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2015年09月 | ARCHIVE-SELECT | 2015年11月

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又吉直樹   「第2図書係補佐」(幻冬舎よしもと文庫)

この本は素晴らしい。

平成23年の出版である。ということは、又吉がまだ小説を書こうとする以前のことが描かれている。芥川賞をとった後に同じような本をだしても、書く方もある裃を着るだろうし、読者も賞という眼鏡を通して読む。しかしこの本には素の又吉がいる。
 この本には、又吉が読んで感動し、思い出のたくさんこもった作品の感想が掲載されている。貧乏で腹が減ったのをわすれるために読んだ本がならべてある。こういうときに読んだ本は、ご飯とおなじで、ちゃんと心の栄養にになって又吉に根付いている。
 だから、偉そうな名作が殆どはいっていない。そして、何よりうれしいのは、同じ時代たくさんの本を読んできた私と、殆どの作品がかぶっている。

  青春時代、古本屋めぐりをする。そのときの又吉のつぶやく言葉が心に張り付き離れない。
芥川賞をとった「火花」は、又吉のこの当時と同様な貧乏な私にはまだ買えない。文庫になりそれが中古になるまでの長い期間を待たねばならない。でも、待ち遠しい。

 「そして古本屋を再びまわり、・・・・新たな宇宙を発見すべく背表紙を追い続ける。空腹と退屈を凌ぐ活動が、いつのまにか重要な生きる糧となっていた。何物にも代えがたい本を買って読むという行為を発見できた僕は幸運だ。」

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朝井まかて   「恋歌」(講談社文庫)

朝井の直木賞受賞作。樋口一葉の師匠として有名で、萩の舎を開いた女流歌人中島歌子の波乱に富んだ半生を描く。

 尊王攘夷という思想は水戸藩から生まれた。その思想に従い、佐幕派の井伊直弼を殺害した「桜田門外の変」は有名。その水戸藩、幕末は藩内が天狗党と諸生党の二つに割れ、幕末の大乱のときには、内乱で藩は乱れ、国家建設に貢献することはなかった。

 この小説を読むと、薩長から、綺羅星のごとく明治維新で活躍した人材を輩出し、その人材により維新がなしとげられたように普通は語られるが、その源は人材というよりお金の力なのだと思ってしまう。
 薩摩藩も長州藩も、幕府の統制がきかなくなったとき、英国や近隣諸国と交易を成し、莫大なお金を稼いだ。その、お金を湯水のごとく使い、幕府を倒し、明治政府での権力を握った。

 当時幕府も金がなくピーピーしていた。水戸藩は驚いたのだが、通常殆どの藩が年貢は4分6分だったのに、逆に6分4分だった。質素倹約を藩是としていたが、農民庶民は大変な窮乏を強いられていた。今世界で内乱が起こる国は貧乏国だ。金がない藩が国の変革に関わることはできない。
 もうひとつ、この作品でどきっとしたのは、主人公の歌子が天狗党反乱を起こした夫の妻子として牢獄に他の反乱者とともに投獄されて、その投獄者が次々殺されていくところ。

 「牢番と首切役人は昨夜の女郎どうであったなどと耳をおおいたくなるような話の合間に入牢舎の躰を引き据え長刀を振り下ろす。」

 人殺しが、工場の機械作業のようになっている。ここを想像で書いた朝井に脅威を覚える。

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| 古本読書日記 | 06:41 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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角田光代   「空の拳」(下)(文春文庫)

角田光代   「空の拳」(下)(文春文庫)
 ボクシングをテレビで見なくなって久しい。この作品を読んで驚いたのは、鉄槌ジムで最強ボクサー立花がリングに登場するとき、華々しい音楽とともに、ゾンビの仮面をつけてくることだ。今、ボクシングの演出は相当昔と変わった。
 何かで読んだが、ボクシングは日本チャンピオンになっても、スポンサーがつかなければ、アルバイトをしないと生活できないようだ。
 野球やサッカーでは、それほどたいした選手でもないのに、サラリーマンが一生かかってももらえないような金をもらえる選手がごろごろいる。しかも、活躍してもしなくても一旦上がった年俸はなかなか下がらない。
 ボクシングは、殴り合いである。野球やサッカーに比べ、大けがの危険は大きく、場合によれば生命を無くすこともあり得る。それなのに、収入は少ないし、一旦負けると、収入はガクンと減り生活が困難になる。
 だから、試合以前に、選手の虚像を創り上げ、ゾンビの面をかぶってリングへ登場なんてことをする。選手は、ボクシングを続ける限り、試合以前に全く自分と異なる自分をずっと演じなければならない。
 ボクシング人生は切なく悲しい。角田のこの作品は、その切なさを抉り出す。

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| 古本読書日記 | 12:05 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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角田光代   「空の拳」(上)(文春文庫)

ボクシング小説と謳っている。だから沢木耕太郎のように奈落に堕ちてゆくか、百田のように栄光に向っていくのか、どちらにしても、汗臭いボクシング道の物語かと思って手に取ったら少し趣きが違う。
 本の感想は下巻を読み終わってからするが、どきっと胸に刺さったところを記しておく。

鉄槌ジムに属していた中神は、母がダイエットで通っていたジムに幼いころから連れられて行ってその流れで鉄槌ジムに通いだした。10年以上通い続けて、中神はプロテストに合格し、いよいよボクサーとしてのデビューを迎えた。最初は4ラウンド戦からスタートする。中神はボクシングが大好き。心より愛している。真面目で人柄も愛されているゆえ、トレーナーの有田も何とか中神を勝たせようと考える。

 実は中神の相手の越智は、アマチュアボクシング出身で強敵。しかも越智はアマチュア時代、倒した相手がその強烈パンチで亡くなっていたという経験をしている。
 越智に打たれっぱなしで、もう無理という状態で3ラウンドが終了。4ラウンドに向うそのとき、セコンドにいた有田が指示する。
 越智に一言「人殺し」と言えと。
中神は茫然として、そのままパンチを食らい倒れる。

 下巻でも中神はボクシングを続けるのだろうか。

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白河三兔   「ケシゴムは嘘を消せない」(講談社文庫)

 尊敬する書評家北上次郎がえらく力をこめて面白いと推薦していたので手に取ってみた。
 面白いし、作者の意図も十分に伝わってくる。
 プラシーボ効果というのがある。やかんにお茶をちんちんに沸かす。その音が聞こえる。こんな状態で目隠しされた人に水をかけると、熱いといって逃げる。見えないものを心というか脳が想像してしまうのだ。
 姿形は見えても、心までは見えない。だから、人間は相手の心を色々と想像する。良くも悪くも、見えないことは不安ではあるが、想像をすることはとても面白い。

 逆に姿かたちがみえない透明人間が現れ、その心だけが見えたら対人関係はどうなるのだろう。
 そんなことを思いながら、この作品を読むと、実に味わい深くなる。

 それにしても、丸の内から牛のオブジェ70匹が消失したり、それが一夜に復活したり、透明人間が妊娠するが、お腹の子が見えたり、実に発想が面白く、読んでいて楽しい。

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| 古本読書日記 | 11:06 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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中上健次   「十九歳のジェイコブ」(角川文庫)

 この作品は1986年出版された。中上は、「水の女」「化粧」くらいまでは凄かったが、その後は停滞していた。停滞に入ってから、ずいぶんたってこの作品は書かれている。

 中上の作品の根底にあるのが路地。その路地に集まっている家は、被差別部落。そこでの動物と同じような、本能むきだしの生活、人間模様の描くことが中上の特徴だった。
 その路地が、開発により破壊され、路地部落の人々は高度成長社会のなかに放りだされた。この放りだされるまでを描いている時は、中上の筆はさえにさえた。でも、描き切ったところで、中上文学は終わったように思える。

 放り出された人々のその後が書けなかった。この作品は、それに挑戦している。
しかし、主人公をジェイコブとするなど登場人物名をカナ文字にしたところに彼の苦悩がある。熊野の土着性の生業を描いてきたのに、カナ文字は中上の本質からかけはなれている。しかも、安直に物語の背景にジャズを差し挟んで内容の薄さをごまかそうとしている。それでも、そこから新しい視野が開けるのかと思って読み進んだが、やっぱり最後は紀伊の本能生活回想に戻ってしまった。

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はなこ記念日

9回目のはなこ記念日でした!

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ワタシは元気だよ(byはなこ)

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池井戸潤    「銀行仕置人」(双葉文庫)

 池井戸の作品は、善悪がはっきりしていて痛快である。そして、問題をうやむやで終わらせず、最後行き着くところまで行き、悪を完全にたたきのめすところが面白い。

 現実にはありえないと思うが、銀行員は肩書があがると、社会的にちやほやされ、元来、いいところの大学などでているので、鼻も天狗になり、黒い手引きには弱いのかもしれない。
 ちょっと油断すると、この作品のようにいかがわしい闇金融の男が、コンサルタントなどと称して、銀行員に近付き、どん底に行員を落とし込む口をあけ、手ぐすね引いて待っている。
 未公開株などをもらい、見返りに絶対返済されないようなお金の融資を強要される。それが最初は金額が小さくても、悪さをしているから次々の融資要請に応じてしまう。もう引き返すことができない。

 オレオレ詐欺で引っかかる年寄りよりも、ちょっと天狗になっている鼻をなでてあげるだけで、詐欺にひっかかるエリート行員のほうが詐欺師は騙しやすいのかもしれない。

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大沢在昌    「新宿鮫 Ⅳ 無間人形」(光文社文庫)

 私の住んでいる市にも、市を牛耳っていると言われている一族がいる。前の市長はその一族からでていた。今の市長も、一族の意向ででてきている。一族は商社、運送、建設、農業関連の企業を経営している。更に、唯一この市にある暴力団も勢力下においている。こういう一族は、県や国の政界や警察などもこの作品にあるようにコントロール下においているのだろう。

 この作品、ある地方都市を完全に収めている香川一族、何かと香川本家に忠誠を誓わされている、分家の香川兄弟が、その囲いから飛び出そうとして滅んでいく姿を描く。

 兄弟は、まだ日本には殆どで廻っていないキャンディという名の麻薬の主成分を韓国よりとりよせ、それを自分たちの所有しているクルーザー内で加工して麻薬に変え、東京で売りさばく。その商売により、膨大な利益をあげ、香川家からの独立をはかる。
 その新しい麻薬をめぐり、販売ルート破戒のため、鮫島警部、麻薬取締官、更に販売を分捕ろうとして地元やくざやヤクザ崩れが暗闘する姿を描く。

 相変わらず、後半の兄弟間の緊張。鮫島が拉致された自分の恋人を救い出すところは迫力満点。
 ただこの話、分家が潰されただけで、本家には何ら影響を及ぼさず、地方都市に君臨を続ける。
いつか、大沢の手によって、君臨権力を木端微塵にする作品が書かれることを期待したい。

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大沢在昌    「新宿鮫X 絆回廊」(光文社)

新宿鮫シリーズは12作ある。この作品は10作目。一作目が面白いが、もっと面白いのがこの十作目と、書評家北上次郎がいうので、中をとばして一気に十作目を読んでみた。
 北上の評価するように、この十作目は面白かった。

しかし、吃驚したのは、主人公「新宿鮫」こと鮫島刑事が唯一警察組織の中で自分の理解者であり、鮫島が組織内や捜査中に逆境にさらされると、陰日向で支えた桃井課長が殺され死んでしまうことである。更に、刑事である前に人間であるという鮫島が、その人間としての存在の証になっていた恋人でロックシンガーの晶が、覚せい剤事件に巻き込まれ、2人が別離せざるを得なくなる。とんでもない衝撃である。
 これで11作、12作はどんな話を大沢は用意したのだろう。

それにしても面白く、興奮したのは、鮫島を殺そうとしている中国人の永昌、鮫島、鮫島の上司桃井を殺そうと22年間服役後出所してきた樫原(実は樫原は永昌の父親)、樫原をずっと恋していたノンケ(ホモ)の笠置が、運命の偶然に導かれ、笠置のゲイバー「松毬」に集結してくるところの過程の描写が見事で、4人が集合して一体どうなるのだろうと心臓がパクパクしながら、興奮して結末を迎えた。結末ももちろん凄かったが、本当に結末に至るまでの恐怖の盛り上げ方の凄さは尋常ではない。

 北上次郎が傑作ということがよくわかった。

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長野まゆみ   「賢治先生」(河出文庫)

そうそう、「銀河鉄道の夜」も先生が天の川の質問をして、ジョバンニと次のカンパネルラが答えられないところから始まる。
 それが少し心に引っかかっているのかもしれない。この物語では、逆に賢治先生がいつのまにか列車で隣の席に座ったカンパネッラ(ネルラではない)に、あれこれ質問されて、答えられないところから始まる。活版印刷の工場でアルバイトをしているジョヴァンナ(ジョバンニではない)も登場して、賢治先生と鉄道の旅をする。
 問は、小さな身の回りのことから始まって最後は大きな問になる。.

 「空が卵だったら、何がうまれてくるのだらうかと問ふ。
  金だの銀など降ってくる。
  それとも瞼を閉じた若者が落っこちてくるかもしれない。
  ・・・・・
  ああ そうだ。
  螺旋階段をつけておかう。
  屹度、役にたつ。

  空が卵だったら、何がうまれてくるのだらうかと問ふ。
  そんな宿題がでたなら
  ぼくはいつもといてみせるのに・・・・」

この長野さんが創った詩が賢治の作品と共鳴して、私の想像をぐいぐい膨らます。そしてぞっと何故か耳に残る。

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大沢在昌    「新宿鮫」(光文社文庫)

 大好きな書評家に北上次郎がいる。
ハードボイルド小説の中で一押しが、大沢の「新宿鮫」シリーズだと言っている。私も幾つか大沢の作品を読んだが、どうにも内容が薄く、特に仕掛けをでかくすれば、滑稽なほど現実味がなくなり馬鹿らしくて投げ出す。一方、やたら情緒的で湿っぽくなる小説もある。

 でも、北上がこの新宿鮫で大沢は変貌をとげたと、この作品を絶賛していた。新宿鮫は12冊でているが、全部が面白いわけでなく、北上は4冊をあげていた。その中でも第一冊目のこの作品を絶賛。北上が絶賛するわけだから面白いのだろうと思い、手に取った。

 主人公の鮫島の人物造形は確かに面白い。鮫島は、公安警察の暗部を知り、警察組織を破壊できる秘密を持つ。警察は馘にしたいけど、恐ろしくてできない。だから、新宿署の防犯課などというちんけなところで飼い殺しをする。この警察の弱みを握っているところが常に物語に緊張感を醸し出している。
 しかも、鮫島の人間模様を仕事については上司の桃井警部が映し出し、私的な部分は、14歳年下の晶というロックシンガーが映し出す手法も上手い。木津という拳銃密造者の人物造形も見事。

 ただ、大向こうを張ったわりに、事件の結末が少ししょぼかったのが残念。
どうも第一巻は、物語というより、登場人物の紹介という色彩が強い。

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長野まゆみ   「兄弟天気図」(河出文庫)

 パソコンをやれなかったり敬遠する人たちがいる。70歳を超えた人たちに多い。それも男に多い。女性は適応力が豊かで、パソコン教室などに通い覚えてくる。

 パソコンをやらない、携帯電話は持つがやれるのは電話機能だけでネットは知らないという老人たちは完全に人としての存在を無くしている。老人が捨てられる時代だ。老人が、若者たちに誇れること、尊敬されることが無い時代になった。一方、老人たちの知識量に比し若者達の知識が大量で、老人たちが教えることなど殆どない。完全にパソコンや携帯が断絶を作った。

 私たちの子供のころは、老人の数も少なかったこともあるが、老人は尊敬されていた。それは、子供たちができないこと、知らないことを、手品のように鮮やかにやってみせたり、教えてくれた。

 この作品集にもある。
「突然」の「突」の字は、昔は大ではなく犬だった。穴から犬が飛び出て、吃驚することから字ができているのだ。俗説かもしれないが、こんな話を老人たちが穏やかに話してくれた。

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佐藤正午「きみは誤解している」

2冊目が、「きみは誤解している」。爺やの感想は、これ
先の記事でちょっと書きましたが、色川武大(阿佐田哲也)氏の人生経験は作品にコクを与えているらしいです。
私は読んだことありませんが(^▽^;)

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彼が登場(?)するのが、「遠くへ」という短編。
ある女性が「まともな競輪ファンとして目覚めたきっかけは、競輪場である人物に出会ったこと。その人と話したことで、私の人生が変わった」と思い出話をするんですね。
額が禿げ上がり、残った髪は白髪交じりの長髪で、ずんぐりむっくりという言葉を連想させる体つきの老人だったそうな。
(いねむり先生の表紙のシルエットだと、左側のほうでしょうね)
彼女は、老人が姿を消した後で、雑誌を見て「あのおじさん、阿佐田哲也そっくりだった。競輪の神様と呼ばれている人だったんだ」と気づく。
話の聞き手が、「彼女も気づいていることだろうが、彼女がその老人に出会った3年も前に、阿佐田氏は亡くなっている」と、読者に対して親切に説明してくれて、おしまい。
で、読み終えた私は、「じゃあ、彼女の会った老人は、故阿佐田氏の熱烈なファンで、髪型や眠り方や薀蓄を真似ていたんだな。でも、彼女は『神様に出会って人生が変わった』と思っているから、それでいいってことなんだな」と思った。
あとがきによると、「異色の怪談文学(ジェントル・ゴースト・ストーリー)」だそうです。
……幽霊が迷える新米ギャンブラーにアドバイスしてくれたという方が、いい話ですね。心が汚れているのかもしれないw

表題作では、「世界には三種類の人間しかいない―ギャンブルをする男としない男、そしてギャンブルをする男をたしなめる女」というくだりがあります。
収録されている最後の作品には、お金を預けたのに車券を買ってくれなかった彼氏を臆病者と罵り、五万円を百万円に増やした別の男へ乗り換える女性が出てきます。
他の話には、女性ギャンブラーも出てきます。競輪がテーマなんですが、似た話は一つもなく、結構楽しめました。

巻末に用語解説があります。
「ここで説明した競輪用語のほかにまだわかりにくい言葉が見つかったら、それは作者のせい、競輪自体のわかりにくさのせいではなく、読者の日本語の基本語彙に問題があると思われます。広辞苑を引いてください」
としめているのは余計なひと言だと思います。
ただ、確かに、知らなくてもなんとなく雰囲気がわかるよう、うまく書かれていると思います。
あ、「好きな数字の1と3と7を選んで、枠番車券で1-3と1-5と3-5を二百円ずつ買った」という文章を読んで、「どこに7が出てくるんだ? なぜ5?」とは思いました。

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伊集院静 「宙ぶらん」

2週間ぶりの更新です。
8月は17冊。9月は13冊。10月は今日時点で6冊と、秋なのに読書量が低下中。
寒くなると、眠くなるしいろいろ億劫なんですよ。
さっきも、爺やの感想で気になった「小説論」を読もうと試み、途中で眠ってしまいました。
人生経験や想像力を求めるというより、教養(知識量)やセンスを求めている本に対しては、負けを認める(-_-;)

さて、この数日で読了したのがこの2冊。
断っておきますが、私にギャンブルの趣味はありません。パソコンでも無課金のゲームしかしない。

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まず、「宙ぶらん」。爺やの感想はこちら
先日の「悪の読書術」には、
「色川武大の作品には、人間の情や憎悪の襞といったものを感じる。伊集院静氏のように、凄みをうかがわせつつ、それを意識的に隠している、隠すことで一般読者を逃がさないというしたたかな人もいる」
てなことが書いてありました。
「宙ぶらん」のあとがきは桐野夏生さんで、「野蛮に動揺するしなやかな心を、未舗装路の土埃にまみれた外套で覆っているようなところがある」と書いています。
収録作は、ちょっと暗くてきれいな話が多いです。
一般読者を逃さないよう、抵抗されそうな野蛮な部分は加減しているってことですかね。

短編として1つ1つまとまっていますが、桐野さんが褒めている「羽」は、私としては微妙でした。
「釧路湿原で腐乱死体になった友人の葬式に行ってきた。他殺か自殺かはっきりせず、遺体はまだ検分中なのに、家族はもう葬式を行った。なぜそんなに急ぐのだろう? 遺体は本人なのか?」という出だしなんですが、
語り手が「今飲み屋でそばに座っている男は、子供のころであったある男に似ている」と回想を始め、早すぎる葬式の真相には触れないまま話が終わります。
トーンが一定というか、話はつながっているというか、別に悪くはないんだけれども、疑惑の腐乱死体なんて刺激の強いものが最初に来るから……ねぇ。
サスペンスを求めて読む作家ではないと思いますが。

どれが好きかと言えば、「魔術師・ガラ」です。今から、弱小球団の奇跡の連勝が始まるぜ!!というちょっと不思議な話。

長くなったので緑の写真を。
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ダイソーで買った観葉植物の成長ぶり。

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長野まゆみ   「夏至祭」(河出文庫)

昨日まで、秋祭りが私の街で行われた。もちろん、屋台や露店がでた。でも、何か昔と違う。
殆どは、イカ焼きやたこ焼き、綿菓子など飲み食いの店。たまにヨーヨーや金魚すくいの店はあるが、昔のように風来坊のようなおじさんがやっているのでなく、近くの住民がボランティアでやっていたり、労働組合の活動としてやっている。アセチレンの灯りでなく、すべてが電球か蛍光灯になっている。

 私の田舎の村でも夏祭りがあった。神社の参道には露店がたった。もちろん、イカ焼きなど食べ物を売る店も少しはあった。
 でも、主流は、ブリキのおもちゃ。セルロイドの仮面や、刀、バットにボール。ブリキのおもちゃ。ぬり絵に豆本。めんこにプロマイド。三角柱の万華鏡。
 小銭をにぎりしめ、ちょっと怖そうなおじさんの売り込みの掛け声のなかわくわくしながら歩いた。

 この作品のように、確かにその時時間は止まっていた、止っていてほしいと願っていた。
しかし、夏祭りが終わると、また時間は動き出し、次の夏祭りの日を指折り数える日々が始まった。

 そんな遠く過ぎ去った子供の頃をこの作品を読みながら思い出した。

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長野まゆみ   「新学期」(河出文庫)

学生時代、新学期は何度迎えるだろう。高校までの12年間は、三学期まであるから36回。大学は前期、後期だから8回。44回の新学期を私たちは普通経験している。
 新しい学期は、長期の休暇の後にやってくる。春、夏、冬休みの後だ。新しい学期が始まる日は、普通の日と違いやはりフレッシュで特別だ。そして新学期によくやってくるのが転校生。たった一人迎えるだけなのに、皆少し興奮してクラスの雰囲気が変わる。
 まだ恋が始まる前の中学生のころは、異性ではなく同性のクラスメイトに淡い恋情を覚える。少しの嫉妬や、夢見心地が生まれる。そこに、よく転校生が絡まる。
 友達より少し熱い心を傾けている大事な人が病気がちだと、尚のこと物語は鮮やかになる。

椋(名前)が病弱な密(名前)が病気療養のため遠くの療養所に向かう。雪降る駅での長野の描写が素晴らしい。

 「椋は、いきなり密になぐりかかろうとして、そのまま抱きしめた。ふりあげた腕をそのまま密の肩にまわし、きつくつかんでいる。」

 こういう場面は少年同士しかありえない。

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冲方丁     「もらい泣き」(集英社文庫)

父は教師、だから厳しく娘に接した。何しろ父はパジャマにアイロンを常にかける人だった。家のなかはいつも緊張の糸がはりつめていて、娘には息苦しい日々の連続だった。だから、父を心底嫌った。口もまともに聞けなかった。何をしても、 「おまえはきちんとしない。」「なぜきちんとできないんだ。」ときつく叱られた。
 そんな家がいやで、高校を終えると、家を飛び出した。演技の道に進もうとした。それが上手くはいかなかったが、今はバンドをマネイジする会社を起こし、自由に楽しく仕事をしている。
 何年かして、家に帰った。父と接触したくなかったので、泊まっていけという母の言葉をさえぎって家をでようとしたところに、普段は残業で帰宅が遅い父が帰ってきた。ぎこちない会話のあと、「仕事があるから帰る」というと、父が「腹が減るだろうからこれもってけ」と包みを渡してくれる。
 アパートについて包みをあける。シュークリームが3つ。父は母と娘と3人で食べるつもりで買ってきたことを知る。娘が久しぶりで帰ってくるので、早く帰宅したことを知る。

 厳しく無口な父のこの上ない暖かさが伝わってくる作品である。

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長野まゆみ   「銀木犀」(河出文庫)

銀木犀という木は、よく金木犀の隣に植えてあることが多いそうだ。
ちょうど今くらいの季節、外へでると金木犀の強い香りが鼻につく。銀木犀も優しい
香りがあるそうだが、金木犀に隠れて全くその存在が消えてしまっている。金木犀と銀木犀は相性が悪い。決して両者で交配することはない。銀木犀は、他の木と交配して生き延び繁殖する。銀木犀は目立たないけどしぶといのだ。
 
この作品を読むと、木の持つ強さ、しぶとさを感じる。人間が生まれるずっと昔から木は存在していた。多分、人間が滅亡しても木は残るだろう。人間が木を伐採し、そこに近代的な街を作っても、それでも地球上には人間の数より木のほうが圧倒的に多い。
地球が砂漠化する。木も絶滅する。しかし、また一雨、一雨が降り出すと、木は根をはり地球上に顔をだす。しかし、絶滅した人間は決して地球上には現れない。

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誉田哲也    「幸せの条件」(中公文庫)

誉田の新たなる境地、農業をベースにしたお仕事小説。
物語もそれなりに面白いが、私が昔から疑問と怒りをもっていたことを、この物語で「あぐもぐ」という農業法人を経営している茂樹という社長が言っているので紹介したい。

 「今まで話は、実はすべてカロリーベースの話だ。ごく簡単に言うと、国内に流通したカロリーのうち、消費されたものの何割が国産だったのか、というのを示すのが食料自給率だ。よって、カロリーの低い野菜はほとんど、この食料自給率にはカウントされない。
 野菜だって量を食べれば、腹はいっぱいになる。栄養だってとれる。
 ・・・・・
 野菜は長らく食料自給率から無視されているわけだ。
 さらに言うと、日本の国内農業生産額はおよそ八兆円ある。これは一位中国、二位アメリカ、三位インド、四位のブラジルに次いで世界第五位である。
 アメリカの国内生産額が約十七兆円。日本の生産額はその四十七%ということになるが、そもそも日本の人口はアメリカの四割しかいない。つまり、四割の人口で四七%の農業生産額をたたきだしているわけだ。人口比率でいったらアメリカ以上といっていい。どうだ
 大した農業大国だと思わないか。しかも国土はアメリカの二十五分の一だ。」

カロリー計算での食料自給率産出は、肉や乳製品などの輸入が多くてカロリーが高い製品で輸入量を高くしようと意図するためにやっている。即ち、日本の農業の危機を声高に叫び、補助金や予算をたくさん分捕ろうとするためのまやかしなのである。
まず、何よりも日本は農業大国であることを認識すべき。さらに、食料廃棄量を減らせば日本では、一〇〇%国内生産品で食料がまかなえるととなえる学者もいる。

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長野まゆみ    「野ばら」(河出文庫)

夢は他の人は知らないが、自然の摂理に従って夜中にみる夢は、過去や現在の写し絵のようなものが多くリアリティがある。
 ところが、昼よだれをたらしながら微睡みのなかで見る夢は、いつもファンタジーの世界で、冒険をしていたりチャンバラでもしているような夢ばかりになる。
 この作品は、そんな昼の微睡みのなかで見る夢を描いているように感じる。しかも、夢かと思って目覚めるとそこがまた夢の世界で。

 主人公は学校にいる。学校を囲んでいる大きくのびた野ばらの生垣を突っ切ると、不思議な夢の世界からでられる。少年なのか猫なのかわからないが銀色(名前)が抜けでようとしたが失敗する。でも、主人公の少年は抜け出ることに成功して自転車で自宅へ走る。そこがまたファンタジーの世界。何故か、彼の家と学校はおなじ作りで大きな野ばらの生垣に囲まれているから。

 ひょっとすると、私たちも夜寝入りはなは、ファンタジーな夢をみているのかもしれない。忘れているだけだ。野ばらの白い花びらが雪のように降り注ぐ。そしてすべてが白いはなびらに埋もれる。こんなところで作品は終わる。
 読者に「おやすみなさい」と言っているような終わり方だ。

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| 古本読書日記 | 12:36 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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天童荒太   「歓喜の仔」(下)(幻冬舎)

人間はどんなに絶望の場所に堕ちても、自ら死ぬことを選択実施する人はまれだ。とにかく生き続ける。本能なのかもしれない。生き続けるための条件。それはたとえ他人も絶望にあっても、繋がること。絶望同士がつながっても、互いが支えあえれば生きることができる。
生きていても、いいことは訪れないかもしれない。でも、繋がっていれば、思いっきり泣いたり笑ったりすることができる。

 それから、「永遠の仔」で不幸家庭に生まれ育った主人公の少年少女3人が生き続けることができたのは、自分が楽しい家庭の一員になっていることを想像しながら暮らすこと。
 この物語でも、兄妹たちは同じような環境にいる、内戦の国のリートを想像し創り上げ、何があっても屈することのないしたたかな強い少年リートとともに生きることで彼らは生き抜く。
 最初はリートの頑張り、戦いと主人公の兄弟たちの生き様は別々に語られるが、後半にゆくに従って、リートと主人公たちの話が重なり合ってくる。

 主人公たちのような絶望の淵にいる少年少女は日本ではまれ。しかし、世界に目を転じればきっと億人の子供たちが絶望と一緒に暮らしている。
 最初は違和感を感じた、末っ子の香が通う殆どが不法移民やどん底暮らしをしている外国人ばかりの幼稚園は、世界の今の縮図なのだとわかり納得できた。

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| 古本読書日記 | 18:57 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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天童荒太   「歓喜の仔」(上)(幻冬舎)

絶望の淵にはまりこんだ、悲しい兄妹3人がこの物語の主人公。
母親愛子は夫が家をでた後すぐ倒れ、今は植物人間に近い状態で、寝たきり。父の背負った大きな借金の返済という口実の元、高校を中退して、朝から晩まで組織に働かされる長男誠。
殆どの仕事はただ働き。更に覚醒剤を紙に入れ包む危険な仕事もさせられている。
 小学6年の正二は、母の床ずれを防ぐため、二時間おきに学校をぬけでて、寝返りを手伝ったり、下の世話をしてやる。

 幼稚園に通う香。幼稚園といっても、不法滞在をしている外国の子供を中心に通っている施設のようなところ。
 絶望の世界で必死に生活している母と3人のこどもたち。上巻では、子供たちの母と父の
来歴を描き、どうしてこんな悲惨な生活に至ったかを中心に物語は展開する。

 印象は、ちょっと子供たちの環境が特殊すぎ、素直に物語を受け入れられない。
世の中は勝ち組、負け組に分類され、負け組の家族は、いつでもこんな状態に陥ってしまうように物語は思わせるが、勝ち組にも不幸はあるし、負け組だからと言っても、ここまではならない、かなりありえない物語だ。

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| 日記 | 18:51 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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重松清    「空より高く」(中公文庫)

重松を始めて読んだのが「見張り等からずっと」。そこから直木賞をとる「ビタミンF」までは、重松が抱える悩みや問題が色濃く反映して、そこに共感もできたので、片端から重松の本を読んだ。

 重松が生まれたのは1963年。重松が小学生になったころは、ニューファミリーの時代で、この作品でもでてくるが、大型マンション建設や宅地造成が大規模に行われ、それらがどこもかしこもニュータウン何某と命名された。ニュータウンはできた当時は綺麗で輝いていた。

 ニュータウンは、当然だが同じ世代の夫婦、家族が集まる。ということは、年月をかけ、ニュータウンは老衰してゆく。ニュータウンで生まれ育った子供たちは、成人して両親とはなれた住居に暮らす。そうなると、ニュータウンは老人ばかりになったり、空家ばかりが目立つさびれた街に変わる。
 それとともに、ネットや携帯が進化し、ニュータウンで固まって遊び生活していた人たちの生活様式がバラバラになり価値も多種多様にバラけた。
 重松は、そこに空しさと寂しさを感じ、それをどうにかしたいという思いがあり、作家になった。しかし、この問題悩みの解決は難しい。だから、重松の作品はいつも揺らいでいた。

 どこからだろう。重松が流行作家になるにつれ、この作品と同じような根っこについては語るが、揺らぐことをやめた。
 絆、癒し、希望、勇気、そして得意の涙で問題をくるむようになった。内容が以前より薄くなった。
 しかし、この作品も、くるむ重松になったのだと割り切れば、それほど悪くはない。

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| 古本読書日記 | 11:45 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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長野まゆみ   「コドモノクニ」(河出文庫)

長野まゆみは私より八歳年下。私が大学生真っ盛りのころ中学生になる。
長野は東京で生まれ東京で育つ。私は信州の田舎。歳も違うから、重なる経験は殆ど無い。
それでも、エッセイのようなこの作品は、懐かしさがこみあげる。

 おしゃまで、ちょっと大人ぶってみようという少女の姿が目の前に現れる。
長野がおしゃまなころは、永井豪の「ハレンチ学園」が流行っていた。そのころはスカートめくりが流行した。今そんなことをしたら、犯罪かいじめで訴えられる。
 女の子は、ちょっぴり相手より背伸びしていることが小中学校の頃は大切のだ。読んでいる本、服装、アクセサリー、相手の子より上廻っている。それを自慢したい。
 男の子は、漫画のヒロインのようでなくてはいけない。スタイルもよく背が高く、細身で、運動も勉強もできなくては。人柄重視などありえない。

 1970年代前半の女子中学生の姿が、繊細な文章にのりはじけている。

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| 古本読書日記 | 11:43 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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天童荒太   「永遠の仔 五 言葉」(幻冬舎文庫)

 物語全体を通しての感想になる。
素晴らしい作品。もう本を読むことを止めたくなる。これからいくら本を読んでもこの作品に匹敵する作品に出合うことがないように思えるから。
 それに、今は、個々人がバラバラで多種多様の生き方が尊重され、人生を真剣に追及する小説ができにくい世の中になっていることにもある。
 天童はまず真面目である。世の中を斜に構えてみたり、皮肉っぽくみることは決してない。そして真剣に社会にたいし対峙する。その眼差しは常に強く、そしてどんな人よりも深い。
 この作品のために参考にした文献が何と125冊である。こんな作品は過去出会ったことが無い。これだけでも、真剣全身全霊を傾けていることがわかる。
 この作品の260ページ。伊島刑事に対する優希の言葉
 「ときには嘘や秘密に逃げないと、耐えきれないこともありますから。」
優希、笙一郎、梁平の3人の生き様を読んでいると、ズシンとくる。
 しかし、作者天童はさらにその先、300ページ目で優希が稜平にあてた手紙で、優希にこう言わせている。
 「真実を明かすことが、周囲を辛くさせる場合にも、秘密や嘘に逃げないこと・・・
  真実を明かしたことで起こる、いっそうの悲劇や悪でさえ、受け止めて行こうとする態
  度こそが成長とよばれるものに結びつくのかもしれません。」

それから、3人の家庭がいずれも荒んでいて、3人がいつも「想像上の楽しい家庭」を思い浮かべながら懸命に生きてきたことがなんとも切ない。

 最後に優希の父親殺しについてとんでもない真実を天童は用意していた。3人の中に犯人はいない。

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| 古本読書日記 | 12:48 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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天童荒太   「永遠の仔 四 抱擁」(幻冬舎文庫)

天童はこの四巻で少し物語の色彩を変える。

 優希の勤めている病院で、突然優希の前に岸川という上品な年かさのいった女性が現れる。そして岸川が、まるで優希の人生をみているように、殆ど同様の経験を優希に対し語る。しかも岸川の幼いときからそれは始まり、15歳まで続く。
 何でここで突然岸川などと考えてはいけない。人生には偶然がつきものなのだから。
 それでも、岸川の登場が物語に与える影響がもうひとつピンとこない

 それから、この物語は、介護、老人問題を描き出している。笙一郎の母親が若年性アルツハイマーで優希の病院に入院している。しかし、総合病院は長期の入院を受け入れない。しかもアルツハイマーは病気の進行を抑えることは多少できるが、治癒は不可能である。だから、病院はアルツハイマーの患者受け入れをやめる。笙一郎は母の入所施設を探すことになる。

 これが大変。個室完備のところなど最初の入所金が最低5000万円。億単位が相場。
更に、若年アルツハイマーは一旦入所すると他の人より入所期間が長くなる。それでは施設の運営に支障がでるため、受け入れを拒否したり躊躇する施設ばかりになる。

 全く、日本は弱い者には八方ふさがりの社会である。

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| 古本読書日記 | 12:41 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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天童荒太    「永遠の仔 三 告白」(幻冬舎文庫)

3巻目で、この物語の根源、原点が描かれる。

優希、笙一郎、梁平が何故瀬戸内の総合病院小児精神科に入院せねばならなかったか、初めて明白に読者に提示される。
 一方、姉優希の入院について疑問を持って調べていた聡志は、母親を問い詰め、とうとう母親から暗黒の真相を語らせた。衝撃を受けた聡志は母親に灯油をかけ、さらに家にばらまき、自分も死のうと決意して火を放つ。しかし、自分は死にきれず脱出、家が全焼するとともに母親も焼死させた。

 17年前の初秋、優希は雨の森に病院を脱走。それを追いかけた、笙一郎、梁平、それに優希は、雨の中で、今まで誰にも話せなかった、それぞれの家でのおぞましい体験を告白した。

 笙一郎の母親がしょっちゅう男を自宅に引っ張り込む。その度に、押入れに入れられでることを禁じられる。でたりすると、母親に強烈な折檻をされる。だから、ずっと押入れに入っている。男は1日家にいることもある。その間、押入れにはいりっぱなし。だから、小便も糞も押入れの中にする。そして、ずっとその匂いに我慢せねばならなかった。

 稜平は、母親が何かにむしゃくしゃすると、理由もなく、煙草の火を体にこすりつけられた。火傷がいっぱい体にできているので、父親はそのことを知っていた。しかし父親も母親と同じで、むしゃくしゃすると、稜平をひっぱたき、ふりまわして、あたりかまわずぶんなげた。

 そして、優希は 年がら年中、父親雄作に性的関係を強要されていた。
聡志はそれを母親から聞き出し、汚れきった家と母親に火をつけたのだ。
 どうするのだろう、3人と聡志。この出口の見えない逆境を克服して欲しいと祈るばかりだ。

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| 古本読書日記 | 12:01 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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長野まゆみ   「八月六日上々天気」(河出文庫)

この作品は、広島原爆投下とその悲劇や、特攻隊で死に向ってとんでゆく震える状況は全く描かれていないが、原爆投下と特攻隊の悲惨な事実を読者にズシンと伝えている。
 女学校に通う15歳の主人公珠紀には4歳年下で珠紀になついている四朗という従弟の少年がいる。この少年はひょろひょろの体格なのだが、兵学校を志願する。
 それから4年がたつ。
 珠紀は、その少年の先生と見合い結婚。先生は教職をやめて、兵役に服する。そして結婚一週間後には入隊する予定である。
 珠紀は夫とともに伊豆で新婚旅行を送り、その足で、夫に実家のある広島にむかう。そして、夫は入隊して、最終的に特攻隊基地鹿屋にゆく。

 15歳になった四朗が、兵学校を受けるため広島の珠紀の家にやってくる。ある夜、眠りから覚め目を珠紀があけると、夫が枕元にいた。
 「最後の別れを言いに来た」と言って朝いちばんの汽車で鹿屋に向った。夫が返ってきたことはだれも気付かなかった。

 8月6日の朝7時に従弟は、広島駅に友人とおちあうため向かった。珠紀は白玉の泡蒸しを朝と作っていた。その途中で大きな地震が起こった。そのとき突然従弟が帰ってきた。
 「お姉さんの泡蒸しを食べたい」と。そして泡蒸しを食べた途端スーっと消えていなくなった。

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| 古本読書日記 | 11:55 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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天童荒太   「永遠の仔 二 秘密」(幻冬舎文庫)

 17年ぶりに再会した時、優希は看護師、笙一郎は弁護士、梁平は刑事になっていた。3人は時々会っては友好を深めた。暮らしは3人とも安定していた。
 その3人の平穏な日々が壊れていく過程を二巻は扱う。

優希の弟聡志が、優希の秘密を探ろうと活動を始める。優希は母親を殺そうというところまで家庭で追いつめられ、あわやというところまでゆく。そして精神を病み、愛媛の総合病院に入院する。聡志には、親から姉は、喘息の治療で入院していたと言われていた。しかし、退院後も全く咳き込むことはない。しかも当時家族は山口にいたのだが、喘息を治すために何故愛媛まで行かねばならなかったのか。
 疑念を感じた聡志は、愛媛まででかけ、入院していた病院をつきとめる。しかも病気は喘息などではなく、精神病であったことを知る。そして、父親亡くなった石槌山にも登る。
 聡志は母親に何故嘘をついていたのか執拗に迫る。

子供に熱湯をかけ火傷をさせた母親がその子を車にのせ、優希が勤めている病院に駆け込む。そのとき、たまたま病院の入り口にいた聡志が子供の搬送をする。その母親が当日夜殺され、聡志に殺人の嫌疑がかけられる。そのため、警察が聡志を調べる。その過程で、笙一郎、優希、梁平が友達でつながっていることが警察に知られることになる。

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| 古本読書日記 | 12:20 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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