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2016年05月 | ARCHIVE-SELECT | 2016年07月

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乃南アサ    「トゥインクル・ボーイ」(新潮文庫)

 短編集。

 「青空」で5歳の巧太が、保育士である主人公の早苗に言う。
「小娘のくせに理屈ばっかりこねる生意気な女だって、母ちゃん、言ってたぞ。」
「ぶすのくせに、子供を味方につけようとして無理に笑って、気持ちが悪い女だって言ってたぜ。お前みたいな女に限ってしょうが悪いって、言ってたぞ。」

 私の小さい頃、こんなことを言う5歳の子がいるなんて想像もつかなかったが、今ではいるだろうなと思ってしまう。

 この巧太、母親に連れられ、途中転入で早苗の保育園にやってくる。
早苗が「こんにちは」と挨拶するが、全く答えない。弱り切っていると、母親が拳で「あいさつしろって言ってるだろ」と顔を殴りつける。巧太がぶっ倒れる。
 巧太が何も言わずに起き上がる。
「だまってんじゃない。こんにちはだろう。えぃ」とまた張りたおす。
そして、私は忙しいからよろしくと保育園から去ってゆく。

 今は子供は純真、清い心の持ち主という概念では問題は対応できない。親や大人たちの写し絵のような子供がたくさんいて、それぞれが影響をしあって複雑な世界ができあがっているとこの作品集を読んで感じる。問題の根はあまりに深い。

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中島らも   「ぷるぷる ぴいぷる」(集英社文庫)

 まあ真剣に視ているわけではないからかもしれないが、最近のギャグやコントがさっぱり面白くない。現代から取り残されたのだろう、あまり見かけなくなったが、8.6秒バズーカのどこが笑えるのか少しもわからない。

 それでもコントなのだから、脚本があってやっていることなのだろう。そう思ったら、昔のコントはどうだったのだろう。そこで、天才コント作家であった中島らものコント集を手に取ってみた。

 これが困ったことに、どれもが全く面白くない。本当に中島らもはこれらのコントを面白いぞと思って書いていたのだろうか。

 典型的な作を紹介する。
子 97,98,99,100-! もう出ていい?
母 だめよ、もっとよくあったまらなくっちゃ。
子 えー、だってもう100までかぞえたよう。
母 だめだめ、ちゃんと1万まで数えなくっちゃ。
子 えー。そんなことしたら死んじゃうよ。
母 ママの言うことがきけないの!
    (間)
子 9996,9997,9998,9999、一万。やった!ねえママ?
母 何?
子 ママはほんとのママじゃないでしょ。
母 どうしてそんなこと言うのよ。
子 だって実の子にこんなことさせるわけないもの。本当は妖怪「フロフキ婆あ」じゃない
  の。
母 よく、わかったね。そういうお前も、一万回も数えられるところをみると、「湯冷まし 
  小僧」だね。
子 フフフ、よくわかったね。
母 ということは。
子 ぼくたち他人同士で風呂に入っていたんだね。
母 急に前をかくしてどうすんだよ!

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アンドレス・ダンサ  「ホセ・ムヒカ世界でいちばん貧しい大統領」(角川文庫)

 ホセ・ムヒカは今の舛添都知事と対極にある南米小国ウルグアイの大統領を2015年まで務めた人。

 どこが対極かというと、ムヒカは給料で自分には10万円しか受け取らず、残りはすべて慈善団体や財団に寄付していたということ。豪華な公邸には住まず、郊外の小さな家に住み、花の栽培に熱中している。しょっちゅう国内のいたるところを歩き、人々と熱心に会話をする。そのときSPをめくらまし、一人で歩く。「SPなどつけても、殺されるときには防げない。そんなことは覚悟だ。」

 また、自動車で移動するときは、後部座席には座らず助手席に座る。運転手だけが殺され自分が助かるということをよしとしないからだそうだ。

 何ともすごいのは、若いとき反政府ゲリラ トゥパマロスに入り、襲撃を繰り返し、4度投獄、そのうち2回は脱獄した経験を背景にしているのに、クーデターで政権をとったのではなく、通常の選挙で大統領に選ばれていること。

 この本では無政府主義者としてムヒカを取り扱っているが、どうも私にはそうは思えない。敵対するだろうと思われていた大資本、大企業にも、貧民たちにも等しく手をさしだす。
そして、根本にあるのは、頑張る人、今を変えようとしている人を貧富の区別なく応援しようとする姿勢のように思う。

 アメリカとキューバが国交樹立した。この本によると、そのために動いたのがムヒカ。
 カストロとオバマの説得にあたり、見事に成功させた。

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| 古本読書日記 | 17:49 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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ジェーン・スー  「貴様いつまで女子でいるつもりだ問題」(幻冬舎文庫)

 20代、まだ社会人では底辺、お金も不自由で、すこし不自由な生活を強いられる。この20代で結婚しないで、30代を迎える。
 迎えた30代、特に前半で未婚女性は、不自由から解放され、自由をこころゆくまで謳歌する。社会でも、階段を上り、それなりの評価も得られる。とにかく居心地が良い。

 ジェーンさんは書く。

 「二十代に比べて金銭的にも行動力的にも馬力がかかるようになった三十代女の独身生活は、あまりにも自由過ぎて楽しすぎる。
落ち込みや不貞寝さえマイペースで自由自在。やりたい放題を、誰にも怒られないのです。なんて素晴らしい日々でしょう。
 同世代の既婚女性たち、子供の教育費や姑問題や旦那や住宅ローン。自分の時間が減ってヘトヘトになった彼女たちをみていると、子供の頃は普通に生きていればそのうちできると思っていた結婚は、どうやらこの気ままな自由と引き換えの産物なのだと気が付きます。」

 こんな素晴らしい30代を過ごしてきたジェーンさんも今や40代。
 ネットで安い海外旅行を探しながら、同時に独居老人ホームの相場も調べています。

 こんな侘びしいことを書きながら、別の章では、40歳を過ぎてから、やたら20代の男の子から声をかけられるようになったとうれしそうに書いています。

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香納諒一   「心に雹の降りしきる」(双葉文庫)

 凄い小説だ。知事が収賄罪で逮捕される事件から、7年前に娘が行方不明となり、その父親が娘はまだ生存していると信じて、警察に年がら年中捜索進捗状況を必死に問い続けること。レベルの異なることが渾然と描かれる。その間に、事故なのか自殺なのかわからない事件が発生し、たくさんの人が死ぬ。

 それらは、全く関連性が無いと思われる独立した事件のように見える。

 ここに主人公である都筑という個性的刑事が登場する。この刑事、実は、行方不明の子供の父親が少しでも子供の行方不明の解明できる糸口がありそうになると、その糸口から行方不明の真実がわかったり、子供の発見ができた場合、情報提供者に懸賞金を提供することを公表していたことを逆手にとって、懸賞金を自分の懐に入れていた。

 だから後ろめたさが常に彼の心を苛んでいた。そのエネルギーが次々起こる事件を、事故で処理しようとする警察に対し、勝手に真相に迫る行動を起こさせていた。その結果、色んな事件が、つながってくる。
 そして、最後に不明の子を山奥で見つけて、その子を救う。子を探索しつきとめ救う場面はハードボイルドの神髄が発揮され、手に汗にぎる。

 人を殺す。或いは子供を拉致する。それに立ち向かう都筑。この物語は、とにかく都築も含めて誰もかれもが、がむしゃらである。

 がむしゃら対がむしゃらが続く場面がこれでもかと描かれ読み終わると本当に疲れる。そして、そのがむしゃらの裏にある哀愁がこの作品に良い味付けとなっている。

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花房観音     「京都恋地獄」(角川文庫)

 小説家には、色んなことを聞いたり、読んだりして、そこから新たなことを想像して書く作家と、自分の経験や、経験していることを膨らまして物語にする作家と二通りのタイプがいる。

 後者のタイプの作家は、平凡な生活を書いても小説にはならないから、恋についても、癒し系であったりさわやかなどこにでもある恋を描いても小説家の個性を発揮できないから、好きだ、惚れているという部分の表皮をとりはずした、その先にあるどろどろとした男と女を書く。ということは、自分もそういう男との関係を望み、そこに身をおいて、忠実にそこに生じる出来事、感情の移ろいを描く。

 この小説の主人公の女性作家は、一作だけは特異な才能を発揮して芸術的映画をものにしたが、それからはさっぱりで最早映画造りができなくなった映画監督と肉体関係を続けている。映画監督はそこそこ有名な女優と結婚していて、子供もいる。しかも、映画監督は、主人公と妻以外にも、関係を持っている女性がいる。

 映画監督は主人公にベッドの上で主人公をいたぶりながら言う。
「俺のことを書いてくれ。書け」と。主人公も、このただれた関係が消滅したら、小説が書けなくなるという恐怖があり、懸命に男に縋りつく。

 主人公は思う。
恋には、逢ってそれから舞い上がりそして萎んでゆく恋がある。しかし、逢ったときからどんどん奈落の底に向かって落ちてゆく恋もある。そして、作家である自分は落ちてゆく恋をいつもしていねばならないと。

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香納諒一   「贄の夜会」(下)(文春文庫)

 人間の心に入り込み、その人間を自由に操り、犯罪を行わせる。上巻で心理学者田宮が説明した人格コントローラー「透明の友人」は、この物語では実際に存在していた。

 そして、14歳で4人の同級生を殺した、現在の中条弁護士にその「透明の友人」は憑りついていた。「透明な友人」により中条は4人を殺したのだ。

 その後、中条は家裁に送致され、更生指導を受け、社会にでる。勉学にいそしみ、司法試験を合格し、弁護士への道へ進む。

 そして、事件から19年後に中条は、偶然に「透明の友人」に出会う。「透明の友人」はまた人殺しができると歓喜に震える。そして、中条は幾つかの殺人を行う。

 しかし教会に引きずり込み殺された2人の女性は、「透明の友人」が偶然の出会いのよろこびをおさえかねて、自らが殺害を実行していた。

 下巻の後半、少しだれたようにも思えたが、サイコホラーサスペンス長編、実に読み応えのある作品だった。

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| 古本読書日記 | 20:06 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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香納諒一    「贄の夜会」(上)(文春文庫)

 犯罪被害者の会の参加者2人が通り道の教会に引きずり込まれて惨殺される。この殺人事件の重要参考人として、この被害者の会の集まりに参加していた中条弁護士が浮上する。

 しかし、事件発生時、ホテルのバーで一緒に飲んでいたと4人の弁護士の証言がありアリバイは鉄壁。実はこの中条弁護士14歳の時、同級生を殺害。その首を校門にさらす。
香納は、酒鬼薔薇事件の少年Aを彷彿させるような展開に持ってている。

 この上巻で、興味を抱いたのは、中条弁護士14歳の時の精神鑑定の分析を説明する筑波大の田宮恵子。

 確か、少年Aも言っていたが、自分が殺害したが、それは「透明な人」が自分の中に入り込んで、殺害をさせたのだと。
 この作品でも、心理学者田宮恵子は「透明の友人」と称して、殺害を起こした人の人格に「透明の友人」が作り上げられ、洗脳されて殺人をおこしているという話をする。

 またこの作品の重要人物として狙撃者の目取真が登場する。彼は11歳のとき沖縄で少女に暴行している米兵に一人で立ち向かい銃で米兵を殺してしまう。米兵は罪をとわれることなく、目取真は台湾に母と逃亡し、そこから苦難な道を歩む。そして、今度の事件の被害者に彼の妻がいる。彼が下巻で、妻殺しの犯人を追いつめてゆくのか。それよりも、「透明の友人」は存在するのか。下巻への興味が尽きない。

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| 古本読書日記 | 20:04 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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ポール・ギャリコ   「猫語の教科書」(ちくま文庫)

 猫が地球に現れたのは5千万年前。人間は5百万年前。だから猫のほうが、生き抜く知恵、知識は人間よりよくわかっているし、たとえ人間が滅亡しても、猫はあらゆる困難を克服して、人間より種族として存在してゆくだろう。

 猫が人間と一緒に暮らすコツは、人間が猫を支配して暮らすように人間に思わせて、実は猫が人間を支配している暮らしを実現すること。

 このコツは人間が家庭で妻が夫と接触する場合と同じ方法で接触することである。

 この本では次のように書かれる。

 「私の家のご主人が、奥さんに怒鳴ったり、机をパンと叩いたり、またはガミガミいってからといって、奥さんと仲が悪いわけではありません。こういうことは男性にとっては習慣のようなもの。男たちは、どなったり、文句をいったり、いばったり、命令したりするけど、女性たちは放っておきます。なぜならひとしきり騒いだあとは、必ず自己嫌悪に陥って、けっきょくは女性が望んでいた通りになると決まっているんだもの。ただし、男性には、自分こそが決断を下したのだと思わせること、これがかんじんな点です。」

 我が家にも2匹猫がいるが、猫たちはこんな風に考えて、人間をコントロールしているのかと思うと、これから猫を見つめる眼が変わってしまいそうだ。

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香納諒一     「幻の女」(角川文庫)

 700ページを超える大長編。本を持っているだけで重かった。
 700ページもあるから、内容はハードボイルド、恋愛、推理、社会派ミステリーと小説の商社のようなてんこ盛り小説である。

 この小説では3つのことが印象に残った。

 やくざの世界というのは、一般の人々が生活している世界の秩序、法律とは全く異なる秩序、法律で動いているということ。現在でも失踪者、行方不明者は8万人も毎年発生している。やくざの世界では人を殺して失踪にみせかけたり、事件を事故や自殺として処理させる方法が確立されている。昔はヤクザといえば、任侠、義、人情などが厚い世界と思われていたが、現在は、自らの利益や勢力拡大、打算が最大の行動の動機で、我々が想像している世界とは違う。

 全員ではないが、政治家や県知事、市長の多くは、このヤクザの世界と通じていて、彼らは持ちつ持たれつの関係にある。舛添問題があるが、とにかく彼らは、税金をヤクザを使いながら、いかに自分のふところにかすめ取るか、それだけを考えて行動している。

 そして、権力者というのは、この女性をとめをつけたら、絶対ものにしないと気がすまない。もし拒む女性があれば、徹底的に女性をこの世から排除することを画策する。

 こういう、理不尽な世界に協力者はいるが原則たった一人で立ち向かってゆく主人公栖本。典型的ハードボイルドだ。 

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| 古本読書日記 | 18:36 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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感情的にならないための本 & 猫の気持ちがわかる本

ゲーム中毒であまり本を読んでいなかった。

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「しぐさでわかる! ねこのきもち」
長時間電車に揺られる日に、暇つぶしにとコンビニで買いました。写真がたくさんあってかわいいです。
たぶん、特段新しいことは書いてありません。まぶしいから手で顔を覆って眠るとか、貝はあげちゃダメとか、目を合わせると喧嘩を売ることになるとか。
帯の内容が「鳴き声の違いで気持ちがわかる」というもので、そこに期待したんですが、考えてみればももこも茶々丸も私に対しては怒ったような声しか出さない。翻訳するまでもないか。
猫は視力がよくないというのは、聞いたことがあるようなないような。言われてみればそんな気がします。

「感情的にならない本」
表紙に、「不機嫌な人は幼稚に見える」とあり、30代に入ったことだし色々気を付けるべきかな~と購入。
ただ、同僚にこの本を読んだと報告したところ、「(あなたの問題は)感情的、とは少し違うんじゃない?」と言われました。
そうですね……会社ではそんなに不機嫌オーラを出していないし、失敗やお断りに直面しても「タイミングが悪かったんだな」と思える。
書類も、優しい上司に「とりあえず自分でやってみました。手直しお願いします」と出せばよく、完璧を求めてピリピリすることはない。
何かミスすると「あっ」と声あげちゃうんですが、それは感情的とはまた違う。

今手元に置いているのはこの2冊。どちらも出だししか読んでいません。
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読書術は、母(はなゆめママ)があまり面白くなかったといっていましたが、ちょっと気になったので。
「私の本を読んだと言って近づいてくる読者に、「どんなところがよかったですか?」と聞くと、「少し前なので覚えていません」と返ってくることがある」
みたいなエピソードが導入にあるんですが、
☆自分の本がつまらない、役立たないと、証明するようなエピソードだな。
☆中身を覚えていないのに、「読みました」と著者本人によく言えるなあ。
と、軽い衝撃が。

「仮釈放」
会社で個々にパソコンのログインパスワードを変更することになり、「うなぎ」が浮かぶ。
→そういえば、『うなぎ』って映画があったんじゃないかな
→原作の、吉村昭『闇にひらめく』が気になる
→「海馬」に収録……ああ、出所後にうなぎ捕りを覚えた無口な男と、毎日弁当を作って送り出してくれる従業員女性の話か。映画のあらすじと結構違う。
→参考にされているという「仮釈放」を読むことにする。

「海馬」は、ほっともっとで弁当を待ちながら読んだことを覚えています。
前の記事で爺やが感想を書いている「思い出のマーニー」は、前の記事を読まずとも、豊橋駅の本屋で買って電車で読み始めたと思い出せる。
オチを誰かにばらしたくて、読み終えてすぐ深夜に記事を書いたのです。
読んですぐに忘れる本もあれば、覚えている本もある。

| 日記 | 23:39 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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ジョーン・G・ロビンソン  「思い出のマーニー」(新潮文庫)

 この作品はジブリで映画化されている。

 主人公のアンヌは孤児で、施設にいたときに、ブレストン夫妻にもらわれ養女として育てられる。アンヌは夫妻だけでなく、学校でも他の生徒となじめず、常に孤独でいる。また自らも意欲や頑張るという気持ちがなく、頑張らない子として皆からみられる。このままではよくないと、精神科医の勧めもあり、その夏、ノーフォークの海辺の小さな村で過ごすことになる。

 そこの海辺に「湿地の館」という大きな家がある。その湿地の館に遊びに行っているときアンヌはマーニーという同い年の少女に出会う。このマーニーもアンヌとどことなく性格が似ている。そして話をしてゆくに連れ、お互いが似ている環境に育ってきていることを知り、アンヌにとっては初めてで、最も大切な友達となる。

 このマーニーがとても不思議で、アンヌが約束もなく、ふらりと海辺にでかけボーっとたたずんでいると、草の影や船の影から突然現れる。この世の人とは思われない現れ方をする。
 マーニーが恐怖の場所と言って、全く近付かない風車小屋にアンヌが一人で探検にゆくと、絶対行かないと言っていたマーニーがいるのだから。

マーニーが湿地の館を去る時が来る。もう永遠にマーニーとの別れがやってきたとアンヌは切なくなる。

 この湿地の館の新たな主人となったリンゼイ一家がやってきた。リンゼイ一家にギリーと言われるこの館のことを知っているおばあさんが訪ねてきた。そして館のことについて話をしてくれる。

 そこで、アンヌはマーニーがアンヌの祖母だったことを知る。そして、アンヌが孤児院に入れられるまでの歴史を聞く。そこには、戦争や事故の悲しい歴史があった。アンヌはお祖母さんだったマーニーとの夏の体験を通して、そしてマーニーが孫としてのアンヌを大切にしていたことを知り、人の繋がり、大切さを知り成長への階段を上った。

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| 古本読書日記 | 20:33 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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米澤穂信   「愚者のエンドロール」(角川文庫)

 確か誰かの作品にこの作品とよく似た作品があった。その似た作品は、監督兼脚本家が映画を撮っている途中で殺される。映画会社としては、何とかこの作品を完成させたいと考え、監督がどんな映画にしようと考えていたかそれを何人かに推理させ、これだと思った推理を作品化した物語だった。

 この作品も文化祭に出展するクラス創作の自主映画の撮影で、廃屋の密室で少年が腕を切り落とされ死んでいた。その直後に脚本を担当していた本郷がショックで精神異常になり、とてもその先の脚本を手掛けることが不可能になった。

 そこでこの映画創作をひっぱてきた入須が、この密室殺人がどのようにして行われたか何人かに推理をさせる。

 そして、この推理を主人公古典部のホータローが見事にいい当てる。そして、このホータローの推理に従い映画は完成する。

 それで、見事解決と思っていたら、実は入須が、密室殺人のトリックを突き破れるか、何人かに推理をさせ、ホータローの推理が完全と思い、本郷の意図とは関係なく、物語にして映画を完成させていたのである。

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| 古本読書日記 | 20:31 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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梶尾真治    「悲しき人形つかい」(光文社文庫)

時々ある、死んだ人間を生きているようにみせかけ行動させるSF物語。

フーテンという、超変人だが、天才的科学者がいる。このフーテンが脳波を送受信して、人間の体を動かすボディ・フレーム(BF)という装置の開発に成功する。

 フーテンと主人公裕介が住んでいる街は、暴力団北村組と藤野会が争っている街で、フーテンと裕介以外の普通の住民はすでに他の町へ避難していない。ここに全国的暴力団がのりだし、藤野会を北村組に吸収してその全国暴力団の傘下にする儀式を行うことが決まる。

 その儀式の前日、北村組組長が心臓発作で亡くなる。組長が亡くなったのでは、儀式が成立しない。そこで、死んだ組長にBFを着せて、それを主人公の裕介が組長の振舞いを脳波を使ってBFに伝え、生きているようにみせかけ、儀式を行なおうとする。

 ところが儀式を行う前に、消滅が余儀なくされる藤野会の連中がアメリカ留学から帰国した藤野会会長の次男、藤野鉄男をリーダーにして北村組と全面戦争にはいる。

 面白いのは、死んだ組長の振舞いを裕介がなりかわり頭で想いそれを組長のBFに伝えるのだが、いつも、歩けとか殴れとかを裕介が思っているわけではなく、時に複雑な思いが頭に浮かぶと、途端に組長が理解できず倒れたり、変な行動をしてしまうところ。

 それと、最高に面白かったのは、鉄男の攻撃で、組長の首が吹っ飛ぶ。しかし、BFは生きているので、ふっとんだ首なしの体が、そのまま倒れることなく、どんどん前に進んで鉄男を襲おうとする場面。藤野会の連中の恐怖にひきつった顔が読者の頭に浮かんでくる。

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井上荒野   「ほろびぬ姫」(新潮文庫)

夫は、近いうちに死ぬ。ホスピスに入っている。夫は若い妻を一人残していくことを可哀想に思い、自分の双子の弟を妻に合わせ、妻が弟と自分が無き後、一緒になるようにふりむける。確かに容貌、体形は夫とそっくりだが、性格は夫の優しさとは正反対で弟は怒りっぽく凶暴である。

 夫が亡くなり、妻だけが残される。ときに、夫はいなくなったはずなのに、いつまでも夫が横にいる幻覚に襲われるという人がいる。それも、生きていた時の夫と全く異なった性格になって。そして、いつまでも、夫のことを思い出すと涙が止まらない。このままでは夫の亡霊にとりつかれて、妻だった自分自身が奈落の底におちてしまう。

 この作品で、同じ夫を無くした女性が登場して双子の弟が夫にいた女性に言う。

 「逃げてるのよ 私。逃げても、逃げても追いかけてくるけど。」
 「何が」
 「夫よ。・・・・・死んだあとの夫は、死ぬ前とはべつのものでできてるの。どんどんべつのものになっていくのよ。それが追いかけてくるから困るの。・・・・羨ましいのよ。私の夫にも双子の兄か弟がいればよかったのにとおもうわ。」
 「あなたのご主人に双子がいたら・・・・その人を愛せるというんですか。」
 「愛なんてどうでもいいのよ。私が生きていけるかという話よ。」

ずっしりと重い言葉だ。
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三浦しをん    「神去なあなあ夜話」(徳間文庫)

 主人公の勇気は、横浜の高校をでて、母親と教師の企てで、三重県の山奥、林業だけが唯一の産業である神去村の中村林業株式会社に就職させられた。最初はいやいやだったが、村人の暖かさや素朴さに触れ、林業の面白さにもとりつかれて村の生活になじんでいく過程をあつかったのが前作「神去なあなあ日常」。その後の勇気を描いたのが本作品。
 中村林業の社長清一の息子山太のために開いたクリスマスパーティでの清一、三郎じいさん、巌の会話がすごい。

 「こないだ材木市でどでかいのが出たそうやないか。」
 「ええ 120年もののヒノキでしたね。しかも、ほぼウロがない。」
 「たいしたもんやなあ。」
 「いくらになった」
 「ざっとこれくらい」
 「うひゃあ ええ値やな」
 「清一。神去山の西隣にも、おまえんとこが持っとる山があったな。あそこの杉、百年越えのもんが多いとちゃうか。」
 「今切るのはもったないですよ。後20年もたてば・・・・。」
 「150年生にはなるな。」

 林業とは本当にすごい。自分が植林して、その完成を知ることができない。2代、3代にまたがり、育てられやっと完成し伐採される。実に息の長い仕事である。中には育てるだけで、植林も完成も見ない人もいる。

 世代から新しい世代の人たちに引き継がれ、慈しみ育てられないと製品とはならない。世代を超えた信頼が大切である。三浦さんはこの信頼こそ真の愛であるとこの作品で言う。

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梨木香歩    「エストニア紀行」(新潮文庫)

 私の知り合いが今フィンランドに旅行に行っていて、ちょうど今頃はエストニア観光に行っている頃だ。バルト3国のひとつエストニア 首都ターリンにはヘルシンキから高速艇で一時間の行程だそうだ。梨木さん一行はアムステルダムへ飛び、そこから飛行機でターリンにはいっている。

 梨木さん、もちろんターリンの有名な地下道にも驚き感動し、楽しい観光記をものにしているが、やはり自然は梨木さんターリンからはずれた田舎の町や村の風景やそこで暮らす人々の交流の描写に力がこもる。

 梨木さんの原点に1960年に鹿児島で撮られた写真がある。農家の人が水田で作業している。その、ほんの近くでコウノトリが何かを啄んでいる。人々が野生の動物たちと自然に共存している姿だ。その1960年から11年がたったとき、その風景は根こそぎ破壊されコウノトリは絶滅してしまった。エストニアはまだコウノトリと人間が共存している。その姿を見るのが今回の旅の一つの目的だった。

 バルヌという町から船でわたったキヒヌという本当に15分もあれば島めぐりができてしまうという小さな島の描写が印象に残る。

 私の小さいとき、母やおばさんたちは結婚が決まると、嫁ぎ先で着る着物や普段着を自分で作り長持にいれて持って行くのが常識だった。だから、どの家にも機織機があった。

 このキヒヌ島では今でもその通りのしきたりがあった。あちらこちらで、服を作る風景がある。

 この島の男たちは全て船乗りとなる。男たちがいない間、女性たちは、家庭仕事はもちろんのこと、島のまわりでちょっとした魚をとったり、畑で野菜を作り過ごす。みんな日焼けしていて、二の腕が太くたくましい。

 その女性たちが言う。「金持ちにはなれないが、自給自足はできる」と。

 エストニアは、独立したということが無かった。ロシアとスウェーデンにいつも併合され苦しい時代ばかりだった。

 変わらないのは、何千年も前からのキヒヌ島の暮らし。「金持ちにはなれないが、自給自足ができる」そんな素朴な暮らしは何も変わらずこれからも続く。

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海堂尊    「ランクA病院の愉悦」(新潮文庫)

 TPPの成立により、病院で受ける診療が平等の建前が崩壊し、金持ちは先端、高額医療が受けられ、患者に対する対応も患者に寄り添うランクA病院から、通常の患者が診療を受けられるランクB病院、お金に余裕が無い貧しい人々が診療を受けるランクC病院と分けられた。

 ランクC病院は、何と医者がいない。その代わりAIが組み込まれているロボットがいる。

 そしてロボットの問に対し、キーボードを打ち込むことで診療が行われる。最初に診察室にはいると前納金として10000円を診察料受付機械に収める。すると、症状についての質問がある。その質問の都度1000円のお金が徴収される。ここで悩んだりして時間を取るとすぐ追加料金が差っ引かれる。

 まず最初の質問はどんな症状かと
「頭痛、腹痛、歯痛、発熱 わからない はてな?」
ここで例えば腹痛を選ぶ 痛さは我慢できますか
 「イエス ノーのどちらか、わからない はてな?」
イエスと答えると。
 「薬であるパンシロンを処方します」以上終了となる。
 1問1000円だから、普通3000円取られ診察は終了となる。

 質問に「わからない」と答えると、ロボットはランクBの病院に行きなさいと回答がくる。
 「はてな?」を選ぶと、かの有名な桜宮病院の田口先生が担当している不定愁訴外来に行けとの回答になる。

 ランクC病院は、何の医療行為をしていない。だから、処方する薬も市販薬となる。

 しかしランクA病院も中味はランクC病院とあまり変わらない。何が違うかと言うと、診察してくれる医者が、見目麗しいモデルのような女医。この女医が、患者の言うことに優しく耳を傾けてくれる。補助する看護師も女医に劣らず美人で優しい。これだけで、患者の痛みは消える。

 そう、病は気からというから。同じ診療なのにCランクは3000円なのにランクAは50万円なり。

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| 古本読書日記 | 18:35 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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小池昌代    「ことば汁」(中公文庫)

 短編集。
 最初の作品「女房」を除けば、すべて中年の女性が主人公となっている。
大人の女性は、憎悪とか妬み、それに伴う妄想というものを常に心に抱いている。大人だからそれを出さないように注意コントロールしているのだが、どうにも我慢ならずにある時、ぽっと表出させてしまいとんでもないことになる。

 短編「つの」。詩人の秘書として仕え、結婚することもなく、30年。ひたすら詩人の世話をして生きてきた。詩人は異常に女性にもて、女性が途切れることは無かった。今80歳になった詩人を車で講演会場まで連れてゆく秘書。ここで、一気に詩人への愛憎が噴出する。その噴出。角になって頭に生えてくるのである。

 「花火」では、あまり風采のあがらない主人公の女性が見合いで、美男子の警察官の男性と知り合い結婚する。自分には過ぎた男性と思い、彼が幸せになるように懸命に尽くす。彼もそれに応えて優しい。満足なはずなのに、こんな不細工な私に何故彼のような美男子がと、
 ひとたび疑念が浮かぶとそれが止まらない。何でもない事が、勝手に不自然と思い込むようになり、それがあらぬ妄想になり、それを思いつめると妄想が事実になってくる。そして破綻をむかえる。

 「花火」の嫉妬、憎悪の相手は人間なのだが、「すずめ」では相手がすずめとなる。

 女性の持つ感情の深さを追いかけ、小池さんの妄想の広がりはとどまることをしらない。

 それにしても本のタイトル「ことば汁」が象徴するように、本当にこの作品は、言葉の使いどころが練られていて、素晴らしい言葉たちが詰まった味わいのある汁になっている。

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| 古本読書日記 | 18:33 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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梶尾真治   「さすらいエマノン」(徳間デュアル文庫)

 「私、少し他の人と違うところがあるの。信じる信じないは別として。私、地球に生命が発生して以来の、全時代の記憶があるのよ。親から、そのまた親から、すべての記憶を引き継いでいるの。だから、私・・・・人間に進化する前の・・・動物だった頃からの記憶もあるのよ。私の一番古い記憶は40億年前。」

 姿、形は二十歳くらいの可愛い女性。デイバックを背負いながら世界を放浪しているエマノン。

 人間は、ありとあらゆる生物を駆逐して、地球上で最も強い力を持つ存在となった。最も進化し、知恵、知識も発達した動物なのに、人間の間で争いは絶えず、自らを破壊できる武器まで持つように至った。欲望の赴くまま、自然循環を破壊し、その破壊のために滅亡への道を歩むようになった。

 40億年の記憶を持つエマノンの考え、価値観と、40億年の歴史からみれば、瞬時ともいえないくらいの時間で一生を終える人間では決してその価値観が交わることはない。
 それでも、破壊され滅亡に向かう人間の中にも、人間の歩む道が間違っていてそれに心から変革されることを望んでいる人がいる。

 そんな人が窮地においやられたとき、エマノンは必ず現れ、40億年のたまった記憶から事実だけを言う。その、単なる事実が、本来の価値観を取りもどそうとして窮地に陥ってる人に力、勇気、希望を与える。

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| 古本読書日記 | 17:55 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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佐藤正午    「書くインタビュー2」(小学館文庫)

 北海道の田野岡大和君の失踪、捜索事件。同じことを小説家が想像、発想し小説にしたらどうなるのだろうかと考える。

 新聞記者が、失踪現場から大和君が発見された自衛隊小屋までを歩いてみた。道なき道を2時間半かかり、小屋に着いたときはくたくただった。こんな道をよく歩き続けたものだと記事には書かれている。

 躾で大和君をほったらかしにして、5分後に引き返したら大和君はいない。膨大な人数をかけて捜索しても、痕跡すら見つけられない。

 自衛隊小屋はたまたま2つの入り口のうち一つの入り口が鍵がかけ忘れていた。空腹に耐えながら、外の水道水だけで耐えた。1週間の中で、どうして小屋からでて助けをもとめなかっただろうか。

 色んな奇跡が重なったかもしれないが、無事発見は感動を起こした。

 さて、このストーリーを小説家が頭に浮かんで、作品にした場合、小説は読者に受け入れられるだろうか。かなり難しいと感じる。そんなことあるわけないじゃないか。と白けさせるだろう。しかし、現実には起きていることなのである。

 佐藤はこのインタビューで言う。
小説家は嘘を書く。こんなことあり得ないと思いそうな事を、目配り、気配りを持って仕掛けを配置して、あってもおかしくないなと読者に思わせるようなことを書くのが小説家の本分だと言う。

 なるほどと思う。私は、いつでも小説家の嘘に騙されたいと熱望している読者である。

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| 古本読書日記 | 17:53 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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梶尾真治     「黄泉がえり」(新潮文庫)

 宇宙をただ漂っているだけの生命体がある。生命体には感情も、知覚、視覚、嗅覚などの感覚は一切ない。ただ宇宙を放浪して、エネルギーを使い果たす。そのエネルギーが無くなりそうになると、エネルギーを補充できる力を持つ場所に行く。その場所で、じっとエネルギーが充足するまで溜めて、溜まったエネルギーを推進力にしてまた宇宙を放浪する。

 エネルギーを補充できる場所が、地球、日本の熊本だった。そこに、生命体は居座りエネルギーの補充を行う。
 その生命体の特殊な力により、熊本で、すでに死んでしまった人を、生還を望んでいる人がいれば生き返らせてあげることができた。

 前半は、あちらこちらで死んだ人がよみがえるために引き起こされる出来事がユーモア満載で描かれる。市役所には生き返った人たちが社会生活を営めるよう戸籍の復活申請が多数寄せられる。しかし、死んだ人を復活させることなどできるわけがない。

 また死んだ人の復活は、死んだときの年齢で復活する。27年前に死んでその時は小学生。
その時弟だった人は、現在は30歳半ば。しかし弟はよみがえった小学生の兄に対して「兄ちゃん」とよびかける。そして、兄ちゃんは27年間を埋めるため、どんどん体形が成長し、弟と並ぶような体格になってゆく。

 後半は、生命体が必要なエネルギーを摂取すると、また宇宙放浪の旅にでる。その日が3月25日と明かされる。実は、よみがえった人々は、この生命体の先端の一部になっていた。だから、生命体が移動を始めれば、当然、彼らも熊本から消滅することになる。

 生命体は、熊本に込められているすべての力を注入してしまうと、そのエネルギーが大量にありすぎて破壊されてしまう。だから力の一部を吸収する。そして、吸収しなかった力が巨大な地震を引き起こす。

 生命体は、自分の体の先端で、今までなかった知覚、嗅覚などの感覚や感情の存在とそのすばらしさを知る。それは人間社会はすばらしいということ。感情や感覚を知ると生命体がとんでもない行動をとった。

 3月25日。2秒ほど、少し揺れる地震が起きる。よみがえった人々は消える。しかし、地震がわずかしか起こらなかったということは生命体はどうなったのだろうか。

 ホラーファンタジーの傑作作品だと思う。

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| 古本読書日記 | 18:34 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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佐多稲子     「あとや先き」(中公文庫)

 尊敬していた中野重治の妻だった女優原泉の死から、原泉との交流を中心に、佐多の若き頃に交流した人々の群像を描き出す。

 佐多は長崎の生まれ。両親がまだ10代の学生だったため、複雑な育てられかたをされ、尋常小学校をでることなく上京しキャラメル工場で働く。その後カフェーの女給をしたり(この女給時代に芥川龍之介とも会っている)、丸善の売り子などを転々としている。

 この作品では敬愛してやまなかった中野重治や夫であって離婚した窪川鶴次郎、壺井栄、宮本百合子、それから中野重治の妹、詩人の中野鈴子との青春時代の交流が熱く描かれる。

 この作品集を読むと、佐多稲子は、1932年に共産党に入党し、地下活動を含め、厳しい軍国主義への反対運動をしているが、夫、窪川とともに、戦争中思想転向をして、戦争礼賛をプロパガンダしたことを、死ぬときまで棘のごとく胸に突き刺さったままになっている。もちろん戦後は民主主義、戦争反対の活動の中心を担っているが。

 佐多は長命で、1904年に生まれ1998年94歳で没した。これだけ、長生きをすると、青春時代からの友人は、すべて佐多の没する前に亡くなっている。特に最後に残った中野重治夫人の原泉が1989年に亡くなったのはずしりと応えた。

 佐多自身は身に覚えは全くないようだが、この死を境に言動がおかしくなり鬱状態になっている。そして、体も壊し、入退院を繰り返し、5年後に没する。

 人間、長い間友だった人が、どんどん亡くなってゆく。そのたびに、寂しさが沸いてくる。

 そして最後の一人が亡くなったときの孤独感、寂寞感は肉体の隅々までしみわたり、その体までも破壊せしめるものなのだということを心底思った。

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| 古本読書日記 | 18:32 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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梅雨入りしたらしい

犬猫ブログなので、近況報告もかねて写真を。

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先日、時間外診療(夜間)にいった犬。夏は、床にべったり転がっていることが多い。
もともと心臓に雑音があると言われていて、バクバクのハァハァでやばいと思い、獣医に駆け込んだわけですが……
22時すぎに、「フィラリアでもない、熱中症でもない、血液検査の結果高い数値はこれで~」とじっくり説明され、「微熱程度ですが、おそらくは感染症」ということで抗生物質を注射し、治りました。
ちこり嬢があっさり死んだため、ヤブ疑惑が頭をよぎらないこともなかったんですが、あれはやっぱり寿命だったんでしょうね。

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狂犬病の注射&フィラリアの薬をもらうために同じ獣医へ行き、びびって食べなかったはなこの分まで褒美のクッキーをいただき、「これこそビーグル」と苦笑いされていました。
でも、体重は増えていなかった。ごはんを控えめにして、サイエンスダイエットもライトにしているからか。

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最近体がかゆいのは、雨続きでシーツが洗えないうえに、ももこが乗っているからです。たぶん。
かわいいとウザいの中間。

おまけ>
土曜日は、母校の文化祭で弦楽合奏を聞いてきました。
IMG_8743.jpg
私がいたころは、文化祭でも制服で演奏していました。卒アルを確認したところ、頭に花をつけるくらいの装飾はアリだった。
今は、女子は白ブラウスに黒のロングスカート、男子は黒シャツに薄紫や緑のネクタイ。うーむ。
「私の頃にも黒シャツだったら、萌えたかもしれん。弓を操る男子高校生の細い手首、いいわぁ」と思うわけですが、よくよく思い出してみれば、当時は部員が女だけだった(^▽^;)
そして、私はネガティブオーラ漂うキノコ頭だった。白ブラウスなんて義務付けられたら、逃亡していただろう。

| 日記 | 21:32 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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川上未映子    「世界クッキー」(文春文庫)

 幼い頃というのは、特に性について関心があるわけでもないのに、やたら尻とか、男性器、女性器、それから、うんちとか小便という言葉を言い合うと、腹を抱えて笑ってしまう。だから、子供が言うことを聞かなかったり、機嫌が悪い時など、そういう少し卑猥な物を声で発すると、子供が笑い出して機嫌が直る。

 未映子さんのお姉さんが子供を連れて未映子さんのマンションに時々くる。幼い子の機嫌が悪くなる。すると、未映子さん、さっとスカートをめくり、パンツを下して、お姉さんの子にお尻をみせてあげる。途端にその子は笑い声に変わり機嫌がよくなる。

 そのマンションのエレベーターの中でまたその子の機嫌が悪くなる。お姉さんと、お子さんと未映子さんしかいないことをいいことにして、またパンツを下げお尻をお子さんに見せてあげる。お子さんの機嫌がいつものようになおる。

 エレベーターが一階について扉が開く。そして出口に向かう。出口の横の管理人室をみると、管理人がエレベーター内に異常はないか、じっとモニターを見つめている姿に出会う。

 未映子さんは、心底ぞっとする。

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| 古本読書日記 | 18:10 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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香納諒一    「ステップ」(双葉文庫)

 面白いからくりで書かれている作品。ハードボイルドとSFがドッキングしている。

 主人公の斎木は、盗みのプロ。福岡での盗みで斎木のまずかった行動で、仲間の加山と杏を失う。

 斎木、現在は、横浜でバー「レオ」を経営している。孤児院で育った斎木には悟という同じ孤児院にいた弟分がいる。この悟が、暴力団青瀧会幹部の小山の家から、敬子という女の子と一緒に覚せい剤を盗む。しかし、そのことで悟と敬子は色んなところから襲われる。それで、斎木に助けを求める。そこから、斎木も同様に襲われだす。

 この物語が変わっているのは、斎木は襲われ、必ず殺される。ところが、斎木はその都度一日前に生き返って戻る。

 覚せい剤を巡って、青瀧会、小山、それに陳という中国マフィアと彼に雇われていると思われる2人の兵隊、それに謎の老人、川嶋、更に死んだと思われていた杏、更に不可解な行動をする敬子などが入り乱れ、覚せい剤を巡って暗躍する。誰が、覚せい剤の卸元で、この取引を誰が黒幕としているかが全く混沌としていてわからない。

 斎木は、この物語で8回死に、そして生き返り、そしていつも斎木同様に死んでしまう悟の命を守るために、起こった過去の悟の死につながる事実を変えようとする。
 その生き返る度に段々、事件の真実、黒幕に近付いてゆく。

 そして9回目に生き返ってからは、死なない。で、一緒に盗みを働いた杏が、警察が組織に送りこんだ、特別潜入捜査員だと言うことを知る。

 斎木と杏が結びつくことができない最後が切ない。

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| 古本読書日記 | 18:08 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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今野敏     「水滸伝奏者 小さな逃亡者」(講談社文庫)

 「水滸伝奏者」シリーズ第2弾。

 超能力者、超能力現象が今や世界で最も関心のある研究対象になっている。超能力の原理を解析し、それを、自由に制御し支配することが労力少なく世界制覇をする近道だからなのである。すでにアメリカでは、超能力の戦力化に600万ドルの予算をつけているとこの作品では書いている。

 サイバー攻撃というのがある。この場合は、システムのファイアーオールの欠陥を発見しそこを突き破り、特定のシステムに侵入し、システムをコントロールすることを言う。これには超高度なテクニックがいる。これが超能力者にかかると、簡単にシステム内へ侵入して、システムを自由にあやつる。テレパシーという超能力がある。相手の意志や考えをコントロールする力である。これを使えば、大統領などリーダーを超能力者によって自由にコントロールできる。

 この物語は、私はまだみたことはないが、超能力を持っている人間を世界から集め、それを一つの軍の師団として組織して、世界を支配しようとする人間と、それを阻止し、その人間を破壊してしまおうという、これもある意味超能力を持っている仲間たちの戦いを描いている。

 地球を含めた宇宙は宇宙意志というもので動いている。この宇宙意志に逆らって出来上がったのが人間世界なのだそうだ。人間世界では、憎悪や欲が絡んで放っておくと常に殺し合いが絶えない。だから、宇宙意志の秩序とは異なり、人間たちは人間世界だけのための疑似秩序を創る。

 この疑似秩序を超能力により破壊しようとするのが、前記の人たち。一方、それと戦うこの作品に登場するジャズバンドの奏者はそれぞれ人間世界から離れた宇宙意志を持つ人たち。つまり宇宙意志と疑似秩序破壊者との戦いの構図となっている。

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| 古本読書日記 | 17:40 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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わかぎえふ    「ばかのたば」(集英社文庫)

 今まで、主婦だ、子育てだと頑張ってきたおばさん。子供から手が離れると、どうしてかわからないが、多くが習い事、カルチャースクールに通いだす。

 わかぎさんの、知り合いの女性は、フラメンコダンスの教室に通い、熱心な生徒になる。

 だんなさんが会社から帰宅すると、玄関まで踊りながら迎えにでてきて、カスタネットを右頬のところにやり、ぱちぱちと叩きながら「おかえりなさーい」とやる。そして、毎晩でてくる料理はパエリアとなる。

 私達が青春の頃は、家のしつけもあり女性は酒を飲まない人が多かった。今では信じられないことだが。そこで遊ぶのは酒飲み女性、結婚は酒を飲まない女性なんて言い合っていた。

 わかぎさんのマンションの部屋で、女性友達が集まって酒盛りをしていた。一人35歳の独身女性がいて、この女性が蟒蛇のごとくに酒を飲む。飲めば、飲むほどくだをまいて「私は結婚むりやろうなー」と言い続ける。ビールや日本酒を浴びるほど飲んだ後、ジュースが飲みたいというので、外の自動販売機の場所を教えてあげる。わかぎさんの部屋は自動オートロックなので部屋の鍵をもたしてあげる。友達がそれからいつまでたっても帰ってこない。

 心配になったわかぎさん自動販売機のところまでいくと、部屋の鍵を懸命に自動販売機に差し込もうとしていた。

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| 古本読書日記 | 17:39 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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梶尾真治   「未来のおもいで」(光文社文庫)

 主人公の浩一が熊本県の白鳥山に登山をする途中、大雨にあい、山腹のほら穴で雨宿りをする。その白鳥山に22歳の沙穂流も登山をしていて、大雨にあい、浩一と一緒のほら穴ですごす。

 実は浩一が生きている世界は2006年。そして沙穂流の世界は2033年。どちらかがタイムスリップすることで2人は邂逅する。雨宿りの間だけ。そこで互いに離れられないほどに相手を想うようになる。
 当然生きている時代が異なるから、それから2人は会うことはできない。それでほら穴に手紙を置いて置き、互いに、ほら穴にゆき手紙をピックアップしながら、会話をする。

 ここでドキっとする。実は沙穂流の両親は、熊本で大震災があり、家屋の下敷きになり2033年には死んでいないことが沙穂流の手紙で明かされる。梶尾は、預言者なのかと思ったら、大震災は2024年10月15日の未明に発生していた。それでも、ファンタジーがぐっと現実味を帯びてきた。

 ここからが、タイムスリップ物語でいつもメインテーマになる今や過去を変えることで未来を変えられるかに話が移る。

 まず、2006年まだ健在である、沙穂流の両親を浩一が訪ね、両親に2024年10月15日には熊本を離れているようにお願いする。震災の当日両親が熊本を不在にしたかは、この物語では明らかにされない。

 というのは、浩一は2006年12月30日に白鳥山にでかけ遭難死したことになっていたからだ。それで、沙穂流は手紙で12月30日は絶対山に行かないようにお願いする。

 しかし、過去を変えることはできず、浩一は12月30日山へ向かう。そして、遭難する。

 しかし、遺体は発見されなかった。で、浩一は今2033年沙穂流のもとへタイムスリップしようとしている。結構洒落た終わり方である。

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| 古本読書日記 | 17:49 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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今野敏   「ST警視庁科学捜査班 エピソード1」(講談社文庫)

 STに集まった5人の特殊能力を持った個性的な面々。今回のシリーズでは犯罪プロファイリングの専門家、青山が活躍する。

 新宿で、3人の外国人クラブホステスが次々に猟奇的手口により殺害される。2人は中国人、もう一人は南米人。それぞれの被害者からは血液型の異なった男の精液が検出される。
犯行方法も異なるので、3つの事件は関連性は無く、別々の犯人により行われたものとして捜査がなされる。

 ところがプロファイル専門の青山は3つの事件が関連性がなくバラバラに行われただろうという前提捜査に疑問を抱く。

 アメリカで発達した犯罪プロファイリングは6つの型に分類されるが、今回の犯罪は、そのうち3つの型に当てはまっているようにみえる。幻覚型、淫楽型、権力支配型である。当然3つに当てはまっていれば、3つの猟奇事件は関連性はあまりなく行われたと判断できる。

 しかし青山は、どの殺人事件もそれぞれの型にピタっとはまらない部分があることを突き止める。そして、これらの殺人は、プロファイルを熟知している人間が、型通りの殺害を装って行った事件だと指摘する。

 そこの推理の過程は面白い。今野はプロファイルの知識を読者に提示したい動機でこの作品を描いている。

 それで、犯人はあぶりだされるのだが、その犯人が何故3人のホステスを殺害したのかに言及がなく、わからないままにして物語が終わる。捜査の過程は迫力があったのにちょっぴり残念。

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| 古本読書日記 | 17:47 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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