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2015年03月 | ARCHIVE-SELECT | 2015年05月

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雫井侑介  「虚貌」(下)(幻冬舎文庫)

雫井侑介  「虚貌」(下)(幻冬舎文庫)
心理カウンセラーの北見が言う。
「人間と言うのは:水のほとりで生活したほうがいいんですよ。ぶらっと散歩がてら足を伸ばせば川べりを歩ける。そんなところがいいんです。人の心にも潤いを与えてくれるんです。」
 こんな伏線があって、クライマックスの理想的川べり飛水峡での壮絶な格闘シーンへとつながってゆく。
 上下巻ある、長編作品の全てを雫井はこの最後のクライマックスにかけている。そしてそれは見事に成功している。川は普段は確かに人間に潤いを与える優しい存在である。しかし、豪雨になると逆巻く水が溢れかえり、濁流がありとあらゆるものを巻き込んでたけり狂う。
 殺人鬼気良、癌末期患者の元刑事守年、気良によって殺されそうになっている勝山とその恋人で守年の娘朱音の格闘。目の前で繰り広げられているような感覚に陥る。
 雫井の文章能力にただただ感服。

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雫井侑介  「虚貌」(上)(幻冬舎文庫)

雫井侑介  「虚貌」(上)(幻冬舎文庫)
引っ越し業者を含め、輸送業界の職場環境は劣悪だ。
特に中小輸送業者は悲惨である。それは、業界への参入が容易で、全国に雲霞のごとく輸送業者がひしめいているからだ。ということは、輸送料金の価格競争が激しいことになる。そうすれば、当然、賃金待遇は悪くなる。
 運転手や従業員は、常識や道徳感が欠け、感情的になりやすい人が多い。だから、やたらと出入りが激しい。会社の監督者や社長の対応が間違えると、恨み骨髄となり、この作品のように、家に放火され、殺されることも。
 しかし、輸送という事業は社会インフラの根幹をなす最も重要な産業である。いくらものを作っても、運ぶという行為がなければ、作ることは無意味である。運ぶという行為があるから、我々は豊かな社会生活を営むことができる。
 最近は少し輸送も見直されて、評価も高くなっているが、それでも、もう少し高く評価されてしかるべきである。

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篠田節子  「夏の災厄」(文春文庫)

篠田節子  「夏の災厄」(文春文庫)
これは凄い小説である。
90%はきっと篠田が細密に調査した事実を駆使して、残り10%は篠田が作り上げた架空物から成り立っている。だから、恐怖、パニックにリアリティがある。次に主人公らしき人たちは登場するが、こいつがという人はでてこない。塊と塊が戦いあう。
 それにしても、権威ある病院が、昭川市で発生している奇病を日本脳炎と誤診断をすると、
症状が日本脳炎とは異なりそれは違うのではという疑問が一部にでるものの、役所、医療機関は日本脳炎として一糸乱れぬ対応をとる。
 日本脳炎は蚊が媒体し伝染するが、その奇病はまだ蚊が出始めの5月に発生、また家畜など動物が日本脳炎にかかるはずなのに、どの家畜を調べてもウィルスは発見されない事実が次々現れるのに、全く顧みられない。走りだしたらまっしぐら。
 役所も何だか原因がわからないより、日本脳炎と断定してくれたほうが、対応がとりやすい。だから、真実は葬り去られ、恐慌状態に突き進む。
 本当に、先送り、事なかれということがどれほど恐ろしいことなのかがこの小説で明らかにされる。

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小杉健治   「鎮魂」(集英社文庫)

小杉健治   「鎮魂」(集英社文庫)
小杉の発想力には驚嘆する。
この物語は大震災で、大量に死人がでる。その死人のなかに震災と関係なく、殺人にあい死んだ人がいる。しかし、あまりにも大量の死者がでているので、検死などは行われず、震災被災者として処理されたら、どうなるか。この大胆な発想で、物語はすでに成功したことが確約される。
 しかも、うますぎて少々あざとすぎないかと思うのが、殺人者が、阪神淡路大震災にまぎれて人を殺すが、その後宮城県女川町に移住して、そこで東日本大震災で被災、愛する妻と娘を失う。そこでの痛切な悲しみが物語の最後のクライマックスの伏線となる。
 正直、話の運びが上手すぎ、テクニックが全面にですぎているとの思いが読後、強く残った。

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篠田節子  「聖域」(講談社文庫)

篠田節子  「聖域」(講談社文庫)
死んだひとはどこへ行ってしまうのだろうか。死んだ人と生きている人との関係は。死んだ人と生きている人は交流ができるのだろうか。こんな疑問、恐怖からたくさんの宗教や、巫女、イタコなどが誕生した。
 篠田は、この小説のなかで、この問題にある落とし前をつけた。
「現実にあるものはすべて壊せる。生きている人間だって壊し死をむかえさすこともできる。しかし、記憶の底に生きているものは壊せないし消すことはできない。どうしても壊したいのなら自分の頭をぶっ壊すしかない。」
 生きている人に死人は記憶となっていつも傍にいる。そして、死人は記憶となって、生きているものを悩ましたり、喜ばしたり、考えさせたりする。記憶は魂と言い換えてもよい。
 魂はこの世のありとあらゆるところに、存在し、無数にある。そして生きている人から
次の生きている人に魂はひきつがれてゆく。こんなことを篠田はこの小説を通して言いたかったのだと思う。
 それにしても、篠田の小説はどれも、小説家ではなく魂が書いているように思える。
何だか、篠田はこのままで大丈夫だろうか、やせ細ってどこかへ行ってしまうような不安に襲われる。

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柴崎友香   「虹色と幸運」(ちくま文庫)

柴崎友香   「虹色と幸運」(ちくま文庫)
柴崎の特徴がよくでている小説だ。30歳になったばかりの3人の女性が登場する。イラストレーターの珠子、少し売れていて、色んな雑誌や本に挿絵を描いている。仕事のちゅうしんはをしているのは夜。 大学職員のかおりは、劇団の風来坊と同棲中。雑貨屋を営む夏美は3人の幼い子を養育中。旦那はリストラにあい、居酒屋でアルバイト。それぞれに今に少し不満足で、少し将来に不安もある。そんな彼女たちの日常を丹念に柴崎が切り取る。
 面白いのはこの小説には主人公がいない。そして、すべてが三人称で語られる。あくまで客観的に行動を表現する。そして30歳の女性のありさまを読者にみせてくれる。
 でも、正直、今の30歳女性とはどことなくズレを感じる。30歳の女性、今は、青春まっさかりで、元気いっぱい、活動的である。仕事も徹夜残業厭わず、飲み会、遊び、旅行、そしてグルメにお喋り。今や女性の中心は30歳代である。小説の女性たちは、少しくすんで30歳を重く感じすぎている。

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小路幸也  「フロム・ミー・トゥ・ユー」(集英社文庫)

小路幸也  「フロム・ミー・トゥ・ユー」(集英社文庫)
この短編集、一話、一話が、昭和40年代テレビで放映されたホームドラマ仕立てとなっている。「時間ですよ」「寺内貫太郎一家」を下地にしている。
 お手伝いさんや、奉公人などを含め大家族が物語の中心。その大家族は、少し変わり者もいるけど、おかみさん中心に、わきあいあい、絆も強く、何よりも暖かく、楽しい理想的家庭。一人も、悪い人や、卑屈な人はいない。
 テレビの向こう側には、実際は、何かの問題や苦労をかかえている人たちがいる家庭があった。だから、ありえない暖かく、明るい家庭に憧れ、理想的家庭としてみていた。
 そんな、家庭を現代においてみたのがこの作品。でも、出来上がった話は今ではなく、昭和40年代の思い出話。
 それにしても登場人物が理想的すぎる。もう少し、とんがったり、はみ出している人が登場してほしい。

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篠田節子  「女たちのジハード」(集英社文庫)

篠田節子  「女たちのジハード」(集英社文庫)
今でも流行っているかもしれないが、少し前まで、無農薬野菜とか有機野菜が流行った。あるいは、道の駅や、ちょっとした高級スーパーにゆくと、作り手の写真が印刷されて売っている野菜がある。
 それで手にとって買ってはみるが、安全は担保されているかもしれないが、それほど際立って美味ということはない。しかし、値段はかなり高い。
 何だかそのうちに、作り手の写真が買い手を馬鹿にしているように見えてきた。とにかく有機で思考が止まって、美味しいとか味わいのある野菜への探求心が感じられないのだ。
 野菜がどのように調理で加工され、何がそこで引き出され、美味しい料理になるのか、
一流レストランや割烹で実際に野菜作りの人は知り、研究して野菜作りにその結果を還元して欲しいと思う。有機だ俺が作った野菜だと写真で威張っているだけでは、農業に未来は無い。こんなことをこの小説を読んで考えた。

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萩原浩   「家族写真」(講談社文庫)

萩原浩   「家族写真」(講談社文庫)
ハウスメーカーのCM、とても手が届きそうもない豪華な家が登場するまではよいが、それに加えて幸せいっぱいの雰囲気家族がでてくると全く白ける。いつも笑顔が絶えない家族。
お父さんが息子と楽しそうに会話している。お母さんは幸せいっぱいの顔でキッチンで料理をしている。
 そんなマイホーム家族、いるかもしれないがかなり希少価値の部類にはいる。まあ、長い人生のなかでそんなときもあるかもしれないが殆どそれは一瞬だ。だいたいの家族はどこかゆがんでいるか悩みを抱えているのが普通である。
 特にゆがむのが、父親が、リストラにあい失職したとき。受験生など、子供が学生まっさかりでお金がかかるときだったらかなり歪む。
 この短編集のなかの「しりとりのり」。漫才か落語のように、しゃべりのみで小説が成り立っている非常に挑戦的形式の小説である。心の動きなどを別に説明しなくても、家族の会話を読んでいるだけで、リストラにあった父親の地位が家族の中でどーんと最底辺になり、それでもめげない父親の姿の哀れさ、やるせなさが伝わってきて何とも切ない。

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篠田節子   「百年の恋」(朝日文庫)

篠田節子   「百年の恋」(朝日文庫)
そこまで至る経過も面白いが、ともかく年収200万円あるかないかのしがないフリーライター真一が、33歳のエリート銀行行員、しかも美人の梨香子と結婚する。
 この梨香子、なにしろ東大卒で頭脳はきれ、銀行では幹部行員で年収は800万円。しかし、才色兼備の梨香子、家庭ではパンツなどよごれたままほったらかし。整理はできないし、掃除も、洗濯も、料理も全くできない。しかも、外ヅラはいいのだが、家庭内ではわがまま、甘え放題の子供そのまま。
 そこに子供ができるものだから、しっちゃかめっちゃか。とにかく読者をそらさないコメディ。真一、梨香子も面白いのだが、この小説で最も気に入ったのは、真一の尻をひっぱたきながら叱責、励ます出版社の女性編集者である秋山。
 調子にのって真一に子育てエッセイを書かせ出版させようとしたときの言いぐさが最高。
「メンズ リブよ。テーマは。だから、男らしさからの解放。家父長制度のもとで暴力装置として機能していた男という概念から男自身が自由になるということ。」

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雫井侑介   「白銀を踏み荒らせ」(幻冬舎文庫)

雫井侑介   「白銀を踏み荒らせ」(幻冬舎文庫)
AIIB、中国主導のアジアインフラ開発銀行について世界はがやついている。
今まではアメリカ主導の世界開発銀行がインフラ投資で世界をリードしてきた。それはとりもなおさず、膨大な資金が、アジアを始めとした国々のインフラ事業に開発銀行を通して投資がされ、その投資したお金のなにがしかがアメリカ権力や企業に還流していたことを意味していた。今回のAIIBは、その利権構造をアメリカから中国へ移すというグローバルでみたら大変な変革である。
 オリンピック、サッカー、スキーはヨーロッパ権力者の利権のために存在している。IOCの幹部は、超一流ホテルのスイートルームを占拠し住居にしていると新聞で読んだことがある。
 この作品はスキーの世界での権力の闇を扱っている。なかなか面白いが、もう少し中味を突っ込んでほしかった。単に、白人社会の占有スポーツであるスキーで有色人種が金メダルや他のメダルを獲得するようになったことに憤りを覚えるワスプの闇の結社が、有色人種の登場する場面で、そのレースを妨害するだけでは、動機が通り一遍で、納得感が薄い。

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桂望美   「ハタラクオトメ」(幻冬舎文庫)

桂望美   「ハタラクオトメ」(幻冬舎文庫)
女性社員活性化、女性社員の積極活用などと、新しい視点で、最近は会社内に女性社員を集めたプロジェクトが盛んである。この作品は、普段色んな部門にばらばらになっている女性社員を集め、商品企画開発をするプロジェクトを作る。そのプロジェクトの奮闘物語である。
 こういう作品を成功させることは難しい。物語はどうしても、企画した商品より、それを
社内のあちこちにたちはだかる壁を越えていく過程を物語になるが、そのもととなる商品に魅力が無いと、過程はいかにもありきたりの、社員研修物語になってしまうからである。しかし、そんな目をむくほど魅力的商品は小説家が創造することはまず不可能である。
 そこを救っているのが、人事課から選抜されて、プロジェクトリーダーにされてしまう主人公の北島真也子。何しろ体重100kg以上ある巨体社員である。それを積極活用して、周囲を包み込んだり、ユーモアを連発して笑いの渦にメンバーを誘いこむ。
 秘書室の給湯器が故障し、秘書が人事課の給湯器でお湯をいれている。
真也子が言う。
 「秘書室からここまでは遠くて大変でしょう。」「そんなことはありません。近いですよ。」
「失礼。距離をデブ換算しちゃった。デブは3歩以上の距離は長距離なんだわ。」
桂望美、真也子に自分を投影している。そこが、この物語をリアルにしている。 

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篠田節子  「美身解体」(角川文庫)

篠田節子  「美身解体」(角川文庫)
顔を整形する。普通は原形があり、その特徴はそのままにして、不釣り合いな部分を修正する。しかし、もし醜いと思われる顔が整形により100%吉永小百合になってしまったらどうなるだろうか。
 吉永の顔に合わせ、性格も心も純情、純白、愛らしい性格に変化してゆくのだろうか。それとも、顔だけが独立、心は今まで通り、卑屈で嫉妬深く暗い性格のまま続くのだろうか。
 人は見た目が最も重要。いくら心が清らかでも、顔付が醜いと他人は近付くことに躊躇する。しかも、現在は、他人と交わることに強迫観念が働き、できるだけ薄い関係で人と交わりたい人ばかりになっている。だから、心の交流より、見た瞬間の顔のつくりで友達か恋人になることを決める。
 そして、人間そのものより、体にポンと乗っている顔だけを愛する顔フェチばかりになる。
それが行き着く先は、この作品のようなとんでもない悲劇だけが待っている。

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吉村昭   「白い航跡」(講談社文庫)

吉村昭   「白い航跡」(講談社文庫)
沖縄の辺野古への基地移設反対、原発再稼働反対のデモの様子が最近頻繁にテレビに登場する。このデモが新聞と結びつき、あたかもすべての人が基地移設、原発再稼働に反対しているがごとくに煽り立てる。しかし、現実にデモに参加している人は100人もいないのが殆ど。多くても数百人規模。少なくてもニュースや新聞でとりあげるのなら万はいなくてはいけない。そこまでいなくても5000人以上はいなくては。
 ヒステリックに新聞が煽るのに、どうしてこれほどまでに参加者が少ないのだろう。
 それは、「平和を愛する会」とか「基地建設反対の会」とかあたかも純粋なる活動のように装いをしているが、そのバックは特定の思想やイデオロギーを持った人たちが存在していることを多くの人々がうすうすながら知っているからだ。
 そしてそういう人たちの本質は、自分たちが権力を握ると、異なる人々を排除し弾圧を加えることを知っているからである。

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蓮池薫   「拉致と決断」(新潮文庫)

蓮池薫   「拉致と決断」(新潮文庫)
この作品は、北朝鮮の真実の姿を、拉致された怒りが深くあるものの、極力その感情を抑えて、冷静な筆致で描いている。
 先軍政治。言葉ではわかるものの、具体的には普段の暮らしでどういうときに表れるのかよくわからなかったがなるほどとこの作品でわかった。蓮池さんが暮らしていた招待所で、指導員や管理員の女性たちがなぜ女中のような仕事をしているのかもよくわかった。
 強がりは言うけど、北朝鮮はトップも民衆もアメリカに恐怖を抱いていることも理解し、本音はアメリカとの戦争は回避したいと念願している。特に東西冷戦構造が崩れてからはいつもアメリカの恐怖を身近に感じている。抑止力というものが実際存在するものなのだということを知り少し驚いた。
 イスラム国についても専門家なる人が登場して、したり顔で解説する。その前は北朝鮮専門家なるひとがマスコミに登場していた。彼らが本当は何も具体的には知っていないのではといつも思っていたが、この作品でそれは間違いではないことを知った。

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 抑制の効いた文章から、ふつふつと蓮池さんの怒りの声が聞こえてくる。

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中島京子   「小さいおうち」(文春文庫)

中島京子   「小さいおうち」(文春文庫)
本になるのかわからない。出版社の編集者の女性の勧めで、タキは自分の昭和初期から昭和19年まで、東京で女中として過ごした時代を書き始める。それを、健史という青年が読む。そしてタキを時々叱る。この日は2.26事件が起きた日じゃないか。もっと世の中は物騒で暗かったはずだ。この日は真珠湾攻撃した日で日本は沸き返ったはず。この日はガダルカナルが陥落した日。皆戦争の恐怖や不安をだんだん感じてきた日じゃないのかと。
 戦前、戦中は妻というもの、夫をたてて一歩下がって暮らすもの。だから、男は戦争についてあれこれ御託を言うが、妻は直接戦争を身近に感じることは少ない。ましてタキは女中。
 社会の喧噪、戦争はかすみか曇りガラスの向こうにある。ひたすら、時子奥様、旦那様、息子の恭二様に仕えることがすべて。掃除をして、洗濯をして、食事を作って。そして時に奥様と一緒に銀座にでて大好きなカレーを食べて。
 女中という視点から、社会、戦争をみるとこうなるということを実に印象的に描いている。戦争よりも、奥様の不倫のほうが心配だし、恭二の小児マヒの手当のほうが大事。
 しかし、曇りガラスの向こうの戦争とは無関係ではいられない。時々、戦争が顔をのぞかせる。そのとき、読者はグっと切なく悲しくなる。良い作品である。

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篠田節子   「家鳴り」(集英社文庫)

篠田節子   「家鳴り」(集英社文庫)
ホラー小説短編集。
セックスレスになった夫婦。妻がそれから異常になりジャンクフードを寝がけに貪るように食べる。その後一人半前の夫の作った料理を毎晩食べる。それで顔だけは可愛いまま、体が異常に大きくなりトイレはドアをはずさないと入ることができないし、最後は玄関も壊し作り替えないと出はいりができなくなるという本の表題作「家鳴り」もおもしろいが、何といっても篠田の想像力の素晴らしさが発揮され卓越している作品が最初の「幻の穀物危機」。
 東京都心で大地震が起きる。主人公はその少し前に脱サラをして、東京近郊の田舎にペンションを作り経営していた。自分たちが都心から離れていた幸運を喜ぶ。
 しかし、都心から鈴なりになって被災者が、食料を求めて、郊外へと繰り出してくる。それはまるでバッタの群れ。畑や田んぼ、家畜や犬までも食いつくし、それが終わると次の土地へ異動してゆく。群衆が、次々切れ目なく都会から押し寄せるのである。農民は武器を持って、食料や畑を守る。一方難民も食料略奪に蛮勇を奮う。
 都会から自然を求めてきたペンション経営の主人公家族。百姓ではないから、畑もなければ食料の作り方も知らない。一方都会からくる難民のように武器を持ち略奪もできない。しかも、難民ではないため、支援食糧ももらえない。夢を叶えた田舎暮らしのはかなさを読者は知る。

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水上勉  「働くことと生きること」(集英社文庫)

水上勉  「働くことと生きること」(集英社文庫)
今まで水上作品は107冊読んでいる。このエッセイを読んでいると、水上作品の一つ一つを思い出し嬉しくなる。
 水上のお父さんの棺桶作りにかける思いは改めて感心した。
送電事故を引き起こさないように雪深い中を懸命に点検する保線員の奮闘がこの作品で描かれる。水上出身の福井県は大飯原発をはじめ原発銀座である。それらで発電した電力は主に大阪を中心とした都会に送電される。何千本の鉄塔がある。その送電を守るためたくさん
保線員がいる。莫大の費用がかかっている。
 原発は世界最高安全基準で審査しているから安全が担保されるというのなら、何でそんな田舎につくり莫大な送電費用をかける無駄なことをしているのだろう。大阪や東京のど真ん中に原発を作れば、無駄な鉄塔も送電費用も極小ですむ。それがやれないで、原発安全などということは信じることはできないし、安全と主張している人にも信頼はおけない。
 火葬場で骨を焼いている人が登場する。死体を焼き場にいれるときは、金持ちと貧乏人には入口の飾りつけに差がある。しかし骨になり、骨や残った灰を取り出す口はひとつ。残った灰を火葬場の外にまく。そこにはコスモスが咲き誇っている。その一本、一本が亡くなった人の生まれ変わりにみえる。お墓が空虚なものに思える。

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雫井侑介   「栄光一途」(幻冬舎文庫)

雫井侑介   「栄光一途」(幻冬舎文庫)
雫井のデビュー作。
柔道界にはびこっている、ドーピング剤の入手経路やどうしてドーピング剤を使ってしまうのかを、ミステリータッチで描く。ドーピング剤がどのようにして選手、コーチに渡るのかがよくわかり面白かった。
 しかし、この作品では、違反でなくドーピング以上に効果のあるもの、エンドルフィンが最も重要で危険なものとして登場する。エンドルフィンはマラソンなどで、苦痛をこえた先に、走ることが快感に変貌させる、人間そのものの体内から発生するものである。
 このエンドルフィンを人間の統制以上に常に発生させ、より高く、より強くを目指す。それは、街で通りすがりに出会った人を理由もなく破壊することで、更に興奮度合を強くしてゆく。
 この作品ではもうひとつ、オリンピック選手選考柔道大会での、試合の描写が素晴らしかったこと。本当に目の前で試合が行われているようだった。

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三浦綾子   「丘の上の邂逅」(小学館文庫)

三浦綾子   「丘の上の邂逅」(小学館文庫)
吉村昭と三浦綾子には感心する。吉村は亡くなって9年、三浦は15年未だに新刊本がでている。二人ともメジャーな作家ではあったが、派手さはなく、静さが似合う作家であった。そして、何より文壇の群れからは距離をおいていた。吉村もそうなのだが、三浦は特に市井、普通の人々の中にいるひとだった。今の作家は、遅咲きでなければ、まずは、学生時代を描くことから始まる。学生のことを書きつくすと、そこで行き詰まり、急に作品がつまらなくなる。それは交際範囲が、作家かちょっとした芸能人、それに出版社の人間に限られてくるからである。三浦は普通の人々との交流を通じて、強く、人間の奥底に迫る作品を描いた。
 そこが未だに、多くの読者を掴み離さないで、こうして時に新刊本にも出会うことができる。この作品の三浦の言葉が重く響く。
 「私は人を1センチでも2センチでもいいから、動かす作品を書きたい。」

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篠田節子  「贋作師」(講談社文庫)

篠田節子  「贋作師」(講談社文庫)
これはなかなか凄い作品である。
権力、権勢欲、色欲に凝り固まった老人大画家がいる。娘よりも年下の女性をわが物にして結婚までする。この大作家が首つり自殺をしたとして亡くなる。彼の家から大量の未発表作品が見つかる。それを修復する成美がこの作品の主人公。
 成美が奇怪に思ったのは大量の絵。いくらなんでも年老いた作家がこんなに大量の絵を若い女性と結婚後に作成できるわけがない。それでよく絵をみると、これが彼女の元を去って、大画家のもとに去った恋人の描いた絵とわかる。つまり大画家は贋作者に絵を描かせて、
それを自分の作品として売り膨大な金を得ようとしていた。だから、大画家は自殺ではなくこれを相続して大儲けしようと企んでいた奴に殺されたことが最後のほうでわかる。
 主人公は、何としても大量の作品が、大画家の作品ではなく元恋人の作品であることを美術界に認めさせようと奮闘する。しかし、美術界も金欲の世界で、ぶつかる壁は厚い。
 最後の修復家と大画家を殺した犯人たちとの格闘の場面は迫真に迫ってすさまじい。
そこらのハードボイルド作家の作品を遥かに凌ぐ。
 色金欲。伏魔殿のような美術界。それにからめとられた人、人、人。そのなかで捨て去られていく能力ある若き芸術家。そこに色んな事件が絡まり、重層的な作品になっている。

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吉村昭   「蚤と爆弾」(文春文庫)

吉村昭   「蚤と爆弾」(文春文庫)
戦前から戦争中にかけ、満州ハルピン南方の原野で、曽根中将率いる部隊が、敵国捕虜を人体実験に使い、ペスト菌、チフス菌を使った細菌兵器開発をしていた。そして、中国を中心に、その兵器を使い、細菌を散布し、ペスト伝染病をあちこちで引き起こし蔓延させていた。
 しかし戦況悪化とともにソ連軍が満州国境を越えて、ハルピンに進軍してくる。そのため細菌開発所は、焼き尽くし、部隊にいた3000人は、個々ばらばらになり、日本に引き揚げてくる。細菌兵器開発とその使用は国際法違反であり、それが発覚すれば、戦争犯罪人となり死刑は免れえない。そこで3000人は、絶対秘密を守り、目立たずひっそりと暮らすことが求められた。万が一見つかった場合、細菌兵器開発の秘密を守るために、満州引き揚げ時、青酸カリが配られ、その青酸カリを飲んで自死することが命令されていた。
 東京へ進駐してきたアメリカ進駐軍及びソ連代表部は、細菌開発の全貌を把握するため、力を注いだが、情報をつかまえることができなかった。そこに、帝国銀行で青酸カリを使った、行員大量殺人事件が起きた。青酸カリは一般人は入手できない。それで、細菌開発を行った人間の中に犯人がいると考えられ、進駐軍は捜査をする。
 細菌兵器開発については多くの作家により作品にされている。しかし、他の戦争文学は残虐性、悲劇性を異常にデフォルメし、結果リアリティに欠け、読むと白けてしまうことが殆ど。吉村は客観的に淡々と開発と散布の過程を描く。そこに真実が浮かび上がり、読者には戦争の恐ろしさがひたひたと心に沈殿してゆく。

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真山仁   「コラプティオ」(文春文庫)

真山仁   「コラプティオ」(文春文庫)
なかなかの力作である。政治腐敗の本質にもきちんと迫っている。
ただ、動機が薄弱のところが残念である。宮藤総理の腐敗に走ってゆくとき、福島での言葉。
 「核の恐怖を知る日本人だから、安全な原発が建設できる。」
宮藤総理は、言葉の使い方が巧みで、更に演説がうまく、カリスマ性もあり、国民や演説での聴衆の心を掴むことに天才的にたけている。そして、震災、原発事故で失った日本人の自信を取り戻すための経済施策もあたり、高い支持率も維持している。
 しかし、いかな支持率が高くカリスマ性があるといっても、原発の輸出で更に日本を繁栄させるという物語は、すこし無理すぎ。それで、国民がその通りと賛成するような状況ではとても無い。だから、演説や総理記者会見の場での総理の言葉を真山がどれほど聴衆が感動しているかを懸命に書いてみても、そんなことはありえないと読者は思ってしまう。
 それでも、政治に対する見方について目から鱗の場面が幾つかあり、面白く読めた作品である。

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誉田哲也  「あなたの本」(中公文庫)

誉田哲也  「あなたの本」(中公文庫)
小学生のとき、父の書斎の書棚に変わった本を見つける。「あなたの本」という本である。
「4月22日生まれる。健康な男の子」「4歳のとき、隣の家の柿の木から転落してけがをする。」「6歳で友達を相撲で投げ飛ばしけがをさせる。」
 今まで主人公が歩んできた道。怖かったけど今からどうなるだろうと読んでみる。高校は志望校を落ち、不良高校に行くがそこで頑張って浪人はするが私立大学に入り、卒業すると高校志望校に教師としての職を得る。いろいろあるけど、いい高校に教師の職を得てまあ安心だ。そこからはやっぱし怖くて読めない。
 その後は、高校の教師から、塾経営に転職。これが大成功して、金銭的にも名誉にても十分すぎるくらいの成功を得た。そこで、思い残すこともないと想い、「あなたの本」を手にとった。
 ある年の4月17日、唯一自分史で悔恨が残ることは致命的な病気で、最愛の妻を失ったこと。そこのところを「あなたの本」で確認してみると、何と妻恭子53歳が亡くなった11月17日が飛んでいて何も書かれていない。
 そして次に書かれていたのが、7年後の11月13日。妻恭子の看護方針を決める。11月20日看護方針を医師に伝える。
 どうなっているのだ妻の命日は。
最後に12月20日 妻の病気にたいしての画期的治療方法が発見され京都大学より発表される。

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桜庭一樹  「赤朽葉家の伝説」(創元推理文庫)

桜庭一樹  「赤朽葉家の伝説」(創元推理文庫)
「私の男」もそうなのだが、この作品も1953年から2000年そしてその後までを扱っているにも関わらず、全く時が動かない。大河小説を目指して書いているのだが、小さな河にもなっていない。
 文章にもっと陰影をつけ、重みを作らないと大河にならない。難しいかもしれないが、昭和の時代が生き生きとしていない。多分、新聞や幾つかの資料をもとに創ったのだろうが、そこに生きた素材がなく、そのまま記事や資料を読まされている雰囲気になる。1953年からなら、まだ生きている人もいる。そういう人からどんな生活だったのか取材して描いたほうがもう少しは昭和を描けた気がする。
 正直に「空っぽ」な小説に思えた。この作品が推理作家協会賞大賞作品。何か賞は出版社の強さとか、政治的に与えられているのではないのかという想いを強くした。

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林望   「東京坊ちゃん」(小学館文庫)

林望   「東京坊ちゃん」(小学館文庫)
林は私より2歳年上、昭和24年生まれ。この作品は林が生まれて小学校卒業までを描いている。だから、きっと私と同じような環境や生活を味わってきたのだろうと思いながら作品を読んだ。
 私は信州の田舎、林は東京の下町住まい。そんな違いもあり、あまりなつかしいと思い出すところはなかった。それでも、釘刺しの遊びは懐かしく思った。釘を地面に向って交互に刺す。そして前に刺したところと新しく刺したところを線で結ぶ。その線で結ぶことができなくなって外へでられなくなると負け。それから、釘を線路に並べ、汽車が通ったあと、ペチャンコになった釘を手裏剣だといって投げ合ったのも懐かしい。
 プラモデルをつくるのに部品を貼り付ける。これに使ったのがセメダイン。手にいっぱいくっついて渇き後ではがすのに四苦八苦したことも思い出す。靴も短靴といってタイヤチューブのような靴を履いていたことを思い出す。林のこの作品では貧乏人の子供が短靴をはいていたと書かれてありちょっとショックを受けた。
 何しろ昭和30年代に、麻布中学校受験のために塾に通うくらいなのだから、私のような貧乏人とは大きな差があったわけだ。

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桜庭一樹   「少女には向かない職業」(創元推理文庫)

桜庭一樹   「少女には向かない職業」(創元推理文庫)
古代ギリシャの都市国家であったスパルタ。若者に対し特に戒律、道徳教育に厳しかった。
その国のある若者が狐の子を盗んでしまった。ばれれば死刑である。それで、その若者は服の中に狐を隠して、夜道を急ぐ。怖がった狐の子が、腹に噛み付く。それでも若者は我慢して歩く。そうすると、狐は更に噛み付く。
 そして、若者は最後には血まみれになって死んでしまう。
人間、我慢はできる。秘密も守ることもできる。だけど、我慢と秘密が重なるといずれは耐えきれず死んでしまう。
 このスパルタでの話が基底になって物語ができあがっている。
大西葵が殺人を犯すまでの過程をホラーたっちで描いている。我慢と秘密は同時にはしてはならないことがよくわかる作品である。

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林望   「落第のススメ」(文春文庫) 

林望   「落第のススメ」(文春文庫) 
あの夏目漱石も旧制中学校を勉強ができず、3か所も変わっている。そしてやっと入学した大学予備門で落第している。それも、得意であるはずの英語が苦手で。
 近代詩を確立した萩原朔太郎も何回も落第している。
永井荷風も、佐藤春夫も、そして何とあの志賀直哉も落第を経験している。
 とにかく日本文学界を明治、大正、昭和とリードしてきた文豪は、勉学に苦しむ落第生であったことをうれしそうに林は指摘する。
 それは林も、慶応大学2年進級に失敗して落第しているからである。落第など人生の価値においてどうってことはない、むしろその経験こそ、人間を深め、後の偉大人を生む要因となっていると自画自賛をする。
 しかし、先人偉人たちの落第と、林の落第には彼我の差があり、とても同じ落第という言葉では論じられない。旧制中学、高校、大学は勉学成績の評点が厳格で、進級が難しく、落第は当たり前のようにあった。大学は門戸は開いていたが、進学は難しかった。高校、大学では勉強また勉強でなければ、落第は当然のようにあった。
 林の時代は、大学にはいりさえすれば、それほど勉学にいそしまなくても、当たり前のように進級できた時代である。余程、遊びまくり、勉強をしなかったわけだ。林と同列に扱われた先人たちの苦笑が浮かんでくる。

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真山仁   「マグマ」(朝日文庫)

真山仁   「マグマ」(朝日文庫)
東日本大震災により原発が全部止り、結果発電源エネルギーにたいする状況は混沌としてきた。今日(4月14日)の新聞にオリックスの社長がインタビューに応じて、オリックスは今まで再生可能エネルギーとして太陽光発電に注力してきたが、今後は気候に左右されるエネルギーから安定エネルギー源として地熱発電開発にエネルギー事業の舵をきると答えている。
 電力業界は巨大な業界であり、かつ公共性が最も高い業界である。新しいエネルギーの開発だけでなく、原発の再稼働、廃炉、安全確保への投資などこの業界は巨大な投資が常に行われ、個別所会社だけでは投資資金が賄えないため、膨大な税金が補助金として投入される。この補助金、必ず成功報酬として、政治家に幾らかが還流される。利権、税金の掴み取りが行われているのである。
 原発再稼働があれだけの震災があってもなくならないのは、この利権が消えるとお金がはいらなくなり、それを阻止しようとする勢力が電力会社と結託して原発廃止に反対しているからだ。
 一方、再生可能エネルギー推進派も胡散臭い。彼らも政治家と結託して税金をつかみ取ろうとしている。正直オリックスという企業は、政治家にぶらさがって大きくなってきた企業である。
 このタイミングで地熱発電などと言い出すのはかなり怪しい。またそれをとりあげた新聞社もかなり怪しい。
 そんなことがわかるのがこの小説である。それにしても電力エネルギーの課題が政治家のおもちゃとなっている状況は嘆かわしい。

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林望   「りんぼう先生おとぎ噺」(集英社文庫)

林望   「りんぼう先生おとぎ噺」(集英社文庫)
役所、大会社で不祥事が発生する。そうすると幹部がでてきて、記者会見でをして判で押したように同じことをしゃべる。
 「この度の不祥事につき、国民の皆様に多大なご迷惑、ご心配をおかけしましことは、まことに遺憾で深くお詫び申し上げます。今後二度とかかるような不祥事が起こることのないよう、原因の究明と対策を徹底してまいりたいと存じます。」
 必ずどこかの記者が問う。
 「トップが責任をとって辞任するというお考えはおありでしょうか。」
そうすると、こう答える。
 「当面は辞任する考えはありません。むしろ、今しばらく現職にとどまりまして、原因の究明と対策を講じることに全力を注ぐことが、私の責任のとりかたであろうと考えております。」
 きっと、偉い人にはその職についたとき、この問答集が渡されているのだろう。

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