱っている。すべてを犠牲にしてひたすら小説を書くことだけに全身全霊を傾けている作家樺山ひろ江。役者でも作家でもこういう人たちは、とにかくふてぶてしい態度をとる。自分が一番能力があると確信している。だから、編集者が原稿をなおしたり、意見をすると、いつも編集者をけちょんけちょんにけなす。まわりがすべて馬鹿にみえるのである。

 売れているときには、編集者は入れ代わり立ち代わりやってくるが、少し陰りがでるとさっと水がひくように誰もやってこなくなる。

 この作品のひろ江がすごいところは、ベストセラーをだし大金が入ると、傲慢さにみがきがかかり、贅沢な生活になるが、また売れなくなると、贅沢な生活を忘れ、昔の貧乏生活にもどれるところ。これはなかなかできないことだ。


 貧乏生活をしていたころ、近くの中華料理店で皿洗いのバイトでしのいでいた。最後にアシスタントの明子とその中華料理店に行く。で明子が今日はチャーシュウメンにしようと言うが、ひろ江はあんな薄いチャーシュウが2枚余計にはいるだけで250円高くなるのはもったいないと普通のラーメンにする。

 絶対何があっても、作家として一生を貫いてみせるという固い信念をラーメンに感じる。

 導入部の明子が叔母さんのひろ江をひろ江が望んでいないのに、ひろ江のアシスタントになるところがあまり納得感がないのは残念だが、それ以降は桂の表現力が読者を引きつける。

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今野敏    「残照」(ハルキ文庫)

 医者の息子というのは、概して文武両道の優等生が多い。そして、将来は父親の後を継いで医者になる路線が敷かれている。もちろん多くの医者の子が、何らその路線に疑問を持つことなく育ち医者になるのだろう。

 しかし、優秀な子の中には、医者以外の道に進むことの可能性があるのに、それを断念することに悩む子もいる。

 この物語に登場する風間もそんな子だ。ずっと有名進学校をトップクラスの成績で通過してきた。高校を卒業した時、父が敷いた路線をそのまま行くのは、色んな可能性をとざすことに、まだ青春真っ盛り故、非常に切なく思う。

 そこで親にスカイラインGTを買ってもらい、勉強の時と同じ集中力を持って、ドライブテクニックを習得し乗り回し、お台場にたむろする社会から落ちこぼれた若者たちの憧れとなった。

 彼は、東京警視庁の白バイ、パトカーに追跡されても、すべて逃げ切った。彼に優るドライバーは存在しなかった。それで、暴走に暴走、青春を狂い走り抜けた。

 そして20歳を迎えるころ、お台場の交通機動隊隊長の速水に、筑波山の頂上へむかう道で追いかけられた。つつ゛らおりの道を100キロ以上のスピードでノーブレーキで走る。死闘、命を懸ける戦い。ここで初めて風間は速水に抜かれる。

 その瞬間風間は青春は終わったと感じる。そして、スカイラインを捨て、医者を目指して勉強を始める。自分が医者になることを納得させるために風間にとっては必要な2年間だったのだ。

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有川浩   「ラブコメ今昔」(角川文庫)

 恋人を見つけるなんて難しそうと思ってしまうし、また見つけるのだったらどうやってするのだろうと興味がある自衛隊員恋愛、結婚コメディ短編集。この作品集によると自衛隊員も結構、普通の若い男女と変わりなく合コンなどを盛んにしているようだ。

 結構映画やドラマで自衛隊を扱うものが多いらしい。そんな時は、実際の自衛隊の戦闘機や戦艦などをつかう。自衛隊も宣伝にもなるから、積極的に協力する。

 そんなドラマの最後、ある士官がPKOの派遣で海外へ行くことが命じられる。原作は「頑張ってきます。」と士官は言うのだが、それでは感動が少ないということで、脚本家が原作を変える。士官が言う。
 「怖いよ俺・・・生きて帰ってこれるかな。」これに原作者と自衛隊広報部部長の一佐ががこんなことはあり得ないと怒る。そして部下の過去海外派遣の経験もある政屋一尉に聞く。
 領海侵犯の船を見つけたときお前はどうしたんだと。
政屋は答える。
 「逃がすかと思いました。」
 「しかし、ミサイルに撃たれたとか、恐怖は感じなかったか?」
 「いえ、まったく。むしろ、このときのために日頃訓練してきたんだ。逃がしてたまるか!という思いでした。それは追跡に加わった者全員の思いだったと思いますよ。怖いとか 頭をかすめもしませんでしたね。」

 今、中国が頻繁に接続水域侵入や領海侵入を繰り返している。それに対して国を守ろうと自衛隊員の意識、思いはここで書かれている通りなのだと思う。この自衛隊員の強い意志と行動を知った上での、私達は現在をどう考えるべきかが大切だと思う。

 それにしても、自衛隊員もブルーインパルス飛行隊員になると、そこらのスター以上にファンをたくさんもち、追っかけギャルなどもいたりして、そのモテ度はすさまじいものがあることをこの作品集で知りとても驚いた。

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今野敏    「陽炎」(ハルキ文庫)

 短編集。
 
この作品集は、新しく新設されたお台場東京湾臨海署の安積警部補率いる強行犯係の個性的4人の刑事の活躍する物語である。
 この短編集に収められている「科学捜査」にSTシリーズに登場する心理分析専門の青山が登場する。青山はプロファイリングの知識を極めている。

 お台場の海岸で、全裸女性死体が発見される。真夜中の発見であり、目撃者も発見者以外にはいない。この状態では、身元確認が困難と思われる。
 ところが、青山は爪の加工状況、髪の形状、体のスタイルを見ただけで、モデル所属事務所をあたれと指示する。その結果身元はすぐわかる。

 参考人として浮かんできたロックミュージシャンを取り調べる。刑事がアリバイなどを聞いているとき、青山が突飛もない質問をする。
 「ご両親は元気?」
参考人は言う。両親なんかいない。小学校のとき離婚した。母親は別の男を作って逃げ出す。父親に育てられたが、酒と女と博打に狂っていて10年前に死んだと。

 こういう幼いころ家庭的トラブルにあっている人間は、支配型、権力型のパターンになる人物が多い。自分の権力を誇示し支配することに喜びを感じる人間になる。

 物証を探すのは刑事の仕事になるが、イメージでは犯人はこの参考人であると青山は言い切る。そして、青山のイメージに従って捜査をすると、参考人が犯人である物証が集まる。

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今野敏    「最前線」(ハルキ文庫)

 会社で華々しくみえる部署とはどこなのだろう。マーケティング、企画部門、商品企画、経営企画、それから広報部門などが上げられる。

 しかし新入社員は、いきなり華々しい部門に配属されることはまずない。営業最前線や管理部門が普通の配属場所。そんな部門に配属され、まず夢が破れる。そして、それらの部門には、たいがい嫌われ者の鬼軍曹みたいな人がいて、結構身柄をそんな人に預けられることが多い。

 そんな鬼軍曹は、仕事だけでなく、箸のあげおろしのような、些末と思われることまで、厳しく躾られる。もちろん、仕事に関しても、報告の仕方、口の利き方までネチネチ言われる。そして、鬼軍曹を大嫌いになる。周囲をみるとこの鬼軍曹をみんな嫌っている。だから課長は何でこんな嫌われ者を放っておくのだろうと不満になる。

 ところが不思議なもので、次の部門への異動が決まり、鬼軍曹と別れるときがくると、鬼軍曹に対して非常に親身な気持ちがわいてくるし、懐かしく思う。

 そして、新しい部門で行き詰まるときがあると、いつも鬼軍曹の言葉や叱られたときのことが浮かんでくる。あれほど嫌っていた鬼軍曹をよりどころにして仕事をしている自分に出会う。

 組織で伸びてゆく人の多くは、多くの人がこんな鬼軍曹と出会っている。若いときに鬼軍曹に出会えなかった人は意外と伸びない。

この作品にでてくる村雨部長刑事は軍曹の典型。その元で過ごした大橋刑事は、今は事件の最前線で最も活躍している刑事になった。

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今野敏   「虚構の殺人者」(ハルキ文庫)

春、秋のテレビ番組の改変期、3時間スペシャルと銘打って大型番組が放映されることがある。この大型番組の企画制作案が局で承認されると、どんな役得が製作者にはあるのかと安積警部補が製作者に聞く。作者今野は何の衒いもなく、大沼プロデューサーにこう答えさせている。

 「正直言うとな、しばらくはやりたい放題よ。製作費浮かして大名遊びだってできる。プロダクションの接待はある。代理店が、スポンサーとの打ち合わせと称して高級クラブをセッティングする。女を用意することもある。金が動くときもある。貴金属を贈られたりする。」

 何だか3時間の特別放送番組など、見る気が全くなくなってしまう。こんな風潮が当たり前のように蔓延しているから、世の中テレビ離れがどんどん進む。

 タレントには3つの顔がある。普通の社会の中での顔。テレビドラマや番組の中の顔。それと業界内の顔。
 この中で、絶対失ってはいけない顔が業界内の顔。ここから、こぼれてしまうと、もう生きていくことができる場所がない。

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| 古本読書日記 | 16:14 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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今野敏   「ST警視庁科学特捜班黄のファイル」(講談社文庫)

 今回は黄色ということで、特捜班の薬学担当の山吹が活躍する。この山吹、僧籍を持っていて、いつも作務衣で登場、死体を検分する前に、必ず般若心経を唱える。捜査班で、特異な行動をするが、もうひとつ何に優れているかよくわからないので、この作品でどんな活躍をするか、楽しみだった。

 あるマンションの一室で、若い男女4人の死体が発見される。コンロを持ち込んでの炭火。窓など部屋の隙間にガムテープでの目張り。睡眠薬の摂取。どこからみても集団自殺としか思えない状態。

 しかし科学特捜班は、ガムテープに指紋がないこと。睡眠薬の取りだした後の紙が見当たらないこと。など、自殺では不自然として、捜査を開始する。

 この4人はある新興宗教団体の団員だった。結果他殺ならば容疑者として可能性があるのは教主を含め4人に絞られた。

 ここで山吹がどうするか。徹底的に待つこと。犯人でなければ、いつでも行動は自然。犯人は必ず、不自然な行動をする。その行動まで、じっと待つこと。

 山吹は変化のある瞬間をとらえる。そこに異常な才能を持っていたのだ。
 そして容疑者と思われた4人のうち一人が突飛も無い言動と行動をすることになる。

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今野敏   「硝子の殺人者」(ハルキ文庫)

 ちょっとした盲点をついている。

 芸能界というのは、麻薬を愛好することが、罪となるということへの意識が極端に低く、当たり前のように麻薬が蔓延しているように思える。しかし、事件となると、麻薬所持、中毒者として、現場を押さえられ、芸能人がつかまるだけで、警察はわかっているかもしれないが、ついぞそれは誰から入手したのか経路が明らかになったことはない。おぼろげに、暴力団関係者が噂されるだけだ。

 この作品の異質なところは、今をときめくアイドルが、麻薬愛好者ではなく、麻薬売人となっていることだ。芸能界では、麻薬は砂漠に染み込む水のごとく、いくらあっても足りないくらいの需要がある。だから、そこで手に入れる金額は、タレントで稼ぐお金とくらべものにならないくらい大きい。

 だから、アイドルタレントは入手先の男が殺人容疑で逮捕されると、商売ができなくなり、すぐに、新たな入手先をみつけようと必死になる。この行為も一種の麻薬依存症患者のように思える。

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有川浩    「シアター!」(メディアワークス文庫)

 役者根性が染みついて、生活不能になっても役者だけは続けたいという役者依存症の人たちが集まって小劇団を創り活動する。ちょっと調べてみたら東京だけでも50以上ある。

 びっくりするのだけど、小劇団の役者には殆どギャラがないそうだ。舞台や稽古場の確保。パンフレット、チケットの作成。小道具、大道具の購入。舞台設営。舞台監督の監督料。
 これらの費用をチケット収入で賄おうとするが、とても無理でいつも持ち出し。だから特別に他の劇団から客演できた俳優には出演料は払うが、自分の劇団員のギャラは無し。

 それどころか劇団員は、チケット販売のノルマがあり、それを達成できないと自腹をきる。
何と自らがお金を払って、劇を演じているのである。彼らの収入は、細々としたアルバイトで稼ぐお金だけ。

 こんな典型的小劇団「シアターブラック」を主宰している役者バカの巧が、運営が毎度のように窮地に追い込まれ兄司のところに300万円の無心にくる。

 司は2年後に300万円返済できなかったら、劇団をたためという条件でお金を弟に用立てる。用立てただけでなく、お金の面から、劇団に関わり、徹底的に劇団の運営方法を変える。面白いと思ったのは、弟も含め、劇団員が、司の新しい運営に興味を持ち、反発することなく、素直に受け入れてゆくところ。

 稽古場の専用場所は借り賃が高すぎる。そこで、区のホールや公民館を借りる。その場所が毎日変わる。こういった公共施設は、連続して借りられない。そして、毎日変わるのは、劇団員が住民となっている地区の公共施設は、劇団員名で借用するととんでもなく借り賃が安いからだ。今やっている劇、一日目を撮影し即DVDに焼き付けそれを3日後以降の公演では物販販売する。プログラムには広告を載せ、広告料でプログラムの作成料を賄う。

 ありとあらゆる、収支を見直しプロセスを改革してゆく。そこのリアリティさと劇団がどんどん変わってゆく姿の描写が実に生き生きとしている。

 この物語のモデルになった小劇団の座長が言う。彼らと有川さんが出会って、物語が完成するまでたった3か月。有川さんはそれまで舞台、小劇団の事情は全く未知。

 「これだと思う物にであった時にそれを掴む能力と瞬発力の強さには驚愕する。」

 有川さんの素晴らしいところを見事にいい当てている。

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今野敏   「警視庁科学特捜班 赤の調査ファイル」(講談社文庫)

 大学医学部の医局でトップにたつ主任教授の権力は想像以上に大きい。その大学のみならず、大学が医者を送り込んでいる全国の病院の人事権を一手に握っている。それは、好きなように医者を異動させることができるばかりでなく、その組織から気にいらなければ医者を放り出す、すなわち馘首することも簡単にできる。

 この主任教授の配下に教授がいる。そこから准教授、講師がいて、その下に肩書の無い医師がいて、そのまた下に研修医がいる。大学教授は何かを研究し論文を学会に発表しなければならないが、主任教授は全て教授に研究させ論文を書かせ、自分の名前で発表する。

 研修医というのも簡単になれるわけではないようだ。研修医の報酬はおよそ30000円/月。これでとことんこき使わされる。30000円では生活できないから、アルバイトで病院をかけもちする研修医がでてくる。これでは、肉体的、精神的にも大変になる。そこで、医局で研修医になれるのは、医者の息子とか大金持ちの息子になる。アルバイトを掛け持ちしなければいけない研修医は敬遠されるのである。

 今や大学病院は、研究成果や名声のためにだけ存在し、患者の病気を治すことは二の次になっている。
 驚くことに政治家と同じように医者は護られていて、カルテを改ざんしても罪にはならない。もちろん過誤診療も罪に問われることはない。

 この作品は、大学病院の在り方への不満を抱えている関係者の良心的な気持ちが、守られている医療行為のわずかなすきまををついて、大学病院の医者を逮捕にまでもってゆく。そこの鋭さが鮮やかに描かれる。医局の道からはじかれた科学特捜班メンバー法医学専門の赤城の活躍が作品のあらゆる場面で飛び跳ねる。

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| 古本読書日記 | 16:34 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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今野敏     「花水木」(ハルキ文庫)

 近くのコンビニに早朝、犬を連れて毎日散歩にゆく。新聞を買うためだ。

 そこに長く勤めている60歳くらいのおばさんが言う。
「最近は、勤めてすぐに辞めるアルバイトも多いが、大学のときからコンビニバイトを初めて、就職活動もしないで、そのまま8年、9年とアルバイトをする人もいる。別に、今の時代ちゃんと就職活動すれば、普通の会社に入れるのに。何を考えているんだろうね。」

 他人とコミュニケーションすることが上手くない人が多いんだろうなとこんなことを聞いて思う。会社訪問、入社試験、面接と今の生活を大きく変えて、わざわざ苦手な行動をおこすことがいやなのだ。そんなプレッシャーを受ける行動をするくらいなら、今のバイトを続ける。別にそれで暮らせないことはないのだから。

 人生を長いスパンで見ない。そんなスパンでみて、それで実現した人生が充実した生活を保証しているとはとても思えない。

 こんなだらだらした暮らしを続けている人でも、今これをやれば目の前に新しい人生が確実にやってくる、そういう姿が見えるのなら、瞬発力を持って行動する。

 ここ何日間、コンビニの監視カメラが故障している。今がチャンスだ。

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東川篤哉   「もう誘拐なんてしない」(文春文庫)

 下関でタコ焼き屋台をひきながらアルバイトをしていた樽井翔太郎。アルバイトの最中に暴力団花園組の組長次女花園絵梨香と知り合う。絵梨香の腹違いの妹の手術費用をひねり出すため翔太郎の先輩甲本とともに狂言誘拐をすることになる。

 色んな仕掛けが読んでいる最中にわかる。まずは、身代金3000万円。古い倒産した印刷屋があり、ここの金庫に偽札で3000万円がある。一方花園組の親分が調達した3000万円がでてくる。これは身代金の引き渡しが2回行われることが想像できる。

 更に、関門海峡には潮の流れの強さと方向が表示される掲示板がある。これがさりげなく登場する。事件は海で起こり、その解決にこの掲示板が使われることも想像できる。

 犯人のアリバイ崩しは、犯人が、身代金受け渡し時間を偽札と本物で3時間差をつけて実施させる。この時、偽札の受け渡しに携わった人たちの時計や、船の時計を3時間早めておくという古典的手法を用いる。

 推理小説としての内容は平凡だが、関彦橋から、釣り糸を使い身代金の受け渡しを行うところは、無理やりなところがなく自然でよくできていると感心した。

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| 古本読書日記 | 18:11 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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デヴィッド・ハグバーグ 「ターミネーター3」(角川文庫)

 映画も見たことがないし、シリーズの1作目から読まず、いきなり3作目を読むので、最初はよくわからず結構戸惑った。

 スカイネットというコンピューターシステムがある。このスカイネットに膨大な知能をいれたことにより、スカイネットが自らが生き残るという意志を持つようになり、そのため、抵抗する人間社会を核攻撃により破滅させようとするに至った。

 前作までは、破滅の日が「審判の日」として設定され、その「審判の日」を阻止しようとする人間に対しスカイネットよりT-1000というロボットを派遣。そのロボットとT800という人間を守るターミネーターと死闘がなされ、「審判の日」に核戦争が起こらないで乗り越えた。

 今作では、T1000から更に進化したT-Xというターミネーターが送り込まれ、核戦争を起動させようとする。それに対し、T800の改良型のT850というターミネーターが登場する。

 更に、T-Xと戦うジョンとケイトという2人が登場する。彼らにT850が言う。
 実は「審判の日」を人間は乗り越えたのではなく、延期されたのだと。そして何と新な「審判の日」が今日なのだと。それを回避できるか鍵を握るのがケイトの父ロバート・ブリュースターだと教える。そして、T850はジョンとケイトを「審判の日」には絶対死なせないようT-Xと戦うと。

 それにしても、ものすごいのは、ケイトとジョンが出会い、T-Xに襲われるところ。とにかく、夥しい数の高級車が爆発したり、もえあがり破壊される。金に糸目をつけず、映画を創っているのだとびっくりする。これでも世界的ヒットをすれば大儲けになるのだからハリウッドの映画はすごい。

 それからスカイネット基地でのジョン、ケイトを守り抜くためのT850とT-Xの戦闘場面は迫力満点に描かれ、読者を圧倒する。

 それで「審判の日」は避けられたのかというと、実は避けられなかった。しかし、ジョンとケイトはロバートブリュースターから核シェルターの場所を知り、そこの鍵を入手して、核戦争の被害を受けることなく、2人は生き残った。

 この本、変わっていて、最後の審判の日核シェルターに逃れるところは、ページがすべてミシン目で閉じられている。つまり面白いところだけ立ち読みされたら困るというわけだ。

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| 古本読書日記 | 17:39 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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ジャック・ドワイヨン  「ポネット」(角川文庫)

 4歳だったポネットは、お母さんと車で走っていたとき、お母さんが運転ミスをして、崖から転落する。お母さんは亡くなるが、ポネットは生きて、伯母さんの家に預けられる。

 4歳のポネットは死ぬということがわからない。誰が、何と言おうが、お母さんとは必ず逢えると信じて行動する。

 叔母さんの家の子供たちや、学校入学前訓練用の寄宿舎の子供たちや先生が死ぬということを懸命に説明する。ここにキリスト教が絡んでくるから嘘なのか真実なのかわからないような説明がなされる。キリストは死んでから復活した。宗教のテストを受け、クリアしたら復活したお母さんに会えると言われ懸命にテストを受ける。祈ればお母さんと話ができる。 天国でいつもお母さんはポネットを優しくみている。など。どれも、信じて試してみるがお母さんと会うことはできない。こんなことなら、いっそ死にたいとさえポネットは思うようになる。

 こんなに追い詰められたポネットを作者ドワイヨンはどう落とし前をつけるのだろうと、読み続けると、やはり最後は、お母さんの墓の前で祈っていると、お母さんが現れる。

 そして、お母さんが死ぬということを懸命になって説明してくれる。そしてやがて消えてしまう。ポネットは、そこでもうお母さんとはずっと会うことはできないことを自覚する。

 お母さんが消える直前に言ったことを胸に刻んで。
 「楽しむことを学ぶのよ」

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エレナ・ポーター  「少女パレアナ」(角川文庫)

 お父さんに、教会の本部からの贈り物、パレアナの欲しいものは人形と頼んだのに、慰問箱をあけてみると松葉杖がはいっていた。パレアナはがっかりした。その時お父さんは「杖がなくても、生きていけるということを松葉杖は教えてくれたんだからうれしいことじゃないか。」と。

 ここからパレアナの「喜びの遊び」ゲームが始まる。人生の多くは、苦しいことや、切ないことの連続。でも、その切ないこと、苦しいことにも必ず「喜ぶこと」が含まれている。それを見つけて励みにすることが「喜びの遊び」ゲーム。

 そんなお父さんも亡くなり、天涯孤独となったパレアナは小さな村に住むバレー叔母さんに引き取られる。

 バレー叔母さんは孤独で気難し屋。その小さな村にも人との交流を嫌う孤独な人がいる。病気で伏しているスノー夫人。でかい屋敷に一人で住み、誰とも口をきかないベンデルトン氏。それから、孤児院を抜け出してきたパレアナと同じような境遇のジミー・ビーン坊や。

 こんな偏屈な人たちや、孤児ジミー・ビーンがいつでも明るく「うれしい。喜んで」と喋り続け、元気に行動するパレアナにふりまわされながら、明るく前向きになってくる。

 どんなことにも「喜び」をみつけて前向きに生きていく。このめげない気持ちにはパレアナの意志の強さを感じる。パレアナのお父さんがパレアナに教える。「聖書には800の喜びという言葉が書かれている」と。それがパレアナの支えだ。

 この作品は1913年に発売され、ものすごいベストセラーとなり、アメリカの至るところで「喜びの遊び」ゲームが流行ったそうだ。そして、辞典でパレアナをひくと、「喜び」とのっているそうだ。

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秦建日子    「アンフェアな月」(河出文庫)

 イラストレーターの冬美。生後3か月の娘を抱えている。世の中はおかしい。赤ちゃんを抱えているだけで、仕事をするのは大変だろうと、斟酌して、自分より能力のない他のイラストレーターに仕事を発注する。赤ちゃんを育てていることと、仕事は無関係。能力に従って仕事を依頼するべきだと冬美は考える。

 しかし、確かに赤ちゃんを育てながらの仕事は大変だ。ミルクをやり懸命に寝かしつけ、静かになったところで仕事をする。ところが寝かしつけたと思ったら10分もしないうちにまた大声でぐずる。本当に邪魔である。

 沢木はテレビ局の敏腕プロデューサーである。たまたま受診した病院で、癌にかかっており余命一年と宣告される。振り返ると、これぞ自分がやった仕事だと誇れる仕事が今までに無かった。最後に世間をわっといわせる番組を作りたい。それにはフィクションはだめだ。

 現実に起きている事件、あるいは無ければ起こしてそれをライブで追いかけ最後は泣かせるようなノンフィクションを創らねばと考える。

 こんな条件下で、冬美の赤ちゃんがちょっとしたすきに何処かへ拉致されるという事件が起きる。誘拐かと捜査が開始されるが、このシリーズでの名物女性刑事雪平夏見が何かおかしいと、捜査方針から少しズレて捜査を行う。

 そしてイラストレーター冬美の思いと敏腕プロデューサーの思いが交錯する瞬間が起きる。その交錯した瞬間を、かの刑事雪平夏見が事件捜査の中で突き止める。

 雪平夏見は秦のベストセラー小説「推理小説」で登場。テレビドラマで篠原涼子が演じている。

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