又吉直樹 「第2図書係補佐」(幻冬舎よしもと文庫)
平成23年の出版である。ということは、又吉がまだ小説を書こうとする以前のことが描かれている。芥川賞をとった後に同じような本をだしても、書く方もある裃を着るだろうし、読者も賞という眼鏡を通して読む。しかしこの本には素の又吉がいる。
この本には、又吉が読んで感動し、思い出のたくさんこもった作品の感想が掲載されている。貧乏で腹が減ったのをわすれるために読んだ本がならべてある。こういうときに読んだ本は、ご飯とおなじで、ちゃんと心の栄養にになって又吉に根付いている。
だから、偉そうな名作が殆どはいっていない。そして、何よりうれしいのは、同じ時代たくさんの本を読んできた私と、殆どの作品がかぶっている。
青春時代、古本屋めぐりをする。そのときの又吉のつぶやく言葉が心に張り付き離れない。
芥川賞をとった「火花」は、又吉のこの当時と同様な貧乏な私にはまだ買えない。文庫になりそれが中古になるまでの長い期間を待たねばならない。でも、待ち遠しい。
「そして古本屋を再びまわり、・・・・新たな宇宙を発見すべく背表紙を追い続ける。空腹と退屈を凌ぐ活動が、いつのまにか重要な生きる糧となっていた。何物にも代えがたい本を買って読むという行為を発見できた僕は幸運だ。」
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| 古本読書日記 | 06:43 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑