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2016.01.31 Sun
推理小説というのは、社会派推理小説であろうが通常の謎解きであろうが、事件があり謎解きをしながら犯人を追いつめ、解決させるのが一般的な展開である。有栖川は、少しそんな固定的方法に飽きて、もう少し色んなミステリーを書いてみたくなったのだろう。そんな想いをこめた短編集である。
どの話もきちんと解決しないで、少しの恐怖を置き去りにして終わっているものが多い。
最初の「落とし穴」はよくあるミステリー。犯人が完全犯罪と思って実行した事件に、実はちょっとした落とし穴があり、それを善意の第3者が、あっけらかんと「こんなことあったよ」と教えてくれる。そこで物語が終わり、ぞっとする想いを読者に残す。清張の名作「渡された場面」を思い出す。
また本のタイトルになっている「ジュリエットの悲鳴」は、ミステリーよりホラーに近い小説。ロミオを名乗るロックバンドのスーパースター。まだストリートミュージシャンだったころに憧れを持たれた少女に、心中をせまがれ、2人でベランダから掛け声とともに飛び降りようとしたのだが、繫いだ手をその瞬間にロミオが離し、少女だけが悲鳴をあげベランダから落ちて死ぬ。その悲鳴が彼のバンドのCDから漏れでてくる。その悲鳴にとりつかれたロミオが向う闇はというところで話が終わる。
推理小説の枠からはみだして、自由に飛び回る有栖川がこの作品集にいる。
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2016.01.31 Sun
税金については全く疎いので、ひょっとすると記述に間違いがあるかもしれない。その際にはご容赦を。
土地家屋の相続税というのは、税金発生時の路線価で決まる。バブル経済時みたいに、土地代が暴騰につぎ暴騰をしているときは、土地は路線価からかけ離れ高い値段で、しかも売り出しと同時に売れるから、相続税を支払っても懐に大金がころがりこみ売主はほくほくとなる。
ところがバブルがはじけ、土地評価がどんどん下がると、値上がり時と逆のことが起きる。
税金発生時の路線価より売却金額は下がり、しかもなかなか売れないから、下がり続けた末になんとか販売できても、税金のほうが売買収入より多かったり、ほんの少しの金額しか手に入らないということが起きる。
南青山で家付き店舗で古くからケーキ屋を営む鈴見家。店主である父が突然死ぬ。ずっと昔から住んでいた土地が、路線価で計算するとその時45億円。とても、見たことも聞いたこともない莫大な金額。相続税も20億円くらいがかかってくる。これは、大変と父を生きているものとして、故郷のお寺に隠す。和尚、行政の村長、医者が隠蔽に協力する。
わかるなあ、そうしたい気持ち。
いくら繁盛している街のケーキ屋だって、数千万の利益などをあげるということは宇宙の出来事。それを、土地を売却しても足らず更に数億円の税金を払えというのだからたまったものではない。
こんなことが都会では起きるのだ。
この作品集の「覆面作家のお茶の会」で知りびっくりした。
タイトルになっている「覆面作家の愛の歌」。自分自身が馬鹿だと思うのだが、事件の鍵を握る電話のトリックが何回か読み直したのだが結局わからなかった。情けないとても。
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2016.01.30 Sat
子規と会えば誰もが子規に魅了される。子規には人を引き付けるものを自然に備えていた。だからいつも多くの人に囲まれていた。
漱石は子規の生まれた地、松山で中学の教師をしていた。子規が汽車にのり、故郷松山にでむいた。そして2階に住んでいた漱石の貸家の1階を借りて住んだ。その期間が50日ほど。漱石と子規が同じ家に住んでいたのだ。
そして、50日が過ぎて、子規は東京へ帰る。子規はすでに重い肺結核を患っていた。医者からは真っ直ぐ東京へ帰るように言われていたのだが、途中、京都、奈良に寄り道をした。この旅程、子規にとっては初めてといっていいくらいの一人だけの旅、結核を抱え、今と将来を一人で見つめなおす旅となった。
肺結核は重く、時々客血もする。今まであじわったことのない寂しさ、孤独をひしひしと感じる。
奈良は当時大柿の産地だった。少し街を離れるとあたり一面の柿が秋の青空のしたに実っていた。旅館で柿を所望した。可愛らしい女中さんが盆一杯の柿を持ってきてくれた。
柿を頬張る。障子を開けると月あかりに柿の実った木を照らしている。秋はそれでも寂しい。
晩鐘が鳴る。東大寺の鐘である。それが、身に一層の淋しさを募らせる。
柿くえば 鐘がなるなり 法隆寺(東大寺ではない)
今まで私はこの句に感動はしなかったが、物語を読んでからは、子規の孤独、わびしさの心情がひしひしとせまってきて、ぐっとこの有名な句が迫ってみえてきた。
伊集院が明治をこう物語のなかで称している。
「明治という時代の強さは、清廉はこころ、自分の信じたもの、認めたものに向って一見無謀に思える行為を平然となす人々がまだあちこちにいたことが挙げられるかもしれない。
何よりも清廉、つまり損得勘定で動かなかったところに行動の潔さがあった。」
その象徴こそ正岡子規であった。
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2016.01.30 Sat
下巻がどうなるかわからないが、上巻までの印象。
正岡子規と盟友夏目漱石を扱っている。子規と漱石だから、重い文章とまでいかなくても、多少の格調の高さがあってしかるべきなのだが、伊集院は、極力、平易でシンプルな表現でこの物語を書いている。そこにちょっぴり内容の希薄さを思わせるが、一方で、伊集院は特に子規に寄り添い、子規といっしょに歩み、子規と一緒に青春を遊び、成長してゆこうとする。子規と徹底的に寄り添う一貫した伊集院の姿勢が、生き生きした物語を実現している。
子規は、開放的で、会話も行動も明るい。対話をするとき、相手を慮ることはなく、思ったままに喋る。その開放的な姿勢に、周囲がひかれ、いつもたくさんの人に囲まれている。
一方漱石は、生まれてすぐ塩原家に養子にだされたが、この養父母が離婚したり、実父と養父が対立して、21歳まで夏目を名乗れなかったほど、複雑な家庭で育った。それ故、孤独癖があり、対人関係には慎重、会話も選びながらする傾向が強かった。ただ、頭脳は抜群で旧制第一高等学校を首席で卒業している。
この正反対の性格の2人が無二の親友となるから面白い。
上巻では子規の漢詩や俳句の創作で並々ならぬ才能が開花してゆくところと、野球が大好きでそれを多くの人たちに教える様が描かれるが、まだ漱石の文学的素養の芽生え、開花までには至っていない。
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2016.01.29 Fri
小学六年生で主人公のアイコ、好きでもない佐野に強引に渋谷のホテルに連れ込まれ関係を持つ。その自分に嫌気がさして、佐野をホテルに置いて家に帰る。すると次の日、その佐野がホテルから失踪し、行方不明になることがわかる。佐野はどこへ?ここにアイコが好きな陽司が加わって、佐野さがしが始まる。今回のお話は推理小説かと思ったらとんでもない。
前半は静かな立ち上がりで舞城はいつもと違いノリが悪いなあと思って読む。心配はいらない。後半の第2章「三門」から段々調子がでて、その「三門」の後半、完全に舞城は、ピューンと普通世間をとびだし、狂いに狂った世界を跳ねまわる。もう下記のような文章だらけになると、私は今読書をしているのだろうか全くわからなくなる。
「ウンコパーン。デレッデ。
ウンコパンウンコパンウンコパンウンコパン・ザ・サー。ウンコパンウンコパンウンコパンウンコパン・ザ・サー。デレテッテ~デレレ、デレテッテ~デレレ・デーンデーンデー。
にょわ~んにょわ~、ねれねれねれねんね~ん。」
この作品三島由紀夫賞を獲得している。福田和也や筒井康隆は絶賛しているが、宮本輝は下品で支離滅裂。評価以前の作品として徹底的に酷評している。
私もどことなく宮本にシンパシーを感じる。
舞城、あまり物語の構成など考えず、ペンが勝手に走るまま書いているか、昨日見た夢を再現しているのではと思ってしまう。上記紹介した文章、舞城はどんな表情、格好をして書いているのだろう。怖い物みたさで見てみたい気がする。
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2016.01.29 Fri
オールナイトニッポンでたけしがしたお喋りや、幾つかのコーナーに送られてきたリスナーのハガキから面白い物を抜粋して作られた本。
たけしは、ブラックがかったユーモアを条件反射的に発しそれがとても面白いし、ギャグもものすごく笑える。その笑いを期待してこの本を買ったのだが、変だ、文章になるとちっとも面白くない。たまに、面白いギャグがあっても、それはとても紹介できない下ネタ。
小三治、談志、米朝の本など読むと、声をだして笑わざるを得ないところもたくさんあるし、味わい深いところもある。落語家とコント芸能人の相違か。それとも、落語家の本は本人から聞き書きして覆面作家などが書いているせいか。
ラジオで気の向くまま喋っていること自体、文章にしてもつまらないということか。
何か面白いことが書かれていたらこの書評で紹介しなくてはと思っているうちに、全部読んでしまった。これはまずい。
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2016.01.28 Thu
これは、真っ当な正統派推理小説である。今は、社会派推理か、軽めのライト推理小説しか目にしなくなったので、今どきこんな正統派推理小説を書く作家はめずらしいと思い、少し中町さんのことを調べたら、なんと1935年生まれ、ということは80歳を超えている、びっくりした。それで、なるほど確かにこの推理小説を書けたわけだと納得した。
この小説にも書いてあるが、名前は思い出せないが有名な推理小説作家が「探偵が犯人になるくらいの超突飛な作品を書かないとだめだ」と言った言葉を、辣腕編集次長に語らせている。多分中町さん自身も言われたのではと想像する。それならみていろとこの作品を書いたように思う。
この作品はびっくりするのが、犯人である美人女性編集者があたかも事件真相追及者のようにして冒頭から登場する。真相を追及するかのように、富山までそれも2回もでむき事件の真相らしきものを暴く。とても、犯人とは読者は想像もできない。
それからトリックが凝りに凝っている。坂井正夫という同性同名の新人推理作家が一年前と今年の7月7日7時に密室で死んでいる。一年前は自殺、今年は自殺にみせかけた密室殺人である。
更に、一年前に死んだ坂井正夫は四方温泉で「7月7日7時」という作品を書いているが、彼の重い障害を持った幼子が重体になったとの病院からの連絡を受け、原稿を持って旅館を後にしたのだが、下書きノートを旅館に忘れる。このノートを旅館で間違えて、一年後に殺されるもう一人の坂井正夫に返送したことがもうひとつのトリックに使われる。
幼子の死は自殺した坂井正夫が病院で医師のいないときに殺す。それで、坂井正夫は世をはかなんで自宅であるアパートで自殺する。
とにかく、これでもかと重層的に仕掛けや、トリックがそれほど不自然にならず差し入れられる。読んでいてクラクラしてくる。
そして最後にそっと密室殺人のトリックを一行で作者中町は片付けている。さりげなさの裏に中町「どうだまいったか」と含み笑いをしている姿が浮かんでくる。
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2016.01.28 Thu
私が子供のころ、信州田舎では、テレビはNHKとNHK教育、及びTBS系列のテレビ局しか見ることができなかった。プロレスや巨人の野球は日本テレビが中継。だから、殆どみることができなかった。いつのころからかUHFという電波発信形態ができ、東京の殆どのテレビが見られるようになり、その後衛星放送が始まり、たくさんのテレビ番組がみられるようになった。ところが、面白いことに、チャンネルが増えれば増えるほど、テレビを見なくなった。
番組の劣化、他に娯楽がたくさんできたなど理由は多々あるが、チャンネルが増えすぎたこともテレビ離れに拍車をかけているように思う。過ぎたるは及ばざるがごとし、今はケーブルテレビができチャンネルは60-70に及ぶ。テレビは老人のリモコンをパカパカやるボケ防止のためのおもちゃになっている。
出版界の市場がピーク2兆4千億円から去年は1兆5千億円にまで減少してきていて、本が売れないことが最近は大騒ぎになっている。これもコンビニだとか図書館、古本を扱う巨大書店の出現などがその原因とされている。
しかし、出版とは参入障壁が極端に低いのか、出版社というのはものすごい数がある。だから膨大な量の本が毎月出版されている。本屋も中小がなくなり、大型店ばかりになった。
本屋にゆくと、大量に販売している本に圧迫される。世の中には全く溢れるほど本があるものだとひたすら驚く。この圧迫感がテレビと同じで、本離れを加速させているように思う。
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2016.01.27 Wed
今は養護学校が整備されて、身体障碍の方や、知恵おくれの子は、養護学校で学ぶのが殆どだが、まだ私が小学校の頃は、同じ学校に通い、特殊学級で学ぶのが一般的だった。
私の学校でも、うさぎを飼っていた。うさぎは結構気が小さく、なかなか皆になつかなかった。ところが、ある特殊学級の子には、本当にうれしそうにいつもまとわりついて、小舎のなかにその子がはいるとうさぎは追いかけた。とにかく彼女はうさぎとお話ができるのではといつも思っていた。
あの頃はひどい時代で、知恵おくれの子ができると、あそこの子から馬鹿が移るなどといって、親から近付かないように言われた。その子には弟がいたが、こうなると学校で地域で弟にも近付くなと言われ、弟も姉以外だれも友はいなかった。姉弟ともに変人扱いをよってたかってするのである。そして、何か事件らしきものが起きると、誰もかれもがあの2人のどっちかがやったに違いないと決めつける。
この作品の兄弟も私の小学校時代の姉弟と同じ境遇である。兄はある日突然、小鳥との会話しかできなくなる。これはすごい変人である。だから、支え合うのは弟しかいない。弟も周囲から疎まれ、世界は兄弟と小鳥だけになる。
この作品でも、少女暴行事件がおきると、犯人は弟だとみんなが言いだす。そこがかわいそうで仕方がない。
人間には徹底的に排除されたが、兄も弟も小鳥と信頼関係ができ、互いに愛し愛され、一生を送る。人間も動物の一部である。どうしようもない人間関係でうろたえるばかりの人生より、小鳥と交流する関係のほうがこの作品を読むとより人間的だし、暖かさを感じ羨ましく思えて仕方がない。
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2016.01.27 Wed
一昨年10月に熊本県を旅行した。噂では聞いていたけど、中国人、韓国人が雲霞のごとく押し寄せて来ていた。阿蘇山では一人も日本人観光客に出会わなかった。中国人は何千人単位で客船でやってきていた。
日本地図、その中心は東京で作られている。地方創生などと言っても、中央にすべてを握られているし、また、握られていることに寄りかかり生きている地方から、創生などできる創造力あふれる企画などでてくるわけはない。
面白いのは、地図を東京からずらし、例えば沖縄を中心につくってみる。すると、鹿児島と台北は同じ距離。マニラと東京が同じ距離になる。そして、その中に上海、台湾、九州、それにフィリピンの一部まではいってくる。
北陸地方だって、韓国や北朝鮮、中国北部、あるいは北海道はロシアと、もし物資も人もフリーに近い交流、商流、或は有利なところで物品製造ができたら、地方の在り様が違って見えてくるだろう。
TPPというが、日本と参加国々は、海を挟んでいかにも遠すぎる。しかし、アメリカの支配下にいることから逃れるには、あまりにも、周りの中国、韓国、ロシアと日本との関係は悪いし、国民感情もどんどん悪化している。
この作品は、沖縄を中心にして、沖縄をどうしてゆくのかの視点で物語を創っている。視点は面白いが、だんだんヤクザの抗争に力点が移り、面白さが薄れた。
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2016.01.26 Tue
通訳の極意、苦労話を集めたエッセイ集。
ど れを読んでも面白く感心するが、圧倒的に感動したのが、米原さんの師匠徳永博美さんの、ここでは小説として紹介するが、小説文学を作る極意についての説明。たまたま、米原さんが女性だったのでこんな説明になる。
「そうねえ、池をつくるようなものよ。池の向こう岸を小説のたどりつく最終結論としてだねえ、池のこちら側から対岸にいたる道筋に沿って池の中に飛び石を置いていく。真っ直ぐで等距離なんてつまらないから遊びを取り入れることを忘れちゃいけないよ。蛇行させたり行きつ戻りつさせたり、間隔もさまざまにしてね。・・・・そして男がね、長めのスカートをはいてパンツをはかないで、ここが肝心なんだよ。パンツはあくまで脱いでだねえ、池のこちら側から向こう岸にむけて飛び石の上をヒョイヒョイと渡って行くわけ。そうすると、水面にチラリチラリ男の本音がうつるでしょう。ちゃんと見えないから、ついよく見ようと身を乗り出してしまうじゃない。そうやって読者を最後まで引っ張ってゆく。これが秘訣といえば秘訣かなあ。」
まったくその通りだと思う。そういう小説の登場を心より期待してしまう。
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2016.01.26 Tue
本当にごくまれなのだが、本を次から次へと読んでいると、目が覚めるようなとんでもない話にぶつかることがある。この本に書かれている内容を記載すると、少ない私の書評アクセス者を皆無にしてしまう恐怖に襲われるが、馬鹿になったつもりで記載します。
本の著者鴨志田さんがベトナムで少し歳のいった日本人の職人にあう。その職人の技を見学に職人の家まで連れていってもらうのだ。
もうかなり前になるのだが、一時期日本の特に都会でブルセラショップというのが流行った。最近はとんと聞かなくなったけど、今でも健在なのだろうか。使用済みパンティーがそれを穿いていたという女の子の写真とともに売られている、そんな店だ。もちろん、当人が使っていたパンティもあるだろうが、どうも大概はどこかで作られたものを、当たり前だけど販売しているのだ。
そしてここに登場する職人はその使用済みと称するパンティを作っている。
職人曰く
たった一人で作っているのに、「最初の製造工場をたちあげたのが15年前で、当然日本だった。しかしコストがあわなくなったので、工場を上海に移転した。中国は当局の目が厳しいので、2年前にベトナムに製造工場を移転した。」
製造工場移転とは職人のおじさんが単に住まいを変えることを言う。
「ここも仕入れ材料が高くなり採算が合わなくなってきているので、また工場移転を考えている。次はカンボジアかラオスだ。」
さてお待ちかねの製造工程。
仕入れた綿勢のパンティに綺麗にコテをあて引き延ばし、その後トンカチでひたすら叩くと使い古したパンティのように変形する。そして、パンティの股のところにレモンの汁を
一滴垂らす。次にタイではナンプラーというがベトナムではニョクナムという生臭さのある魚醬を霧吹きでレモン汁のまわりに噴き掛け完成となる。開始から完成まで2分。
もうほとんど目が点になり、これはなんだと一旦本を脇においた。
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2016.01.25 Mon
いつかテレビをみていたら、中国で年初の株価急落のためサーキットブレーカーを2回も発動して更に投資家心理をかく乱させ混乱に陥れた、この稚拙な方法は、まだ中国で株式投資についての環境、知識不足がなせるわざ、中国当局はもっと株式投資について学ばないといけないと有識者が力説していた。かなり私には違和感を覚え、こんな人が有識者としてのさばることに不快感を感じた。
中国経済は市場にまかせては動くものではないという本質をわかっていない。株式が暴落しそう。そうなると、多分裏で共産党の幹部が当局担当者に電話をする。「ばかやろー。何をやっているんだ。何とかしろ。」と怒声をあびせる。ここが重要なのだが、日本ではこんな怒声をあびせられても十分逃げ道は残されている。中国は、何とかしなければ、その担当者に重刑が与えられるかまかり間違えれば生死に直接かかわる。ここがGNPの発表値、爆発事件の処理に表れている。ほぼ正確なものなど何も無いのである。この構造が中国の動きの根幹をなしている、結構北朝鮮に近いのである。
同じようなことが日本にもある。メガバンクである東都首都銀行へ事務用品を一手に収めている会社、葉山興産は年商7億円で粗利益が3億円ある。葉山興産は、事務用品を製造しているわけではなく単なる薄利の商社。そこが3億円の粗利をあげているのは異常である。そのお金はマネーロンダリングのペーパー会社を通じて、首都銀行常務峰岸に還流されている。もちろん峰岸は、不正について自分には類が及ばないよう、それぞれに動く人間を配置し、彼らにも分け前を与える。
峰岸は給料は二の次で、こういうからくりを幾つかもって動かし、悪銭をぽっぽと懐にいれる。時にそれがばれそうになると、ちゃんと配下にヤクザを持っていて、危険な人を自殺とみせかけるような方法で殺させる。中国は国が殺傷するが、日本は民間ヤクザがそれを引き受ける。作品としては面白いが、とっかかりが、銀行への事務用品納入というところは少しチャチな印象を持った。
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2016.01.25 Mon
この作品は、小説の体をとっているが、現在の中国を中心とした極東についての説明書解説書になっている。
面白いと思ったことを幾つか紹介する。
国として強いのは、最後は大量に人間を擁し、その人間を必要なところに移民させることができる国。その意味で中国はアフリカを第2の中国にすることを狙っている。つまり、中国は広大な土地は持ってはいるが、13億人もの人を食わしていくことはできない。更に、4億人くらいは農業をしていて、最貧の状況にある。だから、この人たちをアフリカに移住させる。彼らはアフリカに移住して農業をしたほうが、中国で農業するより確実に収入は増える。中国は人を移住させることで、領地または領地にちかい土地を世界でアメーバのごとくじわじわ増加、気が付いたら世界のあちこちに中国ができている状態にしたいと考えて、アフリカをまずそのターゲットにしている。
それから、北朝鮮があるからアメリカは韓国を守っているが、北朝鮮は早晩崩壊する。
そうすると今の韓国の力では、北朝鮮を持つことは不可能。それで、中国は多分朝鮮半島を併合してしまう。
ロシアは驚いたのだが、1987年以来、男性の平均寿命が短くなり最近は何と61歳になっている。
それから、これ真実?と思って一番びっくりしたこと。
国連拠出金。アメリカが滞納していることは知っていたが、それは30%分。中国は65%何と事務総長をだしている韓国は85%も滞納しているのだそうだ。
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2016.01.24 Sun
去年の夏に買った
首輪が、なぜかぼろぼろになりました。
糸がほつれて、けばだって、元の模様がわからないというカンジ。
そんなに脱走したわけでもないし、足でがりがり掻いている様子もないし、激しい喧嘩もしていないようなんですがね。
とりあえず、今月のお給料が多めだったこともあり、買い換えました。

和柄
鈴つきのまま装着したら、ももこがばたばたしはじめましてね。やっぱり鈴と迷子札は外しました。
馴れなんでしょうね。
最近はゲームか昼寝の生活なんですが、本は枕元に置いています。
こんなの。

掌編を集めたものなので、読みやすいかなと。
それでも、一気には読めない。現在、半分くらいです。
池田理代子さんの「ああ、愛しのお猫さま」とか、坂本美雨さんの「美雨とマイキーの往復書簡」とか、ファンのイメージに合った内容だと思う。
一番面白かったのは、金井美恵子さんの「猫がいない生活の良さについて」。
猫を飼っていたころは、猫砂にトフカスサンド(おからが原料でトイレに流せる)を使用していたため、それまでの好物だったおから炒りを食べる気になれなかった。
その猫が死んで数年後、久しぶりにエビ入りのオカラ炒りを食べ、「猫がいないからこそ食べられる贅沢な味だ」としみじみ感じたそうな。
うちも使っていたことがある。うん。においがそのままオカラだった(´・ω・`)
後半を読んだら、また書くかもです。
| 日記
| 19:02
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2016.01.24 Sun
鴨志田さん得意の地、熱くてゆるくて楽しいタイ、ベトナムでなく今回の作品の殆どの舞台が韓国と中国。それなりには面白いが、鴨志田さんが借り物のようで、燃える情熱があまり感じられず、期待していた私には大分拍子抜けした。
中国も今は習近平が大分腐敗、汚職にたいし強硬な態度(その指示をかりて、習近平の敵を粛正しているという話もあるようだが)で臨んでいるため、なかなか表だって不正をする役人は少なくなっているだろうと想像する。
しかし、私が昔中国によく行ったころは、役人ももちろんだが、下っ端公務員までがやりたい放題だった。日本のヤクザに似て、レストランからしょば代をとるなど当たり前、しょっちゅう店にきてただで食事、酒を食らう。
この作品にあるよう、店のよい場所で食事をしていると、ここでは下っ端のババア公務員がやってきて、席をどけと命令するなど茶飯事。そこで素直にどかないと、この作品にでてくる呉さんのように、熱々餃子を頭にのせられ、スープを頭からかけられる。それにしても呉さんは凄い、そこから自分の餃子を持って、公務員にむかって投げつける。そうすると公務員も対抗して投げる。餃子投げ合い戦争が起こる。
だれかが警察に通報。駆けつけた警官は公務員がひどいということで、公務員を連行する。めでたし、めでたしのように見えるが、その後呉さんがどうなったか知るのが怖い。
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2016.01.24 Sun
真山さんや幸田真音の作品は、いつも、会社の社員研修の講師の話を読んでいるよう。この本も説教くさい。新聞の紹介で東日本大震災について書いてあるというので本屋で手に取り思わず購入してしまい、しまったと後で後悔した。
読んでみて、やっぱし研修の香りはどことなく漂ってはいた。しかし、「頑張ろう、絆、繋がろう、忘れないで」一色で覆い尽くされていたし今も覆い尽されている偽善的匂いをはぎ取ったところで初めてわかる困難な問題を掘り起こし物語にしているところは、心から拍手をおくりたい。
今はどうなっているか知らないが、確かどこかの高台にあった幼稚園、そこでとどまっていれば被害にあわなかったのに、津波情報がでていたにもかかわらず、園児を送迎バスで海辺の住居地におくり届けたため津波にあい、全員死亡したという事故があり、裁判沙汰になったことがあった。裁判したい親御さんの気持ちもわかるが私たちにはどことなく割り切れない感情が残ったできごとだった。
防災訓練は何故やるのだろうと時々思う。誰もがわかっている、こんなことしても、本当の震災が起こったら誰も訓練通り行動しないだろうことを。事実東日本大震災でも、訓練通り行動して、被害にあった人もいれば、とっさに訓練とは異なる行動をして助かった人もいる。
この本を読んでわかることは、防災訓練は周りの人を知るために行っているのだということを。誰が、どんな状態で、どんな想いで生活しているか、周りの人々と会話ができればそれもいいが、お互いの状況を知ることができれば本当に災害が起きたとき助け合うこともできるし、それから、更にその先の苦しい生活を克服してゆく上でも重要な鍵となる。人の暮らしや生活環境は、同じでは決してなく、年々変化する。だから、防災訓練の名をかりて今がどうなっているか互いに知っておくことが肝心なのである。
災害がおこれば、あの人は大変な状況だからまず助けなくてはと動くし、マニュアルよりあの人の指示どおり従おうとか、色んなことを周りの人々を思いめぐらしながら咄嗟の行動をする。
そして、避難先で、仮設住宅で、防災訓練を通じて顔を知っているだけで、孤独にならず励まし合って困難を克服できる力をもらい与え合うことができる。
幼稚園被害はよくわからないが、皆必死なときに、間違った判断をすることもある。でも、まわりの人々を知っていれば、もうちょっと違った対応があったような気もしないではない。
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2016.01.22 Fri
上手い。本当に上手いと感じた。
エンターテイメント小説。最近は竜頭蛇尾のもの、最初は奇想天外で面白いのだが、その後は尻すぼみか、逆にクライマックスが凄いのだがそこまでがだらだら長いもの、それから最初と最後だけあればいいような小説に意味の無い中味が押し込んである小説ばかり。少し長くて読み応えのある小説に殆どで会えなかったが、伊坂は流石超一流の書き手だ。久しぶりに手ごたえのある長編に出会った。
この作品、最初にどーんと読者をクレーンでつりあげびっくりさせ、ふらふらさせておいてドーンと落とす。そしてクライマックスで最初の宙吊りと共鳴させた宙吊りをしてドーンと読者を落とす。その間、物語は小さな宙吊り、落とす、宙吊り、落とすをころころ繰り返す。常に、車輪が回転している雰囲気で読者は実に心地よい。
感心するのは、ジョークがあたり一面に散らせてある。それが他の作家でみられるような、ジョークの単なる散らかしでなく、ジョークにもストーリーがありちゃんと落とし前をつけているところ。そのジョークの面白いものを紹介する。
変わっていることで苛められている岡田君がいる。お父さんにそのことを言う。それは問題児だ。お父さんが答える。主人公は思う。問題は放ってはおけない。問題児には答え児がいなければいけないと。
更に主人公の好きな担任の女性の先生がトラブルに巻き込まれる。色々主人公を含め生徒が気をもむ。すると先生が言う。
「これは先生の問題だから放っておいて。」
でも主人公は考える。
先生の問題を答えるのが生徒だと。
だから主人公は答え児になり、先生のだした問題に答えようとする。
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2016.01.22 Fri
同じようなタイ紀行を沢木耕太郎あたりがやれば、一人沈思黙考しながら、憂愁で抑えた文章で紀行文を書くと思うが、何しろゲッツ板谷、根が陽気で、いつも感情まるだし、怒ったり、声をはりあげたり、逆にショボンとしたり、とにかく道程すべてにわたり煩い。
時々テレビでみる「こんなところに日本人」という番組。とても、文明国の日本人が住めるようなところでは無い、山奥や厳冬の最果ての村に住んでいる日本人を探し求めて行く番組。見ているだけで、あんなところには行けないし、行きたいとも思わない。それは、その地にゆくまでの交通手段(実際は飛行機などあるとは思うが)の殆どがバスで乗り換えもあれば、10数時間も乗りっぱなしなんて難行苦行、更にバスターミナルから山道を歩くなんてことがザラだから。
この作品はタイ全国を殆どバス、それも一般の人が利用する冷房設備もないバスで回り、ホテルはすべてバックパッカーが泊まるゲストハウスかそれにちょっと毛のはえた旅荘。
「こんなところに日本人」をいくつも詰め込んだような旅行記。多分、この本を読んでタイに行ってみたいと思う人は皆無だろう。
この本で2つなるほどと思ったことがある。
まず、タイのお寺の懐の深さ。
麻薬中毒患者の矯正、貧困家族の子供の受け入れや孤児の受け入れ、夏休みの子供たちのキャンプ場として、それからバックパッカーの宿泊など、追いつめられている人たちや教育、福祉の受け入れどころとなっていること。
それからアメリカインディアン、イヌイットなどの原住民が、西欧人に追われ追い出される悲劇がよく描かれる。それにより原住民が消滅しそうになるが、この本を読んでタイの裸族などの現状を知ると違った想いももたげてくる。
そんな追い出したり殺したりしなくても、貨幣や文明を持ち込んでいくと、文字を持たない原始的生活者は、文明社会に背をむけると絶滅してしまう運命にあるのだということ。
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2016.01.21 Thu
昨年も企業の不祥事が相次いだ。杭打ち偽装。東芝不正会計。化血研の偽装データ。ばれたか。どこでもやってるさ。しょうもないけど謝っとくか。という態度がありあり。結果悔しいのは会社はちゃんと存続、それを支えるのが、膨大な数の希望退職の名のもと馘首された社員たち。
宗田さんは、そういういつものうのうと生き抜く経営者の姿勢に頭がきていたのだと思う。だから、本作では、大銀行のワンマン頭取を中学生たちにやっつけさせようと物語にした。でも、ちょっぴり中学生らしさが消えてしまい、物語が重くなってしまっている。
にっくき、だけど愛している校長以下の先生たちをつるっぱげにする話だけにしておいたほうが、中学生のイタズラらしく、卒業の哀感もよくでたのではないかと思う。
卒業式に卒業中学生が斉唱した「仰げば尊し」の替え歌の歌詞がいいから。どうしても残念さが残る。
ハゲれば尊し わが師の頭
残れる髪の毛、はや数本
思えば 愛しや この一本
今こそわかれめ いざさらば
それでも、宗田さんは企業の悪をやっつけたい想いがこの作品を書いたとき強かったのだ。
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2016.01.21 Thu
大空を無心に舞うことだけを夢見ている主人公峯崎が、秘密の日本軍基地を特攻隊として零戦戦闘機でたち、インドネシアの孤島に不時着、逃亡兵としてその孤島に逃げてきていた野村と出会うところ。
それから、終戦直後、アメリカのグラマンより格段に優れていた新型零戦戦闘機を日本軍が開発していて、戦争が終わった空に主人公峯崎が縦横無尽に舞い峯崎の想いを遂げるところ。
この2場面はそれなりに読ませるが、その間の物語があまりにもひどすぎる。
峯崎と野村がいたところに、オンボロ輸送機(ダコタ)がエンジン故障で不時着する。操縦士は若い女性。その女性の依頼で、このダコタを野村が修理。大潮を利用して、陸地にあげどこへ向かうのかよくわからないが、とにかく飛行を開始する。
まず会話がすべて現在の日本で使われている言葉になる。戦争中、特に軍人はこんな今風の喋り言葉で話すはずがない。この物語が、戦争中の話とは思えない。
それから、幾つかとんでもない苦難を超え、最後ジャカルタに着くのだが、そんな苦難までして何故峯崎と野村がオンボロ飛行機を飛さねばならなかったのか動機がわからない。
しかも、このダコタは途中、峯崎が特攻で飛び立った秘密基地に立ち寄る。そこで、上官や同僚に会う。普通だったら峯崎はここに止まり、日本軍とともに運命をともにするはずなのだが、そこから更に飛び立ってしまう心情が物語では説明されない。
高嶋版「永遠の0」は全くの愚作だ。
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2016.01.20 Wed
この作品だけでは無いけど、学生時代で中学生時代は本当に難しい時代だと感じる。
まず、小学校までは、だいたい先生の力は強く、影響力が絶大である。そして、子供たちも先生を信じる気持ちが強い。ところが、中学生になると、だんだん生徒にそれぞれの個性が発露してきて、一部には信頼の厚い先生もいるが、多くが子供と対立するか、無視されるようになる。つまり、子供たちだけの世界が創られるようになる。
しかし、その世界は小学校の延長で、いかにも小さく狭い世界である。そして、出来上がった世界のもとでのクラスの環境、人間関係、仲間間の力関係で、すべてが動き、何か特殊な強い力が作用しない限り、ずっと維持され、変わることなくすべての生徒がその条件下で生活せねばならないことになる。
更に現在はこの環境にネットが入り込む。
以前は、文句を言うときは、面と向かっていうか、電話か手紙か、とにかく相手と対峙することが必須だったが、今は誹謗中傷をネットで流すことができる。ネットは相手を斟酌することなしに、思う存分書ける。しかも、それが瞬時に相手どころか、多くの人たちに拡散する。起きている事象は小さな世界のことなのに、影響の拡散は大きい。何ともバランスの悪い世界の中に今の中学生はいる。
この物語、途中でトーンが変わる。後半のキャンプの出来事のところからである。このできごとの描写から、生徒たちが検察や警察に真実を語る場面が織り込まれ、生徒たちの物語に比重が傾く。前半では、生徒は表面に殆どあらわれず、事件に対応する警察、事件被害者両親、加害者と思われる家族、教師の思惑、感情だけが描かれる。その内容はくるくる変わり、こんな状態を奥田さんはどう落とし前をつけるのかと思ったが、トーンを変えてクライマックスに一気に持って行った。ちょっとこの飛躍には無理を感じた。
それにしても、奥田さんの微細による心理を含めた描写には感服した。苛めはとりあげるには容易いが、物語にするには重い課題だ。しかし一定の成果を奥田さんはこの小説で導きだしている。
特に、後半の被害者名倉の行動、発言にはぐっときた。宇宙人としか見えない名倉の描写。人は十人十色。他人の想いや行動を理解することは難しいしある時間が必要だと心底感じた。そして、名倉のような子もありだなと思った。苛めが起きるとでてくる有識者のしたり顔のコメントの空しさをこの作品で強烈に感じた。
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2016.01.20 Wed
ベトナムとカンボジアのポルポト派との戦争が真っ最中のころ、鴨志田さんの取材で。
ベトナム兵が言う。
「ポルポトの奴らの拷問はすごいんだ。ベトナム兵をつかまえたとするだろ、すると頭だけだして体を土のなかに埋めちゃうんだよ、そうしてな、ガソリンかけて火つけちゃんだから。」
これは拷問じゃなくて処刑だと思うのだが・・・・。
それでベトナム兵はどんなことをするの。
「足枷してふねにのせるんだよ。そして船に穴をあけといてな。バケツ一つやるんだよ。そして川にほうりだすんだ。必死になって水をかき出す奴らを見ながら、俺達は岸で腹をかかえて笑うんだよ。」
どうも、どっちもどっちに見えて仕方がない。
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2016.01.19 Tue
何とも変てこりんな短編集。
私もめったには無いが、夢のなかにはいりこんでしまうという時がある。もし猛毒の大蛇に追いかけられると、必死に逃げる。それで追いつめられもうだめだという瞬間に夢から覚めるというのが通常のパターン。
しかし自分が夢の中にはいっているということを知っていると、大蛇がでてきてもそれほど焦らないし怖くも無い。真剣に全力で逃げない。だって夢だとわかっているから。
学校の授業で眠くなる。そして寝ながら夢をみる。そんな時この大蛇がでてきて、自分も夢の中で大蛇と戦う。「おりゃあ」と大声をあげる。すると先生が「何をやっている」「廊下へでて立ってろ」と怒る。
そうすると、「そうだ廊下に行かなくっちゃ」と廊下へでてゆく大蛇をおいかけ、更に廊下で格闘する。女生徒が通り過ぎ「狂った生徒がいる」と声をあげる。どこまでも、夢が続く。
そうそう困るのは、夢で可愛い子にであい恋心を抱くのだが、告白やつきあう前に夢がさめてしまうこと。どうしても、あの娘にまた会いたい。そうは思っても都合よく続きの夢はみられない。
そんなとき両親があなたの大好きな子の写真を見せてあげるという。見ると夢の子に瓜二つのようにも見えるが、違うようにも見える。しかし、可愛い。ところがその娘は、すでに死んでいるという。
それで夢をみて、どうしても会いたいと声をあげる。そうすると夢直し人なる人がでてきて、死んだ人と夢で恋愛はできないなどと言う。
とにかくわけがわからないくらくらする舞城ワールドだ。
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2016.01.19 Tue
ゴミ、汚物だけでなく、憎悪、恨みも飲み尽くす東京湾。その周りに住み付く飽くことのない欲望の塊。そこには恐怖と不思議が入り混じった出来事が連日連夜起きている。
鈴木さんの短編ホラー集。鈴木さんのホラーは、空想的な現実にはありえない現象ではなく、いかにも起きて当たり前だが、恐怖感が漂うリアリティのあるホラーである。
今はアムウェイという会社がどうなっているかしらないが、30年くらい前、私の周りにアムウェイの販売員になるように勧誘している人がいた。マルチ商法ギリギリのやり方がアムウェイの販売方法。階層が高くなり、多くの販売員を抱えれば、それらの販売員から上納金でごっそり儲ける。
この作品にそんな階層が高い夫婦がでてくる。恐らく年収数千万円をマルチ商法で稼いでいると思われる。その、方法が所有するヨットで勧誘者を東京湾に連れ出し、豪華な雰囲気の中で勧誘するやりかたである。
そのヨットのキール部分に溺死した少年がしがみつき、どうしてもキールを手放さないので、ヨットが湾の中で動かなくなった。
東京湾の周りでセレブのように浮遊して、豪華な生活をしていても、肝心なヨットの操作さえもできない。それと同じで、マルチのどこかの鎖がプツンと切れると、一気に奈落の底に落とされる。そんなはかないものの上に成り立っている東京湾周辺のあだ花の空しさを短編「夢の島クルーズ」は描きだしている。
その他「孤島」と題する短編も、東京湾に第六お台場なる原始的孤島があるのかと驚かされ、面白かった。
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2016.01.18 Mon
湊さんは、特別な発想力を持っているわけではないから、テーマはどの作品もありふれている。ただ、かかげたテーマを異常にデフォルメしえげつなさをだす才能にはたけている。
この短編集、まず閉塞感の提示が強烈。女の子は欲しくない子供だ。だから育てることや、教育にお金などかけてはいけない。長男には金をかける。いい大学もだしてやる。しかし女の子は世間体があるから、自宅から通える大学にはだしてやるが、卒業したら帰ってきて両親の面倒をみる。
閉塞した島で生きることで何より大切なことは、摩擦を起こさず無事に生涯を生き抜くこと。こんな島で殺人事件が起こしたら、起こした一家一族は大変なことになる。普通は島をでてゆくものだが、湊さんはそこで生きさせ、塗炭の苦しみを忍従につぐ忍従で生き抜かせる。
閉塞した島で、島の掟に従って生き結婚した夫婦。新幹線に乗ったこともない。ましてディズニーランドへ行くなど宇宙へ行くのと同じ感覚。
今どきそんな場所、いくら島といってもあるわけないじゃんと思うのだが、デフォルメさせるために、物語の登場人物をそういう環境、条件に押し込め、これでもかと苦しめる。
苛めもこの短編集で湊さんは扱っている。苛めはあまたの本で取り上げられている。だから目新しくないし、湊さんの視点も発想もそれほどのものはない。ただ、被害者が苛めをされて苦しんでいるといくら言っても、加害者と両親は絶対いじめていないと主張して譲らない。こんなことは現場ではよくあるのだろう。しかし加害者と被害者の間にたって、行き詰まり落ちてゆく教師の姿が痛々しい。
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2016.01.18 Mon
タイトルからして、穏やかで暖かな癒し系の物語と思ったら、まあそんなこともないわけではないが、双子の少女が主人公で名前が姉が小春、妹が日和とちょっと肩すかしを食らった。
小春と日和は母のすすめでタップダンスを習う。それがきっかけで、テレビコマーシャルにでる。そのコマーシャルが評判を呼び、第2弾もでき放映される。
この時の双子姉妹の憧れであり、影響を受けたのが、当時そろそろ引退の準備をしていた双子の歌手ザ・ピーナッツ。それは、父と母の青春時代の大スター。色々あるのだが、何かある度に姉妹がみんなの前で披露するのはザ・ピーナッツの歌と、ともに踊るタップダンス。
姉妹には、色んなプロダクションから誘いがあるが、両親が、特に父が反対してすべてを断る。それがどうも両親のいざこざにつながっている。姉妹もそんなこともあり、芸能界に進むことを逡巡する。
そんな時、父のインド転勤が決まる。父は家族のために、みんなを連れてゆくと言う。母は家族のために残ると言う。そして、父は母に負け一人インドへ旅立つ。ここで言う家族というのは子供である姉妹のことと生まれたばかりの長男道太郎のことを指す。子供が何よりも家族にとっては大切に思えるよう作者野中さんは描く。
そしてびっくりするのは、1年が過ぎたところで、母が宣言する。「道太郎を連れてインドで父と暮らす」と。
ここが素晴らしく私には迫ってくる。母にとって、一番大切な家族は子供たちでは無く、お父さんであること。夫であること。
そして、残された姉妹も別に僻むことなく、自分たちの今と未来を両親とは離れて考える。
タップをやって一流のダンサーになろうと。
読みやすいが、実に言葉を選び抜いて、質の高い小説に仕上がっている。
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| 日記
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2016.01.17 Sun
今回の物語は、お仕着せの修学旅行ではなく、夏休みを利用して本栖湖でサマースクールを装い、その最終日に参加生徒が忽然と消えるという生徒自分たちの計画した修学旅行をやっちまおうという物語。
ところが未読だが、この「ぼくら」シリーズに黒い手帖事件というのがあったらしく、そこで。こてんぱんに生徒にやられた全国指名手配のヤクザのはしくれに、組の幹部から生徒たちを皆殺しにしろという命令がでて、話はこんがらがってくる。
結局、ヤクザのはしくれであるチンピラ4人が、生徒を殺すと同時に、彼らも組の人間に消されることを事前に知り、生徒たちに寝がえり、一緒に暴力団組長やら幹部と、それも石ころを投げつけやっつけるところが読みどころ。
この本の前に超有名になった「七日間戦争」を読んでいた、その作品と少し色合いが違うなと思った。
生徒の先生に対するイタズラは、基本には生徒、先生間の信頼があって、楽しさ面白さは発揮される。そして、それが学校生活での良き思い出にもなるし、一人一人の先生も暖かく思い出される。
なにかこの作品のっけから先生が敵のように生徒から対峙している。言葉使いも「先生」でなく「先コウ」になっている。まあ、今の世を考えれば実態を表しているとは思うが、このシリーズだけは、先生と生徒が信頼でつながっていることを貫いて欲しい。
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| 古本読書日記
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2016.01.17 Sun
タイトルが凄いので、女生徒エスパーでも登場して、戦争や格闘シーン満載の物語と想像して本を手にとった。しかし、中味は全く違った。確かに超能力らしきものが発出される場面もあるが、その影響は電気の小玉が切れる程度のしょぼいことなど。いや最後に特定のクラス殆ど全員が失神するという騒ぎがあったか。
中学、高校時代、特に女生徒が最高に傷つくのは友達の背信、裏切りを知ったとき。
一番大切な人などと言われ、うっとうしいくらいにくっつかれ、寄りかかられ、自分も一番の友だちと思っていた人が、裏では、あいつは嫌い、嫌な性格とあることないことを言いたい放題にしていたことを知る。それはどん底にずどんと堕ちる時。
それも、友達は、そのことを小説に書き、有名な文学賞をとるからたまったもんではない。クラス内、学校内にとどまらず、あの嫌われっ娘はあの子のことと世間から指さされているような気持ちで毎日を過ごさなくてはいけないのだから。
この物語、最大衝撃を受ける事象をこれ以上ないというほどデフォルメして読者に提示している。しかし、これほどの衝撃も、中等部を卒業して高校生になり交流する仲間も変わり、環境も変われば、何事もなかったように消えてしまうよ。中学、高校時代はめまぐるしく色んなことが変わる。だから、今悩みの中にいる諸君よ、気にすることはちっともないよと励ましてくれる作品になっている。
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2016.01.16 Sat
これはパカパカと事件を片付けていくまるでゲーム機の世界。
とにかくたくさんの事件が起きる。涼ちゃんが自分の家の屋根から墜落してしまう。修学旅行へ東京に行った時に知り合った椿、榎がまきこまれてしまう密室事件。榎が発見する西暁町での大量密室殺人事件。
これらすべてが密室事件なのだが、これらの事件をルンババという14歳の名探偵が15歳の主人公とともに、いとも簡単解決させる。だけど行われるのは謎解きだけで、実際に犯人が捕まったかどうかまでは語られない。謎がとけたら次へと移っていく。本当にゲームの感覚。
この中学生(高校生になるが)は、14、15歳。現実を考えれば、中学生や高校生がいろんな事件に遭遇してほいほい解決するなどありえない。しかも、隣に住んでいるお姉さんの干してあるパンツに心うずく平凡な子たちである。しかし、こんな子たちもゲームや本かなにかでパズルを解くのは大好き。そんな田舎の典型的な中高生を描く、ちょっと飛んでいる青春小説といってもいいかもしれない。
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