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2014年11月 | ARCHIVE-SELECT | 2015年01月

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香納諒一 「ガリレオの小部屋」(光文社文庫)

香納諒一 「ガリレオの小部屋」(光文社文庫)
不眠症、眠れないということを文章にしてこれほど的確に表した作品をみたことがない。
「ふと眠りに引き込まれる瞬間が来そうになると、あっそんな瞬間が来そうだと心が騒ぎ、ところが、そんなふうに心が騒ぐと、眠りは僕から遠ざかってしまう。それでもすぐにまた気をもたせて誘いをかけてくる性悪女のように、少しずつ眠りの瞬間が近づいて来るので、息を潜めて待っているとあと一歩で眠れそうな気がするとともにまたもや遠ざかる。
 眠れないと何とか眠ろうとする。何とか眠ろうとすると、いざ眠ろうとするときに、ついそのことを喜んだり、ほっとしたりしてしまう。たぶんそれもいけないのだろう。そんなふうに、眠るなどというごくあたりまえのことに、喜んだりほっとしたりしまうことで、眠りが遠ざかってしまうのだ。」
 香納の珠玉の短編集。どれも面白い。タイトルになっている「ガリレオの小部屋」が最も素晴らしい。

| 古本読書日記 | 05:56 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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江波戸哲夫 「ジャパン・プライド」(講談社文庫)

江波戸哲夫 「ジャパン・プライド」(講談社文庫)
本のタイトルと中味にかなり大きなギャップがある。
この作品は、2008年に世界を震撼させたリーマンショックの暗雲がたちこめた最中に書かれた作品だ。リーマンショックのようなことが起きると、まず危機を煽る評論家がたちあらわれ、日本の金融界にも甚大な影響があり、金融を含め、日本経済は破綻すると喧伝する。こんな時に、日本は大丈夫などと言っても耳を貸す人はいない。
 そんな真っ暗な時代に、金融最前線で頑張る、銀行の偉い人や、銀行マンに応援歌を送る作品となっている。
 平凡なのは、今こそ「顧客に寄り添い、顧客ニーズに対応すべし」というこの作品の基底に流れる考え。このスローガンはどこでもいつでも言われるが、それが何?ということは誰もよくわからない。それなのに、経営者は年じゅう言っている言葉。
 そこを事例を持って江波戸が描く。しかし、その事例が、「居酒屋チェーン」や「自動車部品販売」では白ける。リーマンショックにもめげず勢いがあった会社がそんなところしかなかったのかもしれないが。説得力が乏しい。

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湯本香樹実  「春のオルガン」(新潮文庫)

湯本香樹実  「春のオルガン」(新潮文庫)
主人公の私は小学六年生の12歳。弟のテツは小学4年生。テツはいっぱい本を読む。知っていること、疑問を持っていることは、何でも喋るし、何でもやってみる。とにかく、かげりもなくまっさらさら。そんなテツが主人公の私はうらやましい。
 私は、少しいろんなことをかんがえるようになっているし、大人たちも見えるようになっている。お父さんとお母さんはいつも喧嘩をしていた。お父さんはそれで怒って家をでてゆき帰ってこなくなった。その喧嘩の原因は、隣の家のじいさんの家との境界線を巡っての争い。私の家のじいさんと言えば、こんなバラバラな家族なのに、何もしないでしらんぷり。
 皆勝手。好き勝手に生きている。子供のことなんかどうでもいいって思っている。
そんな私が、色んなことをこの物語で経験する。そして、身勝手に思えた大人たちもそれぞれ色んな悩みを抱えて生きていることを知る。自分も色んな悩み、悲しみや喜びを抱えて生きている。
 自分の中には、色んな自分がたくさんいる。そんな色んな自分がとびでてきて、皆で手をつないでいきていけたらいいなと私は思う。
子供から思春期へむかい成長してゆく姿を鮮やかに描きだしている。

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井上荒野  「あなたの獣」 (角川文庫)

井上荒野  「あなたの獣」 (角川文庫)
主人公の桜田哲生は、一見空気のような存在だ。感情、夢、情熱とは全く無縁。そのくせバンドをしたり、劇団で俳優などもする。職場もふらふらと変わる。何のために存在しているのか、わからないが、いつも周りに人々がいるような場所にはいる。
 それで、個性が無いかといえば、好きかどうか判然としないのだが、恋人がいる女性の住居を訪ねることには熱心である。恋愛は上り坂も下り坂もある。別れもあるし、喧嘩もする。そうなることを、ひたすら待つ。年の単位で待つことだってある。
 そして、別れたり、喧嘩して男が女性のアパートをでたところで、おもむろに女性の住居のドアを叩く。女性は男が戻ってきたものと思い、必ずドアを開ける。そこで「ヤア」と言いながら、部屋にあがりこむ。女性の痴話話を聞く。寂しくなった女性と抱き合う。
 空気のような男桜田は、どういうわけか女性が絶えてことがない。確かに、形の変わった獣である。
 

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歌野晶午  「絶望ノート」(幻冬舎文庫)

歌野晶午  「絶望ノート」(幻冬舎文庫)
今の若い世代の人たちには、歌野が描くすさまじいいじめの数々について、認識、理解はできるのだろうが、私のような年寄り世代には、ほんとうにここまでやっているのかと、ただただ驚愕してしまう。
 万引きを強要する。そこを携帯で写真をとっておき、警察に知れたら、写真をたてに万引きのすべての責任をいじめている奴におしつける。
 可愛いいクラスメートの女の子を、突然、いじめの被害者宅に訪問させ、2人だけの動画を隠しカメラで撮影。それを、動画サイトで公開、そこに、いやらしい奴とか、すけべとか文字をあびせ貶めはずかしめる。
 歌野は感情をいれず、いじめの現場、被害者、加害者の状態を描く。だからリアリティがでて、読者にぐんぐん迫ってくる。
 だけど、最後が良くない。読者をびっくりさせようとして、作者だけがジャンプしている。
加えて、ミステリーは犯人を追いつめてゆく過程が面白いわけだが、そこを端折って、事件の真相だけを説明している。拍子抜けしてしまうし、呆れかえってしまう。

| 古本読書日記 | 06:13 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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有吉佐和子  「ほむら」(文春文庫)

有吉佐和子  「ほむら」(文春文庫)
平成も26年にもなって、まだ有吉の新刊文庫本が出版されるとは、びっくりした。有吉はいまだに多くの本が復刊されている、清張と並び、人気が底堅い作家である。
 有吉の面白さは何ていっても長編にある。考える前に、口から言葉がでてしまっている。そんな女性を描かせたら天下一品。普段の有吉そのままがでているように思え微笑ましい。
 この本は短編集。それも初期の作品を集めている。短編では有吉の味はなかなか発揮されない。後の名作長編のための習作集の趣である。
 本のタイトルにもなっている「ほむら」。老女が住む小庵に、一人の僧がたどり着き住みつく。女犯のかどで、寺を追われ放浪していた僧。放浪時も廓の女を相手の女性狂いを続ける。そんな僧だが、流石に老女には興がおきない。老女、自分は女である意識がまだあり、僧の態度が憎い。まよという下女が小庵にはいる。離れの土蔵に住まわした僧に食事の世話をさせる。
 僧は女犯の衝動から脱却するために、決して下女とは顔をあわさない。それから10年、まよが20歳になったとき、ちょっとした操作を老女がして、まよと僧が初めて顔をあわせるようにする。
 そのとき老女は、ごはんをよそおいながら、僧に体ごと飛び込めと、まよに命令する。
 その瞬間僧はもうここにはいられないと、また放浪の旅にでる。怒り狂った老女は、土蔵に火をつけ燃やしてしまう。有吉の以降の長編の原点をみるようだ。

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江波戸哲夫  「報道キャスターの掟」(祥伝社文庫)

江波戸哲夫  「報道キャスターの掟」(祥伝社文庫)
テレビをはじめとして、マスコミというのは、いつも、世論を引っ張り、庶民を教育啓蒙してあげるという姿勢がありありで、いやなものだと思う。テレビや新聞の影響力など、今は大きく低下し、その地位は根底から揺らいでいる。ところが、それに気が付かず、相変わらず世をリードしているなどと思っているから、救いようがない。とにかく、一般の人々の中にはいるより、テレビにしがみついている、評論家や、知識人などに何かあればコメントを求める。向いている相手先はこんな人たちばかりだから、どんどん庶民は離れてゆく。
 この前の選挙。人々の殆どは何故今選挙か全くわからないと思っている。少しだけそこをついたマスコミもあったが、全体的には、そんな疑問はどこかへ飛んで、選挙一色で紙面、放送を塗りつぶしてしまった。
 こんなとき、ちゃんとテレビやマスコミがしつこくなぜ今選挙を追及し、もっと投票率を落とさせ、それでも信任されたのかと、くってかからないのかと本当に思う。

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井上荒野  「不格好な朝の馬」(講談社文庫)

井上荒野  「不格好な朝の馬」(講談社文庫)
短編連作集。
この本を読んでいると男というものは何と馬鹿げているものなのかと思ってしまう。
40歳を過ぎて分別もできる年になっているのに、21歳の女性に惚れられ、逢瀬を重ねている。最初は、女性の体に惚れ、つきあってみるが、年の差もあり会話もかみあわない。
 少々飽きがきた。それに女性の存在を女房にも知られ、女房から本気とは思わないが、別れることを持ち出された。
 これで最後にしようと思い、女性を温泉に連れ出す。それで、はっきり別れることを言い出すつもりで、温泉まできているが、最後に「惜しい」という思いがわきあがり、別れを言えないというより言わない。それが、どういうことになるか、それまではわかっていたはずなのに。言わない。
 他の短編。旦那が家をでていくと宣言する。嫁さんも、旦那には辟易していたから、明日にでも自分の荷物を持ってでていってくれという。その旦那、恋人ができたから別れると言うわけだが、その恋人は中学生だと言う。どうなることやらこの旦那の未来は。
 男は、そのとき、そのとき、これでいいやと行動する。そのとき、別のそのときは単なる点でしかない。しかし、自らの境遇が底におちたとき、そのとき、そのときが線でつながっていたことを知る。

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岩井志麻子 「夜啼きの森」(角川ホラー文庫)

岩井志麻子 「夜啼きの森」(角川ホラー文庫)
私が幼いころ、国道もすべての道路は舗装などされていなかった。車も村に数台だった。もっぱら物品の移動や人の移動は、牛馬によって行われていた。それと、がたごと走るバス。
 ということは、街までは遠かったし、隣村も遠かった。
だから、生計、生活、そして生涯は村で始まり、村で終結した人が多かった。
 農作業も林業も、祭りごとも、葬式も、消防も、すべての生活が皆しての共同作業により成り立っていた。
 こんな閉ざされた世界で、最も困ることは、村八分にされてしまうこと。しかも、共同作業に加えてもらえなかったり、自分の家のための作業を村人が全く協力してくれなくなった状態になってしまうと、もう逃げ場も、生きてゆく手段もなくなり、死を待つしかなくなってしまう。
 時にこんな人がでる。嫌われ者である。そうそう、そんな人は乞食をしながら土管に住んでいた。この小説はそんな閉ざされた世界での悲劇を扱っている。
 有名な「津山33人殺し」が題材。この事件を基に「八つ墓村」も作られている。

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江波戸哲夫  「不適応症候群」(角川文庫)

江波戸哲夫  「不適応症候群」(角川文庫)
豪放磊落、清濁併せ呑む、ときには熱く語り、熱く励ましてくれる、そんな上司が、部下から誰よりも尊敬され信頼されていた。
 しかし、会社にPCが装備され、ネットワークが引かれたときから、風景が全く変わった。
事務所から、喋り声や、馬鹿ッ話の声が消えた。とにかく、聞こえるのはせわしなくPCのキーを打つ音だけ。社内の会話はすべてPCネットワークで行われる。上司、部下の会話、業務指示、それに対する返答、下手をすれば隣の席の奴とも必死こいてメールでやりとりをしている。
 こうなると、豪放磊落、熱く語る、それにより上司の位置をしめていた人間は、殆ど活躍できる場面がなくなり、ひたすら隅っこに追いやられる。営業やら社内での説得も形が変わる。腹のさぐりあい、取引でのあうんの呼吸や腹芸なんてのは、古すぎてだめ。営業、説得という言葉は今は「ソリューション」という言葉に変わった。

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柳広司  「吾輩はシャーロック・ホームズである」(角川文庫)

柳広司  「吾輩はシャーロック・ホームズである」(角川文庫)
あの夏目漱石がロンドンに留学していたのは、コナン・ドイルがシャーロック・ホームズを「最後の事件」で宿敵モリアーティ教授とライヘンバッハの滝で格闘し、滝から墜落させ
死なせてしまい、そのホームズを奇跡的に復活させたころだった。
 この作品にはTナツメという日本からロンドンへ留学しているへんちくりんな男が登場する。このナツメ、自分はシャーロックホームズであると信じ切っている。
 その頃、ドイルがホームズを死なせてしまったため、巷では、ホームズを見たとか、ナツメのような自称ホームズがたくさん現れていた。柳はもちろん推理としての面白さもこの小説では盛り込んでいるが、やっぱり、明治時代、ロンドンで官費留学して、孤独にさいなまれていたTナツメこと漱石の心情について愛情をこめて活写している。
 次の柳が作り上げたナツメの言葉には唸った。
「君は澄みきった水の面を泳いだことがあるかい。」「ふと下をのぞき込み、墜落の恐怖をきたす。それが明治を迎えた日本だ。日本はどこにも立つべき場所がない。東洋も西洋もぼくたちをささえてはくれないのだ。」

| 古本読書日記 | 06:39 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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吉岡忍  「技術街道をゆく」(講談社文庫)

吉岡忍  「技術街道をゆく」(講談社文庫)
全国47都道府県で技術を革新しがんばっている企業、農業などの訪問ルポ。
北海道の酪農、秋田の林業など一部にその地域の特性をいかした産業の紹介もあるが、殆ど紹介している殆どは、誘致企業か、大企業の下請けなど、そこでなければならないという特色あるものはなく、どの県も風景は一緒だなという印象を持つ一冊である。
 この本を読んでいると、アベノミクスは大企業優遇の政策であり、格差社会を助長するだけという批判があるが、何しろ優遇すべき、支えるべき中小企業というのが、殆ど大企業か官公庁役所にぶら下がっていて、大企業が儲かる政策を進めないと、とてもその先は何も進まないように思ってしまう。
 それから力のある県というのは、昔も今も、裾野の広い産業があったか、現在あるところだということがわかる。
 昔で言えば、製糸、織物産業。ここで培った技術、ノウハウが地場の産業を興している。
群馬のパチンコメーカー。諏訪の精密工業。浜松、遠州の自動車、楽器産業。
 今では圧倒的にすそ野が大きい愛知の自動車産業。自動車が多少傾いても、他で伸び、産業を興す底堅い力がある。
 だめなのは、誘致だけに力を入れてきた県。大企業の意志ひとつで消滅する工場ばかりをつくり、技術、ノウハウが培われていない県である。

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朝井リョウ   「時をかけるゆとり」(文春文庫)

朝井リョウ   「時をかけるゆとり」(文春文庫)
朝井が、自らの大学生活を書いている。作家になるには、これ以上ないほどの大学生活を送っているように感じた。
 学生生活を描いた作品はどれも同じ色調、居酒屋があって、バーやこじゃれたレストラン、と思えばファミレスやマック、そして揺れ動く恋、読んだはじから忘れてゆく。
 素晴らしいのは朝井のこの大学生活体験記には、恋も居酒屋も合コンもファミレス(いやサイゼリヤが登場したか)も全くでてこない。
 雨中の100キロハイキング、ピンク映画館の夏休み、北海道なしの北海道旅行、それにちゃんと書いてある授業での失敗。学生を体いっぱいに吸い込んで楽しく、切なく躍動している。
 恋は学生生活のほんの一部。だからまず学生を目いっぱい書く。それを書いていたら恋を書くところなど無くなってしまったのだろう。こういう作家は将来を期待してもいい。但し面倒くさがりやの性格は直したほうが更にいい。

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養老孟司 池田清彦 吉岡忍 「バカにならない読書術」(朝日選書)

養老孟司 池田清彦 吉岡忍 「バカにならない読書術」(朝日選書)
本は本当に読まれなくなった。どうして読まれないか。それは、必要がなくなってきたからだと思う。必要のないことをやるほど今の人々は暇ではないのかもしれない。
 必要ということはどういうことか。まずは、学者先生が、自分の研究のために資料として本をとる。あるいは学生が、論文や試験のために、それも資料として読む。昔は、資料や
調査というとまずは本であるが、そんな面倒くさいことをしなくても今はネットで本以上に情報や調査資料は簡単に取得できる。下手をすれば、論文も小保方さんのようにちゃっかりコピペしてしまう。本の価値は全く下がった。
 本はどんな時に読むのだろう。
どうしようもなくなにもすることがない。
 「しょうがねえから、本でも読むか。」

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誉田哲也  「ヒトリシズカ」(双葉文庫)

誉田哲也  「ヒトリシズカ」(双葉文庫)
誉田がこの小説で書きたかったことのすべてが第一章になる。小池という暴力団幹部が5発の銃弾を受けて殺される。犯人吉井という男も簡単にあがる。彼の服に薬莢反応もあり、銃も持っていたことが決めてとなる。
 この時の鑑定医の解剖でも、一発が心臓に到達してそれが死因ということになっていた。それで、すべてが解決され、一件落着となる。その後で、監察医が奇妙なことを言う。実は銃弾は一旦心臓の手前で止まっていた。それを、誰かが銃弾を心臓まで押入れ到達させたのではないかと。
 誉田は女性の怨恨、嫉妬は思い出したら深くこそなれ、中途半端で終了することはない。
と、言っているように思う。そして思い込んだら、その思いをどんな手段を使ってもやりとげないと気が済まない。男は、すぐ諦めたり、ごまかしたり、まぎらわしたりする。適当、チャランポランなところが特質である。
 5発も銃弾に撃たれているのだから、男だったら放っておいても死ぬだろうと思う。女性は、その眼で確実に殺したことを確認しないと気が済まない。だからボールペンで銃弾を心臓まで押し込む。

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村山由佳  「優しい秘密」(集英社文庫)

村山由佳  「優しい秘密」(集英社文庫)
好きな人がいる。相手も好いてくれている確信もある。でも、体の関係を作ろうとするとなぜだかわからないが拒まれる。そうすると苛立ちが残る。愛し合っているとは思うが、日々の会話からどことなくぎくしゃくしてしまう。全体がどことなく危なっかしい。
 そんな時には、自分を好いてくれているという安心感で包んでくれるもう一人の女性が欲しい。まあ、世の中にはよくある話なのだが、ことはそう都合よくは運んでくれない。そんな場合、相手の女の子は、一直線に好きだと言葉も態度もせまってくる。
 それを、上手くあしらっているように見えて、嘘や言い訳ばかりでは、そのいい加減さを
本当の恋人だと思っている女性にも、心の安定のための女性にも見事に暴かれ、にっちもさっちもいかなくなり、とんでもない悲劇を味わうことになる。
 村山は優しいから、そこまでの悲劇になる直前で物語を終わらしている。

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小松左京  「虚無回廊Ⅱ」(徳間文庫)

小松左京  「虚無回廊Ⅱ」(徳間文庫)
AEであるエンドウ率いる部隊が謎の巨大物体SSに到着して、物体を探検する探検記が第2巻の物語。
 小松は地学、科学についての彼の知識を駆使して、実にSSの構造、そこで起こる現象については、緻密に描写する。ちょっとSFおたくでないとついていけない。
 しかし、枝葉は必要以上に緻密なのだが、肝心なところが雑で興がそがれる。
幅2光年、直径1.2光年もあるのに、中心から端まで50時間で到達してしまう。
とてつもなく大きい物体。人間の大きさなど沁みや点にもならず、顕微鏡でみたってわからないほどの大きさ。地球は丸いことや太陽の周りをまわっているということは、人間は日常では全くわからない。その地球より何千億倍も大きい物体なのに、物体が動いていることをエンドウが認識できる。しかも最後山脈まで急ぐのだ。夜が来てしまうからという文章で終わっている。
 太陽もないのに、どうして朝や夜があるのか、それも唐突で納得できない。

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小松左京  「虚無回廊Ⅰ」(徳間文庫)

小松左京  「虚無回廊Ⅰ」(徳間文庫)
地球はここ何年かの間に本当に小さくなった。情報は瞬時にかけめぐるし、10時間も飛行機に乗れば、違った世界、国に簡単に行けるようになった。
 それに比べ宇宙は果てしなくでかい。
地球から5.8光年のところに、コードネームSSという巨大な物体が出現した。長さ2光年、直径1.2光年というのだから。ここから、意志を持ったモノシグナルが発信されている。
 そこで、ここへ部隊を組んで、でかけることが行われる。
しかし、これが想像を絶するほどに困難なこと。まず、将来人間の寿命が延びたとしても、130歳くらいまで。何しろ、火星基地をとびたって、SSに到達するまでに56年もかかる。
21歳平均年齢の部隊が組まれるが、到達のころは80歳近く。しかも56年間は、ひたすら移動するのみ。他の人生経験はできない。そこで、人間を模したAEという物体が開発される。AIはすでに開発されていたが、これは人間の指示により活動するもの。AEは感情や頭脳を主体的に有するもの。これだったら、56年間ひたすら移動することだけに何とか耐えられる。 次にSSから発せられる意志シグナルを地球語にトランスレートせねばならない。これもかなり大変。それで、この物語1では、部隊がとにかくSSで降り立ったところで終了する。

| 古本読書日記 | 05:57 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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湊かなえ  「花の鎖」(文春文庫)

湊かなえ  「花の鎖」(文春文庫)
それぞれ3人の女性、梨花、美雪、紗月の章が独立しながら、物語が展開する。年齢は違っていても、この3人の女性は同じ時代、同じ地方都市で生きているとばかり思っていた。
 バラバラの3人が最後には関係が本当はあり鎖となって収斂していくのだと。
最後でびっくり。この鎖は祖母から父母、娘と縦の鎖になっていた。全く湊は読者を驚愕させる。3人の女性もよく描かれている。ミステリーというより、人生を描く質の高い小説と言ったほうがこの小説にあっている。
 佐村河内という偽の作曲家がいた。実際の陰の作曲家は何で唯唯諾諾と佐村河内に従ったのか、この作品の陽介と和弥の関係を読むとなんとなくわかるような気がした。
Kとは誰か。そこに引っ張られ読み進む。そこの展開、種明かしが鮮やかである。

| 日記 | 06:16 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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誉田哲也 「アクセス」 (新潮文庫)

誉田哲也 「アクセス」 (新潮文庫)
2mbというドメインを持っているプロバイダーと契約する。それを、他人に紹介し、他人が登録すると、その瞬間から以降は、通信料、インターネットがすべて無料になる。
 こんな話からはじまるので、てっきりネズミ講の話かとおもいきや全く違った。
よく小説のテーマとなる幽体離脱の話だった。ただ、幽体離脱が、パソコン、ネットワークの世界によって実現されるというところがまあ現代的。
 2mbというドメインが、2をtwo,あるいはtoとみればtombとなり、これが墓の意味となるのがミソ。一旦、2mbの世界に幽体離脱してはいってしまうと、そこからでられなくなる。しかも、現世界に残った肉体は、悪意を持った人間が乗り移る。
 2mbに入り込んでしまった主人公の可奈子が、同じく入り込んでしまった尚美の犠牲的、献身的奮闘により、現実の世界に生還するところがこの作品のよみどころ。
 更に最後のおまけで、尚美までもが現実の世界に生還してしまうところは、誉田のサービスなのだろう。
 

| 古本読書日記 | 06:16 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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中島みゆき 「女歌」(新潮文庫)

中島みゆき 「女歌」(新潮文庫)
短篇集。
初めて知ったのだけど、いやーコンサートツアーは大変な大仕事なのだ。中島みゆきがひとりで歌うだけなのだが、スタッフは40人もいる。コーラス、楽器演奏者、音響、照明、楽器の据え付け、解体など。これじゃあ、5000円以上チケット代がすること理解できる。
 全国ツアーともなると常にこの40人が移動する。困るのがトイレ。出演者が観客と同じトイレにはいるわけにはいかない。ところが地方の何とか会館では、楽屋付近に男女兼用で一つあるだけが普通。途切れることのない行列。
 この本にある、熊本でコンサート終了、当日鹿児島移動の描写はすさまじい。楽器やPA
照明の方付けとトラックへの積み込み。ピアノまで運ぶ。それが終わってのスタッフ40人の夜行バスでの移動。大騒動記だ。
 中島みゆきの小説は不思議。歌詞は哀しい失恋の歌が多いのに、小説では恋愛はひとつもない。

| 古本読書日記 | 06:44 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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松久淳 「天国の本屋」(新潮文庫)

松久淳 「天国の本屋」(新潮文庫)
誰もが100歳まで生きることができる。100歳までに死んだ人は天国に行って100歳まで生きてその後は新たな命となってまた普通の世界に戻って生きる。
 主人公のさとしは、生きたまま天国に連れてかれ天国の本屋で店長代理になる。
全員じゃないかもしれないが、天国にいる人にはそれぞれ思いがこめられた本がある。そんな人たちがそれぞれに思いの込められた本を持って本屋にやってきてその本を朗読してくれるようさとしにお願いする。本がとっても好きな作者の楽しい発想がうれしい。

| 古本読書日記 | 06:42 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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松本清張 「巨人の磯」(新潮文庫)

松本清張 「巨人の磯」(新潮文庫)
中編集。その中で「礼遇の資格」がすごい。清張の発想は奇想天外。フランスパンというのは数日すぎるとそこいらの棒より硬くなる。
何しろ殺傷した凶器がフランスパン。それでは、なかなか犯人はつかまらない。
最後の収録作品「東経139度」。古代神事 太占(ふとまた)を行っていた神社がすべて東経139度に沿ってあり、それ以外には存在しない。
 139を古代読みすると「ヒミコ」。邪馬台国は大和か九州で生まれ、やがて争いにまけ東に移り、耶麻台国の都を東経139度線上においた。むちゃくちゃな発想。緯度なんて考えは邪馬台国時代にはなかった。と思ったら、それは人間が後から発見したことで、そこが139度になることはずーっと以前より決められていたのだ。

| 古本読書日記 | 06:01 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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湊かなえ  「花の鎖」(文春文庫)

湊かなえ  「花の鎖」(文春文庫)
それぞれ3人の女性、梨花、美雪、紗月の章が独立しながら、物語が展開する。年齢は違っていても、この3人の女性は同じ時代、同じ地方都市で生きているとばかり思っていた。
 バラバラの3人が最後には関係が本当はあり鎖となって収斂していくのだと。
最後でびっくり。この鎖は祖母から父母、娘と縦の鎖になっていた。全く湊は読者を驚愕させる。3人の女性もよく描かれている。ミステリーというより、人生を描く質の高い小説と言ったほうがこの小説にあっている。
 佐村河内という偽の作曲家がいた。実際の陰の作曲家は何で唯唯諾諾と佐村河内に従ったのか、この作品の陽介と和弥の関係を読むとなんとなくわかるような気がした。
Kとは誰か。そこに引っ張られ読み進む。そこの展開、種明かしが鮮やかである。
 

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誉田哲也  「ソウルケイジ」(光文社文庫)

誉田哲也  「ソウルケイジ」(光文社文庫)
物語作りや犯人をとりまく人たちの行為のリアリティ、玲子と日下主任のライバル意識のうらに隠された背景などよく描かれている。
 しかし、肝心なところで大きな失敗をしてしまっている。多分誉田は、事件解決のためのDNA鑑定万能に挑戦したくてこの作品を書いたのだろう。
 その方法が、犯人が自分の右腕を丸ノコギリで切り落とす。それを、殺した犯人の血液の中に付け込んでDNA鑑定を突き破ろうとする。
 腕を自らノコギリで切り落とすことなど、どうしても人間がやれる行為とは思えない。この場面で作品の面白さが全くなくなる。トリックが現実離れしていすぎる。

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伊藤たかみ  「アンダー・マイ・サム」(講談社文庫)

伊藤たかみ  「アンダー・マイ・サム」(講談社文庫)
17歳。一番、心が揺れ動き、悩み、深く人生を考える時なのかもしれない。もう少しすると、世の中は、日々、同じことの繰り返しということが当たり前ということがわかる。殆どの人たちが、真剣に人生と向かい合うなどという気概は消え失せてしまった生活を営むようになっている。
 17歳は違う。友達も、嫌いな奴も、たくさんいるような、たくさんいてほしいような空想があり、でもよくみれば友達と言えるような奴はいない。恋人なのかよくわからない、つかみどころのないセックスフレンドがいる。たばこも吸う。ビールばかりを飲む。バイクでふろつきまわる。
 何かに飢え、いつも何かしているような気がするのだが、よくみてみると、授業は寝てばかり、家に帰ればゲームをしてばかり。くだらない映画を時々みたり、本屋やCDショップで万引きを繰り返している。そして、気が付くと、ポカンと穴があいていて、孤独と空しさだけが心をつきあげてくる。何にもない17歳、暗く切ない17歳。
 それでわかる。17歳はいつも懸命に携帯メールを打っている。
「今飯食ってる」「今テレビ見てる。」「元気?」必死につながろうとしている17歳。

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松本清張 「馬を売る女」(文春文庫)

松本清張 「馬を売る女」(文春文庫)
清張は、ちょっと心にひっかかる材料できて、そこからああでもないこうでもないとその材料を広げるのが楽しくて、楽しくてしょうがない作家なのだと思う。この本には中編三作が収められているがまずはトリック材料がある。
 高速道路の夜の待避所。ヒトリバシリという雑草。馬酔木。
面白いのはヒトリバシリ。口に入れると、それに含まれているヨヒンビンという物質が中枢神経麻痺をおこし、どうしても全速力で走りたくなる。どこでこんなことを清張は知るのか知らないが、それを知ったときの清張のこいつは面白い話が作れるとほくそえむ顔が私の目の前に現れる。
 トリックの面白さということでは東野圭吾がいるが、東野はトリックにおぼれ、物語が雑になる傾向がある。
 清張は動機とトリックを完全に共鳴させる。収められた三作品は、老醜というもの、死へ向かって諦めにむかうのが当たり前なのに、金欲、性欲、権勢欲ますます高じてそれが最後殺人につながる。老醜の醜さ哀れさをテーマとしている。そこが読者にガツンと衝撃を与える。

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松本清張 「共犯者」(新潮文庫)

松本清張 「共犯者」(新潮文庫)
短編集。清張は、実力もないのに、権力を傘に偉そうにするひとを異常に軽蔑する。
この本に収められている「剥製」がそれにあたる。
 鳥の鳴き声名人で世を風靡している人がいる。彼の鳴き声で、どんな鳥でも集まってくる。で、それを見学に行く。さて、いくら鳴き声を発しても全く鳥はよってこない。
 最後それを糊塗するために、彼が鳴くまねをしているところに剥製を並べて、鳥がよってきているようにみせて取材は終わる。そして、どうしても鳥がよってこないことを認めない。
 こういう人っていっぱいいるよね。世に取り残されてもまだ自分中心に世界がまわっていると固く信じているひと。

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小松左京  「明日泥棒」(ハルキ文庫)

小松左京  「明日泥棒」(ハルキ文庫)
ゴエモンという名の超能力者が彼方の宇宙から地球にやってくる。最初は、睡眠妨害をされるのがいやということで、自分の居場所を中心に地球のある範囲で発生する音をすべて消してしまう。人々は喋っても、声にならないから、筆談をしながらコミュニケーションをとる。
これは大変なこと。それが序の口で、次は、火を使った地球上の武器をすべて使えなくしてしまう。突然、小国を攻めていたアメリカ軍の兵が皆殺しにされる。手に持っている銃や空爆ができなくなる。そうすると、吹き矢や、刀剣をもち、扱いなれている小国人のほうが圧倒的に強くなるからである。
 まあそれにしても、火類の武器が無くなっても、争い、殺し合いは人間世界では無くならないことをこの小説は描き出している。頭にきたゴエモンは石油が全く使えなくなるようにして彼方の地球を去ってゆく。

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伊藤たかみ  「ミカ!」(文春文庫)

伊藤たかみ  「ミカ!」(文春文庫)
私たちは小学生や中学生が書いた文や小説に出会えない。しかし、大人になった小説家が、小学生を思い入れたっぷりに描く小説は山のようにたくさん出会う。
 大人の描く小学生は、描く作家の今現在の心情や悩みを、子供に移しかえて描くためどうしてもこんな小さな子供が本当にこんなことを考えるのかという小説になってしまう。
 そんな雰囲気がする典型的な小説がこの小説だ。
まず、やたら泣く。子供のころは、ケガをしたりケンカをして大泣きすることはあっても、恋のことや、友情のことで泣いていたとは思わない。子供はいつも、やるべきこと、やらねばならないことが多くて、とても泣いている暇などなかったような気がするし、恋などは二の次のことだったように思う。
 この作品で、作文で20年後の自分がどうなっているかということを書く授業があるが、想像がつかなくて書けない場面がある。それは今の伊藤たかみをみながら当時のことを書くからそんな表現になるが、小学生はもっと素直に自分の将来について夢を交えながらああだ、こうだと思いをはせるものだと思う。

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