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2015年02月 | ARCHIVE-SELECT | 2015年04月

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あさのあつこ  「晩夏のプレイボール」(角川文庫)

あさのあつこ  「晩夏のプレイボール」(角川文庫)
甲子園がキーとなった、高校野球を描く短編集。
通勤電車でたまに、高校野球のユニフォームを着た選手たちと乗り合わせた。
実にさわやかで、すがすがしい姿だった。同じ高校生たちに、夏の甲子園が終わったくらいにも電車に乗り合わせた。あのすがすがしく見えた高校生が、座席に大股をひろげふんぞりかえり大声をあげ騒いでいた。柄が大きいから、乗客は少し離れ遠目でみつめていた。
 野球、野球で日夜励み、県大会や地区予選で敗退し、夏が終わる。もちろん甲子園に駒をすすめることができた高校生もいる。でも必ず夏は終わる。一部に大学で、社会人でプロにゆく選手もいる。それでも大半は夏が終われば、遊びでは残っても真剣な野球からは離れる。
 夏が終わるまでの高校野球選手たちには、純粋で熱い物語がある。だから、作家には描き、書きやすい。しかし、どこか薄っぺらで、幅が狭い。
 それから、最近とみに思うのだが、離婚といじめを多用した安直な作品がこの作品も含め多すぎる。離婚やいじめと関わらない人々にもたくさんの物語はある。

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松本清張 「砂漠の塩」(新潮文庫)

松本清張 「砂漠の塩」(新潮文庫)
清張にはめずらしく正統派の恋愛小説。
ヨーロッパツアーの一団にはいった泰子は到着したパリで、ツアーから離れカイロへ向かう。一方会社の出張で香港にきていた真吉は、香港から会社に退職届を郵送。そのままカイロへ向かい泰子と会う。2人は、それぞれに家庭がある。その家庭をほっぽりだしての
カイロへの旅。このまま日本には帰らないし、帰れない。それで心中する場所を求めて、
ベイルート、ダマスカス、それからバスでバクダッドへと向かう。その2人を追って、泰子の夫保雄が日本をでて、同じルートをたどる。
 それからいろんな出来事がある。泰子と真吉は結局小さな村から数キロ離れた砂漠のなかで睡眠薬を飲み心中をはかる。一方彼らを追ってきた保雄は、バクダッドへ向かう途中交通事故にあい、重傷をおう。
 生も死も五分五分。すべては神のおぼし召し。諦念につらぬかれた砂漠に暮らす人々と
砂漠での日本人の心中が実にリアルに描き出される。そして、この小説の見事なところは、心中の最後の顛末を、砂漠の日本調査隊隊員の報告記で語られるところ。
 それまでリアルだった砂漠での恋愛が、すーっと遠のいた遠景にて終了する。それが砂漠からみれば実に人間のたわごとなど芥子粒にもならないはかなさを際立たせている。

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小川糸 「海へ、山へ、森へ、町へ」(幻冬舎文庫)

小川糸 「海へ、山へ、森へ、町へ」(幻冬舎文庫)
食をベースにした旅行記エッセイ。
テレビでも見たのだけど、天然氷をつくるところ。これが大変。たんぼみたいなプールに水をためる。氷は5Mにならないと人間を支えることができない。で、5Mになると氷の表面を削る。表面は均質でなく質が悪いからだと。それから、表面にとんでくる落ち葉や枯れ枝を毎日のように払う。雪は氷の出来の天敵。だから雪が降るたびに雪かきをする。
 こうしてひと冬に3回氷ができる。これをマイナス20度の冷凍室で夏まで保存。
ここまでして何を作るのか。絶品のかき氷だそうだ。目がくらんでぶったおれそうになった。この本でも紹介されている。
 木村秋則さんの「奇跡のリンゴ」が一時有名になった。そんなことで木村さんの農園には毎年6000人もの人が見学に訪れているそうだ。講演や指導なんかにひっぱりだこ。それで年8回行う食酢の散布が4回しかできなくリンゴが普通のリンゴになってしまった。
 重要なことが忘れ去られ有頂天になっている木村さんがみえる。
こんなふうには書いてないけど、このエッセイを読むとお馬鹿な舞台で踊らされている百姓の姿がみえてくる。

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青木玉   「記憶の中の幸田一族」(講談社文庫)

青木玉   「記憶の中の幸田一族」(講談社文庫)
青木玉はあざとい。そのあざとさが彼女の限界を表している。でも仕方ない。母は幸田文で祖父は幸田露伴。この2人があまりにも偉大すぎるから。
 青木玉は今というレンズを通して、露伴と文を語る。露伴は良く言えば厳格。だけど威張り屋で理屈っぽくわがまま。娘の文は、忍従一辺倒だがそこに意地がある。文と露伴は意地と威張りの突っ張りあいとして特殊な家庭のように玉は幸田家を描き出す。
 本当に特殊だったのだろうか。隣の家は違った風景だったのだろうか。
  そんなことは無いと思う。
私の両親でも、親父の天下で、母は常に父に恐怖を抱きながら、そそうをしないように細心の注意を払っていた。ましてじいさん、ばあさんの関係は更にすさまじかった。女性を人間として扱っていなかった。露伴は私の祖父母の更に一世代前。作者の玉は昭和の初めの生まれである。
 幸田文は、意地とかプライドを捨ててではなく、当時の習慣として、当然のように父の厳格さに従っただけのように思う。幸田家は当時では普通の家庭だったと思う。

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綿矢りさ  「憤死」(河出文庫)

綿矢りさ  「憤死」(河出文庫)
自殺のイメージ。借金とか人間関係で追いつめられ、行き場をうしなう。どうにもこうにもできなくなって、自らをこの世から消してしまう。こんなイメージが一般的だと思う。
 でも、結構綿矢が提示した憤死なる自殺も多いのではと、この作品を読むと思ってしまう。
5年間つきあった恋人がいた。彼氏が言わないから、自らがプロポーズもした。やっとのこと彼は今の妻とも別れた。これでと意気込んだとき、彼から「君とは結婚しない」と言われた。結局あいつは、私と結婚する気など初めからなかったのだ。
 夜、家のベッドの中で、あいつのことを思うと、こみあげてくる怒りと悔しさで自分が制御できなくなった。こうなりゃあベランダから飛び降りでもしないと気持ちがおさまらない。ベランダは3階にある。そこに駆け上がって、闇でなにもみえない庭にむかって飛び降りる。死ぬのではないかとか、恐怖などは微塵も感じない。
 遺書のない自殺は、こんなのが多いのではないか。

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相場英雄   「双子の悪魔」(幻冬舎文庫)

相場英雄   「双子の悪魔」(幻冬舎文庫)
時々、ニュースで数十万件の個人情報が流出していたという事件に遭遇する。
一体その情報を盗み何に具体的に利用するのかよくわからない。たくさんの顧客情報を持って、売り込みに使いたい会社があって、その会社がその情報を買うのかと思っていた。
 その昔は、競馬場や競輪場の近くのATMで、お金を引き出し捨てた取引明細書をかきあつめる人がいたそうだ。からくりはよくわからないが明細書から口座詳細を掴み、その口座から自分の口座に送金させる詐欺が流行ったそうだ。そういえば今は明細書はシュレッダーで裁断するか、明細書が盗めないようなゴミ箱がATMには設置されている。
 しかし、50万件の個人情報が流出となると事態は違ってくる。今はクジットカードでの購入代金決済が普及している。ネットで購入の場合はカード決済が普通である。
 通常カード決済明細書を、購入金額をメモしておいて確認するということは殆どしない。購入金額と決済金額の差が大きいときだけ、カード会社に連絡する。例えば200円くらいの小さな金額を購入金額に上乗せして特定口座に振り込ませる。そんな小さい金額、購入者は気が付かなくても、特定口座には毎月1億円が還流される。とんでもない詐欺である。流出した個人情報は、こんな風に使われているらしい。

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有川浩   「キケン」(新潮文庫)

有川浩   「キケン」(新潮文庫)
会社でも学生でも、殆どの人は、自分が輝いていた時を持っている。「あれを俺はやった。あんなことまでできた。」と。中にはそのことを会社や学生時代が終わっても引きずっている人がいて。そんな人は、卒業、退職しても、学校や会社の様子が気になり、時々会社まででかける。そして、後輩たちを引きずり回し、自分の栄光を話、現在の状況を慨嘆したりする。
 そんな人もいれば、輝いていた時代は思い出として割り切り、学生、会社とも同期OBくらいの交わりに止める人もいる。それでも、輝いていたことは繰り返し脳裏に浮かぶ。自慢できる人がいないから、うるさくおもわれることはわかるのだが、身近の妻に話す。
 妻が調子にのって、それじゃあ会社、学校に行ってみましょう。じゃあ行ってみるかとは思うのだが、どことなく切なさが伴う。自分がやった仕事や頑張りがもう消えてしまっていたらと思うからである。期待と不安が交錯する。
この物語は、学生時代の輝いた時代をおもしろおかしく再現する。その結果、妻と一緒にあの時代が残っているか確認にでかける。
 そこでの、最後のクライマックスがどぎもをぬかれるくらい秀逸である。
現代の旬な作家、有川の発想が私のような古い読み手をノックアウトする。漫画と文学が見事ににコラボレーションしている。

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明野照葉   「冷ややかな肌」(中公文庫)

明野照葉   「冷ややかな肌」(中公文庫)
人間は、悩む、考える。多くは相対的に他人との比較で考え悩む。考え、悩むためには手段として言葉がある。言葉は他人との会話のために用いられる。虚栄心、劣等感、猜疑心が常に考え、悩む原点にある。
 このことが精神的病気を生み出す。夜も眠られないという現象を引き起こす。
自分をより自由に解放するためには、個性や能力(これが結構曖昧なところがあるが)を発揮などと訳知りのように言うのでなく、考えること、人と交わることを極力無くすこととこの物語は言う。自らを消すのである。
 今はネット時代。ネットは国境を超え、地球規模で人が結びつきあう。国、国境は、人間と同じように他国と比較して、虚栄、敵意、猜疑、自分だけの益のためにだけ存在する。愛国心を育てるなどということは、素直には受け入れることはできない。
 こんな時代は、自分の個性を捨て、まっさらな状態で結びつきあう。そんなネットワークが最も強靭なネットワークであると作品は主張する。
 なかなか深い示唆に富んだ物語である。

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堂場瞬一  「長き雨の烙印」(中公文庫)

堂場瞬一  「長き雨の烙印」(中公文庫)
脇坂なる刑事。20年前に起きた少女暴行殺害事件でいちはやく容疑者を割出し逮捕。住民の不安を早々の犯人逮捕で取り除き、警察内では有能刑事としてとりたてられ、出世階段を駆け上がる。
 ところが、12年の刑を終えて出所してきた犯人の庄司が、8年の沈黙を破り、弁護士をたて自分は犯人では無いと主張。再審請求の準備を始める。
 振り返れば、確実な証拠は何もない。自白を強要させただけ。実は唯一の目撃証言も、友達に言ってでっちあげていたことを脇坂は思い出す。再審請求がとおり、裁判がやりなおしとなると、折角得た名声地位は消滅し、奈落の底に墜落してしまう。
 そこで脇坂はとんでもないことをする。当時の犯行と同じ場所で脇坂自身が少女暴行事件を起こし、それを自らは進んで捜査本部の責任者となり、庄司を再び犯人にしたてようとする。
 もし庄司を逮捕できれば、世論は再審請求など許さない雰囲気になり、弁護士も請求をとりさげるだろうと。
 作者の人智離れした発想である。そして、凄いのはその真相530ページにわたる作品の最後数ページで明かされる。読者は圧倒的衝撃を受ける。最後が圧巻の小説である。

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青井夏海  「シルバー村の恋」(光文社文庫)

青井夏海  「シルバー村の恋」(光文社文庫)
「オレオレ詐欺」「振り込め詐欺」。だいたい騙されるのはそこそこに年齢がいったか、本物の御婆さんなど高齢の女性が殆ど。しかし、実態はどうなのだろう。事件として表にでるものは確かに女性の被害が殆どだが、金額の大きさから言えば男が被害にあっている場合のほうが圧倒的だと思う。
 非常にまずいのは、被害にあっている男性が、被害にあっていると気付かない、或は男の変なプライドや面子で、被害届を警察にださないことだろう。
 男というのは、年をとればとるほど、子供返りをし、単細胞化してゆく。ここに登場するのが女詐欺師。頼りなさそうにして年寄りの男に近付いてくる。そして窮状を訴え、助けを求める。男は多少の恋心が芽生え加えて正義感たっぷりにここで女性を助けなければ男の沽券がすたるなど意気に感じ、お金を渡したり、振込をしてしまう。
 こういうハイな状態だと全く男は騙されたとは思わない。可愛そうな女性を助けてやったと満足感にひたるのである。どうしようもないのが男だということをこの作品が教えてくれる。

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堂場瞬一   「敗者の嘘」(文春文庫)

堂場瞬一   「敗者の嘘」(文春文庫)
神田で、強盗殺人放火事件が発生。犯人としてスポーツ店の社長の渋谷が浮かぶ。
渋谷は厳しい取り調べにあうが、自分はやっていないと主張。捜査本部は、渋谷が犯人に違いないとは思うが、証拠が無い。そこで、証拠をデッチあげ、渋谷を犯人に仕立てることを計画する。デッチあげられた証拠に追いつめられた渋谷は、その晩警察が斡旋したホテルで警察が警戒するなか自殺をする。
 渋谷は追いつめられ自殺をする前に、篠崎という女性弁護士に窮状を訴える。この弁護士が凄い。渋谷を救えなかった悔しさと、渋谷がどのようにして犯人に仕立てられていったかを掴み、その後警察のひどさを告発するために、自分が殺人放火をしたと警察に自首する。
 このことをきっかけに警察捜査の酷さが明らかにされてゆくのだが、それにしても堂場はとんでもない弁護士を創造したものだとただただ唖然とする。

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青井夏海  「陽だまりの迷宮」(ハルキ文庫)

青井夏海  「陽だまりの迷宮」(ハルキ文庫)
11人兄妹の家にヨモギさんという学生が下宿している。普段、兄妹たちとは距離をとっているのだが、事件がおきるとピタっと推理をして事件の真相をあてる。
 その兄妹の家の前で、自転車同士が衝突する。小学生と中学生の自転車同士。そこで、中学生の持っていた鉄道模型を小学生が盗んだと中学生の兄が主張する。それを、11人兄妹の双子の片割れの子が見ていたはずだと兄が言う。ところが、双子の姉妹はそんなものは見ていないと主張する。ここで、ヨモギさんが登場する。
 「姉妹はうそをついていない。姉妹の友だちがその時来ていて見たのだ。」
でも双子と顔なんか違うじゃない。
 「その子は、姉妹と同じバスケットボールクラブに入っていたのだ。クラブでは、皆同じ髪型をすることになっている。だから、瞬間、双子の片割れと見間違えてしまったのだ。」
「しかも、その子は、衝突した中学生に恋心を抱いていた。だからちょっと自転車の子をみたら恥ずかしくてすぐ顔を引っ込めたから、自転車の子はよく顔が見えなかったのだ。」
 ヨモギは凄い探偵だ。何の脈絡やヒントもなく、ここまでピタっとわかるとは。完全に青井のやりすぎ。

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堂場瞬一  「天国の罠」(角川文庫)

堂場瞬一  「天国の罠」(角川文庫)
最近ニュースやワイドショーを賑わしているのが、政治家が補助金企業より政治資金をもらっているという政治資金規正法違反の問題。これが、庶民にとっては大きい金額かもしれないが、違反金額がせいぜい多くて数百万円、殆どが数十万円。政治の世界で不正に動くお金は、桁が2桁、3桁違っていることを皆が知っているから、こんなことに目くじらをたてて大騒ぎをしていることに皆完全にしらけている。
 不謹慎な言い方になるが、東北大震災が起きてあまたの政治家がほくそえんでいると思う。震災復興の名のもとに膨大な税金が使われる。この何パーセントが、政治家の懐に還流される。表にださない仕組みができあがっている。だから政治家はやめられないのである。
 昔は、政治家の権力闘争が激しく、腐敗が相手の追い落としに使われることがあり、時々腐敗案件が表にでることがあった。その腐敗を嗅ぎ付け、国会で質問することが存在の議員もいた。
 この議員は権力者にくっついて、案件を暴露するぞと脅し、お金をせしめることに懸命だった。お金が入れば国会の質問をしないが、入らないとなると執拗に入るまで質問をした。
 でもその金額は少ない。何だか今の国会議員の馬鹿騒ぎに似ている。
 この物語はそんな寄生虫のようなマッチポンプ議員を扱っている。

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阿佐田哲也  「黄金の腕」(角川文庫)

阿佐田哲也  「黄金の腕」(角川文庫)
阿佐田のペンネームで書く、直木賞作家色川武大の麻雀小説短編集。
パチンコ依存症なる人がいるように、昔は麻雀依存症の人たちがたくさんいた。ある短編の主人公は新潟から柏崎まで金沢行きの汽車で向かう。そこで席に居合わせた富山に向かう3人と、席で麻雀を始める。約束は、降車駅についたら、その瞬間に麻雀はやめ、掛け金の精算をすること。主人公は、柏崎までだったら、せいぜい半チャン2回くらいかと思って麻雀をはじめる。しかし、問屋はそうは簡単に卸さない。
 柏崎に着くと、止めるに止まず、そのまま乗り越して麻雀を続ける。富山についても、止めることはできない。結局そのまま金沢までやり続ける。そして、10分後の金沢発新潟行きに乗り換え、彼らは続きを始めるのである。一体この連中はいつどこで、汽車をおり、目的のところに向かうのであろう。

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堂場瞬一  「雪虫」(中公文庫)

堂場瞬一  「雪虫」(中公文庫)
新潟県警に勤務する刑事鳴沢了の家は、祖父、父ともに県警の元または現刑事、3代続く刑事一家である。しかも、祖父、父はノンキャリアとしては、幹部まで務めていた、務めている優秀警部である。
 この作品は、戦争直後の混乱時、ある宗教団体で起こった殺人事件、教祖が出入りの業者に襲われ、それを避けるために誤って教祖が業者を殺してしまう事件で、教祖を守るために、近くにいたある信者を身代わり殺人者にしたて警察に差し出した事件である。そのことは、物語を半分も読めば、私にもわかるほどだから、中味は平凡。
 でも、その平凡さを埋めて、なお読者を離さない不思議な魅力がある作品になっている。
それは、主人公鳴沢の在り様が、祖父、父と異なり、異常に個性的なところからでている。
鳴沢は、何があっても、どんな手段を講じても、冷徹に犯人をつきとめることに異常な情熱を燃やす。その非人間ぶりが際立つ。
 父、祖父は刑事以前に人間なのだが、鳴沢は人間以前に刑事なのである。

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松本清張 「蒼い描点」(新潮文庫)

松本清張 「蒼い描点」(新潮文庫)
清張は42歳から文筆活動をはじめたのだが、無尽蔵というか膨大な作品がある。どうしてそんなにあるかと調べたところやたら新聞、週刊誌への連載が多い。
この作品も週刊明星創刊号を飾り、一年間連載している。当時、同時に連載している作品が他に「ゼロの焦点」「かげろう絵図」「黒い樹海」「黒い画集」何と5作も同時執筆している。頭がおかしくならないのか。
 連載物は長さから決まる。この本も660ページもある。だからどうしても間延び、中身が薄くなる印象がする。
 でも発想は面白い。村谷という父に一流作家を持つ作家がいる。この作家一作目は一流作家の娘ということと、作品の内容もおもしろかったので売れた。ところが2作目が書けない、アイデアもない。そこに極悪フリーライター田倉がつけこむ。若くして亡くなった作家志望の青年のたまった原稿を売り込む。その原稿を書きうつして、村谷は自らの作品として世に発表する。いかにもありそうだが、非凡な着想だ。それにしても田倉の極悪ぶりは強烈。

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中島京子   「イトウの恋」(講談社文庫)

中島京子   「イトウの恋」(講談社文庫)
この作品は、明治の初め東北北海道を旅した英国婦人のイザベラ バードと彼女に随行していた通訳の伊藤亀吉が実はほのかな恋を芽生えさせていたという中島の空想から生まれた作品である。
 この作品を読むと、人生が幸せであったと感じる人はどんな人だろうかということを考えさせられる。それは、出世して社長になったり、億万長者になったり、総理大臣になったりする人では無い。
青春時代でもよいし、齢を重ねた時代でもよいが、誰にも味わうことのない、自分だけの恋をしたことがある人だろうと思う。
 年老いて、陽だまりのなか、籐椅子に深く腰掛け、遠く過ぎ去った恋に燃えた日を思い返し、あのときの相手の人は今どうしているのだろうと思いを馳せる、それが幸せということだろう。明治という時代の香りより、カズオ・イシグロの作品を彷彿とさせイギリスの香りが匂い立つ作品である。

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浅田次郎 「終わらざる夏」(集英社文庫)

浅田次郎 「終わらざる夏」(上)(集英社文庫)
浅田次郎 「終わらざる夏」(中)(集英社文庫)
浅田次郎 「終わらざる夏」(下)(集英社文庫)
日本版「戦争と平和」と思わせる大作。この作品は戦争を観念で捕えず、リアルさを持ってよく描けていると思う。浅田は自衛隊の経験もあるから、武器や軍用車の操作についても詳しく、物理的事柄も肉にしみついているように描く。ここはというところの文章表現は全く感心するほど圧巻である。
 疎開している小学生のジョーが教育勅語の反面として人間勅語として宮沢賢治の「雨ニモマケズ」を朗詠するところ。最後のサーシャの戦争の虚しさへの慨歎。涙がこみあげそうになる読者も多いだろう。
 こんな感動作品を批判するのは国賊かもしれない。でも、私としてはあまり好きになれない。
反戦、平和が露骨すぎる。「戦争は嫌いだ」「この戦争は負ける。」など、一般人が日常会話であたりまえのように喋る。
鬼熊軍曹などは上級士官にたいし戦争への怒りをぶちまける。何だかこれでは、戦争さなか戦争反対一色に日本が彩られていたような錯覚を起こす。しかし、戦争当時は、国民の大多数は、玉砕しても天皇を守る、戦争を最後まで戦い通すことが使命と信じていた。信じていなくても、信じたような言動行動をとらねば、隣組にはスパイがいた。特高、憲兵が手ぐすねをひいて待っていた。そう、今の北朝鮮と同じ。こういう国はまわりからみればいつ崩壊するかと思うのだがなかなか強固だ。
 そういう岩盤のような強固な思いに対峙して非国民としての反戦や平和を描いて欲しかった。
原爆の日もそうだが、必ず子供が登場して戦争の悲惨さを訴え、平和への誓いを宣言する。あざといと思う、すぐ、子供の未来のためになんて。ここで宣言した子供が大人になってどんな反戦平和の行動をしているかみてみたい。
 この作品も、悲劇、反戦の象徴として、ジョーと静代という2人の子供を登場させている。そのわざとらしさが鼻につく。

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堂場瞬一  「破弾」(中公文庫)

堂場瞬一  「破弾」(中公文庫)
ホームレスの人たちがいまだになくならない。とても、不思議である。憲法で日本国民全員、健康で生活できる権利が保証されている。そのために生活保護制度がある。住居も医療費も保証されかつ生活費を国から受けることができる。そんな日本、何でわざわざ公園や地下街に住みつかねばならないのか。
 この作品を読むと、過去から現在の自分をすべて消し去りたい人がこの世の中にはいることを教えてくれる。
 暴力団金融に手をだして、借金まるけになり、常に暴力団に追いかけられているような人。
仇討恐怖ということもある。殺人を犯し服役、出所したはいいものの、その時から殺した人の関係者に追われ続けている人。また、現在何か罪を犯して逃げている人。
 そして、学生運動がやや下火になった頃、内ゲバや、破壊活動が盛んになりその渦中にいた人。日本の警察の公安というのは、暇なのか、こういう人を何十年でもつけまわり観察する。この作品に描かれるように、医師とか弁護士などのように手に職をもてればいいが、何も専門技術が無いと、企業は敬遠してこんな人は採用しない。公安がつけねらうからである。

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職場は解雇され、転々と流転をする。だから最後には自分の存在を消したくなる。

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アンソロジー  「今宵もウィスキー」(新潮文庫)

アンソロジー  「今宵もウィスキー」(新潮文庫)
私の住んでいるところは地方の小さい市である。列車で20分ほど先に割と大きな都市があって、私の小さな市はその都市の衛星都市となっている。
 小さな街にあり長く続いている酒場は、少し煤けて、入り口の扉がギーコと鳴き声をだす。
酒場には仲間と連れだってくる客はいない。皆ひとりでやってきて、ちびちび酒をやりながら、身辺雑話を話し出す。それを聞くだけの人もいる。面白いのは、それぞれの客の座る場所がいつの間にか間に決まってくる。会社仲間や会社をいつまでも引きずっている人がいなくて、会社自慢や上司の悪口をいう話が全く聞こえてこないことが実によい。
 こんな酒場が失敗するときは、緩やかな集まりであった客を囲い込もうとたくらむときだ。店の名前をつけたゴルフコンペをする。すると、コンペに参加した客と、普通の客の店主の扱いが異なってくる。店主の会話はいつもその仲間たちだけになる。そうなると差別空間がひろがる。すると、普通の客が来なくなる。コンペ仲間も、根は穏やかな雰囲気が好きな人ばかり。だからコンペをやった仲間も一人、二人と店を去ることになる。

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堂場瞬一  「断絶」(中公文庫)

堂場瞬一  「断絶」(中公文庫)
大塚家具もジャパネット高田も、ナッツリターンも皆、社長は子供が一番で、30歳前から会社の重役につけ、会社で威張って跋扈させる。
 中には素晴らしい子供もいるだろうが、だいたいは、すべての社員は自らの奴隷と認識、どんな振る舞いをしようが、自分は崇められるべきだし、尊敬されてしかるべきと思い込んでいる。
 政治家の家族や子供も、どんな悪行をしても、親父がもみ消してくれ、事件にはならない。だいたい警察というのは実に権力に弱いか、もみ消してあげたことを逆手にとって、警察官僚は自らの生活に特段の便宜をはかってもらうよう権力者を揺さぶる。
 そして一般の人たちも政治家や警察はそんなものだと認識している。
それを堂場が大長編で描いている。平凡だけど、堂場の作品は読みやすい。500ページを2時間半あれば読み切ってしまう。
 最後が執拗で、ちょっぴり青くさかった。もう少し、ハードボイルド風にからっとしめてほしかった。

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道尾秀介  「ノエル」(新潮文庫)

道尾秀介  「ノエル」(新潮文庫)
この小説は3篇の小説と最後のまとめのエピローグとで作られている。
3篇の小説は、普通の物語に童話がコラボレーションしている。特に2編目に挿入されている「空飛ぶ宝物」は秀逸であり、童話として出版されてもよい作品である。
 小説の主人公莉子は、足が曲がっていて歩くのが少し困難。それで皆にからかわれいつも独り。海外に旅行するクラスメイトがいて、自分も行きたいが一生無理だろうと思っている。その莉子が童話では真子という主人公に乗り移っている。真子は蟻の穴に入り込む。その一番奥で王女が病で伏せっている。王女は翅を一枚なくし、空を飛べないがどうしても飛びたい。そこで、蟻たちが智慧を絞り、王女を昔のように空を自由に舞ってもらうことを計画し、そのためにある道具と一緒に、真子も連れ、地上に王女を運んでいく。
 その道具は莉子の母が夫婦喧嘩で醤油壜を投げつけ割ってしまった鏡のかけらだった。
蟻たちはまず鏡を地面に置き、そこにうつぶせに王女を置く。そして翅のないところにエコンジュの葉を添える。鏡には青空と流れる雲が映る。王女は自分が空を舞っていると感じる。
 真子はそして童話を読んだ莉子は思う。夢や希望は、あきらめないで気持ちや考えを変えれば実現できるのだと。そして、それができるのは本を大好きになり、いっぱい本を読めばできることだと知る。

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松本清張 「高校殺人事件」(光文社文庫)

松本清張 「高校殺人事件」(光文社文庫)
清張が書いためずらしい学生向け青春推理小説。面白いのは文章までがすこしつたなくして学生が書いているようにしているところ。こんな文章、学生は書かないよと思うが、待て、昭和30年代の学生は純粋、稚拙で透き通る文章を書いていたのかもしれない。
 舞台は武蔵野。幽玄でうっそうとした林があり、一歩踏み込んだら迷いもとのところにでるのが難しい。そんなところにある寺が舞台。この幽玄な雰囲気は独歩の「武蔵野」を
重ね合わせている。
 この小説に登場する詩作にふけるノッポという学生が印象に残る。清張の自叙伝「半生の記」、清張がTOTOで働いていた時、屈折した自称10歳年上の詩人がでてくる。彼がノッポに投影されている。清張が青春を思い返しながら楽しくこの作品を書いている姿が彷彿させられる。

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松本清張 「馬を売る女」(文春文庫)

松本清張 「馬を売る女」(文春文庫)
清張は、ちょっと心にひっかかることを何かで知って、そこからああでもないこうでもないとその材料を広げるのが楽しくて、楽しくてしょうがない作家なのだと思う。この本には中編三作が収められているがまずはトリック材料がある。
 高速道路の夜の待避所。ヒトリバシリという雑草。馬酔木。
面白いのはヒトリバシリ。口に入れると、それに含まれているヨヒンビンという物質が中枢神経麻痺をおこし、どうしても全速力で走りたくなる。どこでこんなことを清張は知るのか知らないが、それを知ったときの清張のこいつは面白い話が作れるとほくそえむ顔が私の目の前に現れる。
 トリックの面白さということでは東野圭吾がいるが、東野はトリックにおぼれ、物語が雑になる傾向がある。
 清張は動機とトリックを完全に共鳴させる。収められた三作品は、老醜というもの、死へ向かって諦めにむかうのが当たり前なのに、金欲、性欲、権勢欲ますます高じてそれが最後殺人につながる。老醜の醜さ哀れさをテーマとしている。そこが読者にガツンと衝撃を与える。

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堂場瞬一  「漂白」(中公文庫)

堂場瞬一  「漂白」(中公文庫)
この作品は、佐村河内氏の事件を想起させる。
ミステリー小説は百花繚乱。毎月のようにたくさんの作品が出版されている。一方トリックは出尽くした感がある。そこで、トリックよりも、犯罪心理や警官内部の権力争いや腐敗について書かれる作品が多くなっている。
 こんな状態だから、作家は常に斬新な切り口やアイデアを求められる。しかし、創造豊かな作家はほんの一握り。
 一発ある作品をあてると、次々、新しいミステリーが求められる。その圧迫は想像しがたいほど重い。次作で失敗したら、作家の死命を制せられると強迫観念に常にさらされる。
 この作品によると、ミステリー作家で、作家一本で生計をたてている人はあまりいないそうだ。
 この作品のように、創造力のある人が、物語のアイデアを提供していたり、著作者名は代表者一人だが、実態は何人もの人が関わって物語を作り出版している例もミステリー小説界にはあるのだろう。

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朝井リョウ  「少女は卒業しない」(集英社文庫)

朝井リョウ  「少女は卒業しない」(集英社文庫)
この本、買うときちょっぴりやめようかと思ったがつい衝動買いしてしまった。
また、高校生、中学生の話かと、読み始めるとき若干重圧を感じた。
 高校卒業は、進路も別々、上の学校へ行く人もいれば、就職してしまう人もいる。更に暮らす場所も飛躍的に拡大して、散り散りバラバラになる。たいていの人にとって、本当の別離がくる。
 そんなときの卒業式前日から当日までを、それぞれの主人公たちが思いを込めて過ごした短編をこの作品では連作で描いている。しかも、この高校は、来年からは別の高校に吸収合併、登場する人たちは高校の最後の卒業生となる。
 中味は、朝井もネタがつきはじめたのか、想像が全面にでてきてしまっている。でも、まあそれなりには面白い。しかし、流石に飽きた。
 よく考えてみると、本の読者層は圧倒的に学生であり、社会人で本など読む人はあまりいない。だから、学生をターゲットに作品が作られるのは当たり前のことかもしれない。
 それでも朝井は、力がある作家なのだから、学生以外の世界も書いてほしい。

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桐野夏生  「ポリティコン」(下)(文春文庫)

桐野夏生  「ポリティコン」(下)(文春文庫)
上巻の穏やかな物語から一転、後半は策謀や事件が多発、波乱万丈の物語になっている。
しかし、肝心の3つの点の解決、掘り起しがなくもやもや感がぬぐえない。
 1つは、東一の乱行の数々を告発する、村外有力者の手紙が届き、東一は完全に追いつめられるが、それをどう乗り切ったのかが全くなく、手紙の後、章が変わり、マヤの物語に変わってしまうこと。
 2つ目は、マヤの物語が描かれている間に10年が経過。そこで突然現れた東一が、村の名経営者に変貌し、唯腕村が全国でも有数なテーマパークに変貌しているが、東一の能力キャラクターではとても名経営者になるのは不可能な人間に描かれていたのに、どのような経過を経て変貌できたのかが描かれていない。
 3つ目は、村内会員より理事長解任動議がだされ、結局解任されたようなのだが、その場面が全く描かれていないこと。
 この3点は、物語の根幹をなす大事な点なのだが、桐野はどうして描写を避けたのだろうか。不可解である。そのことがこの作品の評価を低くしている。

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桐野夏生  「ポリティコン」(上)(文春文庫)

桐野夏生  「ポリティコン」(上)(文春文庫)
大正時代に国家のなかに、理想の国家、共同体を作ろうというブームがあった。戦争になり立ち行かなくなった共同体が殆どだが、武者小路実篤が創った「新しき村」や大本教、「一燈園」は、未だに細々ではあるが健在である。この物語は山形県新庄市の山奥にある「唯腕村」という生き残りコミューンを舞台にして創作されている。
 こういう共同体も年月をへて大分様相が変わってきている。まず、共同体が無くなったのはベースの農業で得た所得を全員に平等に分配することが原則であるが、農業自体の利益が薄く、分配金がわずかで生活が難しいため会員が失望して共同体を離れるからである。
 この物語の「唯腕村」も子供を養えず、結局老齢化が進行、やがて老人も働けなくなるときがくる。そうすると共同体は崩壊する。会員のなかに、儲けを隠す人がでる。また、比較的性関係がルーズ(ヒッピーの影響が強い)。そうなるとモテる人、モテない人が明らかになり、平等という基本原則が崩れ、共同体の人間関係に歪みがでてくるなどがあるからである。 上巻はこれらの問題を暴きながら進行する。

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大崎善生  「エンプティスター」(角川文庫)

大崎善生  「エンプティスター」(角川文庫)
これはビリョンとカナと主人公の悲恋が骨格をなす物語である。ところが、主人公の過去の女性との関わり、学生時代の出来事などが、思わせぶりな大崎得意の描写で挿入され、それがこの物語の骨格とは何の関連もなく、非常に読んでいて騒々しく、困惑をする。
 更に、不必要な観念的言葉が大崎にはめずらしく散りばめられている。 
で、結果中味の薄い物語であるというのが読後の実感。
 それにしても韓国は不思議な国である。国は豊になり先進国の仲間入りもしたというのに、出稼ぎ労働者や海外への売春婦の渡航が今もって後を絶たない。
 日本では月10万円の収入しかなければ、何とか10万円で暮らすことを追及する。それができなければ借金となるのだが、最近は消費者金融でもなかなか金を貸してくれない。
 どうも韓国では、10万円収入でも20万円、30万円の暮らしをする人たちが多く、
借金のハードルも低いようだ。それに大学進学率が確か65%と異常に高く、超高学歴社会で幼いときから子供にかけるお金は尋常ではない。
 それが借金を雪だるま式に増やす。一方大卒の就職率は低く、あてにしていた家族の支え収入とならない家庭が多い。それで、家庭が破産する。
そこに付け込む組織やシステムができあがっていて、海外へ出るいかがわしい人々が後をたたないようだ。この作品によると借りた4倍のお金を返さねばならないとのことである。

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星野智幸  「ファンタジスタ」(集英社文庫)

星野智幸  「ファンタジスタ」(集英社文庫)
サッカーはフットボールになった。野球はベースボールにはならなかったが、それでもSBOがBSOになった。そしてサッカーだ、野球だという人たちは化石か世の屑となり、せめてもの楽しみはカラオケ喫茶で演歌をがなるだけになった。
 化石、屑の人たちが元気のよかった時代に、アメリカはベトナムと戦った。化石はベトナム人民と連帯して、アメリカこそ人類の敵と信じ日本国中でデモを行った。数千人、数万人規模にデモは膨れ上がった。そしてにっくきアメリカに何とベトナムが勝利した。だから、日本は更にデモが膨張し、岩国にも沖縄にもアメリカ軍は駐留できないはずだった。しかし、アメリカが負けたときから、デモは不思議なことに殆ど消滅した。
 民主党が政権を奪取したとき、日米中は正三角形の関係を築くという政策のもとに、中国に軸足を大きく移した。途端にとんでもない円高が始まった。東北大震災は日本経済の基盤をゆるがした。にもかかわらず円はどんどん買われ強くなった。日本の大企業は苦境にたった。
 自民党が政権を取り返し、アメリカ一辺倒に舵を切った。そしたら途端に円安になり、大企業はまだらもようではあるが総じて好決算をだし、株も異常に高くなった。一方、中国よりに舵を切った韓国は今未曾有のウォン高に苦しんでいる。
 目に見える殺し合いの戦争から、目には見えない戦争が行われているのかもしれない。
 確かなことは、アメリカ帝国主義反対と叫んでいた膨大な量の屑が街中に溢れ、まだ息をすったりはいたりしていることだ。

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