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2016年04月 | ARCHIVE-SELECT | 2016年06月

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綾辻行人    「鳴風荘事件」(講談社文庫)

 「殺人方程式」シリーズ第2作。

 主人公深雪は、高校生の頃、友達と埋めたタイムカプセルを掘り出しに、夫明日香井叶の代わりに本シリーズで名探偵として活躍する叶の兄、響とともに信州の当時の美術教師の別荘を訪れる。そこに、彼らをいれて、当時の仲間とその関係者、それに美術教師をいれ計7人が集合する。

 その夜、4階に泊まった美島夕海が殺される。殺された直後にたまたま地震があり、夕海の部屋に置かれていた赤ペンキの缶が倒れ、出入り口に赤ペンキが撒かれる。

 不思議なことが2つ。
 夕海の部屋から、ストッキングや下着がどこかに持ち去られている。加えて夕海の髪の毛が鋏で切断されそれも消えている。
 犯人はどうしてこの2つのことをやらねばならなかったのか。

 ここから響の推理が始まる。撒かれたペンキ。正常な足を持っている人なら、ここを飛び越えられ部屋から出られる。しかし、足の悪い人はペンキの上を歩かねばならない。それだと靴にペンキつき後で犯人として見つかってしまう。

 もし犯人が足の悪い人だとしたなら、ベランダから11m以上下へ降りねばならない。そのために、下着やストッキングをつなぎ合わせロープ替わりにした。しかし、それだけでは長さが不十分だったので髪の毛を切って更につなげた。犯人は脱出した後、たれさがった下着ロープに火をつけ燃やし証拠をなくした。

 ところが、当夜足がうまく使えない人が3人いたのだが、犯人に該当する人は一人もいない。とすると、正常な足を持った人が犯人になる。正常な人でも犯人になる条件の人がいる。
 
 ここで綾辻が持ちだしたのが、殆ど聞いたことがない病気「化学物質過敏症」を患っている人。
 この病気を患っている人は、化学物質が発する匂いに反応し、心臓の鼓動が激しくなり、とても立ってはいられなくなるそうだ。

 こういうトリックを素直に受け入れられないようでは、推理小説の良い読者にはなれないのだろうなと、思わず私はよくない読者だと思ってため息をつく。

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柳美里     「仮面の国」(新潮文庫)

 柳さんの主張はすさまじい。

 アメリカでは、10歳、11歳でも凶悪犯人は写真、人名は報道されるそうである。通常日本では少年などの凶悪事件が起きると被害者はそれこそ家族まで含めて、写真人名が報道されるが、加害者は全く報道されない。加害者擁護が過度であり公平さを欠く。従って加害者も写真、実名は報道できるよう少年法を改正すべきという主張が一般的である。

 人権派弁護士や、人権派を標ぼうするマスコミはこう主張する。
「10代前半は少年である。人間関係も生活体験も未熟な子供である。こんごの歩み方次第で、将来どのようにも変わりうる。」だから、犯人を公開してはならないと。

 これに対し柳さんは、将来どのようにも変わりうるというのは錯誤である。10歳頃で凶悪事件を起こすような人間は、いつまでたっても変わることは無い。だから厳しい制裁を科すべきと主張する。強烈である。

 言論の自由を標ぼうし声高に叫ぶ言論人は、言論擁護者を気取って、実は自分を守ったり、自分の主張を通すためにいつでも弾圧者になりかねない性癖を持っている。このような人間は正義をふりかざすのが常で、新聞社、人権派、弁護士のなかにも掃いて捨てるほど存在する。言論の弾圧は右翼、保守派の専売特許ではなく、言論の場で大手を振って闊歩しているのである。
 こういう柳さんの言論人についての考えには私は完全に賛成である。

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綾辻行人    「ANOTHER」(下)(角川スニーカー文庫)

 3年3組には、誰なのかわからないが、一人過去の事件で死んだ被害者が紛れ込んでいる。それが誰なのか全くわからない。とにかく死者が紛れ込むと、次々3年3組の生徒か、その家族が事故か事件で死ぬ。それぞれが、推理を働かせ、あいつが、こいつが怪しいとなるのだが、すべてが死者ではないこととなる。

 事件解決のために、2つ鍵が物語で提示される。

 少し古くなるが、同じような事故死が頻発していたある年、夏以降ピタっと事故死、事件が発生しなくなる。この夏、3年3組の合宿が夏行われる。その場で、松永という生徒が、ある生徒を刺し殺す。実はこの殺された生徒が亡霊だったのだ。だから、その後事故、事件はピタっと止まった。そのことが松永が隠していたテープを再現することで、主人公恒一やクラスの仲間は知る。

 一方恒一と一緒に存在しない生徒としてクラスで扱われていた見崎は右眼が完全に失明していて義眼をはめている。ところが、この失明している眼で、すぐ死にそうな人、死んでいる人は特殊な色の膜がかかって見える。つまり、誰が死んでいるにもかかわらず、クラスに紛れ込んでいるかがわかるのである。

 この作品、亡者がこの2つの鍵によりあぶりだされ最後は亡者を殺して、死の世界へもどすことにより解決する。

 しかし、それまでに10人近い人が殺されたりして亡くなっている。
 見崎が亡者は誰かが見えるのだから、こんなにたくさん犠牲者をだすことはなかったし、700ページも超える長編にする必要もなかったと私には思えてしまう。

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綾辻行人    「ANOTHER」(上)(角川スニーカー文庫)

 主人公15歳の榊原恒一は母の故郷夜見市の夜見山北中学校3年3組に転校する。
そこで少女見崎鳴(ミサキメイ)に出会う。

 この見崎が不思議な少女で、恒一にはその存在が見え、会話もときにするのだが、先生を含め他の全生徒からは全く存在していないような雰囲気がある。母が在校していた26年前に3年3組でミサキという生徒が飛行機事故で亡くなっている。そのことが関係しているのか。見崎は、亡霊であり、他の人には見えないが、恒一だけには見えるのか。そんなホラーの雰囲気が漂いながら物語は進む。

 26年前に飛行機事故で亡くなったミサキは非常に優秀で、皆から愛されていた。それで事故後、クラスではミサキが実在しているものとして運営され、卒業もでき、驚くことに卒業写真を写すと、ミサキが写っていたということが物語の底に流れる

 恒一が転校してくると、3年3組の生徒や生徒の親や家族が次々事故に会って死ぬ。
そして、恒一も見崎とともにが、3年3組の生徒、先生から無視され存在が消されてしまうことになる。
 どうして、そんなことをされるのか。誰に聞いても、話してくれない。追いつめられた主人公に見崎が3年3組の秘密を教えてくれた。

 26年前にミサキが亡くなってから、毎年ではないが、3年3組に名簿とそれに対応した机が用意されるのだが、必ず1つ机が足りないことが起きる年がある。どうやって調べても、名簿と机の数はあっているのに。そしてそういうことが起きた年は、必ず生徒やその家族が死ぬ。

 今年も一人余計な生徒が紛れ込んでいる。そこで、先生と生徒が話し合い、見崎を存在しない生徒として扱うことを決めた。だから、見崎は亡霊ではないことが上巻終わりで明かされる。

 そのことを知らない恒一は、見崎に近付き、平気で会話をする。今年はたくさんの人が死ぬため、おまじないで恒一も存在しない生徒とすることを決められる。ここで上巻終了。

 この多発する死とホラー現象を、ミステリー作家の雄、綾辻はどう落とし前をつけるか気にかかる。

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重松清    「ファミレス」(下)(角川文庫)

 重松はこの作品で「アラフィフ」という言葉を流行らせたかったのかもしれない。

 50歳前後は、だいたい子供が大学にはいり、家から独立して生活を始める頃。すると家には夫婦2人が取り残され、毎日夫婦だけで顔を合わせた生活が始まる。まだ、どちらの親も面倒をみなければならないというところまでいっていない。これから、2人だけで生活せねばならないのかと思うと、どことなく未来に陰りがでてきてそれが重圧になる。

 で、気が付く。過去を断ち切り、新しい自分の世界を創る最後のチャンスが50歳前後だと。このチャンスを逃し、60歳以降となると、両親の世話もでてくるだろうし、そこから新しい世界へ飛び出そうなどという気力は沸いてこないだろう。

 大震災で家を失い、冷たい世界にはじきだされた人たち。また元の場所に戻りたいと考える人たちは殆どいないそうだ。それは、今まで送ってきた過去を断ち切り、新しい世界を切り開かねばならないことを意味する。

 そんな人たちの心は実に寂しく孤独である。思い出がいっぱいつまった家を失うことは本当に辛い。

 過去は、未来を新たに創っていくための支えになるもの。だから、過去を全部否定し、なかったことにして未来に向かうことは孤独になることを意味している。

 重松は言う。50歳前後の人、そんな勇気がありますかと。

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重松清     「ファミレス」(上)(角川文庫)

 日本経済新聞に掲載された連載小説。

 「人生とは、腹が減ることと、メシを食うことの繰り返し」と考えている、50歳前後の友達3人の男たちの織り成す暮らしを描いた小説。

 小説の書評は、下巻を読んだところで、書こうと思っているが、上巻での気が付いたところを記す。

 最近は、スターバックスなどのアメリカ式テイクアウトの喫茶店におされ、昔風の喫茶店が無くなった。その代わりをファミレスが担うようになった。

 待ち合わせに使う。サラダバーとコーヒーで打ち合わせをする。飲み物もそこそこあるし、料理も和洋中が揃い、それぞれの好みで料理やサイドメニューを選べるから、使い勝手がよい。

 土日を別とすれば、ファミリーで来店している客など殆どいない。ファミレスはFAMILY  LESSの略のように感じる。

 50歳前後となると、子供たちが大学に入り、家を離れ独立した生活を送るようになる。子供たちがいたときは、子供を介して夫婦が会話する。しかし、子供がいなくなって夫婦だけで毎日生活するとなると、会話がうまくいかない。

 それで、どうなるかと言うと、ずっとテレビがつけっぱなしになっていて、そのテレビを介して会話をするようになる。

 最近は「舛添はけちだ」とか「舛添は男らしくない」というような夫婦の会話が多いのだろう。

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綾辻行人    「殺人方程式」(光文社文庫)

 新興宗教「御玉神照命会」教主のお籠り修行のとき、首、腕がバラバラになった教主の死体が、川を挟んだマンションで発見される。この少し前に教主の夫人が列車にひかれ死ぬ。他殺か自殺か不明。その後、何人かが、自殺のようにみせかけ殺される。

 お籠り修行中は3か月間、教主は教団をでることはできず、修行場でずっと修行に励まねばならない。そんな中で、教主の死体が、川を挟んだマンションで発見されるのだから、教主は当然秘密裡に外出して殺害されたと読者は錯覚する。しかし、実は修行場に誰かが忍び込んで教主を殺したのが真相。

 でも、そうなったとき、この死体を守衛が見張っている中、どうやってマンションまで搬送したかが事件を解く鍵。このトリックがよくない。滑車を設置しロープをまきつけ、そこに死体をぶらさげ、隣のマンションまで運ぶ。更に、首や腕、死体を運んだ袋などをほんの短い間に、捜査をかく乱するために、幾つかの場所へ持ち運ぶ。

 普通殺人で、こんな大げさかつ危険が高い仕掛けを使うことなどあり得ない。しかも、滑車をほのめかすような描写は事前に全く無く、突然、名探偵が登場してトリックがすべて解明したと説明をする。これでは、読者は唖然とするだけで、推理を楽しむ暇もない。

 更に犯人が捜査をしている刑事であることも、あまりにも突飛すぎて感心しない。

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ギルバート・アデア   「閉じた本」(創元推理文庫)

 主人公のポールは英国の最高の文学賞、ブッカー賞も受賞したことのある大作家。このポール、旅先のスリランカで交通事故に会い、完全に失明してしまう。4年間の隠遁生活を経て、再起をしようと口述筆記者を「ザ タイムス」で募集する。そこに応募してきたのがジョンという男。

 完全に失明している作家のための口述筆記者というのは、単に作家が喋ることを筆記するだけではだめ。作家の視る世界を、作家に代わり見て表現できなければならない。作家は風景や事物を、口述筆記者の眼を通して視るわけだ。

 面接試験で、見える風景をポールはジョンに語らせ、その回答に満足、ジョンは自分の眼になりうる人間と確信し、筆記者に雇う。

 ポールは、自分の物語に挿入するため、ジョンに幾つかの場所に行かせ、挿入する事物を見てきてもらい、ジョンの視て描いた表現を物語に挿入しようとする。
 ところが、ある日ロンドンに行って買ってきてもらったジグゾーパズルが指定していたものと異なっていることを家政婦の話から知る。
 このあたりから、ポールはジョンの視た事物の表現が、実際と異なっているのではと感じるようになる。ここからがミステリータッチが深まり面白くなる。

 あれこれおかしいと気が付くポール。そして、何のためにジョンが嘘をつくのか、不安がだんだん増幅してくる。

 面白いのは、この物語が、90%以上ジョンとポールの会話だけで構成されている。だから全く心象や説明が無い。読者はポールやジョンがどんな男で今何を思っているのかを会話の中から想像しなければならない。そこがミステリーの味わいを深めている。

 ただ、最後の真相が、会話体がミステリーの味わいを深めていったのに比し、平凡だったのが残念。もう少し、想像できない結末にしてほしかった。

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川村元気   「世界から猫が消えたなら」(小学館文庫)

 余命幾許もないと宣言された主人公の前に、悪魔が現れて、この世で何かを一つ消したなら余命が一日延びると言われ、毎日、主人公が一つ何かを消してゆく。

 電話、映画、時計を消してゆく。

 電話を消したときの思いが面白い。今は、携帯で例えば恋人同士は常につながっている。だから、相手のことを考えたり、思ったりすることが殆ど無い。この世から電話が消えると、手紙でのやりとりしか相手とつながる手段がなくなる。懸命に自分のこと、相手のことを考え思いながら手紙を書く。そして、相手から返事がくるまで、相手がどう思うだろうか、相手も自分のことを好きだろうかと恋人のことを思う。あるいは、待ち合わせ場所に相手が来ない。ここでも、相手のことをどうしたのだろうと懸命に考える。電話が無くなると、本当に相手のことを愛していることを知ることができる。

 電話も、時計も、映画も無くすることができた主人公。

 一緒に生きてきたパートナーである愛する猫キャベツ(名前)を無くすることができなかった。
その時、キャベツは人の言葉をしゃべった。
 「私を無くしてもいいよ。あなたがいなくなった世界で生きていたってしかたないもの。」と。

 そのとき主人公はわかる。キャベツにだってこれからいい主人に恵まれ幸せな生活を送ることができるのに、自分のわがままでそれを摘み取ってはいけないと。それは電話も、時計も、映画も同じこと。みんながそれに頼って生きているのだから、決して無くしてはいけない。

 母が死ぬ前に主人公に書いた手紙が良い。もう死ぬことがわかっている時、死ぬ前に10個何かをしたいのなら何をするか。母は考えられない。その代わりに、主人公にあなたの素晴らしいところ10個を手紙に書いてあげる。母親というのは素晴らしいと感じた。

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山村美紗    「ブラックオパールの秘密」(講談社文庫)

 宝石や高価なダイヤモンドなどの中には、美術品などと同様、それが、どんな経路を経て宝石商の手にはいったのか怪しい由来をもっているものが少なくない。

 この物語、主人公のキャサリンが母へのプレゼントにと宝石店からブラックオパールを購入する。このオパールの裏地に米粒くらいの文字が彫られている。それは「水」という漢字。

 実は10年前に銀行強盗事件が起き、3億円が強奪される。犯人は3人だったが、すぐ分配して使用すると、自分たちが発見されてしまうので、ほとぼりがさめるまで、秘密の場所に保管しておくことになった。その保管場所がどこかわかるように、手元にあったオパールに一文字ずつ、彫っておき、その3つがあわさるとその場所がどこかわかるようにしておいた。

 ところが犯人の一人が、ひき逃げ事件で死んでしまい、その際、オパールが行方不明となる。残った犯人は、そのオパールが手に入らないと、隠し場所がわからない。それで、キャサリンのオパールを奪い文字を知ろうとする。

 でも、不思議なのは、隠し場所くらい教えておいてもよかったように思う。そうか、そんなことを教えておくと抜け駆けするやつがでるかもしれないから、こんなややこしい方法がとられたのか。

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綾辻行人    「フリークス」(光文社文庫)

 フリークスというのは同名の映画からきているが、奇形児のことを指す。

 作品には4人の奇形児が登場する。正確には5人だが、一人は女性の奇形児で、主人公のJMという科学者を「ころせ」という思念波を送るだけで、実際の物語には登場しない。

 一人は眼がひとつしかない。2人目は体が蛇のような鱗になっている。3人目は腕が3つある。4人目はせむし男のように背中がまるまっていて瘤が2つついている。

 この4人の奇形児は、JMが父親である。JMは奇形ではないが、ものすごい醜男で、世間から蔑まれていた。そこで、どこかで奇形児が生まれたという情報を掴むと、でかけていって養子に迎えた。それが4人の奇形児たちである。

 JMは自分の醜男ぶりを癒すため、自分の家の半地下の室に、奇形児の誰かを閉じ込め、そこで奇形児を痛めつけていた。その半地下の部屋は、出入り口は一つで入口、出口から鍵をしめられるようになっていて、その鍵はJMが持っていた。もし、その半地下から他に出入りしようとするなら、天井近くに窓を使うしかなかった。

 JMがその半地下で、奇形児の誰かに殺される。JMの体は切り刻まれ、あたりは血だらけだったのだが、どういうわけか出入り口の鍵だけは、きれいに洗浄され、石鹸の粉がついていた。

 この粉と、出入りが可能な窓が事件を解く鍵となっている。

 鍵は、JMが死ぬとき、犯人が出られないようにするため、飲み込んだのである。だから鍵には胃液がついていた。それで洗浄が必要となった。もうひとつの出入りが可能な窓からは体形的に出入りできず、鍵をつかって扉から出るしかなかった奇形児が犯人である。

 ホラーミステリーとしてはそれなりに面白かった。

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濱 嘉之   「ヒトイチ 内部告発」(講談社文庫)

 ヒトイチというのは警視庁人事一課監察係。警察内部の不祥事、不正など、警察内部の膿を摘出する部門。警察は一般の人たちの信頼があって成り立つ組織。その信頼を確保するためにある組織と言ってよい。

 この組織の係長である榎本の活躍を描いた作品。

 警察にもあるが会社でも最近は内部告発110番という相談室を設置して、組織での不正や最近よく問題になるセクハラ、パワハラを内通して受け付ける部門がある。この内通制度が機能するためには、告発者の人権、安全を守ることが最も大切なこととなる。

 ところが、これがなかなか難しい。この作品にもでてくるが、ある署で署長の特定個人に対するパワハラを、みるにみかねた警部補から監察係110番に連絡がある。

 これが事実か、どんなことがあったのか、署長の周辺の署員に聞き込みをすることになる。ここでうっかり内通者の名前を喋ってしまったり、事実調査をしただけなのに、当該署では、誰が内通したのか、徹底的にその犯人を捜そうとする。

 そして内通者がわかると、署長、副署長の内通者への徹底した迫害が開始される。
 とにかく、内部告発者の秘密は守るという前提なのであるが、かなりの割合で内通者があぶりだされる。

 組織内にある何とか110番というのは、あまり信用しないほうがよいのである。

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デュウィ・グラム  「オーシャンズ11」(新潮文庫)

 同名の映画のノベライズ作品。

 刑務所から保釈されたばかりの窃盗名人のダニー・オーシャンが、彼が刑務所暮らしの間に練り上げていた大窃盗計画を実行する物語。

 場所はラスベガス。そこの3大カジノ兼ホテル。「ペラージオ」「ミラージュ」「MGM」。

 狙う日はボクシングヘビー級世界タイトルマッチ タイソンの試合が行われる日。実は、ネバタ州賭博規制委員会の規定で、掛け金に相当する現金がカジノの金庫に保管されていなければならない。タイソンの試合がある日は1億5千万ドルが金庫に入っている。その金庫を襲うのだ。

 この金庫奪取のために、まず、ダニーの仲間であるラスティが加わり、更に最近までこのカジノを所有していてセキュリティシステムに詳しいルーベンが加わり、それに窃盗犯罪スペシャリストとして8人が全米から集められ合計11人により犯罪は行われる。

 完璧と思われるセキュリティシステムを破っていく場面や、現在のホテルオーナー テリー・ベネディクトを欺くところなどは、映画で見たほうが興奮するだろうが、本でもなかなか迫力満点で面白い。

 停電を起こす装置ピンチをカリフォルニア工科大学から盗むところ、11人を捕まえるためSWATが投入されるのだが、このSWATが悪党11人にすり替わり、堂々とお金を盗んで運びだすところは実に面白く楽しい。

 この小説では、古くなった大ホテルを新しいホテルにするために爆破するところがでてくるが、映画では無かったそうだ。これは当時ニューヨークの爆破テロが起こって間もないころで、その恐怖を引き起こさないための処置だったことを知る。あのテロは映画製作にも影響を与えたのだと思った。

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今野敏    「パラレル」(文春文庫)

 今野は基本的に警察物を中心とした推理小説家なのだが、小説によっては呪術師を登場させた伝奇的色合いが強い作品や、武術家を登場させた武道小説の色合いが強い作品も過去発表してきた。

 この作品はそれぞれの小説に登場していた人物をフルキャストでしかも平等に登場させ、推理、伝奇、武道を3つ絡めた総合エンターテイメント小説にしてある。サービス満点小説というところだろうか。

 現代社会での、大人と子供の関係は、氷のごとく冷たくその対立関係は深く深刻である。
次々起こる少年少女たちの凶悪な犯罪、大人たちによる無力な子供たちに対する恐ろしいDVや殺戮。それぞれが完全に対立して憎しみ合っている。

 この小説は、暴走少年たちにより無残にレイプされた少女が、自分と性関係を持った大人を亡者(すべての理性がとりはらわれ、情欲など感情だけで動く者)にできる呪術能力を獲得して、亡者になった大人たちを呪術により支配して、暴走少年たちを次々殺してしまう小説である。

 あまりエンターテイメントという感じがしない。街を彷徨している、犯罪者予備軍のような少年少女たちを、亡者になった大人たちにより殲滅してしまえということを今野は言いたいのだろうか。少年法も確かに甘い。

 しかし、我々が大人と無法で暴れる子供たちのことを考えても、どうしたらいいのかは全くわからないのが切ない。

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又吉栄喜    「豚の報い」(文春文庫)

 沖縄県出身、同じ又吉でも「火花」の直樹よりだいぶ前に芥川賞をとった又吉栄喜の作品。

 沖縄浦添にあるスナック「月の丘」に突然豚が侵入してくる。スナックに勤めているママや和歌子、曜子が大騒ぎになる。そして和歌子が殆ど失神し、豚の魂がとりついたと信じてしまう。たまたま、スナックにいた、琉球大学で沖縄文化史を学んでいる正吉が、自分の故郷である真謝島に行けば厄落としができると言うので、3人は真謝島に彼女らの過去の過ち現在の悩みをすべて持って正吉と一緒に厄落としにでかける。

 偏見があるかもしれないが、まあ中年の女性の、お喋り、食欲、情欲それらを合わせた生命力の強靭さはすさまじい。この話は、正吉が主人公になっているが、完全に女性3人のすさまじさが軸になっている。

 民宿でだされたものは全て食い尽くし、飲み尽くす。男との不幸な経験。子供を堕した痛恨の悩み。もう、互いの過去、今の不幸のオープンのしあい。本当は悲しい気持ちなのだろうが、彼女たちの屈託の無い告白に、どこが悩みなのかわからない。

 殺したばかりの豚を食べて、腹を壊した3人。とにかく自分だけには正吉に寄り添ってもらおうとすりよる。

 点滴をしながら、失禁してしまったママの下着をとってあげ、きれいに正吉にふき取ってもらい、新しい下着はきかえさせてもらう、そのあっけらかんさにびっくりした。

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渡辺一雄   「会社の急所教えます」(徳間文庫)

 今の会社で、派閥を作ったり、ライバルを策略でもって次々はじきとばし、その結果社長にまでいたるなどということはあまり無いと思う。そんな人もいるかもしれないが、だいたいは策略に溺れ、自分も途中ではじかれてしまうだろう。

 この本は、上位者にいるものが、何か事故がおこったら、いくら下位のものが助けを求めても、ほとんど一緒に解決にあたろうとしないで、下位にいるものが責任を押し付けられ、上位者は知らぬ存ぜぬで対応するのが会社というものだという実例をこれでもかと紹介している。

 そして、そういう被害にあわないための唯一の方策は単純明快で自らが社長になることだと。それじゃ、この本を読んでも全く役にはたたないじゃん。

 この本の中で、すごいと思ったのは、ある銀行で赤字の支店を閉鎖することが決まる。ということは、原則、そこの銀行員を辞めさせねばならない。

 そこで、その支店で150万円が盗まれたという事件をでっちあげる。そこから警察捜査が始まるわけだが、支店長は警察と結託して、捜査情報を逐一教えてもらうようにする。

 調べられた行員は200名にものぼる。どんな行員であっても、後ろめたいことをしたことは、或いは現在していることは多少はある。そこを警察の捜査は徹底して調べあげ、その内容は支店長に報告される。支店長は捜査のほとぼりがさめたところで、その捜査内容を行員につきつけ、銀行を辞めるように迫る。とんでもない銀行である。

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佐川光晴    「おれたちの約束」(集英社文庫)

 「おれたちのおばさん」から始まった陽介の成長物語を描く「おれたち」シリーズの3作目。

 札幌の児童養護施設をでて仙台の有名進学校東北平成学園に入学し、学園寮に入寮してからが物語となる。

 この物語のテーマは陽介と父との係りが大きなテーマになっている。陽介の父は銀行の副支店長だったが、そのころ愛人を持ち、その愛人との生活を維持するために、銀行のお金を横領し、銀行から告発され、逮捕、懲役2年の実刑判決を受けて福岡刑務所に収監されていた。そして陽介高校1年のとき仮釈放され、出所した。このことを、陽介は父からでなく弁護士からの手紙で知る。ここから、父に対し嫌悪感が増してくる。

 父は母親にも会うことなく、弁護士の紹介で、群馬県高崎の特養老人ホームで働きだす。

 陽介は仙台で東北大震災に巻き込まれる。母親はもちろん、恋人と思っている波子や、北海道の児童施設の時の恵子おばさんや仲間から、メールや電話をもらうが、父からは何の音信もない。

 わだかまりだけが膨らむなか、同級生の中本に背中を押され、中本の手配で、高崎の特養ホームの父に会いに行くことになる。
 そこで、偶然父をみつけ、そこで、今までの怒りが抑えなくなり、父を面罵して、そのまま仙台に帰ってくる。

 大震災のあった3月11日に、平成学園では学園祭の最中だった。それが途中で全部中止されたが、陽介が学園祭実行委員長になり再開催をする。そこに、波子ちゃんや母を招待する。友達の中本が、陽介の了解も得て、陽介の父親にも招待状を送る。
 そして学園祭当日、波子ちゃんや母に遅れて父親が現れる。わだかまりが母にももちろん陽介にもあるから素直に喜ぶことはできない。

 その時、中本が大きな声で、「陽介のご両親がきています。」とみんなに告げる。まわりのたくさんの人たちから拍手がおきる。陽介はおもわず両親の手をとって高く掲げる。

 陽介はまたひとつ人生が前進した。早くこの先を読まねばと感じた。

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南木佳士    「山行記」(文春文庫)

 南木は私と同い年。しかも山国出身。だから、南木の作品を読むと、そうだよなと共感するところばかり。

 例えば、私の生まれ育った村では、登ることを目的にして山に向かうということは殆ど無かった。わらびとりを夢中になってしているうちに山へ登ってしまった、本当に南木が書いている通りであった。それにしても南木が母校の小学校で出演した「課外授業、ようこそ先輩」という番組。南木が小学生の頃は1学年100人以上の生徒がいたが、この番組を撮影したときには19人。私の母校も健在ではあるが、生徒はどのくらいの数になってしまっただろうかと思わず考え込んでしまった。

 南木は、小説を書こうとしたのは、その動機を素直にこの作品で吐露している。南木は勤務医をしながら、小説を書いている。重症患者が毎日のように亡くなってゆく。それをみていて起こる精神的重圧に耐えられなくなって物を書かねばならないと思うようになった。山へ登ることを始めたのは50歳から。それも、この重圧から生じたパニック障害が、山で違った世界にふれ、体と心が一体となることで克服できると感じたから。

 「ハードな山行では、歩いているうちに、ふだんの生活ではある程度把握できていたはずの「わたし」の輪郭が次第におぼろげになってくる。・・・・酷使されたからだは山の気のなかに溶け出してゆく。
 ただ、下界に還らねばならぬ身は無に傾斜してばかりではいられない。溶けたからだを寄せ集め。濃縮、再生し、俗世仕様にもどさねばならない。」

 これが山行記の神髄であり、南木の飾りのない心の中なのかと思う。

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| 古本読書日記 | 16:30 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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下に見る人

爺やの感想はこちら
あとがきで、この本の装丁を担当した人が、
「仕事先の女性に『このエッセイ、面白いから』と渡し、三十分後に部屋に戻ったら、『これは……キますね』と怒気をはらんだような顔をされた」
と語っています。
この手の、苦い記憶を甦らせるような本は、読む前に覚悟が要るので、面白いよ~と気軽に薦めないほうがいい。
含みがあると思われかねない(-_-;)

爺やも「酒井さんの生きてきた時代を照射しながらの論はすこしのずれと違和感を覚えるが、そこを抜きでも結構面白い」と書いています。
東京生まれの女子校育ちで元総合職という酒井さんの経験談には、ピンとこないところもありますが、無理なく冷静に話を発展させているので、面白いです。
私がもし酒井さんと同じ教室にいたら、「またスカートを短くしている。先生に見つかればいいのに」と思ったり、「ダサすぎてからかう対象にもならない。どうせ私たちを馬鹿にしているんでしょ」と思われたり、決して親しくはならない気がする。

不潔な子をはぶせにしていた記憶はありますが、「えんがちょ」という単語はなく「バリア」だけでした。
何日もシャンプーしていないべとべとの髪や、くろずんだ上履きの子が、小中学校の各クラスに一人はいた。
もっとも、年の近い同僚は「えんがちょ」を知っていたので、世代差ではなく地域差かもしれない。

ちなみに私は、「ぎりぎりゆとりじゃない」という世代です。

| 日記 | 23:14 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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綾辻行人    「黄昏の囁き」(講談社文庫)

 綾辻「囁き」シリーズの3作目。

 相変わらずの、正体不明の囁き、「おじぞうさま」「わらった」「わらった」はサイコホラーとして効果十分。
 「おじぞうさま、わらった」は「だるまさん、ころんだ」と同じ遊び。鬼の子が「わらった」と言ってふりむいたとき、止まった子がにこっと笑っていなければならない。

 この物語は、主人公が大学から帰省していた今から15年前、主人公の兄を含め、4人の子供が、「のりくん」という子を「おじぞうさん わらった」という遊びをしながら、いじめていた。その、のりくんが地蔵丘にとめてあった車が急に後ろ向きに走ってきて、ひき殺される。いじめっ子の4人は怖くなって逃げる。

 その4人が主人公が帰った15年後に囁き声とともに、次々殺される事件が発生する。

 意表をついたのが、このいじめにあっていた「のりくん」は子供ではなく、痴呆症の徘徊老人だったこと。このトリックには唸った。
 しかし、綾辻にしては犯人の動機付けにこの作品では無理があった。

 犯人は、占部という男性のお母さんで、ひき殺されたのは占部のお爺さん。実は、車にはお母さんが乗っていて、お母さんがサイドブレーキを解除することでお爺さんが轢かれた。

 このお母さんが、自分が殺したのではなくて、お爺さんが殺されたのは、4人の子供が逃げたこと、これがいつしか彼らが殺した犯人にお母さんの頭の中で変化し、お爺さんの復讐のため4人を次々殺害したと綾辻は物語を展開させる。

 これは、ありえない。こじつけが過ぎて残念な作品になってしまった。

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| 古本読書日記 | 17:48 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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今野敏    「為朝伝説」(講談社文庫)

 この小説は、特殊な個性と能力を持っている百合根班長が率いる警視庁科学捜査班活動シリーズに入る作品。

 伊豆大島と奄美大島で連続してダイバーが事故死するということが起きる。この2つの地が源為朝にゆかりがあるということでから、何か関連があるのではとテレビの午後のワイドショーが取り上げようと、それぞれの地に取材スタッフを送り込む。その取材中に番組アシスタントの女性アナウンサーがこれも事故死で水死する。

 これら3つの死が、本当に事故死なのか百合根の上司が不審に思い調査を科学捜査班に要請する。それにより、捜査班は番組関係者への聞き込み、事故のあった奄美大島、伊豆大島にもでかけ調査を行う。

 当然、水死が為朝伝説と直接関連はすることはない。しかし、誰が見たって関係しない為朝と水死をワイドショーが関連付けて話題にしようなどとバカバカしいことを考え実行しようとするのか。ここが事件の真相の肝となる。

 実はこのワイドショー、夜報道番組のメインをやっていた大物キャスターを、その報道番組が終了したのを機会に、ワイドショーのメインキャスターに引っ張ってきて据えた。しかしテコいれ空しく、視聴率は上がらない。そこで、テレビ局上層部より打ち切りがチーフプロデュサーに指示された。しかし、この番組を打ち切りにされると、仕事が無くなり困る人がでる。それがフリーになったアシスタントの女性アナウンサーだった。

 このアナウンサーを納得させるため、世の中を馬鹿にしているような企画を実行し、番組の評判を更に落とし、番組打ち切り止む無しと納得できる状況を創ろうとチーフプロデューサーは考えた。

 しかし女性アナウンサーはそれでも抵抗した。実はアナウンサーとチーフプロデューサーは不倫関係にあり、番組を打ち切れば2人の関係をばらすとチーフプロデューサーを脅していた。だから、殺人は起こった。

 私には理解不能なはるか遠い世界の出来事である。

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| 古本読書日記 | 17:45 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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今野敏     「果断」(新潮文庫)

 竜崎大森署署長は、まさに警察組織内の池井戸潤の小説で登場する半沢直樹である。半沢ほど颯爽としてはいず、唐変木、変人と言われているだけ、読者には親しみやすいし、シンパシーを感じさせる。

 今回は強盗事件があり、犯人3人が逃亡したのだが、2人は逮捕できたが、1人が「暖菊」という小料理屋にたてこもり、料理屋の主人と妻を人質に立て篭もる。しかも犯人は実弾10発が装填されていると予想される拳銃を所持している。

 この現場で竜崎のもとにSIT/あくまで、人質と犯人を確保する人質事件専門の特殊対応班とSAT/テロなどを対象にして、人質事件場所に突入して、人質確保のために犯人の刺殺もかまわないチームが配備される。そして最後は、SATの現場突入により殺人犯と思われる男が射殺され、人質は無事確保される。

 これで物語が終わるのではなく、実は射殺されたとされていた犯人の銃には弾が一発も入っていなかったことが発覚。人質を殺すことが不可能だった犯人をSATが殺したということで、新聞や人権派弁護士が不当捜査による銃殺だと大騒ぎをする。

 警察庁は、この責任を誰かにとってもらわねばと思い、竜崎がその矛先となる。追いつめられた竜崎が、署員刑事たちとともに、この策略を跳ね返すところが読みどころ。

 元来東大卒のエリートで、事件現場になど足を運ぶことなど絶対しなかった竜崎が、ノンキャリアの署員たちに交わり、人間的に豊かで尊敬できる署長に変化してゆくところが、よく描けている。それから、物語では、竜崎の妻が最も素晴らしい味をだしている。

 原理原則主義で堅物で軸がぶれないとみられている竜崎の次の言葉がぐっとくる。

 「俺はいつも揺れ動いてるよ。ただ、迷ったときに、原則を大切にしようと努力しているだけだ。」

 この言葉に竜崎の魅力のすべてが詰まっている。

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| 古本読書日記 | 17:15 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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JB.バーンスタイン  「ミリオンダラー・アーム」(集英社文庫)

 著者のバーンスタインはアメリカでスポーツエージェントをやって成功を収めた人物。
大リーグのスーパースターだったハリー・ボンズなどの代理人をしている。

 そのバーンスタインがインドには1億5千万人の若者がいるから、絶対に大リーグで活躍できる能力を持つやつがいるはずと考え、インドのテレビ局とタイアップして、ピッチャーのコンテストをあちこちで開催。最後にニューデリーで決勝大会をして優勝者には10万ドル、更にその後3回投げ時速145KM以上の速球を全部ストライクで投げられたら100万ドルを賞金としてだす、「ミリオンダラー・アーム」という番組をプロデュースする。そして、勝ち残った3名(結果は2名)をアメリカに連れてゆき、6か月特訓をしてメジャーリーグの新人発掘イベントに参加させ、どこかの球団との契約を実現、プロ選手として活躍させることを目論む。

 この作品で認識したことは、環境が人間の感情を決定することだということ。欲望だとか夢だとか恋愛ということは、外部から植えつけられる環境にその対象の人間がいないと創られないということである。

 アメリカに連れられてきたリンクという若者の住んでいる村は、電気がつい最近通った村。家の床は土。もちろんテレビなど見たことはない。大家族で10人以上が一部屋に寝る。
結婚相手は必ず両親が決める。恋愛がどういうものかも知らない。欲望とか夢を持つということがどういうことかわからない。

 バーンスタインの事務所兼家にリンクは同居する。宮殿のような家に一人で住むバーンスタイン。
毎晩のように美女をどこかでひっかけてきては酒池肉林の世界を楽しむ。車もフェラーリやアルファロメオが並ぶ。お金を消費してもありあまるアメリカでの大成功者の暮らし。彼はインドの若者にそれを見せつけ、「君たちも、こんなゴージャスな生活をしたくないか」
と聞く。

 「したくない。」と素っ気なく若者が答える。恋愛は?と聞いても、「わからない」
当然羨ましがられると思っていることが、相手には全く理解不能になっている。

 このギャップがすごい。欲望をどのようにして理解させ植え付けていくかがこの実話のもうひとつの物語である。

 ちなみに、インドから連れてきたリンクは、今では飛行機はファーストクラスしか乗らないそうである。

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| 古本読書日記 | 17:13 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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今野敏      「疑心」(新潮文庫)

 竜崎、伊丹、小学校同級生コンビシリーズ第3弾。

 確か、「初陣」で警察庁警備部長の藤本が、堅物竜崎のところへ、畠山美奈子というキャリアで美人の部下を送り込んでやる。しかも美奈子は、竜崎のことを気に入っている。これであの堅物、原理原則の変人竜崎も柔らかくなるだろうとほくそ笑む場面がでてくる。
 この作品はあの「初陣」のほくそえみにつながっていた。

 アメリカ大統領来日に合わせ、一介の大森署署長の竜崎に方面警備本部長の辞令が下る。そして藤本の計略により畠山美奈子が本部長の秘書として派遣されてくる。

 竜崎はもちろん妻も子供もいる。人間は理性がある唯一の動物。いろいろな感情、本能を理性でコントロールできないのはきちんとした人間ではないというのが竜崎の信条。更に人間にはなすべき優先順位がある。竜崎にとっては「国家、国民を守り抜く」というのが最大のなすべき優先順位トップであり、恋愛は彼にとって優先順位は圧倒的に低い。

 ところが、美奈子がやってきてから、完全に魂を美奈子に取り込まれてしまう。これではいけない、俺らしくないと思っても、誰かが美奈子と話をしているだけで嫉妬心がわいてくるし、夜も美奈子が浮かんできて眠れなくなる。本部長としての仕事もおろそかになる。

 そのうえ、相談に宿敵伊丹のところに行くと、「恋愛すればいいじゃないか」とけしかけられる。
 竜崎の美奈子への揺れる心情、それに伴う言動が初恋のように初々しく面白い。

 警察小説に初恋の雰囲気を入れる今野の大胆さに驚く。さらに、ちゃんとミステリーとして物語は進み、最後にはきっちり解決させるところもよく出来上がっている。

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| 古本読書日記 | 18:38 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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吉村達也   「生きてるうちに、さよならを」(集英社文庫)

 物語を大きく動かすときのきっかけが、自然の流れからかい離していると、どうしてそんなことをせねばならないのかという疑問がこびりついてどうしても物語に入り込めない。

 この物語、主人公は倒産しかかっていた親父の会社を立て直し、一部上場の会社まで成長させた。50代も半ばになったとき妻から余命数か月の病に罹っていることを知らされる。

 それで社業に手がつかなくなる。しかも、この社長、その当時、若い愛人がいた。そして、愛人にずっと一緒にいてほしい。だけど、一緒になるのは妻が亡くなってから。と伝える。

 愛人は返事の言葉を濁す。そして、主人公はやはり妻が大事と思い愛人と手を切るつもりで、マンションを訪れたら、すでに愛人は別のアパートに引っ越しをすませていて、主人公が別れを言う前に、愛人に別れを宣言される。主人公は面子をつぶされたことが頭にきたのか、未練があったのかよくわからないが愛人に一緒にいてくれと哀願する。

 この気持ちをどう整理して、今後どう生きて行ったらいいのか、知り合いの人生相談アドバイザーに相談する。それから物語は大きなミステリーに発展する。

 しかし50半ばを過ぎた大会社の社長が、こんなことを、他人に相談するものだろうか。
 大ミステリーに発展する背景をもっと他の発想でできなかったものだろうか。

 もうひとつだなあと感じた作品であった。

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| 古本読書日記 | 18:36 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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綾辻行人    「眼球奇譚」(角川文庫)

 ホラー短編集。ホラーだがミステリーとしての論理も一貫している。

 表題作は、大学の研究室にいる主人公に倉橋実という男から「読んでください。夜中にひとりで」というメッセージ付きの「眼球奇譚」という小説が送られてくる。

 主人公は、父母はいなくて、施設にいたときに養子として今の家庭に引き取られ育てられた。養母は時々言う。「あなたは大切な子。神様がくれたのだ。」と。

 倉橋の小説では、絵を描くのが大好きだった茂と妻の間にできた子には眼がなかった。生まれた子は、産んだ母の記憶は殆どなく、あるのは2つの瞳だけ。物語には、母が自分の眼球を抉り出し、子供に食べさせる場面が、生まれた子の記憶として描かれている。

 いろんなホラーの場面が繰り返し登場するが、結局は母の眼球を抉り出し生んだ子に植えつけ、目の見える子にしたのが真相。
 その結果目が見える子になったのが、手紙をもらった主人公であることを主人公が知るという物語。

 全編ホラー満載でグロテスクな部分はあるにはあるが、きちんと推理小説として成り立っていて、読後感も悪くない。

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| 古本読書日記 | 18:31 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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今野敏    「隠蔽捜査」(新潮文庫)

 この作品の前に「初陣」を読んだ。「初陣」では現場主義の伊丹の視点から、原理原則主義の竜崎の在りようを描く。この作品では原理原則主義の竜崎の視点から現場主義の伊丹を描く。

 印象が強く残ったのは、竜崎が、東大至上主義で、東大以外は大学では無いという信念をもっていることだ。この作品でも息子は東大を落ちたが、有名私大には合格した。しかし私大には行かせず、東大受験を目指し浪人させている。

 その竜崎が息子に言う。
「いいか、東大には日本の最高の技術と英知が集中している。東大にはいることだけで、できることが格段に増えるんだ。それを利用しない手はない。おまえの人生はおまえのものだと言った。ならば、その人生のためにあらゆるものを利用しないと損じゃないか。利用するなら最高なものを利用したほうがいい。東大はそのための一つの条件にすぎない。だが、その条件すらクリアできないで、人生、好きに生きたいなどと言っているのは、所詮、負け惜しみに過ぎないじゃないか。」

 竜崎は、優れたスポーツ選手などは天性に恵まれたりしないとなれないが、勉強は別だと考えている。自分の強い気持ち次第で、勉強に邁進すれば、成績は良くなり、東大も合格できると考えている。私にはとてもそうは思えないが・・・・。

 彼は国を守り、国を動かしているという自信がある。そして警察の仕事とは絶対に言わず、警察の役割、自らの役割と言う。

 すごい自負心である。まさに東大のなせるわざである。

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| 古本読書日記 | 18:29 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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佐川光晴   「ぼくたちは大人になる」(双葉文庫)

 世の中にはろくでもない大人ばかり。主人公の達大は高校3年生。かれの両親だって、新聞記者で社内の年下の記者と同棲をして家によりつかない。母も出版社に勤め10歳以上年下の男と恋をして週3日しか家に帰ってこない。当然、両親は離婚し、親の決めた路線に従い母に達大は住むことになる。

 担任の清水先生もひどい。学級委員長になった達大と副委員長になった女生徒の土屋に、生徒の出席簿を代行してつけるように指示。自分は美術室の奥にある小部屋でその間煙草を吸っている。驚くことに、この煙草時には、副委員長の土屋と吸っていることもある。

 達大は頭脳優秀で、北海道大学医学部を目指す。そして「早く真の大人になるんだ」と肝に銘じる。

 達大は土屋が好きだ。その土屋をダメにしている清水先生も憎い。更に両親のわがままの犠牲に自分はなっている。そこがやりきれなくて、清水先生を学校から追放するのだと思い衝動的に学校に土屋と清水先生のたばこのことをfaxする。

 このことが、物語の全体を通じて達大を揺さぶる。

 達大は成長して、真の大人になることを目指す。しかし、その大人になるためには、このFAXが重荷になる。このFAXにより、土屋からも、恋人からも人間性を否定される。しかし、三浦という素晴らしい友人を持って、この重荷を超えてゆく。
 そして物語は達大が北海道大学医学部に合格して故郷茅ヶ崎を旅立つところで終了する。

 大人になることが、必ずしも成長することではない今の世がある。しかし、愚直に大人になろうとしている高校生の姿を鮮やかに描く。

 飾り気が無く、等身大の高校生がみずみずしく描かれた素晴らしい小説である。

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| 古本読書日記 | 18:44 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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今野敏    「初陣」(新潮文庫)

 この小説は、2人の全く異なった人生観を持つキャリア警察官僚を鮮やかに対比させた物語になっている。

 一人は主人公である、東京警視庁刑事部長の伊丹。もう一人は警察庁長官官房総務課長の竜崎。
 伊丹は私立大出。警察官僚は東大出で占められる。だから伊丹は自分の限界は認識しているつもりだが、それでも警察庁勤めに昇りつめたい気持ちは強い。一方竜崎は、東大出の警察官僚、長官になることも夢ではない位置にいる。

 この竜崎が、息子の不祥事で責任をとらされ、大森警察署の署長に降格される。形として伊丹の下になる。

 伊丹は誰とでも人間関係をよくすることを信条としている。特に部下には受けがよい上司として思われるよう心を砕く。部下によく思われるため、徹底して現場主義を貫く。殺人事件があると、刑事部長自ら現場に足を運び、状況把握に努めようとする。

 しかし、組織というもの常に八方丸く収まるようにはならない。結果、伊丹は優柔不断で決断できないことが多く、いつも問題に対してふらつく。そんな時、必ず竜崎に電話してどうしたらよいか助言をもらう。

 竜崎は、相手がだれであれ、状況がどうであれ、原理原則を貫く。そして徹底的合理主義を信条とする。伊丹のふらつく状態に対し、何を悩んでいる。こうしろ。常に明解。そして、竜崎の言うようにすると、すべてが解決する。

 殺人事件が起きると、当たり前のように捜査本部が設置され、近辺の幾つかの署から刑事が集められる。竜崎は、こんなやり方はだめと事件が起きても捜査本部を設置しない。数十人の刑事を集め、本部長が意味の無い訓示をする。その間事件は動いているのだから、捜査をどんどんすすめればよい。捜査を終了してわざわざ刑事が捜査本部に夜集まって情報交換と捜査方針を確認する。こんなことは全く無駄と思っている。警視庁内ネットワークを使い、情報など発信、受信、公開は常にし、すべての刑事が見られるようすればよい。捜査方針は、署長なりが状況進捗を把握し、刑事の携帯に指示すればよい。いちいち毎日集まる無駄なことはするべきではない。

 この考えが、チームワークと現場重視の伊丹とぶつかる。

 優柔不断な伊丹より、竜崎に魅力を感じる私がいる。

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| 古本読書日記 | 18:42 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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今野敏    「緑」(講談社文庫)

 警察には刑事課に鑑識班があるにも関わらず、新たに科学特捜班通称STが組織された。

 メンバーは百合根をリーダーに5人の班員。この5人がそれぞれ独立独歩の精神が旺盛で班内で一切会話をしない。勝手バラバラ。しかし、この5人それぞれに突出した能力を持っている。

 物語は、ヨーロッパで指揮者としての名声を得た辛島の日本帰国凱旋公演にチャイコフスキーコンクールで栄冠を勝ち取ったバイオリニスト柚木優子を入れて行うコンサートのためのリハーサルで、柚木が使用した1億円のストラディバリが盗まれたことから始まる。

 柚木が宿泊していたホテルからハードケースに入れたバイオリン2つ、一つは「ストラディバリ」もう一つは「ピソロッティ」をリハーサル会場まで運び、ストラディバリを柚木が弾き、それをケースに収め、ホテルまで運び、部屋でケースを開けてみたら、両方とも「ピソロッティ」に変わっていたのである。

 この事実にSTで、異常にクラシック大好きな文書筆跡鑑定担当の青山が疑問を呈する。運び込んだバイオリンは2つなのに、これでは3つあることになる。ストラディバリが欲しいのなら、それを盗むだけでいいのに、何故わざわざ「ピソロッティ」に入れ替えるようなことをしたのか。その余分な「ピソロッティ」はどこから運ばれたのか。

 更に異常な聴覚を持つ結城翠が活躍する。ピアノを習ったのだが、ある鍵盤をおすと、ピアノは全ての弦が実際は共鳴する。通常は鍵盤の押した音しか聞こえないのだが、翠には他の弦が共鳴している音まで聞こえる。ピアノ本体と鍵盤蓋の振動音まで聞こえる。それから嗅覚が異常に発達している「人間嘘発見器」といわれる黒崎。
 この3人がそれぞれの能力を発揮し重ねあって事件を解決する。

 青山は、もともとホテルから持ち出したバイオリンは2つとも「ピソロッティ」ではないかと推理する。翠は、リハーサルで柚木が弾いたバイオリンはストラディバリだったが、柚木が所有していたストラディバリでは無いのではと疑う。そして嘘発見器の黒崎は辛島の話に一つ嘘があると見破る。

 これらが、バラバラなのだが、だんだん物語の進行とともに一つに収斂していて真相があばかれる。ここの物語の運びが感心するほど優れている。更にトリックも奇抜なものでなくありふれて現実的なところも素晴らしい。

 推理小説は、ありふれたトリックを使うことが今は難しくなっているのでその良さが際立っている。

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| 古本読書日記 | 15:47 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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