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2015年06月 | ARCHIVE-SELECT | 2015年08月

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山田風太郎   「御用侠」 (小学館文庫)

この作品は昭和50年に発表されている。昭和50年というのはロッキード事件が起こり田中角栄の逮捕があった年である。
 この事件で今でも印象に残っているのは、田中角栄が逮捕されても堂々としていて、全く悪びれるところが無かったということ。それは、傲岸という印象もあったが、彼が全く罪を犯したとは思っていないのではと信じ切っていると態度だった。政治家が仕事の報酬として、見返りをもらうことは正当なことで、やましいところなど一点もない。そのことにより、新潟は田舎から、近代都市に生まれ変わり、皆が幸福になったのではないか。今の小沢一郎の思いと岩手県の状況が新潟と重なる。
 江戸時代の武士の生計は、給金では成り立たず、かなりの部分は、下っ端は下っ端なりに、街の人々を脅したり、懐柔して金をせしめ成り立ち、階級が上がるにつれ、商人の利権を守ったり、拡大してあげることで、お金をせしめ成り立っていた。それは、闇などということではなく、当たり前で普通のことだった。
 この作品は、特権階級にあぐらをかき、贅沢三昧をしている人間に蜂の一刺しを行って、懲らしめてみようとする作品。そういえば、昭和50年当時も蜂の一刺しという言葉が流行った。

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山田太一   「終りに見た街」(中公文庫)

1980年に住んでいる家族とその友達父子が突然1944年 昭和19年にタイムスリップする。
 パソコンどころか電話もガスもテレビ、洗濯機、冷蔵庫も無い時代。それだけでも、彼ら家族、特にこども達にとっては大変な時代。加えて、これが最も対応が難しいのだが、今戦っている戦争は負けることがわかっている。更に来年3月20日には東京大空襲があり10万人が犠牲になる。その後広島、長崎に原爆がおちることもみんなわかっている。当時でも、食料は不足していたが、戦後も混乱が続き、何とか食べ物が普通に手にはいるようになるのは朝鮮戦争後。それまでの今から6年間は困難に耐えねばならないことが予めわかっているということだ。
 この作品で、主人公家族の父と友達の父が、大空襲があるから逃げろと危険ななかビラ配りをする。でも、空襲での現実の犠牲者10万人は変わらないから、無駄な行為である。
 唸ったのは、皆が国のためなら命はおしくない、少しでも国に役立ちたいと少年少女まで工場に行き働いているのに、何で反戦のビラなんか配っているのだと母や子供たちが父親たちを非難するところ。
 今私たちが手にする戦争ものは、戦争直後に180度視点が変わった考え、視点で描かれている。戦争反対が物語のベースにあり、戦争悲劇を扇情的に扱う。殊更扇情的に扱わなくても、客観的に当時の状況や人々の思いを描けば戦争の悲しさは読者に確実に届く。
 扇情は、気が付いたら、人々を戦場に連れてゆくものだと思う。

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山田風太郎   「信玄忍法帖」 (時代小説文庫)

山田風太郎は私の知っている作家の中では群を抜いての大妄想家である。その大妄想が、膨大な知識、博識の上に書かれるからその魅力ははかり知れないものがある。
 徳川を打ち破り京を目指していた信玄。持病の肺結核が悪化して、三方原より先に進めず後退。尾張と信濃の県境の村で最期をむかえる。しかし、信玄が亡くなったことが戦国の世に知れ渡ると、武田は滅亡するだろうし、織田、徳川勢の力が一気に増す。これはまずいということで、信玄の影武者6人が創られる。
 織田、徳川では信玄が死んだ噂が真実か確かめたい。そこで、伊賀忍者服部半蔵を先頭にして武田軍に忍び入る。これを迎え撃つのが真田に仕えた忍者、猿飛佐助。更に、川中島の」闘いで死んだとされている、武田の名軍師山本勘助が実は生きていたとしてよみがえり参戦する。
 この忍者同士の戦いがやたらと面白い。奇妙奇天烈な戦いで、馬鹿らしいとは思うのだが、知らないうちに本のとりこになってしまう。6人の影武者と伊賀忍者が妖怪な忍術を駆使して戦い、必ず相討ちで、影武者一人、忍者一人が死んでゆく。その様が6編の短編になっている。ありえない妄想忍術がくりひろげられあほらしく思うのだが、物語に引き込まれる。そして、次はどんな忍法がでるのかわくわくする。早く次編を読みたくなる。
 不思議な作品である。

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アンソロジー  「生きるかなしみ」(ちくま文庫)

山田太一が編んだ著名人による生きる哀感を描いた作品集。
3つのことを知り、強い衝撃を受けた。
 宮沢賢治は、あるときからどでかいトランクを持ち歩いて東京と故郷岩手を往復していた。東京から帰ったとき、トランクにははいりきれないほどの原稿が入っていた。又三郎もイートハープも入っていた。そのトランクは9年間、賢治の実家に置かれていた。次にトランクは賢治が経営していた石材会社の壁材料の見本が詰め込まれ賢治と一緒に東京へ向かった。
 そして賢治は体を壊し、故郷へ息絶え絶えに、トランクと一緒に故郷に帰った。
そしてしばらくして亡くなった。トランクはそのまま実家に2年間放置されていた。
 遺品を整理していた賢治の弟が、2年ぶりにトランクを開けたところ、蓋の内側に小さな袋が縫い付けられていた。袋の中に小さな手帳があった。その手帳に「雨ニモマケズ」は書かれていた。
 太宰治は、江の島袖ヶ浦で自殺幇助により、女給を殺害した。兄が大金を故郷からもってきて女給の家族にあげ謝罪した。そのため、殺人にはならず心中未遂として扱われ太宰は刑務所にはいることを免れた。五味康祐はそれから太宰の文体が変わったという。道化、含羞、てらい、過剰なサービス。これは、太宰の人殺しを上手く自殺幇助で逃げたことによる、罪の意識の反映なのだそうだ。もう一回太宰を読み直さねばならない。
 水上勉をたくさん読んだ。しかし、水上は若く困窮だったとき作った息子を捨てた。捨てられた子は自らの生い立ちを自伝にして出版した。しかし水上の作品で子供を捨てたことを描いた作品は読んだことが無かった。それで少し水上がいやになっていた。しかし、この作品集に水上が捨てた息子について書いたエッセイが収録されていて、良かったと安堵した。

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楡周平  「ワンス アポン ア タイム イン東京」(下)(講談社)

 学生活動家というのは性的関係がルーズだった。むしろ、既存の道徳に反対する、象徴としてフリーセックスがあったのだ。安田講堂籠城の際、講堂の中でも、活動家同士の性行為は普通のことだったのかもしれない。
 安田講堂で籠城し、セックスに及んだ2人、有川三奈と白井慎一郎。30年の歳月を経て、三奈は全国の50の病院を傘下におく有川会の会長。一方白井は政権党である民自党の政調会長として政界に君臨している。そして、三奈の長男である崇と白井の長女尚子が婚約。崇は大蔵省に勤めているが将来は民自党公認で選挙に打ってでることが予定されている。
 ところが、崇は、実は安田講堂で三奈と慎一郎が関係した際にできた子であることがわかる。三奈は異母兄妹の結婚には嫌悪がさきだち反対する。そのときの政治家白井の言いぐさがすごい。
 兄妹同士の結婚いいじゃないか。健全な子ができれば、親は優秀だから、一流な人材になるはず。もし、障害を持った子ができたら、世間からは同情をかう。更に障害者やその団体からの票もみこめる。いいことばかりじゃないか。
 政治家とは凄いことを考えるものだと驚愕する。
この作品結構面白いが、最後が尻切れトンボ。物語で書かれた命題、課題はすべて解決させてほしかった。

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楡周平  「ワンス アポン ア タイム イン東京」(上)(講談社)

この作品は、文庫では「宿命」とタイトルを変えている。「宿命」はテレビで制作され放映された。
 上巻しか今のところでは読んでいないから、話の展開はどうなるか不明だが、100数十ページを費やし、1960年代後半の学生運動を描いている。当時の学生運動を肯定するつもりは無いが、東大安田講堂撤退まで、学生運動は社会の問題、風景として存在していたのは否定できない。どうして、この時代に学生運動がそれなりに盛り上がったのか。その背景に楡は全く斬りこんでいない。これでは運動を知らない世代には、こんなばからしい危険まで犯して、権力に対し立ち向かったのか、ちっとも動機背景がわからない。
学生運動が机上の出来事、ファッションのレベルになっていて、実感がわかない。
 現実感の薄い学生運動描写の100数十ページがこの物語で、重要な位置をしめているのなら、読者は白けるし、重要でないのなら、何故100数十ページも費やしたのか、いずれにしても白けてしまう。

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原田マハ   「ジヴェルニーの食卓」(集英社文庫)

作家であり、美術館、博物館のキュレーターでもある原田マハ。絵画の説明に言葉を尽くすから、絵を知らない私のような人間にも目の前に絵が生き生きと現われてくる。今言葉の力を発揮できる稀有な作家の一人である。
 4つの中編作品集である。どれも素晴らしいと思うが、やはりゴッホの名画「タンギーじいさんの肖像画」を扱っている「タンギー爺さん」が印象的である。タンギー爺さんは、セザンヌに耽溺し、セザンヌを世に送り出したパリの小さな画商である。絵と引き換えに画材を提供するので、貧乏画家が自分の絵を持ち込める。貧乏画家にとってはありがたい店である。だから、色んな画家がタンギー爺さんの店には集まってくる。貧乏作家のゴッホは爺さんの店をよりどころにしていた。だからたくさんの「タンギー爺さんの肖像画」を描いた。
 敬愛するセザンヌに見てもらいたくて、ゴッホは持てる力をすべて使って「ひまわり」を描いた。でもこの作品にはセザンヌの評価はでてこなくてそれが少し残念。現実にはそれほど2人は交わりが無かったのかもしれない。
 セザンヌの悲劇的未来を予想した小説に、セザンヌの親友だったゾラの小説「制作」があることもこの原田の作品で知った。ドガの彫刻「14歳の小さな踊り子」誕生の物語も素晴らしかった。

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桜木紫乃  「ホテルローヤル」(集英社文庫)

私たちの世代では、中学卒業をして社会へでる人が少なからずいた。今のように中学校時代遊びまくり、不良に近い状態になり行くべくところがなく、そのまま社会の隅においやられるのではない。
 家庭の事情もあろうが、まだ多くは、職人になるのに、家業を継ぐのに、勉強などいらないという風潮が残っていたことが影響していた。だから、真面目、真っ直ぐに社会へでていった。
 その時親が言いうのは、「真面目に懸命に働け。そうすれば、認められみんなに支えてもらえるから。」それは、そのまま生きていくための指針。だから汗水たらし、働く。旅行などほとんどしない、海外旅行など夢の先。外食もファミレスが精いっぱい。フレンチ、イタリアンなどは言葉さえ知らない。
 確かに支えてくれるひとは多かった。それでも、鍛冶屋も、建具も、左官も、大工も無くなるか、まるで社会の底辺を這うような仕事になってしまった。
 ささやかな街の電気屋をしていた主人公が、大型電気量販店ができ、商売がたちゆかなくなり、結局技術があるということで、量販店の店員として雇われる。年収400万円。それで、育ち盛りで、受験真最中の子供3人を養わねばならない。学費をねん出するために、家屋を売り、小さなアパートに引っ越す。生活のために働く毎日が続く。
 そんなとき夫婦で、用事でお寺にでかけた帰りにラブホテル「ホテルローヤル」の看板が目にとまり衝動的にはいる。
 膝をまげまるまらないと入れないアパートの風呂。子供と一緒に寝るアパートの部屋。
泳げるようなバブル風呂に夫婦ではいりはしゃぎ、足をのばしても、まだふとんの上に全身がある大きなベッド、一戦をしたあと、主人公は思わず寝入ってしまう。それを起こさないようにじっとみつめる優しい妻の眼ざし。結婚して十数年ぶりの幸せなひとときがそこには確かにあった。

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湊かなえ   「母性」(新潮文庫)

湊かなえが大好きな告白体作品。
人は自分の行動、言葉を他人はこう思ってくれているはずだと考えるが、他人は自分と同じようには決して思っていない。それが嵩じるとどうなるのかをこの作品は描く。
 母親は、自分の母に溢れるほどの愛を注がれ育てられた。それが幸せと感じている。だから自分の娘にも同じようにしてあげる、あげていた。ところが、娘は自分の母に本当に愛されているのだろうかといつも感じている。その感じ方の違いで、同じ事象の風景が全く異なってみえる。
 娘が両親とおばあさんと一緒に住んでいた家が台風にあう。そこで発生した土砂で、家がつぶされ箪笥の下に娘と御婆さん(母の母)が下敷きになる。そのとき御婆さんは、自分のことはいいから娘を助け、大事に育てろと母に指示する。実際はわからないが、その指示に戸惑っている母にたいして御婆さんは舌を噛み切って死んでしまう。
 御婆さんを救えなかったことが母親には重荷になる。決して人には言えない。しかし、娘の母に対する冷たい行動、言動に実は御婆さんの死の実際を知っているのではと疑心暗鬼になる。
 そして娘が事実を知ったとき、破滅が訪れる。
それにしても、この作品でもそうなのだが、父親というのは何のために存在しているのだろう。何に対して戦ったのかしらないが、学生運動に加わり、資本論やリルケの詩集を読み込み、頭でっかちの議論をしている。でかいことは言うが、肝心なことには口をつむぐか、必ず逃げる。そして、追いつめられると「許してくれ」と謝る。こんなことの繰り返しである。

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三崎亜記  「コロヨシ!!」(角川文庫)

発想は面白い。掃除がスポーツとなり、全国大会まである。
「掃除」は800年前、隣国の大国である「西域」から伝わった武道が、発展をとげ「動きの美しさや技術に発展」した競技である。しかも、活動制限スポーツに国により指定され、高校3年間しかやることができない。
 ユニークなのだが、なかなか読んでいて掃除なるスポーツがどんなものか上手くイメージができない。決まり、技術、決め手や用具に三崎独特の造語があり、そこが三崎ファンにとってはたまらないのだろうが、一般にはついてゆけない。
 柄掃、浮拳、福点視認、暗突、残留思念、番舞い、左舷頂央二掃半  など。
この作品たくさん売れたのか。何とシリーズになっていて3巻まである。
私は一巻で終了。

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朝井リョウ  「何者」(新潮文庫)

拓人は、自分より他人は劣っていると評価することによって、自分の立ち位置を確認し安堵感を持つ。少し前までは、他人を見下す評価をして終わるが、今は自分の感情を吐露し思いを残しやすいネットがある。拓人は他人にのぞかれそうにないアカウントを持ち、そこで見下した感情を吐露してしまう。まずいのは、拓人が見下す性癖があることに気が付いていないこと。
 大学3年の秋になり就活が始まる。情報交換をしながらと、仲間4人が集まって就活を開始する。拓人はあんなこと言ってはいけない、あんなことをやってはいけないと、思っているだけでは意味がない、20点でも30点でもいきから自分をださなきゃ、などと仲間の就活をみて思う。そしてそれを「何者」というアカウントに書き込む。
 そのブログを就職が決まらない理香という女の子に読まれる。他人ばかりを評価している拓人自身は一体何者なの?と突っ込まれる。そして理香に、今の拓人では面接官に性格を見透かされ絶対就職はできないと言われる。
 拓人は理香が言ったとおり、就職に失敗し、5年生となりまた就活に挑戦している。

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水木しげる  「水木サンの迷言366日」(幻冬舎文庫)

水木の著作やインタビューから拾い上げ編集した迷言集。
既知のものが多い。この中からいいなと思った2作を紹介します。
 
自転車に乗ると、
 自転車に乗っている人間がばかに
 貧乏人に見えるもんだねぇ。


 虫とか草とかが吐く言葉は
 地球の言葉なんです

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重松清   「なきむし姫」(新潮文庫)

本の紹介に愛すべきホームコメディと書いてあった。そうか、ホームコメディなのか。
ときどき、読んでいて何だこの低レベルの表現はと怒りがこみあげる。そこで、深呼吸。そうだこれはホームコメディなのだと無理に自分を納得させる。そうでもしないととても読むにたえない。
 33歳同い年の夫婦。哲也とアヤ。哲也に平社員から主任になって、神戸への一年間限定の異動辞令がでる。それを哲也は怖くてアヤに言えない。哲也がいなくなるとさみしいと泣き出してしまいそうだから。神戸に行かねばならない日を3日も遅らせて、ようやく近くにある観覧車に乗り、5周回ったところで説得でき神戸に行けるようになる。こんなバカな話があるか。こんな社員がいるわけがない。そうだ、これはホームコメディなのだ。と一息いれる。
 留美子というモンスターママが登場する。クラス担任で新人の水谷先生の指導がなっていない、水谷先生を変えるようにと、校長に訴える。変えないと教育委員会に訴えると。それで、すんなり水谷先生は変えられて、研修教育を受ける。校長だったら変えないと、要求をつきかえすのが普通。そうか、ホームコメディだったっけ。と、また深呼吸。
 読めば読むほどあほらしくなる。

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楡周平  「骨の記憶」(文春文庫)

主人公長沢一郎が、勤めているラーメン屋が借りているアパートから逃げ出す。その時、遊びに来ていた元同僚の雑嚢を間違って持ち出す。雑嚢には8000円がはいっていた。小説の舞台となっている昭和30年ころの8000円は大学生の初任給くらい。中卒集団就職の一郎にはとんでもない大金。その大金を返そうとアパートに戻ると、アパートが火事になっていて、元同僚が焼死していた。しかも、新聞記事によると焼死者は元同僚でなく一郎になっていた。 ここで、一郎は元同僚の松木幸介に生まれ変わる。
 それが人生の変わり目となる。ラーメン屋の若僧だった一郎が、時勢にのり松木幸介として、大金持ちとなる。
 昭和30年代の集団就職の風景や集団就職者の都会の生活、それからの高度成長、バブル経済の狂騒が見事に描かれている。
 しかし、中味は淡泊である。歴史の年表を読んでいるよう。これで600ページ余の長さは辛い。

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水木しげる  「ほんまにオレはアホやろか」(新潮文庫)

水木しげるは自身が私には楽しい妖怪に思える。
よくも戦死せず、帰国できたものだと、ラバウルでの自伝部分を読んで思う。更に、そのラバウルで土人の部落に入り、土人に同化してパウロなる名前をつけてもらい、故国へ帰国するときには、土人たちから帰国しないでくれと懇願された。こんな日本人は聞いたことはない。
 戦後、出版界は苦節のときを迎えた。ここでいう、出版界というのは、文学、哲学、評論の世界のことを言う。吉村昭、水上勉、吉行淳之介など、作家として自立するまでの苦しみは胸に迫るものがある。
 しかし、水木しげるが歩いた戯画の世界はその上をゆくほどひどい。まず、戯画の世界は文学よりかなり低い地位におかれた。だから、出版社などというものはすべて超弱小会社ばかり。まともに、原稿料など払ってくれないし、のべつまくなし倒産をする。
 更に戯画の世界が短期間に変転する。紙芝居。それから貸本屋。そして最後にやっと漫画雑誌の時代がやってくる。
 水木しげるはそのすべてのどん底と頂点を経験し、ふりまわされるだけふりまわされる。
それは壮絶である。しかし、強烈な生活力と底なしのユーモアで乗り切る。
 この底力はどこからでてくるのか。最後の近いページにでてくる。
 生きるものには、生きているか死んでいるか二種類しかないんだ。トンボとか猫とか植物もそうだ。人間だけが時計なんかをつくって、自分で自分の首をしめているんだ。

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楡周平  「クレイジー ボーイズ」(角川文庫)

世界全体の軍事費は206兆円。そのうちアメリカが75兆円を占めている。また、兵器事業でロッキードは4.5兆円。グラマンは3兆円余の売り上げでなく利益を得ている。
 これだけの利益をあげるためには、税金を財源にしてアメリカ政府に買い上げてもらわねばならないが、それだけではとっても稼げない。
 アメリカだけでなく、兵器を購入する大きな顧客、国がなければならない。しかも、支払が確実な国。
 それが中東諸国である。中東諸国には石油がある。それを財源として兵器を購入することができる。ということは、中東ではいつでも戦争、紛争が行われていなければならない。それが、IS国のような過激テロ国家であっても、やはり石油によって兵器購入ができているのだから。
 だからアメリカは、絶対中東での戦争を終結させようとはしない。終わっても、またどこかで戦争が勃発する。あるいは、させる。
 しかし、ここにとんでもない企業が現れた。水素電池自動車の量産をしようとする企業である。もし、水素電池自動車がガソリン車にとってかわると、石油の多くが不要となる。
 そうなると、石油で食べている中東諸国は、単なる貧乏な砂漠の国になる。石油で世界制覇をしていたオイルメジャー企業が没落する。兵器を売る得意先がなくなる。
 この本を読むと、トヨタは大丈夫かと思ってしまう。女性役員麻薬輸入逮捕も兵器産業の陰謀ではないかと勘繰りたくなる。

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山本幸久  「ある日、アヒルバス」(実業之日本社文庫)

凄い。山本に完全にノックアウトを食らった。いわゆるよく言うお仕事小説だが、これがはんぱではない。おそらく、ここに書いてある何十倍も調査取材をしたと思う。そしてそのエキスだけをこの小説に詰め込んでいる。だから、主人公のガイド、運転手、社長、ベテランおばさん、会社の風景がリアルに伝わってくる。更に、観光ツアーバスのお客も実に生きている人たちとして響きわたる。
 更に山本創作の「アヒルバス観光バス会社」の社歌が秀逸。
  夢と希望をのっせってぇぇ
  るんるん明日もはしります
  風よりはやくはしります
  あなたの思い出になりたいのぉ
  アヒル アヒル アヒルゥゥ♪
  アヒルバスは明日もはしるゥゥ♪
こんなのが2番まであってそこで終わるかと思ったら課長「ハイ」っと号令をかける。
  グワワワァ
  グワワッワァ
  グワグワグワグワワァ♪
と鳴き声を斉唱。これが課長号令のもと3回続く。
たまらない。

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星野智幸  「目覚めよと人魚は歌う」(新潮文庫)

日系ペルー人のヒヨヒトは、街でのいがみあい騒動にのせられ、人を殺してしまったようだ。それで、糖子という女性の伊豆高原にある家に恋人と逃げ込む。そこには、丸越なる大家と、糖子の息子だと思われる密生が疑似家族として住んでいる。そして逃げ込んだヒヨヒトたちも疑似家族としての生活を始める。
 ヒヨヒトは貧乏なペルーを離れ日本にくるが、内実はペルーの下をいく程の底辺生活。その日暮らしがやっと。辛い。現実を忘れるために、とっかえひっかえ恋人をつくる。しかし、苦しさの果てに人を殺してしまう。
 逃げかくまわれた高原の家は、そんな現実を忘れさせてくれるはずだった。恋人に、糖子に溺れ、サルサに踊り狂っている時は忘れている。だけど、それ以外のときはずっと底辺の生活と人を殺したことが、彼を苦しめる。
 でも、糖子は言う。ここへくるまでは、あなたは亡霊で生きてきた。この家で初めて生身の人間になったと。そうなのかとヒヨヒトは思うが、むしろ今の生活が亡霊ではないかと思う。
 今がどうであれ、過去にしでかしたことは、糖子にもヒヨヒトにも亡霊ではなくまさに真実となってのしかかってくる。

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朝井リョウ  「チア男子!!」(集英社文庫)

大学生だけにしかできないこと、大学生の特質、それらをうまく描いている作品だ。
大学については、その特質を色んな観点で言い表すことはできる。この作品では2つである。
 一つは大学にはいじめが無いということ。もちろんいじめはあるかもしれないが、その効果は大学生活では無い。大学は誰もが自由で、ゆるやかな関係が築かれる。苛められてもその自由が吸収してくれる。性格が変わっている。
体格や容貌に欠陥がある。動きも鈍くとろい。そんなことで、高校生までは苛められることがある。高校までは苛められると殆ど逃げ場が無い。大学だけは違う。そして残念だが、社会にでるとまた苛めが復活する。
 更に作品は大学生しかできないこととしてとんでもないことを読者に提供する。それが男子学生のチアリーダーディングである。他のスポーツでは、社会にでても、仲間をつのって同好会のようにして続けられるものが多い。しかし男子チアは大学生でしかできない。 その特質が大学生しかできないゆえに射すような輝きを持つ。
 チアリーディングでの大切なこと。技術や美しさよりも、見ている人を笑顔にすること、見ているひとを不安にさせないこと。朝井のこの言葉が印象に強く残った。

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楡周平  「朝倉恭介」(角川文庫)

楡作品のベストセラー 朝倉恭介シリーズ最後の作品。
主人公の朝倉、組織の手配により日本にアメリカ経由で送られた南米産のコカインを日本に輸入。それを引取り日本の代理人に渡し、証拠を残さずそのままアジアの国へ高飛びして姿を消す計画を実行する。
 コンテナは大井埠頭に陸揚げされるが、コカインの一部が漏れていて、税関検査になり、保税倉庫に搬送され、コカインと他の貨物に区分けされ一時保管される。その保税倉庫に潜入して、コカインだけを他の貨物にすりかえ、手に入れ持ち去ろうとする。
 しかし、朝倉がコカインを奪取にやってくる情報は、警察、CIA,もちろん最強の朝倉の相手である川瀬にも伝わっている。彼らが倉庫を完全に取り囲み、朝倉の捕獲を狙っている。
 そうなれば乱歩の怪人二十面相のごとく、最高の警戒の中、どうやって朝倉がコカインを奪取し、警戒中のたくさんの人たちをあざわらうかが作品の最大の見せ所だと思って読み進む。ところが、コカイン奪取は、簡単に失敗。後は、朝倉の必死の逃走と、それを追うCIA
警察、川瀬の追走が作品の読みどころになっている。かなり、しらけた。しかも不死身であるはずの朝倉は逃げきれず、最後は川瀬に追いつめられ、海に沈んでしまう。ひどい、逃走にも失敗するのかと2回目の白け。
 しばらくして、実は朝倉は死んではいなかったとしてシリーズが継続するなんていうことは無いのだろうね。

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三崎亜紀   「失われた町」(集英社文庫)

三崎亜紀   「失われた町」(集英社文庫)
私の住んでいる街は、古くからの家10軒以外は、昭和50年に宅地造成され、家を新築して移ってきた人ばかりである。多分その頃は、きれいな家が並び、若い夫婦と子供たちが溢れた今でいうニュータウンだっただろう。
 今は老人ばかりの街になってしまった。地方都市では、ここ10数年の不況で就職するところが無く、若者は、仕事のある大都会へ移住してしまった。たまに、若年の夫婦家族がいても、じいさんばあさんとは住みたくないと言って、同居を拒み、別に住居を構えている。
 そして、毎年のように数軒の空き家ができ、廃屋として残る。
この作品のように30年単位が適当かどうかは別として、にぎやかだった街が忽然ではないが消滅してゆく様を目の当たりにしている。だから、結構この作品は身にこたえる。
 発想、閃きは素晴らしい。しかし、話の運びが現実離れしていて、単に三崎だけが悦にいっているような作品になってしまっている。
 この作品を書く前に、我が街にきていたら、リアリティ溢れる作品ができたと思う。

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楡周平   「無限連鎖」(文春文庫)

楡周平   「無限連鎖」(文春文庫)
物流は今や文明社会には経済活動や人々の暮らしを支える生命線である。この物流を破壊できれば、社会はひっくり返り大パニックを引き起こす。この物語は、アメリカの物流動脈60か所をプラスチック爆弾で謎のテロリストが破壊。アメリカ社会を大混乱させるところから始まる。その大混乱に大統領を含めどう対応して、犯人やテロ集団をどう追い込んでゆくか物語の先を期待していて読んでいたら、突然、場面は変わり、フィリピン沖でシージャックされたタンカーが東京湾の真ん中で係留され、そこに積まれているプラスチック爆弾をシージャッカーの要求を飲まねば爆発させるという事件に変わってしまう。
 楡だから、物流基盤破壊もシージャッカーとの戦いも息を飲むほどに面白いが、釈然としない部分が残る。
 アメリカが未曾有の大混乱になっているにもかかわらず、大統領や軍は、東京湾の事件だけに集中してどうするかを検討する。アメリカの大混乱はどうするのとつい考えてしまう。
 更に最もよくわからないのが、テロリスト集団がアメリカを憎んで、こんな危険な行動をとるものだろうか。見返りのあるメリットが集団にあるのだろうか。動機、背景に納得できる説明が無いと、どんなに破壊、抵抗、戦いの描写が優れていても、物語にのめりこむことはできない。

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| 古本読書日記 | 14:27 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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朱川湊人   「オルゴォル」 (講談社文庫)

朱川湊人   「オルゴォル」 (講談社文庫)
大阪で知り合ったサエというお姉ちゃんと、主人公のハヤトは深夜バスに乗って、広島、鹿児島を目指す。
 その旅の道中でサエが言う。
 本をたくさん読めと。本をたくさん読むと、脳ミソに磨きがかかり、頭がキッチリ働くようになるのだと。
 私も山のように本は読んできたが、心がけが悪いのか、脳ミソに磨きはかかることは無かった。それでも、海外への出張での一人旅。おたおたしながら、ホテルで、飛行場で、バスで、機内で読み漁った本の幾つかは忘れることができない。
 何故だかわからないが、一人旅で読む本にはいつも心が揺さぶられる。
 小学4年生の最後にでた旅、深夜バスと安宿と路面電車を使って、原爆ドーム、記念館にサエとハヤトはやってくる。サエが言う。別れてひとりでドームや記念館をみようと。
 旅はらくちんをしてはいけない。そして、肝心なものは一人で見つめなければいけない。そうしないと魂が揺さぶられないから。
 一人旅は揺さぶられて、また揺さぶられるためにあるのだから。

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| 古本読書日記 | 17:34 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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梨木香歩  「雪と珊瑚と」(角川文庫)

梨木香歩  「雪と珊瑚と」(角川文庫)
主人公の珊瑚(名前)は、思い悩むこともあるし、切なくて涙も流す。だけど、その悩みや涙の悲しさが私には伝わってこない。登場人物が珊瑚を含め、皆暖かく、歪んだ人が一切登場しないことがひとつの理由だ。
もちろんすべての物語での人物がいい人なのはわかるが」、環境や状況により少し意地悪な言葉や行為が無いとちっともドラマにならない。
 まず主人公の珊瑚がピンと来ない。まだ21歳。それなのに、行き当たりばったりで恋に堕ち、妊娠し雪という赤ちゃんまでいる。そのいきあたりばったりの男の子と珊瑚は入籍までしたが、男の子は子供ができたら逃げてしまう。この状況では普通の人は、人生に投げやりになるだろうし、いじけると思う。それが、珊瑚は全くならない。ピュアで前向きで可愛い。何でこんな前向きな子が馬鹿な男にひっかかり子供まで作ってしまうんだろうありえないと思ってしまう。
 更にカフェ レストランを開店させるが、メニューに載せる料理が、どれも凝っているのにもかかわらず、やたらたくさんある。カフェだからコーヒーも凝る。で、料理もコーヒーも原則主人公一人で作る。とても、実現可能には思えない。
 物語は梨木の良さがでて、美しいが、ちょっとこの作品は引いてしまった。

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| 古本読書日記 | 17:30 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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朱川湊人  「赤々煉恋」(創元推理文庫)

朱川湊人  「赤々煉恋」(創元推理文庫)
川端康成の「片腕」ではないけど、五体満足でない人をこよなく愛する人がこの世にはいるらしい。ミロのヴィーナスは腕がもぎれている。これではならじと後から残った腕を作りくっつけようとした。くっつけたどうかはわからないが、時の王がやはり腕が途中で切れていたほうが美しいと言い、今のヴィーナスになっている。
 主人公の私は、万引きが性癖になっている。別にそれが欲しいというわけではなく、どうしても万引きをしたいという衝動から万引きをしてしまう。その結果家から裸同然で追い出され、渋谷で娼婦となる。
 娼婦となって相手をしながら恋心を持ってしまった男が変わっていた。腕を後ろ手にしたまま、抱かれることを要求する。腕が使えない、腕が無いほうが男は燃え上がる。
 男が連れて行ってくれた会員制の秘密クラブが凄い。店のママがジャズを歌いだす。そうすると周りの男たちが、彼女を抱きかかえ、客のテーブルに持ってゆく。足が無いのである。
 そして客のテーブルの上にどんと置かれたまま、ママはジャズを歌い続ける。
足の無いママに客は興奮するのである。

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高山文彦  「どん底 部落差別自作自演事件」(小学館文庫)

高山文彦  「どん底 部落差別自作自演事件」(小学館文庫)
被差別部落出身の山岡、その出身故、いろんなことで差別を味わうが、とりわけ就職で、その悲哀を味わう。とにかくまともな仕事につけないのである。部落出身でない女性との結婚を機に苗字を変えることまでする。子供が3人、まともな仕事をしなければというときに、町役場の嘱託公務員としての仕事を得る。しかし、この仕事は一年契約で都度更新、最長5年までしか更新できない。
 そこで、山岡は、部落出身者を嘱託公務員の仕事からおいだせ、と自らを退職させるような脅迫状を山岡の上司と町役場に送る。それは、役場が社会正義として、差別者を退職させないようにするためだ。
 自作自演の犯人が山岡であるところまでのルポは興味深く面白かった。
しかし、そこから後が、凄い。
 山岡を差別部落出身ゆえに脅迫されていると、山岡援護にまわり、福岡県知事まで動かして脅迫者探しをさせた、部落解放同盟。それが完全に裏切られたとして、山岡を解放同盟から除名する。そこまではわかるが、その上に山岡糾弾集会を開く。
 普通、組織は放り出してしまった人とは関わりを避ける。ところが解放同盟は、山岡をひっぱり出してきて、罵声、怒声のもとつるし上げをする。それも2回。合計6時間以上。
 高山はこのつるし上げを肯定的にとらえ、山岡の異常ぶりを際立たせようとこのルポではしている。しかし、私には解放同盟のほうが、怖く、異様に見える。

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朱川湊人  「あした咲く蕾」(文春文庫)

朱川湊人  「あした咲く蕾」(文春文庫)
愛する子供を失った両親がいる。母も父も異口同音に言う。自分が代わってあげられるのなら代わってあげたい。自分の命を子供に上げたいと。そんなことは不可能だ。だから悲しみは深くなる。
 しかし、代わってあげられることができたとしたら。
この作品の主人公の家に関西からやってきた変なおばさんが少しの間居候をする。このおばさんが命を代わってあげる力を持っている。人間は誰しも、水がたまっているコップを心に持っている。コップにはいっている水の量が生きている時間を示している。その水を徐々に使い、亡くなると死んでしまうのである。量は当然人によって違う。
 この水を他人に上げる力のある人がおばさんなのである。
おばさんが東京にやってきて、しばらくすると相馬さんという恋人がやってくる。相馬さんはおばさんに結婚を申し込んだ。おばさんが大阪へ逃げた。
 おばさんは苦しむ。もし相馬さんと結婚して、相馬さんが死にそうになったら、叔母さんは自分の命を投げ出しても相馬さんを救うだろう。そんなことは人間の道理としてしてはいけない。自分は結婚してはいけない人間だ。
 それからしばらくして、大阪の天六で大ガス爆発事故がおきる。おばさんが住んでいるところだ。おばさんは、事故現場に行き、死に絶えそうになっている子供を抱き上げ命の水を子供にあげる。おばさんも死ぬのが怖いから、少しずつ、少しずつあげる。そして子供が息を吹き返し、元気を取り戻したとき、おばさんのコップの水が空になり、おばさんは死んでしまう。
 そういえば東京にいたとき、命の水を与えて死ぬ寸前で元気になった猫は、あれから36年もたっているのに、まだ元気でいる。

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山本幸久   「幸福ロケット」(ポプラ文庫)

山本幸久   「幸福ロケット」(ポプラ文庫)
「子供は大人のことは知らなくていいの。」こんな言葉ですべてのことが親によって片付けられる。
「お母さんの病気は大丈夫なの。」
「お父さんはどうして会社をやめたの。」「何で急に引っ越さなきゃいけないの。」
知らなきゃ知らないで済むことかもしれないが、余計なことを吹き込む大人や、クラスメイトがいる。
 「本当に?」それが本当だったら大変。切ない。だけど、そんなこと面と向かっておとうさんやお母さんには聞けない。悩んじゃうよ。どうして本当のことを言ってくれないの。
 で、じくじく悩んで、結局最後は思い切って聞く。そうすると噂は捻じ曲げられていて、本当は心配するほどではないことをしる。もっと早く聞いとけばよかった。
 親子に限らず、うじうじ悩んでいることの多くはたいしたことでは無いことを私たちは知っている。
 山本の作品は、本当に庶民の暮らしに根付いている。そして、ユーモアもある。

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朱川湊人   「水銀虫」(集英社文庫)

朱川湊人   「水銀虫」(集英社文庫)
奈央は今誰よりも幸せの絶頂にいる。運というのは、ついてる人間へ、ついてる人間へとなびくものである。
 彼女は、ゲームソフト会社で大当たりを続けていて、莫大なお金を持っている経営者と付き合っている。今日はクリスマスイブ。間違いなく彼から豪華なプレゼントとともにプロポーズをされると確信している。昼にそんなような電話を受けているからだ。
 奈央の中学生時代に秀美という同級生がいた。奈央は当時美晴という不良がかった同級生仲間で、秀美を徹底していじめた。便器に顔をつけさせたり、裸にして写真をとったり。
 そして、極め付けは、繁華街で秀美に腰をくねくねさせた踊りをさせ、「ある日森の中くまさんにであった」と大声で歌わせた。往来の人が怪訝な顔してみると、秀美に「わたしはばかでーす。」と声をあげさせた。そんな秀美を遠くから奈央と美晴は監視していた。
 その秀美がバカをやらされた翌日ビルの5階から飛び降り自殺を試みた。死にはしなかったが頭を強打して、知能を殆ど失う後遺症を持ってしまった。
 学校から追及もされたが、奈央と美晴はいじめはしてないと強硬に言って追及を逃れた。
 その秀美が、クリスマスイブになると、必ず奈央の前にあらわれ森のくまさんを歌い「わたしばかでーす。」と演技する。奈央がどこに行っても必ず現れるのである。
 そして、恋人との最高のクリスマスイブにも、食事をして銀座の街を歩いていると森のくまさんが現れた。しかし、その容姿は秀美ではなく秀美を一緒に苛めた美晴であった。
 そのとき、奈央は悟った。自分も近いうちに「わたしはばかでーす。」と往来で叫ぶ日がくることを。

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山本幸久   「渋谷に里帰り」(講談社文庫)

山本幸久   「渋谷に里帰り」(講談社文庫)
ベテラン営業ウーマンである坂岡と、10年営業をしているがうだつの上がらない国立大学出の主人公峰崎との絶妙なコンビのとりあわせが秀逸。いきが良かった頃の絲山秋子の作品を彷彿とさせる。
 坂岡は、とにかく野郎どもには負けてはならじと担当エリアの渋谷で、新規開拓を含め取引先を200軒以上もつ。そして、常に売上トップを快走している。一方の主人公峰崎は
いつも茫洋としていて、覇気もない。返事も「ハア、ホウ」でめりはりもない。
 坂岡が長い独身生活を経て、寿退社をする。何とそれを引き継いだのが覇気のない峰崎。
引継のために2人で挨拶に取引先をまわるが、その道中の会話、行動描写が最高。
 坂岡が聞く。どうしてうちの会社に就職したのと。それは峰崎にとっては奇怪な質問。
「不況だったからどこでも入れればよかったんです。私たちは失われた10年の犠牲者です。」坂岡が言う。
「犠牲者?君が?じゃあ なに?食品卸営業なんて自分には向いてない。もっと自分にあった職業につきたかった。だけど就職氷河期でしかたなくこの仕事をしている。それは世間のせいだった言うんだ。君自身は悪くないとおっしゃる。」
 なにを言っても「はあ」とか「ほう」とかしか言えない坂岡が峯崎に言う。
「もうちょっと抑揚のある返事のしかたできないの?自動販売機のほうが愛想があるよ。」
作者山本は会社特に営業現場をよく知っている。また、最近の若者の心持ちもよく知っている。
 思わず、読んでいてそうだその通りと拍手したくなる場面満載である。

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