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2015年07月 | ARCHIVE-SELECT | 2015年09月

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小池真理子「沈黙のひと」

主人公の、パーキンソン病を患っていた父親が亡くなり、遺品整理をするところから話が始まります。
ググったところ、「昔の帝大生でインテリだったと思っていた父の遺品整理で、段ボールに入ったアダルトビデオを発見」というのは実話だと、インタビューで語っていました。
そんなものかもしれませんね。
作中では、大人のおもちゃやローションも見つかります。
「施設のおばあちゃんと楽しんでいたの? 外部からそういうサービスの女性を呼ぶなんてできるの??」
と主人公や異母妹は首をかしげます。
・・・・・・どうなんでしょうね(^▽^;)

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あとがきでも触れられていますが、登場する家屋の描写が細かいです。
使われていないダイニングテーブルに梅酒の容器が載っているとか、玄関の土間には黒い石が埋め込まれているけれどひびが入っているとか、ちゃぶ台の上にリモコンや薬瓶の入った箱があって薬瓶に輪ゴムが巻いてあるとか、玄関のドアを開けてすぐ急な階段があって二階は和室二間だとか。
縁側が腐って少し傾いているとか、アクリルの安っぽいカーペットが敷いてあるとか、座卓に白い布がかかっているとか。
昭和のにおいを出すために、必要な描写なのかもしれない。くどくない程度です。
そして、確かに祖父母が住んでいた家はこんなだったかもしれない。


好みの問題だと思いますが、認知症の母親に対して、「パパの分も長生きして、この先何回も桜を見てちょうだい」と言うシーンで終わってしまったほうが良かったかな~と。
回想でしか登場していなかった母親が、最後の最後にようやく顔を見せたという感じですし。

亡くなる前の父親が、まだ20代の同僚に、「衿子(主人公。50代)をよろしくお願いします」というはがきを出していたと判明するのが、実際の結末です。
「やっぱり、かわいい娘に家庭を持ってほしいと、最期まで思っていたんだよ。
主人公が、母親の認知症について打ち明けるため『パパに報告しなきゃいけないことがあるの』と言ったとき、お父さんは男ができたという報告を期待したんじゃない?」
と思う反面、
「主人公がオンナであることを意識させるようなエピソードを結末に持ってこなくてもいいのに。父娘の話でしょ?
息子ほどの年齢だと主人公も思っているし、カピバラ顔だし、なにも進展はしないだろうけどさ。
『若い男の子相手に、パパったら何書いちゃってるのよ』と、主人公を戸惑わせた状態で締めるのって、なんかすっきりしないな」
というもやもやが残る。

全体としては、いい話だと思います。親の介護問題を現在抱えている人や、すでに看取った人の方が、共感できるかもしれない。

| 日記 | 23:07 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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乃南アサ  「鎖」(下)(新潮文庫)

今は就職、職探しで失敗すると、ストンと蟻地獄に落とされる。いったん、おちてしまうと、もがいても、もがいても余程のことが無い限り、地獄から脱出ができない。
 バイトをする。しかし、面白くないし、明日への展望など全くなくなる。だから、ちょっとしたことでバイトをやめる。そして、パチスロに狂い、借金をする。これはまずいとまたバイトを探す。 バイト、パチスロ、行き詰まり、バイト、パチスロ、行き詰まりをスパイラル状態で繰り返す。
 俺の人生こんなはずはねえ。絶望、怒り、悲しみが交錯する。このまま死んじゃったら俺の人生は何だったのか。このままじゃ死ねれねえ。こんな鬱屈マグマが日々溜まる。
 年老いてしまえば、しかたねえと諦めマグマの抜き方も身に着くが、中年までは、時にマグマが爆発することがある。そこででかい罪を犯す。そして、蟻地獄に引っ張られ消え去る。
 中学生一年生殺人が今、巷をにぎわしている。似た事件が頻発している。
 あちこちに爆発寸前のマグマが日本中に溢れている。
この作品はそんな行き場のないマグマの暴発を扱っている。乃南のこの作品には蟻地獄に生まれてしまって底辺しか這うことしか知らない加恵子という女性が登場する。
 この加恵子が物語の最後で実にいい味をだす。

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| 古本読書日記 | 15:08 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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乃南アサ  「鎖」(上)(新潮文庫)

乃南アサ  「鎖」(上)(新潮文庫)
寝屋川の中学生誘拐殺人事件は、防犯カメラの威力により犯人を割り出した。最近は、こういった科学の先端をゆく防犯装置、DNA鑑定などにより犯人が捕まるケースが殆ど。この科学捜査の網をかいくぐった事件は、多くの場合が迷宮いりとなる。社会のなかで人間関係が希薄になっていることが主たる要因なのだろうが、足で稼ぐ、現場に戻る、徹底した聞き込み、そこから得る動機の解明、透徹な推理などの、従来の手法での犯人逮捕は殆ど殆ど無くなってしまった。
 しかし、ミステリー小説は、科学捜査を全面にだすのでは物語にならない。だから、必然的に古典的行動の刑事を登場させ、物語を創るが、どことなく現実とマッチしない雰囲気がでるのは否めない。
 刑事の質も変化する。足稼ぎ刑事を旧いタイプとして嫌悪する若い刑事が捜査現場に浸食してくる。捜査本部は従来同様、足で稼ぐことを刑事に要求する。若い刑事はその馬鹿らしさが先にたち、聞き込みも表面的でおざなりになる。口だけが達者だから、伝統的な捜査方法の批判ばかりする。刑事の世界では、思うに、足稼ぎ刑事が眉をひそめるような、お調子者刑事がこれからは、どんどん出世するのだろう。この作品で否定的に描かれる星野刑事のような批判型刑事が将来捜査本部を率いている姿が作品を読みながら、頭のすみにこびりついてしまっていた。

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| 古本読書日記 | 15:01 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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新装版「ルナティック雑技団」

ツタヤで、「本のポイント10倍クーポン」をもらったので、思い切って購入しました。
マスコットコミックスのころにもそろえたのですが、漫画を一斉処分(買い取り)した時に手放しました。
記憶にない番外編も、新装版には収録されていました。

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面白かったです。
「そうそう。タコ部屋に送られるんだった」「お嬢様のパーティーに招待される話は、本誌で読んだな」と、懐かしく思いながら。
たぶん、リアルタイムで楽しんだ世代は、私よりもうちょっと上・・・かな。さくらももことコラボしていたくらいだから。

ギャグ絵のほうが印象に残っているので、「自分のキャラの二次創作(BL)が送られてくることもあるが、絵柄が違いすぎて自分の作品が使われた気がしない」という話に、そりゃそうだろうと思いました。
ただ、今回読み返してみて、きれいな絵もあると知りました。本編完結後の番外編は、キャラクターが美男美女になっていると思う。
目の描き方が、古臭くなくなっているし。
「お父さんは心配性」の最終巻に読み切りが入っていて、「目の下に余韻のような線を描くと、少女漫画っぽい瞳になると気づきました。もう一回挑戦!」という前置きが書かれていました。
ギャグだったけど。「美を愛する人はこの先を読まないでください」みたいな断りが途中にあったけどw

それに比べると、天湖くんの目はすっきりした感じです。

| 日記 | 18:01 | comments:2 | trackbacks(-) | TOP↑

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乃南アサ  「すれ違う背中を」(新潮文庫)

刑務所出所コンビシリーズの2作目。
それにしても他人の心などわからないものだ。
結婚した次の日から夫の暴力がはじまる。第一子の流産は夫の暴力が原因である。そんなまゆみが、助けを求めるように芭子と綾香のところにやってくる。一度夜中の2時にやってきたときなどは、顔から血を流し、裸足である。
綾香は夫の暴力に9年間耐えた末、最後は耐えきれず夫を刺し殺し、刑務所に服役している。そんな経験もあるから、すぐにでも逃げるように説得する。まゆみはわかったような返答をするが、いつも夫のところへと帰り、暴力をふるわれてはまた綾香、芭子のところにやってくることを繰り返す。
綾香は禁を破り自分の過去をカミングアウトする。それでも、まゆみは暴力をふるわれるために夫のところに帰ってゆく。綾香と芭子はどういう気持ちや考えの持ち主なのかまゆみについてあれこれ想像し語り合うが、結局まゆみが宇宙人のようでさっぱりわからない。
 ペットは家族。芭子のところへ、愛犬のパグを結婚式に出席させるのでウエディングドレスを作ってほしいとの依頼がある。これで、驚くことなかれ。世には、タキシードとウェディングドレスを着せて結婚式をさせてから、犬に交配をさせる人たちもいるそうだ。全くもって人の気持ちはわからない。だから、芭子も綾香もいろいろ気をもまないで犯罪を犯した過去をカミングアウトしても周囲の人たちは「ふーん」だけで終わるような気がする。

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| 古本読書日記 | 15:16 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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アンソロジー   「はじまりの一歩」(実業之日本社文庫)

伊坂幸太郎、瀬尾まいこ、中島京子など7人の作家の短編集。
印象に残ったのは、福田栄一の「あの日の二十メートル」。
主人公の克彦は、志望大学を落ち、滑り止めに受けた三流大学生。学校がいやで、今は通っていない。そして、朝起きて近くのプールで泳ぐのが日課。克彦は高校の時水泳部にはいっていた。
その近くのプールに泳げない80歳を過ぎた佐山という老人が毎日通っていた。佐山は必至に頑張っているのだが、年齢もありとても泳ぎができそうもない。
 ある日佐山から誘われたカレー屋で、佐山から泳ぎを教えて欲しいと懇願された。「もうその年齢では無理」と克彦は言うが、佐山は必至に懇願する。
熱意に負けて、克彦が水泳を教える。箸にも棒にもかからない状態だが、基本を一人で佐山は何回も黙々と繰り返す。そして、ある日もう一歩で泳げるところまで佐山は成長する。ところがそこに英里子という孫娘が現れ、「医者が運動は禁止と言ったじゃないか。」と佐山をきつくしかりつける。佐山は心臓に重い病を持っていたのだ。
 その後、佐山は、孫娘に隠れ、プールも別の場所に移して、克彦から泳ぎを習う。克彦が聞く。「どうして80歳を超えてそれほどまでして泳ごうとするのか」と。
佐山が5歳のとき、兄と川に遊びに行く。兄が川で溺れる。佐山は兄を助けることができず、兄は溺れ死んでしまう。
佐山は「長い満足な人生を送ったが、兄を救えなかったことだけが悔いに残る。だから泳ぎたい。物事を始めるのに、遅すぎることは決してない。」という。克彦はそこから、一流校を目指してまた勉強を始める。
そして、佐山はとうとう20Mを泳ぐ。
 それから数か月後、克彦は街で偶然英里子に出会い、半月前佐山が死んだことを知る。佐山が死ぬ2日前、「兄を助けてやったぞ」と実に優しい顔になってつぶやいたことを英里子から聞く。

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| 古本読書日記 | 15:10 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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小田実 「「アボジ」を踏む」

爺やの感想はこちらです。
これを読む前、本棚にあるのを見たときは、「アボジって、果物か何かだろうか。葡萄踏みみたいな?」と思いました。
で、著者の義父のことだと、感想を読んで知った。

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じゃあ、「踏む」ってなんだ? 虐待? 越えていく、みたいなニュアンス?
そんなわけで、普段ならまず読まないジャンルであるこの本を読んだ、と。
本体価格1400円ですって。文庫サイズだというのに。グールドのワンダフルライフもそうですが、単行本並み。

「済州島は土葬だ。棺を墓の穴深くに埋めた後、親類縁者、穴に土を入れ、土の上にみんなで上がって踏み固める。土中の死者の魂が逃げて行かないがためである」
というのが、答えです
いろんな風習があるものですね。

二部構成のⅠ部だけ読みました。Ⅱ部がおもしろかったら、また感想を書きます。
Ⅰ部の中では、「三千軍兵の墓」が興味深かったです。
イバイ島とクエジェリン島をググってしまった。写真入りの記事も出てきました。
クエジェリン島全体が米軍基地とその関係者の町になったため、現地の人々はイバイ島に強制移住。
イバイ島でも戦争があったため、そこに住む女性が「この建物の下にはニホンジンノオハカがある。いつか骨を拾いに来るかもしれないから、鉄筋コンクリートに建て替えるわけにはいかない」なんて言う。
クエジェリン島でも数千人の帝国海軍兵と現地住民が犠牲になり、死体は随所に掘られた穴に投棄された。現在、島にはゴルフ場も映画館も幼稚園も高校もあるそうな。
「テンノウヘイカよ、走れ」では日本兵の暴虐行為についても語られますし、今更骨を掘りに行く人もいないだろうし、まぁ・・・そんなものですかね。
歴史の勉強になる短編が多いです。地図を用意して読みたい。

| 日記 | 17:34 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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高い買い物

パソコンを買いました。
最初に我が家で買ったのがいつだったか思い出せませんが、10数年前だと思われます。

これは、2台目かな。1台目はもっと色が濃かったような気がする。
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イマドキのノートパソコンに比べると、厚みがありますね。

子供部屋(私の汚部屋)に、中学生になってからおかれたのはデスクトップ。
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バリュースターです。
あんまり、使った覚えはない。もったいないですな。

ちょうど6年前の記事がこちら。その半年後が、こちら
猫が乗ると早く壊れるんですよ、奥さん。
そして、このエ○デンの人に乗せられて購入したパソコンは、残念ながらハズレで、3か月後にはトラブル発生。
その後もリカバリを何度か要求しまして、1年半後にはあきらめてVAIO購入となりました。
ここまでは、ずーっとLavieだったんですね。

さて、VAIOですが……ある日急にお亡くなりになりました。どれだけ短かったかって、私が「VAIOなんて買ったことあったっけ?」と思うくらいです。
退職した爺やが読書ブログ執筆の楽しさに目覚めたこともあり、父専用に購入したのがFMV。母は、またしてもLavie。
私は、祖父母宅からおさがりでもらったLavie。
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最近、おさがりのパソコンが不調になりましてね。
ゲームしてりゃ途中で切れるし、ヤフーメールやウィキペディアは表示できないし、ブーブーうなっちゃって電源ボタンを押して無理にシャットダウンする日々。
まぁ、XPだったし、あきらめてヤ○ダで100円引き取りしてもらい、「これを機にネットを控えようかな」なんて思ったわけですよ。

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無理だら。

無理でした。1人1台の優雅な暮らしに馴れてしまったもんで。
父が使いたいときに私がゲームしているなんてことが続き、家族の平和のために貯金を下ろして、本日買ってきた。

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ダイナブックです。
今まで我が家になかったゴールドも考えたんですが、やっぱり白にしました。
さっそく、私が昼寝している間にももこが重石になっていましたよ。

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嫌なら部屋に入れなきゃいいじゃん。

「DVD見ないし、フルHDでなくてもいいや」と、10万円しない型です。
まぁ、レノボでもいいかなと思っていたくらいなので。
一番近い電器屋がそこなので、いい思い出のないエ○デンで購入したんですが、セールストークなしでさっさと売ってくれました。
いいことだ。

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乃南アサ  「ニサッタ、ニサッタ」(下)(講談社文庫)

この物語は、2つのことを思い出させたり、考えさせたりする。
ひとつは、近所の35歳の知り合い。彼は人生のしくじりが、名門高校受験に失敗して、私立の三流高校に入ったときから始まったと信じている。高校を卒業して、お母さんがいうところの三流大学に進学する。卒業したときが極端な就職難の時代。やっと入った名も無い証券会社が、ブラックというかヤクザがやっているような会社。どこからか手に入れた個人情報を使って、電話で投資を持ち掛け金を強請取る会社。日に200軒の電話がノルマ。そこから10軒金を巻き上げるのがおきて。常に怖いお兄さんが電話の後ろを巡回して、脅し罵声をかける。最初の会社だからと思って、それでも6か月も耐えたところでギブアップ。心を痛めて、心療内科に通う。それから、アルバイトも含めついた職が13にものぼる。大概が職場仲間か上司と喧嘩してやめる。つい最近、梱包会社にバイトで採用されるが一日目で腰を痛めて首になる。何をやってもうまくいかない。それが、家族への暴力や大声をあげることに向っている。
 もうひとつは、孤独な人間がいる。しかし、たいていはずっと孤独だったわけではない。家族も友もいた。なにがしかの原因があり、気が付いたらひとりぼっちになっていたのが
普通。しかし、この世には、生まれたときから孤独が定められている人がいることをこの物語で知る。武田杏奈がそんな女性だ。
 夏川りみの「花になる」という歌は知らない。初めての経験だが、歌詞がぴったりとこの物語と溶け合う。「ニサッタ」とは明日という意味。で、この物語は明日に希望を持とうという物語ではない。今日だけは懸命に生きよう。今日は生きていれてよかった。明日なんていう将来はどうなるかわからないもの。そんな明日という意味なのである。

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| 古本読書日記 | 15:44 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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乃南アサ  「ニサッタ、ニサッタ」(上)(講談社文庫)

今は、高卒であれ大卒であれ、普通に卒業すれば、どこかの会社や組織に就職はできる。
そこで、面白くない、俺の思っていた人生と違う、上司が気に食わない、職場に気にいらないやつがいる、入った会社がとんでもないブラック企業だった、入った会社が倒産したなどで、会社を辞めてしまう人がいる。そこからが大変。30%程度は、何とか新しい会社をみつけ社員と採用される。しかし、一旦会社をやめると、契約、派遣、バイトしかない現実にぶつかる。待遇、給料に不満が残るから、職場を辞めるハードルがぐっと低くなる。契約、バイトを転々、いつまでたってもその境遇から抜けられなくなる。
 職と職の間をつなぐのが大変になる。そうなるとパチンコなど賭け事で凌ごうとする。
これが上手くいくわけもなく、そうなるとサラ金から金を借り当座をしのぐ。次々、色んなサラ金から借り、その金を別のサラ金の債務利子にあてるようになる。そして完全に行き詰まる。
 この物語前篇、主人公は行き詰まった状態だったところで新聞販売店に拾われる。新聞配達店は借金の利子や借金そのものを当座肩代わり、それを給料から天引きすることで、駆け込んでくる主人公のような人たちをタコ部屋にいれ、ブラック企業の上をいく過重労働を強制、安賃金でこき使う。
 犬の散歩をするとき、新聞販売店の前を通る。皆、元気で明るく仕事をしているように見えるが、こんな作品を読むと、今日から見る眼が違ってきそうで怖い。

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阿部智里 「烏に単は似合わない」

松本清張賞を取った作品であり、読者の予想を裏切ることが帯で約束されています。
単行本は、四人の姫のイラストが描かれているんですね。ほっほう。

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プロローグで登場する「すみ」の正体や、若宮の選ぶ女については、予想を裏切ってくれたと思います。
他にもいろいろ、実はあいつが背後で動いていた、実ははったりに気づいていたが騙されたふりをした、実はあいつとあいつは手を組んでいた……と後半でばんばん明かされていきます。
裏の裏の裏という感じで先程までの「真実」がひっくり返されるし、登場人物が多くて誰が誰だったか混乱するし、正直ついていけませんでした。
視点がよく変わるし、三人称で語る(見る)姫たちも信用できないというか、事実が隠されたりぶれていたりするわけで……。
あせびの文通相手の正体も、ミステリー馴れしている人なら予想するんでしょうかね? 何が何だか( ̄▽ ̄;)
作者は私よりぐっと年下ですが、頭のいい人なんだろうな。うん。

若宮のキャラクターを気に入った人は、このシリーズを読み続けるかもしれない。
バルサとタンダのカップルが好きな人なら、結末がツボかな。私は、この1冊だけでもう十分です。

松本清張といえば、1ヶ月くらい前に「奇妙な被告」を読みました。
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表題作のあらすじは、爺やが感想で書いていたので、ここで改めて説明はしません。
犯行推定時刻に麻雀を抜け出していたとか、被害者宅へ向けて歩く姿が目撃されていたとか、殺害する動機があったとか、そういう材料だけで逮捕した。
いざ裁判で、
「自白を強要された。遺体の状況に合わせて、殴った回数や角度について、供述のやり直しを求められた。凶器についても、警察が目星をつけておいた薪を選ぶよう、視線や身振りで促された」
と主張されると、警察側は反論できない。
その前に読んだ「渡された場面」も、誘導尋問で容疑者にぼろを出させ、刑事が、『君ハ思ワズ口走ッタネ』と言ったところで終わります。
カツ丼は出てきません。念のため。

なぜ最近思い出したかといえば、寝屋川の事件が「状況証拠を積み上げていくしかない」という状態になっていると、ネットニュースで読んだからです。
前科があると知った直後は、「もうそういう人間は社会に出さないほうがいいんじゃないか」と思ったんですが、動かぬ証拠や自供についての報道がなかなかないので、もしや偏見だったのだろうかと考えてしまう。
現行犯逮捕できる事件ばかりじゃないし、人を罪に定めるのは結構難しいのかもしれないですね。

| 日記 | 00:55 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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瀧羽麻子   「花嫁の花」(朝日文庫)

これは、淡々と書かれている作品だけど、テーマはシリアスである。
29歳で大失恋をした主人公莢子。30歳を超え、尊敬もできるし、この人と幸せな家庭を築きたいと思っている恋人篤志がいる。
 篤志から指輪を贈られ、いよいよ結婚へ一直線というとき、勤めている専門学校の生徒から、篤志が女性と一緒にいたところを見たといわれる。少し不信は芽生えたがまさかと疑念に蓋をする。だからデートを約束した休日、突然篤志から今日は仕事が入ってデートができないと連絡があっても、仕方ないかと思う。街にゆくと、篤志が会社とは異なる方角に向かって歩いているところに出会う。びっくりして、篤志をこっそり尾行すると、宗教法人誠学会の道場に入ってゆく・
 実は、篤志は誠学会に入会していたことを隠していたのである。篤志の家は家族みんなが会員だった。
 莢子はそれでも、誠学会を理解しようと、篤志と2回、道場に行ってもみる。結婚すべきか悩みに悩んで、教祖である老婆にも会いに行く。でも、どうしても受け入れられない。
 篤志も莢子を愛しているし、一緒に家庭を作りたいと念願している。いろいろ悩むが宗教は強い。何よりも人生の中で優先する。そして宗教会員から抜けないことを決意する。
 2人は別れ、新たにそれぞれの人生を歩むことを決意して物語は終わるが。かなり切なく悲しい。

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中上健次   「化粧」(講談社文芸文庫)

私は信州の山村に生まれ育った。山村といっても、住居がある集落には国道も通っているし、雑貨屋のような店も2軒あった。村は集落がある面積の数百倍も山や森があった。その山森を開拓して創られた田畑があった。だから集落は村全体の、爪の先くらいの広さだった。
 もちろん暮らしがあり、人間が生きている集落に物語があったことには間違いはないが、いつも夢をみたり、妄想をかきたてるのは、人家のない森や山だった。神社は集落にもあったが本体は山の中、人里離れたところにあった。
 遭難、神隠し、首つり、心中、大けが、妖怪やまんばの出現は、みんな山の中でのこと。 集落は村の入口でもあるが、こうした物語がうまれる入口でもあった。
この物語に作者と思われる大男がでてくる。どれほどの大男かとおもいきや、身長175CM,体重85KG。何だ、ただの肥満男じゃないかと思ってしまう。
 ところが、この肥満男がひとたび集落の入口から幽玄な熊野の山に足を踏み入れると、想像を絶するほどの大男に変貌する。

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榊邦彦 「100万分の1の恋人」

ハンチントン病患者の父親を持つ「ミサキ」と「僕」の恋愛小説、です。
たまには勉強になるエンタメ小説もいいかなと。
あとがきでも書かれていますが、病気をただの背景にしてしまわず、病気だけに焦点を当ててしまわず、うまいバランスなのだと思います。

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前半と後半、2日に分けて読みました。
前半の時点では、ヒロインが美点だらけで、少々冷めた気分にもなりました。
美人で、頭が良くて、美しく咲くという名前通りに笑顔がステキで、優しくて、無駄な肉のないスリムな体で、かすかにバニラの香りがする。
幼稚園の劇で演じたマリア様がぴったりだったそうで、20年近くたった今も「マリアのミサキ」「僕らのマリア」と、「僕」はまぶしく見つめている。
「発症の不安を抱えながら笑顔を作っていた。症状として易怒性や落ち着きのなさがあるから、穏やかでいようと無理をしていた。喧嘩も怖くてできなかった」
という打ち明け話があるわけです。そんな彼女を、「僕」はことあるたびに抱きしめたい守りたいと思う。

遺伝病のリスクがあるうえにブスだったら、『ごめん。無理。別れよう』で話が終わっちゃうだろうなぁ・・・と苦笑いしたくなる。
美化しすぎじゃないかしら。

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半ばまで読んだところで、
・結婚の決心をしたところで終わる。
・彼女が発症し、子供を「僕」に遺して死ぬ。
・「僕」のためにと彼女が遺伝子診断を受ける。今から結果を聞くぞ、というところで終わる。
といった結末を予想してみました。
ネタバレになるので、実際にどうだったかは書かないでおきます。

彼らには、まだまだ解決していない問題がいくつもある。でも、それが現実なんだろうな。
そんな風に思う終わり方でした。

なお、作者は、デビュー作のこれと、病気による死別が使われている二作目と、二冊しか出していないそうな。
・・・そのほうがいいような気がします。こういう作風で何冊も出していたら、なんかイヤだ。安っぽい。
デビューさせた側としては、二冊で止まってしまったのは期待外れなのかもしれませんが。

| 日記 | 21:01 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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乃南アサ   「しゃぼん玉」(新潮文庫)

乃南アサ   「しゃぼん玉」(新潮文庫)
乃南の素晴らしさは、心の動きを、その時の背景、聞こえるざわめきや何かの音とシンクロナイズさせ、鮮やかに描きだすところである。主人公伊豆見翔人の心の情景、うつろいの表現は、どこを切り出しても読者をうならせる。
 この物語の舞台は、宮崎県の山の中、ど田舎である椎葉村。そこに、ひったくりを繰り返し逃げながら行き場を失った主人公翔人が行き着いたところから物語が始まる。
 現在は都会を脱出した人たちによる、いかに田舎、里山が素晴らしいかという田舎賛歌の小説が多い。
作家自身が田舎を素晴らしいと思っていなくても、自然の豊かさ、村人の暖かさ、絆が強い人間らしさという刷り込みに引きずられ、つい田舎はいいところと筆がすべってしまう。
 ところが、乃南は、田舎の良さ、悪さ、どちらに偏ることも無くありのまま描写する。
 青春時代は後から振り返ると、輝いていたようにも思えるが、だいたいは暇をもてあまし、だらだらと退屈極まる日々を過ごしていたのが実態だ。そして、これはいけないと夜中に明日からパチスロ通いをやめ、新しい人生をスタートさせるのだと決意する。しかし、何故だろう、朝のまどろみのなかでは必ず、めんどうくせえなと思い、昼近くまで眠り、またパチスロへ行く。それが嵩じると、生活の金に窮する。すると、通常はバイトでも探すかとなるが、翔人のようにひったくりを繰り返し、底辺におちてゆく。
 この物語はそれを断ち切る人生再生物語である。でも、本当に再生できたか、私にはかなり疑わしく思える。

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中村航  「デビクロ君の恋と魔法」(小学館文庫)

中村の作品は、小さい頃気ままに喋りながら作る一人物語を読んでいる雰囲気がいっぱい。
この作品も一人物語で作った作品のようだ。一人物語は、いつも登場人物が少なく、最初は現実感が少しあるが、中味は殆どファンタジー。この作品も、リアリティのあるのは、杏奈の溶接の技術薀蓄と溶接作業を描くところだけ。これは、中村が理工系だからなのだろう。それから一人物語は筋が単純というのも特徴。
この作品も、半分くらい読めば、最後がどうなるのかがわかる。そして、物語は、何の驚きもなく、ひたすらそうなるだろうという結末に向って走る。そして、読者もそのわかっていた結末に落ち着いてほっこり安心する。
 中村の作品は結構映画化されていて、この作品もその例にたがわず映画化されている。随分安い経費で創られているのだろうと想像する。
 部屋に閉じこもり、感情を昂らせ、パソコンに文字を打ち込んでいる中村が目に浮かぶ。

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| 古本読書日記 | 15:51 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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長野まゆみ 「雨更紗」

タイトルがおしゃれだし、裏のあらすじがなかなかおもしろそうだったので、手に取ってみました。
爺やの感想はこちら
すみません。センスが無いので、そんな深そうな感想は書けません。

植物名も焼き物の名前も地形の表現もちんぷんかんぷんで、なんとなくこんな感じかな~と、ぼんやりしたイメージを浮かべたまま読み進めました。
最後まで読んだのは、主人公の二重人格(?)について何らかの理由づけや解決があるんだろうかと、謎解きへの期待があったからです。
・・・わからずじまいでした。
青白い肌をもつ妖しい美少年が、大人(主に男性)を惑わせたり、従兄(やっぱり美少年)と唇を重ねたり、官能的であやうい感じの描写が続く。
御幸という、大叔父(たぶん)の死について真相を教えてくれた男が、去年の祭りで死んだという事件。
これが何か主人公にショックを与え、人格分裂に繋がったんだろうかなんて考えたんですが、うやむやな感じで終わりました。
最後に、伯母(別人格にとっては母親)が妊娠したと主人公が唐突に言うけれど、何か意味があるんでしょうか? 
近親婚についても触れられていたが、まさか主人公のタネ??

たぶん、私はこの作者の読者には向かない。
とりあえず、美少年に対する萌え心はないと分かりました。
竹宮惠子「地球へ…」は面白かったけど。←たぶん違う。

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乃南アサ  「いつか陽のあたる場所で」(新潮文庫)

何かを読んで知ったのだが、パチンコ屋の駐車場の車の中へ赤ちゃんを放棄して死なせた夫婦がいて、夫婦は刑期を終えて出所したが、またパチンコに狂っている、そんな人たちが
いるそうだ。
 私がたまに行く喫茶店に8か月前に府中刑務所からでてきた人が来る。お前は、当面やることがないから、罪ほろぼしで自治会長をやれと長老にいわれ自治会長をやるのだが、先輩いろいろ教えてくれと、昨年別の自治会だけど、自治会長をやった私に聞いてくる。
 この人は、世間がどう思うが、過去と決別して腹を括ってカミングアウトをした。それを結構周りも暖かくみつめている。
 この小説の芭子も綾香も刑務所仲間。出所してたまたま近くに住むことになり、何とかアルバイトのような仕事につくこともでき、二人寄り添いながら過去を隠して暮らしている。
 芭子は放蕩のすえ罪をおかす。綾香は家庭暴力に9年も耐えた末で夫を殺害、許せる部分がある。しかし、出所後芭子が昔と決別、危険をおかさないよう神経を使うが、綾香の方は、息を詰めた生活にかなり嫌気がさしていて、自由に遊びたいと思っている。で、綾香の無神経な言動を懸命に抑える芭子。そのコンビが絶妙。
 刑務所同窓生であるからこそ、生涯の友になる。良き友とは?それが作品に溢れかえっている。

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越谷オサム  「ボーナストラック」(創元推理文庫)

ハンバーガーチェーンに就職した草野と仕事仲間の南。この2人を通じて、ハンバーガーチェーンの仕事や、普段の暮らしぶりが実に詳細に描き出される。しかも、客観的にではなく、彼らと同じ場所に入って、同じ息使いで。多分、越谷はハンバーガーチェーンで働いた経験があるのだろう。
 これにタイトルにもなっているボーナストラック、おまけの人生を歩むことになった、ひき逃げで殺され、そのまま行先を失い、幽霊となってしまった亮太が明るく楽しく絡む。
 幽霊亮太に絶妙な味がある。草野に「消えろ、失せろ」と言われれば、「どこへ消えろというの。どこへ行ったらいいのか幽霊の自分にもわからない。」と。
 この草野と幽霊亮太の間合いが実におかしく楽しい。
殆どが会話で物語が進む。この会話が、本当にそこいらの居酒屋で、若者達がそのまま会話している錯覚に陥るほど生き生きしている。そして、ウィットにとみ、質の高い落語か漫才を鑑賞しているような気持ちになる。
 ただ後半になると、幽霊である亮太が、草野、南と溶け合い、幽霊である特徴が消えて、普通の若者の会話になってしまい、並の作品になってしまったのが残念。

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| 古本読書日記 | 14:35 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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乃南アサ    「涙」(下)(新潮文庫)

乃南アサ    「涙」(下)(新潮文庫)
東京オリンピック前後、その時出来上がった新幹線は、革命的交通手段だった。それでも、東京と大阪沿線以外の多数の地方都市は東京からは遠かった。大阪から以西の年に、東京からやってくると、そんな遠くからよくと海外からやって来たように言われた。
 だから沖縄は本当に遠かったし、当時は日本ではなかった。この作品で知ってびっくりしたのだが東京オリンピック当時は、沖縄へ東京からの便は、週2便しかなかった。
 当時私が住んでいた山国でも、テレビはカラー時代に入っていた。それでも少し奥まった山間の村では電波が届かないということで、テレビが映らない村があった。この物語で宮古島が同じだったことを知り、そんな村のあったことを思い出した。
 この物語の第6章「涙」、作者は渾身の力をそそぎ書いている。台風の接近、直撃がBGMとなり、緊張感を増幅させている。
 しかし、この物語はそのクライマックスの高まりを作者があげればあげるほど、私は白けた気分になった。2つの点が引っ掛かる。
 一つは、寺瀬という悪のリーダーが伸二や部下を使って物語の根幹をなす、のぶ子を何故暴行し、殺さねばならなかったのかが理解できないこと。寺瀬という男は、悪知恵にたけ、狡猾な人間として書かれている。のぶ子を殺しても、それ以上のメリットがあるのか、狡猾な人間はそんな危険をおかすわけがないと私は思う。つまり動機が希薄すぎるのである。
 もう一点は、萄子が日本あちこち、勝の消息をたずね歩き回る。それほど裕福とは思われない萄子の家族。どこから、こんな昭和30年代から40年はじめにかけ、お金が生まれてくるのかが、当時の貧乏風景と重ね合わせるととても奇妙にうつる。

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| 古本読書日記 | 14:57 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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乃南アサ   「涙」(上)(新潮文庫)

乃南アサ   「涙」(上)(新潮文庫)
こういう小説はをトラベルラーズノベルとでもいうのだろうか。結構おもしろく作品と一緒に旅ができ好きなタイプの小説である。
 主人公の萄子の婚約者奥田勝が、結婚式一か月前に「もう俺を忘れてくれ。結婚はできない」と突然電話してくる。その日に、奥田勝を慕っていた奥田の上司だった刑事韮山の娘のぶ子が殺される。
 納得のいかない勝を探して、萄子が旅にでる。
このタイプの小説、探しにゆく相手に、もう一歩のところですれちい会えない。しかし、その繰り返しのなかで少しずつ真実が明らかにされる。そして、最後に2人がやっと出会えるととんでもない事実が明らかにされ物語が終わるというのが典型的なパターン。
 この小説も同じパターンで進行しクライマックスを迎えるのか。上巻では熱海と郡山を訪ねる。物語は東京オリンピックの年から数年を扱う。作者の乃南はまだ幼少期。その時代の旅、地方都市がどこまでリアルに描けれるかそれも楽しみのひとつで、下巻を手に取る。

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| 古本読書日記 | 14:46 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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高橋由太 「猫は仕事人」

猫派なので、猫が出てくる話には手が伸びやすい。
そして、化け猫が情に動かされて人間のいざこざに介入するというあらすじに思えたので、「猫絵十兵衛」みたいなちょっとクサいコメディを期待したんですね。

IMG_8626_20150824211943ed3.jpg

外れました。そもそも「仕事人」が何なのか考えずに買ってしまったんですよね。
まさかここまで、スパッ・ドシュッ・バサッ・ブシューって感じに血を飛ばして人が死ぬ話だとは思わなんだ。
化け猫に仕置きされる悪人たちは、首を絞められ、腹を刺される。
悪人に殺される人たちは、罪を着せられてさらし首とか、背中から出刃包丁でぶすりとか。新しくもらった奥さんが一味の人間で、病死に見せかけて殺されるとか。
「十兵衛」で懲らしめられる人間は、奉公人に粗末な飯しか食わせないとか、博打にはまって仕事道具も奥さんの着物も売っちゃうとか、ネズミを捕る猫を欲しがっている農家に高い値段をふっかけるとか、そんなレベルですからね。

貧しいことが罪であり、貧乏人は罪を着せられても文句を言えないし、夜鷹が斬り殺されても誰も気にとめない。孤児になった遠縁の少女を引き取って、そのまま女衒に売っても平気。
江戸時代のどのあたりかで状況は違ったかもしれないですね。幕末の設定だそうです。
今だって、貧しい人や前科持ちの人に冷ややかだったり、「そんな生活をしていれば被害に遭って当然」という意見があったり、娘に暗に風俗で稼いでくることを要求したり、あるとは思います。
それでも、表紙のかわいらしい絵と裏腹に、結構辛い内容だったなぁ、と思います。

あと、好みによるかもしれませんが、締めが物足りませんでした。
化け猫に入られ(のりうつられ)て下手人になった男女がどうなったかが分からない。平和が戻ってきたという描写が足りない。
化け猫仲間への友情に動かされて、まるが再び殺人に手を染めたという話なんです。が、視点がコロコロ変わるからまるの印象が薄くなっているし、揺れる気持ちもあまり伝わってこない。
その辺は続編で~ということなんでしょうかね。あまり、続きを読みたいと思えない。

| 日記 | 21:51 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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連城三紀彦他 「『このミス』が選ぶ! オールタイム・ベスト短編ミステリー 赤」

連城三紀彦「戻り川心中」「桔梗の宿」
「戻り川心中」の筋は記憶にありませんでしたが、「桔梗の宿」は覚えていました。
あとがきで指摘されていますが、謎解きの材料は棚ボタ式にもたらされるので、読者に推理させる形式とは言えません。
それでも、上位にランクインしたそうな。
美しい風景描写・心理描写が持ち味ですね。時代物だからなおよい。
昭和の初めの女郎さんが「私は(八百屋)お七なの」と言えば雰囲気がありますが、現代の女性がため息交じりに言っても「へ?」っとなりそう。
遺作の「処刑までの十章」も、けっこう練られていましたが、やっぱりセリフが芝居がかっていましたし。

江戸川乱歩「押絵と旅する男」
既読です。ビブリア古書堂でも扱われていました。
乱歩の没原稿と、小説家志望のファンによる加筆で、「押絵と旅する女」という小説が完成していたという。
女だったらどうなるんだろうか。
絵姿に恋をした夫と想い女(愛人)の入った額を持ち歩く老婆とか? いや、全く別の話かもしれない。

IMG_8625_2015082421194206b.jpg

高木彬光「妖婦の宿」
読者に挑戦する形式の話です。正統派ミステリーですね。
一応、「間取りは事件の鍵になるからよく覚えておくように」という親切な助言もあるので、そのあたりを二度読み返したのですが、分かりませんでした。
トリックを明かされ「ああ。コナンにもこういうやつがあったな」と思い、犯人を明かされ「一瞬その可能性も考えたけどさ」と負け惜しみ。
現代が舞台だったら、名探偵の情報をググっちゃうだろうから、難しいかもですね。
神津恭介と御手洗潔には共通点もありそうですが、神津のほうが親しみやすそうだなと。
そして、犯人に自決を許しちゃうなんて、コナン君にとって許せない点だろう。

泡坂妻夫「DL2号機事件」
犯人の動機が、なかなかユニークです。殺される前に殺せ、とも違う。
論理的といえば論理的ですが、ついていけないと思ってしまった。
シリーズ第一作とのことで、亜愛一郎はwikiにページが作られているくらいには有名らしい。
私も、名前くらいは見かけた記憶がある。どこまでが苗字なのかわからなかった。
白目をむく癖がある探偵役か。残念な感じだ。

| 日記 | 21:23 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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どうなってるの静岡県

私は静岡県の地方都市の住人です。
今、地元紙の夕刊をみてびっくりしました。静岡県には貧困子供が36000人いて、その割合が全国最悪だそうです。割合は本当?と首をかしげてしまう数字なので割愛します。貧困子供とは授業料、給食費、修学旅行費が払えない(払わない)家庭の子供だそうです。
 静岡県はつい最近まで、人口減少率が北海道(北海道の人ごめんなさい)についで第2位。こんなに住みやすく、穏やかな県なのに。
 それから小中学校一斉学力テストの成績が最近全国最下位を記録する。
それぞれ、理屈を類推すればできないこともないけれど、これらのことって本当?とただただ吃驚するばかりです。
 どうなってるの静岡県は。

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| 古本読書日記 | 18:12 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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乃南アサ   「禁漁区」(新潮文庫)

この前に投稿している笹本稜平の「素行調査官」、犯人となる警視総監をめざしているエリート官僚本田は、都心に200坪にもなる家を構え、しかも別荘まで所有している。警察官僚といえども公務員、こんなお金が稼げれるわけがない。ということは色んなところから貢物があるか、警察が自らスネに傷がある人間を恐喝してはきださせた金によって可能になったのである。
 この物語は、警察官でも下っ端の安全課の女性巡査の恐喝を扱う。不良女子高生が、ホストクラブに狂う。当然ある時点からお金が払えなくなる。クラブが脅しをかけ金を回収しようとする。そこに女性巡査がはいりこむ。高校生を客にして、法外な金をむしりとろうとすることは、法律違反である。だからまず店を脅す。店を摘発して営業できなくするし、支配人は逮捕して刑務所にぶちこむと。すると店は困るから、取りたてはしない、加えて幾らかお金を包んで女性巡査に渡す。女性巡査は、女の子の家におしかけ、数百万の請求を棒引きして30万円にしてあげると言って、30万円を被害者からまきあげ懐にいれる。
 似たようなことは警察の上から下までやっている。ただ、上はそれで蓄財をするが下っ端であるこの女性巡査は、その金を自分も女子高生と同じようにホストクラブに通い散財してしまう。下っ端はちゃんと不正蓄財ができないようになっている。

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| 古本読書日記 | 14:55 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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笹本稜平  「グリズリー」(徳間文庫)

元自衛隊幹部候補折本、別名グリズリー。この男がスーパーマン。武器を盗み、これを調合して破壊力絶大な武器を作る能力に優れているし、素手で人を殺すことができる能力も備えている。
 何しろアメリカ海兵隊一個部隊をひとりで立ち向かい破壊させてしまう。
こう書くと、典型的な現実離れしたスパイかハードボイルド小説のように錯覚する。しかし、
警察組織、公安と捜査課との確執、上層部が保身出世のために、部下を自殺まで追い込むところはこれでもかと警察の現実の醜さを描きだす。また、ネット、サイバー戦争も描き、
現実から遊離しないように工夫されている。
 鋼鉄のような男グリズリーがアメリカ女性に恋をするところはいらなかったように思う。
笹本のサービスか、恋のひとつもいれなければとのプレッシャーか。

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| 古本読書日記 | 14:50 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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笹本稜平   「素行調査官」(光文社文庫)

よく練られた奥深い警察小説である。
元探偵の本郷は、高校同級生で東大法学部をでて、警察エリート官僚である入江に警察官にならないかと誘われる。そして入庁すると警視庁監察係に配属される。監察係というのは
警官の不正、不品行を摘発取り締まるところ。
 入江の指示で、本郷は、警視庁トップ警視総監を狙っている本田の不正、悪を追及することになる。人員は、本郷のほかに北本のみ。北本は定年直前。警察仕事に達観している。
 入江を含めた3人の立ち位置が微妙でいつも行動に霞がかかる。本郷は警察の膿をだすために燃えている。逆に北本は冷ややか。入江は、目的、理想は言さわやかに話すが、結局自分の出世だけが頭にあり、どこまで不正を追及するかは、出世に結びつくかどうかで判断する。
 本郷がここでつっこむぞというとき、そこまでしないほうがいいと入江が止める。だから本田への追及が右に左に揺れる。
 それともうひとつ。不正追及の過程で中国人殺人事件がおきる。その真相に、捜査課、公安部門、監察係が別々に動く。3組織は常にいがみあい、握った情報も互いに共有しない。これにノンキャリアの小松が出世のために本田を脅す。
 これらの警察組織の矛盾といびつさが、上手く絡み合って、実に面白い警察小説になっている。

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| 古本読書日記 | 16:29 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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井伏鱒二   「漂民 宇三郎」(講談社文芸文庫)

おったまげた。井伏鱒二はとんでもない作家である。
 本の紹介。天保9年長者丸は11人の船員をのせ、松前の港を出帆。江戸に行く途中強い西風に煽られ漂流。そこからアメリカの捕鯨船に救出され、乗組員だった宇三郎はハワイに着く。そこから、宇三郎、カムチャッカなどロシアの港を転々としながら天保14年松前に帰ってくる。
 物語は当時の資料もたくさん引用しているので、当然、実際におこった漂流をベースにして書かれた物語と思ったが、実は井伏の創造物らしい。実際に漂流はあったかもしれないが、少なくとも宇三郎は井伏が作り上げた架空の人物だそうだ。それにしては宇三郎は物語で生き生きしているし、リアリティがある。
 当然ハワイでの生活。英語などまったくできない。覚えたての英語で懸命に宇三郎がしゃべる。
 「ミー、ノーサー、ノー・スペッキ エングレッス。ショー ミー パイパ。ショー ミー ペンセル」
 私は知らない。英語はしゃべれない。紙をくれ。鉛筆をくれ。
これは井伏の創造語である。日本人が初めてであった英語は、こんなふうに聞こえたのだろうと読者になるほどとうならせる。

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| 古本読書日記 | 16:24 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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辻村深月 「鍵のない夢を見る」

同じ本を読んでみたシリーズ。
じいやの感想はこちら
巻末の、林真理子との対談もなかなか面白いです。

文章力のある作家さんで、すらすら読めます。直木賞受賞作ですしね。
心ざわつくイヤな話ばかりです。
最初と最後の話は、はっきりとしたバッドエンドになっていませんが、主人公の勘違い・鈍感・自己中心的なところが読者にがっつり伝わってくるので、やっぱりイヤな話ですね。
自分の正義を振り回す、イタい人間も多い。

爺やが感想を描いているのは、「芹葉大学の夢と殺人」です。
屈辱的なことを言われても男と縁を切れない女の気持ちは、何となく理解できます。
「彼には私しかいない」という思いこみとか、夢ではなく自分を見てくれる日が来るはずという意地とか。
むしろ、男が何を考えているのか分からない。
まぁ、受診したら何かしら病名が付きそうな人物なので、頭の中味を理解するのは難しいかもしれませんが。

キョンシーを知らなかったので、テンテンが人間であり、キョンシーを退治する側だと理解するため少し立ち止まりました。
懐かしのアイテムを出すのは、その世代の読者には喜ばれるかもしれませんが、ずれてしまうと分かりにくいですね。

作者自身、出産・育児を経験されたそうで、
「夜中におむつを替えて手を洗ったと思ったら、それは夢で、自分はまだベビーベッドの前に立っているだけだった。
目の前では、おむつを濡らした娘が赤い顔で泣きじゃくっている」
といった、育児疲れで現実と夢の境が分からないという描写が上手かったです。

| 日記 | 13:11 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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笹本稜平   「駐在刑事」(講談社文庫)

最近のミステリーは、トリックに目新しいものが無くなったのか警察内部腐敗、陰湿な権力闘争や、人生の生き様などを描く作品か、とても現実にはありえない引田天功ばりの大がかりなトリックを前面におしだした作品の2極に完全に分離してしまっている。
 もう少し現実感のあるトリック、納得できる動機が融合した常識的な作品が欲しい。
その点では、この短編集はその分離した2点が融合した質の良い作品集となっている。
 夫が経営した会社が破産する。破産寸前に夫は亡くなる。破産申請され破産が宣告されるまで、およそ一年が必要となる。
 ところが、購入したことを忘れていた宝くじ。破産申請してから半年後に3億円があたっていたことを妻が知る。今それを換金すると、破産が認可されずに債権者にむしりとられる。
 宝くじの換金有効期限は一年。そこで、親友に換金を依頼して、破産が認可されるまで持っていてほしいと依頼する。3億円という生涯かけても手にすることができないお金を親友が手をつけずに持っているだけというのは難しい。ここで、犯罪が起きる。
 単純だけど面白い発想を笹本はトリックとして使っている。

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