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2015年08月 | ARCHIVE-SELECT | 2015年10月

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海堂尊    「ひかりの剣」(文春文庫)

剣道のことがよくわからないから、あまり小説に入り込めなかった。

「切り落とし」という戦法があるそうだ。打突きに対して打突きで対応して、相手の剣を打ち落としてしまう戦法らしい。
 この作品は、剣道を極めた剣士の2人がライバル大学の剣道部員に「剣落とし」の奥義を極めさせ、最後の医大剣道大会に決戦をさせる物語。

 少し崩れた部分もあるが、基本線は典型的スポ根ストーリー。読みやすいが、中味はあまりない。加えて、柔道、剣道など武道物語に典型なのだが、時代の変化についてくることがなく、武士言葉が多用される。「なさる」とか「ござる」とか。
 いくら剣道が古来日本伝統のスポーツとはいえ、こんな言葉を今の若い人が、試合や通常会話で使っているとは思えない。変なトラウマから解放されない限り、普遍的な現代版スポーツ物語はできない。

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山本幸久   「シングルベル」(朝日文庫)

世の中の変化は速い。その変化と一緒に動く人もいれば、変化に追随せず、全く動かず自分の価値観を固定している人もいる。山本は動かない一人である。
 山本の価値、考えが世の中と合っているか、ズレがほんの少しだったときは、彼の紡ぎだす物語は面白いのだが、ズレが大きくなると突然つまらなくなる。

 私が会社を定年退職する前、働いていた部門に女性が4人いた。40代1人に50代3人。誰も結婚していなかった。しかし、彼女たちは強く明るかった。仕事もよくできたが、有休もきちんと取得、年に数回海外へ旅していた。趣味も追及していたし、映画も本も楽しんでいた。
 私の家の周りには、独身の男性がたくさんいる。生活の実態はよくわからないが、独身仲間でよく飲み歩いている。それなりに自由を謳歌している。
 どんどん今は、結婚のプライオリティが人生の中で低くなっている。

山本のこの作品は、結婚は人生では当たり前にするものという価値観が前提で、なかなか結婚しない、できない人を結婚させるための策略を描く。そこが今とずれている。
 物語がセピア色を帯びすぎている。

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村上春樹   「海辺のカフカ」(下)(新潮文庫)

文化芸術の秋に読むことにふさわしい作品。難解な部分が多すぎるが、それでもズシンと重く堪える作品である。
 この作品のどこかにあったがギリシャ神話から
「人間が運命を創っていくのでなく、運命が人間を引き寄せる」
という引用がある。

 この作品で村上が描く得意の異界は、「運命」が支配する世界で、その「運命」は「根源的悪」というのだから大変な世界だ。そして、この異界を完全に支配している「悪」がジョニーウォーカーという男。このジョニーウォーカーが特殊な石に異界への入り口をつくり、今の世界の我々を誘いこむ。
 そして誘い込んだうちの人間の何人かを、悪を刷り込んでまた石を通じて、我々の世界に送り返す。その一人が、ナカダ老人。悪に魂を売った父親に嫌気がさして家出した15歳のカフカ君をおいかけ、カフカ君を悪の異界に引き込むために、カフカ君を追いかけ四国高松に向って旅立つ。引き込まれてしまうと、悪を植え付けられ、悪の伝道者、体現者として我々の世界に戻ってくる。カフカが何とか引き込まれないようにと願いながら読み進むのだが、結局異界に入り込んでしまう。
 しかし、そこでカフカを捨てて家を出てしまった母親と思われる佐伯婦人に会い、彼女の導きで悪の伝道者になることなくまたカフカは奇跡的に」我々の世界に戻ってくる。
 ナカダ老人に導かれ星野君が悪の世界への出入り口である石を探すところ、カフカが石から異界にはいり我々の世界に復帰するまでは、はらはらする描写が続き一気に読み進む。  

本当に村上の長編は秋の読書にぴったりである。

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| 古本読書日記 | 21:56 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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村上春樹   「海辺のカフカ」(上)(新潮文庫)

またまた、村上ワールド全開の作品である。そして、いつも通り言葉は平易だが、さっぱり内容がわからない。だけど読みだすと村上ワールドに引き付けられやめられなくなる。

 私たちの世界には、時間がある。時間の経過で変化が起きる。一秒前と一秒後は全く異なった世界となる。また、生きてゆくために労働、お金を得るという行為に縛られる。
 村上のいる世界は時間が無い。社会は変化しているのだが、ある時点でピタっと止まってそこから動かない世界が存在する。金や時間に縛られない世界がある。 
 
15歳の田村カフカが家出をする。高速バスを使い、見知らぬ町高松までゆく。そしてそこで次の宿泊場所が決まるまでホテルで過ごす。私のような読者は、高校生にもなっていない子供が、どうしてそんなお金を持っているのか。そんなお金が持ち出せるほど裕福な家庭なのか。どうして、家出された家族は大騒ぎしないのか、何故村上はそれを書き込まないのか。こちらの世界の人はどうしてもこんなことを思ってしまう。
 村上を読むのにそんな疑問ははさんではいけない。そんな世俗を超越して生きることができる世界が村上の世界なのだ。
 そうはいっても、全く我々の世界を超越しては、物語にならない。村上の世界で生きているナカタという老人が登場する。この老人は9歳で世界が止まってしまっている。だから、理解度、言葉も9歳のまま。簡単な字も読めない。数字は多少わかるが足し算、引き算はできない。不思議なことに猫や犬とお喋りはできる。
 こんなナカタ老人が、今住んでいる東京中野からとびでて西へ旅にでる。切符も買えない。電車の乗り方もわからない。周囲の人に聞いてみるが、周囲の人々の返答の意味がさっぱり理解できない。
 我々の世界を理解できない村上ワールドのひとたちが、我々の世界で生きてゆくのは本当に大変である。

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松浦理英子    「犬身」(下)(朝日文庫)

この作品は、歪んだ家族が、朱尾というバーテンの策略にはまって、行き着くところまでいって崩壊してしまう物語だ。その過程はサスペンスもどき、最後の家族同士が殺し合う場面はすさまじい迫力がある。
 しかし、それでも疑問なのは、この物語に何故人間から変身してしまった犬が登場しなければならないのかということ。梓という主人公と一緒に、犬になってしまった房恵が暮らすのだが、殆ど犬と暮らす風景がでてこない。たまにでてきても犬らしさが無い。ガムなど与えると犬はよろこんで食いつくが房恵は抱え込むだけ。ボールを投げれば犬は我を忘れてボール遊びをするが、しかたないからボールをころがしてやるかとなる。散歩や、散歩をねだるところも殆どでてこない。
一方、テーブルの上にのり一緒にパソコンのブログを読んだりする。物当たりでのテーブルは低いから、犬が乗ることができるかもしれないが、普通、一緒にPCを見る犬など邪魔で机からおろしてしまうだろう。
 犬を起用しないでも、十分読むにたえうる作品になっているのに、犬を絡ませたために
作為が目立ち、物語の良さを減じてしまっているのは残念である。

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| 古本読書日記 | 14:32 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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松浦理英子    「犬身」(上)(朝日文庫)

犬が大好きで、自分の魂の半分は犬だと思い、幼いころから犬になりたい願望のある主人公房恵。バーテンダーの朱尾によって、犬として仕えたかった陶芸家梓の犬に変身させてもらう。
 変身するまでの、犬になりたい願望が嵩じるところや、犬になりたてで戸惑う房恵の様子は面白く描けている。特に、裸のまま、排便したりすることへの抵抗、恥ずかしさを覚える場面はそうだよなと思わず手を打つ。
 そこまでは良かったのだが、その先は犬になった房恵が、物語上だんだん小さくなり、梓の実家の家庭問題が物語の主題となる。加えて、梓と結婚している梓の兄との、近親相姦も重なり物語の主題になり、何のために房恵が犬になったのか、全然わからなくなってしまう。
 上巻のように房恵が犬として物語に絡まなければ、ありふれた物語に変わってしまう。る。この内容が続くようなら、下巻を途中で投げ出すかもしれない。

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| 古本読書日記 | 14:27 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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歌野晶午   「放浪探偵と七つの殺人」(講談社文庫)

この作品のタイトルからすれば、殺人事件の七つの短編集となるはずである。ところが、実際は八つの殺人事件が収録されて、八つの物語短編集となっている。
 最後に収められた「マルムシ」は本来この短編集には加えるべきものでは無かったようだ。面白いのは、歌野がその経緯についてあとがきで言い訳のようにして書いている。
 歌野晶午という名前が恰好いいので、きっと好青年というか好中年のすかっとした作家だろうと想像してしまう。どの作品のトリックの切れ味も鮮やかで、いやがうえにも恰好良いという想像が膨らむ。もちろん実際、拝見したことが無いのでわからないが。
 しかし、この最後に収められている「マルムシ」は今までの歌野の作品と異なり、どことなく人間臭く、ペーソスがある。
 この作品の主人公の大学生は、青春所代の歌野が投影されているのではないかと思ってしまう。
 学生の宴会(学生だけではないが)は、たいてい参加してない人の悪口三昧で盛り上がる。そんな悪口を言われたくないので、気の小さい主人公はいやいや参加する。そして、壁のしみみたいな存在になって、いつか何とかぬけだしたいと思いながら、気の弱さで最後までつきあう。まだ、勉学や研究態度あたりでの悪口は許容できるが、声色までつかっての人格をあげつらう悪口は見るに、聞くに堪えられない。
 しかし、悪口を聞いていていやだなと残ってしまう人はわずか。悪口を言ってもりあがっている人は、全く悪いことをしているとは思っていないから、ちっとも後悔は残らない。
 わざわざ、あとがきまでして不要な言い訳をする歌野。気が小さく、気後れするタイプなのかもしれない。違っていたらすみません。

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原宏一   「ファイヤーボール」(PHP文芸文庫)

原の小説の特徴は竜頭蛇尾。発想はユニークで最初はそのユニークさに驚き、そしてこれからどうなるだろうかと期待すると、全く驚愕は最初だけで、あとは凡庸どころか、箸にも棒にもかからないつまらない物語になるのがいつも。
 この作品は初めて、最後まで緊張が途切れず書ききった作品になっている。まずは、よく頑張ったと評価したい。
 会社をリストラされた主人公咲元が地元の自治会役員会で秋の祭典案を提示、本来やりたかったペット大集合祭典を承認してもらうため、実施することが不可能と思われる「火の玉祭り」を提案したところ、その「火の玉祭り」をやることが役員会で決まる。しかも、その実行委員長に咲元が指名される。ここらあたりは原の面目躍如の展開。
 少し中だるみがあるが、最後の火の玉祭りの描写は迫力がある。
もう少し推敲してほしい部分があるし、中味の薄さも否めないが、まあよく頑張った、原宏一は。

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歌野晶午  「ガラス張りの誘拐」(角川文庫)

妻を失い、多感な少女である娘と2人暮らしとなった刑事の佐原。娘の学校の保健の先生である梨花にある誘拐事件の解決を手伝ってもらう。そんなことから娘のことの相談を梨花に頼るようになる。というのは、父親と娘の2人暮らしが全くうまくいかず娘は荒れ放題。それに従って佐原も刑事としての仕事に全くの自信がなくなってきているから。

 佐原の娘が家出をする。3日たっても消息がわからないため、梨花と相談のうえ、刑事の親としては全く情けないのだが公開捜査に踏み切る。
 すると、誘拐をしたと、犯人と思われる男から電話がくる。この犯人の要求が、驚天動地。「一億円を用意しろ。その一億円は、透明のビニール袋に入れろ。警察に知らせできるだけ多くの捜査員を集めろ。マスコミを集めて、逐一状況を公開し、取材にも応じろ。」
 完全に誘拐身代事件の当たり前をひっくり返すストーリー。とんでもないことを歌野は設定し、これをどう落とし前つけるのか。まさか狂言でしたなんて白ける結論にはしないだろうな。と楽しみに先へ読み進む。
 しかし、何とも結末は、無理やり親子愛をこじつけた、納得感の無いストーリーとなり、期待は裏切られがっくりときた。

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佐藤正午   「アンダーリポート/ブルー」(小学館文庫)

また失敗をやらかした。
本屋の新刊文庫コーナーにこの本があり、佐藤正午は好きな作家だったので、タイトルをみないで購入。家に帰ってタイトルを確認すると「アンダーリポート」。すでに既読作品だった。
この文庫は、小学館文庫なのだが、8年前に集英社から文庫で出版されていて、それを読んでいたのである。出版社もこういう紛らわしいことはしないで欲しい。

 完全犯罪で最も確実な方法は、交換殺人である。どうしても殺したい人がいる。これが難しいのだが、別の人で殺したい人がいる人をみつけ、互いの殺したい人を殺したいすべき人とは異なった人に殺してもらう。これが交換殺人である。殺すタイミングは別の日で行い、それぞれにアリバイを作っておく。この作品はそんな交換殺人を扱う。
 私の最も大好きな外人作家にパトリシア ハイスミスという作家がいる。この作家が「見知らぬ乗客」という交換殺人を扱った物語を書いている。ヒッチコックが映画化している。
 佐藤の「アンダーリポート」は「見知らぬ乗客」を下地にして書かれている。しかし「見知らぬ乗客」のほうが、物語は短く展開も早い。恐怖感湧き上がってきて、出来栄えは圧倒的に優れている。

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歌野晶午  「舞田ひとみ11歳、ダンスときどき探偵」(光文社文庫)

高利貸を口コミだけでやっている、独り住まいの強欲婆さんの家が火事になり、婆さんの遺体が焼け跡から見つかる。
 警察の現場検証が終え、立入禁止が解除されると、夜な夜ないろんな人たちが焼け跡に集まってくる。あの強欲ばあさんのことだから、警察が見つけられなかった、金目の物がまだ現場にあるのではと思って探しにくるのである。
 そんな中に中学生の3人組がいた。一人の子が絶対宝物があると強調して、他の2人を誘ったのだ。しかし、いくら土を掘り返しても何もない。そうなると引っ張られた子は嘘つきと引っ張り込んだ子をなじる。
 自分のプライドを守るため、その子は家から金塊3つを持って地中に埋め、それを掘り出し宝物があったと叫ぶ。そして他の2人に言われ、3つの金塊を分け前としてあげてしまう。
 しかし、この金塊は、家からもちだしたもの。両親に持ち出したのをばれる前に何とか取り返さねばならない。そこで、とんでもないことをする。
 この少年の行為と気持ちは少年時代の行動として共感する。あるよこういうこと。

 高校生は、携帯電話を家に置き忘れ、学校でそのことを知ると、もう人生が終わったかのように落ち込み落胆するそうだ。どこでも、いつでも暇があれば携帯電話をいじくっている。携帯は生きがいであり、生きている証。人生のすべてが携帯によりかかっている。

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| 古本読書日記 | 12:22 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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古川日出男  「ハル ハル ハル」(河出文庫)

人類史上最大の発見、発明は数字である。数字があり、歴史は進化、科学も進歩し、文明社会ができあがった。
 しかし一方数字により、人間の生活、行動は不自由になった。何でもかんでも数字で評価、表現する。時間が生まれ、距離が生まれ、数量が生まれた。結果、我々は常に数字にしばられ、数字においつめられ、数字に管理される生活を余儀なくされるようになった。
 この物語は、東京に住んでいる3人、親に捨てられて行き場をなくした少年、家出少女、それにリストラにあい社会から転落してしまいそうな中年のタクシー運転手が、現代の束縛の根源である数字から逃れるため、日本の東の果て犬吠埼をめざしてひた走るロードノベルである。
 犬吠埼まで、数ある掟がカウントダウンで無くなってゆく。距離が減少し無くなってゆく。廃材場で拾ったピストルの弾丸数が無くなってゆく。そして犬吠埼にてカウントダウンは終わり、数字の束縛から解放される。かに思える。
 だけど、本当に解放されたかはこの作品ではわからず、物語はまだその先へ続くというところで作品は終了している。

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| 古本読書日記 | 12:18 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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貫井徳郎    「ミハスの落日」(新潮文庫)

常識が勝ち視野が曇ってしまうことがある。ロリータと言えば、変質的男が小さい女の子を溺愛することと思いこむ。この前大阪柏原殺人事件で、変質者は必ずしも女の子に溺愛感情を抱くのではなく、少年に異常愛を感ずることも有りなのだと改めて思い起こさせた。
 この作品に登場するオルガスにはおさないころいつも一緒に遊んでいたアリーザという女の子がいた。恋心をお互いに持っていた。アリーザが両親と一緒に別の所に引っ越すことで、二人の間は遠のいた。
 この2人が、二十歳をすぎたころ偶然にバルセロナで出会う。そこで幼いころの話題で盛り上がる。思い出の中に、いつもお菓子をくれたパコという男が密室で殺された事件があった。実はオルガスには殺人はアリーザがやったのではという強い確信があった。
 だから、いやがるアリーザを無視してぐいぐい追及をした。そして、やはり殺したのはアリーザであったことを知る。そして、アリーザは完全にオルガスの視界から消える。
 ところが、その後オルガスは、実は変質者パコは、オルガスをおびき出し自分の部屋でいたずらをしようとしていたこと、そしてそのいたずらパコを殺すことによって阻止しようとアリーザがしたことを知る。
 オルガスは実業家となり、スペイン薬品業界ではスペイン最大の会社をつくり大成功をおさめたが、彼の人生はアリーザの真実を知ったときすでに無くなっていた。

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| 古本読書日記 | 14:44 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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松尾由美   「煙とサクランボ」(光文社文庫)

松尾の作品はどれも発想が面白い。この前の「おせっかい」も、おせっかいが嵩じて、小説のなかに読者が入り込み筋を変えようとする。こんな発想はとても浮かばない。
 この作品も、幽霊が活躍する。それは、ありきたりだが、幽霊の特徴がよく捉えられ、描写も微細だ。
 まず、幽霊は、過去に出会った人や、家族や親戚など知り合いにはその存在は見えないが、全くであったことのない人には幽霊は見えるのだ。ということは、私もあちこちで幽霊に出会っているかもしれない。まあ、それだけでは話が進まないので、その仲介役として、特別にどんな幽霊でも見える人が登場する。
 ここで登場する幽霊は、壁をすーっとすりぬけることができない。常にドアを開け家に入らねばならない。幽霊にはあまり力がないから、なかなか引き戸とか力のいるドアは開けられない。最近幽霊が困るのは、自動ドア。体重も無くやセンサー認知もしてもらえないから、ドアが開かない。
 食べ物や飲み物は摂取することはない。だからバーでは、一杯やっている振りをしなければならない。でも、生活費用はおかげで殆どかからない。
 そうであっても、幾何かはお金が必要。良い稼ぎは、長い行列に並んであげること。いくら長時間並んでも苦痛はまったくないのだから。

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佐藤多佳子  「神様がくれた指」(新潮文庫)

この作品の魅力の第一は、匠、一流職人としてのスリである辻の実際のスリ行為のリアルさ、迫真のせまる表現にある。
 しかし、私は、タロット占い師の昼間薫に強いシンパシーを感じる。
薫は頭もよく、エリート街道につながる道をひたはしっていたのに、途中でギャンブルにはまり、その借金を返すために、女装までしてインチキとわかっている占い師になる。
 時々、どこで間違えたかと深いため息をつく。そこが、私の胸にズシンと響く。

「ふとため息が漏れた。ため息ひとつごとに寿命が一日減るのだということを聞いたことがあるが本当だろうか。過ぎ去った時間というのは、何故すっきりと消去されないのだろう。今という時を積み重ね、一日一日新しい時が加わるたびに古い時は砂のように風化してゆき、一年、二年、五年、厚くおおいかぶさった砂地を安全な忘却とみなしてとぼとぼと歩いているのに、思いがけない突風で砂丘の地形が変わってしまう。埋めてきた昔の景色が一瞬にして現れる。」

本当に全くその通りだよ。

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松尾由美   「おせっかい」(新潮文庫)

何もそこまでしてくれと言ってないのに、あいつが苦しんでいる、俺が人肌脱いでなんとかしてやろう。それで、余計なことをして、更に事態を混乱させる人が結構たくさんいる。余計なことをしていないと気が済まない。
 この作品の主人公、古内はそんなおせっかい屋気質満々な人物。会社でも余計なことをして左遷されたり、部下に嫌われたり。そのお節介気分が嵩じて、連載物の推理小説の中に入り込んで、美人で可愛い刑事、郡司光を助けたくなる。そして、特殊な睡眠薬を飲むと時に本当に作品の中にはいり、殺人事件を目撃する。
 更に彼の部下だった2人のおせっかい人間が登場する。彼らの推理により犯人をつきとめる。推理作家は事件の現場を別の町名を使っているが、自らの住んでいる街を背景に物語を描く。すると、犯人がこの物語の場合、駅前のクリーニング屋だと特定される。おせっかい屋の2人が、犯人をつきとめても、小説だからと余計なことをしなければ、どういう問題もおきないのだが、おせっかい気質はそれが我慢できない。だから、クリーニング屋に告げ口をする。クリーニング屋は出版社に文句を言う。
 もう推理作家は、自分の作品をお節介屋にひっかきまわされ何が何だか、どうやって物語を収束させるかわからなくなる。
 世の中こういうことって多い。おせっかいのためにその何倍のエネルギーを使って事態を収束させねばならないことほど馬鹿らしいことはない。

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| 古本読書日記 | 13:20 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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今読んでいる本

連休中に読み終わるかわからないし、感想をアップするのが億劫になるかもしれないので、先に写真だけ。

川上弘美「いとしい」
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義父が春画を専門に書く人で、主人公たち姉妹がそれを見て無邪気に「つばめ返し」とか「ひよどり越え」とか体操のように真似するという、川上さんらしいぶっ飛んだシーンから始まります。
まだ1/3しか読んでいません。

スカイクロラシリーズの残り。
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結局購入しました。

あと、くるねこの最新刊も購入したんですが、あれは漫画なのでさらっと読みました。
2008年にくるねこ保育園にいたポテトのポーちゃんが、再登場しています。
声が残念&食べ方がブルドーザーな子猫が、立派なふさふさデブ猫になっていたらしい。そして、やっぱり声が変らしい。
我が家の猫は風呂場に入ってこないので、くるねこさんちは楽しそうだと思います。
(面倒くさいだろうけど)

| 日記 | 21:03 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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今日のわんこ&にゃんこ

その1.
久しぶりにゆめこを連れて外に出ました。
待たせておいて杏林堂で買い物でもしてやろうかと思ったのですが、暑い時間帯だったので断念してさっさと帰ってきました。
ゆめこさん、営業中のラーメン屋の前でウンチングスタイルになりました。

p.png

駐車場に入ろうとする車と、出ようとする車の、進行方向に被るような位置で。
ちょうど店から出てきた人もいたかな(-_-;)
急いで片づけましたけどね。ケツの下にビニール袋を待機させる勢いで。
下痢Pで、飲食店前に残滓が・・・ってことになったら、もうこの道は通れない。幸い、コロコロでした。

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その2.
この連休、午前中は頭痛がするほど寝ているせいか、ぼんやりしております。
缶チューハイ1本しか飲んでいないのに、さきほど階段を上る途中にちょっと踏み外しましてね。手をついて事なきを得たんですが。
一緒に(餌を期待して)上っていたらしいももこも、ドドドッと一階まで下りました。いや、落ちたか?
びっくりしたんでしょうね。
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拡大。
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パソコンを購入して1月経ちませんが、リュクスホワイトのふたに、気づけばももこの血かよだれか何かわからないシミがぽつぽつ付着していました。
これを書いている今も、背後にいます。
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昔はもうちょっと距離を取られていた気がするんですが、年取って丸くなったのかもしれないですね。
視力聴力が低下すると人間を頼るようになると、どっかで読んだ気がする。

| 日記 | 20:54 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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歌野晶午   「そして名探偵は生まれた」(祥伝社文庫)

歌野晶午   「そして名探偵は生まれた」(祥伝社文庫)
名作とはとてもいかないが、この作品は面白かった。
密室殺人事件である。
密室殺人のトリックでは、最も一般的なのは、犯人は密室のどこかに隠れている。そして殺人を発見した人が驚いて誰かを呼びに行く。その時に部屋からでてしまうという時間差トリックである。それ以外は、とても現実にはありええないような奇想天外なものが殆ど、読んでいてアホらしいものが多い。そういえば最近読んだ密室トリックは、排気口から部屋の酸素を吸いだし、窒息死させるなんていうトリックがあったけ。
 この作品も、時間差トリックを使っているが、2つの宴会がおこなえるようにと、ホールを区切らせる仕切りが用意されていて、機械によりその仕切りがせり出していることをトリックとして使っている。現実的でうまいところに目を付けたものだと感心した。
 もうひとつは、名探偵というのは何をして生計をたてているのかいつも不思議に思っていたことを歌野が上手く描きだしている。そもそも、殺人事件などを謎解きして犯人を見事に突き止めても、名誉にはなっても収入にはちっとも結びつかない。浮気素行調査をする探偵は職業として成り立っても、名探偵は職業にはならないのである。
名探偵はどうして食べているかは読んでのお楽しみ。

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| 古本読書日記 | 14:46 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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光原百合   「時計を忘れて森へ行こう」(創元推理文庫)

私は山に近い田舎の出身だから、森は生活の近くにあった。森については、あまりいい印象は無い。森は私有地のところもあったが、多くは、村が所有している共有地だった。何がいやだって、この森を守るため、強制的に森で作業をする「出払い」があるときだった。伸びた草やシダ類を刈りこむ。無駄な枝を掃う。森は傾斜地が多く大変な重労働だった。掃った枝を集めて、火つけて燃やす。燃やした後水をかけ消火して、それを袋につめ家に運び炭として使う。森を維持し、生活の糧を得ることは大変。これがいやでたまらなかった。
 今は、森林浴、アロマテラピーといって、里山同様、森のすばらしさを喧伝する風潮が強い。しかし、そういうことを都会からきて、さも森は自然の宝庫のように言えるのは、森を陰で支えている地元の苦労があって成り立っているからだ。
 上澄みの世界だけを放浪して、妖精だファンタジーだと言うような作品にはどうもなじめない。この作品も森上澄み賛歌の典型。オセンチで、可愛いぶりっこする、実際には存在しない女の子を主人公にするから、森も実際にはありえないものになってしまっている。

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| 古本読書日記 | 14:41 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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林真理子  「葡萄が目にしみる」

葉鳥ビスコや相原実貴みたいな、目のくりっとした女の子が表紙です。優しい色合いの。
中を読むと、主人公はくびれのない寸胴ボディで、「犬かきというより豚かき」とからかわれるデブで、髪の毛は硬くて、消えないニキビが二つ三つあるとわかるんですがね。
そんな女の子を描いてもウケないか。
校則で白いズック靴以外禁止らしいですが、表紙はローファー履いています。

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最後の章で、主人公が10歳以上年を取ります。
田舎の葡萄農家の娘で、自意識過剰でやぼったい女子高生だった私。今は、東京でラジオのパーソナリティとして働き、六本木の会員制の店で芸能人と挨拶するような女。
そんな感じ。

自分の通っていた高校と似ている部分もあったので、懐かしく思うところもありました。ラグビー部はなかったけれども。
最後まで主人公がモテない(フラグが立たない?)のがいいですね。
男子生徒が接近してくるたび、「こいつと何かあるのか」と考えたけれど、何も続かなかった。
友達に裏切られたり、憧れの先輩が事件を起こしたり、いろいろありますが、後に引くようなことはなく、全体的にさらっとしています。
田舎の描写も、嫌悪感むき出しのねちっこいものじゃない。洋品店で母親が買う服がダサいとか、バスが少ないとか。
高速道路建設や好景気で土地持ち・農家が豊かになったというところまでで終わり、「あのころは良かった」という話は書かれない。

薄いので、あっという間に読み終えました。
一応「感動の長編小説」らしいので、主人公と同世代ならもっと感じるものがあるのかもしれない。

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伊集院静  「悩むが花」

ストックが尽きたので、爺やの本棚から適当に。爺やの感想はこちら
伊集院さんも作中で書いていますが、「人は悩みが好き。他人の悩みを知って、阿保じゃないかとか、十年前の自分と同じだとか、愉しんでいる」というわけで、こういうお悩み相談集は楽に読める。

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伊集院さんなので、乱暴な回答も多いです。←「いねむり先生」しか読んだことないくせに、ひどい言い方
「子供が暴れん坊で、ケガさせた子の親へ謝りに行くのが大変」⇒「大いに結構」
「夫が死んで三千万円の保険金が入り、どこで聞きつけたのかいろんな勧誘が来るけれど、命と引き換えにもらったお金を使おうとは思えない」⇒「俺が使ってやるから持ってきなさい」
などなど。
28歳女性の「趣味がない。エレクトーンも手芸も、何に挑戦しても長続きしない」という悩みがあり、共感を覚えて伊集院さんの回答に期待したら、
「休みの日には裸になって、山でターザンになりなさい。似たような男(その前の回で男性二人にも同じような勧めをしている)と出会ったら、一緒に愉しみなさい」
みたいな内容でした。うーん(◎_◎;)

ちょうど東北の地震の後だったようで、回答の中に「男はどうなってもいいけど、女子供は守らなきゃいかん」という発言が何回かありました。
「汚染されているかもしれない海産物も、どんどん食えばいい。そんなに長生きしたくもないだろ? ただし、女子供には食わせるな」みたいな。
そのあたりは、まぁ、年配の男性らしいかなと思いました。いずれ子供を産む大事な体なんだから~なんて、いまの若い人はあんまり言わないだろうなぁ。

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森博嗣 「ダウン・ツ・ヘヴン」「スカイ・クロラ」

時系列ではシリーズ2作目と5作目(最終巻)。
書かれたのは、最終巻の方が先だそうな。
「スカイ・クロラ」はブックオフで買いました。映画のイラストを表紙にしたものと、青一色のものと、二種類ありました。
前者の方が状態が悪く安かったんですが、ここ最近買ったほかのものが単色の表紙だったので、そろえるために高い方を選択。

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★「ダウン・ツ・ヘヴン」
会社が、ティーチャとクサナギの間にあったことをどこまで把握しているのかはわかりませんが、笹倉は何か感じるものがあるのかもしれないですね。
クサナギが、デモ戦闘でティーチャと戦える(踊れる)ことを喜んでいるのに対し、彼の反応が微妙なので。
パイロットと、地上のエンジニアでは、感覚が違うのだろうか。

甲斐が何を考えているのかわかりませんが、貴重な大人の女性キャラだし、「イクリプス」にも登場している。
クサナギを「兵器」と呼び、賭けているといい、「悔しかったら上りつめてみなさい」と激励。
「スカイ・クロラ」では全く出てきませんが、クサナギが基地のボスになっているところからして、甲斐はうまく働いたってことでしょうかね。

★「スカイ・クロラ」
クサナギの外見年齢が二十代後半だと具体的に書かれていました。ほっほう。

映画では、クサナギがティーチャを追いかけていったり、最後にカンナミがティーチャに落されたり、「絶対に倒せない相手」として語られたり、キルドレたちのこだわる相手として存在感があります。
この本では、ちらっとしか出てきません。クサナギも「トラクタ式の戦闘機にこだわり、うちの会社を辞めた人」くらいの説明しかしない。
まぁ、続刊で「実はクサナギとティーチャにはこんな因縁が」と明かされる形式なので、そんなものかもしれない。

あと、笹倉を中年女性にしたのは良かったと思う。
クサナギに改造を許可されて頬を赤らめたり、開発への理解を求めたり、そういう純な(?)青年よりも、倒れたクサナギを抱えて走るおばちゃんの方が作品にあっている。
映画に比べて本は、クサナギに表情があるし、フーコのキャラクター設定が軽い印象です。

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宮部みゆき   「魔術はささやく」(新潮文庫)

うまく評価ができない。とにかくとんでもない作品である。他の作家では、ここまでの内容の作品を組み上げることは殆ど不可能である。
 バラバラに3人の女性が自殺か事故で死ぬ。更に、もう一人同じように男が死ぬ。主人公守の育ての父親は、タクシー運転手をしている。死んだ女性のうち一人はその父親がひき殺している。父親が、過失で轢いたのか、それとも女性が無理やり車に飛び込んできたのか。それにより父親の罪に天と地の差がでる。守は何かに導かれるように、事件の真相に迫ってゆく。
 そして亡くなった女性たちが「恋人商法」という詐欺商法をしていたこと、そしてアングラ雑誌のライターで亡くなった男が、「恋人商法」の実態を暴く座談会を亡くなった女性ともう一人の女性を集めて行っていたことを知る。
 亡くなった女性3人、まだ殺されていない女性一人を含め、4人とライターとのつながりを守がつきとめる過程はスリルがあり面白い。更に、それぞれが自殺や事故で死んだようにみせかけていくが、それは殺しとしてどういう手段で実現したのかを、読者の関心として集中させる。それが催眠術によるものと知り、この作品はそれだけでも十分読み応えがある作品になっている。
 ところが作品には別のキーワードが挟まれている。それは、守の役所勤めの本当の父親が突然失踪。しかも、失踪後、役所の金を横領した事実が判明。父は全く失踪後の行方がわからない。更に、育ての親のひき殺しについて、突然、女性が車に飛び込んでゆくのを目撃したという人間が、事故後大分たってからあらわれたこと。
 これらが、女性たちの死と絡み合って、とんでもない真実が最後に明らかにおされる。2重、3重のサスペンスが一つの物語に不自然でなくはめ込まれている。
 宮部の非凡な才能を持つ作家である。

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| 古本読書日記 | 15:26 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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秦建日子    「インシデント」(講談社文庫)

この作品で知ったが、医療コーディネーターという職業がある。しかも、医療コーディネーターは試験を受け認定される資格でもある。患者と医師で、ともすれば利害が相反する場合、主に患者利益にたって調整する職業だそうだ。
 概念はなんとなくわかるが、実際どのような場面でコーディネーターの機能が果たされるのかよくわからない。コーディネーターが職業として成り立つには、医療相談が患者からあり、それを医者や病院に取次ぎ、患者側にわかりやすく、患者の利益にたった回答を得、それにより患者サイドより報酬を得るということが条件になる。
 これは、職業として成り立たせることは容易でないように思える。愚痴や、医療行為に対する疑問を患者から聞いて、病院側に伝えて病院側の改善がみられても、それで患者に利益があったと、患者がお金を払うということが場面として浮かばない。

この作品はこの医療コーディネーターを扱っている。理想には燃えるが、報酬には結びつかない、職業として成り立たせるのが難しい現実を物語にしている。
その難しさを少しでも克服して、コーディネーターの役割を社会に認知してもらうため、とんでもない策略を主人公であるコーディネーターが実施する。
 その策略、医療現場では結構あるのではと思わせる。何しろ、医療は一旦、医者に身柄を預けたら、何をされてもわからず闇がでかい。

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| 古本読書日記 | 15:12 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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新安保法案可決成立

  新安保法案が強行かどうかは意見は別れますが、異常な過程を経て可決成立しました。
民主党など野党は、直接民意に耳を傾けることなく、議員の数による採決は横暴で、民主主義を冒涜した行為と徹底的に批判しています。
 しかし、安倍内閣の支持率が10%台やそれ以下になっていたら、民主党や共産党の支持率がうなぎ上りに上昇し、自民党を凌駕し、50%を超えていたら、さすが議員の数でまさるといっても、安倍内閣はごりおしできなかったと思います。それどこらか、下落したとはいえ、安倍内閣支持率は40%内外で、歴代内閣としては高水準を維持しています。何よりも、反対勢力である、民主党、共産党がおおかたの世論調査では支持率を落としているという世の報道とは逆の現象がおきています。
 しかも、直近の山形、盛岡市長選では、安保法制を争点にして、自公候補が野党候補に破っています。

 中国の軍事パレードは、まさに中国の強圧、傲慢の姿勢を世界に示したものでした。安保法案反対論の新聞、朝日、毎日は一面トップで見出しに「30万人兵力削減」と大きくかかげました。東京は、パレードなどの写真は一切掲載しないで、小さい扱いで報じました。
 中国のパレードを強く批判し、その恐怖もきちんと報道し、それでもこういう理由だから安保法制には反対すると何故しっかり論陣をはらないのか残念でなりません。

  これらのマスコミは、民主党や共産党が支持率を落としていることの背景は全く伝えません。山縣、盛岡市長選など虫眼鏡でみないとわからないくらいな小さな字で結果だけを報道しています。
 こんな報道姿勢への疑念、不安、不信がひたひたと野党、マスコミが知らない間に国民に広がっています。
 安保法制が何故廃案とならなかったのか、マスコミ、野党は自省し、普段の姿勢を真摯に謙虚に正直に変えてほしいと思います。

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| 古本読書日記 | 20:04 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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村上春樹  「ダンス・ダンス・ダンス」(下)(講談社文庫)

 大概の人は、労働か活動をしてお金を手に入れる。そのお金により、生きていくことが実現でき、更に色んな活動を支えてくれる。これが、システムであり高度資本主義社会である。 殆どの人がそこに組み入れられている。子供や主婦も、間接的に得る旦那の収入により生活ができるから、このシステムに組み入れられているとみなしてよい。
 しかし、この作品に登場する人物は、札幌のホテルに勤務しているユミヨシさん以外は、システムには組み入れられていない。俳優の五反田は組み入れられているようにみえるが、彼は彼の生活、活動、行動で自らの金は一切使わない。娼婦を買った代金さえも。そのすべてを彼が所属するプロダクションが負担する。その点では金が不要な人間。だからシステムに組み入れられていないと判断してよい。
 
 システムに組み入れられていない人間の数は極端に少ない。だから、そのままだと一人ぼっちで孤独が当たり前となる。ここに羊男なる、組み入れられていない人同士をつなぎ合わせる人間だか妖怪だかわからない者が必要となる。
 主人公の僕は、裏で関係を構築させている、羊男の操作により、組み入れられていない人々と会い、関係を結ぶ。そして、僕が結びつけてもらった人たちに魅かれ、どんどん密度の濃い関係を築こうとする。その途端、舞台がぐるっと回転して、関係した人は、この世界からすーっと消える。
 そして、そんな人たちとぐるぐるダンスをするように関係しながら、人が消えて、また消えて、そして最後に札幌のホテルの高度資本主義の中で生きているユキヨシさんのところへたどりつく。一瞬、ユキヨシさんは夢の中で消えた。しかし、目覚めたらちゃんと枕元にいた。

  私には村上が、高度資本主義社会に組み込まれていない存在だと思える。そして、主人公の僕は村上そのものだと思える。この話は異次元を扱うが、作者自身が異次元にいることで物語に異様な力を与えている。
 
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| 古本読書日記 | 11:30 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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村上春樹  「ダンス・ダンス・ダンス」(上)(講談社文庫)

まだ上巻しか読んでいないので、感想はわからない。

しかし、この小説のなかで、村上が使う「高度資本主義」同意語に思うが「システム」という言葉が印象に残る。
 60年代、70年代。ヒッピーがいて、反権力、反体制、自由の象徴としての学生がいた。まあ、自由とは思えても、資本主義のシステムには組み入れられていたとは思うが。幻想を抱き夢をみて錯覚をしていた時代だった。
 その後、村上の言う、高度資本主義会が80年代にやってきて、人々は完全にそのシステムの中に組み入れられた。普通の勤め人はもちろん、下層社会の人々も、自由人と言われる、芸術家も作家も。

 でも、この作品に登場する僕(主人公)は、まだわからないがシステムに組み入れられていないのではないかと思う。作家だって、自由にみえて、常に締切におわれたり、編集者と分刻みの打合せをしている。下層の人々だって、バイトや派遣などで、日々システムに組み込まれ生活に追われている。みんなシステムに組み込まれ汲々として活動しているのである。
 ところが、僕は、売文家を職業としているが、どうしてそうできるか不思議なのだが、システムからはずれふわっと生きている。そしてふわっとしたときに、コーヒーを片手に、女のことや、身近で起こっている不思議なことについて懸命に瞑想しようとする。

 そんな人はどこにでもいておかしくないような気になるが、しかし高度資本主義の中では殆ど存在しえない人とその人たちの世界を村上は描く。

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| 古本読書日記 | 11:28 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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彩瀬まる  「あのひとは蜘蛛を潰せない」

作者は私と同い年です。
主人公もアラサーの実家暮らし。母親より足が太いことや、服選びに自信が持てないあたりは、似ていると思った。

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綿矢さんの「かわいそうだね?」では、彼氏が「かわいそう」な元カノを居候させていることに主人公が苛立っていました。
この小説では、夫が「かわいそう」な末期がんの同僚を毎週見舞うことに、奥さん(主人公の義姉)が苛立っている場面があります。
幸い、私は、「あの人は『かわいそう』な人で、ちょっと心や頭がおかしいんだから、腹を立てるのはやめよう」と、優越感を使って自分をなだめるような経験は、今までありません。
他人の置かれた状況について、きつそう・辛そう・大変そうくらいは思うけれど、かわいそうとはあまり思わない。
たぶん、満たされているんだろうな(´・ω・`)

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あとがきで、「よくあるテーマだけれど、表現力が豊かで端正で繊細。かみしめたくなるような文章で、ぐいぐい読ませる」といった評価をされています。
確かにうまいです。幻を見ているような、夢かうつつかわからないような、すごい描写が続く。

話としては、一貫したテーマは多分あると思うのですが、どいつもこいつもトラウマ持ちというか、いろいろ詰め込まれているというか、おなかいっぱいです。
成功体験をばんばんばんと並べられ、主人公が成長したと感じ、気持ちよく読み終えられます。全部の懸念事項を回収し、導入部と似た場面できれいに終わらせています。
私は、『まだまだ私はだめだな。課題があるな』と主人公がため息つくくらいで終わってもいいと思うんですがね。
特に、バファリン女とのメルアド交換や、同僚への決め台詞(皮肉)あたりは、うまくいきすぎじゃないかなと。

| 日記 | 23:22 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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森博嗣 「スカイ・イクリプス」

短編集です。前にも書いた通り、近所の本屋に「スカイ・クロラ」がありませんでして、こいつを先に購入。
短編の中には、今まで読んだ(観た)場面から理解できるものもあり、結構楽しめるんじゃないかなと。

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最後の一話以外は、まぁ、なんとなく分かりました。
大人になったミズキが、自分はカンナミよりも背が高くなってしまったと気づくあたり、しみじみしてしまう。
笹倉と草薙のやりとりも、結構好きです。そういえば、仕事でもフライス盤とかマイクロメーターとかそんな単語を聞いたことがある。
この世界はキルドレについては科学技術が進んでいるっぽいですが、そこは職人技なんですね。

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で、最後の一話の「彼女」が誰なのか全くわからなかった(;´Д`)
この短編集のネタバレ感想を検索したところ、「クサナギ(カンナミ)」だの、「生き返ったクリタ」だの、「カンナミでいるときの体験」だの、頭が痛くなるような表現が。
ややこしい設定なんですよね、たぶん。未読の本編を読んでも、語り手の中身や器が誰なのか理解できない気がする。
映画は、三ツ矢にしゃべらせてシンプルにまとめていましたが、原作はなかなか複雑そう

とりあえず、「ダウン・ツ・ヘヴン」を読み始めています。

| 日記 | 23:04 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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