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2015年10月 | ARCHIVE-SELECT | 2015年12月

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帚木蓬生   「賞の柩」(集英社文庫)

この小説の中で、現代新聞社の白石記者が次のように言う。
「権威もタブーも無傷のままに保持されると、内部から腐ってくるのです。共産党一党独裁、バチカン、天皇制という具合に」
中国のGDP成長率が目標の7%を0.1%落ち込み6.9%になったと報道された。プーチンの支持率は88%だそうだ。こんなバカげた数字に、バカマスコミがああでもないこうでもないと大騒ぎをしている。中国は、共産党を守るため、習近平を正当化するため、数字を作る。ロシアもプーチンをたたえるために数字を作る。誰一人こんな数字を信じている人はいない。

 最近はやりたい放題の権力、権威が崩れたケースが多い。IOC,それにFIFA,最近ではロシア陸上競技連盟。次々不正、腐敗が暴かれる。

 そんな中、絶対の権威を維持し、世界最大の威光を放っている賞がある。平和賞は少しうさんくさいけど、他の賞の威光はすごい。ノーベル賞である。
 この作品は触れることがタブー視されているノーベル賞受賞における不正を扱う。
いかにもありそうな内容で、来年からノーベル賞受賞者が発表されると、何だか色眼鏡でみてしまいそうで恐ろしい。

 チャレンジャブルな小説である。更に、落ち着いた洗練された文章にも感心する。

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村松友視   「坊主めくり」(徳間文庫)

いいねえ、こういう小説は。とにかく、この作品に登場する画家なのか坊主なのかわからないおやじと冴えない出版社の編集者である主人公との掛け合い漫才のような会話に味があり最高。

 多分、ここに登場する坊主なのか画家は、村松の友だちである、クマさんこと篠原勝之をモデルにして書いていると思う。最近は見なくなったが、篠原は今どうしているのだろう。「笑っていいとも」のレギュラーにでて、「ゲージツ家」と名乗っていたころの篠原を思い出した。

 リンゴは実と皮の間の味が抜群でおいしいところとよく言う。坊主が言う。皮と実の間に何があるのだ。りんごには実と皮しかないのじゃないか。ということは、りんごには美味しいところなどない。

 こんな屁理屈が延々と続く。それが面白い。屁理屈でもあるが、どこか哲学めいてもいる。
とにかくへんてこりんな物語である。

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今年も残すところ一か月

「帰ってきたアブサン」が今月中に読み終わりそうもない。
作者の祖父も作家だったと知り、ググってみたりなんだり。静岡県出身なんですね。
のんびり読みます。はい。

爺やの本棚から抜き出したもの&自分で購入しとっておくことに決めたもの、を自室にこそっと並べてあります。
昨日までは津村記久子さんの本を並べていたのですが、気が変わってこの顔触れに。

IMG_8683.jpg

「猫のいる日々」 
雑巾猫にまつわるエピソードのページにしおりをはさんであります。さび猫バンザイ。
猫にまつわる別のアンソロジーでも、大佛氏のエッセイは使われていました。

「桃尻娘」シリーズ 
続きは、なかなか古本屋でも見つけられない。
この前、隣町の古本屋で「無花果少年と桃尻娘」を見かけましたが、4冊目を読まずに5冊目に手を出すのもな~と購入保留。
他人に勧めるような内容ではありませんが、視覚に訴えるような表現(文字の組み方?)だし、もう手に入らなそうだと思えば大事にしておきたくなる。

「翼」
3回は読みました。「何度も読んで泣く人続出」みたいな帯がついていますが、別に泣けはしません。
ただ、白石さんにしては読みやすいし、読むたびに気になるポイントが変わるし、浜松が登場するし、あんまり厚くないし、私の中では高評価です。
我が家は中日新聞をとっていて、「へぇ。白石さんが連載しているんだ。新興宗教? 人の記憶の奥?? 『神秘』のあらすじも怪しげだったし、妙な方向へ行っちゃったのかしら」と思った。

「恋愛論」
なるほどな~と思った本。感動できない人間は恋愛できない、というあたり。
「彼氏いないキャラの方が便利だから、いい感じの人がいても踏み込めない」「多少不潔でもセンスが悪くでも関係ない。『おひとりさまが楽で楽しい』と思っているから彼氏ができない」という分析も、ネットで見かけました。
損得とか、はたからどう見られるかとかあまり考えず、とにかく感動・陶酔しちゃうタイプの方が恋愛向きなのでしょう。
「翼」にも、「この人が運命の人、と自分で決めることが大切」とあります。

話はそれますが、「同性婚法制化に対し、女性は『賛成』、男性は『反対』が多数を占めた」って、腐女子が含まれているんじゃなかろうか。「私たち、二次元で免疫ができているから、マイノリティの恋愛に対して寛容なの」と。
実際は分かりませんが。橋本さんの本はそういうキャラクターが多いので、ふと思い出しました。

ブックオフでの収入は、夕飯の材料費になりました。

| 日記 | 21:35 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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書店めぐり

一度は手放した漫画「屍活師」を再び揃えようと思ったのが、今月の初め
このとき購入したのが8-11巻。
一番近い本屋がツタヤなのですが、まずは1-3巻を再購入。本を2000円分買うと「ポイント10倍クーポン」が出るので、2回に分けて購入し、1回目に入手したクーポンを2回目で使用したい。
で、2回目に行ったら5-7巻しかなく、「あれ? 前回4冊買ったっけ?」と首を傾げつつ、あるだけを購入。

IMG_8680_201511291856487ee.jpg
4巻が抜けている。

その後、このツタヤは何度行っても、1、8-11巻しかない。江崎書店も最近の数冊しかない。市野のイオンには屍活師じたいが無い。ブックオフも1巻しかない。
……という具合で、中途半端な巻はなかなか無いものです。密林で買えよと言われたらそれまでですがね。
(ツタヤは補充してもいいと思うんだけどなぁ)

おまけ。
上の写真で、屍活師の後ろには「papa told me」があります。
長期連載になれば絵柄は変わるもので、「BANANA FISH」も「みかん絵日記」も、1巻と最終巻を見較べるとしみじみしちゃいますね。
「papa told me」は、こんな感じ。
IMG_8681_20151129185649d73.jpg
左が1巻表紙。右が、ココハナに移ってから出版された単行本。連載開始が1987年。右の単行本は2012年発売。
子供らしい丸みが出てきた……のかな。髪の毛がウェーブ。
ココハナでさらに2冊出ていますが、未購入でした。昔ほどの切れがないな~と、興味を失っていたかもしれない(-_-;)

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池澤夏樹   「言葉の流星群」(角川文庫)

 物理学者でもある池澤、科学者でもあった愛すべき宮沢賢治論。
この作品で、池澤は宮沢賢治という漢字を使わず、一貫して宮沢賢治をケンジさんと表現する。宮沢賢治は詩を「心象のスケッチ」と言った。だから、宮沢賢治の姿を固定的にとらえようとせず、一篇、一篇のそれぞれの詩に寄り添いその時の賢治の心象を描こうとしている。それで賢治ではなくケンジさんとなるのである。
 それでも、池澤は賢治を偉大な作家であり詩人として尊敬しているので、賢治の心象を越えて、実物の賢治よりはるかに大きな存在として表現してしまう。

 賢治は、詩人であり、童話作家であり、日蓮宗に属する敬虔な仏教徒であり、モダニストであり、科学者であり、何よりも農業の実践者であった。

 私らの幼いころ、信州の山中での農業は苦しかった。でも、それより酷かったのが岩手県だった。岩手県は当時、日本のチベットと称され、東北で最も貧しい県といわれていた。
 農作業は本当に苦役だ。それで、いくら豊作になっても、利幅はなく生活はカツカツだった。少しの天候、気候の変化で、不作となると、生活がたちゆかなくなる。蚕を飼う。蚕は夜中も起きて、桑のエサを補充せんばならない。それで、日中は畑、田んぼの作業。寝る間もなく働く。

 まして賢治の時代の岩手では、農業はまず開墾から始まる。トラクター、ブルトーザーの無い時代、開墾はすべて人間の手でする。それが遅々として進まない。死ぬほどの疲れと進まない作業に絶望感にさいなまれる。

 こんな時、どのようにして自分を励ますか。それは僕らの幼いころもそうだったが、違う裕福な、或は見たことのない憧れの土地のことを想像する。賢治は西域だったり、常夏の島だったり、シベリアなど北方の土地。
 優雅な暮らしを夢見る。二千年前の白亜、ジュラ紀を思い、また2000年後の美しい世界を思う。それから、遠い星の彼方での生活やそこへの旅を想像して、自らを励ます。そして、そこでもらったエネルギーで今日を明日を生き抜こうとする。

 その姿が賢治でなく池澤が愛するケンジさんのように私は思う。

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| 古本読書日記 | 06:06 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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池澤夏樹   「カイマナヒラの家」(集英社文庫)

連作短編集。舞台はハワイでなくハワイイ。現地語でハワイはハワイイとなる。
収録されている短編の中では「冷蔵庫の写真」が面白い。

ジェニーは日本にいたとき、堅太郎(通称ケンタ)というヨットマンに恋する。そして、2人でヨットで世界一周をしようとする。もちろん両親は、大反対。そこで、とりあえずケンタは一人でハワイに向け、ヨットで日本を出発する。ジェニーはケンタがハワイに到着したのを受けて日本から出発ハワイでおちあう。
 そこから世界一周はやめ、サーフィンにとりつかれハワイに定住する。しかしケンタは、その後コカインと酒に溺れボロボロになる。そして、ジェニーに暴力を振るう。それで、ジェニーは別離を決意する。

 そこからケンタのジェニーへのしつこいストーカーが始まる。逃げれば逃げるほどケンタのジェニーへの情熱は高まる。
 思い余ったジェニーがフィリピン人の占い師に相談する。占い師は、今持っているケンタの写真を冷蔵庫にいれなさい。そうすればケンタの情熱はさめると。

 ジェニーはケンタの写真を冷蔵庫に放りいれる。すると、ケンタのストーカーはぴたっと終わる。しかし、ケンタがひどい風邪を患っていると聞く。占い師に相談して、写真を冷蔵庫からだしてやると、ケンタは回復する。しかしストーカーは止んだ。
 なかなか洒落た話だ。

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| 古本読書日記 | 06:04 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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買い物の失敗

しばし読書をさぼっておりました。
爺やの積読カゴに「帰ってきたアブサン」を見かけ、次はこれにしようと目をつけました。前作は良かったし。
が、読了後本棚のどこにしまわれたのか分からなかった。今日見つけました。
↑会話のない親子


今日はツタヤで漫画と文庫をそれぞれ1冊買いました。
漫画はこれ。
IMG_8678_20151128174103096.jpg
どっかのレビューで褒められていたし、ツタヤもポスターやPOPを用意していたし、面白いのかなと。
メロディ連載らしいのに、1話目にいきなり乳輪入りのベッドシーンのコマがあって驚いたら、別雑誌から移ってきたそうな。
前回とかぶる(おさらい?)シーンが気になるのも、それが理由だろう。
「3年後に新王を選出します」って、3年間王無しでやっていけるなら王はいらないだろうし、「西の善き魔女」みたいに前の王が生きているうちから選定試験をすべきなんじゃね? とか、
「王女を孕ませたモン勝ち」みたいな状況でヒロインたちがあっさり男の部屋に行けてしまうのは無茶だろうとか、いろいろ気にはなる。
作者も、「あこがれの王国ものを、私の絵でやっていいのかと思いつつ~」とあとがきに謙遜して書いていますが、体がアンバランスというか、表情(特に目)にバリエーションがなくて固いというか、髪の毛の質が低いというか、なんだか残念です。
ヒロインが「お兄様ほどではないけど美男ね」「見た目のいいのをよこすなんて、隣国の王はわたしたちを馬鹿にしているわ」と口にして初めて、「あ、さっきのキャラはイケメン設定だったのね」とわかる。

文庫は、「仮面の告白」です。
どこかの読書ブログや「悪の読書術」で見かけて気になり、爺やの本棚になさそうだったので買ったのですが……。

IMG_8679.jpg
帰ってチェックしたら、あった。

こうして、今日買った2冊はブックオフ行きの袋へ。(追記:他の本と合わせて千円以上にはなりました。漫画は高い)
もったいねぇなぁ、おい。

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村松友視   「帝国ホテルの不思議」(文春文庫)

帝国ホテルでは常時1000人の人が働いている。これは凄い大人数だ。900室もあるからかもしれない。
私は過去3回帝国ホテルの入り口をくぐった。宿泊と、ランデブーバーラウンジでのジュース、それに甥っ子の結婚式。

 宿泊は確か素泊まりで3万円以上とられた。夜遅くまで知り合いと飲み歩き、ホテルに帰ったのが午前2時。何のための宿泊かわからなかった。ランデブーバーラウンジは一度は帝国ホテルの喫茶室を経験したくて一人でふらっとはいってみた。この本ではお客様に落ち着きを与えるように最善の気を使うと書かれているが、場違いなところに入ったとの気後れが先行してとても落ち着いた味わいはできなかった。甥っ子の結婚式での披露宴は、酔った若者達の大騒ぎ宴会に変わり式場が街の居酒屋になってしまった。
 いずれの経験も、この作品に描かれているような雰囲気を味わえる状態では無かった。
村松の大袈裟に脚色された文章を読んでもとても身近にならない。正直ほかのシティホテルと違わない思い出しか残っていない。

 ただオールドインペリアルバーの描写だけは違った。ここには、今どきめずらしい白黒テレビがある。面白いのだがそのテレビで見られるのは大相撲だけだそうだ。そこに、必ず現れる中折れ帽を頂いた老人。ステッキをついてやってくるのだが、そのステッキがゴルフのパターというのも素敵だ。ああ、ここには確かに帝国ホテルがあると思った。

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立川談四楼   「声に出して笑える日本語」(知恵の森文庫)

落語家は、毎日、毎秒ギャグを考えている。或は街中で耳をすまし何か面白いことを言っている人はいないか。テレビを見ながらアナウンサーなのが変な日本語を言わないか懸命のあら捜しをしてそれを高座にかけ笑ってもらう。大変ではあるネタさがし。

 そんなネタ満載の本。
最近、一億総活躍社会ということが言われているが、どうも私のような古い人間になると「一億総白痴化」とか「一億総タレント化」なんて言葉を思い出し、あまりイメージがよくない。

 先生なんか別に偉くない。よく言うのは、先に生まれただけの人。或は先ず生きている人。
しかし、談四楼にかかると凄い。
先に生えた人。

 喫茶店で女子高生が話をしている。
 「生麦で始まる早口言葉知ってる?」
 「知ってるよ。生麦、生米、生はダメ」

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村松友視   「最後のベビー・フェイス」(角川文庫)

 タイトルのベビーフェイスというのは、可愛らしい顔という意味ではない。プロレスなどで悪玉のことをヒールというが、善玉レスラーのことをベビーフェイスという。

 長い人生の中で、悪玉から善玉に変わるように、自分ではその時は意識していないが、後から振り返ると確かに変わったときがある。大概は、住み慣れた故郷をでて、都会に住みだしたときだ。この作品の主人公は、静岡県清水で生まれ育った。その時いつも見えていた富士山は右肩にこぶがあった。だから富士山はこぶがあるものと思っていたが、東京でみた富士山にはこぶがなかった。その瞬間にこぶのある富士山は消えた。東京にでたころは故郷が自分の生き方をひきずったり影響を与えるのではと思ったが、新しい土地、新しい人間関係、新しい暮らしが故郷を遠くにやってしまった。そして新しい自分が生まれた。

 清水の次郎長も、賭博、女たらしの渡世人だったのに、突然、開拓事業や、山岡鉄舟との交流など、渡世人が消えて正義の侠客として伝えられるようになった。誰かが次郎長の姿を変えたか、どこかで突然次郎長自身が変わった。

 主人公が次郎長取材で故郷清水を訪れるが、都会で生まれ変わった主人公は、全く故郷に感慨、郷愁はこみあげてこなかった。

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嵐山光三郎   「逆鱗組七人衆」(新潮文庫)

 株式会社「逆鱗組」は東京田無市に本部をおく新興暴力団。債権回収、裏ビデオ制作、恐喝、賭博、風俗営業などもっぱらせこいしのぎで今の社会を生き抜いている。組長の浅田以下組員全員で七人。

 浅田組長の発案で、やっぱし、これからのヤクザは、知識、教育が大事ということで教育産業に乗り出すことになった。一人二十万円で東大生と肉体関係を持ち、それでできた子を東大に入れたいという若い主婦を集める。というだいそれた教育事業である。

 そして今、銀杏印徽章がついたバスで北海道東大生精液バンクツアーの最中である。しかし「逆鱗組」7人にはもちろん東大生はいない。一人だけ、無理やりアルバイトで連れ込んだ東大生に7人は東大や東大生の行動を懸命にバスの中で習っている。
 そのうたい文句がすごい。いまや東大生には両親が東大、そうでなければ祖父母が東大、はたまた、親戚の中に必ず東大出がいる。東大生になるのは勉学でなく遺伝である。
 この事実「論より射精」
 東大への道
 育児は精液から。ポスト東大主義の体位と実践
なんてパンフレットを配り主婦を募るのだからたまらない。

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中脇初枝      「わたしをみつけて」(ポプラ文庫)

 2つのことが印象に残った。

 主人公のやよいが准看護師として勤めている病院の院長が誤診で手術をして、緊急入院した患者を死なせてしまう。家族が不審に思い、院長に面談を申し込む。実は看護師長は誤診をしたことを知っていた。そのことを院長まで知っていたため、院長はやよいに看護師長が同席できないよう何か仕事を作り、面談に同席できないようにしてくれと指示する。
 そしてやよいはある操作をして、看護師長が面談できないようにした。それを看護師長が知る。その時、看護師長が言ったことが印象深い。
 「あなたは不幸な人たちと仕事をしてるのね」

それから、りんごの故郷津軽から集団就職してきた菊池さんが、就職先の八百屋で、その津軽弁を客にからかわれたとき、おかみさんが、この子は大事なりんご。遠く津軽からほっぺを真っ赤にしたまま、木箱に詰められやってきたの。そうすると八百屋のおやじが言う。「そうそう、おがくずをとるのが大変だったなあ」
 いいな、この八百屋の夫婦。

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立松和平    「地上の翼」(集英社文庫)

  今から30年前、立松は香港―北京ラリーでスバルチームのナビゲーターとして参加した、その立松の参戦記。今は多分、香港―北京は高速道路でつながっているだろうと想像するが、30年前は中国側に入った、深圳から武漢までは、ほとんど砂利か山岳でこぼこ道。だから、色んなアクシデントが起こる。更に途中の宿泊所がホテルでなく、小学校の校舎。机をくっつけならべてその上にマットレスを敷いて眠る。大変なレースである。
 その困難を打ち破り、北京まで辿るレース描写も面白かったが、時々立松が挿入する立松がソレレースより前に旅行した中国の情景描写が印象深い。

 旧満州、中国の北方内陸都市、チチハルにゆき街を歩いていたとき、アイスキャンディーを売るおばさんに声かけられる。それも日本語で「日本のかたですね。」と。
聞けば満蒙開拓団として青森の五所川原から家族全員で渡ってきたが、敗戦で逃げ遅れる。困窮でどうにもならなかったとき、無理に中国人の男性と結婚し、何とか生き延びて今アイスキャンディーを売って食べていると。

 このエピソード。私に恋愛とは、結婚とはどういうものか、その問いがズシンと迫ってきた。

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椎名誠   「寝ころび読書の旅に出た」(ちくま文庫)

オーストラリアの中央の砂漠地帯、気温70度の世界が凄い、木箱を止めてある釘がうきあがってくる。櫛はすべて割れる。髪の毛は全くのびなくなる。爪はことごとく割れる。鉛筆はつまみあげると芯がとびでる。驚く。

 それからシベリアの極寒マイナス50度。椎名が栗毛の馬にのり、闊歩する。すると栗毛の馬が白馬になってしまう。馬は裸。だから毛から熱を発散。それが凍って真っ白く馬が変わってしまうから。どちらも想像を絶する世界である。
 このエッセイで、椎名は、古今東西の優れた冒険本を紹介している。また、旅の真髄、それから尊敬する、好きな旅行作家を紹介している。

 えっと違和感を覚えたことは、日本で旅行本のバイブルと思われる作品、沢木耕太郎の「深夜特急」か小田実の「何でもみてやろう」と私は思っているが、椎名のこのエッセイでは2人が全く触れられていない。

 椎名はもちろん未開に近いところをあちこち行き、危険なめにもあっているだろうと想像はする。しかし、沢木のように旅は一人でなく、常にクルーをともにし、しかもそのなかの中心人物として椎名は旅する。だから、危険な経験もスタッフに守られた上に成立している。

 正直私はそんな椎名の姿が好きになれず、少し距離を置いている。沢木派の私である。

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小杉健治   「暴力刑事」(光文社文庫)

「ひかり平和病院」に、金庫破りがあり300万円が盗まれる。防犯カメラに3人組が映っていて、その一人の腕にあまり売られていない特殊な腕時計がはめられているのが映っていた。その腕時計をはめた男を偶然主人公の浜野刑事が街でみる。浜野はその男が金庫破り犯人のひとりと思い後をつける。

 そこに、若い女性を連れている岩沼刑事に出会う。岩沼は浜野にわけのわからないことを言う。「腕時計の男は山森という半グレ(暴力団には属さないチンピラ)。金庫破りの犯人に間違いない。だから今すぐしょっぴけ。」と。だけど証拠が無いからしょっぴくわけにはいかない。「そんなことをしてたら、次の犯罪を犯す。だからしょっぴけ」と。
 岩沼は、山森をとっつかまえ、路上で山森に対し、おまえが犯人だといい、ぶんなぐり転倒させ、山森の足の骨を折る。岩沼の暴力により。山森は入院する。

 どうして岩沼が山森にこだわり、暴力まで振るうのかが浜野にはわからない。そして、結局犯人は山森ではないことがわかる。
 実は、山森の父親も窃盗をくりかえしていた。父親は岩沼に息子はグレさせないよう岩沼に見張ってくれるようお願いしていた。

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長嶋有 「電化文学列伝」

爺やの感想はこちら
面白い本です。
ただ、紹介された本(映画)を読んで(観て)みたいとまではいかず、長嶋さんの目の付け所や話の持っていき方がウマいというところにとどまるのですがね。

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紹介されている作品の中では、「トレインスポッティング」の電気毛布と、「夜の子供」の電気掃除機が気になりました。
電気毛布の消し忘れで死体が温まってしまい、「すごい熱だ。まだ、死んでない!」と遺族がぬか喜び(?)するというシーン。
うーん……笑っていいのかしら(^▽^;)
川上弘美さんが電気掃除機を描写すると、「彼は掃除機のコードを一回ですっと巻き込む。私がすると、いやいやのようにしかコードは巻き込まれない」と、なんだか「なまめかしい」「つれない」ものになってしまうという解説。
確かに、川上さんの書く小説は、なんとなく官能的なにおいがしますな。

電気カミソリの話もツボでした。
<なぜ「剃り残し、なし!」と何十年もコマーシャルで言い続けているのかといえば、まだ剃り残すから。特に、あごの部分。
 同じように、生理用品のコマーシャルは「多い日も安心」と言い続けているから、本当はまだまだ安心じゃないんだろう?>
そんな話。
いや、たぶん、漏れないとかずれないとかだけじゃなく、薄くてアウターに響かないとか、敏感肌に優しいとか、消臭効果があるとか、「安心」にもいろんな側面があって……まぁ、いいか。
「本当にもう安心であるなら、以後はそれだけを売ればいいじゃん」って、そうもいかないんでしょう。

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寺山修司 「書を捨てよ、町へ出よう」

他の本と並行し、時々読み進めていました。1か月くらいかかったかも(^▽^;)
なかなかかっこいいタイトルですね。

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前にも書きましたが私はギャンブルはしません。念のため。
CDの再生をランダムにしておいて、「次は○○がかかるかも」と予想を立てるくらいはしますけどね。

なんというか、センスや読解力に欠ける私には、難しい本だったかもしれない。
ここは笑っていいのか? それとも、作者は本気で提案・主張しているのか? と考えてしまう。
「遺書はきれいな字で書くように。巻紙に筆で書くのもいいが、死んでから読み方を聞かれても答えることができないのだから、草書体で崩しすぎない方がいい。水森亜土のイラスト入り便箋もやめなさい」
「自殺には、ふさわしい小道具が必要だ。赤い花一輪なんかじゃなく、もっとユーモラスな小道具がいい。
シカゴのハーレムで自殺した男の傍らに笑い袋があって、死体の横で一晩中笑い続けていたという新聞記事があったが、なかなか印象的だった」
などなど。

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競馬界のガンクツ王事件とか、片桐操・永山則夫の事件とか、知識もちょっとばかし増えました。
たぶん、この本を読まなかったら一生知らなかった。
食肉にされる馬たちが不運だといい、「彼等がどんな犯罪をおかしたというのだろう?」と嘆いた後で、
「もちろん裁きを受け殺される罪人もいる。だが、人間は食われない。小原保にしたところで、死刑後は手厚い葬りをしてもらえることになっている」
とありますが、ウィキペディアによると墓は小さい盛り土だけで、担当刑事が泣いたとかなんとか。
このエピソードより前に書かれたんでしょうね。

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「猫と女は呼ぶと逃げる。そして、呼ばないときこそやってくる。--メリメ」
↑引用されている中で気に入ったもの。

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平 安寿子   「さよならの扉」(中公文庫)

  主人公仁恵は専業主婦。娘は家をでていて、夫の定年まではもうすこしある。その夫が突然末期癌を宣告され、死が迫る。そんな時、夫が5年間にわたって愛人がいたことを告白する。

 そこから、仁恵の愛人志生子に対する執拗な密着行動が開始される。
志生子は、仁恵の夫とは、割り切った大人の関係。いつでも切れてもよい。それほど、恋愛感情があふれていたわけではない。ところが仁恵はしつこく夫のどこが好きだったのか。愛のつよさはどれほどだったのか。結婚はしたかったのではとか、ねちねち迫る。
 最初は復讐心が動機で仁恵は攻めまくっていたのだが、途中から志生子と、夫を介して繋がっていたような感覚が強くなり、志生子を同志、大切な友達と思うようになった。

 特にそのしつこさのすごさでは、仁恵の夫が亡くなったとき、茫然自失となった仁恵の経験から、志生子の父親が危篤になった病院に乗り込み、ありとあらゆる世話をしようとするところ。何しろ、親族や志生子と一緒に志生子の父親の最後を看取るところからしつこさが始まるのだから。

 狂って理解を越えたしつこさほど手におえないものはない。

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| 古本読書日記 | 13:27 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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平 安寿子  「Bランクの恋人」(光文社文庫)

平さんは、この作品の主人公七尾君を、寂しい可哀想な男として描いているが、私にはとんでもないほど羨ましい男である。

 最初は悲惨なストーカーについての随想からスタートしているので、てっきり主人公七尾君もそういう男として読む。ところが、七尾君いつも会いたいと言えば会うことができ、そして会えば、必ず最後までいける女性が12,3人いる。女性の容貌、スタイルは75点くらいの女性ばかりだと言うが。てっきり、この物語は七尾君の妄想語りで、最後に寂しい現実にぞっとするという落ちで話が終わると想像していたが、妄想でなく現実のようだ。

 しかも女性も、七尾君のことを恋人とは思っていなくて、とりあえず遊べる人として七尾君をキープしている。だから、本命の恋人が現れれば、即七尾君とは手を切る。だから七尾君はAでなくBランクの恋人ということになる。

 こんな幸せな男が本当にいていいの。私の近所には、彼女いない歴数十年なんて孤独な男がたくさんいる。そんな男たちにこの七尾君の話は残酷だ。
 平さん、七尾君が不幸なんてことちっともありませんよ。

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西 加奈子    「ふる」(河出文庫)

私達は、自分の意志で生まれてはこない。で、生まれてからは、まわりの人たちに世話をしてもらい、育てられる。自分の意志とは別に、育てられ、叱られ、褒められ、泣いて、笑って、そのすべてが奇跡の連続のように思える。
 今確かに心臓が動いているが、生きている実感がわかない。主人公花しす(名前)は、ポケットにICレコーダーをいれて、すべての出来事を録音し、それをアパートに帰り、再生して何回も繰り返して聞き、生きている実感を得ようとする。でも、生きている実感わかない。いつも生かされているという思いが抜けない。

 その生かされているがいつ生きている、生きて行こうとする実感に変わるのだろう。

花しすは、アダルトビデオに映っている性器にモザイクをかけてぼやかす仕事をしている。
 そのモザイクを消す前のエヴリンという女性の女性器をみていたとき、そこから白いふわっとしたもの飛び出てきた。その時、そうだあの時だ。あの時もこの白いふわふわが湧き出た。
 それは花しすが11歳、病院に祖母を見舞ったとき、初潮をむかえた日だ。母は、父方の祖母にもかかわらず、祖母の大便、小便をなにも文句いわずに、処理をする。花しすは、その時はいつも母にもいわれていて、自分も見るのがいやで病室をでていた。しかし初潮の日、祖母の小便の処理を見ていた。顔や体は皺だらけなのに、女性器は輝き生き生きしていた。その女性器から白いふわふわが出ていたのだ。そして同じものが祖母、母、自分にもつながってあることをしみじみと思った。

 そこから、花しほは変わった。祖母の大便、小便の処理をするようになった。
 エヴリンの女性器から白いフワフワがでてきたとき、私も変わったときがあったことを思い出し、ここから自分も前向きに生きてゆこうと決意をする。

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金原ひとみ  「マリアージュ・マリアージュ」(新潮文庫)

妻が突然2歳の都子をおいたまま、家を出ていってしまう。いつだか、映画でみたような状態。都子は何をやっても「ママ」と騒ぐ。着る服がきにいらない。靴はいやだとか。主人公は都子をベビーカーに乗せて保育園に連れて行って、その後会社に行かねばならない。
 もう、どうしようもないくらいイライラする。それが都子に伝わるのか、シクシクが突然大きなわめきに変わる。保育園では、他の子のお母さんに変な目でみられる(ような気がする。)「嫁さんが体を壊して、実家に帰っている」と聞かれれば嘘をつく。
 会社は、上司に無理を言って、19時には家に帰るようにしている。19時までに都子を保育園に引取りに行かねばならない。帰れば帰ったで、「ママでなきゃあ いや」の大泣き、風呂へいれたり、食べないご飯をおしこんだり、替えたことないおしめをかえたり。

 泣きたくなる毎日。妻の日々の大変さを身をもって感じる。それでも、少しすれば戻ってくるのではないかと確信のない期待。これがこれからずっと毎日続くなんて思うと死にたくなるから。悪戦苦闘。
どうにもならないような日々を送っていたある日、保育園に都子を引き取りに行くと、先ほどお母さんがきて引取りましたと。

 それで、急いで「良かった」と思って、アパートに帰る。ところが自宅は真っ暗。扉をあけ電気をつけると、テーブルの上に紙切れ。「都子は引き取ります」と。

 一瞬あの都子とも別れ、妻とも別れ自由になったと晴れ晴れとする。しかし、誰もいなくなった部屋を眺め、がっくりと肩を落とす。

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| 日記 | 16:25 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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伊集院静   「作家の遊び方」(双葉文庫)

伊集院は不思議な作家だ。
このエッセイもそうだが、年がら年中、競輪、競艇、賭けマージャン、そして海外ではカジノと、ばくちに明け暮れている。それで、殆ど負けている。事実この作品でも何億円も今までに負けていると書いている。
 それから半端じゃない酒飲み。一回飲みだすと朝まで、自分を失うまで飲む。しかも、いつも銀座。食べるところも銀座。それも鮨。

 好きな作家ではあるが、売れっ子というほどでもないし、多作というわけでもない。一体これだけ遊び、豪遊できるお金はどこから生まれてくるのだろう。それとも、伊集院くらいの作家でも、何億円も年稼ぎがあるのだろうか。
 あまりポピュラーなところでは見かけないのだが、伊集院は寡作ではなく、実はいっぱい書いていた、週刊大衆やタブロイド紙にだ。なるほど、こんなところで稼いでいたのか。

 書いている雑誌はいかがわしい写真と、暴力団抗争記事中心の雑誌。エッセイを書けば当然、雑誌が無償で版元から贈られてくる。その雑誌をみて奥さんが言う。

 「あなたも若いころはこんな雑誌を愛読してたの。」
 「僕は活字中毒者だったから、手元に読むものがないときはよく読んだなあ。」
 「この雑誌のどこに活字があるの?」

いいねえ、奥さんの的を得た突っ込み

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| 古本読書日記 | 10:57 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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長嶋有   「電化文学列伝」(講談社文庫)

作家というのは、他の作家の作品のどんなところに着目し、素晴らしいと評価するのだろう。このエッセイでは、小説の中で家電製品の使用状況、状態をどう表現しているかを紹介しながら、その表現のすばらしさを説明している。

 なるほどと思った2つを紹介。
 まずは尾辻克彦の「肌ざわり」からテレビの登場する場面。
テレビ番組はみていないが、テレビが漫然とついているときがある。その画面で蝶々が舞う。
  「変な蝶々」
  「猫みたいだね」
  「いやだぁ 猫なんて」
  「テレビを掃除しているみたいだね。バタバタ埃を掃いている。」
  「テレビがお化粧しているみたいだわ」
  「そう、お化粧」
  「変なかんじ これ女のひとみたい」
テレビが本当に生きている。見事な表現だと思う。

家電製品を買って家に持ち帰ったり、届けられる。それは家に新しい息吹と変化を持ち込むことになる。
 よしもとばなな 「キッチン」より
 「今から置きに行くの!聞いてよ。ジューサー買っちゃたぁ」
 ・・・・
 「だから置きに来たの。先に使ってもいいのよ」
 ・・・・
 てきぱき開かれた包みから、何でもジュースにしてしまいそうな、見事なジューサーがでてきた。
家電製品が新しくやってきた高揚感が本当にわきたっている感じがでている。

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| 古本読書日記 | 10:39 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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ネコロジー

久々に読み返してみました。
アルフィーの坂崎幸之助氏が書いた、猫エッセイというか野良猫保護活動に関する思いというか、まぁそんな本です。

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表紙を飾っている子猫(トイ)はすでに死んでいるそうな。
坂崎さんが保護し、坂井真紀さんにもらわれ、彼女のブログで死が報告されたのは平成21年。
今も坂崎さんが保護活動をしているかどうかは知りません。

無責任なエサやりおばさんに対しては、くるねこさんも思うところがあるようで、そんなネタが漫画にもありました。
猫絵十兵衛だと、「11匹も生まれちゃった。どうにかしてくれ」と泣きつく人の話も面白く読めますが、現代だったら「避妊手術しておけよ」「餌をやるならそれも責任を持てよ」と言われるところですね。
岩合さんの写真も、世界各地の飼い猫だけで十分おもしろい。野良猫ばかり撮って、「これが自然の姿だ」と主張しているようなものではなかったはず。
さいきんは猫歩きも観ていないのですが。

この近所では野良猫を見かけない。

そうそう、猫絵十兵衛の14巻も昨日購入しました。
般若顔の小春(嗄れ猫)が再び登場していてよかったです。「びぇえ」という鳴き声が、ももこを思わせます。
小春もももこもポ子も、錆び猫。

| 日記 | 23:11 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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「甘い物は脳に悪い」

疲れた時には甘いもの、という思い込みを利用した、いいタイトルです。

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甘いものを食べると一時的に血糖値がぐっと上がり、下げようとして膵臓がインスリンをばんばん分泌する。
けっきょく、食べる前より血糖値が下がり、「甘いものを食べてもう一頑張り!」のはずがだるくなってしまうという。
たんぱく質を補給した方がいいそうです。

あと、仕事中に眠くなって缶コーヒーを飲むのもよろしくないそうです。
カフェインの眠気覚ましは一時的なうえに、利尿作用がある。体内の水分が減って、脳への血流が滞るとだるくなる。
コーヒーを飲んで何度もトイレにいけば、眠くなってしまうという。
麦茶や水を飲んだ方が効果的なんだそうな。

それ以外には、朝ごはんをちゃんと食べましょうとか、ハンバーガーを食べるならビーフパテより照り焼きチキンのほうがいいとか、バランスの悪いメニューを付き合いで食べるときはせめて噛む回数を増やそうとか、そんな内容でした。

とりあえず、朝会社に行ったらコーヒーを飲むのが習慣なんですが、それ以外の時間はコーヒーではなく脂肪を減らすウーロン茶やサーバーの水にしておこうと思う。
ちなみにブラックは飲めません。気持ち悪くなる(-_-;) ボスの贅沢微糖ばかりです。まぁ、気分ですね。
目覚ましにはミンティアとか冷水とかの方が効く。

| 日記 | 22:49 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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群ようこ 「ぬるい生活」

11月3日の記事で、購入したことを報告しましたが、感想は書いていなかった。
ちまちまだらだらと読みました。

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あらすじ(内容紹介)部分も、「年齢を重ねるにつれて、体の衰えや心の不調は出てくるもの。ついつい頑張りすぎてしまう現代の人々に送る一冊」みたいなニュアンスですが、更年期障害がらみのエピソードが多いです。
知人にその感想を伝えたら、
「ちょっとお姉さんネタすぎたねw」
と返ってきた。そんな言い方もできる(^▽^;)

<若いころからボーイッシュで、ほとんどすっぴんで、似合わないからとスカートも履かなかった友人がいる。
 40歳を過ぎたころ、自転車の荷台からものを落とし、拾った小学生が『お……おじさん?』と声をかけてきたそうだ>
このエピソードが一番気に入りました。
私も、おじさんかおばさんか分からない外見なので、少し後ろの毛を伸ばしてみようかと思う。
ちなみに、群さんの友人は開き直り、「今じゃ、ためらいなく『おじさん』と話しかけてくる人も多いよ」となったそうな。

生涯未婚の男女が増えれば、同性の友人と一軒家をシェアしたり、マンションで隣同士に住んだり、助け合うことが推奨されるかもしれないですね。
群さんは、同じマンションに友人が住んでいるそうな。そういえば、「沈黙のひと」の主人公は母親をマンションの隣室に住まわせていた。
空き家(空き室)を数軒はさんで、独身老人がぽつんぽつんといるより、ある程度固まっていたほうがなにかといいのかもしれない。

| 日記 | 22:25 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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平 安寿子   「ぬるい男と浮いてる女」(文春文庫)

主人公の収は靴屋でバイトをしている。故郷の親はバイトであっても普通に勤めていることで安心している。母親が時々電話をよこして言う。

 「人様には迷惑をかけないようにね。」

迷惑なんてかけようがない。なにしろ言われたことだけはきちんとやるだけだから。
迷惑とかトラブルは言われないことをやることによって起きるのだ。それが上手くいくこともあるが、摩擦を引き起こすこともある。
 他人からみれば、「何考えているの」状態。自分を殺し、個性をなくする。

 このバイト。絶対しなければならないこと。お客がいようがいまいが、ずっと立っていなければならないこと。だけど、立ってさえいれば、お金がもらえる。お金さえはいれば、コンビニの弁当は買えるし、ユニクロで服が買えるし、家賃もはらえる。電話代や水道代や電気代、ガス代も。誰にも迷惑かけず暮らしていける。

 こんな「ぬるい男」のどこが不満?

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| 古本読書日記 | 06:23 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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川上未映子  「わたくし率 イン歯―、又は世界」(講談社文庫)

お互いに顔をあわせる。そこで顔はわかったように思うのだが、少しすると、耳は目はどうだったのだろうとなんとなく印象がぼんやりとしてきてしまう。その点、奥歯ははっきりしている。
 そう奥歯こそ私である。奥歯こそ人間そのものである。だから、恋人だと思っている青木に手紙を書いて、出会ったら、私は私自身である奥歯を青木にみせる。それで、青木が私を恋しているのなら、口をおおきくあけて奥歯をみせてくれ。そして、私の口に顔さら入ってきてくれ。そしたら舌で青木をのせて、愛しあうのだ。

 青木がまったく私を相手にしない。それでも青木が好きだから、青木のアパートにゆく。奥歯をみせあうどころか、青木にはこんなやつ知らないと言われるし、見知らぬ女が青木といて、木っ端みじんにののしられ馬鹿にされる。
 そしてショックで、次の日歯医者にゆき、私自身である、思い出も、言葉も、感情もすべてが入っている奥歯をそれも麻酔無しで抜いてもらう。

 そのとき、奥歯が発する言葉や、青木となど何もなく、中学生のころこっぴどくいじめられた記憶がほとばしり出る。それが、強烈で、さらに悲しく切ない。

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| 古本読書日記 | 06:19 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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白石一文   「快挙」(新潮文庫)

凄い小説だった。これは白石がたどってきた道を描いているのだろうか。それとも全くの創作なのだろうか。一人の主人公である作家が誕生するまでの、助走、苦悩の時代を丹念に描く。

 主人公の俊彦は大学時代に撮った写真が賞をとり、その後写真家を目指すが、まったく鳴かず飛ばず。そんなとき小料理屋のみすみと知り合い同棲。妊娠したため周囲に大反対されながら結婚をする。みすみは高校時代ヤンキーで、卒業と同時に上京。水商売を転々として小料理屋を持つまでに至る。
 俊彦は写真家では見込みが無かったが、写真誌に載せた文章が文芸誌の編集長の目に留まり、小説に挑戦。書き直しを繰り返した挙げ句、最初の小説は編集長に却下されてしまう。しかしその編集長に励まされ、2作目に挑戦。もうすこしで目がでるかもしれないというところで、編集長が異動してしまいボツ。

ショックを受け落ち込むと、今度は、結核を患い7か月間の療養所生活を余儀なくされる。そこから阪神大震災がおこり、みすみの神戸の実家である酒屋が半倒壊。その実家を支援するためにみすみの実家にころがりこむ。

 ここからみすみと俊彦の関係が壊れてゆく。偶然俊彦はみすみの浮気を知る。絶望の淵に追い込まれたそのとき、みすみと2人で行った、須磨寺の三好兵六という俳人の句碑にであう。
この場面が、作品での最高の場面。
 「夫婦とは 何とよいもの 向かい風」
俊彦とみすみが俳句の意味を語り合う。その意味が、苦難の時代に常に底辺に横たわる。そして次々襲ってくる苦難の都度句の解釈が変わり重みを増す。この解釈の変遷してゆく過程の描写が素晴らしい。

 そして最後の苦難、みすみが乳がんにかかり手術をするが、それが転移した。そこでみすみが死んでしまうのではあまりにも切ないと読んでゆくと、最後に誤診とわかる。
 苦難、苦難。しかし、その苦難を乗り越えたとき、三好兵六の句はずしりと俊彦、みすみ夫婦だけでなく、読者に響く。もう一度句をかみしめる。
 「夫婦とは 何とよいもの 向かい風」

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| 古本読書日記 | 06:40 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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佐伯一麦  「還れぬ家」(新潮文庫)

佐伯の今を描いた自伝的小説である。
父親がアルツハイマーとなり、その病状進捗と母親の父の世話、その母も老いて病気がちになってゆく苦しい老々介護の実情と、それに対する息子たち佐伯夫婦の介護支援を描く。

 実はあまりにも内容に違和感があり3分の2の時点で放りなげた。
 まず、扱っている介護は佐伯一家独特のものではなく、今はいたるところにある事象。世の中にある事象に比し佐伯家の今被っている事象が特に辛いというものは何も無い。それを、殊更、佐伯家独特の悩みのように作者佐伯が思っているところが世の中を知らなすぎと思って嫌になった。しかも、両親を佐伯の家に引取ってもよいし、親はかって下宿人を置いたほどの大きな家に住んでいるので、そちらに佐伯夫婦が移住すれば、物事は殆ど解決する。つまり、両親や佐伯家には不自由は多少あるが、一般の同じような苦難を抱えている人たちより状況はかなり恵まれている。

 佐伯のナルシストぶりが鼻につきすぎ。大変だ辛いと佐伯は随所で自分を描くが、全く介護や現状打破に役に立っていない。すべてを妻に押し付けているだけ。ひたすら佐伯は嘆くだけ。両親は佐伯の両親であり、妻とは直接関係が無い。
 それで、俺ほど切ない人間はいないと言うばかりだから、がっくりする。

最後はどうなるか知らないので、ハッピーな結果になっているのだったらごめんなさい。

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| 日記 | 06:17 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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