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2015年04月 | ARCHIVE-SELECT | 2015年06月

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篠田節子  「第四の神話」(角川文庫)

篠田節子  「第四の神話」(角川文庫)
主人公夏木柚香は、篠田の今を彷彿とさせる。
清張にある時期凝って、文庫を中心に買い集めた。全部で190冊近くあった。多分これ以外にも作品はあるだろう。清張の執筆期間は40年弱。ということは4-5冊一年に本を出版していたことになる。正気の沙汰ではない。労力も凄いが、これだけの作品のアイデアを創造することが尋常ではないのである。また、作品を創るためにはアイデアとそれに沿った
資料探索と調査に膨大な時間がかかる。多分、何人かスタッフを使いながら執筆したのだろう。
 清張は、文壇では異端。流行作家という地位を維持するためには、しょっちゅう本を出版して社会に露出をしていなければならない。少しでもそれを怠ると、小説の市場から駆逐されてしまうのではという、脅迫観念に襲われていた。
 それに現在の篠田が似ている。女流作家の呼称そのものがどことなく低い地位を象徴している。書きまくっていないと忘れ去られる。死んで5年もすると、本屋の棚からは消えるような作品ばかり書かねばならない。絶対棚から消えない代表作をじっくりと時間をかけ書いておきたい。この作品の新進作家柚香を通して篠田の悲痛な叫びが聞こえる。
 女性タレントや女子アナの結婚相手によく青年実業家というのが登場する。登場した瞬間は、フェラーリなどを乗りまわし、超高級マンションで、ドンペリをがぶ飲みしながら、パーティをする、庶民には想像できない豪華な生活をしている。その実業家のその後の姿はどうなっているのだろう。そこから大実業家になった話はとんと聞こえてこない。
 流行女流作家と青年実業家がくっつくことでの、悲劇、哀れさをこの作品は扱っている。

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垣根涼介   「ヒートアイランド」(文春文庫)

垣根涼介   「ヒートアイランド」(文春文庫)
ファイトパーティ、喧嘩を舞台で見せ金をとる。それでのしあがってきたストリートギャングのグループ雅。一方、バブル崩壊後、シノギの種がなくなった暴力団。渋谷でカジノパーティを行いしのぎの活路を求める。そのカジノでたんまり儲けた金を狙う裏金強奪グループ。
 カジノバーに押し入り一億円近い金を強奪に成功した奪グループの一人、初老の男。強奪金を仲間で分配後、つい気を許して立ち寄ったバーで、そこにいた女性をめぐってストリートギャングのメンバート喧嘩になる。そして3000万円以上はいっているバッグをチルドレンに持っていかれる。
 チルドレングループのリーダーはその金についていくらたっても、警察に被害届がだされないことから、表にだせない金だと知る。すると、その金は暴力団が巻き上げた金。
 やがて自分たちは暴力団を敵にまわし狙われることになる。同じことは金を紛失した強奪グループにもいえる。
 強奪グループ、暴力団のお金の所在追及の物語が始まる。
相手を突き止め追及する過程が面白い。しかし著者垣根は最後の3つどもえの戦いが最も力のいれどころと考える。それはいいのだが、200ページ近くあり、あまりにも長すぎる。読者の集中力が続かない。でも、オタク系の読者には、その長いファイトがたまらないのかもしれない。 

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池井戸 潤  「下町ロケット」(小学館文庫)

池井戸 潤  「下町ロケット」(小学館文庫)
言わずと知れた池井戸直木賞受賞作品であり代表作である。
組織には浮かばれるものと圧倒的多数の浮かばれないものが存在する。抜け目、ヒラメ、策略が渦巻く。大企業の社員は意識するしないに係らず、相手の気持ち状態がわからず、結果として下請け企業をいじめる。会社員の大多数はそんな中小企業に従事している。運不運もある。就職氷河期では、いくら良い成績で大学を卒業しても、大企業にはいれず中小企業に甘んじる学生が多数でる。
 ついてないよなと不満は募り不運をなげきばかりの人生を歩む人々が多数いる。
 そんな人たちへの応援賛歌である。
悪と正義がくっきりしている。悪の大企業がその通りと連想できそうなところがよい。それを痛快に蹴散らしてゆく夢ある中小企業。その中小企業がとんでもない夢をかなえる。
 今、不運と嘆いてる人々に、どんな人生だって腐らず上を向いて、痛快に生きていくことができると確信させる名作である。

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高橋源一郎   「ジョン・レノン対火星人」(新潮文庫)

高橋源一郎   「ジョン・レノン対火星人」(新潮文庫)
高橋は私と同じ1951年生まれ。
高橋はあの頃東大にゆくための道、灘中、灘高を歩んでいた。当然のように東大受験をしようとしたが、安田講堂闘争のあおりで、東大入試はなくなり、仕方なく京都大学を受験する。
 しかし、高橋はこの受験に失敗。当時東大、京大受験を失敗した学生の行き所、横浜国立大学に入学する。この受験失敗が私は高橋の心にしこりとして残りその後を決めたように思う。
 横浜国立には、自慢の鼻をへしおられ、鬱屈したまがった精神の学生ばかりが集まった。
もう学生運動は、下火にむかいつつあった。しかし、横浜国立では、鬱屈が塊となって学生運動は続いていた。運動は過激になり、内ゲバが激化。その中で、亡くなった学生もでた。
 高橋は、東京拘置所にも服役。学生運動にのめりこむ。
学生運動時代が終わると、ポルノ、エロ映画、ピンクサロン、ビニ本、トルコ風呂など、エログロ時代がやってきた。社会へ対応できなかった一群が、こういった業界に身を投じ、単なるエロに変な理屈、思想がとりついた。この本を読み、そんな時代を思い出した。

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| 古本読書日記 | 17:47 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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角田光代 「月と雷」

先日、清水駅のキオスクで見かけ、電車の中で読むために買おうかどうか迷ったのですが、やめました。
爺やが買ってきたので正解ですね。

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内容ですが、なんとなく「ラブレス」を思い出しました。
昼間から酒を飲むおばあちゃんが出てきて、家族に疎まれていることを感じ取ってふらっと出て行くあたり。
ああいう、まっとうな暮らしから外れている人間の生き様(ちょっと大げさ)について、興味を持ったり愛しく思ったりできる人には、おもしろいのかもしれない。
私は、「こういう人間に育てられる子供ってどうなるんだろうか。負の連鎖にはならないのか」といった、平凡でつまらない感想が先に浮かんでしまいますが。
主人公たちは、多数派の「まとも」な人間とは暮らせないタイプなのかもしれない。

メッセージ性がありそうな話でした。
ターニングポイントやら原因やらを求めても仕方ないとか、生きていれば絶えず誰かの人生に影響を与えたり与えられたりするとか、そういう話なんだろうか。
先が気になってすいすい読める内容だったので、よかったと思います。角田さんの小説は品質保証されていますね。

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乱歩の奥に猫。

あんまり、食べ物がおいしそうに思えない小説でした。
描写が拙いわけではなく、しょうゆをべっとりつけなければ食べられない餃子とか、ごま塩をかけただけの冷ご飯とか、すっぱいカレーとか、ミルク味のぼそぼそしたパンとか、出てくるもの自体がという意味です。

| 日記 | 15:33 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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乃南アサ 「微笑みがえし」

元同級生の、女性グループ4人の話です。
簡単にいうと、元アイドルで復帰を控えているAに対し、B~Dはみんな恨み・妬みを抱いていて、それぞれにいやがらせをするというものです。
旦那以外の男と飲んでいる写真を週刊誌に送ったB、整形手術や刺激の強いクリームを勧めたC、商標権侵害のインチキ商売に手を出すよう誘導したD、という具合に。
互いに相談はしていないので、「Aは、私が罠を仕掛けなくても破滅したはずね」と思う。
B~Dの3人の視点でしか語られず、Aがどこまで気づいていたかは分からないというのが、この作品のポイントですね。
少し頭を使えば、「私の整形(商売)はC(D)しか知らないはず」と、リークした人間の正体はわかりそうです。
が、Aは演技なのか本心なのか、「必ず芸能界に戻るわ。Bたちも応援してね。頼れる友達がいてよかった」と最後に微笑んでいます。

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タイトルはキャンディーズですかね。元アイドルだから。
学園祭の女王、ディスコのVIPルーム、湾岸戦争。少し前が舞台です。

あとがきで、作者は女子校出身だけれど、女の子グループからは距離を置いて観察していたと明かされています。
「負け犬の遠吠え」を書いた酒井順子さんなんかは、輪の中に送って青春を送っていそうですが。

| 日記 | 08:51 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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篠田節子    「妖櫻忌」(角川文庫)

篠田節子    「妖櫻忌」(角川文庫)
男性作家は文体や、考え方、思想、或は、格好、こう書けば読者は面白がるだろうと、どこか読者を客体視して作品をかく。何となく一見ニヒルである。女性作家もそういうところが決して無いとは言わないが、もっと直截的でよくぞそこまで書くものだ、何か深く得体が知れない業が書かせているようなところがある。恰好、形を遥かに凌いでいることがある。
 この作品の女流作家大原鳳月。手術により子宮だけでなく膣まで除去される。もう性行為ができない体となる。それが反動になるのか、強烈に男を求め、男に執着、執念が心にわきあがる。そして、ある著名な若手演出家とともに、火事で亡くなる。そこから物語は始まるのだから、大原は当然登場しないはずなのだが、全編大原がじっとりはりついた物語になっている。
 大原の怨念、執念は弟子の作家若桑律子にのりうつる。そして、大原の業をあますところなく律子に書かせようとする。死んでもなお、作品を残そうとする大原の凄まじい執念が
若桑律子により実現する。
 この執念、物を書くエネルギー、若桑律子がいつのまにか篠田節子の姿に重なってくる。

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| 古本読書日記 | 18:27 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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篠田節子  「レクイエム」(文春文庫)

篠田節子  「レクイエム」(文春文庫)
篠田は前にも何回か言ったが、自分は流行作家ではあるが所詮二流作家と評価分類されていると考えている。だから、次から次へと作品を発表していないと、すぐ忘れ去られ消えてしまうとい圧迫感と常に戦っている。
 どの作品も、とにかく面白く読んでよかったという作品であることが必須。だから、材料を探しに、中味を確認や掘り下げるため、多忙のなかあちらこちらにもでかけるし、膨大な資料も読み込物語の構成を綿密に決め創り上げる。
 実は、私も最初に篠田の作品を読んだときは、篠田が感じるままの作家だと思っていた。
しかしこの「レクイエム」で、その印象は払拭。とんでもない魅力にあふれ、力のある作家だと認識を変えた。それで、今は集中して篠田を読んでいる。かっての想いを払拭してから篠田こそ超一流作家だとの思いを深くしている。そこで、再度篠田の想いを180度変えたこの作品に立ち返った。
 伯父さんの遺言。
「私が死んだら、是非、私の腕を一本、ニューギニアの芋の根に埋めてくれ。」
作品でのこの言葉の重さ、深さが今でも頭にこびりついて離れない。
もう少しで篠田との旅が終わる。

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篠田節子   「神鳥」 (集英社文庫)

篠田節子   「神鳥」 (集英社文庫)
私たちはどうしても今を視点にして色んな事を判断する。それが時に間違いを犯す。
天然記念物である朱鷺。今は佐渡で保護され育てられている。絶滅寸前を抜け出そうとしている。それで、朱鷺は新潟や佐渡にしかいなかった貴重な鳥のように思う。
 しかし、明治の中ごろまでは日本の関東や東北ではどこにでも見られた、ありきたりの鳥だった。それを農村の食糧事情が悪いため、食料用に獲りつくして絶滅しそうになった鳥なのである。
 この作品明治の初めの女流日本画家が、平凡な写生絵をたくさん残したのだが、ある日突然「朱鷺飛来図」という写生を遥かに超えた、妖しく、幻想に満ちた作品、それも同じ図柄で数枚描く。しかも死ぬ直前3か月という短期間に。
 そこに不思議さを感じた、主人公のイラストレーターとちょっと落ち目になったバイオレンス作家がその謎に迫る。朱鷺の怨霊との壮絶な戦いは圧巻の迫力。でも落ち目バイオレンス作家の叫びがいつまでも私には心に残った。
 「バイオレンス、過激エロシーンを書くために、空手道場に行って骨折する。安いところに行って、下半身の病気をもらう。洋もののビデオを六本も借りてきて目を真っ赤にして
ぶっつづけでみたりしたんだ。
 あんなもんだってばかにするけど、軽く流して書いてるんじゃないんだぜ。それをいきなり連載打ち切りだってさ。」
流行作家で飛ぶ鳥を落とす勢いの篠田の心の底からの叫びのように思えてしまう。

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池永陽  「珈琲屋の人々 ちっぽけな恋」(双葉文庫)

池永陽  「珈琲屋の人々 ちっぽけな恋」(双葉文庫)
「走るジイサン」「ひらひら」「コンビニララバイ」「国境のハーモニカ」。池永の初期の作品は独創的ですばらしく、私も興奮して読んだことを思い出す。
 池永も典型的な書きたい作家だ。いろいろため込んでいたものを一気に吐き出した。だから作品には熱い情熱がこめられ、それが読者の心を掴んだ。でも、全部吐き出したらどうでもいい作家になったのか。しかもよくないのは1950年生まれ。私も含めこの世代は、自分は正しく議論型の人間が多い。だから周りに合わせたり、客観的に自分を見つめることができない。
 32年間ずっと豆腐つくりの主人につきそって一緒に豆腐つくりをしてきた主人公の女性。たまたま豆腐を買いにきた男に一目ぼれ。それで、豆腐屋から飛び出して、その男と一緒になりたくなる。32年尽くした夫と豆腐屋をそんな一瞬で決別する背景が何も説明されない。
 このばからしい事態を読者はどう理解すればよいのか。

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池井戸潤  「金融探偵」(徳間文庫)

池井戸潤  「金融探偵」(徳間文庫)
三菱銀行退職後、コンサルタン業をおこし独立。
こんな風に池井戸の経歴を書かれると、エリート人間を想像してしまう。
この連作短編集の主人公は、大手銀行を退職したのではなく、退職させられ、安アパートに住むことを余儀なくされ、ハローワークに就職活動で通うさえない人物。
 しかも17社も応募するが、面接までたどりついたのはたった2社、その2社にも銀行の傲慢な振る舞いをいやみいっぱいに言われる。もちろん採用などされるわけはない。
 しかし主人公の住む下町には、銀行の貸し渋り、貸はがしにあい、青息吐息の中小企業がいっぱい。銀行の経験を生かして、助けてほしいというある会社社長が主人公のところへやってくる。就職活動をしながら合間に、相談者を助けるため、銀行相手に格闘する。
 そこで悪の人間の犯罪を暴き懲らしめる。相談者というより探偵である。で、いくつか成功したところでアパート住人にせがまれ、アパートの玄関に手書きで「コンサルタント」と看板を掲げる。銀行退職、コンサルタント業独立は華やかな人生というわけではない。
 幸田真音や江上剛。池井戸と同じような経歴を歩んでいるが、どことなく、目線高く、知識をひけらかし、でかい態度を作品に感じる。そこが池井戸と異なる。池井戸の素晴らしい作品の原点、視点がこの短編集でわかる。

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車谷長吉   「人生の救いへ」(朝日文庫)

車谷長吉   「人生の救いへ」(朝日文庫)
最近で一番衝撃を受けたのが車谷の死だ。本は山ほど読むが、殆どすべてが右から左へぬけ、こうして感想文でも書いていないと、全く記憶に留まることが無い。しかし、車谷の本だけは、ぐちゃっと頭にくっついてどうしても離れない。
 人は生まれた時から、苦行をすることが運命付けられていて、楽しいことなどない。
ごく一部に幸せな人はいるかもしれないが、たいていは苦しい道を歩み死んでゆく。
 苦しいことの一番が仕事をすること。金を稼がねば、暮らせられないから仕方なく苦行、仕事を人間はする。
 仕事では、好き嫌いの別なく他人と関わらねばならない。人はこの人はいやな奴と思ったら最後、死ぬまでいやな奴と思うし、いやな奴と思われたら死ぬまでいやな奴と思われる。
 だから、なるべく喋らず人と関わらないようにすることが、楽な生き方である
昔は、孤独で、無口でも仕事は続けることができた。今は、そんな人は変人扱いされ組織では無能、いらない人に分類され、希望退職という名のもとに首切りにあう。
 生きにくい世の中になったものだ。

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| 古本読書日記 | 17:58 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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しょうがの味は熱い

じいやの記事は、2つほど前にあります。
一気に読めました。難しくはないし、読みやすい。
私も、大学時代に「ふらっと一人旅」をやろうとして残念な結果になったことがあります。
「勝手にふるえてろ」と「かわいそうだね?」は、主人公が爆発してわめき、よく分からないまま話が強引に終わっちゃったような気がしましたが、これはそれほどでもない。
でも、じいやと同じく、ラストは納得できない(ーωー;)

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何が納得いかないかって、男の心理ですね。
勝手に婚姻届に自分の名前を書かれて、連帯保証人にされたかのような恐怖を味わったら、もうおしまいだと思う。
毎晩毎晩結婚を迫られ、部屋を飛び出した彼女を駅まで追いかけて連れ帰り、貴重な睡眠時間を削られたそうな。
彼が出勤する頃、彼女はぐーぐー寝ているしw
彼女が出て行った後、髪の毛一本残さぬくらいに掃除して痕跡を消し、すがすがしくなって終わりそうじゃないですか。
実家まで迎えに来て、でっかいダイヤの指環でプロポーズするなんて、都合のいい話と思える。
それが、「社会経験の無さが弱点」という爺やの感想ともつながるんだろうか。

「他に女がいる可能性」「彼の職場にいる、働く女たちと自分の違い」「彼の家族との付き合い」みたいなことは一切考えず、彼と私の一対一しかないんですよね。
そういうずれたキャラクターが持ち味なのかもしれませんが、「同棲と結婚の間にあるギャップ」なんてまじめ(?)なテーマっぽいのに、このフワフワ感はなんだろうか。

| 日記 | 01:45 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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とても長い時間をかけて わかることもあるよと

久しぶりにマッキーの「モンタージュ」を聞き、歌詞の意味が理解できました。
なにせ、イオン・ユニクロ・しまむらくらいでしか服を買わないし、こだわりもそれほどない。
「友達に付き合っただけ僕のワードローブじゃない」感じのショップで、「友達のレジを打つ」彼女に「ハートを盗」まれ、「冷やかし半分の友達」に聞かれても彼女についてよく説明できず「モンタージュ」みたいなイメージになっちゃうシチュエーションが、ピンと来なかったわけです。

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もう、「友達のレジを打つ横顔」と聞いて、「クレジットカードがうまく読み取れないんですけど」とパート仲間(友達)にいわれ、バトンタッチするスーパーマーケットの店員さんしか浮かばなかった。
そうか。ショップ店員か。
そもそも、電車で二駅のところまでお買い物に行きませんからね。田舎だから車ですよ。車。
イオンモールとかららぽーとですよ。

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最近は、「私以外私じゃないの」を気に入っています。
コカコーラのCMで流れるサビだけだと、女性ボーカルに聞こえますね。スーパーフライとかドリカムとかに近い、口大きめでハーフっぽい女性が、力強く歌っているのかなと。
動画を見て笑った。ギターのおじさん、お笑い芸人にいそうだ。
「この高い声を男性が出していたのか!」はありますが、「こんなに低い声を女性が出していたんだ!」は記憶にないですね。
構造上の問題だろうか。引き絞って高い音を出すのは、ゆるめて低い音を出すよりも易しい・・・のか?

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「僕は僕をやめれないの」(魔法鏡)
「やっぱり僕は僕だから 駄目な自分も好きにならなくちゃ」(MILK)
「こんな生き方しか・・・できない いつも問いかけていたいこのまま流されてゆくよりは」(メインストリートをつっ走れ)
「幸せのかたちにこだわらずに 人は自分を生きていくのだから」(あの頃のまま)
などなど、今の自分を受け入れ前向きにという曲は、いつの時代にもありそうですね。
説教くさくなく、適度に元気を与えてくれる曲はよいと思います。
ただまぁ、最初に書いたモンタージュの件もありますし、歌詞の解釈が間違っている可能性は無きにしも非ず(ー▽ー;)

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綿矢りさ   「しょうがの味は熱い」(文春文庫)

綿矢りさ   「しょうがの味は熱い」(文春文庫)
綿矢は社会経験無しで、芥川賞をとり華々しいデビューをした。その社会経験の無さが彼女の最大の弱点になっている。別に社会経験が無くても、社会に溶け込もうと努力したり、色んな取材をしてみようとすれば小説のネタは山のようにある。でも、あまりそういうことはしていないのではとこの作品で、また感じてしまった。
 まず、設定から疑問。社会にでたばかりの主人公とその恋人。東京で、恋人は社会人となるが、主人公は何もしないで専業主婦のようになり同棲をする。まだ安月給。とても、同棲相手など養えるわけがない。普通はどちらも働くだろう。それが3年も続くのだから、夢のような世界である。ここらが実に綿矢は甘い。
 ベッドをともにはするが、sex以外のときは、両端に別れて小さくなって眠る。そんな関係になっても、続く同棲。同棲の前に、どれほどの熱い恋愛物語があったのか。そこが終盤に少しは語られるが、殆ど明らかにされないので、何故この2人はそこまでの間柄になっても別れないのかがぴんと来ない。だから、ラストも納得できない。
 綿矢が「蹴りたい背中」で描写した、恋人同士のズレ。その続編になるように思うが、二匹目のドジョウは残念だがいない。

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吉田修一   「路」(文春文庫)

吉田修一   「路」(文春文庫)
吉田は、台湾の人々を愛してやまない、そんな想いがどのページからも伝わってくる。
 最後にでてくる春香と台湾人、人豪との会話にそれが集約されている。
 「春香さんを見ていると、人生は楽しいものなんだってことを思い出すよ。」
 「そう?・・・でもね、それを教えてくれたのは、あなたたち台湾人よ。」
この物語は、春香と人豪の関係が軸の物語にはなっているが、その他、台湾と日本、それぞれに係り合いのあった人々の別の人生も同時並行で、描き出す。
 異なった人生を送った人々をどのように一本の物語に収斂してゆくと思ったら、最後に台湾で導入した日本の新幹線に、異なった車両ではあるが、それぞれが同じ新幹線にしかも初めて乗るところへ収斂させてゆく。
 新幹線導入がベースにはあるが、この物語で最も大切なところは、阪神淡路大震災での安否を心配して人豪があてはないけど春香の住んでいる神戸へ、1999年の台湾中部大地震で、春香が人豪の住んでいる台中に安否を確認にでかけるところ。
 そしてそのことを互いに知ったのが、もう新幹線が走り出す直前。そして、今まさに
新しい新幹線とともに、新しい人生をあゆみはじめようとしている。それは、一緒に乗り合わせた、別々の人生を歩んできた人たちにも同じだ。

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長嶋有 「ねたあとに」

とりあえず読了。
これといって事件が起こらず、「こういうエピソード、エッセイでも見たな」と思いながら終わりました。
大江健三郎賞、うれしかったんでしょうね(^^;)
ネズミやクモが這い回り、トンボが入ってくるような小屋に、あまり行きたいとは思わない。

たぶん、何かしらの試みや工夫がされているのでしょう。あとがきを読むと、久呂子(くろこ・・・黒子?)という主人公の名前にも意味があるようなないような。
それを読み取る力は、私にゃありません。

人物紹介が意味深なわりに、本編でそれらしい説明がない。異母兄妹という前情報があると、確かに妹(トモちゃん)の存在が浮いているような気もするだろうか・・・。
間取り図があるのは助かるし、表紙の絵が何を表しているのか分かると楽しいです。

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小川洋子   「最果てアーケード」(講談社文庫)

小川洋子   「最果てアーケード」(講談社文庫)
素晴らしい連作短編集である。
どの作品も良いのいだが、私は本読みが好きだから「百科事典少女」最も好きである。
ある小さなアーケード街の奥まった一角に、お客さんが一服し本を読めるコーナーがある。
そこには100冊ほどの本がある。主人公の少女のお父さんが、主人公に買ってあげた本が
少女が滑りいれる。そのとき少女の胸が高鳴る。
「一冊分の厚みだけ自分の世界が広がったようで、なぜかしら誰にともなく自慢したいような気分になった。」
 それから、同級生のRちゃんは百科事典を端から読むのだが、それに熱中してくるときの描写も素晴らしい。
 「熱中してくるとRちゃんのお尻が少しずつ椅子から浮き上がり・・・・やがて片膝が椅子に載り、上半身はつんのめって百科事典を抱え込むような姿勢になった。どんどん両足が開いてパンツが見えるくらいになっても平気だった。」
 本大好きだった小川さんの少女時代を彷彿とさせる描写だ。
 本から優しい香りが匂いたってくるような、短編集だった。

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高橋和巳   「人は変われる」(ちくま文庫)

高橋和巳   「人は変われる」(ちくま文庫)
人には3つの重要な能力があるとこの作品では言う。
1.自分から離れる能力  2.絶望をし、絶望を受け入れる能力 3純粋性を感じることができる能力
 この3つの過程を経ることで、過去の自分に決別して人間は変われると著者は力説する。
例えば、この本を解説している中江友里が言う。
 ある時期、とても不安がわけもなく襲い、全く眠れなくなり、何をする気力を無くした。
そしてどうしようもなくなったとき、深い絶望を感じた。ここで、自分を客観視することができ、そして自分が変わるため、純粋に見つめなおすため、パリへ飛び、パリを放浪して、立ち直ったと。
 私は、小説ばかり読むせいか、この著者よりも、人間世界はもっと横幅、縦幅があるように思う。この著者が対象にしている人間世界の幅はかなり狭い。絶望は受け入れる能力があるのではなく、受け入れないと生きてゆけないから仕方なく受け入れるのである。受け入れて立ち直り変われる人間は、やはり一部の人である。
 落ち込んだ人の環境や、生活条件が変えられないと、そんなに人間は変われないように思う。著者の言う範囲で再生できた人間は、落ち込む原因の根本に甘えがある。それは、
落ち込んでも、財力や名誉や、その人をとりまく社会的環境がその人を支えられるように整っているからだ。

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道尾秀介   「カラスの親指」(講談社文庫)

道尾秀介   「カラスの親指」(講談社文庫)
道尾はこの作品でも、トリックを山のようにばらまいて、それを一つ一つ最後に解明解説している。多少、くどさは残るが、それ以上にこの作品では爽やかさが読後感に残る。
詐欺とマジックの違い。詐欺は最後まで自分が騙されていることがわからない。マジックは最初から騙されていることを観客は承知している。そこが違う。
 詐欺師家業二十年のテツが詐欺師7年の武沢を、見事にだまし切り、最後まで騙されていることが武沢にはわからなかった。そして、大がかりの詐欺を計画失敗し、すべてが終了し、詐欺仲間が別れ別れになり、一人になったとき武沢はふとある疑問がわく。そして、その疑問が次の疑問につながり、色々調べてゆくと、詐欺を実行していた自分こそずっと騙されていたことに気付く。
 その騙したテツこそあっぱれ。おおがかりのテツの詐欺のおかげで、ダメ人間の武沢が生まれ変わり社会人の道を歩き始めたのだから。
 肝臓がんにかかり、死を目の前にした天才詐欺師の一世一代をかけたテツの詐欺はまさにあっぱれ。

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津村節子   「遍路みち」(講談社文庫)

津村節子   「遍路みち」(講談社文庫)
吉村昭、津村節子夫妻の暮らしぶりについては、吉村のエッセイや津村の小説を通じて、作家としてデビューするまでの苦難の連続は知っていたが、どちらも作家として自立、一つの家に作家が夫婦として同居する家庭はどうだったのか、殆ど昭も節子も書いていないのでわからなかった。
 苦難の時代より作家として自立してからのほうが圧倒的に長い。作家というのは結構スランプがあり、書けないときが続く。そんなときは神経が昂り、イライラが嵩じ、家族にあたるなんてことがあちこちの作家が書いている。夫婦で作家をしていることは結構な修羅場があり、つらい時が多かったのではと想像し、この作品を読んだ。
 吉村昭が心臓移植をテーマで書いた作品のため、まだアパルトヘイトが激しかった南アフリカに取材旅行に行った。そのとき、津村のもとに吉村から毎日ハガキが届いた。
 家のなかで物を探す。どこへしまったのだろうと節子が昭に聞く。そうすると昭がお前の目線になってさがせばいいのだと言って腰をかがめてすぐ物をみつける。
 こんな記述を読むと、暖かい夫婦だったのだとうれしくなる。

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| 古本読書日記 | 18:19 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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篠田節子  「斎藤家の核弾頭」(朝日文庫)

篠田節子  「斎藤家の核弾頭」(朝日文庫)
作家には最初に物語の構成やプロットを決め、それに従って書く作品と、最後とか書き出しだけを決め、後は心の赴くままに書いてゆく作品と二通りあるのだそうだ。
 篠田は結構、構成を大事にするように思えるが、実際ペンのおもむくままにまかせるという作品もある。
 この作品も、最後の住民が国家に宣戦布告、核弾頭をぶちこむと宣言。それが実際は花火に代わり「祝東京ベイシティ完成」が大空に放たれるという最後のクライマックス。きっとまず篠田にはそのクライマックスが浮かぶ。そして、そこに向ってひたすら篠田が本能のおもむくままペンを走らせたとのではと思わせる作品である。
 篠田はコメディ、ドタバタとなると、あふれるように次々場面が浮かんでくる。おもいつくままどんどん書いていったら500ページ以上にもなってしまった。
 2075年の日本は、階級差別カースト制が敷かれ、しかも若年層を増やすため、昔の家父長制を実施、女性は子作り、子育てのマシーンとなっている。住居を確保するため、100階以下の建物建設は禁止。既存の100階以下の建物は破壊させる。裁判は人間が行うのではなくすべてコンピュータが行う。
 正直、この篠田が提示した前提が、私には実感が乏しいため500ページは長すぎた。

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| 古本読書日記 | 19:44 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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津村節子   「花がたみ」(中公文庫)

津村節子   「花がたみ」(中公文庫)
津村はどうしたのだろう。この小説は納得感が無く、不満足感が残る。
福井五箇地方の特産である紙漉き和紙製造業を引き継いだ寡黙な兄隆治と、婚約を破棄して、地元五箇をでて東京郊外のスーパーに勤めた妹綾乃。そのスーパーの従業員で寮で同部屋になった元気な千葉出身の純子。3人が紡ぎ合う物語である。
 支え合い強い絆で結ばれている兄妹。女性とのつきあいを未だしたことのない、人見知りをする純朴な隆治に、福井を訪れ、恋心を隆治に抱いた純子。もちろん、綾乃の恋も重要だが、妹の陰からの応援で、ゆっくり、ゆっくり進む純子と隆治の恋の道の行く末が読んでいて一番気になる。
 ところが、これからいろいろ始まるだろう恋愛物語と思った直後に、隆治がくも膜下出血で死んでしまう。
 なぜ津村は隆治を死なせてしまったのか。その先の物語が上手く書けなかったのか。
この津村の思わず隆治を死なせてしまったこと、全く不可解である。

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| 古本読書日記 | 19:38 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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猫グッズ

長嶋有「ねたあとに」は、まだ読み終わりません。
著者そっくりのコモローという男性が出てきて、エッセイで披露されていた出版社との絶交を実際にやったり、増刷への執着を口にしたり、写真を撮るときのこだわりを語ったり。
で、主人公(語り手)の女性はそんな彼を好ましく思っている。「今どき口に出して絶交する人は珍しい。そんな不器用な彼が放っておけない。気になるわ」みたいな。
(エッセイによると、長嶋さんが絶交宣言しても出版社はぜーんぜん問題なく、パーティーを欠席してやったのに誰も彼の不在に気付かなかったとかなんとか)
表現も発想も面白いですが、後ろにいる作者の「こだわっている俺カッコいい」みたいな姿を想像しちゃうとダメですな。

さて、本のネタが無いので、今日買ったユニクロシャツの写真でも貼ります。左側ね。
IMG_8558_20150523174151143.jpg
ららぽーと店で見かけて気に入り、サイズが無かったのでべつの店舗まで行ってしまった。
裏に「猫じゃ猫じゃ」の唄が書かれています。
右は、何年か前に清里で(寒かったから旅行先で急きょ)購入したトレーナー。アイラブキャット。

IMG_8557.jpg
猫柄の入った服は他にも持っています。(虎も猫だ)
下の、ハングリーでアングリーな猫は気に入っています。500円だったので、洗濯するたびプリントにひびが・・・

IMG_8561.jpg
肉球USBメモリ。
じいやが汚い手で触るため、黒くなっているマウス。これは・・・アザラシかな。

本物の猫も付けておきます。
IMG_8560.jpg
暑苦しや。

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村上春樹 「東京奇譚集」

短編だし、村上さんの本の中では読みやすい部類に入ると思います。
「どこであれそれが見つかりそうな場所で」以外は、なんとなく分かったような気になれる。

知恵袋で、
「村上春樹は読んだことがない。『レキシントンの幽霊』を借りたので読むつもりだけど、他にお薦めは?」
とあって、この本を挙げてみたところ、
「『レキシントン』は短編だった。物足りない。万人受けしない作風だろうけれど、私は読む!」
みたいな返信でした。
こう、「選ばれた人にしか理解できないものだから、挑んでみようではないか」と思わせる作風なんでしょうね。
私は短編が限界です。残念ながら。ジャズは全く分からないし、センスもないし。

文庫本を買ったのはしばらく前で、「今読みたい潮文庫 2011年版」という帯がついていました。
つまり再読なんですが、結末が記憶に残っていたのは「日々移動する腎臓の形をした石」だけでした。
この話に出てくる、「男が一生に出会う中で、本当に意味をもつ女は三人しかいない」という言葉が印象的だったのではないかと。
150522_1943~01
表紙が猿なのも、今回気づきました。

ひまわりが芽を出しました。さて、育つだろうか。
150522_1942~01

| 日記 | 06:03 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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篠田節子   「死神」(文春文庫)

篠田節子   「死神」(文春文庫)
連作短編集。現在の生活保護行政の生々しい現場を扱う。
篠田の作品を今までたくさん読んできたが、この作品が今のところでは一番面白かった。
社会福祉事務所の最先端にいるケースワーカー。主たる業務は、申請者を生活保護の対象とするか判断して調査票を作る仕事だ。加えて、保護対象者にできるだけ就業を促し自立を促すことも重要な業務である。
 しかしケースワーカーひとり当たり対象者をたくさん抱えており(この作品のなでは52世帯を担当というケースワーカーがでてくる)真面目に審査したり、申請の中味を吟味調査していたらいくら働いても追いつかない。だから、どのワーカーも適当に流す。しかし、中には、正義感や同情や興味も伴い、個々のケースに首を突っ込み相談者の窮状を解決してあげようと考え行動する人もいる。加えて窓口には、怪しげで、保護費をまきあげてやろうと企んで来る人も多数いる。そういう人を上手くあしらえない、ワーカーもいる。そして、そういう人に絡み取られドツボにはまる。
 そんな生活保護最前線のありさまが実によく描かれている。しかも、悲惨ではなく、独特の篠田のユーモアをもって。
 その笑いがやがてやりきれなさに変わる。

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| 古本読書日記 | 20:07 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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津村節子  「星祭りの町」(新潮文庫)

津村節子  「星祭りの町」(新潮文庫)
戦争が終わったとき、筆者津村は20歳。そこからの5年間を物語にした自伝的小説。
この小説は良い。当時の青春まっただなかの女性の生き様を、ことさら何かをデフォルメしたり、メッセージ性を持たすことなく、ありのままに描く。
 戦争が終わったからといって、すべてがひっくりかえり、風俗や文化が変わったわけではない。男女恋愛など、この作品の舞台である、埼玉県の小都市では、タブーだったし、家父長制だって現存していた。
 戦後最初に観た映画は並木路子の「そよかぜ」。主題歌リンゴの唄が有名である。そして2年後に密かに想いをよせる男性とみた映画は「カサブランカ」。イングリッド・バークマンとハンフリー・ボガードに魅せられ、映画館をでて主題歌「時の過ぎ行くままに」を口ずさむところはなかなかいい。
 戦争で若い男がたくさん戦死。男性一人にトラック一杯の女性といわれた時代。とても普通の大衆女性など結婚などできるとは想像できない。だから、手に職をつけねばとドレメ洋装学院に通う。そして姉妹3人で洋装店を開く。でも、戦争で学問を学べなかった悲しさが、洋装店から新設された短大へ津村を向かわせる。勉強をしたいと。
 懸命に走った戦争直後の青春時代が鮮やかに描かれる。この小説が、戦争が終わって50年後の1995年に書かれたことを知り、驚嘆した。

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| 古本読書日記 | 19:54 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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篠田節子  「スターバト・マーテル」(光文社文庫)

篠田節子  「スターバト・マーテル」(光文社文庫)
中学時代同級だった光洋と彩子。互いに友達もできず孤独。彩子は当時いじめにあっていて光洋に救われた思い出があるが、それほど互いを意識したり惹かれあっていたわけでもない。
 その2人が、30年後にスイミングクラブで偶然出会う。中学校では同じように暗く、孤独な生活をしていたのに、30年たった今、光洋の輝くべき人生と自分の何とも平凡な暮らしとの落差にそのとき彩子は強い嫉妬を感じる。この作品の原動力はきっと嫉妬なのだろう。
 しかし、30年前にもそれほど惹かれあっていなかった相手と偶然遭遇し、嫉妬だけを原動力に急に意識しあう関係になることに納得感がない。光洋について突然警察が彩子の家を訪問してきて尋ねる、それに反応して、彩子が色んなところに電話をして光洋のいどころを掴もうとする。そして、彼が苫小牧にいることをつきとめると、その日に飛行機に乗って苫小牧までゆき真相を知ろうとする。ここも、そこまでしないだろうと思う。
 更に、苫小牧から札幌までの雪のみちすがら、光洋が自らの30年間を告白する。それが
いかにも論理的過ぎて、とても警察逮捕がさしせまっていて追いつめられている状況には感じさせない。
 篠田にしては、少しレベルの低い作品」である。

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| 古本読書日記 | 22:37 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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津村節子   「惑い」(文春文庫)

津村節子   「惑い」(文春文庫)
この短編集は、昭和58年から62年の間に書かれたものを収録している。このころの津村は、幼い子の子育て真っ最中で、最も家事育児に忙しく小説家にとっては辛い時代。
 だから、小説を書くための題材を集めることができなかったことが想像できる。
多分、雑誌かテレビ、或は一瞬のひらめき、辞書を眺めていてこれはと思った言葉をみつける。言葉があって、そこから物語をつくるということをこの短編集を読んで感じた。
 男は浮気をする。浮気相手で多いのはいきつけのバーの女性か、会社の部下。だいたいこういう浮気の場合、ある期間をすぎると、女が男に愛想をつかして、男を捨てる。
 そして男は行き場所を失い、妻と子が待つ家に、こそこそ帰ってくる。そのとき男が空威張りで言う。「俺にも面接権があるんだ」と。収録されている「葱」という作品の最後にこの喋りがでてくる。
 津村は「面接権」という言葉に刺激を受けこの物語を創ったのだ。
でも、どれだけの読者に「面接権」が届くのだろうか。

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| 古本読書日記 | 22:31 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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篠田節子   「静かな黄昏の国」(角川文庫)

篠田節子   「静かな黄昏の国」(角川文庫)
日本から農業、漁業が無くなった。自然は破壊しつくされた。都会の緑は、植物ではなく、
成形された模造品。
 葉月卓也、さやか夫妻は今70歳を超えた。都会の住宅には潤いはない、砂漠にいるのと同じ生活である。しかも、食卓から肉、魚、野菜が消えて久しい。今は、クッキーのような乾物をお湯に浸して三度の食事をする。味気ないことはなはだしい。せめて、死ぬときくらいは、豊かな自然に恵まれ、自然の食材を調理した料理を食べていたい。
 世の中は若い人から死ぬようになった。世界の食材は、成長著しい豊かな国、中国、アジア諸国がすべて買いあさる。日本人が食べている乾物は、インドや中国の人々が食い残した残飯を日本に輸入して加工したもの。だから子供ができても、みんな病気にかかり亡くなってしまう。
 そんなとき、葉月夫妻の願いを300万円払えばかなえてくれるという業者が現れた。
不信には思ったが、願いが勝ち、業者にのった。そして、連れて行かれたところは、確かに自然の森があり、野菜も肉も使った、おいしい料理が食べられた。
 どうしてこの日本にそんなところが残ったのか。その楽天地は実は、核廃棄物処理施設だったのだ。そこだけは放射能が蔓延して、そこの自然は破壊できなかったのだ。

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| 古本読書日記 | 06:09 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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