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2015年01月 | ARCHIVE-SELECT | 2015年03月

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山口瞳  「江分利満氏の華麗な生活」(角川文庫)

山口瞳  「江分利満氏の華麗な生活」(角川文庫)
山口はサラリーマン生活をよく知っていて、サラリーマンに寄り添った作品をつくる。サラリーマンの代表のような作家であるように思われている。しかしどことなくサラリーマンの実態とは作品を読むとかけ離れている。
 東西電機という多分一流メーカーの30代の係長が、銀座にゆく。まずは寿司屋で。こはだ、さよりなんかを粋に握ってもらう。鉄火巻き、カッパ巻などは、邪道な寿司である。そしてクラブにおでかけ十分楽しんだ後、夜11時半に締めとしてまた寿司屋にゆく。
 お銚子とイナダを頼む。
サラリーマンは、重役か社長にでもならないと、銀座でこんな飲み食いは不可能である。なにせ主人公は30歳代の係長である。銀座で飲み食いできるのは、その費用を会社が負担するから。そして山口は、会社に飲み食いを負担してもらい、作家活動をしていたのである。
 それを普通のサラリーマンを装って書く。こんな作品を読む普通のサラリーマンは切ない。

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熊崎敬  「日本サッカーはなぜシュートを撃たないか」(文春文庫)

熊崎敬  「日本サッカーはなぜシュートを撃たないか」(文春文庫)
日本は世界の中でも有数のサッカー王国だと思う。
Jリーグ加盟チームだけで52もあるのだそうだ。全国津々浦々までサッカーチームがあり、町興しの起爆剤として使われる。スタジアムもたくさんあるし、J3くらいのチームの試合でも万を超す観衆が集まるチームもあるそうだ。日本サッカー協会は金満協会である。日本代表チームとなるといくらでも巨大企業が群がりスポンサーを申し出る。
 ここまで草の根のように底辺が広がり、お金もたくさんあるサッカーが不思議と世界にでると思うように勝てないのである。ワールドカップなどとなると、もう完全に優勝するような前景気を煽りに煽るのだけれど、予選リーグを突破できるかが精いっぱい。落胆、失望、落ち込みも底なしとなることを繰り返す。それで、こういう評論本も真っ盛りの状況である。
 日本のサッカーは型を作ることに集中し、作るとそれを何があっても貫きとおすことにある。しかも理詰めである。将棋の詰めに似ている。
 サッカーは常に変化をするゲームである。型はいくつも持っていることが大切である。状況、変化に応じ色んな型をものにしてアメーバのように使えるようにならないといけない。
或は相手サッカーの特徴に応じて使う型を変えねばならない。
一つの型作りに固執する方法では、世界では通用しない。ということが書いてある作品である。

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山本周五郎  「生きている源八」(新潮文庫)

山本周五郎  「生きている源八」(新潮文庫)
徳川家康旗下の酒井忠次に属する徒士に兵庫源八郎という武士がいた。この源八郎が不思議な武士で、どんな戦に出て行って、多くの武士が戦死したり、ときには源八郎が指揮する隊が全滅しても、源八郎だけは生きて帰ってくるのである。加えて今までにこれといった武運をあげたわけでもないし、敵将や幹部に首をとったということもまるでないのにも係らず。
 当初は酒井も源八郎には何か知らないつきがあると考え、30人程度の隊をまかせていたのだが、彼以外の武士が全滅しても戻ってくることが続くと、彼だけが上手く逃げ、部隊を捨てて戻ってくると評判は落ちてくる。酒井は苦悩するが、それでも隊の指揮者として源八郎を起用していた。
 徳川と武田の最終決戦、長篠の戦いは激しく、徳川、武田双方に膨大な戦死者がでた。源八郎も前線で戦っていたので戦死しても不思議はなかった。しかし、死者の中に源八郎はいない。いぶかしく思って武将が戦場を歩いていると、ぼーっと源八郎が現れた。
 敵と戦っているとき、兜の紐が敵の武士にひっかかり、そのまま兜が敵に取られた。それを「返せ」と追っかけている間に戦いが終わったと源八郎が言う。皆は源八郎を馬鹿にするが、周五郎は馬鹿にしてはいけないと物語を結ぶ。
 作品は昭和19年に発表されている。日本にとって戦争の状況は厳しく、日本は追いつめられていた。そして、一億総玉砕とか敵に突っ込んで死ねとか、特攻隊も組織され死ぬことを美化し、国家命令にもなった。
 戦死はしてはいけない。何があっても生きて戻ってこい。という周五郎の想いが凝縮した作品である。

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森絵都  「この女」(文春文庫)

森絵都  「この女」(文春文庫)
昔、メキシコから日本に仕事できた日系2世の人と会話をした。彼の両親は日系1世だから当然日本人。だから彼も容姿は全く日本人。家では日本語で会話をする。しかし外ではスペイン語。日本語の喋りは全く日本人と変わりない。
 この人がもう日本には来たくないという。例えばローカル線で電車に乗る。料金表の駅名はすべて日本語。これが全く読めないから、○○駅まで料金はいくらかと近くの日本人に聞く。聞かれた日本人はびっくりするとともに、この人頭がおかしいのではと思い怪訝な顔をする。
 この作品の主人公礼司。まだ22歳なのに、何で釜ヶ崎のドヤ街まで人生を落とさねばならなかったしっくりとこなかった。だいたいドヤ街の住人は中年から老人しかいない。22歳はそこまで落ちる前にアルバイトでも何でも働き場所はいくらでもあるからである。
 最後のところでその原因を知る。頭頂葉に欠陥がある。その結果右左が全くわからない。字を書くと左右が必ず逆になってしまう。く、し、つがコ、レ、ノのようになるのだ。
 字が書けないとなると、働ける職場は殆ど無い。見た目は普通かしっかりしているので、相手は自分を馬鹿にしているのではと疑う。
 どん底の悲しさが、フーテンのようなこれも切ない過去を持つ路子と重なり合って、切々と読者に迫ってくる。

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山口正介  「正太郎の粋 瞳の洒脱」(講談社文庫)

山口正介  「正太郎の粋 瞳の洒脱」(講談社文庫)
山口瞳の長男が書いた本。これはあまりよくない。
池波正太郎と山口瞳の生き様がどれほど深く面白いかを描いた作品だが、なぜ2人を並べなければならないか全くわからない。
 2人はその生涯で、殆ど接点が無い。無理に共通しているとしたら、生まれた年が一年違いだけ。
 正太郎は貧乏の家に生まれ、小学校を終えて小さい証券会社に奉公でだされる。一方瞳は
大金持ちの息子で贅沢な生活を送り、早稲田までいくが理由があって中退。池波は社会を幼くして這いずり回り、一般の人たちの暮らしから小説のこやしを見つけるし、母親の苦労を時代小説に反映させた小説を描く。一方、山口はサントリーに就職。数作小説はあるが、殆ど書いたのは散文、雑文。何かを書いていれば、それが売れなくても、暮らしをサントリーが支えてくれた。筆一本の緊張はあまりなくまさにタイトルのように洒脱な生涯を送った。
 きっと長男の正介が、池波と深い親交があったからこの本になったのかと思って読むが全くそんなことはない。よく会う映画試写会で挨拶をかわす程度。試写会の後一回だけ喫茶店に池波と行く。そして会話をするがそれも10分だけ。
 池波は今でもファンが多く読まれているが、山口は化石状態。池波と並べてることで山口もすごい作家と思わせる意図がありあり。

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よしもとばなな  「まぼろしハワイ」(幻冬舎文庫)

よしもとばなな  「まぼろしハワイ」(幻冬舎文庫)
よしもとは我々が隣町にゆくような感覚でハワイに行くのではないのか。しかも、それはよしもとには、よしもとが例外でなく、誰でもが同じような感覚でハワイに行っているのではと思っているように思える。
 この物語にハワイを持ってこなくてはならないことがよくわからない。ハワイに行くことが大変であることは無く、ハワイと日本の街の違いはなく、出来事は展開してゆく。ハワイの匂いが伝わってこない。
 それからのべつまくなし登場人物が泣く。それも尋常な泣き方でなく声をからして泣く。
何故そんなになってしまうのか、全く共感を呼ばない。
 どこか、見る世界、住んでいる世界が凡人とはよしもとはかけ離れている。

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江上剛  「断固として進め」(徳間文庫)

江上剛  「断固として進め」(徳間文庫)
富士フィルムの化粧品業界進出の成功物語。
この本で三つのことを知った。
化粧品業界は、何かわからないもの、いかがわしいものを混ぜ合わせ、それをとんでもなく高い値付けをして売っているインチキくさい業界だと思っていた。しかしカネボウの白班のように直接人間に触れるもので間違いをおこせば、企業にとって死活にかかわる。ということは化粧品は、化学の分野では先端技術が駆使され、新たな化学技術が常に創造発明されている分野の商品なのである。だから富士フィルムは化粧品から薬品製造販売まで発展してきている。
 企業は、変革の時代に襲われると、2つの異なった行動を起こす。一つは、製品でもマーケティングでも、思い切って全く異なった方法分野に進出して、変革の波に乗ろうとする企業。もうひとつは言い方は恰好よくみえるが、わが社の強みは何か、技術やマーケティングの棚卸をして、強みを生かしたものやことに特化しよう。すなわち強みに集中する戦略である。
 これは、一見もっともな戦略と思うが結構縮んだ思考である。こうなると、どことなく会社の様相、雰囲気がよどんでくる。
 テレビを見ているとわかるが、客と企業が直接取引をする形態が恐ろしいスピードで膨張している。客も企業を知りたいし、企業はそれ以上に客を知り、新たな商品開発に生かしたいという欲求が強い。販売の垣根は本当に低くなってきている。商品は創ったがどう販売網を構築するかなどということはもう少しで消滅するかもしれない。
 デパートや、大型量販店などは、ネットでは買えない、外国旅行者専用の業界に変わるのかもしれない。

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森絵都  「いつかパラソルの下で」(角川文庫)

森絵都  「いつかパラソルの下で」(角川文庫)
家族再生物語を森は書きたかったのだろう。
取材だったのか、個人旅行だったのかわからないが、佐渡は森に強烈な印象を残し、この佐渡を中心にすえた物語を森は創ろうとした。
 死んだ父の残した言葉「暗い血に覆われている」があったとしても、柏原家の兄妹3人が母も行ったこともないし、まして兄妹も行ったことがない、父の出身地佐渡を訪ね、父のルーツを知ろうとすることが、無理であり、行動に対する動機として弱い。
 だから肝腎の佐渡での兄妹の行動も、それを導く佐渡の父の親戚たちの行動も、物語から浮き上がり印象が薄い。
 最後は家族兄妹の絆が強くなったということで終わるが、それでも、そのために佐渡旅行が必要だったとはとても思われない。

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アンソロジー  「9条どうでしょう」(ちくま文庫)

アンソロジー  「9条どうでしょう」(ちくま文庫)
こういう本を読むたびに、日本は小選挙区選挙制度を導入して変わったと心底感じる。
情報の広がり、考えの相違、人々の暮らしの多様化が進むのに、そこから政治に吸い上げられるべき意見、思いがごく一部のみになった。自民も民主も言葉では相違のあるように言うが、殆ど実態は相違が無い。2大政党だけでは全く一般の想いは伝わらず切り捨てられるだけである。いくつもの政党がしのぎを削っていたころは、一般の活動、行動からでてきた議員がいた。今は2世か、松下政経塾のようなところから、何の活動もなくポっとでてくる議員ばかりになった。
 小選挙区制の前は憲法の議論は広く活発になされ、その思いが議員、政治につながっていた。最近は何でも、評論家、シンクタンク、第三者諮問委員会などが政治と一般の間に雲のようにひろがり、浮薄な討論だけがはびこるようになった。
 ここで書かれている論こそその浮薄の典型である。 

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森絵都  「気分上々」(角川文庫)

森絵都  「気分上々」(角川文庫)
結婚相手が恋愛した中で最高の相手であることは案外少ない。
勤めていた会社が倒産。全然ゆとりなどあるわけないのだが、こんなに自由な時は後にも先にもないだろうからと、数人の仲間で、南アフリカとタンザニアへの旅行を計画する。そのために黄熱病の予防接種に検疫所に来ている主人公の女性。そこで、頁をめくらないのに、本を読んでいるふりをしている気障な男に遭遇する。予防接種後一日は酒と運動は控えるようにと検疫官に注意されたにも拘わらず、居酒屋、築地の寿司屋と主人公とその男は流れる。築地だから寿司屋も高級店だろう。主人が「そろそろ何か握りましょうか。」と言うと気障な男が答える。「じゃあ 俺はエビイカタコ」。この気障と現実のアンバランスに主人公の女性は参る。 男はかん違いしている。オレの男ぶりにこいつは惚れたのだと。それでも、好きになったのは同じこと。だからホテルにゆく。
 ベッドで隣の男が面白いことを言う。眠れないときは全く関係ない言葉を思い浮かべるといいと。そして二人で交互に始める。時計、タコ、椅子、ハミガキ粉、花火、遠洋漁業
・・・・・。そのうち男は眠りについてしまう。それで、主人公は一人で続ける。
 海、電信柱、砂、封筒、たまご、鏡、崖、腕、日本酒・・・・・・・・・・・・。
そして眠りにはいってゆく。
 その男とは翌朝別れる。
主人公はそれから恋愛をして、別の男と結婚する。でも、眠れないときは必ずあの素敵な一夜に教わった言葉ゲームを、エビイカタコの男との思い出と一緒にやってしまう。

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今野晴貴  「ドキュメント ブラック企業」(ちくま文庫)

今野晴貴  「ドキュメント ブラック企業」(ちくま文庫)
この本を読んで現実にブラック企業で働き苦しんでいる人が、解決への光明や希望を見出すことができるだろうか。会社に入社する前に、労働契約をよく読んで、不信なところは人事担当者に問いただせと。せっかく何とか入れる会社にたどりついたのに、そんなことができるわけがない。
 いつの頃からか、お客はクライアントと呼ぶようになり、営業はソリューションとなる。そのころから、コンサルタントという業がはびこるようになって企業がそこにもたれ掛りだした。自らの社員の力や結束力、現場力を信じなくなり、虚飾された言葉だけが踊り狂う外部のコンサルタントに会社の行く末を委託するのである。
 この本はいかにも苦しんでいる人たちに寄り添っているように思えるがただふりをしているだけ、そういう人たちからははるかに遠い書き物である。
 ソリューション、クライアントとカタカナ表現遊びと同じ類の本である。

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吉本ばなな  「夢について」 (幻冬舎文庫)

吉本ばなな  「夢について」 (幻冬舎文庫)
吉本は、友達なのか関係者なのかもうひとつ判別できないのだが、とにかく知り合いと称する人がまわりにたくさんいる。そういう人たちと年がら年中お酒を飲んだり、遊んだりしている。それに、あまり自費はないようだが、取材と称して海外へも気楽にでかける。
 だから小説になるようなネタは他の作家に比べれば拾いやすい。加えて、夜中にみる夢の内容が充実していて、更に微細にいりよく覚えている。
 いろんな構想を練っているとき、その延長で夢を見るようだ。必死に考え、必死にみて何とか小説までに膨らましたいと念じて夢をみる。
 ある新築マンションを買った友達夫婦の部屋に遊びに行く。そこには何もないのだが、キッチンがカウンバーになっている。そこで家の御主人が「まずバーで一杯」と言って冷蔵庫をあけると何とからっぽ。あわてて、吉本と恋人がビールとつまみを近くに買いにゆく。
 それでマンションに戻ってくると、何とマンションが消えてしまっている。その代わりにくずれそうな廃屋がある。その廃屋のキッチンに主人が服は着ていたものと同じだったが骸骨になって横たわっていた。
 こんな夢を見られるとは。変わった面白い小説が書けるわけだ。

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米原万里  「不実な美女か 貞淑な醜女か」(新潮文庫)

米原万里  「不実な美女か 貞淑な醜女か」(新潮文庫)
この前新聞を見ていたら、大学の人文系の人気が無くなり、文科省からも合理化を求められ、人文系の学部を統合する動きが各大学に広がっているという記事に遭遇した。
 特に文学部は社会にでて役立つ要素が少なく、企業からの求人数も減少しているから合理化の槍玉になっている。しかし、通訳、翻訳者は圧倒的に人文系の人が占め、特に文学部出身の人が多いのだそうだ。著者のようにロシア語専門の通訳となると、原子力、医療、物理学等の高度な理科系の国際会議などの通訳をせねばならないことも多い。こんな時、理科系の出身の通訳がいいかと思えばそうもいかないようだ。昨今のように理科系も専門分野が細分化され、専門以外のところは全く理科系でも通用しないのだそうだ。
 通訳するのは言葉である。文学部出身の人は、言葉を理解しようとする欲求が人一倍強く、何が書かれているか、何を言おうとしているのか知ろうと懸命に努力する特質を持っている。だから通訳の前にでそうな用語の意味を調べたりすることを怠らないし、それが苦痛にならない。
 社会ではもちろん高度な専門知識が求められているが、一方で一般的に大きく、深く物事を理解したり表現したりする力も求められている。文学部出身者はそれに最も適合している。だから、社会は文学部出身の人こそ求めているのだ。

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吉本ばなな  「虹」(幻冬舎文庫)

吉本ばなな  「虹」(幻冬舎文庫)
この小説もそうなのだが、とにかく吉本の小説はどことなくちぐはぐでバランスがよくない。しかしそこが特定の読者にとってはたまらないのかもしれない。
 タヒチ料理のレストランを経営しているご主人様。その店の成功でケイタリング会社も経営している。レストラン経営で成功して、更に10店、20店と店を拡張しているのだがわかるのだが、たった一つの店舗とささやかなケイタリング会社一社で、死ぬほど多忙であることがピンとこない。ご主人様の奥さんも会社を持つことのために、これも忙しい。
 吉本は、芯は頑固で強い。悪く言えばわがまま一杯の人だと思う。その強さ、きっぱりさが小説の主人公に表れる。ところが、その主人公の心がよく崩れ、カウンセリングとか神経科の世話になる。これもどうしてと首をかしげる。
 「これでよかったのだ。自分に言い聞かす。」それで物語は終わる。そんなこと言い切っても、よかったとになったためしはない。言い聞かして納得できた自分もいない。「言い切った」あとの物語が本当の物語である。

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吉本ばなな  「虹」(幻冬舎文庫)

吉本ばなな  「虹」(幻冬舎文庫)
この小説もそうなのだが、とにかく吉本の小説はどことなくちぐはぐでバランスがよくない。しかしそこが特定の読者にとってはたまらないのかもしれない。
 タヒチ料理のレストランを経営しているご主人様。その店の成功でケイタリング会社も経営している。レストラン経営で成功して、更に10店、20店と店を拡張しているのだがわかるのだが、たった一つの店舗とささやかなケイタリング会社一社で、死ぬほど多忙であることがピンとこない。ご主人様の奥さんも会社を持つことのために、これも忙しい。
 吉本は、芯は頑固で強い。悪く言えばわがまま一杯の人だと思う。その強さ、きっぱりさが小説の主人公に表れる。ところが、その主人公の心がよく崩れ、カウンセリングとか神経科の世話になる。これもどうしてと首をかしげる。
 「これでよかったのだ。自分に言い聞かす。」それで物語は終わる。そんなこと言い切っても、よかったとになったためしはない。言い聞かして納得できた自分もいない。「言い切った」あとの物語が本当の物語である。

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アンソロジー  「発見」(幻冬舎文庫)

アンソロジー  「発見」(幻冬舎文庫)
壇ふみの父親、作家の壇一雄が子供たちを集めて言う。
「お前たちは作家になれ。」と。
そこからが凄い。
「そして俺のことを書け。そうすれば食いっぱぐれることは無いから。」
そう言えば、偉大な作家の後をついで物書きをしている人はたくさんいる。そしてすべてがお父さんである作家のことを傘にして書いて生計をたてている。
 壇ふみも友達の阿川佐和子も何を書いても、父親の面影が散りばめれられている。
政治家もタレントもやたら2世が多い。親が子を甘やかすだけ甘やかし、独り立ちできない子供へ道を敷いている図がみえる。と、思うと、逆に親の名声や評判が消滅しないように子供に仕事を継がせ、いつまでもあいつの父親は、かのあの人と言わせようとしている構図も見える。そうか、親も子も持ちつ持たれつなのだ。
 吉行淳之介の親父、吉川エイスケ、阿川佐和子の親父阿川弘之は、子供のおかげで名前が知られ、残っている。

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原田マハ 「翼をください」(下)(角川文庫)

原田マハ 「翼をください」(下)(角川文庫)
1937年、朝日新聞が東京-イギリス間を神風号という飛行機で走破。これに刺激されたライバルの東京日々新聞、現在の毎日新聞が三菱重工で開発された「ニッポン号」で世界一周を計画実行する。
 この「ニッポン号」は8人乗り、だけど実際に乗務したのは7人。ところが原田は実は8人で飛行したと物語を創造する。この8人目が、物語を熱く深くする。
 8人目の乗員はアメリカ人女性で名前はエイミー・イーグルウィング。エイミーはアメリカで当時最優秀の女性パイロット。数々の飛行記録を打ち立てていて、英雄扱い。そのエイミーがアメリカ海軍をスポンサーにして、赤道沿いを飛ぶ世界一周飛行に挑戦する。
 そして、台湾沖で燃料が無くなり消息を絶つ。その消息を絶つまでの、原田の創りあげた物語が素晴らしい。ルーズベルト大統領が登場する。更に物語に一貫して流れる原田の平和への思いがアインシュタインとエイミーとの会話や手紙のやりとりから生まれる。この想いが後半のエイミーと山田の悲恋に結びつく。原田の物語の創造力に感服する。
 それから原田が素晴らしいのは、読者の読む立場にたって、読みやすく、軽く、更に目線も同じにして書き上げていること。戦争、平和希求の物語は男性作家を中心に最近でもたくさん書かれているが、表現が大袈裟で、理屈っぽく読んでいて苦痛を覚える。原田は読みやすいが、確実に平和の大切さを読者に伝えている。

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原田マハ  「翼をください」(上)(角川文庫)

原田マハ  「翼をください」(上)(角川文庫)
最近は、一日2冊を原則に本を読んでいる。作家を決めたりしながら、古本を買いあさって読む。正直、殆どの作品がつまらない。それで、読んでいるうちに眠くなる。眠って起きて眠って起きてを繰り返して一冊をやっとこさ読み終える。
 数十冊に一冊の割合で、熱中し興奮し、時間を忘れ一気に読んでしまう作品にであう。この「翼をください」もまさにそんな一冊である。読後の感想は下巻を読み終えてするが、今から下巻が楽しみで仕方がない。
 AMAZONの本評価で5点満点を獲得している。但し6人だけの評価ではあるが。通常6人くらいいると中に数人が4点評価をする。平均四捨五入で5点となる。しかし、この作品は6人全員が5点満点をつけている。これは滅多にない。
 こんな素晴らしい作品に6人しか評価者がいないのが淋しい。もっと多くの人に読んでもらいたい。

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綿矢りさ  「ひらいて」(新潮文庫)

綿矢りさ  「ひらいて」(新潮文庫)
この本を読むと、女子高生というのは、全生活のすべてが、恋人であれ、単なる先輩であれ、同級生であれ、又は、生活圏から遠いタレントであれ、とにかく憧れの人を思い続けることにあるように思う。
 主人公の愛は、名前が変なのだがたとえ君に憧れようとしている。女子高生の資格として憧れねばならないくらいから作品はスタートしている。ひょんなことから、あまりパっとしない存在が薄く、糖尿病もちの美雪がたとえ君とおつきあいをしていることを知る。
 そこで、憧れがガラっと変化して、持っているマグマが大噴火。そして、噴火に対する情熱と執念がすさまじくなり、全く抑制がきかなくなる。
 普通は、勉強だとか、音楽、映画などについて互いに話をして、共通な話題をみつけながら、つきあいはスタートするものだと思う。しかし、この作品では、最初から情熱だけがほとばしり向かい合う。まあそういう場合もあるのだろうが、何だか最近の殺傷事件を彷彿とさせる。

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米原万里  「終生ヒトのオスは飼わず」(文春文庫)

米原万里  「終生ヒトのオスは飼わず」(文春文庫)
こういう愛犬愛猫家の本は花盛りである。犬も猫も擬人化され、飼い主のいうこと、考えていることはわかっているし、犬や猫の言いたいこと考えていることは全部飼い主はわかっているのだという本。この作品はそこまではいっていないが、かなり猫、犬にいれこんでいる。
 私も犬2匹、猫3匹飼っている。犬は私の背中越し、猫は私の腹にもたれかかって夜は寝ている。可愛い。でも愛玩動物の域は超えていない。言葉が通じあうほどにはなっていないし、犬、猫は頭が人間と密に会話ができるほどよいとは思えない。どことなく人間のひとりよがりのような気がする。
 この本によると、猫の頭と人間の頭はそっくりなのだそうだ。人間の前頭葉を除いたのが猫の頭の構造であると。だから、猫と人間は最も動物のなかでコミュニケーションがとれるのだそうだ。
 正直、犬の本能性格に基つくのかもしれないが、猫より余程犬のほうが人間とコミュニケーションが取れると私は思うが、どうなのだろう。

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吉本ばなな  「ハネムーン」(中公文庫)

吉本ばなな  「ハネムーン」(中公文庫)
物語の設定が変わっている。そうだとしても裕志の精神的病にはもうひとつピンとこなかった。裕志のお父さんとお母さんは新興宗教で結びつき、そして別れる。お母さんは行方不明。お父さんは宗教にのめりこみ、アメリカに行ってしまう。お父さんがアメリカから帰国して、裕志を連れてアメリカに行こうとする手紙が届く。そこで、主人公まなかの両親が話をして、裕志と主人公のまなかを入籍させる。まだ17歳である。父親に連れていかれないためにだ。
 裕志の唯一の肉親だったおじいさんが亡くなり、裕志の精神的病と心の閉ざしは一層激しくなる。そこが、もうひとつしっくり来なかったのだが、最後に吉本はとんでもない事実を用意していた。
 裕志のお父さんが入信していた宗教は女性の人が教祖。この女性と宗教幹部はしょっちゅうSEXをする。そうすれば教祖は妊娠して子供が生まれる。この子供を食べることが神聖な行為で、幸せにつながるのだ。ということは裕志は奇跡的に食べられることから逃れられ、たった一人で生きてきたということになる。なるほど重い精神的病に陥るほどの人生を裕志は背負っていたのだ。

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山本周五郎  「人情裏長屋」(新潮文庫)

山本周五郎  「人情裏長屋」(新潮文庫)
調子の良い奴がいる。職場で山のような仕事を抱えている。仕事を残したまま、上司に飲みに誘われている、或はお呼びがかかっているから、「な、頼む。このお礼は必ずするから。」
と言って要領の悪い人に仕事を押し付け退社する。そして、殆どお礼なんかしたためしはない。
 こういう奴は、とんとん拍子に出世してゆく。押し付けられた奴は、回りの同情や
親近感を呼び起こす。それでも、こんなことが度重なると、評価は一転「愚図。馬鹿。」となってしまって相手にされなくなる。
 タイミングが人生では重要だ。同情や信頼が変わるところで、自分も殻をやぶり飛躍しようとすることだ。そうすると、回りからの支え信頼があるだけに、前を調子よく走っていた奴をすいすい追い抜ける。この作品の主人公、信兵衛はばっちりそのタイミングを掴んだ。
 これがなかなか難しくて人生ではできない。

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よしもとばなな  「日々の考え」(幻冬舎文庫)

よしもとばなな  「日々の考え」(幻冬舎文庫)
よしもとばななの書斎に本がたまりすぎて、処分することになった。驚いたことに、処分すべき本をブックオフに持っていた。作家が本を買ったり、処分するのは神田界隈の名だたる古本屋だと思い込んでいたから。
 それで、よしもとは怒る。
どうでもいい本がそこそこな値をつけられ買い取ってくれるのだが、よしもとが大切であり価値が高いと思っている本は、買い取ってくれないかただ同然の値段。
 だから、ブックオフにはろくな本がないのだと。
大分ご無沙汰していたのだが、久しぶりによしもとばななを読んでみるかと思い、10冊ほど最近買い込んだ。もちろんブックオフである。
 そうか俺は、ろくでもない本を買ったのだと落ち込んでしまった。

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山本周五郎  「あんちゃん」 (新潮文庫)

山本周五郎  「あんちゃん」 (新潮文庫)
江戸詰めを解放されて、地元に戻った典木泰三。藩主お声掛りの地元帰りなので、地元ではあでやおろそかには扱えない。勘定奉行の下の係につける。この泰三というのが、まるっきり事務はできない、加えてとろく、粗忽者。存在するだけで係の事務に支障がでる全くの厄介者。それで、どの係に属しても、すぐ勘定奉行に泰三だけは困ると他係への異動を係の長からお願いされる。それで、あっちの係、こっちの係と泰三はたらいまわしにされる。
 そしてどこも引き取り手がなくなる。勘定奉行は弱りはて、彼専用の計数係を新設。もちろん所属は泰三一人。そこでの仕事は、済印の押された過去の帳簿の計算が正しいか再計算をすること。
 泰三の兄の泰助は、泰三と正反対で優秀であり将来が嘱望されている。泰助の結婚式に泰三がでると、とんでもないことを引き起こすのではと心配して、父が勘定奉行に手をまわし、
全ての係から膨大な帳簿を泰三に渡し検算をさせ、泰三が結婚式に出席できないようにしてしまう。
 泰三根は真面目なので、三日三晩一睡もせず検算を行う。
そして藩主が帰国したとき、全奉行、老中など幹部を集めてもらい、とんでも無いことを言い出した。
 「帳簿を調べると、毎年度末、次年度への繰越金がきれいに0になっている。しかし、調べると、8年前には3万両、7年前には5万両使い切れずにお金が残っている。そして昨年末までにその金額は27万両にも及ぶ。それはどこかに残っていなければならない。我が藩の財政は何もしなくても当分安泰である。」と。
 これはいいぞ。泰三はすばらしい。

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| 古本読書日記 | 06:12 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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「世論」

イスラム国に後藤健二さんが処刑されたことは非常に悲しく残念である。

ところで、今回の件についての政府の対応が、言論統制をひき、一切の批判を許さないようにしたと週刊誌などで批判的に書かれている。更に、大マスコミが政府の圧力迎合し、安倍政権の対応への批判を全くしなかったとマスコミへの批判も同時に行っている。
今はネット時代、何かが起きるとありとあらゆる情報が即時に世界をかけめぐる。そして、即時に世論が形成される。その後したり顔した学者や評論家が何をテレビで述べようが、最早気が抜けたビール状態。新聞などは、どことなく歴史物を読んでいる感覚さえする。ネットで形成された世論に対しテレビも新聞も大手を振って反対できない。そんなことをしたら、会社の危機に直結することだって起こりうる。
 安倍政権が統制して世論を創っているのではなく、大マスコミが報道する以前に世論ができてしまっているのである。
大変な世の中になってしまったものだ。テレビや新聞の影響力の弱体化を痛切に思う。

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よしもとばなな  「ジュージュー」(文春文庫)

よしもとばなな  「ジュージュー」(文春文庫)
登場人物も風景も少ない。主人公奈津子とお父さん。お父さんの店で一緒にステーキを焼いている信一君とその妻夕子さん。ごくたまに信一君の離婚したおとうさんとおかあさん。それに近くの本屋の宮坂さん。そしてでてくる風景は過去も現在もステーキ屋と本屋だけ。
 小さな世界と少ない人間関係のなかでも、奈津子にも信一にも衝撃を与え、人生に関わる大きな事件はあった。それはもちろんお父さんにも。でも店も、登場している人たちの場所も役割も全く変わらずに長い間維持されてきたし、今後も変わらないだろう。
 そんな中で、奈津子はバツいちの宮坂さんと結婚を決意する。奈津子は宮坂さんがもちろん好きである。でも奈津子は思う。結婚することは家族をもち家庭を作り上げていくことだと。平凡かもしれないが、この人と、家庭をもち、やがて子供を産み育て、そして最後は大地に帰る。今までは違った選択もあったかもしれないが、結婚は他の人生の道はないことを決意させる。でもよしもとの描く家庭を持つことへの決意はキッパリとしている。その気持ちは強く明るい。

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米原万里   「旅行者の朝食」(文春文庫)

米原万里   「旅行者の朝食」(文春文庫)
その昔ロシアの貴族、上流階級はフランスへの憧れが著しく強かった。トルストイの「戦争と平和」でも、貴族の会話はすべてフランス語で書かれているのだそうだ。そして、脚注にロシア語訳が書かれていた。つまり、上流階級の会話はフランス語で行われていたのである。
 当時ロシアの食事は、暖かいものは暖かいうちに、冷たいものは本当に冷たいときに食べるのが一般的。だから、スープ、前菜、メインと一皿ずつだされた。フルコースという方法だ。ところが一般世界では、とにかく全部の料理を所狭しと並べておき、とりわけて食べる方法をとっていた。日本でも、中華でも、そしてフランスでもだ。
18世紀にロシアを訪れたフランス人作家キャレームがたった1週間の滞在で、ロシア式の食事、料理方法に感動して、フランスに持ち帰り、それが瞬く間に普及して今の形態になった。だからロシアはフルコース調理、食事式はロシアが起源だと自慢していいはずなのだが、そうなってはいない。というのは当時フランスにかぶれていた上流階級がフランスにゆき、所狭しとならべている食事方式こそ一流人がなす食事方式だとして取り入れる。そして時が過ぎて、別のロシア人がフランスでフルコース方式にであい、またまた感動してフルコース方式を一般に普及させたのである。結構ロシア人というのは面白い人種である。

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| 古本読書日記 | 06:17 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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山本周五郎  「雨の山吹」(新潮文庫)

山本周五郎  「雨の山吹」(新潮文庫)
人生経験の幅があったり深いわけでもないから、まあ理解できない人に出会っても不思議ではない。
時々、会社で生涯平社員という人をみかける。40年間ずっと平社員というのも結構すごいことである。だいたいそういう人は、極端に仕事ができなくて、まわりの人に迷惑ばかりかけていて、毛嫌いされている人が一般的。あるいは気質、性格が明るくても、沈んでいても異常のひと。あれなら平社員でもしかたないと皆から評価されている人が一般的である。
 ところが、中には、仕事もばりばりやる。能力も優れている。まわりからも信頼されている。残業も、休日出勤も厭わない。しかし、ずっと平社員で、40年前にやっていた事務作業を40年後の退職時もやっている。不満も不平も一切言わない。つまり出世や仕事の変化を完全に拒否している人だ。
 理屈ではいろいろ言える。責任をもたされることが嫌い。人を使うことが嫌い。会社でなく他に生きがいを持っているのだと。
 しかし、私があった人は、どう言ってみてもしっくりすることが無い。十人十色とはよく言ったものだ。わからない人は確実にいる。そんなことをこの作品を読み思った。

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城山三郎 「一歩の距離」(角川文庫)

城山三郎 「一歩の距離」(角川文庫)
この作品は2つの重すぎる悲しみを読者に突きつける。
予科練という海軍兵に10代半ばで志願。過酷な訓練を積んだ練習生たちに、ある日突然大佐
が告げる。
「必中必殺の人間武器をつのるときがきた。目をつむれ。人間武器に志願する者は一歩前にでろ。」
気概をこめ一歩前にでた者もいる。悩んで躊躇して出られなかった者。一歩前へでたが、恐ろしくて引っ込めようとしたができなかった者もいた。
そこから、それぞれの男たちの心の葛藤や、ゆがんだ友情の描写が心に痛くせまってくる。
もうひとつは戦死でなく殉職。気が弱く、いつも軍曹に目をつけられいじめられ、強烈な体罰を受けていた兵がいた。尻をださせられ、バッターという棒で、26回おもいきりぶったかれる。
 身体も精神もこわれ、野垂れ死にのように亡くなった。
戦う前に、虫けらのように殺された若者や兵士がたくさんいた。
 戦争という言葉自体が抽象的。とにかく軍、軍隊が心底嫌い。城山の魂の叫びが聞こえてくる。日本独特の体罰の原風景がここにある。

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| 古本読書日記 | 06:29 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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