篠田節子 「第四の神話」(角川文庫)
主人公夏木柚香は、篠田の今を彷彿とさせる。
清張にある時期凝って、文庫を中心に買い集めた。全部で190冊近くあった。多分これ以外にも作品はあるだろう。清張の執筆期間は40年弱。ということは4-5冊一年に本を出版していたことになる。正気の沙汰ではない。労力も凄いが、これだけの作品のアイデアを創造することが尋常ではないのである。また、作品を創るためにはアイデアとそれに沿った
資料探索と調査に膨大な時間がかかる。多分、何人かスタッフを使いながら執筆したのだろう。
清張は、文壇では異端。流行作家という地位を維持するためには、しょっちゅう本を出版して社会に露出をしていなければならない。少しでもそれを怠ると、小説の市場から駆逐されてしまうのではという、脅迫観念に襲われていた。
それに現在の篠田が似ている。女流作家の呼称そのものがどことなく低い地位を象徴している。書きまくっていないと忘れ去られる。死んで5年もすると、本屋の棚からは消えるような作品ばかり書かねばならない。絶対棚から消えない代表作をじっくりと時間をかけ書いておきたい。この作品の新進作家柚香を通して篠田の悲痛な叫びが聞こえる。
女性タレントや女子アナの結婚相手によく青年実業家というのが登場する。登場した瞬間は、フェラーリなどを乗りまわし、超高級マンションで、ドンペリをがぶ飲みしながら、パーティをする、庶民には想像できない豪華な生活をしている。その実業家のその後の姿はどうなっているのだろう。そこから大実業家になった話はとんと聞こえてこない。
流行女流作家と青年実業家がくっつくことでの、悲劇、哀れさをこの作品は扱っている。
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| 古本読書日記 | 18:37 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑