FC2ブログ

2015年05月 | ARCHIVE-SELECT | 2015年07月

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

≫ EDIT

海堂尊   「玉村警部補の災難」(宝島社文庫)

海堂尊   「玉村警部補の災難」(宝島社文庫)
現在の最新技術ではDNA鑑定の精度は4兆7千億分の1なのだそうだ。ここがよくわからない。現在地球の全人口は130億人。ということはDNA鑑定でのいっちは結果は100%正確ということなのか。頭が少しクラクラするが100%だと言い切っても間違いはないのだろう。
 しかし推理作家なら常に考えそうだ。
100%一致していることを打ち破るトリックは無いか。それを海堂が提示する。そしてDNA一致だからと言って、容疑者が必ずしも犯人では無いことを。しかし、現実にはまずできない。
 そのためには、容疑者に仕立て上げる人間から血を何らかの方法で抜き取り保存ができないといけない。更にその血を懐にいれ犯行現場まで運び、殺人をしてから、被害者の衣服に付着させねばならない。
 できるとしたら、血液検査をさせ、それを奪取して運ぶことが考えられるが、これだと殺人事件の犯人は逃れられるかもしれないが、窃盗犯として捕まることを覚悟せねばならない。
 合法的行為で、血を採取し運ぶことができる場合を海堂はこの作品で少し無理はあるが創造してみせた。

ランキングに参加しています。
ぽちっと応援していただければ幸いです。
にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

| 古本読書日記 | 18:20 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

≫ EDIT

桂文珍  「文珍の学問のすすめ」(PHP文庫)

桂文珍  「文珍の学問のすすめ」(PHP文庫)
私の小さい頃はラジオもテレビも漫才、落語は寄席で演じた録音、録画番組だった。もちろん演出家がいて、何をどの順番でやるか決めていたとは思うが、原則は寄席の伝統を遵守して番組は構成されていた。
 この文珍の講義のなかでも説明されているが、演目、出演する芸人にそれぞれの役割が割当られる。まずカブリ、これはお客を鷲掴みにする。お客の気分をつかむ。だから、少し派手で力のある演者がでる。次にシバリ。さらっと見せる芸。マジックとか音曲漫談、物まねなんかが配される。そしてモタレ。これが難しいのだが、最後のトリが盛り上がり引き立つような演目があり、そしてトリを迎える。それぞれの演者が、自らの役割を認識して、一つのストーリーが出来上がるように演じる。
 この伝統的流れが、失敗することもあるが、聞き手にとっては実に心地よい。
 今の演芸番組は、昔の起承転結の構成がなく、最初から最後まで、テンションをあげ続け、
大声と大袈裟な動作ばかりで、疲れるばかり。
 緊張、弛緩、強い、弱い。速い、遅いが上手く組み合わされて芸も芸人も生きる。今のようではまさに芸人は育つことなく使い捨てになってしまう。

ランキングに参加しています。
ぽちっと応援していただければ幸いです。
にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

| 古本読書日記 | 18:15 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

≫ EDIT

橋本治 「リア家の人々」

リア王って、なかなか悲惨な話ですね。子供の間をたらいまわしにされ、冷遇され、金をむしりとられるご老人。
(それだけではないですが)

橋本治は東大卒で、けっこう理屈っぽいことも書く。
「この話の主人公は『昭和』だ」と帯に書いてあるとおり、歴史の勉強になります。
文部省に勤めていた主人公が戦後失職したり、末娘の恋人が「佐世保エンタープライズ号寄港阻止闘争」に参加したり、主人公の家に下宿していた甥が東大入試中止により京大へ志望校を変更したり、登場人物の身に降りかかることと絡めていろいろ語るわけです。
体制がどうだの、左翼がどうだの、全共闘だの、ぴんと来ませんでしたが、結構すらすら読めました。
主人公と娘たち(+α)の地味な争いが挟まれていて、歴史解説ばかりじゃない。

1968年初めで物語は終わります。このころ爺やはまだ高校生なので、私にとっては遠い時代ですね。
アルフィーが、「口紅よりも白いヘルメットがまぶしすぎたね♪」と歌っていたのを思い出すくらいで。
だけど、アルフィーのメンバーもこのころまだ中学生なんですよね。そんなものか。

登場する時事用語(?)の中では、ツィギーを画像検索しました。
ふむ。「骸骨みたいじゃないか」と明治生まれの主人公がいうのもわかる気がする。

| 日記 | 23:20 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

≫ EDIT

沢木耕太郎  「勉強はそれからだ」(文春文庫)

沢木耕太郎  「勉強はそれからだ」(文春文庫)
昼飯時にいつも見るテレビ番組がある。といっても全部見るわけでなく、昼飯を食べている間だけだから20分間程度。
 何人かコメンテイターなる人たちがでている。これが凄いのだが、世におきている神羅万象すべてのことに迷うことなくコメントする。何でも理解し語れるスーパー人間たちである。でも、そんな人間など存在するわけはない。正直、あつかましい人間にみえてしまう。
 特に注意して発言して欲しいのは、殺傷、殺人事件についてのコメントである。殆どが警察発表をそのまま鵜呑みにする。或はあるディレクターの決められた視点に従ってあがってきた近所の評判や、近所の人たちの想像を基に、断定的なコメントをする。
 事件の背景、原因などは、そう簡単にわかるものではない。よく調査をして、多角的にとらえなおし、それでようやくおぼろげに原因らしきものが見えてくるのが一般的である。
だから沢木は、しょっちゅう事件が起きるとコメントを求められるが、決してコメントはしない。
 彼らは、時に自己嫌悪には陥らないのだろうか。ひょっとすれば、番組前に打ち合わせをしていて、発言趣旨、内容をおおよそ決められているのだろうか。それだったら、番組に責任を負わせればいいのだから、自己嫌悪には陥らない。

ランキングに参加しています。
ぽちっと応援していただければ幸いです。
にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

| 古本読書日記 | 18:11 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

≫ EDIT

工藤美代子  「旅人たちのバンクーバー」(集英社文庫)

工藤美代子  「旅人たちのバンクーバー」(集英社文庫)
副題として「わが青春の田村俊子」とついているので、てっきり小説家田村俊子のカナダ時代のことを描き出した作品かと思った。そのことは決して間違いではないのだが、どちらかと言えば、25歳の工藤が住みついたバンクーバーで、文学創作を目指して、田村俊子をとりあげ彼女の生き様を描く作品を創る過程を青春のひとこまとしてこの作品は描き出している。昭和52年のことである。
 正直、田村俊子などといっても、今でも、昭和52年当時でも知っている人はほとんどいないだろう。今では瀬戸内晴美がその生涯を描いた「田村俊子」があるのみである。
 田村俊子の最初の夫作家の田村松魚と再会した、ロス時代のことを調べようと、住んでいるバンクーバーからサンフランシスコを経由してロスまで貧乏旅行をする。そして、田村松魚のことを調べる。そのとき、田村俊子でさえ知っている日本人は少ないのに、まして田村松魚など誰も知らないだろう、それなのに工藤が田村を追いかけている、なんの意味があるのだろうと工藤がため息を吐くところが印象的。でも青春は無駄なことだと思っても突っ走る。
 瀬戸内晴美の「田村俊子」は、瀬戸内の小説傾向まるだしで、田村の淫乱や男関係ばかりを強調することにこだわる。
 でも、田村のバンクーバー時代の12年間、2番目の夫鈴木悦とともに、日系人の労働組合を結成し日系人の地位の向上や、権利の獲得をめざし格闘。特に田村が組合の女性部長として、女性の地位の確立や、バースコントロールについて女性たちに教え指導していたことをこの作品で工藤は描く。瀬戸内の初めから決めつけた視点で人をみるひどさから解放されて、なんとなくうれしくなった。

ランキングに参加しています。
ぽちっと応援していただければ幸いです。
にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

| 古本読書日記 | 18:06 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

≫ EDIT

沢木耕太郎   「天涯2 水は囁き 月は眠る」(集英社文庫)

沢木耕太郎   「天涯2 水は囁き 月は眠る」(集英社文庫)
沢木があるときインタビューを受け、心に残る10冊をあげることになる。
9冊は即あげることができたが、後1冊には時間がかかった。そして小学生の時に読んだ志賀直哉の「真鶴」をあげた。小学生のときで「真鶴」かと驚いたが、私も最も好きな作品の一つに「真鶴」があったので嬉しくなった。
 沢木は3人兄妹の末っ子。私は4人兄妹の末っ子。妹や弟がいなかった。時に兄姉は優しくしてくれた思い出もあるが、たいてい説教を食らったり、威張られたり、何をするにも、自分の意志ではできず、兄、姉の言うまま行うままに付き従っていた。
 憧れは、自分も威張り、付き従わすことができる子分がいることだった。手をつないで、引っ張られるのではなく、引っ張っていたかった。
 「真鶴」そんな兄弟の姿を夕刻の湘南海岸を背景にして印象深く描いている。兄になりたかった。そんな想いを沢木もこの作品で言っている。一緒だ。

ランキングに参加しています。
ぽちっと応援していただければ幸いです。
にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

| 古本読書日記 | 17:07 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

≫ EDIT

岸恵子  「30年の物語」(講談社文庫)

岸恵子  「30年の物語」(講談社文庫)
あの映画監督巨匠デヴィッドリーンに惚れられ、彼の作品「風は知らない」のヒロインに抜擢したいと要請される。それを断ると今度は「戦場にかける橋」のヒロインに使いたいと岸恵子は言われる。
 昭和31年パリへ移住。すると詩人ジャン コクトーに請われ彼の遺作「影絵」の主役に抜擢されフランスだけでなくヨーロッパ、北アフリカでコクトー演出の舞台で演じる。
 戦時下のイランだけでなく、あのプラハの春も経験。戦争の傷がまで癒えないベトナムにもでかける。世界をまたにかけ活躍する。
 それだけ有名な国際人なのだから、舞台も映画もヨーロッパでハリウッドで活躍できるはず。
 文学もエッセイも仏語で書き、まず住んでいるフランス人から共感を得、それで日本語にしてもらい、日本で読まれればよい。
 しかし、作品は殆どすべて日本へむかっている。そしてこういう人にありがちなのだが、やたら日本を卑下する。
 悪事は働く知恵はあっても、後始末に冷静な知性のかけらもない
 文句は言うけど、すぐあきらめてしまう
 外圧に弱く、金ばかりだし強権アメリカに追随するしか能がない
 果ては
 駅のアナウンスがやかましい
 あっけなく起こる親殺し 子殺し いじめにすぐキレる子
別に日本固有のことではないと思うけど。何だかこの本を読んでいると世界で日本ほどひどい国はないように思えてくる。

ランキングに参加しています。
ぽちっと応援していただければ幸いです。
にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

| 古本読書日記 | 17:04 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

≫ EDIT

沢木耕太郎  「天涯1 鳥は舞い 光は流れ」(集英社文庫)

沢木耕太郎  「天涯1 鳥は舞い 光は流れ」(集英社文庫)
写真とエッセイのコラボ作品。旅を書かせたら第一人者の沢木。味わいのある言葉、文章が溢れる。
 初めての海外はハワイ ホノルル。そこのシーフードレストランで年長のハワイ在住の日本人と一緒に食事をしている。
 食前酒を飲み終わったころ、ウエイターがやってきた。メインディッシュを決める。その後ウエイターが何かを言う。これがまったくわからない。困っていると年長者が、サラダのドレッシングは何にするか聞いているのだよと。「フレンチ ドレッシング」と言う。すると年長者がそういうときはhaveを使えばいいんだよと教えてくれた。
 その時世界が急に広がった。Haveを自分は今持った。このhaveを武器に世界をまわるぞと。
 わかる。この気持ち。
人間がこの世に生まれて今まで亡くなった人数は1000億人だそうだ。面白いことに宇宙の星の数も1000億個だそうだ。そう、人は亡くなると星になるのだ。今日もたくさんの新しい星が生まれ、宇宙で輝く。

ランキングに参加しています。
ぽちっと応援していただければ幸いです。
にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ


| 古本読書日記 | 17:57 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

≫ EDIT

筆坂秀世   「論戦力」(祥伝社新書)

筆坂秀世   「論戦力」(祥伝社新書)
筆者はセクシャルハラスメントで、共産党を除名させられた元共産党議員。普通、共産党では、除名前に該当党員に弁明の機会を与えるとか、査問という名の取り調べがあるが、筆坂の場合は、その手続が全くなく除名されてしまったため、除名後色んな憶測が流れた。
 現在、安保法制だ、集団的自衛権行使だとか喧しく、国会で論戦がかわされ、新聞、テレビもひっきりなしに報道している。この本は、国会内での議員の論戦力という観点で優劣を論じている。
 でも、国会議員にまず求められる論戦力は、国会内の論戦での優劣ではないだろう。じいさんたちがテレビながら族になって、ボーっと国会中継をみているかもしれないが、そのじいさんを含めて、国会などに国民は関心がない。関心がないものをとりだして、論戦力を自画自賛しても、世の中には何の影響も与えない。
 真の論戦力とは、多くの人々の中に分け入り、そこで主張を語り、人々をその主張で引っ張っていける人こそ論戦力があるのだと思う。今になって小泉元首相をボロクソに言う人がいるが、良し悪しは別として、彼は論戦力があった人だと思う。
 今の国会議員に論戦力がある人など見つけることは難しい。

ランキングに参加しています。
ぽちっと応援していただければ幸いです。
にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ


| 古本読書日記 | 17:55 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

≫ EDIT

柴崎友香 「寝ても覚めても」

昨日、浜松駅ビルの谷島屋に行ったら、店員さんがこの文庫を推すVTRが流れていました。
どんな推薦文句だったかは忘れましたが、「この本ならウチにあるはずだし、読んでみようかな」と。

確かにウチにありました。2冊。
IMG_8577.jpg
寝転がって読むなら文庫です。

ラスト30ページで衝撃を受ける、ということが裏のあらすじに書いてあったので、期待しつつ読みました。
①主人公がAという男と大阪で運命的に出会い、恋に落ちる。
②Aが、上海に旅行に行ったまま行方をくらます。
③数年後、主人公は東京でAそっくりのBに出会い、なんだかんだで付き合うようになる。
④大阪に転勤するBに伴い、主人公も引っ越そうと荷造りしている晩に、Aがひょっこり現れ、主人公はAの胸に飛び込む。
⑤Aと一緒に九州へ行こうと新幹線に乗っているとき、「この人はBじゃない。私が一緒にいたいのはB」と気づき、寝ているAをそのままに一人下車。
⑥主人公はBに、「私はあなたが好き。あなたに会うため戻ってきた」と言う。
大体こんな感じです。
④~⑥が最後の30ページ。
心変わりの心変わり。Bが「お前のことは信じられないけど、でも、しかたねぇな」と受け入れてしまいそうな雰囲気で終わる。

よくわかりませんでした。
もちろん、「そっくりな二人の男の間で揺れ動く女」という単純な話ではないです。
「似ている。生き写し。韓国ドラマみたいに、記憶喪失になっているの? 顔をしっかり見たいけど、なんだか怖い」と主人公が心臓バクバクしているわりに、実はAとBがそこまで似ていない(あとがきでは「信用できない語り手」といわれている)のも、面白いんだろうと思う。
ニュースの終わり、定点カメラに映る家々では知らずに眠っている人たちがいるというくだりも、センスがあるような気がする。

それでも、もっとミステリー的な「ラスト30ページの驚き」を期待してしまった。
AとBが知り合いだったとか、主人公の抱えるトラウマ(家族の話がぜんぜん出てこないし)が明らかになるとか、登場人物の中に主人公の心をすべて見抜いている人がいるとか。
綿矢りさの女主人公みたいな、「感情で突っ走る、精神年齢が幼い、はた迷惑なキャラ」という印象で終わりました。
何か読み取るべきか・・・・・・でもぜんぜん共感できねぇ・・・・・・

IMG_8576.jpg
分裂した寄生虫みたい。

| 日記 | 18:31 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

≫ EDIT

雫井侑介   「火の粉」(幻冬舎文庫)

雫井侑介   「火の粉」(幻冬舎文庫)
今まで読んだ雫井作品のなかで一番面白かった。
主人公の勲。裁判官を長年勤め、現在は大学の法学部教授をしている。
最初の悩みの書き出しが素晴らしい。裁判官というのは死刑判決を下すことにものすごい圧迫感を受けるらしい。万が一にも冤罪の可能性が残る。加えて、死刑ということは、間接的にせよ殺人をおかすことである。このことが結構沈殿して、物語の基底をなす。
このことが、裁判官自身、自らを考えた時、一般人とは違った奥深い悩みを常に抱えているという認識が生まれる。だから一般人とは異なる、価値観の高さは孤高ではあるが、尊敬に値する者である裁判官は考えるのである。
 大学のゼミや講演で何か高邁なことを言っているときは、実に立派ではあるが、市井の出来事、家族でのトラブルがあると、スーっとどこかへ逃げる。そして、言う事とやることのでかいギャップに周りの人は、あきれかえり、これ以上ない侮蔑の対象となるのがこの作品の主人公の元裁判官。
 それからもう一人、人に善意を施す人がいる。それも、過度に。相手の人は善意を全く期待していない、それよりいささか迷惑と思っているときがある。だから、施されても謝礼はしない。これが善意を施す人には気に入らない。あれほど助けてあげたのに、お返しどころかお礼の一言もない。あの人は人間的にどうかしている。
 こう思う人のなかには、その想いが深くなりすぎ、相手を侮蔑、恨み骨髄となり、裏切者として懲らしめてやらねばならないと考える。
 この作品は、高邁なことは言うが、市井のなかで生き抜く能力の無い人と、恨み骨髄人間とがもつれあいながら、いきつくところまでいってしまう姿をリアルに描きだす。

ランキングに参加しています。
ぽちっと応援していただければ幸いです。
にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

| 古本読書日記 | 17:20 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

≫ EDIT

川上健一   「宇宙のウィンブルドン」(集英社文庫)

川上健一   「宇宙のウィンブルドン」(集英社文庫)
昔は野球少年だったら、目にも止まらない速球を投げバッタバッタと三振をとるとか、来る玉来る玉全部ホームランにするなんてことを夢見る。サッカーだったら、ゴールキーパーをふっとばすシュートを炸裂させると妄想する。まあ、今は違って、少年たちはサッカーも野球も一流選手になりお金をがっぽり稼ぐのだと夢見るのだろう。
 この作品は昔の夢見るテニスボーイの物語。6歳からテニスを始めた杉本宇宙は、17歳の今までサーブの訓練、練習しかしてきていない。そして宇宙の夢はサーブだけでウィンブルドン大会を制すること。とにかくその磨き上げたサーブは眼で追えないほどのスピードがある。だいたい試合が最後まで続かない。何故なら相手選手の腹にぶちこんだり、レシーブすると腕が折れたり、傷ついたりしてその時点で終了するのだから。ただし、相手サーブのときは、どんなへなちょこサーブでも見つめるだけで、打ち返すことはない。
 それでウィンブルドン決勝までゆき、優勝してしまう。
昭和61年の作品。今は錦織という名選手が日本よりでて、少しテニス人気も復活したかと思われるが、このころは、日本に名選手はいないのに、会社にいてもテニスをできない、しない社員は村八分。猫も杓子もテニス、テニスだった。
 この作品でナヴラチロワ、マッケンロー、ジミー・コナーズを懐かしく思い出した。

ランキングに参加しています。
ぽちっと応援していただければ幸いです。
にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

| 古本読書日記 | 17:08 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

≫ EDIT

香納諒一   「第四の闇」(光文社文庫)

香納諒一   「第四の闇」(光文社文庫)
ネットを通じて知り合った自殺願望者が、胴体だけ切られ持ち去られたバラバラ死体になって発見される。そこから過去に起こった深い闇とそのバラバラ死体が結び付けられてゆく。なかなか読み応えがある力作ではある。
 だけど3つの大失敗をしている。そこが作者の意気込みとは離れ読んで疲れる作品にしている。
 まず、主人公一人称で書かれていること。一人称で書くことは間違いではないが、その場合は名探偵、名刑事でないと(性格は別として)小説にならない。この作品の主人公は、妻を自殺願望者の誘いにのり死んでしまうという大きな傷を背負い、それが原因で、重症のアル中患者として登場。常にアルコールの中で浮かんでいて、とても推理したり考えをまとめたりする状態にはない。これでは、全体がダラダラと続かざるを得ない。
 次にアル中に浸っているにも関わらず、突然、名探偵になり頭脳明晰、事件の真相を説明する。この突然の豹変には驚嘆。とてもついていけない。
 更に15歳前後のカオル、ジローが何のためにこの物語に必要なのかがさっぱりわからない。全くいらない人物。それが450ページの物語をつまらなくしている。

ランキングに参加しています。
ぽちっと応援していただければ幸いです。
にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

| 古本読書日記 | 20:04 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

≫ EDIT

工藤美代子   「炎情」(中公文庫)

工藤美代子   「炎情」(中公文庫)
婦人雑誌には、むちゃくちゃ息が長い雑誌が3つある。「婦人画報」「主婦の友」そして「婦人公論」である。「婦人画報」と「婦人公論」は何と創刊が大正5年と6年。100年以上続く雑誌である。
 「主婦の友」「婦人画報」は表紙も中味もヴィジュアルになったが、「婦人公論」は表紙は変わらず地味、文章いっぱいの雑誌のままである。よくこれで100年も続くものだと驚愕する。
 その「婦人公論」で中心の記事になるのが、いつも熟年セックスである。ルポであったり、対談であったり、体験談であったり。
 最近は男の雑誌でも昔とちがってセックス記事は飽きられ中心からはずれちんまりと奥に潜んでいる。それなのに、「婦人公論」はそれを売り物にして、女性読者を掴んでいる。
 この工藤の作品は「熟年離婚」をテーマにして、「婦人公論」に連載したルポである。
「セックスがうまくいかなくて」「浮気が発覚して」なんて体験談が次から次へと書かれている。途中で読むのをやめたくなる。
 離婚の中で熟年離婚が特殊だということはない。どんな年齢であっても、離婚は今やはいてすてるほどある、普通の現象である。殊更熟年だけを取り上げることについてゆけない。
 それにしても、こんなルポを追いかけて「婦人公論」を購入する女性がたくさんいることに少し恐怖を覚える。

ランキングに参加しています。
ぽちっと応援していただければ幸いです。
にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

| 古本読書日記 | 20:02 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

≫ EDIT

香納諒一  「デイブレイク」(幻冬舎文庫)

香納諒一  「デイブレイク」(幻冬舎文庫)
自民党が分裂した。新しい党は、旧左派系党のひとまで吸収し、新進党となった。
そうすると、絶対倒産することはないはずである都市銀行の北海道拓殖銀行が国が守ることなく倒産した。この物語は、それに加えて、サハリン沖石油利権が絡み、日露の裏社会が結びつく、闇社会を扱う。
 自民党が分裂するということは、きれいごとではなく、利権が動くことがその背景にある。
強固だった利権構造が、ぐらつく。北海道で地殻変動が起きた。あるいは起ころうとしていた。そのせめぎあいの中で、拓銀が破たんした。利権収奪戦争に闇社会も大きく揺れた。
 そういえば、北海道、鈴木宗男の樺太暗躍、それに伴って大物政治家中川一郎の死があった。自殺とされているが、殺されたのではという風評が今でも消えない。
 今の北海道は、激動の時代を抜けて、安定した時代になっているのだろうか。

ランキングに参加しています。
ぽちっと応援していただければ幸いです。
にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

| 古本読書日記 | 17:47 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

≫ EDIT

岸恵子  「私の人生ア・ラ・カルト」(朝日文庫)

岸恵子  「私の人生ア・ラ・カルト」(朝日文庫)
著者は女優。かの「君の名は」の映画で真知子を演じスターにのしあがった。
しかし、1957年フランス映画に出演。その作品の監督イヴ シャンピと結婚。生活の拠点をパリに移す。その後、暮らしはパリ、稼ぎは日本という生活をシャンピとの離婚後も通している。たくさんのエッセイを中心とした作品を書いている。
 1957年は昭和32年。そこからパリ生活。ということは、言葉、表現の多くが昭和32年で止まっていて、それ以降の日本の言葉の変化が作品に登場しない。そこが、私のような古い人間には郷愁を感じさせる。
 「真っ赤っ赤のくちべにをひいた」
 「(焼肉のたれ)が、高価なネクタイの上に散華した」
 「理不尽にも私は慨嘆した」
戦時下のイランに行ったりして、世界の危ないところを歩くが、どんなところへ行ってもVIP待遇。普通の人々と会話することがないのだろう。でも時の止まった文章はなかなかいいものだ。

ランキングに参加しています。
ぽちっと応援していただければ幸いです。
にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

| 古本読書日記 | 17:46 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

≫ EDIT

乃南アサ   「いちばん長い夜に」(新潮文庫)

乃南アサ   「いちばん長い夜に」(新潮文庫)
人を殺したり、傷つけたりして罪を負った人たちはどんな生活を刑務所でしているのだろう。時々、本などで知ることができるが、はっきり言ってよくわからない。
 罪を償うということは、物理的には刑期を終えることなのだが、毎日謝罪の言葉を発するとか、祈りをささげるとか、精神的変革、心の洗浄をするなど、普通の凡人には理解できない行いが償いとしてよく言われる。そのことが罪のつぐないと本当になるのだろうか。
 日本では最近、大きな自然災害がたびたび起きる。現地には救出活動のため、消防団員や自衛隊員がかりだされる。もちろん現場での活動は消防、自衛隊員がするものだが、補助とか後方支援に受刑者を活用したらいいのではとこの作品を読むと思えてしまう。
 何の罪もない人々が死ぬということ、そんな人たちを助けようと懸命に活動することが現実どういうことなのか、知ってもらうことが精神的償いより以上の償いになると思う。
 東北は、土木作業員が足りず復興が進んでいないと聞く。こういう現場にも受刑者を使ったらどうなのかとも思う。

ランキングに参加しています。
ぽちっと応援していただければ幸いです。
にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

| 古本読書日記 | 17:04 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

≫ EDIT

香納諒一   「刹那の街角」(徳間文庫)

香納諒一   「刹那の街角」(徳間文庫)
上手くトリックを考えるものだなあと感じる。
「西に橋が見え、しかも鉄塔が立っている」そんな場所が誘拐事件の身代金の受け渡し場所。
その場所がどのあたりにあるかもかなりわかっているから、捜査員を動員して徹底的に場所を探す。全く見つからない。それで、歩きでなく車で移動して範囲を広げて探す。全く場所は見つからない。そんな場所があるのか。あった。ボートで川を移動したら見つかった。
 大金がみつかる。当然身代金を犯人に誘導され運んでいる被害者が所持しているお金と思う。ところが実際は、身代金を入手した犯人が運んでいたもの。
 誘拐されたのが、実は人間でなく猫だった。
 奇想天外なトリックでなく、人間が普通に考える裏をつくトリックを作る。
やられたとは思わないが、なるほどと思わず顎をなでたくなる。そんな作品集である。

ランキングに参加しています。
ぽちっと応援していただければ幸いです。
にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

| 古本読書日記 | 16:58 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

≫ EDIT

香納諒一   「血の冠」(祥伝社文庫)

香納諒一   「血の冠」(祥伝社文庫)
犯人を捜査していく小松や風間の描写は、ねちっこく丹念につみあげ、それなりに感心した。
26年前の殺人、頭蓋骨をえぐりだし、それを刻んで王冠のようにする手口と同じ手口の殺人が起こる。その、繋がりを追っていく過程で、見込捜査や、でっちあげ捜査、それにより
異例の出世をして最後は県警本部長になる松橋や、会計担当の不正な裏金つくりの描写がさしはさまる。当然、読者はこの不正や警察組織の根深い問題が、この頭蓋骨えぐりだしの事件とどうかかわってくるのかを期待して読み進む。
 ところがそこは、よくわからないまま、犯人のジキルとハイドのような二重人格が殺人をおこしてしまったような結末に至る。
 一体、警察の不正、腐敗は何のために、繰り返し描写したのか、作者の意図が全くわからない。えらく肩すかしを食らってしまった作品である。

ランキングに参加しています。
ぽちっと応援していただければ幸いです。
にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

| 古本読書日記 | 19:12 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

≫ EDIT

川上健一  「四月になれば彼女は」(集英社文庫)

川上健一  「四月になれば彼女は」(集英社文庫)
私は川上の作品に共振する読者の一人である。
川上は1949年青森県生まれ。高校卒業まで青森で育つ。歳も私に近いし、地方出身も似ている。だから、川上が描く青春物の多くで高校までの学生時代がよみがえる。
 卒業では田舎育ちにとってやっぱり高校時代が印象深い。高校までは、同じ田舎の人たちの寄せ集めだから、何人か小学校から高校まで一緒という生徒がいる。しかし、高校が終わると進路も生活する場所もばらばらになる。皆がもういなくなってしまうという寂寥感に襲われる。
 この作品、475ページあるが、300ページ分はたった一日の主人公のぼくが遭遇した出来事が描かれている。卒業式が終わって3日目。明日は殆どみんながこの田舎を離れる。そんな一日。
 青春時代、それも特別な日の24時間は本当に長い。あれもこれもやるし、あんなこともこんなことにも遭遇する。一日が終わって、やはり男が巣立つには女性を知らないのではいけない。こんな合言葉で、女性と引き合わせてくれるという、場末のバーにゆく。
 煤けたバーで、おばさんが一人でやっている。興奮と侘しさが混在する気持ちの中でサイモンとガーファンクルの「4月になれば彼女は」が流れる。不謹慎だとは思うが、この雰囲気と、巣立ちの季節にピタっと曲がはまっている。
 でも、川上の作品に共振する人は少ないだろうと思う。東京とはいかなくても、やっぱり青春小説はそこそこの都会が舞台でないと残念だけど読者はつかないだろう。

ランキングに参加しています。
ぽちっと応援していただければ幸いです。
にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

| 古本読書日記 | 19:09 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

≫ EDIT

江國香織   「ちょうちんそで」(新潮文庫)

江國香織   「ちょうちんそで」(新潮文庫)
人はどんな別離をしたときが最もショックを受けるのだろうか。恋人との別離。一時期ショックは受けるが、恋愛には始まりがあり、終わりがあることだから、ある時間が経過すれば、思い出の彼方に去る。
 本当にショックを受け、長い人生のなかで引きずるのは、つきあいの濃かった友人との別離、それか、兄妹との別離だろう。しかも、長い間友としてつきあったのに、ある日突然、電話をしても留守電ばかり、メールをしても、全く返事が来なくなる。それでも、その原因がわかっていれば、仕方ないと諦めるか、謝り、誤解をといたりすることができるが、全く身に覚えがないとなると深刻である。
 この小説の主人公雛子は、50歳を過ぎ夫や子供と別れマンションで一人暮らし。寂しいが、反面人間関係がそろそろ煩わしいと思う年代にきているので結構爽快。隣の丹野さんが、一人暮らしを心配してちょくちょく様子を見にきてくれるが、それが煩わしい。子供も下の子の健志だけは時にやってくるが、それも煩わしい。一人でいることに不自由はないが、それにしても心に引っかかっているのは妹の飴子。
 飴子は旦那を捨てて、神戸へ恋人と駆け落ち。それまでは、いつも、仲良く行き来した。
神戸に行ってからは、流石に頻繁に会うことはなくなったが、年賀状のやりとりはしていた。その飴子が、神戸から失踪した。失踪しても、姉の雛子には、居場所の連絡や電話くらいはしてくるものと雛子は信じていた。それが、全く何の連絡もなくなった。その理由が思い当たらない。それがとても切なく悲しい。

ランキングに参加しています。
ぽちっと応援していただければ幸いです。
にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

| 古本読書日記 | 21:53 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

≫ EDIT

川上健一   「地図にない国」(双葉文庫)

川上健一   「地図にない国」(双葉文庫)
スコットランドの独立を認めるか先般、イギリスで国民投票があった。それと同様な状況をスペインが抱えている。バスク地方の独立である。タイトルの「地図にない国」はこのバスク地方を指している。
 面白い作品ではあるが、プロ野球のホームランバッターである主人公三本木が、我々がイメージするプロ野球選手とかけはなれすぎている。英語はペラペラ。会話は知的でセンスにお溢れ、しかもバスク地方の問題も知識としてもっている。普通の日本人でさえバスクの問題など知っていないのに。反政府闘争組織ETAこれに対する政府側組織GEOについて知っていたり、それによっておきた事件の真相を深く追及しようとしたりする。
 生まれて今まで野球一直線の人間が、スペイン バスクに現れることが尋常ではない。
野球選手でなく、違った人物を設定すれば面白い作品になったように思う。

ランキングに参加しています。
ぽちっと応援していただければ幸いです。
にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

| 古本読書日記 | 21:47 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

≫ EDIT

奥田英明   「噂の女」(新潮文庫)

奥田英明   「噂の女」(新潮文庫)
全開とまではいかないが、奥田ワールドを楽しむことができる。
この作品の面白さは、権力者や男がつくるシステムや世界を翻弄して手練手管でのしあがっていく糸井美幸の姿であり、それがまた全て噂でつくられているところである。
 噂ではあるが、かなり美雪は悪人であることが読者には想像できる。
しかし、事件は起きても捜査にはつながらない、男が作る権力社会というのもそれ以上に悪でできあがっている。
 警察署長は、転勤するとお餞別で昔は家が一軒建つと言われた。この小説では副署長が各課長に餞別を集めるようノルマを課す。暴力団、土建屋、飲み屋から徴収する。警察システムはこういった団体の上になりたつ。当然そこで犯罪が起こっても時に警察はおめこぼし、みてみぬふりをする。美人局にひっかかる坊主。檀家から集めた金を美雪に強請られ取られる。そして土建屋が支持母体になっている自民党の県議会議員の有力者。土建屋から集めた裏金2億円を美雪にかすめとられる。でも、表にはできない。
 美雪は絶対捕まらない。

ランキングに参加しています。
ぽちっと応援していただければ幸いです。
にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

| 古本読書日記 | 18:32 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

≫ EDIT

高野秀行   「またやぶけの夕焼け」(集英社文庫)

高野秀行   「またやぶけの夕焼け」(集英社文庫)
今は初恋はいつだったと聞くと、幼稚園の時とか一番歳をとっていても小学校3年くらいまで。私の小学校のころは、探検、冒険、基地ごっこ、チャンバラ、野球に忙しくて、恋という言葉は頭に浮かぶことはなかった。
 漫画も男の子は「少年」「冒険王」「少年クラブ」で女の子の雑誌など、興味もなかったし見たことも無かった。
 ところが何かの時に女の子の雑誌をかいまみる。悲しい薄命物語もあるが、多くは瞳の中に星が輝く美少女と鉛筆のごとく細くスマートな男の子の恋の物語ばかり。
 盛り上がる場面でキスをする。洟垂れ餓鬼だった少年にはこれが理解できない。でも、キスの前の男が結婚してくださいという言葉はわかる。自分たちの親が結婚しているのだから。
 それで、結婚をするのだったら誰がいいかと考えることになる。で、あいつだ、こいつだとクラスメイトを思い浮かべる。それで勝手にこいつにしようと決める。
 で「おかえりなさい」「いってらっしゃい」「ごはんですよ」くらいまではボーっと想像できるのだが、いっこうにその先が浮かんでこない。で、結婚もいいやということになる。

ランキングに参加しています。
ぽちっと応援していただければ幸いです。
にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

| 古本読書日記 | 18:26 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

≫ EDIT

絲山秋子 「沖で待つ」

変換しても字が出なかったので、コピペ。
薄いので、あっという間に読めました。
最近爺やが、女性総合職としての実体験に基づいたリアルな作品が面白かった、と書いていた作者です。記事はこちら

たしか、白石一文「私という運命について」も、映像化されたとき、ヒロインが女性総合職になった最初の世代というところに、スポットが当てられていました。
私は、狭義のゆとり世代には入らないぎりぎりってところですね。
実家暮らしで、キャリアアップも結婚も乗り気でないらしい同年代女性が、職場にもいる。
だから、「私という~」のヒロインや、「沖で待つ」のヒロインのように、営業職で全国各地を飛び回っている女性には気持ちがついていきません。
似たような立場にいる人や、男性のほうが、興味深く読めるのかもしれない。

「勤労感謝の日」のヒロインは、失業中の実家暮らしなので、楽しく読めました。
見合い相手にいきなりスリーサイズを聞かれたり、「負け犬の遠吠え」がネタとして登場する「勤労感謝の日」より、ヒロインが売る便器やタンクの型番が出てくる「沖で待つ」のほうが、リアリティはあるんでしょうけれど。

IMG_8575.jpg

「無職になる前は、職安が恐ろしいところだと思っていた。山谷の炊き出しと区別もつかなかった」
就職が決まらない大学4年生のときにハローワークに行って、おどおどした記憶があります。もっと切羽詰ってから来るべき場所のような気がしました。
「私はいやな子供だった。親戚に物をもらうと、この大人を一番がっかりさせることができることは何かと考えた。目の前でおもちゃを庭に投げるとか、壊すとか、ゴミ箱に捨てるとか、やったことはないけれどいつもそんなことを考えていた」
共感してしまった。天邪鬼とか照れとかかわいいもんじゃないんですよね。
われながらいやな子供なので、人生をやり直せると言われたら、生まれた直後くらいまで戻さなきゃいけない。

読みやすかったですが、全国を飛び回る総合職女性の話はやっぱり「ふーん」で終わりそうなので、次にこの作者の本を読むならあらすじを見て選ぼうと思います。

| 日記 | 19:58 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

≫ EDIT

角田光代   「月と雷」(中公文庫)

角田光代   「月と雷」(中公文庫)
東原智はとにかくもてる。高校時代からひっきりなしに女の子から声をかけられ今まで女性に不自由したことは無い。そろそろ身をかためてもいいかと思い、付き合っている娘に
プロポーズする。これが不思議なのだが、いつも拒絶される。
 今つきあっている史恵がいう。
「あなたは生活ができないひと。生活ができない人となんか結婚できるわけがない。」と。
東原智の母直子は、生活はしていないし、しようとも思わなかった。日がな一日、テーブルに肘をついて、全く同じ姿勢でテレビを見ていた。料理、洗濯、掃除、何もしなかった。そして、ある期間が過ぎると、智を連れて家をでる。別に同居している男と喧嘩をしたわけでもないのに。ふっと家をでる。そして、またどこかの家にいつく。不思議なことにいついた家はどうしてか決して迷惑がらない。
 直子、智 母子には家庭、家族という概念が全くない。智は、毎食お菓子でも全く違和感を感じない。
 そんな智が幼馴染の泰子と再会する。再会したその日に智が強引に泰子のアパートに来る。そして泰子は抱かれ、子供を身ごもる。
 智が必至に言う。
 「一緒に住んで、子供を生み育てよう。俺も頑張る」と。でも泰子は、智がそんなことができないことを知っている。だから、一緒に住んでも、すぐに子育てや同居に飽きて家を智はでてゆくだろう。案の定、智は子供が生まれ少したつと、何も言わずに家をでる。
 人間、自分の家族は、他人や他の家族と悪い関係にならないよう、距離をおいたり、しゃべる内容、言葉にも注意を払う。でも、逆に、全くそんなことを気にしないで、波紋をなげかけ、周囲を混乱させ、ほとぼりがさめるころにはいなくなって、また別のところで波紋を投げている、そんな一生、雷のような人生を送る人もいるのだということを角田は物語にしてみた。

ランキングに参加しています。
ぽちっと応援していただければ幸いです。
にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

| 古本読書日記 | 18:16 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

≫ EDIT

大崎善生  「赦す人」(新潮文庫)

大崎善生  「赦す人」(新潮文庫)
私の中学から高校にかけ、ピンク映画が全盛を迎えていた。それが、衰退して次にきたのが東映の任侠映画。この東映、任侠映画の裏で作っていたのが、大奥、獄門シリーズ。大奥女性を意味もなく徹底的に拷問、汚辱する画面が途切れることなく続いた。
 このシリーズに呼応して脚光を浴びたのが、SM雑誌。たくさん本屋に並んだ。
その先頭を走って書いて書きまくった流行作家が団鬼六。その団の生涯を描いたのがこの作品。
 団と言えば、かれの作品で最も売れ、今でも読み継がれているのが「花と蛇」。静子夫人なる女性が登場して、徹底していたぶられる。何が面白いのか私のような凡人にはわからないが、とにかく続編、そのまた続編が次々登場。今では、幻冬舎アウトロー文庫、全10冊で販売されている。
 「赦す人」で最も面白かったのは、団の神奈川県三崎時代。
大阪で、呑み屋の経営に失敗して、妻三枝子の導きで三崎にやってくる。妻三枝子は教育一家。真面目な一家である。お父さんが三崎で教育委員をしていて、団を立ち直らせたく三崎に連れてきて、お父さんのコネで、中学校の英語教師にすえた。団は関西学院大学出身で教員免許を持っていた。
 ところが大阪時代に書いたSM小説「花と蛇」が好評を得て、連載誌から続編を書いてほしいと懇願される。その熱心さに負けて、団は了解。しかし、我が家でそんな小説は執筆できない。
 しかたないので、授業を自習にして生徒が勉強している目の前の教壇の机で、笞、縛りの「花と蛇」を書いたのだそうだ。とんでもないシチュエイションである。

ランキングに参加しています。
ぽちっと応援していただければ幸いです。
にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ


| 古本読書日記 | 18:10 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

≫ EDIT

浅田次郎 「赤猫異聞」

爺やの記事はこちら
ごみの分別・草刈・子ども会・老人会・民生委員といった仕事と比較されている「必要悪の仕事」が何なのか、爺やの記事では分かりませんが、伝馬町牢屋敷の牢屋役人の仕事です。

IMG_8574.jpg
乱歩を枕にする猫

動物の殺処分を担当している職員が、泣きわめく犬猫が夢に出てきておかしくなりそうだった、という記事を最近読みました。
スイッチを押して間接的に殺すのも負担が大きいのに、土壇場で刀を振りかぶって首を落とす仕事なんて、心が麻痺しそうですね。
「十人までは算えておりました。指に余ったころには、すっかり慣れてしもうて、算える気にもなれなくなった。それが不浄役人というもの」
と言いつつ、「黙って首を打て」と不義不実に従うことを求められたとき、「不浄であっても鬼にはなりたくない」と意地を見せる。
そんな話です。

解き放たれ無罪になったのは3人。
元夜鷹の美女が、イギリス人技官の妻になりホテル暮らしをしているというシンデレラストーリー。
親分の罪をかぶって牢屋に入った博打打の男が、親分から受け継いだ財産で堅気の仕事をはじめ、貿易商社の社長になるというサクセスストーリー。
この2つはいいにしても、官軍の兵隊8人を斬ったという侍が、士官学校の教官におさまっているというのは、大丈夫なのかと疑問に思いました。
現代の感覚だと、たとえ被害者がカルト教団の教祖でも、何十人も借金苦で自殺させた高利貸しの社長でも、人一人殺した人間が野に放たれるというだけで抵抗があります。
が、当時「キンギレ退治」はもてはやされていたとあるし、殺人は殺人でも人々の受け取り方は違ったのでしょう。

ぼんくらって博打の用語だったんですね。ひとつ勉強になりました。

| 日記 | 14:42 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

≫ EDIT

垣根涼介  「クレイジー ヘヴン」(幻冬舎文庫)

垣根涼介  「クレイジー ヘヴン」(幻冬舎文庫)
不幸な家庭に育ち、高校のときは、いきがってヤンキーを謳歌、そして中退。そこから
社会の地底を彷徨う。
 今は美人局で凌ぐ。そこに美人局で稼いだ金や、金蔓を巻き上げる同じ境遇のどうしよもない奴が絡んでくる。そんな過程で、美人局の男を殺してしまう。
 男は暴力団員。だからそれからいつも、暴力団に襲われるのではという恐怖につきまとわれる。すさんだ生活と絶えず襲ってくる恐怖をわすれるためには、もう狂ったようにsexをするしかない。狂いが極限に達するように、クレイジー ヘヴンというコカインまで投入する。
 でもsexは溺れていることができるのはせいぜい2時間。後は、恐怖と不安いっぱいの暮らし。耐えられない。暴力団事務所を襲って、300万円の金を盗む。美人局のやくざから奪った金400万円。手元に700万円。これで自由な世界へ飛び出そう。
 北へ行けば、過去をひきずりながら。南へ行けば過去を全部清算するのだ。で、2人はどこへ。やっぱし東へ行ってしまう。

ランキングに参加しています。
ぽちっと応援していただければ幸いです。
にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

| 古本読書日記 | 19:15 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

≫ EDIT

高野秀行  「世にも奇妙なマラソン大会」(集英社文庫)

高野秀行  「世にも奇妙なマラソン大会」(集英社文庫)
マラソン大会というのは、本当にあちこちたくさんある。それは、他のイベントに比べ、装備などに金がかからず、やすあがりで開催できるからである。街おこし、村おこしには最も安直、だからどこかで始めると、真似して行う市町村がでてくる。
 私の住む市でもやっているし、東西の隣の市でも行っている。こんなわけだから、世界でも無数にマラソン大会が行われている。探検家である高野はその中でも過酷と想像する西サハラマラソン大会に参加する。その体験ルポである。
 高野の作品は久しぶりに読んだが、ずいぶんデビュー当初と雰囲気が異なっていた。そもそも探検家という職業で生計をたてるのは変わり者の極みである。だから、探検するためのスポンサーが集まらない。それで、企画から実行まで長い期間をかけ、肉体的にきついバイトをして金を得て、やっと実行できる。
 高野のサハラマラソンの参加は、何と大会開催3週間前に決める。自分で資金を得る時間が無い。スポンサーに金をだしてもらう。本当はこんなマラソン大会に参加することをどう説得して、金をだしてもらい参加にこぎつけたか、ここが面白いところのはず。ところが高野は有名で偉くなったのか、一人では寂しいからと、ドキュメンタリーディレクターとカメラマンを同行させる。ここが有名人だから当然のことのような雰囲気。
同行の2人の会社に金をださせているのだ。
 こうなると、タイトルの印象に比し作品は緊迫感、緊張感が欠け気の抜けたビールのような作品になってしまう。

ランキングに参加しています。
ぽちっと応援していただければ幸いです。
にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ



| 古本読書日記 | 19:11 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

PREV | PAGE-SELECT | NEXT