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2015年09月 | ARCHIVE-SELECT | 2015年11月

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天童荒太    「永遠の仔 一再会」(幻冬舎文庫)

5巻にわたる大長編小説。直木賞候補となった作品。同じ彼の大長編小説「家族狩り」も5巻あった。最近ではあまりない大長編を紡ぐのが天童だ。
 主人公と思われるのは3人。優希、笙一郎、梁平の3人。第一巻では、それぞれの複雑な家庭と、その中で心が病んでいく3人の姿が描かれている。
3人が小学6年生当時の1979年には、小児精神科という診療科目が認可されておらず、愛媛県にある総合病院の片隅で行われている小児精神科に3人は入院する。そして、その三人が退院直前の西日本で最も高山である霊峰石槌山登山に行き、その8合目の霧の中で優希の父親を殺す。
 そしてそのまま3人は退院して、17年後に再会するところまでが描かれている。
残り四巻。先は長い。

 この作品先に書いたように、直木賞候補になったが賞は逸した。
 多分、殆どの選者が、あまりにも長編のため、完読せず、選考に臨んだのではと想像してしまう。天童はその後「悼む人」で直木賞を受賞している。

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天童荒太   「あふれた愛」(集英社文庫)

 全部天童の作品を読んでいるわけではないが、今までの印象はすべての作品が全力投球、
息抜き、手抜きが全くない。この本は4編からなる作品集。精神的に少し脆い人たちに焦点をあて、丁寧に物語を紡ぐ。
 自然摂理の中で(浮気等の人為的行動の原因でなく)迎える夫婦の危機は、子供が生まれてその直後に起こる。ちょうどその頃、夫は会社などで最も忙しい時を迎える。また、子供は機嫌のいいときはむしゃぶりつきたいほど可愛いのだが、機嫌が優れないと最も厄介になる。
 だから多忙を理由にして、育児を避ける。妻は最も大変なとき、何も助けず、逃げる夫に強烈な不信感を覚える。じゃあ、会社を捨てて、いつも定時に帰宅し育児を手伝う夫がいいかというと、それはそれで夫は大丈夫かと不安になる。
 この壁は越えるのはかなり厳しい。近くにどちらかの両親がいればいいのだが・・。

精神的病を患って入院しているある男性と女性、入院が終わってから、2人でアパートを借りて住むことを決意する。そして6か月たってまだ共同生活が続いていたら結婚しようと決める。
 後5日で目標の六か月を迎える。その時、人生が暗転する。かなり悲しく切ない。
我々のように適当に暮らす人と異なり、総じて精神的病を抱える人は心がきれいである。
そのきれいさ故に、人生がうまくゆかない。そのピュアさが読んでいて切ない。

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綾辻行人   「緋色の囁き」(講談社文庫)

綾辻で読んだ2作目の作品。一作目がホラー小説で最も恐怖を感じる100冊の一位に選ばれていたので、ホラー作家の第一人者としてこの2冊目も手にとった。

 乱歩の作品に似ていると思った。乱歩の作品も、恐怖をそそる場面もでてくるし、奇想天外な事件もたくさん起きる。しかし、最後は必ずそのトリックが明かされるから、恐怖というより、この破天荒な現象をどう決着させるかが楽しみで読み進む。
 綾辻もホラー作家というより、推理作家だということがわかった。最後の決着がまず頭にあり、そこから事件を引き起こす。その際、必ずこいつが怪しそうという人間を配置しておく。特にこの作品では主人公の冴子が事件が起きるたびに事件の瞬間の記憶が無くなるように仕掛けられている。
 だから、冴子が怪しいぞと思わせる。ほかにも怪しい人をちらつかせる。

 こうなると読者は、凄惨な殺人過程や現場より、犯人は誰だろうと作家との戦いが始まり、ホラーがどこかに消えてしまう。
綾辻作品は推理小説として読むべきなのだ。

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綾辻行人    「殺人鬼」(新潮文庫)

綾辻行人    「殺人鬼」(新潮文庫)
ブックオフ恐怖小説ベスト100の第一位に選出された作品。
双葉山なるところにキャンプにでかけた8人が過去から言い伝えのある正体不明の殺人鬼に襲われ次々殺されていく。一人一人の殺され方が、壮絶。首をもがれたり、手首を切り落とされたり、そのシーンが恐怖を呼び起こすしかけになっている。
 しかし、作者が力をいれるほどには読者には恐怖は伝わってこない。
失敗しているのは、襲う殺人鬼が主体になって書かれている場面が多いところ。これでは、今から惨殺をしますよと宣言しているようなもので、読者も心の準備ができてしまう。こういうのは、犠牲者を主体に描いた方がよい。何となくフーッと風がふいていきなりという風に。
 ミステリー作家綾辻らしく、最後に種明かしがある。
この種明かしによって生じた惨殺を、もっとその過程で、前面にだしストーリーを作ったほうがよかった。最後に突然では、効果が薄い。

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金井美恵子   「小説論」(朝日文庫)

今の東大生の多くがドストエフスキーを知らないそうだ。

江藤淳も金井美恵子も小説家というのは「読んでから」或は「読んだから書くのだ」という。
その通りだと思う。19世紀は最も小説が輝いていた時代だった。だから、多くの大巨匠、
大作家が次々登場した。だから、江藤は小説家を志すものは19世紀の名だたる作品を読破せねばならないと言うし、それができない作家は作家ではないと論ずる。金井もかなりその傾向があるが江藤とは少し異なる。
 山田詠美が登場したとき、江藤は山田を徹底的に腐す。山田は「読まずに書いている」と。
しかし、山田はたくさんの本を読んでいるし、その読んだ作家から多くの影響を受けた作品を世に送り出した。ただ、ドストエフスキーは読んでいないかもしれない。

 山田の作品はボリスヴィアンを想起させる。更にデュラン、サガンの影響を確実に受けている。彼女たちのエキスと自らの体験を重ね合わせ見事な小説を創造している。
 江藤の御めがねにかなった作家ではないかもしれないが、山田は確実に「読んでから書いた」のである。

 まだ、文壇では、江藤の残滓が残っている。作家になるために、その作家が何をどう読んできたかはあまり関係ない。今を歩いているのだから、今の小説を読みながら時代の空気を吸って書く小説家がたくさんいても良いのだ。
 重要なことは、作家は読者がいることによって成り立つということだ。バルザックもフローベールもジョイスもドストエフスキーを読んで触発されて小説を書いても、読者が全然いないのでは作家は成り立たない。

 しかし、「読んでから書く」ことは作家のために最も肝要なことだ。
最近は「書く」ことの敷居が低くなったため読まないまま書くひとが増えたことは小説の質を著しく低下させている。

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平山夢明   「他人事」(集英社文庫)

 恐怖小説を書かせたら平山は天下一品ということを聞いて初めて平山作品を手に取った。
面白かった。恐怖というより変なユーモアもあり何となく筒井康隆の作品に似ていると感じた。この本以外も読んでみようと思う。

 主人公は、長い商社生活を全うして今日が定年退職日。専務がフロアー全員を集め、慰労の言葉と第二の人生を豊かに歩んでくれとの挨拶をもらう。そんな定年式を終わり、机の中や自分の持ち物を整理していると、前の部下から机の角をぶつけてくる。それを合図に、彼に対しての怒り、恨み、辛みがシャワーのように浴びせかけられる。もう、ここからは関係ないから思いのたけを浴びせようと。何と専務までがお前は大嫌いだったという。
 こんなにまで嫌われていたのだと現実を知り大きな衝撃を主人公は受ける。
その後、殴られ、蹴り上げられ、そして女性社員のあざけわらい。そして最後は窓から踊場に放り投げられる。

 傷だらけのまま、やっとの思いで我が家にたどりつく。妻が暖かく
「ごくろうさまでした。よく無事に帰ってきたくれました。
 今まで、私や家族を無視、馬鹿にして、私は憎悪でいっぱいです。」
と握られていた包丁で主人公は刺される。そして2日後に亡くなる。

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色川武大    「喰いたい放題」(集英社文庫)

糖尿、コレステロール値、肝臓すべてが異常値。良いのは胃腸くらい。医者に酒禁止、しょっぱいもの、甘いものは控える。加えて厳しい食事制限。体重は今より20kg減らすこと。

 このエッセイを書いたときの色川の状態。
食欲依存症という病気があるかもしれない。これは色川のその時の状況では治すことは極めて困難。何しろ依存症になると、一人で割烹懐石料理を食べるのだから。

 まず、金がうじゃうじゃある。衣類だ、旅行だと使っても年がら年中というわけにはいかない。勢い、金を使うと言ったら、ギャンブルか食事。仲間、友達も寄ってくる。一番無難な話は、あそこが美味しかったとか、あれをまた食いたいとか食事の話。流行作家だから、編集者も食事でもひとつと高級割烹に連れてゆく。これを全部断わったり、誘惑に打ち勝つなど無理。
 食欲依存症を治すためには、貧乏になるしかない。貧乏になると、外食することができなくなる。友もあまり寄り付かなくなる。売れる原稿が書けないから出版社も接待してくれない。

 私も会社勤めをしていたころは、食欲依存症だったが、年金暮らしになってからは、外食やグルメからは縁遠くなった。慣れるとちっとも美味しいものを食べに行きたいという意欲が無くなった。あの食欲依存症は何だったのかと思う。

 今は月一度「かっぱ寿司」で廻る寿司を味わうのが唯一の楽しみ。

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島本理生    「よだかの片思い」(集英社文庫)

 主人公アイコが岩手でロケから帰る途中の映画監督飛坂に公衆電話から電話をする。
色々あって、2人の間には隙間風が吹いていた。
 
 二人の会話が途絶える。そこからの島本の描写。
 「暴風にも似た音が響いてきて、列車が通過したのだとわかった。騒々しいアナウンスが沈黙をかき消すように割り込んできて、どうすればいいのか困っていると、飛坂さんが突然決意したように告げた。
 『やっぱり、このままでは嫌なので、もう一度、僕と会ってください』
 一瞬自分まで風にさらわれた気がした。」
 
上手い。どの小説も島本の作品は同じようで、それほど優れた作品は無かったが、この表現に会いたくて彼女の作品を読んできた。
 そして、この作品で島本は殻を破ろうとしている。
痣を顔に生まれながらに持っている女性を鮮やかに成長させている。そのための、ドラマもある。そして、痣によって映画監督飛坂までも成長させている。
 まだ、殻を破り切ってはいないが、可能性は広がった。次の文庫が待ち遠しい。

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高山文彦    「いのちの器」(角川文庫)

 日本では、生きることへの意義、生かすことへの挑戦については、前向きに論じられてきたが、死ぬことの意味、どのように死を迎え対峙すべきかについては、語られたり論じたりすることはあまりなかった。

 この作品は、安楽死、尊厳死、脳死にともなう事件をとりあげ、死ぬことをタブー視することなく、論じ合うことを提起している。
 しかし、このことは難しい。論じ合ってもこれという結論がでるわけがないからだ。死んだ人が、死をむかえ何を考え、死にたいしどうむきあったかは語ることはできない。ということは、生きている人間は死を永遠に知ることができない。

 脳死については、最近は判定に病院の委員会などで、複数の医師が関与して決定するようになっているので、かなり透明性、客観性がでてきているが、安楽死、尊厳死は闇につつまれている。現実的に安楽死は、医療現場では実施されているのではとこの作品を読むと思ってしまう。

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梨木香歩   「不思議な羅針盤」(新潮文庫)

私がまだ実家にいたころは、口座自動引き落としというような支払は普及していなくて、すべての支払いには集金の人がやってきてお金を回収していた。電気もガスも電話も、他の掛売も。
 どんなに隣近所と付き合いがなくても、集金人はやってくる。それで、集金しながら、世間の世情、噂話などを振る舞われたお茶を飲みながら話してくれた。それも社交、世間付き合いの風景の一つだった。

 梨木さんの住んでいる近くには商店街があるようだ。そこでの買い物が楽しみ。それは、店の人とあいさつや世間話ができ、小さい交流ができるからだ。元気があればあったで、話をしたくて、無ければ活力をもらいに、商店街にでかける。
 しかし、頭の中でストーリーを構築中のときは、スーパーマーケットに行く。
構築中の建築物をまわりからの刺激から守らねばならないため。
 小説家とは面白い。

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北上次郎   「勝手に!文庫解説」(集英社文庫)

今私にとって一番信頼できる書評家が北上次郎。

本というのは、物語の卓越さ、人物造形のすばらしさが評価の基準になるのは言うまでもない。しかし、たくさんの作品を読んでいると、お、これは見事な文章、表現とほんの数行に魅かれることがある。北上はそんな印象的な表現を掬い取ることが非常に巧みだ。
 掬い取る能力は、感性が豊かでないとできない。その感性を磨くのが、ジャンルにこだわらず、ありとあらゆる作品を丁寧に読むことで磨かれる。

 北上が紹介する卓越した表現をコリン・ベイルマンの「ジャックと離婚」から引く。
「床の上でメイクラブをした。よかった。コンドームの持ち合わせがなくて、ちょっともめた。靴下で代用しようと言ったら、それは一に最悪、二に意味なしだと言われた。たしかに、靴下では水も漏らさぬというわけにはいかない。『靴下なんてはめたら、妊娠するだけじゃなく、セーターを着た子供が生まれてきちゃうわ』結局、こっちがぎりぎりで引くということに落ち着いた。」

 しばらく、北上の推薦本を読んでいたくなる。

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伊坂幸太郎   「マリアビートル」(角川文庫)

その筋の偉い方、峰岸の息子が誘拐される。その峰岸からの指令で、犯人が乗っている東北新幹線盛岡行きの車内から息子と身代金の入ったスーツケースをとりかえし、東京の次駅上野で降車し、峰岸かその代理に返すことがマリアに命ぜられる。マリアはそれを部下の七尾に伝え実行させる。
 この七尾が情けないくらい弱い性格の持ち主で、今まで何をしても失敗ばかりでうまくいった試しがない。そんなことの連続だから、また失敗するんじゃないかとか、変な事がおきるんじゃないかと思って取り組むと必ず考えた通りになってしまう。
 この話は、そんな七尾君を裏で糸を引いている中学生、頭脳明晰なのだが、殆ど子供としての天真爛漫さや感情が無い王子君にあやつられ、上野での降車に失敗し、それどころか
他の停車駅での降車もできず、終点盛岡まで行ってしまう物語。
 その間に王子君と七尾以外のひとはすべて殺される。最も死に近い七尾が、危機を脱出して最後まで生き抜くところが面白いところ。
 それにしても上野から大宮までだけで、150ページを費やす。上野―大宮は15分程度。
大宮に着いたところで、盛岡までもうついてもおかしくない長さ。どうしてそうなるかというと、伊坂がおりにふれ薀蓄、知識を挟み込むため。多分、これが読者によっては、偉そうにとかうるさく感じるだろう。しかし、変なもので、私にはそれが楽しみになる。次は偉そうにどんな薀蓄を披露してくれるのだろうと思いながら読み進む。

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佐藤正午    「きみは誤解している」(光文社文庫)

ときどき、気晴らしにパチンコに行く。最近は景気がよいから、パチンコ店は私のような年金生活者かおばさんばかりが客ではないかと思うのだが、結構若い人や、働き盛りの40代と思える人が多い。どうなっているのか、ちゃんと仕事をしろよと叫びたくなる。
 この短編集は競輪を扱っている。
とにかく、賭け事ははまってしまうとどうにも抜けられないようだ。会社を退職させられ、女房には離婚され、何が起ころうとも、賭け事をやっているひとは自らが正しいと思いこんでいる。
 そして、絶対次は捨てた金を全部取り戻してみせるといきがっている。
たまに金が入ったら、よろこんで賭け事をやめればいいのに、またその金を賭けにつぎ込み失う。
 孤独、暗い、どん底の世界にどんどん落ちてゆく。でも、目だけはらんらんと光り、ちっとも切ないと感じない。そんな人たちが競輪場、パチンコ屋に今日も溢れる。

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佐藤正午   「ダンスホール」(光文社文庫)

尾崎豊の曲「ダンスホール」を聴きながら想像を膨らませてできた作品のようだ。

村上春樹、伊坂幸太郎、佐藤正午はどこか似ている。妄想から物語を創造する。村上は本来、我々とは違った世界に身をおいているから、想像でなくそのまま自分のいる世界を書いている。
伊坂と佐藤は、地方都市に住み、都会作家より時間空間が自由。その自由のなかで想像を膨らます。
 想像が、我々の世界の中にぎりぎり入っていれば、リアリティもあってすごく面白いのだが、その淵を越えてしまうと、理解不能になり面白さがなくなる。

 この作品、私としては結構面白いが、一般にはどうだろうかと思う。淵を越えてしまっているかもしれない。
 無理がある。離婚届を妻につきつけられそれに男が判を押す。妻がさらに、自分がこれから再婚する相手の現在の妻に、離婚届の印を押してもらってくるようにと男に依頼する。再婚のための今の妻の所在は九州にいるらしいくらいしかわからない。それを男が引き受けるのだから、読者はついていけなくなる。ありえない設定である。
 その男のそれからの行動と行き着くところを男とは全く接点のないある小説家がコントロールしている。小説家がその物語の中にはいっているのか、小説家が物語を創っているのかが一体混然として不思議な感覚を読者にもたらす。
 とにかく、小説家の思惑に従い、男はダンスをするがごとく東京から福岡、そして九州の小さな都市の間をくるくると踊り続ける。

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矢作俊彦   「さまよう薔薇のように」(角川文庫)

1984年に出版された小説で今は絶版。ハードボイルド小説なのに、男くささとか説教とは無縁。実に軽く格好良く文章が並ぶ。古き横浜の雰囲気がむんむん、白黒の日活映画をみている雰囲気。

 トラックからエンジンを抜き取り、それをマニラに運び、船舶のエンジンとして使うというような違法な裏商売の話なんかが脇の話としてでている。主題は棘ある美女に魂を奪われ、振り回されていることがわからず、自分では恰好いいと思っている男が自滅してどん底に沈んでゆく物語。
さまよう薔薇とはそういう棘ある女たちを言う。

 作者が物語の中で書く。
 「水面をただよう薔薇の花びらは、すくおうと身を乗り出せば水に落ちてしまう。それでいて、遠目でみるとやけに目立ち気になってしかたない。」

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「悪の読書術」+α

脱線しているというか、話が見えなくなる部分もあったんですが、「社交的な読書とは? どんな本を読むと、周囲にどんなふうに受け取られるか?」というのがテーマです。
もっと雑に言うと、
「おしゃれには気を遣う癖に、盲導犬クイールとかハリポタとか世界の中心でナントカとかを、人前で平気で読む女性たち! オツムの程度が低いと、触れ回っているようなものですよ。せめて一人の部屋で読みなさい」
みたいな。
じゃあ何を読んでいればいいかって、作者が肯定的に書いていたのは、白洲正子(知らない)、塩野七生&須賀敦子(知ってるけど難しそう)、江國香織(うーん)。

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「日本において多少とも本を読む人間は、誰もが村上春樹の作品を読んでいるし、同時にまた村上作品を愛している。
だとすると、「村上春樹が好き」と言うことは、「私は文字が読めます」と言うくらいの意味しかない」
はて、そこまで好かれる作家だろうか。
教科書に載るような作家だし、「一応少しは読んだことがある」という人はごまんといる気はします。
なんとなくは読めるけど、「好き」と言うにしても「嫌い」と言うにしても、ハイレベルな説明・理解を要求されそうな作家だと、私は思う。

宮部みゆきや高村薫は、社交的な読書という点ではイマイチだそうです。
①本が厚い=彼氏がいない暇な人。家では読書ばかりしている人。
②元OLの作家で、作品に深みがなかったりイメージが固まっていたりするので、読者もおぼこ・幼稚だと思われる。
 特に、波乱万丈の人生を送った作家の、コクのある作品を好む「訳知り顔」の人々には、甘く見られてしまう。
とな。
宮部さんは、十代のころのほうが楽しく読めた気がする。今は、ちょっと物足りない。
高村さんは、今読んでも楽しめる気がする。
けれど、休日にバイオリンを弾いたり畑を手伝ったりする合田刑事について、俳優を例にだし、「そういう男が好きなんでしょうけどね」「インテリ左翼的な空理を引き付けている」と鼻で笑うように書かれると、確かに微妙なのかな~と考えてしまう。
インテリ左翼がなんなのか知りませんが。ていうか、マチズモ・ミニマル・ルサンチマン・スノッブ・ハイブラウとかも耳慣れないんですがね。

「宮部みゆきの江戸人情ものに、藤沢周平の「泣かない女」のような際どい凄みはない」と。
この「泣かない女」は、時代物を扱った後の章でも例に出されています。
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足の悪い女房を捨てて若い女と一緒になろうとした男が、「きっと女房は泣くだろう。愁嘆場になる。面倒くせぇなぁ」と思っていたものの、女房が涙も見せずにさっさと出て行ったため、「俺は、『あいつのたった一人の味方になる』と誓ったんじゃなかったのか? 孤児でびっこをひいているあいつに、行く場所なんてあるのか?」と急に後悔し、追いかけて行って復縁するというもの。
「障害を持つ娘を守ってやる優しい青年」から、「欠陥品の女しか嫁にできなかった残念な男」に、世間の目が変わったと感じ、「ぴちぴちの女がこんなにいるのに、なんで俺はあんなのを選んじまったんだ」と思う男。人間の汚さが描かれていますな。
宮部さんの時代物は、それに比べればお行儀がよくて物足りないかもしれない。
でも、凄みを感じるって程じゃない……かな。松本清張の方が容赦ない気がする。

そもそも、私、人前では本を読まない。車通勤だし、昼休みはネットサーフィンか昼寝だし。

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「天使の卵」&「九月の四分の一」

恋愛小説ということで、まとめて載せます。

10/4 「天使の卵」
映画化され、「天使の梯子」「天使の棺」と続編も出た、村山さんのデビュー作。
大学生が年上の女医と恋におち、最終的に彼女が死ぬ話です。
美人姉妹の間で迷うとか、年上彼女が妊娠・流産するとか、バイト先の先輩に筆おろしのセッティングをされるがヒロインとの初体験までDTを保持するとか、彼女は旦那に自殺された過去があるとか、彼女の同僚男性がいかにもなセリフを口にして邪魔に入るとか、主人公の母親に恋人ができるとか、いろいろ飾りがつくわけですね。
……というわけで、過去に読んだこともあってオチを知っているから、あんまり期待せず読んだんですが、意外とよかったです。
季節の描写が丁寧だし(主人公は画家志望)、精神病の父親を持ち不安を抱えていた主人公をヒロインが力づけていく過程がちゃんと描かれている。

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なんで読もうと思ったのかは、忘れましたw
高校時代の彼女(元カノ。ヒロインの妹)が三つ編みだったというところは古いですが、それ以外はあまり時代を感じません。

10/9 「九月の四分の一」
表題作の仕掛けがなかなかいいですね。駅の名前が日付だとは、気づかない。
四作入っていて、どれも洒落ています。村上春樹氏ほど格好つけておらず、ヨーロッパの地名や建築家の名前や曲名が登場しても、なんとなくついていけるレベル。で、ちゃんと収まるところに収まっていて、読後感もいい。

「小学生のころから作家になりたくて、計画的に役立ちそうな本を読んだ。ためたプロットも大学ノート二十冊分。
二十代初め、原稿用紙を買い込んで書こうとしたが、三枚書くのが精いっぱい。とりあえず、町をふらつき、人々の営みを感じつつ自堕落な日々を送る。
二十代後半、三枚すら書けなくなった。以後スランプ。就職はしたが、満たされない。思い立って旅に出て、ブリュッセルで出会った女性に『君は書けるよ』と予言される。
三十代後半、急に筆が動き出し、三日徹夜して書き上げることのできた処女作百枚が、いきなり受賞」
単純に、著者も似たような経歴かと思ってググったら、編集者→ノンフィクション執筆→専業作家、らしいですね。

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この表紙、右に写っているのが道なのか水なのかわからず、これまた検索しました。
どうも、運河らしいです。きれいだけど、柵がなくて大丈夫なんですかね?

| 日記 | 10:48 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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丸山健二「夜、でっかい犬が笑う」

密林で、「著者が次々と犬を買い換えては理由をつけて手放す様を自信満々に綴った本」とばっさり切り捨て、★1つにしているレビューがあります。乱暴に言えばそんな感じ。
最後は、「今まで買ったどの犬よりも俺が愚かなのだろう。夜、犬たちが笑っている夢をよく見る」ときれいにまとめていますが、愛犬家のエッセイを期待したら多分裏切られます。
1頭1頭に割くスペースが短いだけで、それなりにいい思い出や愛情もあったのかもしれません。
本自体が薄く、「あれが気に入らない。期待外れだ。誰かにくれてやりたい。次はあの犬種がいい」の連続に思えてしまう。

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犬を次々換えるのもアレなんですが、この本で何が気になるかって、犬のことをきっかけにして他人の悪口をばんばん書いていることですね。
犬の話より、最近の男ども(特に文学関係者)への批判が多いんじゃないかというくらい。
「私が小説家になる前に勤めていた会社の社長は、経営が悪化してにっちもさっちもいかなくなると、組合員を集めて泣いた。
彼が泣き出すと野次がぴたっとやみ、「泣いたってどうにもならねえぞ」と怒鳴った私は、周りの連中からにらみつけられた。
あれほど大騒ぎした問題なのに、社長の涙でチョンとは……。とんでもない裏切りにあった気分だった」
飼い犬を亡くしてメソメソ泣いている男に、「お前の飼い方が悪いから死んだんだよ。お前が殺したんだ。泣くことに酔ってんじゃねぇのか、テメェ」と感じ、思い出したエピソードだそうな。

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もう一つ例を挙げてみる。
いらないセントバーナードをもらってくれるという親子(父&息子)が現れ、喜んでいたら、引き取りについてきた奥さんが「こんな大きな犬はダメ」と冷やかに言い切り、その話はおじゃんに。
そりゃ、作者の奥さんは、「シェパードは私の力じゃ散歩できないし、私の犬が欲しいわ。アフガンハウンドがいい」と目を輝かせるような大型犬ファンですが、
「こんなデカい犬、手におえないわよ。旦那は興奮しているけど、私にも世話させる気でしょ? 他人にケガさせたらどうするのよ」と思う女性の方が多いんじゃないかと。

しかし、作者はブツブツ言うわけです。
「あれはひどい女だ。あの態度は何だ。女が女なら男も男だ。どうしてあんな女にびくびくしなきゃならないんだ。
最近は、女房に威張り散らされても口答え一つできない男が目立つ。
女房の尻に敷かれて喜んでいる男は、マザコンで、マゾ的で、ホモ的で、まともな男の尺度では測れない。
よほどしっかりした女でも利口な才女でも、全体を見渡したうえで正確な判断を下せる能力は備わっていない。
彼女たちはいつも神経質になっていて、ちょっとした周囲の変化にも過剰に反応し、ヒステリックになって判断を誤る。
女が家庭の主導権を握った場合、男は萎縮して本来の力を発揮できなくなる。
そんな悲劇を食い止める方法はただ一つしかないと私は思う。話し合いなんかでは絶対に解決しないだろう。一方的にまくしたてられるのがおちだ。ビンタしかない。
徹底的にぶちのめすことができなければ、男であることをさっさとやめてしまうがいい。
そして、女房の「だめです」の一言で、好きな犬も飼えないでみじめったらしい人生を送るがいいのだ」
とな。
ボギーの時代は良かったということか。←たぶん違う。

愛犬のエピソードを期待して本を開き、「男たちよ立ち上がれ。亭主関白上等。泣くヤツなんか男じゃねぇ。オカマだ」という熱く苦い主張を読むことになるとは思わなんだぜ。
それはそれで面白かったですが。

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9/23~10/3の読書

いったん削除したんですが、ブログ村の記事一覧に残ってしまっているようなので、書き直します。

まず、前回の更新がこちら
川上弘美「いとしい」は、1/5あたりで挫折しました。
主人公と恋人のベッドシーンが、
「私は、あ、という声をもらしてしまうのである。あ、は、ああ、なのか、あらゆる、なのか、あめふりの、なのか、あちらのかなたへ、なのか、あからさまに、なのか、あいしている、なのか、あすのそのさきの、なのか、もらしている私にも定かではない」
「紅郎、と呼ぶと、マリエ、と答える。すきよ、と言うと、すきだよ、と答える。まるい、と聞くと、まるい、と答える。のど、と聞くと、のど、と答える。むらさき、と聞くと、むらさき、と答える。解散総選挙、と聞くと、解散総選挙、と答える」
こんな感じ。そうやって、距離を置いて眺める描写が持ち味と言えば持ち味なんですがね。
最近、集中力が無くなってきて、暇があればだらだらゲームする状態なので、こういう表現を楽しむ気分じゃないというかなんというか……眠くなる。
しばらく間をおいて、また手に取るかもしれません。

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箱入り娘

9/23 「フラッタ・リンツ・ライフ」「クレィドゥ・ザ・スカイ」
こちらは無事に読みました。
たまに、シリーズものにはまることがあります。最近では、アルスラーン戦記を数冊買った。
その前は、西の善き魔女・星界シリーズ・守り人・獣の奏者。もっと言えば、三毛猫ホームズ・ペニーフットホテル・金田一・ビブリア古書堂もシリーズ。
星界は、ぜひとも完結まで書いてほしい。ヒロインに腐女子要素を入れたり、ツンデレや女王様キャラを強化したり、短編はファンサービスに走っていますが、テーマとしては面白いので。
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自家用車すら決まった機能しか使わず、メカも物理も全然ダメなんですが、星界やスカイクロラはさらっと読めるんですよね。
作りこまれた設定(設計)とか戦闘描写とかが、きっと魅力のはずなのですが、実はけっこうちんぷんかんぷん。
なのに、ついつい読んでしまう(^▽^;)

削除前の記事では、もう1冊の感想も書いてあったんですが、長くなりそうなのでここで切ります。

| 日記 | 09:23 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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佐藤正午   「ジャンプ」(光文社文庫)

この作品は、世に棲む男性諸兄の胸をチクリとさせる。

腐れ縁だと思ってつきあっている女性がいる。職場で一緒の場合が多い。仕事の話を忌憚なく言い合える。都合のいいとき誘えば必ずあわせてくれる。もちろん、女性からもときに誘いがある。でも、好きという女性ではない。まさに、つかず離れずの腐れ縁女性だ。
 これが、女性も腐れ縁と思ってくれていたら結構なことなのだが、一方的に男だけが勝手に都合よく思っていたら、事態はややこしくなる。
 男に大好きな女性が現れる。まだ付き合い始めたばかりだから、恋愛から結婚に発展させたいのだが、少し不安定なところがある。こんなときは、尚一層、腐れ縁女性に寄りかかったり、利用したりする。
 そして大概、男の優柔不断の姿勢が、本命どころか腐れ縁の女性まで失ってしまうというのが世の常。
 この作品では、まだ腐れ縁の女性と結婚できたからましなほうである。

それにしても、リンゴのカクテル「アブジンスキー」と小道具まで洒落ていて、なかなか味わいのある小説に仕上がっている。

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矢作俊彦   「ららら科学の子」(文春文庫)

主人公は1968年学生運動の真っただ中にいた。そこで警察とやりあった際、一人の警官が死んだ。誰が警官を殺したかわからなかったが、主人公は殺人犯として指名手配された。  
ちょうどそのころ、中国は毛沢東による文化大革命が最高潮をむかえていた。そして、学生運動の一部に中国人民と連帯しようという動きがあり、その連帯のため主人公は中国に派遣された。逃亡というより連帯のための高揚感のほうが強かった。上海に渡り少ししたところで毛沢東が失脚。歓迎されていた主人公の人生は一転し福州の小さな村に送られた。

 そこは電気がやっと最近通じた村。そのまま彼が蛇頭のルートを使って中国を脱出し、日本に密入国するまでの30年間村は何の変化もなかった。やっと村を離れたときにテレビがはいった。
 彼が日本をはなれたときは、テレビはカラーだったし、洗濯機も冷蔵庫も普通にあった。ということは、彼が渡った中国は当時の日本より10年以上遅れていた。そのまま30年何も変わらない中国で暮らし、いきなり30年後の日本東京にやってきた。

 遅れていた中国の寒村と進みすぎている日本東京が実に印象的に描かれている。携帯もパソコンもびっくりしたが、この作品で主人公が驚いたのは何と「水」が有料で売られていたこと。「六甲のおいしい水」と言った。

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原田マハ    「生きるぼくら」(徳間文庫)

 人生が折れ曲がり、どん底の青春を送っていた人生(これが主人公の名前だからややこしい)とつぼみのお米つくりを通しての、成長物語。
 物語もそれなりに面白かったが、何といっても印象的だったのはお米つくりの過程。それは、私が小さいころ経験した農作業そのもの。今は、農作業は機械化され、私が経験した農作業は、この物語では、今は誰もやらない特殊なお米つくりとして描かれていてびっくりした。

 ビニールハウスでもみ殻から苗を育てる。箱にもみ殻をいれて苗にする。
それから「しろかき」。苗を植えやすくするため、土と水をこねあわせる。私の家では牛にしろかき機をひかせてこねあわせていた。
 田んぼの水があふれ出ないようにする「畦塗り」。田んぼの土を掬いまわりに塗り上げる。畦には、きぬさやが植えられる。
 その後は「分けつ」。稲の苗を株を分けて育てる。小さく育った苗に土をつけたまま小分けにして田に植える。田植えは、後ろ向きになって行われる。

 草取り。稲より大きくなる強い草だけをよりわけ、取り除く。

 秋に稲刈り。刈った稲は、稲木という組木に逆さにして架け、乾燥させる「はざかけ」という。そして乾いた稲を、脱穀機にかけもみ殻をとる。最初のころは、足で機械をまわして脱穀したが、途中から機械になった。

 物語ではこの過程が丁寧に描写される。物語の場所も我が家の近くの蓼科だったこともあり一気に幼いころの田園と作業風景が目の前一杯に広がった。

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| 古本読書日記 | 11:18 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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皆川博子    「みだら英泉」(新潮文庫)

  あまり時代物は読まなかったので皆川も初めて読んだ作家だ。力量のある作家だと思った。
 この作品は、江戸時代の浮世絵師、渓斎英泉を扱う。天保の改革で奢侈禁止令のもと、春画の制作売買が禁止された。それに伴い、北斎や歌川派は浮世絵を中心として版画を描くが
浮世絵も頭打ちの状態。
 英泉は美人画が得意なのだが、独自性を貫き描く美人は6頭身、異彩を放っていた。しかし、北斎などに反発して、春画も描く。そうしないと生活ができなかった理由もある。春画は地下にもぐるほど、強烈な画になり、アクロバティックな男女の構図がもてはやされる。光をあびる北斎らに対する、嫉妬、鬱屈感が作品では描かれる。また、戯作者、為永春水と熱い交流で結ばれ、英泉ももともと戯作者として世にでており、為永の代作者をしていた。
 それにしても江戸時代、今日明日、生活に精一杯なのに、どうして女郎買いが普通のようにできるのか、そのアンバランスがいつも不思議に感じる。

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| 古本読書日記 | 11:13 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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萩原浩   「花のさくら通り」(集英社文庫)

シャッター通りになってしまっている商店街がそこらじゅうにある。
大きなスーパーがあったり、商店を引き継ぐ後継者がいなかったりして、シャッター通りができてしまうのが一般の印象である。もちろん、その面も否定できないのだが、この作品を読むともっと深い企みがあることがわかる。
 不思議なのは、後継者がいなかったりして店が継続できないのなら、貸店舗として貸し出せば、商店は続く。細々儲けも殆どないのに店を続けたり、貸店舗にしないで店をシャッターを下ろしたままにする。事業用地として持っていたほうが、近々やってくる相続時税金が安くなるからとこの物語は語る。
 ここに、必ず登場するのが、不動産屋だ。彼らは、事業用地として店を継続しないで放っておくことを勧める。そしてシャッターだらけになったところで、土地を買い占める。そこに政治家が群がって、再開発計画などといって、でかい店舗付きマンションを建設する。仲介手数料で細々稼ぐより、でかい利益をあげられるかから。政治家は、デベロッパーや建設会社からたんまりお金を頂く。
 シャッター通りは、自然的にできる面もあるが、悪代官が故意に創っていることもたくさんあるのだ。

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| 古本読書日記 | 11:57 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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高山文彦    「少年A 14歳の肖像」(新潮文庫)

 「絶歌」という本を出版したり、週刊誌に自慰をしている写真を送って世間を騒がしている酒鬼薔薇聖人なる少年Aについて、殺人当時のドキュメンタリー作品を読んでみた。
 記憶が定かではないので、当時は知っていたかもしれないが、彼が土師淳君を殺す前に山下彩花ちゃんという女の子を殺している。土師淳君は2人目だったのだ。
 著者 高山は、両親、同級生、捜査関係者を含め、少年Aの実像、人殺しの動機を懸命に明らかに使用としている。特に、母親と少年Aとの確執をくどいほど取り上げている。
 また、カウンセラー、精神科医、心理学者を総動員してその真相にせまる。或は、少年Aが信望するヒットラーや画家ダリを引き合いにもしている。
 それで高山には何か掴めたのかもしれないが、この本からは私には結局何もわからなかった。
ただ、少なくても、名古屋大学女子大生もそうだったのだが、「人を殺したくてたまらない」という強い欲望と常に戦っていたことだけ、そしてそれが抑えきれなくなって土師君を殺したという事象だけは理解できた。
 しかし、「人をころしてみたくてたまらない」という思いがどこから生まれるのかは、不明のままだった。

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| 古本読書日記 | 11:52 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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伊坂幸太郎    「重力ピエロ」(新潮文庫)

佐藤正午も伊坂も地方都市を拠点にいて作家活動をしている。そして、2人とも、色んな知識が半端でない。この作品でも豊富な知識が迸る。知識など殆どない私などはハアハア言いながらついていくのが精いっぱい。
 物語も面白かったが、それよりもっとぐさっときた会話が物語の半分くらいのところにあったので紹介する。
 「昔話は奇妙じゃないか。」
 「何が?」
 「昔話には親がでてこない。」
 「大抵、お爺さんや御婆さんだろ。桃太郎をひろってきたのも、かぐや姫をみつけてきた
のもそうだ。」
「・・・・息子じゃなくて、孫だ。あくまでも、親がいない。」
「兄貴は、桃太郎は親殺しの話だって聞いたことある?」
「親殺し?物騒だな。」
「息子はさ両親に暴力を振るわれたんだろうな。」
「それを殺すのが桃太郎なのか?」
「猿と雉と犬は親殺しを手伝った共犯というわけか。」

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| 古本読書日記 | 10:41 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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須藤元気   「レボリューション」(講談社文庫)

本の紹介に、革命家チェ ゲバラが友人アルベルトと辿った旅程と同じ旅をすると書いてあったので、戸井十月の名作「チェ ゲバラ遙かなる旅」と同様、ゲバラが辿った苦難な行程を辿っているのかと期待して購入した。
 しかし、同じ行程ではなく、単に辿った国に行った、それも飛行機で。ただ観光名所を周っただけの話で、非常にがっかりした。しかも、言葉ができないから、名所の印象と食事の感想ばかりで、特に現地の人との交流がなく、薄っぺらい内容になっている。
 最後のところで反米のグローバル思想、米国贅沢暮らしに反対の思いを締めで書いているが、別に南米まで行かなくても、そんなことは書けるし、この旅行記と著者が主張する思想がどう関連があるのかもよくわからなかった。
 ただ、ロシアの革命家トロツキーが亡命先のメキシコで暗殺された経緯は、全然知らなかったので、驚いた。

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| 古本読書日記 | 10:35 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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恩田陸   「ネクロポリス」(下)(朝日文庫)

お盆の先祖送り迎えもやる家庭は少なくなった」。彼岸の日にお墓参りをする人も少なくなってきた。
 上巻を読んできて、この物語は、アナザーヒルに来て、過去亡くなった人々と出会う風習をする人たちがどんどん減少し、近い将来、アナザーヒルは消滅してしまうのではないかという危機感、あせりが、次々起こる特異な現象に結びつくのではないかと予想しながら下巻を読み始めた。
 そういうところも無いこともなかったが、終盤から結末はいかにも淋しく、中途半端だった。ラインマンも主人公のジュンも、何のためにいろんな障害や、不気味な行動をしてきたかよくわからず納得できる最後にはならなかった。
 作家には小川洋子のように、最初から最後までの物語構成をデザインして、書き始める作家と、まずは書き始めて書きながら物語を創っていく作家と2通りあるという。
 恩田は後者ではないかと思う。調子に乗ると、ペンが勝手に動きどんどん物語ができてしまう作家だろう。
思い浮かぶままか、或は思いついたことはすべて書こうとして、最後収拾がつかなくなったのではないか。
 恩田の発想思い付きは素晴らしいが、締め方が不十分だった。

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| 古本読書日記 | 11:23 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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恩田陸   「ネクロポリス」(上)(朝日文庫)

英国のケルト文化と日本文化が共存しているV・ファー国にアナザーヒルと呼ばれる神聖の地がある。このアナザーヒルでは11月に日本でやるお彼岸に似た風習がある。この時、アナザーヒルでは過去に亡くなった人と出会うことができる。原則は昨年亡くなった人、しかし5年前くらいまでに亡くなった人に会うことができる。亡くなった人は「お客さま」と言われる。この行事は「ヒガン」と言われている。
 このアナザーヒルは神聖の地。だから犯罪、殺人などおきることは想像もできない地。しかし、亡くなった原因は何も病気や老衰だけではない。犯人が見つからない殺人事件があり、殺された人がアナザーヒルにやってきて実は俺を殺したのは・・・。何てことを言ったら殆どの事件が解決する。
 懐かしくて会いたいと思っていた人が、実は亡くなった人からみるとあいつとは絶対会いたくないということもあるかもしれない。
 神聖の地は、結構どす黒く、恨みつらみが充満している地。死んだ人と関係ある人が会うことは、新たな殺人事件が起こるのが不思議でない。
 事実この物語では、2件の殺人事件(1件はアナザーヒルで起きたのか上巻ではわからないが)が起きているし、ジミーが襲われ大けがをしている。

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| 古本読書日記 | 11:17 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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佐藤正午   「取り扱い注意」(角川文庫)

全編がナボコフの「ロリータ」のオマージュになっている。
結婚をしないで、独身であることに意志をもって貫く人がいる。こういう男性のなかには、使い切れないお金を持っている人が結構いる。結婚しないのは、その金をつかっていくらでも遊ぶ女性がいるからだ。
こういう人は女性に恋愛の感情は持たない。「ロリータ」にも書かれているが、「女は欲情を抑えるための鎮静剤」だと思っているからどうにもやりきれない。
 使い切れない金を持っていた生活が、使い切れるだけの金になり。やがて使い切って足らなくなる生活になる。人間というのは不思議なもので、入ってくるお金に合わせて生活を変えるということができない。そうするとお金をおいかけるようになる。まずは、高利貸しから借金。そして金に追い立てられ、最後は現金強盗決行に至る。
 それにしても、この作品にでてくる主人公のロリータ趣味の叔父は理解不能だ。愛人に子供を孕ませる。通常うろたえるのだが、これも「ロリータ」のオマージュなのだが、孕ませた子の8歳―9歳のころを想像して早く生まれてこいとうれしくなるのである。

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| 古本読書日記 | 11:14 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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